説明

電子部品

【課題】静電アクチュエータと当該静電アクチュエータを駆動するための駆動集積回路を縦方向に集積することによって実装面積を小さくする。
【解決手段】
第1部材32には静電アクチュエータ46を設けている。第2部材33には、静電アクチュエータ46を駆動するための駆動用IC72を設けている。第1部材32と第2部材33は、静電アクチュエータ46を設けた面と駆動用IC72を設けた面を対向させて、外周部の接合部35と接合部36で接合されている。第1部材32、第2部材33及び接合部35、36によって構成された空隙部34内には、静電アクチュエータ46と駆動用IC72が気密的に封止されている。駆動用IC72に用いられているコンデンサ75は、コンデンサ75に発生する電界の向きと静電アクチュエータ46を駆動するための電界の向きとが交差、好ましくは直交するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品に関し、具体的には、静電アクチュエータと当該アクチュエータ駆動用の駆動集積回路とが一体化されたスイッチなどの電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
静電力を利用して接点を開閉するMEMSスイッチとしては、図1に示すものがある(特許文献1)。このMEMSスイッチは、アクチュエータ22と駆動用IC23とからなる。アクチュエータ22は、内部に空洞11が形成された構造部材12、13、14を備え、構造部材12(配線基板)の空洞11に面する面に、互いに離間した2つの信号用接点15a、15bが設けられている。空洞11内には、いずれの構造部材12、13、14とも機械的に連結されていない可動部材16を納めている。可動部材16の、信号用接点15a、15bと対向する面には、金属層17を設けている。
【0003】
また、構造部材12の上面には、静電力により可動部材16を駆動する駆動電極18a、18bが設けられている。同様に、構造部材14にも、静電力により可動部材16を駆動する駆動電極19a、19bが設けられている。
【0004】
駆動用IC23は、切替器20と駆動用電源21からなる。各一方の駆動電極18a、19aは、切替器20を介して駆動用電源21に接続されており、各他方の駆動電極18b、19bは接地されている。
【0005】
このMEMSスイッチでは、切替器20を切り換えて、駆動用電源21からの電圧を駆動電極18aに印加すると、金属層17と駆動電極18a、18bとの間に発生する静電吸引力によって可動部材16が駆動電極18a、18bに吸着される。その結果、信号用接点15a、15bは金属層17によって導通しスイッチがONになる。反対に、切替器20を切り換えて、駆動用電源21からの電圧を駆動電極19aに印加すると、金属層17と駆動電極19a、19bとの間に発生する静電吸引力によって可動部材16が構造部材14に吸着される。その結果、金属層17が信号用接点15a、15bから離れてスイッチがOFFになる。
【0006】
しかし、このようなMEMSスイッチでは、駆動用電源21と切替器20(駆動用IC23)は、構造部材12、13、14をパッケージとして構成されたアクチュエータ22とは別部品となっている。よって、駆動用IC23がアクチュエータ22とは別個に実装されることになり、MEMSスイッチの実装面積が大きくなり、実装工数も増える。また、アクチュエータ22と駆動用IC23が別部品となっているので、アクチュエータ22と駆動用IC23を結ぶ配線でノイズを受信しやすくなり、ノイズの影響が大きくなる。
【0007】
また、特許文献2に開示された半導体装置では、微小電子機械部品(MEMSチップ)と電子部品(駆動用IC)とを同一基板上に実装している。しかし、微小電子機械部品と電子部品を同一基板上に並べて実装しているので、実装面積が大きくなり、また実装工数も多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−70950号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2008−135594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、静電アクチュエータと当該静電アクチュエータを駆動するための駆動集積回路を縦方向に集積することによって実装面積を小さくした電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電子部品は、静電アクチュエータを設けた第1部材、前記静電アクチュエータを駆動するための駆動集積回路を設けた第2部材、前記第1部材の静電アクチュエータを設けた面と前記第2部材の前記駆動集積回路を設けた面を互いに向かい合わせた状態で前記第1部材と前記第2部材を接合する接合部、及び、前記第1部材と前記第2部材と前記接合部によって構成された、前記静電アクチュエータ及び前記駆動集積回路を気密的に封止するための空隙部を備えたものである。
