説明

電子部品製造用粘着テープ

【課題】電子部品製造用粘着テープを提供し、さらに詳細には、粘着剤層が常温で粘着力を有しないが、加熱ラミネート工程中にだけ粘着力が発現して、リードフレームにラミネートを可能にすることができ、粘着剤層の追加的な光硬化による部分的相互浸透網構造を形成して、半導体装置の製造工程中に粘着テープが露出する熱履歴に対して向上した耐熱性を有し、かつ半導体装置の製造中の装置の信頼性向上に役に立ち、封止材料の漏れを防止し工程完了後テープが除去される際にリードフレームや封止材料に粘着剤の転写を防止することのできる製造用粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明に係る電子部品製造用粘着テープは、耐熱基材と、前記耐熱基材上に粘着剤組成物が塗布された粘着剤層と、を含む電子部品製造用粘着テープであって、前記粘着剤組成物は、フェノキシ樹脂、熱硬化剤、エネルギー線硬化型アクリル樹脂及び光開始剤を含み、前記粘着剤層は、熱及びエネルギー線により硬化されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品製造用粘着テープに関し、さらに詳細には、粘着剤層が常温で粘着力を有しないが、加熱ラミネート工程中にだけ粘着力が発現して、リードフレームにラミネートを可能にすることができ、粘着剤層の追加的な光硬化による部分的相互浸透網構造を形成して、半導体装置の製造工程中に粘着テープが露出する熱履歴に対して向上した耐熱性を有し、かつ半導体装置の製造中の装置の信頼性向上に役に立ち、封止材料の漏れを防止し工程完了後テープが除去される際にリードフレームや封止材料に粘着剤の転写を防止することのできる製造用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
現代生活において携帯用機器(携帯電話、ラップトップコンピュータ、DVD/CD/MP3再生機、PDA等)の使用が増加するにつれて、機器の小型化及び軽量化が必須となっている。それにより、携帯用機器に用いられる半導体パッケージの小型化と薄型化が最優先課題として台頭している。既存の半導体は、長く出てきたリードを介して回路基板と接続する表面実装パッケージ方式(gull−wing SO format又はQFP(quad−flat−package))を使用したが、このような要求特性に限界を表している。特に、数GHzの高周波を使用する携帯用通信機器の場合、半導体装置の誘電損失による発熱反応により、その性能及び効率が低下するという問題がある。
【0003】
最近では、このような半導体の要求特性に合せてリードのないQFN(quad flat no−lead package)方式の需要が急上昇している。QFNの場合、リードが長く出ておらず、ダイ周囲のランド形態でパッケージの底側に露出しているから、直に回路基板にはんだ付け(soldering)が可能である。これにより、リードを有した形態のパッケージより顕著に小さく、薄く製造でき、回路基板において占める面積も既存に比べて約40%程度減少するという効果がある。発熱面においても、チップを載置するリードフレームが密封樹脂により囲まれている既存の方式と差別して、リードフレームがパッケージの底にあり、ダイパッドが外部に直に露出しているから、放熱に優れている。そのため、リードが出ているパッケージに比べて、電気的特性に優れており、自体インダクタンスが半分にしかならない。
【0004】
このようにパッケージの底にリードフレームと密封樹脂の表面が共存する界面が生じるようになるため、一般的な金属モールド枠を利用する際に密封樹脂がリードフレームとモールド枠との間に容易に漏れて、ランド部の表面やダイパッドの表面を樹脂で汚染させるという問題を発生させる。そうして、必需的に粘着テープを使用してリードフレームにラミネート(lamination)させた後、QFN製造工程及び樹脂封止工程を経ることにより、樹脂工程の間の密封樹脂のブリード−アウト(bleed−out)やフラッシュ(flash)を防止することができる。
【0005】
一方、一般に半導体装置の製造工程中に耐熱粘着テープと関わる工程は、簡単にテーピング(tape lamination)工程−>ダイ接着(die attach)−>ワイヤボンディング(wire bonding)−>密封樹脂封止(EMC molding)−>ディテーピング(detaping)工程から構成されている。
【0006】
