説明

電子部品

【課題】端子間の間隔が狭まっても、カシメによって絶縁基板に固定された端子間の絶縁性を確保すること。
【解決手段】抵抗体パターン41及び集電体パターン42が形成された絶縁基板6と、絶縁基板6にカシメ付けられ、抵抗体パターン41及び集電体パターン42に導通する複数の端子7と、絶縁基板6と一体化され、複数の端子7と絶縁基板6との複数のカシメ部46を埋設する絶縁ケース2と、抵抗体パターン41上及び集電体パターン42上を摺動する摺動子8とを備え、絶縁ケース2には、隣接するカシメ部46間の溶融樹脂の流れを規制することで、カシメ部46間を仕切る溝部14が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、特に、スライド式の可変抵抗器として使用される電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品として、表面に導電体パターンが形成された長尺状の絶縁基板を、インサート成形によりハウジングと一体化した可変抵抗器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この可変抵抗器は、絶縁基板の延在方向に沿って抵抗体パターンと集電体パターンとが並列に形成されており、各パターンの両端部に端子がカシメ付けられている。このカシメ部は、絶縁基板の端部を包むハウジングの成形樹脂により覆われている。
【0003】
また、ハウジングには、摺動子を有するスライダが絶縁基板の延在方向にスライド可能に取り付けられる。スライダに設けられた摺動子は、スライダのスライド動作に応じて、抵抗体パターン上で一部の接点部を摺動させ、集電体パターン上で残りの接点部を摺動させる。可変抵抗器では、抵抗体パターンと集電体パターンとが摺動子を介して導通されるため、スライダのスライド位置に応じて抵抗値が可変される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−1689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電子機器の小型化に伴い、電子部品の小型化(細型化)が望まれている。上記したような特許文献1に記載の可変抵抗器が小型化されると、絶縁基板に対して端子のカシメを行うカシメ位置の間隔が狭められる。この結果、インサート成形時に、端子のカシメによって発生したメッキカスやバリが溶融樹脂に流されて、端子間の絶縁抵抗を低下させ、最悪の場合には端子間が短絡するおそれがある。これら不具合を回避するためには、絶縁検査を行う必要があった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、端子間の間隔が狭まっても、カシメによって絶縁基板に固定された端子間の絶縁性を確保することができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品は、複数の導電パターンが形成された絶縁基板と、前記絶縁基板にカシメ付けられ、前記各導電パターンに導通する複数の端子と、前記絶縁基板と一体化され、前記複数の端子と前記絶縁基板との複数のカシメ部を埋設する絶縁ケースと、前記複数の導電パターン上を摺動する摺動子とを備え、前記絶縁ケースには、隣接する前記複数のカシメ部の間を仕切る溝部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、絶縁基板に絶縁ケースが一体形成される際に、隣接するカシメ部間の溶融樹脂の流れを規制することで、カシメ部間を仕切る溝部が形成される。よって、端子のカシメによって発生したメッキカスやバリが隣接する端子間で絶縁ケースを形成する溶融樹脂に流されることがなく、端子間の絶縁性が低下することがない。したがって、電子部品の小型化により端子間の間隔が狭まっても、隣接する端子間の絶縁性を確保することができる。
【0009】
また本発明の上記電子部品において、前記溝部の延在方向の少なくとも一端側が開放されてもよい。
【0010】
この構成によれば、隣接する端子間における溶融樹脂の流動が効果的に抑えられるため、隣接する端子間の絶縁性をより確実に確保できる。
【0011】
また本発明の上記電子部品において、前記複数の導電パターンは、前記絶縁基板の一面に形成された抵抗体パターン及び集電体パターンであり、前記摺動子の摺動位置に応じて抵抗値が可変されてもよい。
【0012】
この構成によれば、隣接する端子間の絶縁性を確保できる小型の電子部品を、可変抵抗器として機能させることができる。
