説明

電子部品製造に用いるのに適する超クリーンフルオロエラストマー

【課題】 パーフルオロエラストマーを調製するための硬化性フルオロエラストマー組成物。
【解決手段】 組成物には、(1)過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンおよび/またはニトリル基から選択された1つ以上の硬化部位を有するパーフルオロポリマーと、(2)有機過酸化物および/または前記ニトリル基を通じてパーフルオロポリマーを硬化することができる化合物と、(3)任意にポリ不飽和架橋助剤と、が含まれる。組成物中のパーフルオロポリマーは、本質的にイオン性末端基を有さず、組成物中の金属陽イオンの総量は、10μg/gパーフルオロポリマー以下である。このパーフルオロエラストマーは、金属陽イオンの量が十分に少ない組成物を硬化し、フルオロエラストマーを半導体産業で用いるのに適するようにすることで得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の属する分野
本発明は、高純度の、詳細には、電子部品製造に用いるのに、詳細には集積回路チップ
製造に用いるのに必要な十分な純度のフルオロエラストマーに関する。詳細には、本発明
は、所望のフルオロエラストマーを製造するための硬化性組成物、および特にこのような
組成物およびこのようなフルオロポリマー自身に用いるのに適するフルオロポリマーを製
造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
フルオロエラストマーおよび詳細には(非特許文献1)に記載されているようなパーフ
ルオロエラストマーは、高い使用温度に対して優れた保護作用があり、各種の化学試薬に
耐性がある。フルオロエラストマーは、1つ以上のフッ素原子を含むモノマーまたはこの
ようなモノマーと他のモノマーとのコポリマー(フルオロモノマーが質量で最大量存在す
るもの)で作られたフルオロエラストマー前駆体(「フルオロエラストマーゴム」)を硬
化することにより調製したエラストマーである。フルオロエラストマー前駆体は、所望の
弾性特性を有するフルオロエラストマーを調製するのに適するフルオロポリマーである。
典型的には、フルオロエラストマー前駆体は、非晶質フルオロポリマーまたは融点を殆ど
示さないフルオロポリマーである。フルオロポリマーが完全フッ素化(過フッ素化)(perfluorinated)主鎖を有する場合に、パーフルオロエラストマーが生じるが、部分的にフッ素化された主鎖を有するポリマーも用いられる。
【0003】
フルオロポリマーの調製によく用いられる方法は、溶媒中での重合より環境的に有利な
水性乳化重合である。一般に、フッ素化モノマーの水性乳化重合は、フッ素化界面活性剤
の存在下で行うが、重合にフッ素化界面活性剤を加えない技術も開発されている。
【0004】
フルオロエラストマーは、高温および攻撃的化学物質に耐えることができる能力のほか
、標準エラストマー加工装置を用いてフルオロエラストマーゴムを加工することができる
能力により多数の用途にうまく用いられてきた。とりわけ、フルオロエラストマーは、半
導体産業で、チップ製造装置の密封にフルオロエラストマーを用いることができるチップ
製造方法に用いられてきた。チップ製造の間に、フルオロエラストマーは、高温および攻
撃的化学物質に暴露される可能性がある。フルオロエラストマー特にパーフルオロエラス
トマーは半導体産業に用いられるが、この特定の用途に更に適するようにするためにフル
オロエラストマーを改善することが依然として必要とされている。詳細には、利用可能な
フルオロエラストマー組成物は、イオン化合物の量が多すぎる、詳細には金属陽イオンの
量が多すぎることが多く、これによりチップ製造に用いるための適性が限定される。これ
は、フルオロエラストマーを作るのに用いるフルオロポリマーを水性乳化重合方法で調製
した場合に特に当てはまる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「現代のフルオロポリマー(Modern Fluoropolymers)」ジョン・シャイアーズ(John Scheirs)編ウィリー・サイエンス(Wiley Science)1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、半導体産業での要求事項を満たし、それに用いるのに適するように高純度のフ
ルオロポリマーおよびフルオロエラストマーを生成するための別の方法を見出すことが所
望されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
3.発明の概要
本発明の一態様では、パーフルオロエラストマーを調製するための硬化性フルオロエラ
ストマー組成物であって、
過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンおよび/またはニトリル基から選択
される1つ以上の硬化部位を有するパーフルオロポリマーと;
有機過酸化物および/または前記ニトリル基によりパーフルオロポリマーを硬化するこ
とができる化合物と;
任意にポリ不飽和架橋助剤と;を含み、
パーフルオロポリマーが本質的にイオン性末端基を有さず、組成物中の金属陽イオンの総
量が10μg/gパーフルオロポリマー以下である前記組成物
を提供する。
【0008】
上に特定した組成物を硬化することにより得ることができるパーフルオロエラストマー
の金属陽イオンの量は十分に少ないため、このフルオロエラストマーは半導体産業で用い
るのに適するようになる。更に、組成物のパーフルオロポリマー構成成分は水性乳化重合
方法により生成することができ、イオンを除去して金属陽イオン量を所望の少量にするた
めに特別な作業手順または余分なステップを必要としない。
【0009】
別の態様では、本発明は、上に定義した組成物を硬化することにより得られる硬化パー
フルオロエラストマー、および電子部品の製造、特にチップまたはウェーハ製造装置の密
封成分としてパーフルオロエラストマーを用いることができるウェーハおよびチップの製
造でのその使用も提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、上に定義した硬化性フルオロエラストマー組成物に用いるの
に特に好ましいパーフルオロポリマーを製造する方法であって、(i)(a)テトラフル
オロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびその混合物から選択されるフッ素化モ
ノマーと、(b)過フッ素化C3〜C8オレフィン類、過フッ素化ビニルエーテル類および
その混合物から選択されるフッ素化モノマーと、(c)過酸化物硬化反応に関与すること
ができる1つ以上のハロゲン原子または1つ以上のニトリル基を有する過フッ素化モノマ
ーから選択される1つ以上のフッ素化硬化部位モノマーと、を水性乳化重合し、それによ
り、重合が、フルオロ脂肪族スルフィネートおよびスルフィネートを酸化してスルホニル
ラジカルにすることができる酸化剤の組み合わせおよび/またはフリーラジカル開始剤お
よび塩化物塩の組み合わせから選択される開始剤系で開始され、得られるパーフルオロポ
リマーが本質的にイオン性末端基を有さないようにすることと、(ii)パーフルオロポ
リマーを凝析させることにより、例えば十分な量の金属塩を加えて分散体中のパーフルオ
ロポリマー粒子を凝析させるかまたは分散体からパーフルオロポリマーを凍結凝析させる
ことにより、得られる水性分散体から形成されたパーフルオロポリマーを単離することと
、を含む前記方法を提供する。
【0011】
上の方法から理解されるように、金属陽イオンの量を望ましい低レベルまで減少させる
のに特別な加工ステップは必要でない。従って、上の方法は、半導体産業で必要とされる
高純度条件を満たすパーフルオロエラストマーを調製するためのパーフルオロポリマーを
生成する便利で費用効率のよい方法を提供する。
【0012】
更に、本発明は、水性乳化重合により得られるパーフルオロポリマーであって、(a)
テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびその混合物から選択される