【0011】
本発明の電子部品にあっては、静電アクチュエータを設けた第1部材と駆動集積回路を設けた第2部材とを互いに向かい合わせた状態で両部材を接合部により接合させているので、駆動集積回路と静電アクチュエータを縦集積して一体化することができ、当該電子部品を小型化して実装面積を小さくすることができる。また、駆動集積回路と静電アクチュエータを一体化することで両者の配線長を短くでき、電子部品におけるノイズの影響を低減することができる。さらに、静電アクチュエータを設けた第1部材と駆動集積回路を設けた第2部材とを対向させて両部材を接合部で接合することによって電子部品を構成しているので、電子部品の製造が容易になる。
【0012】
本発明にかかる電子部品のある実施態様においては、前記駆動集積回路がコンデンサを備え、前記コンデンサは、前記コンデンサに発生する電界の向きと前記静電アクチュエータを駆動するための電界の向きとが交差するように配置されている。かかる実施態様では、コンデンサによってコンデンサ外部に生じる電界と静電アクチュエータを駆動する電界の方向が平行にならないので、コンデンサの電界によって静電アクチュエータが影響を受けにくくなり、静電アクチュエータの動作をより安定させることが可能になる。
【0013】
特に、前記コンデンサに発生する電界の向きと前記静電アクチュエータを駆動するための電界の向きとが直交するようにすれば、コンデンサの電界によって静電アクチュエータが影響をより受けにくくなり、静電アクチュエータの動作が安定する。
【0014】
また、前記コンデンサは、前記静電アクチュエータよりも大きな静電容量を有していることが望ましい。かかる実施態様では、コンデンサが静電アクチュエータよりも大きな静電容量を有しているので、あらかじめ、電荷を蓄えておくことで、昇圧に掛かる時間と関係なく、素早く静電アクチュエータを駆動することができる。
【0015】
本発明にかかる別な実施態様においては、前記駆動集積回路が、入力電圧を昇圧して前記静電アクチュエータに印加するDC−DCコンバータを含んでいる。かかる実施態様によれば、携帯用機器においてバッテリーの電圧を昇圧して静電アクチュエータを駆動することができ、携帯用機器への適用に望ましい。特に、前記駆動集積回路は、チャージポンプとコンデンサにより構成することが望ましい。
【0016】
本発明にかかる電子部品のさらに別な実施態様においては、前記静電アクチュエータ及び前記駆動集積回路が、前記空隙部内に気密的に封止されている。かかる実施態様では、静電アクチュエータと駆動集積回路が、第1部材、第2部材及び接合部によって囲まれた空隙部内に気密的に封止されているので、電子部品の耐久性と耐候性が向上する。
【0017】
本発明にかかるさらに別な実施態様においては、第1部材と第2部材のうち少なくとも一方に設けた信号伝送用の線路、及び、前記静電アクチュエータの動作により、前記線路に設けた接点間を開閉する可動接点をさらに備えている。かかる実施態様によれば、静電アクチュエータによって可動接点を動かし、信号伝送用線路の接点間を開閉させることができる。従って、かかる実施態様の電子部品は、スイッチやリレーとして用いることができる。
【0018】
本発明にかかるさらに別な実施態様においては、前記静電アクチュエータ、前記駆動集積回路及び前記線路が、前記空隙部内に気密的に封止されている。かかる実施態様では、静電アクチュエータと駆動集積回路と信号伝送用の線路が、第1部材、第2部材及び接合部によって構成された空隙部内に気密的に封止されているので、電子部品の耐久性と耐候性が向上する。特に、空隙部内から酸素や硫黄などを排除しておけば、線路に設けた接点や可動接点の性能変動が起こりにくくなる。
【0019】
本発明にかかるさらに別な実施態様においては、前記駆動集積回路が、前記線路と向かい合う領域から外れた領域に設けられている。かかる実施態様によれば、前記線路を伝送される信号が駆動集積回路の電気的な影響を受けにくくなり、高周波信号への影響を低減できる。
【0020】
本発明にかかるさらに別な実施態様においては、前記駆動集積回路と前記線路とを隔てて前記駆動集積回路と前記線路の間に接地層を設けている。かかる実施態様によれば、前記線路を伝送される信号が駆動集積回路の電気的な影響を受けにくくなり、高周波信号への影響を低減できる。
【0021】
本発明にかかるさらに別な実施態様においては、前記駆動集積回路が、サージ電流をグランドに逃がすための回路を備えている。かかる実施態様によれば、静電アクチュエータがサージ電流によって損傷するのを防止できる。
【0022】