【0013】
また本発明の上記電子部品において、前記絶縁基板が、長尺形状をなし、前記抵抗体パターン及び前記集電体パターンが、前記絶縁基板の長手方向に沿って並列に延び、前記摺動子が、前記抵抗体パターン及び前記集電体パターン上を直線的に摺動し、前記複数の端子が、表面実装用の端子であり、前記絶縁基板の長手方向の両端部に設けられてもよい。
【0014】
この構成によれば、電子部品を長尺状に形成することができる。また、表面実装用の端子により、小型の電子機器への実装を容易とすることができる。
【0015】
また本発明の上記電子部品において、前記複数の端子は、前記絶縁基板の長手方向に沿って延在し、前記絶縁基板を補強する補強部をそれぞれ有し、前記補強部が、前記絶縁基板を介して前記抵抗体パターンあるいは前記集電体パターンに対向するように、前記絶縁基板の他面側に設けられてもよい。
【0016】
この構成によれば、補強部により長尺状の絶縁基板を補強できると共に、半田付け時のリフロー熱による絶縁基板の反りを防止することができる。また、複数の端子が絶縁基板を補強するため、絶縁基板の反り防止用に別途補強板を設ける必要がなく、コストを低減することができる。また、補強部が、絶縁基板を介して抵抗体パターンあるいは集電体パターンと対向するように延在して設けられることから、リフロー熱等に伴う抵抗体パターンと集電体パターンの反りをより確実に防止することができる。このため、これらのパターン上を摺動する摺動子との接触安定性を確保して信頼性の高い可変抵抗器(電子部品)とすることができる。
【0017】
また本発明の上記電子部品において、前記複数の端子は、前記抵抗体パターンの両端部に導通する端子と、前記集電体パターンの一端部に導通する端子と、前記絶縁基板における前記集電体パターンの他端側に位置するダミー端子とからなってもよい。
【0018】
この構成によれば、絶縁基板が長尺状に形成されていても、電子部品をバランスよく電子機器に実装することができる。
【0019】
また本発明の上記電子部品において、前記絶縁基板における前記集電体パターンの他端側には、ダミーパターンが形成されており、前記ダミーパターン、前記抵抗体パターンの両端部、前記集電体パターンの一端部は、同一の膜構造よって形成され、前記ダミー端子は、前記ダミーパターンに導通するように前記絶縁基板にカシメ付けられてもよい。
【0020】
この構成によれば、各パターンの膜厚が略一致されるため、複数の端子が絶縁基板に対してカシメ付けられる場合に、カシメ強度を同一にすることができる。したがって、一部の端子が他の端子に対して不十分にカシメ付けられることがなく、絶縁基板に対して一部の端子だけが緩く取り付けられることがない。よって、電子部品の電子機器に対する実装精度の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子部品の小型化により端子間の間隔が狭まっても、カシメによって絶縁基板に固定された端子間の絶縁性を確保することができる。また、隣接する端子間の絶縁検査を省くことができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、可変抵抗器の斜視図である。
【図2】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、可変抵抗器の分解斜視図である。
【図3】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、絶縁基板の斜視図である。
【図4】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、絶縁基板に対する端子のカシメ付けの説明図である。
【図5】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、絶縁ケースの溝部の成形方法の説明図である。
【図6】本発明に係る可変抵抗器の実施の形態を示す図であり、可変抵抗器の動作説明図である。