フッ素化モノマー由来の単位と、(b)過フッ素化C3〜C8オレフィン類、過フッ素化ビ
ニルエーテル類およびその混合物から選択されるフッ素化モノマー由来の1つ以上の単位
と、(c)過酸化物硬化反応に関与することができる1つ以上のハロゲン原子または1つ
以上のニトリル基を有する過フッ素化モノマーから選択されるフッ素化硬化部位モノマー
由来の1つ以上の単位と、を含み、パーフルオロ脂肪族末端基および/またはCF2Cl
末端基を含み、本質的にイオン性末端基を有さず、パーフルオロポリマーに含まれる金属
イオンの量が10μg/gパーフルオロポリマー未満である前記パーフルオロポリマーを
提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
4.発明の詳細な説明
本発明に関連して、本質的にイオン性末端基を有さないパーフルオロポリマーが、半導
体産業のフルオロエラストマーを製造するのに特に適切であることが見出された。詳細に
は、このようなパーフルオロポリマーは、よく用いられる水性乳化重合技術により生成す
ることができ、続いて、得られる水性分散体からこのフルオロポリマーを塩化マグネシウ
ムのような金属塩を用いることができる通常の凝析技術を用いて単離することもでき、或
いはこのラテックスを凍結凝析することもできる。従って、水性フルオロポリマー分散体
からイオンを除去するために取るステップが無く、金属塩を用いて分散体中のフルオロポ
リマーを凝析することができるにも関わらず、本質的にイオン性末端基を有さないフルオ
ロポリマーから、半導体産業で用いるのに適するような金属イオン含量が十分に小さい高
純度のポリマーが得られることが見出された。典型的には、得られるフルオロポリマー中
の残留金属陽イオンの量は、10μg/グラムフルオロポリマー以下、即ち、10,00
0ppb以下とされることになる。好ましくは、金属陽イオンの量は7,000ppb以
下とされることになる。
【0014】
「残留金属陽イオン」という用語は、以下の実施例の節に述べる試験条件にポリマー試
料を置いた後に分析的に見出される金属イオンを意味する。
【0015】
「本質的にイオン性末端基を有さない」という用語は、フルオロポリマーがイオン性末
端基を有さないか、またはパーフルオロポリマーのフーリエ変換赤外線スペクトルの18
40cm-1〜1620cm-1範囲の積分ピーク強度から2740cm-1〜2220cm-1
範囲の積分ピーク強度までを計算することにより求めた吸光度比が0.1未満の量でイオ
ン性末端基を含むことを意味する。この吸光度比は、当技術分野ではカルボキシル末端基
のレベルを示すのに一般に用いられる(米国特許第6,114,452号明細書)。水性
乳化重合は、一般に、形成するイオン性末端基が本質的にカルボキシル末端基であり、従
って、吸光度比をポリマー内イオン性末端基の残留含量の尺度として用いることができる
ような条件で行われる。
【0016】
「パーフルオロ」または「過フッ素化」という用語は、本明細書では、個々の化合物の
全ての水素原子がフッ素原子で置換されるものであるが、水素原子のいくつかが塩素、臭
素またはヨウ素原子で置換される可能性を除外しないものを意味する。詳細には、「パー
フルオロポリマー」という用語は過フッ素化主鎖、即ち、水素原子がフッ素原子で置換さ
れた主鎖を有するフルオロポリマーを意味するが、水素原子のいくつかがフッ素以外のハ
ロゲン、例えば、フルオロポリマーがクロロトリフルオロエチレンを用いる重合由来の場
合には塩素で置換されたポリマーを除外しない。
【0017】
パーフルオロエラストマーを調製するのに用いると便利なパーフルオロポリマーは、水
性乳化重合により調製することができる。好ましくは、パーフルオロポリマーは、例えば
テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびその混合物のような過フッ
素化モノマーと、過フッ素化C3〜C8オレフィン類、過フッ素化ビニルエーテル類および
その混合物から選択されるフッ素化モノマーと、過酸化物硬化反応に関与することができ
る1つ以上のハロゲン原子または1つ以上のニトリル基を有する過フッ素化モノマーから
選択される1つ以上のフッ素化硬化部位モノマーとの重合により調製される。過酸化物硬
化反応に関与することができるハロゲンには、塩素、臭素またはヨウ素原子を含むことが
できる。
【0018】
用いることができる過フッ素化ビニルエーテルモノマーの例には、式
CF2=CF−O−Rf
(式中、Rfは、1つ以上の酸素原子を含むことができる過フッ素化脂肪族基を表す)に
一致するものが含まれる。好ましくは、パーフルオロビニルエーテルは、一般式
CF2=CFO(RfO)n(R’fO)mR”f
(式中、RfおよびR’fは、2〜6炭素原子の異なる線状または分枝パーフルオロアルキ
レン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり、R”fは1〜6炭素原子のパーフ
ルオロアルキル基である)に一致する。上の式によるパーフルオロビニルエーテルの例に
は、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、パーフル
オロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、パーフルオロ−2−メトキシ−エチ
ルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロ−n
−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)、およびCF3−(CF22−O−CF(C
3)−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2が含まれる。
【0019】
重合は、フルオロ脂肪族スルフィネートおよびスルフィネートを酸化してスルホニルラ
ジカルにすることができる酸化剤の組み合わせおよび/またはフリーラジカル開始剤およ
び塩化物塩の組み合わせから選択された開始剤系で開始し、得られるパーフルオロポリマ
ーが本質的にイオン性末端基を有さないようにする。
【0020】
従って、一実施形態によれば、開始系にはフリーラジカル開始剤、例えば過硫酸塩、過
マンガン酸または過マンガン酸カリウムのようなその塩、および式
aCln
(式中、Maは一価または多価陽イオンを表し、nは陽イオンの原子価に一致する)の塩
化物塩のような塩化物塩を用いることが含まれる。適切な陽イオンMaには、有機および
無機陽イオンが含まれる。特に有用な陽イオンは、アンモニウム陽イオン、およびナトリ
ウムおよびカリウムのような一価の陽イオンのほか、カルシウムおよびマグネシウムのよ
うな二価の陽イオンを含む金属陽イオンである。塩化アンモニウム塩の例には、テトラブ
チルアンモニウムクロリドのようなテトラアルキルアンモニウムクロリドのほかNH4
lが含まれる。一般に、塩化物塩の量を増大させることにより、イオン性末端基の数が減
少する。開始系に塩化物塩を用いることにより、CF2Cl末端基が形成されると考えら
れている。一般に、塩化物塩の量は、塩化物イオン:開始剤(例えば過マンガン酸塩)の
モル比が1:0.1と0.1:10との間、好ましくは1:0.5と0.1:5との間に
なるように選択される。
【0021】
本質的にイオン性末端基を有さないフルオロポリマーを得る別の方法には、米国特許第
5,285,002号明細書に開示されているように、フルオロ脂肪族スルフィネート、
好ましくはパーフルオロ脂肪族スルフィネートおよびスルフィネートを酸化してスルホニ
ルラジカルにすることができる酸化剤の組み合わせを用いることが含まれる。適切な酸化
剤には、例えば過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩が含まれる。フルオロ脂肪族スルフ
ィネートを用いることにより、典型的には、フルオロポリマー内に(パー)フルオロ脂肪
族末端基が生じる。
【0022】
フルオロ脂肪族スルフィネートは、典型的には次の式
fSO21/x
(式中、Rfは、例えば、1〜20炭素原子、好ましくは4〜10炭素原子を有する一価