第一に、テーピング工程では、ラミネーターを使用して粘着テープを銅又はPPF(Pre−Plated Frame)リードフレームに粘着させるが、ラミネーターの種類及び方式によって要求される粘着テープの特性が変わるようになる。ローラ(roller)を使用する場合、ホットプレス(hot press)を使用する場合、2通りの混合型、そしてリードフレームのダムバー(Dam bar)部分のみをプレスする場合などに分けられる。各方式によって、粘着剤層は、起泡なしでリードフレームによく密着されなければならず、粘着テープがラミネートされたリードフレームの取扱過程においてもデラミネート(delamination)のない程度の粘着力を維持していなければならない。
【0007】
第2に、ダイをリードフレームに接着させるダイ接着工程では、ペーストあるいはフィルム形態のエポキシ、ポリイミド、シリコン系の接着層が150〜170℃にて20〜60分程度の時間にかけて硬化されつつダイとリードフレームとを接着させる。この工程の間にリードフレームにラミネートされていた粘着テープは、その粘着剤層や基材層の如何なる化学的物理的変形が無しで安定した耐熱度でダイ接着性に問題を起こしてはならない。
【0008】
第3に、ワイヤボンディング工程では、金、アルミニウム、銅ワイヤーなどを使用して、ダイとリードフレームのランド部とを電気的に接続する。この工程では、熱、圧力、又は超音波を動員してワイヤーを接合させるが、主に100〜300℃にて短くは20分、長くは、2時間程度まで工程が維持される。ワイヤーがダイとランド部とに各々接合される間、高い接合性のために高熱と高圧又は超音波振動まで必要とするため、その過程において下からリードフレームを支えているテープの物性の変動が生じると、半導体装置で最も重要なワイヤボンディング性に問題が生じうる。言い換えれば、ワイヤーが損傷するか、又は接合界面が弱くなりうる。そのため、基板を含んで粘着剤層自体は、耐熱性や物理的な外力に対して少ない変形性を有し、かつ耐久性に優れていなければならない。
【0009】
第4に、密封樹脂封止工程では、ダイ接着工程とワイヤボンディングされたリードフレーム/テープをモールド枠内で密封樹脂を使用して封止するようになる。この過程は、175〜190℃の高温で3〜5分程度行われるが、樹脂が漏れて、各素子あるいは多数の素子を同時に密封させる間に、樹脂がリードフレームとテープとの間の界面に浸透しないように、テープがリードフレームに高温でもよく密着されていなければならない。そのようにしないと、高温高圧で入る密封樹脂のブリード−アウト(bleed−out)やフラッシュ(flash)を起こすことができる。追加的には、密封樹脂と直接的に接触する粘着剤層が密封樹脂と反応して、後に密封樹脂の表面に残留粘着剤を残すことができ、又は密封樹脂の流れによる粘着剤層の物理的な剪断歪みが生じて密封樹脂の表面を不均一にするおそれがある。
【0010】
第5に、ディデーピング工程では、上記の密封樹脂工程において言及したように、テープが除去された後に粘着剤層と接している密封樹脂の表面が物理的あるいは化学的に均一でなければならず、粘着剤が残ってはならない。また、リードフレームの表面にも粘着剤の残留物が残ってならない。テープを除去する方式は、常温で手作業や加熱が可能な自動化された機械を使用する場合がある。機械を使用する場合は、密封樹脂封止工程を経たテープが接着されているリードフレームをオーブンやホットプレート(hot plate)を通過しながら、テープが除去されうる適切な温度に加熱された状態でテープを除去するものである。
【0011】
以上のように、半導体装置の製造工程に使用される粘着テープの要求特性を総合的に要約すると、各ラミネーターのラミネート方式に合せてテープが外観上起泡の形成無しでリードフレームに密着されなければならず、ダイ接着性やワイヤボンディング性に優れているように、言及された温度範囲及び工程時間の間にテープに物理的化学的変化があってはならない。換言すれば、ガス抜け(outgas)のような形態で粘着剤層の一部が抜け出して半導体装置の素子表面に吸着されて結合されなければならない界面の結合力を低下させてはならない。また、テープの寸法の変動が生じるか、又は粘着剤層の物理的特性である弾性係数あるいは粘度のような値が極端的に変化して、粘着剤層が流れてしまうか、あまり硬度が高まって砕けられることは、半導体装置の信頼性維持に悪影響を及ぼすことができる。密封樹脂封止工程の間には、テープがリードフレームに密着された状態をよく維持して、その界面の間に密封樹脂が浸透してリードフレームの表面を汚染させてはならない。もちろんディデーピング工程後にディフラッシュ(deflash)工程を追加することはできるが、窮極的には、追加洗浄工程のない方が効率及び経済的に推奨される。ディデーピング後には、密封樹脂の表面状態が、密封樹脂が本来デザインされた意図通りに具現化されるように、粘着剤と密封樹脂との間に特異反応があってはならず、粘着剤が表面に残っていてはならない。また、リードフレームの表面にも粘着剤の残渣があってはならない。