【図7】本発明に係る可変抵抗器の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明の電子部品をスライド式の可変抵抗器に適用する場合について説明する。しかしながら、本発明に係る電子部品は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。図1は、本発明の実施の形態に係る可変抵抗器の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る可変抵抗器の分解斜視図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、可変抵抗器1は、電子機器等の図示しない基板に取り付けて使用されるものであり、上面視長尺状の絶縁ケース2と、絶縁ケース2に対して上方から装着されるカバー3とを備えている。可変抵抗器1は、絶縁ケース2にカバー3が装着されることで、長手方向に沿う一側面を開口した箱型に形成される。絶縁ケース2及びカバー3内には、開口19から操作部32を突出させた状態で、長手方向にスライドする摺動子8が収容される。
【0025】
絶縁ケース2は、絶縁樹脂により上面及び上面側における短手方向の両側面を開放して形成されており、インサート成形により長尺状の絶縁基板6と一体化される。絶縁基板6は、表面に長手方向に沿って抵抗体パターン41及び集電体パターン42が並列に形成されている。また、絶縁基板6の四隅には、それぞれ端子7がカシメ付けられている。絶縁基板6は、複数の端子7と共に、絶縁ケース2の底壁部11に埋設されている。このとき、絶縁基板6の上面は、周縁部及び複数の端子7のカシメ部46(図3参照)を除いて、絶縁ケース2から露出される。
【0026】
カシメ部46は、絶縁ケース2の長手方向の両端部に位置し、一対の側壁部12の内面側に設けられた埋設部13によって覆われている。埋設部13には、短手方向において隣接する端子7間を仕切る溝部14が設けられている。溝部14は、絶縁基板6(絶縁ケース2)の長手方向に沿って一対の側壁部12からケース内側に向かって延在し、側壁部12側とは逆側の端部が開放されている。この溝部14は、詳細は後述するが、絶縁ケース2のインサート成形時に、金型等によって隣接するカシメ部46間の溶融樹脂の流れを規制することで形成される。なお、溝部14内に位置する絶縁基板6の上面は、この溝部14から露出している。
【0027】
一対の側壁部12の短手方向の両端部には、カバー3を係止する係止段部15が外面を窪ませて形成され、絶縁ケース2の四隅においてカバー3を固定する。一対の側壁部12の内側面は、スライド部材4のスライドを規制する規制面16となっており、スライド部材4に当接してスライド範囲を規定する。また、一対の側壁部12からは、絶縁基板6にカシメ付けられた複数の端子7が外部に向かって延出される。
【0028】
カバー3は、金属板材を折り曲げて形成されており、絶縁ケース2の上部に装着される。カバー3は、上面視略長方形状の上板部21と、上板部21の四辺から下方に折り曲げられた側板部22、23とを有している。カバー3の長手方向に位置する各側板部22には、一対の係止片24が形成されており、係止片24が絶縁ケース2の四隅に形成された係止段部15に係止されてカバー3が絶縁ケース2の上部に装着される。また、カバー3の短手方向に位置する一対の側板部23は、一方が絶縁ケース2の一側面を覆い、他方が絶縁ケース2の一側面に開口19を形成する。
【0029】
スライド部材4は、絶縁樹脂により形成され、上面視矩形状のスライド本体31と、スライド本体31の一側面に連なる操作部32とを有している。スライド本体31の下面には、絶縁基板6の抵抗体パターン41及び集電体パターン42に摺接する摺動子8が取り付けられている。また、スライド本体31の上面の四隅には、カバー3の上板部21に当接する凸部33が設けられている。スライド本体31では、この複数の凸部33と上板部21とが当接するため、スライド本体31に多少の寸法誤差が生じていても、スライド本体31における上板部21との当接箇所を明確にできる。このため、スライド部材4の寸法管理が容易となる。
【0030】
また、スライド本体31は、この複数の凸部33により上板部21との間に隙間が設けられる。よって、スライド本体31の上面にグリスが塗布される際に、余分なグリスが隙間に溜められるため、グリスが切れにくく、スライド部材4の操作性を長時間にわたって安定させることができる。操作部32は、カバー3及び絶縁ケース2によって形成された開口19を介して、ケース外に延出される。操作部32の下面には、図示しない摘み等が取り付けられる際のガイドあるいは位置決め部として機能するガイド突起34が設けられている。スライド部材4は、カバー3の短手方向に対向する側板部23によって、長手方向のスライド動作がガイドされる。
【0031】