のフルオロ脂肪族ラジカルを表し、Mは、原子価xが1〜2、好ましくは1の水素原子ま
たは陽イオンを表す)に一致することになる。陽イオンの例は、アンモニウム、ナトリウ
ムおよびカリウム陽イオンである。
【0023】
一価のフルオロ脂肪族ラジカルRfは、フッ素化された安定で不活性、非極性の飽和成
分である。これは、直鎖、分枝鎖、および、十分に大きければ、アルキルシクロ脂肪族ラ
ジカルのような環状またはその組み合わせとすることができる。一般に、Rfの炭素原子
は1〜20、好ましくは4〜10とされることになり、フッ素を40〜83重量パーセン
ト、好ましくは50〜78重量パーセントを含むことになる。好ましい化合物は、Rf
パーフルオロアルキルCn2n+1(式中、nが1〜20)の場合のように、Rf基が完全に
または実質的に完全にフッ素化されたものである。
【0024】
fに関しては、炭素原子の骨格鎖は、二価の酸素、六価のイオウまたは三価の窒素ヘ
テロ原子により中断されることがあり、これらは各々炭素原子のみに結合しているが、こ
のようなヘテロ原子が存在する場合には、このような骨格鎖が炭素原子2つ毎に1つ以上
の前記ヘテロ原子を含まないことが好ましい。時折炭素に結合する水素原子、ヨウ素、臭
素、または塩素原子が存在することがあるが;存在する場合には、鎖の炭素原子2つ毎に
1つ以下が存在することが好ましい。Rfが環状構造であるか、それを含む場合には、こ
のような構造は、6員環原子を有し、その1つまたは2つを前記ヘテロ原子、例えば、酸
素および/または窒素とすることができることが好ましい。本発明に用いるスルフィネー
トの例は、米国特許第5,285,002号明細書に開示されており、これは、本明細書
に参照により援用される。
【0025】
用いる開始剤の量は、典型的には、重合混合物の総量を基準にして重量で0.01と2
%との間、好ましくは重量で0.03と1%との間である。重合開始時に開始剤の全量を
加えることもでき、開始剤は、70〜80%の変換が達成されるまで、重合の間に重合物
に連続的に加えることもできる。また、開始剤の一部を開始時に、残りを重合の間に1回
または別々の追加部分に分けて加えることもできる。
【0026】
イオン性末端基の数が少ないポリマーを生成することに加え、開始剤としてパーフルオ
ロパーエステルを用いることができる。
【0027】
水性乳化重合方法は、一般に、よく知られた方法で行う。好ましい重合温度は10〜1
00℃、好ましくは30℃〜80℃であり、圧力は4〜30バール、詳細には6〜15バ
ールである。
【0028】
水性乳化重合系は、緩衝剤、および必要ならば、錯体形成剤または連鎖移動剤のような
他の材料を更に含むことができる。また、水性乳化重合は、典型的には、パーフルオロア
ルカンスルホン酸またはカルボン酸のようなフッ素化界面活性剤も含むことになる。典型
的には、前記水性乳化重合に用いるフッ素化界面活性剤の全量は、生成するフルオロポリ
マーの重量を基準にして重量で0.1%と重量で5%との間である。
【0029】
過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを鎖に沿って導入するために、フル
オロポリマーの塩基性モノマーと適切なフッ素化硬化部位モノマーとの共重合を行う(例
えば米国特許第4,745,165号明細書、米国特許第4,831,085号明細書、
および米国特許第4,214,060号明細書参照)。このようなコモノマーは、例えば

(a)式
Z−Rf−O−CF=CF2
(式中、ZはBrまたはI、Rfは任意に塩素および/またはエーテル酸素原子を含むパ
ーフルオロアルキレンC1〜C12である)を有するブロモ−またはヨード−パーフルオロ
アルキル−パーフルオロビニルエーテル類、例えば、BrCF2−O−CF=CF2、Br
CF2CF2−O−CF=CF2、BrCF2CF2CF2−O−CF=CF2、CF3CFBr
CF2−O−CF=CF2等と、
(b)式
Z’−R’f−CF=CF2
(式中Z’はBrまたはI、R’fは、任意に塩素原子を含むパーフルオロアルキレンC1
〜C12である)を有するようなブロモ−またはヨードパーフルオロオレフィン類、例えば
ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−パーフルオロブテン−1等、または、1−ブ
ロモ−2,2−ジフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ
ブテン−1のようなブロモフルオロオレフィンと、
から選択することができる。
【0030】
或いはまたは付加的に、フルオロポリマー中の硬化部位成分は、ニトリル含有フッ素化
モノマー由来とすることができる。用いることができるニトリル含有モノマーの例は、以
下の式
CF2=CF−CF2−O−Rf−CN
CF2=CFO(CF2lCN
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]g(CF2vOCF(CF3)CN
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2uCN
(式中、lは整数2〜12を表し、gは整数0〜4を表し、kは1または2を表し、vは
整数0〜6を表し、uは整数1〜6を表し、Rfはパーフルオロアルキレンまたは二価の
パーフルオロエーテル基である)の一つに一致する。ニトリル含有液体フッ素化モノマー
の特定の例には、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オク
テン)、CF2=CFO(CF25CN、およびCF2=CFO(CF23OCF(CF3
)CNが含まれる。
【0031】
硬化部位含有モノマーが液体フッ素化モノマーである場合には、乳化重合の初期段階の
間に少なくともその一部を水性ミクロエマルジョンとすることが好ましいことになる。ミ
クロエマルジョンは、硬化部位成分を有する液体フッ素化モノマー、任意に液体過フッ素
化炭化水素化合物、水、およびフッ素化界面活性剤の安定で等方性の混合物である。フッ
素化モノマーまたは過フッ素化炭化水素に関して用いられる場合、「液体」という用語は
、個々の成分が、周囲温度および圧力条件、即ち約20℃および約1気圧で液体であるこ
とを意味する。ミクロエマルジョンは、典型的には、原料に接触させるか軽く撹拌し、任
意に加熱すると自発的に形成される。一般に、ミクロエマルジョンが形成されるとき、即
ち混合物が清澄で透明になるときの温度は、40℃〜90℃の範囲である。冷却しても、
混合物は清澄で透明のままである。
【0032】
前記ミクロエマルジョンを調製するのに用いることができるフッ素化界面活性剤は、典
型的には4と12との間の炭素原子、好ましくは8炭素原子を有する過フッ素化アルカン
スルホン酸またはカルボン酸またはその塩である。好ましくは、フッ素化界面活性剤は、

(Y−Rf−Z)n−Mb (I)
(式中、YはClまたはFを表し、Rfは4〜10炭素原子を有する線状または分枝過フ
ッ素化アルキレンを表し、ZはCOO-またはSO3-を表し、Mbは一価および多価陽イオ
ンを含む陽イオンを表し、nはMbの原子価に一致する)に一致する。陽イオンの例には
、アンモニウム、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属陽イオンおよびカルシ
ウムまたはマグネシウムのようなアルカリ土類金属陽イオンが含まれる。
【0033】
ミクロエマルジョンを調製するのに用いることができる液体過フッ素化炭化水素化合物
には、典型的には、3と25との間の炭素原子、好ましくは5と20との間の炭素原子を
含み、酸素、イオウまたは窒素から選択される2つ以下のヘテロ原子を含むことができる
。適切な過フッ素化炭化水素には、過フッ素化線状、分枝または環状アルカンのような過
フッ素化飽和線状、分枝および/または環状脂肪族化合物、過フッ素化ベンゼンまたは過
フッ素化テトラデカヒドロフェナンセンのような過フッ素化芳香族化合物が含まれる。ま
た、過フッ素化トリアルキルアミンのような過フッ素化アルキルアミンとすることもでき
る。更に、デカリンのような過フッ素化環状脂肪族、および、好ましくは、パーフルオロ
−2−ブチルテトラヒドロフランのような環に酸素またはイオウを含む複素環脂肪族化合