本発明にかかる電子部品のさらに別な実施態様においては、前記第1部材の、前記第2部材と向かい合う面に凹部を形成し、前記凹部の外側に位置し、かつ、前記第2部材と向かい合う前記第1部材の面を含む仮想平面よりも前記第2部材側へ飛び出ないようにして、前記凹部内に前記静電アクチュエータを設けている。かかる実施態様によれば、静電アクチュエータを第2部材から遠ざけることができる、特に第2部材に設けられたコンデンサから遠ざけることができるので、静電アクチュエータが第2部材(特に、コンデンサ)から電気的な影響をより受けにくくなる。
【0023】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来例のMEMSスイッチの構造を説明する断面図である。
【図2】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの構造を模式的に表した断面図である。
【図3】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの構造を模式的に表した別な断面における概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチに用いる第1部材の平面図である。
【図5】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチに用いる第2部材の下面図である。
【図6】図4に示した第1部材に形成された一方の静電アクチュエータを示す平面図である。
【図7】図4に示した第1部材に形成された一方の静電アクチュエータを示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの駆動用ICに用いられているチャージポンプの回路図である。
【図9】(A)及び(B)は、接合部分又は接続部分の金属共晶結合を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの変形例を模式的に表した断面図である。
【図11】(A)−(C)は、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを構成する第1部材の製造工程を示す概略断面図である。
【図12】(A)−(C)は、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを構成する第1部材の製造工程を示す概略断面図であって、図11(C)に続く工程を示す。
【図13】(A)−(C)は、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを構成する第1部材の製造工程を示す概略断面図であって、図12(C)に続く工程を示す。
【図14】(A)−(C)は、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを構成する第2部材の製造工程を示す概略断面図である。
【図15】(A)及び(B)は、第1部材と第2部材を集積して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを作製する工程を示す概略断面図である。
【図16】(A)及び(B)は、第1部材と第2部材を集積して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを作製する工程を示す概略断面図であって、図17(B)に続く工程を示す。
【図17】(A)及び(B)は、第1部材と第2部材を集積して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを作製する工程を示す概略断面図であって、図18(B)に続く工程を示す。
【図18】(A)及び(B)は、第1部材と第2部材を集積して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを作製する工程を示す概略断面図であって、図19(B)に続く工程を示す。
【図19】第1部材と第2部材を集積して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチを作製する工程を経て作製されたMEMSスイッチの概略断面図である。
【図20】本発明の実施形態2によるMEMSスイッチを表した概略断面図である。
【図21】本発明の実施形態3によるMEMSスイッチを表した概略断面図である。
【図22】本発明の実施形態4によるMEMSスイッチを表した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。
【0026】
(実施形態1の構造)