【0012】
特に、本発明では、以上のようなテープの要求特性を満足させつつ、ラミネート方式の中でもホットプレスを使用してラミネートするラミネーターに適した粘着剤層の開発に細部目的がある。この場合、粘着剤層が常温でラミネーター構成要素の一般的な材質であるステンレススチール(STS)種類の材質に対して粘着力が全くなく、一定の熱と圧力が加えられた時のみに粘着力が具現されて、リードフレームに接着されなければならない。
【0013】
従来のアクリル系やシリコン系の粘着剤では、このような温度に依存した初期粘着力を具現するのに限界がある。換言すれば、常温で粘着力がゼロ(zero)に近接し、加熱時にのみ粘着力が出るように具現するのが不可能であるという意味である。
【0014】
粘着剤の組成や機能基の調節による被着剤との物理的な結合力を最小化させることはできるが、基本的に低いガラス転移温度による粘着剤の粘性で被着剤に大きな外圧がなくても密着してラミネート工程において問題を起こすようになる。
【0015】
熱硬化性アクリル系粘着剤の場合は、根本的な耐熱凝集力の限界や優れたタック(tack)特性のため、ディデーピング後にリードフレームや密封樹脂の表面に粘着剤残渣の問題があり、シリコン系粘着剤の場合、未硬化されたた低分子粘着剤が高温工程においてガス抜け形態で揮発する場合、その低い表面エネルギーのために半導体装備及び半導体素子の表面に容易に吸着又は固着されて装備を汚染させ、ワイヤボンディング性やダイ接着性と関連した半導体信頼性に大きな問題を引き起こすということは、既に公論化された事実である。
【0016】
シリコン系の場合は、粘着力が高くて密封樹脂の漏れに有利であると予想されるが、高い粘性による高い変形率で高温高圧の密封樹脂の流れがリードフレームと粘着剤層との間を押して入って、密封樹脂の漏れを引き起こすという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、上述した特別なラミネート工程条件の要求特性をすべて満足させ、既存の半導体装置の製造工程に使用されていた粘着テープの粘着剤残渣及び密封樹脂漏れの限界を改善することのできる電子部品製造用粘着テープを提供することにある。
【0018】
本発明の前記及び他の目的と利点は、好ましい実施の形態を説明した下記の説明からより明確になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的は、耐熱基材と、前記耐熱基材上に粘着剤組成物が塗布された粘着剤層と、を含む電子部品製造用粘着テープであって、前記粘着剤組成物は、フェノキシ樹脂、熱硬化剤、エネルギー線硬化型アクリル樹脂及び光開始剤を含み、前記粘着剤層は、熱及びエネルギー線により硬化されることを特徴とする、電子部品製造用粘着テープにより達成される。
【0020】
ここで、前記耐熱基材は、厚さが5μm〜100μmであり、ガラス転移温度が110℃〜450℃であり、100℃〜200℃で基材の熱膨張係数が1ppm/℃〜35ppm/℃であり、常温弾性率が1GPa〜10GPaであることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記フェノキシ樹脂は、フェノキシ樹脂又は変性フェノキシ樹脂であり、重量平均分子量が1,000〜500,000であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【0022】
また、好ましくは、前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、少なくとも一つ以上の炭素二重結合を分子内に有していることを特徴とする。
【0023】
また、好ましくは、前記粘着剤層のステンレススチール(STS)材質に対する常温粘着力が0〜1gf/50mmであることを特徴とする。
【0024】