物とすることもできる。
【0034】
過フッ素化炭化水素の特定の例には、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、
パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロメチルシクロヘキサ
ン、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロジメチルデカヒド
ロナフタレン、パーフルオロフルオレン、パーフルオロ(テトラデカヒドロフェナントレ
ン)、パーフルオロテトラコサン、パーフルオロケロセン類、オクタフルオロナフタレン
や、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)と、パーフルオロ(トリプロピルアミン)、パ
ーフルオロ(トリブチルアミン)、またはパーフルオロ(トリペンチルアミン)のような
パーフルオロ(トリアルキルアミン)と、オクタフルオロトルエンとのオリゴマー、ヘキ
サフルオロベンゼン、および、フルオリナート(Fluorinert)FC−75、F
C−72、FC−84、FC−77、FC−40、FC−43、FC−70またはFC5
312(全て3Mカンパニー(3M Company)製)のような市販のフッ素化溶媒
が含まれる。過フッ素化炭化水素の混合物を用いてミクロエマルジョンを調製することが
できることは、当業者には更に明らかであろう。
【0035】
ミクロエマルジョンを構成する成分の量は、典型的には以下のように選択される(全て
のパーセントはミクロエマルジョンの総量を基準にした重量%で表す)。即ち、パーフル
オロアルカンカルボン酸またはスルホン酸またはその塩5と50%との間、液体過フッ素
化炭化水素化合物0と15%との間、および硬化部位を有する液体フッ素化モノマー5と
30%との間である。好ましい範囲は、パーフルオロアルカンカルボン酸またはスルホン
酸またはその塩10と30%との間、液体過フッ素化炭化水素化合物0.2と10%との
間、および硬化部位を有する液体フッ素化モノマー8と20%との間である。
【0036】
水性乳化重合方法の終了時に、フルオロポリマーの水性分散体が得られる。通常、動的
光散乱法により求められる平均粒子直径は、400nm以下、典型的には10〜400n
mの範囲、好ましくは40〜250nmの範囲である。フルオロポリマーは、凝析により
分散体から単離することができる。公知の凝析法の何れを用いることもでき、これには、
詳細には金属塩をフルオロポリマー分散体に加えることによる凝析が含まれる。用いるこ
とができる適切な金属塩には、例えばNaClのようなアルカリ塩および塩化マグネシウ
ムのようなアルカリ土類金属塩またはAlCl3のようなAl塩が含まれる。好ましくは
、分散体に加える量は、フルオロポリマーを凝析させる最小量が加えられるように選択さ
れることになる。典型的には、凝析を引き起こす金属塩の適切な量は0.5と50g塩/
kgポリマーとの間である。
【0037】
或いは、フルオロポリマーを凍結凝析してポリマーを単離することもできる。分散体を
凍結した後に解凍し、解凍液を除去する。解凍液の除去は、凍結分散体の解凍と同時に行
うことが好ましい。また、この方法には、典型的には、洗浄するステップが含まれ、これ
も解凍および解凍液の除去と同時に行うことが有利であるが、1回以上の洗浄ステップを
解凍ステップの後に行うこともできる。凍結凝析の方法は、例えばEP1,050,54
6号明細書に開示されている。
【0038】
本発明の方法で生成されるフルオロポリマーは、フルオロエラストマーを生成するのに
適切である。フルオロエラストマーを得るために、フルオロポリマーおよび硬化組成物を
含む硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化する。硬化性フルオロエラストマー組成物
は、当業者に知られた方法の何れで硬化することもできる。硬化組成物には、典型的には
、フルオロポリマー鎖を互いに連結させることにより三次元網状組織を形成する1種以上
の成分が含まれる。このような成分には、触媒、硬化剤および/または架橋助剤を含むこ
とができる。
【0039】
フルオロポリマーが、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを含む硬化部
位を含む場合には、硬化組成物は、典型的には、有機過酸化物を含むことになる。適切な
有機過酸化物は、硬化温度でフリーラジカルを発生するものである。50℃を超える温度
で分解するジアルキル過酸化物またはビス(ジアルキル過酸化物)が特に好ましい。多く
の場合で、ペルオキシ酸素に付着した第3級炭素原子を有するジ−t−ブチル過酸化物を
用いることが好まれる。この種類の最も有用な過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−
ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブ
チルペルオキシ)ヘキサンである。過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、t−ブチルペ
ルベンゾエート、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、
およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネートの
ような化合物から他の過酸化物を選択することができる。一般に、過酸化物約1〜3部/
フルオロポリマー100部が用いられる。
【0040】
フルオロポリマーがニトリル含有硬化部位成分を含む場合には、1種以上のアンモニア
発生化合物を含む触媒を用いて硬化を引き起こすことができる。「アンモニア発生化合物
」には、周囲条件で固体または液体であるが、硬化条件でアンモニアを発生する化合物が
含まれる。このような化合物には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン)
、ジシアンジアミド、および式
w+(NH3vw-
(式中、Aw+は、Cu2+、Co2+、Co3+、Cu+、およびNi2+のような金属陽イオン
であり、wは金属陽イオンの原子価に等しく、Yw-は対イオン、典型的にはハロゲン化物
、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等であり、vは1〜約7の整数である)の金属含有化合物が含
まれる。
【0041】
また、式
【化1】

(式中、Rは水素または1〜約20炭素原子を有する置換または非置換アルキル、アリー
ル、またはアラルキル基である)のような置換および非置換トリアジン誘導体もアンモニ
ア発生化合物として有用である。特定の有用なトリアジン誘導体には、ヘキサヒドロ−1
,3,5−s−トリアジンおよびアセトアルデヒドアンモニア三量体が含まれる。アンモ
ニア発生化合物は、ニトリル基を有するフルオロポリマーを硬化するのに用いる場合には
、典型的には、重量で0.1〜10部/100部フルオロポリマー(phr)の量で用い
てフルオロポリマーを硬化し、望ましい物理的および機械的特性を有するエラストマーに
する。
【0042】
ニトリル含有フルオロポリマーを硬化するのに用いることができる他のまたは別の成分
には、次の式
【化2】

(式中、基HA1は、無機または有機酸、例えば、HCl、HNO3、C715COOHで
あり、R1、R2、およびR3は各々、独立して、1〜約20炭素原子を有する同じまたは
異なるアルキル基であって、環状または複素環とすることができ、R基の1つは、この代
わりに別のR基に結合し、窒素がアルケニル、シクロアルケニル、または芳香族基に結合
されるかその一部になるようにすることができる)の化合物が含まれる。また、置換基は
、オレフィンの、例えば、モノ、ジ、およびトリアルキルアミン塩、およびピリジン塩と
することができる。上の式(II)の化合物の例には、式
【化3】

(式中、mおよびnは独立して2〜20である)の化合物が含まれる。
【0043】
式(IIA)の化合物の好ましい例には、m=3でn=5のものおよびm=4でn=2