摺動子8は、リン青銅等の導電性の金属板材を折り曲げて形成されており、スライド本体31に取り付けられる取付板部36と、取付板部36に連なり抵抗体パターン41上及び集電体パターン42上を摺動する一対の摺動接点部37とを有している。取付板部36は、スライド方向における一端側が、抵抗体パターン41及び集電体パターン42に対応して2股に分かれている。一対の摺動接点部37は、取付板部36の2股部分からスライド方向における他端側にC字状に折り返されて取付板部36の裏面に対向し、この折り返し部分を基端側として底壁部11側に向けて斜めに延在する。
【0032】
すなわち、一対の摺動接点部37は、折り返し部分を基端とした片持ちバネとなっており、抵抗体パターン41及び集電体パターン42に対して弾性接触する。この場合、一対の摺動接点部37は、自由端側から基端側に亘って2股に切り欠かれており、抵抗体パターン41及び集電体パターン42に対して2重に接触して接触信頼性が向上される。このように、抵抗体パターン41及び集電体パターン42は、摺動子8を介して導通されるため、スライド部材4のスライド位置に応じて可変抵抗器1の抵抗値が可変される。
【0033】
また、一対の摺動接点部37の進行方向に位置する埋設部13の正面部分17は、絶縁ケース2の中央に向かって薄厚となるように曲面状に傾斜している。このため、スライド部材4が、一対の側壁部12に当接されても、一対の摺動接点部37の自由端と埋設部13の正面部分17との接触が回避される。
【0034】
図3を参照して、複数の端子をカシメ付けした絶縁基板について詳細に説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る絶縁基板の斜視図である。なお、図3において、(a)が絶縁基板を上面からみた斜視図、(b)が絶縁基板を背面からみた斜視図をそれぞれ示す。
【0035】
図3(a)に示すように、絶縁基板6は、絶縁樹脂により、スライド部材4のスライド方向に延在する上面視略長方形状に形成されている。絶縁基板6の一面(表面)上には、抵抗体パターン41、集電体パターン42、ダミーパターン43が形成されている。抵抗体パターン41は、絶縁基板6上に印刷されたカーボン層により形成されている。抵抗体パターン41の両端の電極44は、絶縁基板6上に印刷された銀層上にさらにカーボン層を印刷して形成される。集電体パターン42は、絶縁基板6上に印刷された銀層上に保護用のカーボン層を印刷して形成される。ダミーパターン43は、集電体パターン42と同様に銀層と保護用のカーボン層の2層構造となっている。すなわち、抵抗体パターン41の両端の電極44と、集電体パターン42と、ダミーパターン43とは、いずれも銀層の上にカーボン層が形成された同じ膜構造となっている。
【0036】
抵抗体パターン41は、絶縁基板6の長尺方向に沿って、その両端部に亘って延在する。集電体パターン42は、絶縁基板6の長尺方向に沿って、その一端部から他端部の手前まで延在する。ダミーパターン43は、集電体パターン42の延長上において、絶縁基板6の長手方向の他端部に設けられる。抵抗体パターン41の両端部、集電体パターン42の一端部、ダミーパターン43には、絶縁基板6の四隅にカシメ付けられた端子7a−7dが接続される。各端子7a−7dは、電子機器の基板(図示せず)に載置されて半田付けにより取り付けられる表面実装用の端子である。
【0037】
抵抗体パターン41は、端子7aを介して電子機器の基板から電源電圧が入力され、端子7bを介して電子機器の基板のグランドに接地される。集電体パターン42は、端子7cを介して電子機器の基板の信号出力回路に接続される。ダミーパターン43は、端子7dを介して電子機器の基板のダミーランド部に半田付けされることにより、機械的には取り付けられるが、ダミーランド部が信号出力回路と絶縁されており、電気的に接続されない。すなわち、ダミーパターン43の端子7dは、電気的な端子として機能しないダミー端子となっている。このダミー端子7dにより、可変抵抗器1を電子機器等の基板に対してバランスよく取り付けることが可能となる。なお、ダミーランド部がグラウンド等に接続されていてもよい。
【0038】