また、好ましくは、前記粘着剤組成物のガラス転移温度は、80℃〜150℃であることを特徴とする。
【0025】
また、好ましくは、前記粘着剤組成物は、前記フェノキシ樹脂100重量部に対して熱硬化剤を5〜20重量部及び前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂を5〜30重量部含み、前記光開始剤を、前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、粘着剤層が常温で粘着力を有しないが、加熱ラミネート工程中にのみ粘着力が発現して、リードフレームにラミネートを可能にすることができ、粘着剤層の追加的な光硬化による部分的相互浸透網状構造を形成して、半導体装置の製造工程中に粘着テープが露出する熱履歴に対して向上した耐熱性を有し、半導体装置の製造中の装置の信頼性向上に役に立ち、封止材料の漏れを防止し工程完了後にテープが除去される際にリードフレームや封止材料に粘着剤の転写を防止できる等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を参照して本発明を詳細に説明する。これらの実施の形態は、単に本発明をさらに具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施の形態により制限されないということは、当業者にとって自明である。
【0028】
本発明に係る電子部品製造用粘着テープは、半導体装置の製造工程に必要であり、それによる要求特性を満足させるマスキング(masking)用粘着テープに関するものであって、リードフレームのような金属類に優れた接着力を有し、耐熱性も卓超した熱可塑性のフェノキシ樹脂を主材として使用する。リードフレームに対する優れた密着性及び接着性で密封樹脂のブリード−アウト(bleed−out)やフラッシュ(flash)がなく、硬化度を調節することによって、リードフレームに粘着力が発現される温度も調節可能である。また、添加された光硬化樹脂のエネルギー線照射による追加的な架橋構造の形成により、向上した凝集力でディデーピング後に粘着剤のリードフレームや密封樹脂の表面に残る粘着剤の残留問題を解決する。
【0029】
本発明に係る電子部品製造用粘着テープは、半導体パッケージング工程を例に挙げて説明するが、これに限定されず、各種電子部品の高温製造工程上にマスクシートとしても採用されうることはもちろんである。
【0030】
本発明に係る電子部品製造用粘着テープにおいて粘着剤組成物が塗布されて粘着剤層を形成する基材は、耐熱性に優れた高分子フィルムが使用可能である。このような耐熱基材の場合、フィルム形態で加工が可能で充分な耐熱性で前記記述された温度範囲及び時間の間に物理−化学的変化があってはならない。また、このような耐熱基材は、5%重量減少する温度が少なくても300℃以上であることが好ましく、100〜200℃での熱膨張係数が1〜35ppm/℃程度であることが好ましい。ガラス転移温度も110℃〜450℃であるフィルムが好ましい。安定し優れた高温耐性は、高温ラミネート時に基材の平坦度を維持して均一なラミネートを可能にし、高いワイヤボンディング性を保障することができる。高温でも維持されるフィルムの寸法安定性は、樹脂封止工程の間にもモールド枠において変形がないから、樹脂の漏れを抑制することができる。さらに、弾性率は、常温で1GPa〜10GPaであり、100〜300℃の範囲内でも100〜5000MPaを維持することが好ましい。弾性率があまり低いか、又は折りたたみ現象が激しい基材フィルムを使用した場合、テープの取扱過程、テープをラミネート装備にロード(loading)する過程、テープが装備に供給(feeding)される過程において生じうるシワが残るようになって、後にラミネート不良(部分デラミネート(delamination))を引き起こし、不均一なワイヤボンディング性及び樹脂ブリード−アウトを起こすことができる。こういう要求特性を満たす基材には、耐熱性高分子フィルムが適用可能で、耐熱ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルイミドなどで加工されたフィルムが挙げられる。
【0031】
また、基材フィルムの厚さは、特に制限なく、ラミネート装備及び樹脂封止装備の適用限界によって決定される。一般に、5〜100μmが好ましいが、外力によるシワ現象を抑制し、適切な耐熱性を維持し、取扱に容易にするためには、10〜40μmがさらに好ましい。必要によって粘着剤と基材フィルムとの接着力を向上させるために、サンドマット処理、コロナ処理、プラズマ処理及びプライマ処理も可能である。