のものが含まれる。これには、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ
−7−エン(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン(D
BN)の塩が含まれる。これらの塩は、例えば、DBUまたはDBNを有機または無機酸
とメタノールまたはアセトンのような有機溶媒中で反応させることにより調製することも
でき、原位置(in situ)で調製することもできる。酸は、有機または無機、例えばC7
15COOH、または何らかの炭化水素またはフッ素含有のカルボン酸、スルホン酸等、お
よびHCl、HNO3等のような安定な塩を形成する無機酸とすることができる。式II
Aの別の好ましい化合物は、塩酸ピリジンである。式(II)または式(IIA)の化合
物は、0.05〜10phrフルオロポリマーの量、好ましくは0.5〜5phrフルオ
ロポリマーの量で用い、ニトリル含有フルオロポリマーの硬化を引き起こす。
【0044】
前述の式(II)または式(IIA)の化合物は、イミデートと組み合わされることが
望ましく、式RaC(ORb)=NHおよびその塩(式中、RaおよびRbは独立して置換ま
たは非置換C1〜C20(好ましくはC1〜C10、更に好ましくはC1〜C7)アルキル、アリ
ール、アラルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはシクロアルケニル基を表す)を
有するものを含む。「置換」とは、所望の生成物を損なわない置換基による置換を意味す
る。適切な置換基の例には、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、シアノ
、アルコキシ、およびカルボキシ基が含まれる。また、1つ以上の炭素原子を酸素または
窒素のようなヘテロ原子で置換することもできる。イミデートは、Zh.Obs.Khi
mii第36巻(5)862〜71頁(1966年)、CA 65 12206cおよび
アメリカ有機化学会誌(J.Org.Chem.)第30巻3724頁(1965年)に
記載されているように調製することができる。尚、これら文献は本明細書に参照により援
用する。RaおよびRbに有用な基の例には、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、
およびパーフルオロポリエーテル基(例えば米国特許第5,266,650号明細書に記
載)が含まれる。また、化合物には、2つ以上のイミデート基を含むこともできる。有用
なイミデートの例には、例えば、CF3O(CF2mOCF(CF3)C(NH)OCH3
(式中mは1〜4の整数)、およびC37(O(CF3)CF2nOCF(CF3)C(N
H)OCH3(式中n=0〜3)が含まれる。
【0045】
フルオロポリマー中のニトリル基を硬化するための更に別の実施形態では、以下の式
{RdA}(-){QRck(+) (III)
(式中、Rdは、1〜20炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基、3〜20炭素
原子を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニルまたは6〜20炭素原子を有するア
リールまたはアルカリルであり、また、Rdは、部分的または完全にフッ素化することが
できおよび/またはRdは基中の1つ以上の水素原子がCl、BrまたはIで置換される
場合のように置換することができる)の化合物を硬化剤として用いることができる。また
、Rdには、O、P、SまたはNのような1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。過
フッ素化基Rdの例には、式Cn2n+1(式中nは1〜20)のパーフルオロアルキル基、
式Cm2m-1(式中mは3〜20)のパーフルオロシクロアルキル基、C6〜C20パーフル
オラリール基およびC2〜C20パーフルオロアルケニル基が含まれる。
【0046】
Aは酸陰イオンまたは酸誘導体陰イオン、例えば、AはCOO、SO3、SO2、S、S
2NH、PO3、CH2OPO3、(CH2O)2PO2、C64O、OSO3、O(Rdがア
リールまたはアルキルアリールの場合)、
【化4】

【化5】

および
【化6】

好ましくはCOO、O、C64O、SO3、OSO3、または
【化7】

最も好ましくはCOO、O、SO3、およびOSO3とすることができる。R’は、以下に
述べるRcの意味の1つを有することもでき、または上にRdに関して列挙した過フッ素化
基とすることもできる。Rは、Rcに関して以下に述べる意味の1つを有することができ
、R’に対する特定の選択肢は、Rdと同じでも異なってもよく、Rdには1つ以上のA基
が付着してもよい。
【0047】
Qはリン(P)、イオウ(S)、窒素(N)、ヒ素(As)、またはアンチモン(Sb
)であり、kはQの原子価である。
【0048】
各Rcは、独立して、水素または置換または非置換C1〜C20アルキル、アリール、アラ
ルキル、またはアルケニル基である。本明細書で用いる場合、「置換」とは、所望の生成
物を損なわない置換基による置換を意味する。適切な置換基の例には、ハロゲン(例えば
Cl、F、Br、I)、シアノ、ORe、およびCOORe基(式中Reは水素またはアル
カリまたはアルカリ土類金属から選択される基であり、そのうちH、K、Na、およびN
4が好まれる)、C1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、およびその
フッ素化または過フッ素化類似物が含まれる。また、何れの対の前記Re基も互いにおよ
びQ原子に連結し、複素環を形成することができる。
【0049】
上の式(III)の陰イオンRdAの例には、C49SO3、C37COO、C715
OO、C817SO3、C49SO2NSO249、CF3CF(CF3)CH2OおよびCn
2n+1CH2O(式中nは2〜100(好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10で
ある))が含まれる。別の陰イオンには、一般式
x−Phy−(−(CH2n−D)m
(式中、Phはフェニルであり、各Rxは1〜10炭素原子の同じまたは異なるアルケニ
ルまたはアルキルであり、これらは置換または非置換とすることができ、xは0〜5、y
は0または1、nは0〜10、mは1〜5であり、Dは、xおよびmの合計が6またはそ
れ未満であれば、COO、OSO3、SO3、およびO(yが1の場合)である)の陰イオ
ンが含まれる。有用な陰イオンの例には、Ph−COO、Ph−O、CH3−(CH2p
−O−SO3(pが1〜10の場合)、および一般式R−COO(式中Rはアルケニル、
1〜10炭素原子のアルキル例えば酢酸塩またはプロピオン酸塩、または、6〜20炭素
原子のアリールである)のカルボン酸塩が含まれる。多価カルボン酸塩、多価硫酸塩およ
び多価スルホン酸塩、例えば、(-)OOC−(CH2p−COO(-)(-)OOC−(CF2
p−COO(-)(式中pは0〜10)、およびPh−((CH2p−COO(-)q(式中
pおよびqは独立して1〜4である)も有用である。2官能性カルボン酸の好ましい種類
は、シュウ酸である。また、上に記載したような2種以上の化合物のブレンドも、式(I
II)のRdAとして用いることができる。
【0050】
代表的な芳香族ポリオキシ化合物には、ジ−、トリ−、およびテトラオキシベンゼン、
ナフタレン、およびアントラセン、および式
(-)z−Ph−Gy−Ph−Oz(-)
(式中、Gは、1〜13炭素原子の結合または2官能性脂肪族、シクロ脂肪族、または芳
香族ラジカル、またはチオ、オキシ、カルボニル、スルフィニル、またはスルホニルラジ
カルであり、Gおよび/またはPhは任意に少なくとも1つの塩素またはフッ素原子で置
換され、yは0または1、zは1または2)のビスフェノールが含まれ、何れのポリオキ
シ化合物の芳香環も、塩素、フッ素、または臭素原子の少なくとも1つの原子、またはカ
ルボキシルまたはアシルラジカル(例えば、−COR(式中、RはHまたはC1〜C8アル