以下、主として図2−図5を参照して本発明の実施形態1によるMEMSスイッチ(RFリレー)の構造を説明する。図2は本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの概略断面図であって、2つの静電アクチュエータを通過する断面を表す。図3は本発明の実施形態1によるMEMSスイッチの概略断面図であって、駆動用IC(駆動集積回路)とマイクロストリップラインのパッド部を通過する断面を表す。図4は本発明の実施形態1によるMEMSスイッチに用いる第1基板の平面図である。図5は、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチに用いる第2部材の下面図である。なお、本明細書においては、第1部材(ベース基板)又は第2部材(カバー基板)に垂直で、第1部材から第2部材に向かう方向を上といい、第2部材から第1部材に向かう方向を下というものとする。
【0027】
図2及び図3に示すように、空隙部34を挟んで第1部材32と第2部材33を対向させ、接合部によって第1部材32と第2部材33の外周部どうしを接合してMEMSスイッチ31を構成している。すなわち、第1部材32の上面外周部に設けた環状の接合部35と第2部材33の下面外周部に設けた環状の接合部36を接合している。MEMSスイッチ31の空隙部34は、上下を第2部材33と第1部材32に挟まれ、周囲を接合部35、36で囲まれていて、気密的に封止されている。
【0028】
第1部材32は、図4に示すような構造となっている。ベース基板41、たとえばSi基板の上面には凹部42が形成されており、凹部42内の中央部に信号伝送用の3本のマイクロストリップライン(配線パターン部)を設けている。マイクロストリップラインは、第1線路43、第2線路44及び第3線路45によって構成される。第1−第3線路43−45は、SiNなどの絶縁層48(誘電体層)の上に金属配線49を形成することによって構成されている(図3参照)。
【0029】
第1線路43の先端は第1接点43aとなっており、他端にはパッド部43bが設けられている。第2線路44の先端は第2接点44aとなっており、他端にはパッド部44bが設けられている。第3線路45の先端は共通接点45aとなっており、他端にはパッド部45bが設けられている。第1接点43aと第2接点44aは近接して配置されており、第1線路43の先端部と第2線路44の先端部は平行に延びている。第3線路45は、第1線路43及び第2線路44の先端部と平行に延びており、共通接点45aは第1接点43a及び第2接点44aと対向する位置に設けられている。
【0030】
凹部42内において、マイクロストリップラインを設けた領域を挟んでその両側には、それぞれ静電アクチュエータ46、46を設けている。一方の静電アクチュエータ46は、第1接点43a及び共通接点45aと対向する位置に可動接点47aを備えている。この静電アクチュエータ46は可動接点47aを平行移動させることにより、可動接点47aを第1接点43aと共通接点45aに同時に接触させて両接点43a、45a間を閉成する。あるいは、可動接点47aを第1接点43a及び共通接点45aから離して両接点43a、45a間を開離させる。
【0031】
同様に、他方の静電アクチュエータ46は、第2接点44a及び共通接点45aと対向する位置に可動接点47bを備えている。この静電アクチュエータ46は可動接点47bを平行移動させることにより、可動接点47bを第2接点44aと共通接点45aに同時に接触させて両接点44a、45a間を閉成する。あるいは、可動接点47bを第2接点44a及び共通接点45aから離して両接点44a、45a間を開離させる。
【0032】
したがって、第1線路43のパッド部43bと第3線路45のパッド部45bに第1の主回路(図示せず)が接続されていれば、一方の静電アクチュエータ46によって可動接点47aを駆動することによって第1の主回路を開閉できる。また、第2線路44のパッド部44bと第3線路45のパッド部45bに第2の主回路(図示せず)が接続されていれば、他方の静電アクチュエータ46によって可動接点47bを駆動することによって第2の主回路を開閉できる。
【0033】
また、ベース基板41の上面には、凹部42を囲むようにして環状をした接合部35を設けている。接合部35は、金属材料によって形成されている。
【0034】
上記静電アクチュエータ46の構造を図6及び図7に示す。静電アクチュエータ46の構造については、特願2010−055556や特願2010−053056に開示しているので、ここでは簡単に説明する。詳細については、必要であれば、特願2010−055556や特願2010−053056を参照することができる。
【0035】
静電アクチュエータ46は、固定電極部51、可動電極部52、可動バネ53、バネ支持部54からなる。図6、図7に示すように、ベース基板41の上面には複数本の固定電極部51を互いに平行に配置している。固定電極部51は、両側面においてそれぞれ枝電極57を一定ピッチ毎に、かつ左右対称に突設されている。固定電極部51の下面は、絶縁膜58、たとえばSiOを介してベース基板41の上面に接続されている。また、固定電極部51のほぼ中央部にはパッド部59を設けてあり、パッド部59の上面に電極パッド60を有している。