【0032】
本発明に係る電子部品製造用粘着テープの粘着剤層は、耐熱性が偶数で粘着力に優れた熱可塑性フェノキシ樹脂を主材とし、フェノキシ樹脂用熱硬化剤とフェノキシ樹脂の過剰硬化収縮を調節しつつ耐熱性を保存するための光硬化樹脂(エネルギー線硬化型アクリル樹脂)及びこのための光開始剤を含む。
【0033】
本発明に係る電子部品製造用粘着テープの粘着剤層をなす粘着剤組成物の主粘着剤成分は、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂を使用する。フェノキシ樹脂の種類には、ビスフェノールA型フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールF型フェノキシ、ブローム系フェノキシ、リン系フェノキシ、ビスフェノールA型/ビスフェノールS型フェノキシ及びカプロラクトン変性フェノキシなどが挙げられるが、その中でも、特にビスフェノールA型フェノキシ樹脂が耐熱性、親環境性、硬化剤相溶性、硬化速度の側面において優れているからさらに好ましい。
【0034】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、1,000〜500,000のものが好ましく、この場合、内部凝集力の増加による耐熱性の向上でディデーピングの際、粘着剤残渣問題を最小化できる。分子量が1000未満である場合、内部凝集力が落ちて要求される耐熱特性が具現されず、分子量が500,000を超過する場合、高粘度により引き起こされる作業性の低下やコーティング後にもコーティング面上が等しくなりがたいという問題点があることができ、他の原料との混合性が調節され難い。
【0035】
また、前記フェノキシ樹脂を溶解することのできる有機溶媒種類には、ケトン系、アルコール系、グリコールエーテル系、エステル系がある。いくつかの例を挙げると、サイクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、ダイエチレングリコールアルキルエテール、フェノキシプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンなどを単独又は2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒を使用する場合には、有機溶媒100重量部に対してフェノキシ樹脂5〜40重量部が好ましく、20〜30重量部がさらに好ましい。必要によって、コーティング不良及び基材フィルムとの接着力を高めるために、トルエン、キシレン、アロマチック100、ヘキサンのような芳香族炭化水素類溶媒を希釈剤として添加できる。希釈剤の量は、溶媒に対して40%を超えないようにする。
【0036】
また、前記フェノキシ樹脂は、適当な架橋剤を添加しても使用できるが、架橋剤又は硬化剤には、水酸基を機能基として有している樹脂を硬化させうるものであれば何でも良い。メラミン、ウレア−ホルムアルデヒド、イソシアネート官能性予備重合体、フェノール硬化剤、アミノ系硬化剤などが挙げられる。熱硬化剤量は、フェノキシ樹脂100重量部に対して0.1〜40重量部が好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。硬化剤の量があまり小さいから(<5重量部)充分でない架橋構造が形成される場合には、粘着剤層がもろくなって(相対的なガラス転移温度の減少及び損失弾性率の増加)ラミネート時にリードフレームが粘着剤層にあまり深々と掘り下げ、リードフレームによって押された粘着剤がリードフレームのダイパッドやランド部の周囲に上がってくることによって、樹脂密封工程時に密封樹脂とリードフレームとの間に挟まれてディデーピング時に粘着剤残渣を引き起こすことができる。また、硬化剤量があまり多い場合(>20重量部)には、粘着剤層の粘着力と濡れ性があまり低下して、デラミネート(delamination)問題を起こすことができ、過度に増加した強度によってラミネート過程で粘着剤層がくずれる問題を引き起こすことができ、追加的に基材フィルムに粘着剤塗布後乾燥及び硬化過程の間に過度な硬化収縮でテープが曲がってしまうという問題を発生させてラミネート作業性が落ちうるためである。
【0037】