キル、アリールまたはシクロアルキル基である))または例えば、1〜8炭素原子のアル
キルラジカルで任意に置換される。上のビスフェノールの式では、酸素基は、何れの環の
何れの位(1位を除く)に付着することもできる。また、このような化合物の2種以上の
ブレンドを用いることもできる。材料の好ましい部類には、一般式(-)O−Ph−C(C
32−Ph−O(-)(式中、XはH、Cl、またはFである)を有するもの(例えばビ
スフェノールAF)のようなビスフェノール類が含まれる。多官能性酸を用いる場合には
、モノ−、ビス−、およびマルチ錯体を用いることができる。
【0051】
当技術分野で公知のように、有機オニウムは、ルイス塩基(例えば、ホスフィン、アミ
ン、および硫化物)の共役酸であり、前記ルイス塩基を適切なアルキル化剤(例えば、ハ
ロゲン化アルキルまたはハロゲン化アシル)と反応させることにより、ルイス塩基の電子
供与原子の原子価および有機オニウム化合物の正電荷を増大させることにより形成するこ
とができる。式(III)の化合物の好ましい有機オニウム化合物は、有機成分に結合し
た少なくとも1つのヘテロ原子、即ち、P、S、N、のような非炭素原子を含む。
【0052】
特に有用な第4級有機オニウム化合物の一部類は、広い意味では、相対的に正および相
対的に負のイオンを含み、この場合、リン、イオウ、または窒素が一般に正のイオンの中
心原子を構成し、負のイオンが、部分的にフッ素化されていてもよいアルキルまたはシク
ロアルキル酸陰イオンである、即ち、少なくとも1つの非フッ素原子が残るという条件で
少なくとも1つの水素原子がフッ素置換されている。
【0053】
Qがリンの場合の適切な前駆体化合物の例には、テトラメチルホスホニウム、トリブチ
ルアリルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、ジブチルジフェニルホスホニ
ウム、テトラブチルホスホニウム、トリブチル(2−メトキシ)プロピルホスホニウム、
トリフェニルベンジルホスホニウム、およびテトラフェニルホスホニウムが含まれる。こ
れらのホスホニウムは、水酸化物、塩化物、臭化物、アルコキシド、フェノキシド等とす
ることができる。水酸化テトラアルキルホスホニウムおよびテトラアルキルホスホニウム
アルコキシドが好ましい。
【0054】
ホスホニウム化合物の別の部類には、アミノ−ホスホニウム、ホスホラン(例えばトリ
アリールホスホラン)、およびリン含有イミニウム化合物からなる群から選択したものが
含まれる。用いることができるアミノ−ホスホニウム化合物には、当技術分野で、例えば
米国特許第4,259,463号明細書(モジ(Moggi)ら)に記載されているもの
が含まれる。
【0055】
Qが窒素の場合には、好ましい正のイオンは、一般式NRc4またはHNRc3(式中Rc
は上述の通り)を有する。前駆体化合物として有用な代表的な第4級有機オニウムには、
フェニルトリメチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラプロピルアンモ
ニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラメチルアン
モニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、トリブチルア
リルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、ジフェ
ニルジエチルアミノアンモニウム、トリフェニルベンジルアンモニウム、8−ベンジル−
1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、ベンジルトリス(ジメチ
ルアミノ)ホスホニウム、およびビス(ベンジルジフェニルホスフィン)イミニウムが含
まれる。これらのアンモニウムは、水酸化物、塩化物、臭化物、アルコキシド、フェノキ
シド等とすることができる。これらの正のイオンのうち、テトラブチルアンモニウムおよ
びテトラフェニルアンモニウムが好ましい。
【0056】
QがAsまたはSbの場合には、好ましい正のイオンには、テトラフェニルアルソニウ
ムクロリドおよびテトラフェニルスチボニウムクロリドが含まれる。概して、式(III
)で表される成分の正のイオンには、テトラアルキルホスホニウム化合物の方が好ましい
。また、有機オニウム化合物の混合物も有用である。
【0057】
上に記載した前駆体は、一般に市販されている(例えばウィスコンシン州ミルウォーキ
ーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals,Milwauk
ee,WI)から入手される)が、当技術分野で記載されている手順で調製することもで
きる。式(III)の化合物を調製するのに有用な炭化水素の酸または塩は、典型的には
、一般式RdCOOM、RdSO3M、RdOSO3M、またはRdOMを有する。これらの式
では、Rdは、式(III)に関して上に記載した通りであり、Mは水素、またはアルカ
リまたはアルカリ土類金属である。代表的な材料は、上に記載したカルボン酸塩、硫酸塩
、スルホン酸塩、およびフェノール塩である。また、上に記載した式(III)の2つ以
上の化合物のブレンドを用いることもでき、これには、2つ以上のRdA基および/また
は2つ以上のQRck基のブレンドが含まれる。
【0058】
式(III)の化合物を含む組成物は、適切な方法の何れで調製することもできる。例
えば、式(III)の活性錯体の2つの成分は、酸または塩として別々に組み込むことが
でき、例えば、RdAX(式中Xは水素または前記アルカリまたはアルカリ土類金属から
選択され、このうちH、K、Na、およびNH4が好まれる)、およびQRckZ(式中Z
は有機または無機とすることができ、好ましくはCl、Br、OH、OR3、またはSO4
とされる陰イオンから選択される)とすることができる。2つの成分は、フルオロエラス
トマーゴムに別々または混合物として加えることができる。この方法では、活性錯体は、
加工、加熱、および硬化中に原位置(in situ)で形成される。金属塩の混入および含有
を避けることは、クリーン状態での用途(例えば半導体)に特に重要であり、これを達成
するために、錯体は、硬化性フルオロエラストマー組成物に組み込む前に調製する必要が
あり、得られる塩XZは、活性錯体が硬化性フルオロエラストマー組成物に組み込まれる
前にろ過するか洗い出す必要がある。また、当技術分野で公知の他の適切な方法を用いて
、式(III)の化合物を調製することもできる。例えば、式(III)の触媒組成物の
2つの成分は、沈殿させ、得られる塩XZをろ過する前に、適切な溶媒(例えばアルコー
ル)に溶解させることができる。塩の形成は、オニウム水酸化物またはオニウム−アルコ
キシドとしてのオニウム成分を触媒組成物の酸成分と反応させる(例えばBu4NOHを
RCOOHと反応させる)ことにより避けることができる。活性錯体は、溶媒に溶解して
、または乾燥化合物として硬化性フルオロエラストマー組成物に組み入れることができる
。QRck材料(例えばテトラアルキルホスホニウムクロリド)または遊離酸(例えばRd
AH)が過剰であっても、ポリマーの特性に有害な作用を及ぼさない。
【0059】
式(III)の化合物は、0.1〜10phr、好ましくは0.5〜5phrフルオロ
ポリマーの量で用いてフルオロポリマーを硬化し、所望の物理的および機械的特性を有す
るフルオロエラストマーにすることができる。
【0060】
式(III)の化合物は、一般式R2−OH(式中R2は、1〜20炭素原子、好ましく
は6〜12炭素原子を有するアルキル基である)を有する任意なアルコールと組み合わせ
て用いると有利である可能性がある。R2は、部分的にフッ素化され、例えば、Rf−CH
2−OHまたはRf−CH2CH2−OH(式中、Rfは例えば過フッ素化アルキル基のよう
な過フッ素化炭化水素基である)とすることができる。アルコールを加えることは必要で
はないが、アルコールを加えると、硬化性フルオロエラストマー組成物の粘性および硬化
特性を修正する役に立つ可能性がある。アルコールは、典型的には、組成物全体と相溶性
であるように選択する必要がある。また、アルコールは、ミル(milling)操作の間には