可変抵抗器1の半田付け時には、絶縁基板6及び絶縁ケース2が長尺状に形成されているため、リフロー熱による僅かな反りによって取付精度が大きな影響を受ける。このため、図3(b)に示すように、各端子7a−7dは、絶縁基板6の他面側である裏面側において、カシメ部46から絶縁基板6の中央に向かって延びる板状の補強部47を有している。補強部47は、絶縁ケース2に埋設され、絶縁基板6及び絶縁ケース2の剛性を高めて半田付け時の反りを抑制する。このとき、絶縁基板6及び絶縁ケース2は、短手方向では端子7が隣接して配置され、長手方向では中央付近において補強部47が互いに接近するように延在している。よって、絶縁基板6及び絶縁ケース2の長手方向及び短手方向が十分に補強される。また、絶縁基板6の裏面に延在する補強部47は、絶縁基板6を介して抵抗体パターン41あるいは集電体パターン42と対向するように設けられている。そのため、抵抗体パターン41及び集電体パターン42の反りの発生をより効果的に防止できるものとなり、両パターン41、42と摺接する摺動子8の摺動接点部37との接触が安定し、信頼性と寿命を向上させることができる。なお、端子7a−7dは、金属板材により形成されており、各端子7a−7dは、それぞれ補強部47を含む基板と、この基板から絶縁基板6の長手方向の外側に延出された半田付け部(延出部)と、この半田付け部寄りの基部から立設された筒状部とにより構成されている。そして筒状部で、絶縁基板6の貫通孔に挿通され、筒状部の先端が電極44、集電体パターン42あるいはダミーパターン43上にカシメ付けられることにより、その外周側に広げられてカシメ部46となり、各端子7a−7dが絶縁基板6に固定されている。
【0039】
このように、絶縁基板6にダミー端子7dを設けることで、絶縁基板6の両端部に端子7が均等に配置され、各端子7a−7dの補強部47によって絶縁基板6及び絶縁ケース2の反りが効果的に抑制される。よって、可変抵抗器1が細長形状に形成される場合でも、リフロー熱による反りが抑えられ、電子機器等の基板に対して精度よく取り付けることができる。また、絶縁基板6が、端子7a−7dにより補強されるため、別途補強板を設ける必要がなく、コストを低減できる。
【0040】
図4を参照して、絶縁基板に対する端子のカシメ付けについて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る絶縁基板に対する端子のカシメ付けの説明図である。なお、図4において、(a)が基板にダミーパターンが形成される本実施の形態、(b)が基板にダミーパターンが形成されない比較例をそれぞれ示す。なお、比較例においては、同一の用語については同一の符号を付して説明する。
【0041】
図4(a)に示す本実施の形態では、絶縁基板6の他端側に抵抗体パターン41の電極44及びダミーパターン43が形成されている。端子7bは電極44を介して絶縁基板6にカシメ付けられ、ダミー端子7dはダミーパターン43を介して絶縁基板6にカシメ付けられる。この場合、ダミーパターン43は、電極44及び集電体パターン42と同様に2層構造となっており、電極44及び集電体パターン42と同一の膜厚を有している。絶縁基板6に対する端子7のカシメ付けは、絶縁基板6の一端側と他端側とで2つの端子7が同時に実施される。よって、電極44とダミーパターン43とが同じ膜厚を有するため、端子7b及びダミー端子7dが同一のカシメ強度で絶縁基板6に取り付けられる。
【0042】
一方、図4(b)に示す比較例では、絶縁基板6の他端側に抵抗体パターン41の電極44のみが形成され、ダミーパターン43が形成されていない。端子7bは電極44を介して絶縁基板6にカシメ付けられ、ダミー端子7dは絶縁基板6に直にカシメ付けられる。よって、ダミー端子7dは、端子7bに対して弱いカシメ強度で絶縁基板6に取り付けられる。このとき、ダミー端子7dが絶縁基板6に対して緩く取り付けられることで、絶縁基板6に対する端子7の取付位置にズレが生じる場合がある。上記したように、可変抵抗器1が細長形状であるため、端子7の僅かな位置ズレによって取付精度が大きな影響を受け、最悪の場合には取付不良になるおそれがある。
【0043】
このように、本実施の形態に係る可変抵抗器1では、絶縁基板6にダミーパターン43を設けることにより、端子7bとダミー端子7dとを同一のカシメ強度で絶縁基板6に取り付けることができる。また、絶縁基板6の一端側においても、抵抗体パターン41の電極44と集電体パターン42とが同一の厚みで形成される。このため、端子7a、7cを同一のカシメ強度で絶縁基板6に対して取り付けることができる。この結果、絶縁基板6に対する端子7の取付位置にズレが生じることがなく、細長形状の可変抵抗器1を電子機器等の基板に対して精度よく取り付けることができる。
【0044】
図5を参照して、絶縁ケースの溝部の成形方法について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る絶縁ケースの溝部の成形方法の説明図である。図5において、(a)が溶融樹脂の充填前の状態、(b)が溶融樹脂の充填後の状態、(c)が絶縁ケースを金型から外した状態をそれぞれ示す。
【0045】