また、前記フェノキシ樹脂の架橋構造に追加的な架橋構造を形成するエネルギー線硬化型アクリル化合物(樹脂)は、炭素−炭素二重結合を有したアクリル高分子、アクリルオリゴマー、アクリルモノマーなどが可能で、少なくとも一つ以上の不飽和結合を有している。このアクリル基は、自由ラジカル反応を通して架橋構造を形成する官能基として作用するが、その数によって反応性、架橋構造、及び硬化度の調節が可能である。官能基の数が増えるほど、反応(架橋)速度が増加し、ガラス転移温度が増加し、耐熱性が増加するが、粘着剤層の柔軟性と粘着力が減少するという短所がある。適切な官能基数を有したアクリル樹脂を選択するにあっても、フェノキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤の選択と同様に、粘着力と硬直性間の均衡を合せるものを使用しなければならない。
【0038】
このようなエネルギー線硬化に用いられるアクリル化合物の例には、エポキシアクリレート、アロマチックウレタンアクリレート、アリファティックウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレートなどがあり、単独又は2種以上の互いに異なるオリゴマーの組合せでも使用が可能である。
【0039】
また、各種類のオリゴマーの中でも官能基の数に応じても選択が可能で、2〜9程度の官能基を有したオリゴマーの使用が可能である。高い硬化密度を通した粘着剤層の凝集力、強度、ガラス転移温度の増加により、優れたワイヤボンディング性及びディデーピング時に粘着剤層が密封樹脂の表面とリードフレームに残渣されるのを抑制するためには、6〜9程度の官能基を有したオリゴマーが好ましい。
【0040】
このようなエネルギー線硬化型アクリル化合物の含有量は、フェノキシ樹脂100重量部に対して1〜40重量部を添加し、好ましくは、5〜30重量部の割合で使用される。
【0041】
最後に、前記エネルギー線硬化型アクリル化合物のエネルギー線による硬化を開始するのに用いられる光開始剤には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、α-ヒドロキシケトン系、α−アミノケトン系、フェニルグリオキシル酸系、アシルホスフィン系などがある。光開始剤は、単独でも使用可能であるが、粘着剤層の厚さやエネルギー線の強度などによって均一な架橋構造の形成のために、光開始剤の効率及び特性によって2種以上を混合して使用することもある。このような光開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂の100重量部に対して0.5〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部の割合で使用される。
【0042】
また、本発明に係る電子部品製造用粘着テープの前記粘着剤組成物のガラス転移温度は、80℃〜150℃であるものが好ましく、また前記粘着剤層のステンレススチール(STS)材質に対する常温粘着力が0〜1gf/50mmであるものが好ましい。ガラス転移温度が80℃未満である場合には、QFN工程の間の熱履歴によって高温での粘着剤の物性変化があまり激しくなり、150℃を超える場合には、テープのラミネート温度が170℃以上になりつつ、ラミネート後に反り(warpage)が激しくなる(リードフレームの熱膨張が激しくなりつつ、テープとの熱膨張程度の差が大きくなって、結局、反りが増加する)。
【0043】
以下、本発明は、以下のような形態で実施が可能であり、本実施例によって本発明が限定されることではない。
【実施例】
【0044】
<実施例>
フェノキシ樹脂(KUKDO化学、YP50)100重量部をメチルエチルケトン300重量部に溶解し、イソシアネート系熱硬化剤(ダウコニン、CE138)15重量部、エネルギー線硬化型化合物であるアリファティックポリウレタンアクリレート(日本合成、UV7600B80)20重量部、アシルホスフィン系光開始剤(CYTEC、DAROCUR TPO)2重量部を混合して1時間撹拌した。撹拌が終わった粘着剤組成物を25μm厚さのポリイミドフィルム(LN、COLON)に塗布し、150℃乾燥器で約3分間乾燥した。厚さは、約6μmと確認された。乾燥器を通過した乾燥されたテープは、追加的な架橋構造を形成するためのエネルギー線硬化段階を経るが、本実施例では、紫外線を照射した。紫外線の光量は、約300mJ/cmであった。粘着剤層内の完全な硬化のために長波長の紫外線A領域(315〜400nm)のエネルギー線を放出する無電極UVランプを使用した。照射される紫外線の光量は、UVランプの強度、照射面との距離、照射時間などの適切な組合せで調節した。また、酸素によるエネルギー線硬化効率の減少を防止するために、窒素雰囲気で紫外線が粘着剤層に照射された。