、フルオロポリマーと式(III)の化合物の混合物中に留まり、その後、後硬化操作の
間の次の高温処理中に蒸発する必要がある。現在好まれているアルコールの例には、オク
タノールおよびデカノールが含まれる。硬化剤系には、効果的な量のアルコールを用いる
。この量は、アルコール対式(III)の化合物の所望の比率、選択する特定のアルコー
ル、およびミル温度を含むいくつかの因子により決定される。例えば、低沸点アルコール
の所望される比率が高くなり、ミル温度が高くなるとミルプロセスで含有される量が多く
なることになる。選択した組成物の特定のレベルは、通常、慣例の実験法の問題である。
一般に、この量は、0.01〜10(更に好ましくは0.5〜5)重量部アルコール/重
量100部フルオロポリマーの範囲である。
【0061】
ニトリル基含有フルオロポリマーを硬化するために用いることができる更に別の化合物
には、アミノフェノール(米国特許第5,677,389号明細書)、アンモニア塩(米
国特許第5,565,512号明細書)、アミドキシン(米国特許5,668,221号
明細書)および他のアンモニア発生化合物(PCT第00/09603号パンフレット)
またはイミデートが含まれる。
【0062】
また、ニトリル含有硬化部位成分を含むフルオロポリマーは、1種以上の過酸化物硬化
剤を用いて硬化することができる。この目的に適切な過酸化物硬化剤には、上に列記した
ものが含まれる。硬化性フルオロエラストマーには、ニトリル含有硬化部位および過酸化
物硬化反応に関与することができるハロゲンを含む硬化部位の混合物ような硬化部位成分
の混合物を含むこともできることも当業者には理解されるであろう。後者の場合には、一
般に、ニトリル成分および過酸化物の硬化を引き起こすのに適切な1種以上の化合物の混
合物が用いられることになる。
【0063】
有機過酸化物および/またはニトリル含有硬化部位成分に基づく硬化組成物に通常含ま
れる別の成分は、過酸化物と共働して有用に硬化することができるポリ不飽和化合物から
なる架橋助剤である。これらの架橋助剤は、0.1および10部/100部フルオロポリ
マーに等しい量、好ましくは2〜5部/100部フルオロポリマーの間の量で加えること
ができる。有用な架橋助剤の例には、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレー
ト、トリアリルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジア
リルアミン)−s−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド
、ヘキサアリルホスホラミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド
、N,N,N’,N’−テトラアリルマロナミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4
,6−トリビニルメチルトリシロキサン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジ
アリル−フタレートおよびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートが含ま
れる。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である。他の有用な架橋助剤には、欧州特
許出願公開(EPA)第0661304A1号明細書、欧州特許出願公開第0784064
A1号明細書および欧州特許出願公開第0769521A1号明細書に開示されているビ
ス−オレフィンが含まれる。
【0064】
硬化性フルオロエラストマー組成物には、更に添加剤を含むことができ、例えば、意図
した使用条件に対して適切な安定性を有するならば、フルオロポリマーの化合に典型的に
用いられるカーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤を本発
明の組成物に組み込むことができる。好ましくは、フルオロポリマー粒子のような有機充
填剤を加えることができる。例えば、TFEを共重合することにより得られるパーフルオ
ロアルコキシコポリマー(PFA)およびパーフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)
(PPVE)のようなパーフルオロビニルエーテルを加えることもでき、またはTFEお
よびHFPの共重合により得られるフッ素化エチレン/プロピレンコポリマー(FEP)
を加えることもできる。
【0065】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、従来のゴム加工装置でフルオロポリマー、硬化
組成物および他の添加剤を混合することにより調製することができる。このような装置に
は、ゴム用ミル、バンバリミキサのような密閉式混合機、および混合押出し機が含まれる

【0066】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、公知の鋳造技術を用い、熱および圧力をかけて
フルオロエラストマー組成物を硬化することにより例えばガスケットまたは密封体のよう
なフルオロエラストマー物品に加工されるので便利である。その後、物品には、当技術分
野で公知の後硬化サイクルを受けさせることができる。本発明で得られるフルオロエラス
トマーは、半導体産業、詳細にはウェーハおよびチップ生成に用いられる装置を密封する
のに用いるのに適することが見出された。詳細には、得られるフルオロエラストマーでは
、残留している金属イオンのレベルが極めて低い。典型的には、金属イオンの総量が10
,000ppb(十億分率)、好ましくは7,000ppb未満である。また、フルオロ
ポリマーの調製時にアンモニウムパーフルオロオクタン酸をフッ素化乳化剤として用いる
場合には、そのフルオロポリマー中の残留物は、フルオロエラストマーが硬化される間に
十分に分解され、ウェーハ製造に用いるフルオロエラストマーの適性に悪影響を及ぼすも
のは残らないことが見出された。
【0067】
本発明は、以下の例を参照して更に説明するが、本明細書をそれに限定するものではな
い。全ての部は、特に記載しなければ重量によるものである。
【実施例】
【0068】
試験法
IR吸光度比の測定
カルボニル末端基を定量するために、フルオロポリマーのフーリエ変換赤外線スペクト
ルを生成し、このスペクトルからピーク面積(1840cm-1〜1620cm-1)対ピー
ク面積(2740cm-1〜2220cm-1)の吸光度比を計算した。
【0069】
ムーニー粘度
ASTM D1646によりムーニー粘度値を測定した。
【0070】
メルトフローインデックス
支持重量5.0kgおよび温度372℃でDIN53735、ISO12086または
ASTM D−1238によりメルトフローインデックス(MFI)を行った。本明細書
で引用するMFIは、直径2.1mmおよび長さ8.0mmの標準押出しダイで得た。
【0071】
粒度測定
ラテックス粒度の測定は、ISO/DIS13321に従い、マルヴァーン・ゼータザ
イザー(Malvern Zetazizer)1000HSAを用いて動的光散乱法に
より行った。測定の前に、重合により得られたポリマーラテックスを0.001mol/
LのKCl溶液で希釈し、全ての場合で測定温度は20℃であった。
【0072】
実施例1
40リットルケトルに水25L、アンモニウムパーフルオロオクタノエート30%溶液
(FX1006、3M)430g、アンモニウムパーフルオロブチルスルフィネート(水
中で17%)50gおよびCF2=CF−O−(CF25CN40g(NVE;ウルトラ
−ターラックス(Ultra−turrax)およびマイクロフリューダイザを用い、水
120g中で、1.5gFX1006で予備乳化したもの。平均粒度〜250nm)を入
れた。無酸素ケトルに、更に、TFE520gおよびPMVE1504gを入れた。60
℃、圧力12バールで、過硫酸アンモニウム(APS)40gを送り込んで重合を開始し
た。7.1時間の間、TFE6.0kg、PMVE5.0kgおよび予備乳化NVE0.