図5(a)に示すように、上型51及び下型52を上下に重ね合わせることにより、絶縁ケース2を成形するための空洞部53が形成される。この空洞部53内には、複数の端子7をカシメ付けした絶縁基板6が配置されている。上型51の下面54には、空洞部53の上半部において絶縁基板6の隣接する端子7間を縦に仕切る仕切部55が設けられている。仕切部55は、絶縁基板6に対して強く当接し、隣接する端子7間を液密に仕切っている。
【0046】
次に、図5(b)に示すように、空洞部53に溶融した絶縁樹脂が充填されると、空洞部53の上半部において端子7(カシメ部46)間の溶融樹脂の流動が仕切部55によって遮断される。このため、カシメ時に生じる端子7のメッキカスやバリが、溶融樹脂によって端子7間で流されることがない。そして、図5(c)に示すように、絶縁ケース2が絶縁基板6と一体化されると共に、端子7間に絶縁基板6の表面が露出した溝部14が形成される。
【0047】
このように、溝部14の形成によってカシメ時のメッキカスやバリの流動が抑制されるため、端子7間の絶縁抵抗が低下することがない。また、溝部14は、側壁部12からケース内側に向かって延び、側壁部12の他端側が開放されている(図2参照)。よって、溶融樹脂の流動が効果的に抑えられている。この場合、図5(c)に示すように、カシメ部46の鍔状部分の間隔が0.3mm以上、溝部14の溝幅が0.15mm以上であることが好ましい。
【0048】
図6を参照して、可変抵抗器の動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る可変抵抗器の動作説明図である。なお、図6においては、説明の便宜上、カバー3を省略している。
【0049】
図6(a)に示すように、スライド部材4が図示下側に位置している場合には、摺動子8の一対の摺動接点部37が抵抗体パターン41及び集電体パターン42の一端側に接触している。この状態から、操作部32を用いてスライド部材4を図示上側にスライド動作させると、一対の摺動接点部37が抵抗体パターン41及び集電体パターン42上を摺動する。この場合、抵抗体パターン41及び集電体パターン42は、摺動子8を介して導通されており、スライド部材4の位置に応じて電源電圧に対する出力電圧(抵抗値)が可変される。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、スライド部材4が図示上側までスライド動作されると、絶縁ケース2の側壁部12によってスライド動作が停止され抵抗値が最大に設定される。このように、可変抵抗器1は、スライド部材4のスライド動作に応じて抵抗値が可変され、電子機器に対してスライド動作に応じた信号(出力電圧)を出力することが可能となっている。なお、スライド動作時において、スライド部材4は、スライド本体31がカバー3の一対の側板部23によって長手方向にガイドされるため、一対の摺動接点部37が抵抗体パターン41及び集電体パターン42から外れることがない。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係る可変抵抗器1によれば、絶縁基板6に絶縁ケース2がインサート成形により一体形成される際に、隣接するカシメ部46間の溶融樹脂の流れを規制することで、カシメ部46間を仕切る溝部14が形成される。よって、端子7のカシメによって発生したメッキカスやバリが隣接する端子7間で溶融樹脂に流されることがなく、端子7間の絶縁性が低下することがない。したがって、電子部品の小型化により端子7間の間隔が狭まっても、隣接する端子7間の絶縁性を確保することができる。
【0052】
なお、上記した実施の形態においては、スライド部材の操作部が、カバーの側面開口を介して側方に突出する構成としたが、この構成に限定されるものではない。図7に示すように、カバー3の上板部21に開口19を形成して、操作部32をスライド本体31の上面から開口19を介して上方に突出するように形成してもよい。この構成により、カバー3の上板部21に対して垂直方向に操作部32を設けることが可能となる。この場合、カバー3及びスライド本体31に対する操作部32の取付位置のみが、上記した実施の形態と相違する。
【0053】
また、上記した実施の形態においては、本発明をスライド部材が直線的にスライドするスライド式の可変抵抗器に適用したが、ロータリー式の可変抵抗器に適用することも可能である。
【0054】