【0045】
<比較例>
粘着剤の主材としてアクリル樹脂(SAMWON、AT5100)100重量部をエチルアセテート320重量部に溶解し、イソシアネート系熱硬化剤(ダウコニン、CE138)10重量部、エネルギー線硬化型化合物であるアリファティックポリウレタンアクリレート(日本合成、UV7600B80)25重量部とエポキシアクリレート(CYTEC、EB600)0.5重量部、シリコンアクリレート0.1重量部、アシルホスフィン系光開始剤(CYTEC、DAROCUR TPO)1重量部を混合して1時間撹拌した。高温ラミネート時の粘着力の発現とディデーピング時の粘着剤残渣を防止するために、エポキシとシリコン系のアクリレートをそれぞれ添加した。撹拌が終わった粘着液を25μm厚さのポリイミドフィルム(LN、Kolon)に塗布し、150℃の乾燥器で約3分間乾燥した。厚さは、約6μmと確認された。乾燥器を通過した乾燥されたテープは、追加的な架橋構造を形成するために窒素雰囲気で紫外線が照射され、紫外線の光量は、約300mJ/cmであった。
【0046】
前記実施例と比較例において製造された電子部品製造用粘着テープを各々評価して以下の表1に示した。評価のための実験又は方法は、当業者に周知である方法を用いたので、本明細書では、これについての説明は省略する。
【0047】
【表1】

【0048】
前記表1にて確認できるように、フェノキシ樹脂を主材とした本発明に係る実施例とアクリル樹脂を主材とした比較例の半導体装置の製造に用いられる粘着テープとしての主要特性と関連される物性を比較した。
【0049】
これらの粘着テープのラミネート側面の適用用途において、常温でステンレス材質に粘着力があってはならないため、そのような特性を与えるために、粘着剤組成物が決定された。両粘着テープは、STS 304材質に対してすべて常温粘着力が測定できないほどでなかったが、比較例の場合、粘着剤とSTS 304材質間の微細な粘着力が残っていた。これは、アクリル樹脂の根本的な粘着特性は、紫外線硬化を介してなくすことはできないと推定できるか、又は高分子の(重量平均分子量が〜800,000)アクリル鎖から起因する粘着剤層の脆さ又は柔軟性でファンデルワールスや最盛期による粘着力でない粘着剤層の物理的変形による接着表面の増加からの微細な粘着力に起因することもできると見えた。結局、この微細な粘着力が前記で言及したラミネート装備の場合では、テープの供給性(feeding)に問題となって、約20%の作業性失敗を引き起こした。
【0050】
また、比較例の場合には、初期常温粘着力をなくすために追加された相対的に過量のエネルギー線硬化型オリゴマーによって高温でのラミネート時にも十分な粘着力が出なかったため、部分的にデラミネート(delamination)が発見され、肉眼でも確認可能な程度でリードフレームに接着された部分と接着されない部分の存在によってテープのシワが発見された。また、比較例の場合、このような低い粘着力で密封樹脂封止工程で深刻な樹脂漏れ問題を起こし、リードフレームの表面が密封樹脂で汚染されたことを確認した。ディデーピング後に残っているリードフレームパターンの跡を検査すると、ダイやランド部の跡周囲に押さえられて押された粘着剤がかたまってあるのを確認することができたが、これは、相対的にもろい比較例の粘着剤層が密封樹脂工程の間に高温高圧の樹脂流れによって変形されながら樹脂漏れを容易にした可能性を示唆した。しかしながら、実施例の場合は、粘着剤層の押され現象がなしで粘着剤層にダイやランド部の表面の照度がそのまま陰刻されていることで、粘着剤がリードフレームに密着されて樹脂の漏れがなかったことと確認した。
【0051】
また、熱重量分析装置、時差走査熱量計、動的機械分析装置、湿潤分析機を使用して各々測定した5%重量損失温度、ガラス転移温度、動的弾性率、ガス抜け(outgas)の相対的な値の比較からも分かるように、フェノキシ樹脂とエネルギー線硬化型化合物を使用した実施例の場合が架橋密度がさらに高くて、粘着剤層の強度がより高く、かつ優れた耐熱特性を示していることが確認できた。このような理由で摸写されたダイ接着工程(175℃オーブンで45分滞留)、ワイヤボンディング工程(220℃ホットプレート上で45分滞留)、そして密封樹脂封止工程以後ディデーピング時にリードフレームに粘着剤の残渣が実施例の場合にのみ検出されなかった。実施例の場合、ワイヤボンディング性検査においてワイヤボンディング不良率が約300ppm程度で極めて優れたものと確認された。