45kgを継続的に送り込んだ。得られるラテックスの固体含量は31%、粒度は65n
m、pH=2.8であり、凝析ポリマーの組成は、32.2モル%PMVE、1.3モル
%NVEおよび66.5モル%TFE、IR吸光度比は0.07と求められ、ムーニーは
10+1、121℃=50であった。
【0073】
フルオロポリマー分散体は、水性PFA分散体(固体含量24重量%、TFE=96重
量%、PPVE=4重量%、Mp=309℃、MFI[5kg/372℃]=2g/10
分)と共に、比率w=80/20のブレンドで0.6%MgCl2溶液に激しく撹拌しな
がら加えることにより共凝析した。凝析したブレンドは、熱水で6回洗浄し、110℃で
16時間乾燥した。
【0074】
比較例1
150リットルのケトルに、水105L、アンモニウムパーフルオロオクタノエート3
0%溶液(FX1006、3M)1740gおよび予備乳化NVE90gを入れた。無酸
素ケトルに、TFE1240gおよびPMVE3600gを更に入れた。73℃、10バ
ールでAPS260gを送り込み、重合を開始した。5.5時間の間に、TFE24.0
kg、PMVE20.1kgおよび予備乳化NVE1.78kgを送り込んだ。ラテック
スの固体含量は30%、粒度は70nm、pHは2.5であり、ポリマーの組成は、NV
E1.3モル%、PMVE32.5、TFE66.2モル%であった。ムーニー粘度は5
5、IR吸光度比=0.25であった。
【0075】
実施例1の手順に従って80:20PFAブレンドを調製し、実施例1に記載したよう
に凝析して洗浄した。
【0076】
実施例2
無酸素40lケトルに水35l、アンモニウムパーフルオロオクタノエート30%溶液
(FX1006、3M)500g、アンモニウムパーフルオロブチルスルフィネート52
g、TFE350g、PMVE1150gおよびブロモトリフルオロエチレン(BTFE
)10gを入れた。71℃、圧力14バールで、APS85gを30分かけて加えること
により重合を開始した。4.9時間の間に、TFE(50.8%)、PMVE(48.4
%)およびBTFE(0.79%)の配合のモノマー15.7kgを送り込んだ。得られ
るラテックスの固体含量は31%であった。単離されたポリマーのムーニー粘度は10+
1/121℃=65であり、IR吸光度比=0.048であった。
【0077】
ラテックスは、激しく撹拌しながら0.6%MgCl2溶液40lにラテックスを加え
ることにより凝析した。凝析した材料は熱水で6回洗浄した後、120℃で16時間乾燥
した。
【0078】
熱分解した材料の金属含量は、表1に示す通りであった。
【0079】
金属イオン分析
実施例1、実施例2および比較例1で得られたポリマーを550℃で熱分解し、残渣を
ICP−MS分析にかけた。以下の結果が得られた。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンおよび/またはニトリル基から選択
される1つ以上の硬化部位を有するパーフルオロポリマーと、
有機過酸化物および/または前記ニトリル基を通じてパーフルオロポリマーを硬化する
ことができる化合物と、
任意にポリ不飽和架橋助剤と、
を含む硬化性フルオロエラストマー組成物であって、
前記パーフルオロポリマーが、本質的にイオン性末端基を有さず、前記組成物中の金属
陽イオンの総量が、10μg/gパーフルオロポリマー以下であることを特徴とする前記
硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
前記パーフルオロポリマーが、ニトリル基または1つ以上のニトリル基を有する過フッ
素化ビニルエーテルを有する過フッ素化オレフィン由来の1種以上の単位を含む、請求項
1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項3】
前記パーフルオロポリマーが、イオン性末端基を有さないか、前記パーフルオロポリマ
ーのフーリエ変換赤外線スペクトルで1840cm-1〜1620cm-1の範囲内の積分ピ
ーク強度対2740cm-1〜2220cm-1の範囲内の積分ピーク強度を計算することに
より求めた吸光度比が0.1未満になる量でイオン性末端基を含む、請求項1に記載の硬
化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項4】
前記パーフルオロポリマーが、水性乳化重合方法で得られたパーフルオロポリマーであ
る、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項5】
前記パーフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチ
レンからなる群から選択されるフッ素化オレフィンと、過フッ素化C3〜C8オレフィン類
、過フッ素化ビニルエーテル類およびその混合物から選択される過フッ素化モノマーとの
繰り返し単位を含む、請求項1に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化するこ
とにより得られる硬化フルオロエラストマー。
【請求項7】
電子部品の製造における請求項6に記載の硬化フルオロエラストマーの使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性フルオロエラストマー組成物に用いるため
のパーフルオロポリマーを製造する方法であって、(i)テトラフルオロエチレン、クロ
ロトリフルオロエチレンおよびその混合物から選択されるフッ素化モノマーと、過フッ素
化C3〜C8オレフィン類、過フッ素化ビニルエーテル類およびその混合物から選択される
フッ素化モノマーと、過酸化物硬化反応に関与することができる1つ以上のハロゲン原子
または1つ以上のニトリル基を有する過フッ素化モノマーから選択される1種以上のフッ
素化硬化部位モノマーと、を水性乳化重合し、それにより、前記重合が、フルオロ脂肪族
スルフィネートおよび前記スルフィネートを酸化してスルホニルラジカルにすることがで
きる酸化剤の組み合わせと、および/またはフリーラジカル開始剤および塩化物塩の組み
合わせと、から選択される開始剤系で開始され、得られるパーフルオロポリマーが本質的
にイオン性末端基を有さないようにすることと、(ii)得られた水性分散体から形成さ
れた前記パーフルオロポリマーを単離することと、を含む前記方法。
【請求項9】
前記分散体中に前記パーフルオロポリマー粒子の凝析を引き起こすのに十分な量の金属
塩を加えることにより、前記パーフルオロポリマーが前記得られた水性分散体から単離さ
れる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水性乳化重合により得られるパーフルオロポリマーであって、テトラフルオロエチレン
、クロロトリフルオロエチレンおよびその混合物から選択されるフッ素化モノマー由来の
単位と、過フッ素化C3〜C8オレフィン類、過フッ素化ビニルエーテル類およびその混合
物から選択されるフッ素化モノマー由来の1種以上の単位と、過酸化物硬化反応に関与す
ることができる1つ以上のハロゲン原子または1つ以上のニトリル基を有する過フッ素化
モノマーから選択されるフッ素化硬化部位モノマー由来の1種以上の単位と、を含み、前
記パーフルオロポリマーが、パーフルオロ脂肪族末端基および/またはCF2Cl末端基
を含み、本質的にイオン性末端基を有さず、前記パーフルオロポリマーに含まれる金属イ
オンの量が10μg/gパーフルオロポリマー未満である前記パーフルオロポリマー。

【公開番号】特開2012−72417(P2012−72417A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9419(P2012−9419)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2004−524943(P2004−524943)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】