また、上記した実施の形態においては、抵抗体パターン及び集電体パターンからなる導電パターンにより、電子部品を可変抵抗器として機能させる構成としたが、この構成に限定されない。A相信号を得るための第1の導電パターンと、B相信号を得るための第2の導電パターンと、コモンパターンとからなる導電パターンにより、電子部品をエンコーダとして機能させる構成としてもよい。この場合、摺動子に第1、第2の導電パターン及びコモンパターンに対応して摺動接点部が3つ設けられる。
【0055】
また、上記した実施の形態においては、埋設部に設けられた溝部が絶縁ケースの側壁部からケース内側に向かって延在する構成としたが、この構成に限定されない。溝部は、絶縁ケースの成形時に、隣接する端子間の溶融樹脂の流動が抑制されて形成されればよく、例えば、破線状に断続的に延在する構成としてもよい。
【0056】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、端子間の間隔が狭まっても、カシメによって絶縁基板に固定された端子間の絶縁性を確保することができるという効果を有し、特に、スライド式の可変抵抗器として使用される電子部品に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 可変抵抗器(電子部品)
2 絶縁ケース
3 カバー
4 スライド部材
6 絶縁基板
7 端子
7d ダミー端子
8 摺動子
13 埋設部
14 溝部
31 スライド本体
32 操作部
41 抵抗体パターン(導電パターン)
42 集電体パターン(導電パターン)
43 ダミーパターン(導電パターン)
44 電極
46 カシメ部
47 補強部
51 上型
52 下型
53 空洞部
54 下面
55 仕切部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電パターンが形成された絶縁基板と、
前記絶縁基板にカシメ付けられ、前記各導電パターンに導通する複数の端子と、
前記絶縁基板と一体化され、前記複数の端子と前記絶縁基板との複数のカシメ部を埋設する絶縁ケースと、
前記複数の導電パターン上を摺動する摺動子とを備え、
前記絶縁ケースには、隣接する前記複数のカシメ部の間を仕切る溝部が設けられたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記溝部の延在方向の少なくとも一端側が開放されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数の導電パターンは、前記絶縁基板の一面に形成された抵抗体パターン及び集電体パターンであり、
前記摺動子の摺動位置に応じて抵抗値が可変されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記絶縁基板が、長尺形状をなし、
前記抵抗体パターン及び前記集電体パターンが、前記絶縁基板の長手方向に沿って並列に延び、
前記摺動子が、前記抵抗体パターン及び前記集電体パターン上を直線的に摺動し、
前記複数の端子が、表面実装用の端子であり、前記絶縁基板の長手方向の両端部に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の端子は、前記絶縁基板の長手方向に沿って延在し、前記絶縁基板を補強する補強部をそれぞれ有し、
前記補強部が、前記絶縁基板を介して前記抵抗体パターンあるいは前記集電体パターンに対向するように、前記絶縁基板の他面側に設けられたことを特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記複数の端子は、前記抵抗体パターンの両端部に導通する端子と、前記集電体パターンの一端部に導通する端子と、前記絶縁基板における前記集電体パターンの他端側に位置するダミー端子とからなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁基板における前記集電体パターンの他端側には、ダミーパターンが形成されており、
前記ダミーパターン、前記抵抗体パターンの両端部、前記集電体パターンの一端部は、同一の膜構造よって形成され、
前記ダミー端子は、前記ダミーパターンに導通するように前記絶縁基板にカシメ付けられたことを特徴とする請求項6に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−151165(P2012−151165A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6727(P2011−6727)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】