【0052】
また、アクリル樹脂を主材とする粘着剤の場合、アクリル樹脂固有の特性で常温では粘着力がなく、高温でだけ粘着力が発現される粘着剤を構成するのに限界があることを確認した。しかしながら、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂の場合、常温では、粘着力がなく、高温でのみ粘着力が具現されるラミネート方式に極めて適していることを確認した。そして、エネルギー線硬化型化合物を介した3次元の相互浸透網状架橋構造を形成しない時には、粘着剤層が押されたことを確認し、耐熱性の不足で上記の摸写熱工程を通過した後にテープをディデーピングしたときには、リードフレームに粘着剤が残渣されていることを確認した。
【0053】
以上のように、本発明は、添付された図面に示された実施例に限って説明されたが、これは、単に例示的なものであり、当業者ならば、本発明の技術的思想及び範囲を逸脱せずとも多様な変形、変更及び均等な他の実施の形態が可能であるということが理解できるであろう。したがって、保護されるべき本発明の技術的思想及び範囲は、特許請求の範囲によって決まらねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱基材と、前記耐熱基材上に粘着剤組成物が塗布された粘着剤層と、を含む電子部品製造用粘着テープであって、
前記粘着剤組成物は、フェノキシ樹脂、熱硬化剤、エネルギー線硬化型アクリル樹脂及び光開始剤を含み、前記粘着剤層は、熱及びエネルギー線により硬化されることを特徴とする、電子部品製造用粘着テープ。
【請求項2】
前記耐熱基材は、厚さが5μm〜100μmであり、ガラス転移温度が110℃〜450℃であり、100℃〜200℃で基材の熱膨張係数が1ppm/℃〜35ppm/℃であり、常温弾性率が1GPa〜10GPaであることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【請求項3】
前記フェノキシ樹脂は、フェノキシ樹脂又は変性フェノキシ樹脂であり、重量平均分子量が1,000〜500,000であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【請求項4】
前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、少なくとも一つ以上の炭素二重結合を分子内に有していることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層のステンレススチール(STS)材質に対する常温粘着力が0〜1gf/50mmであることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤組成物のガラス転移温度は、80℃〜150℃であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品製造用粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤組成物は、前記フェノキシ樹脂100重量部に対して前記熱硬化剤を5〜20重量部及び前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂を5〜30重量部含み、前記光開始剤を、前記エネルギー線硬化型アクリル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子部品製造用粘着テープ。

【公表番号】特表2012−504698(P2012−504698A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530923(P2011−530923)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001150
【国際公開番号】WO2010/101324
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(501380081)東レ先端素材株式会社 (22)
【Fターム(参考)】