【0036】
可動電極部52は、それぞれの固定電極部51を囲むようにフレーム状に形成する。可動電極部52には、固定電極部51の各枝電極57間へ突出するようにして櫛歯電極61が設けられている。櫛歯電極61は、各固定電極部51を挟んで対称に形成されている。しかも、各櫛歯電極61は、その櫛歯電極61と隣接して可動接点47a、47bに近い側に位置する枝電極57との距離が、当該櫛歯電極61と隣接して可動接点47a、47bから遠い側に位置する枝電極57との距離よりも短くなっている。ただし、櫛歯電極61と枝電極57は可動電極部52が駆動されても接触しないように構成されている。
【0037】
可動電極部52はバネ支持部54に支持された可動バネ53によって保持されており、可動電極部52は、ベース基板41の上面から浮いた状態で水平に保持されている。バネ支持部54は、絶縁膜62を介してベース基板41の上面に固定されている。
【0038】
可動電極部52の前端面からは接点支持部63が突出しており、接点支持部63の上に可動接点47a又は47bが設けられている。
【0039】
後述のように固定電極部51は第2部材33を介してグランドに接続され、可動電極部52には駆動用ICの出力が接続される。駆動用ICによって昇圧された直流電圧が可動電極部52に印加されると、枝電極57と櫛歯電極61の間に発生する静電力によって可動電極部52が平行移動し、可動接点47aが第1接点43aと共通接点45aに接触する(あるいは、可動接点47bが第2接点44aと共通接点45aに接触する)。また、駆動用ICの出力がオフになると、可動バネ53の弾性復帰力によって可動電極部52が後退し、可動接点47aが第1接点43aと共通接点45aから離間する(あるいは、可動接点47bが第2接点44aと共通接点45aから離間する)。
【0040】
第2部材33は、図5に示すような下面の構造を有している。第2部材33は、カバー基板71、たとえばSi基板の下面に駆動集積回路、すなわち駆動用IC72を作製されており、その表面を保護膜73によって覆われている。また、第2部材33の下面の外周部には、金属材料からなる環状をした接合部36を設けている。第2部材33と第1部材32は、第2部材33の駆動用IC72を形成した面と第1部材32の静電アクチュエータ46を形成した面を対向させるようにして、空隙部34を挟んで重ねられる。そして、第2部材33の接合部36と第1部材32の接合部35を気密的に接合させている。この結果、静電アクチュエータ46や駆動用IC72は空隙部34の内部に気密的に封止され、MEMSスイッチ31、すなわち静電アクチュエータ46と駆動用IC72の耐久性や耐腐食性、信頼性が向上する。
【0041】
高周波域での特性を考えると、カバー基板71は、絶縁体(ガラス)や抵抗率の高いSi(たとえば抵抗率が500Ω・cm以上のもの)で作製することが望ましい。また、この空隙部34の内部を真空に保ったり、空隙部34内の空気をNやAr、SFなどの不活性ガスで置換して空隙部34内に不活性ガスを充填したり、空隙部34内にHなどの還元ガスを充填したりしてもよい。
【0042】
駆動用IC72は、バッテリーの電圧を昇圧して静電アクチュエータ46に印加するための昇圧用DC−DCコンバータである。一般にモバイル機器のバッテリー電圧は1〜3ボルトであるが、静電アクチュエータを駆動するためには、数十ボルトから100ボルト程度のより高い電圧が望ましく、バッテリー電圧を駆動用IC72で昇圧して静電アクチュエータ46に印加している。駆動用IC72には、チャージポンプが用いられている。
【0043】
チャージポンプの基本回路(原理)を図8に示す。バッテリー電圧Vbが入力されると、以下のような原理によって昇圧された電圧Voutが静電アクチュエータ46へ出力される。スイッチS1とS4がオンで、かつスイッチS2とS3がオフになったphase1では、図8において細線矢印で示すように電流が流れる。この電流はコンデンサCchgの電圧がバッテリー電圧Vbに等しくなるまでコンデンサCchgを充電する。つぎに、スイッチS1とS4がオフで、かつスイッチS2とS3がオンになったphase2では、図8において太線矢印で示すように電流が流れる。この結果、コンデンサCoutは、入力のバッテリー電圧とコンデンサCchgの電圧が加わった電圧によって充電され、コンデンサCoutの電圧はバッテリー電圧Vbの2倍になる。そして,Phase1に戻ると、コンデンサCchgが充電される一方で、コンデンサCoutは出力Voutへ放電する。このようにスイッチS1−S4をphase1とphase2に交互に切り換えることにより、出力Voutからはバッテリー電圧Vbの2倍の電圧が出力される。さらに、図8のようなチャージポンプを複数段に縦続接続することにより、一層大きな倍率の出力電圧を得ることができる。なお、実際には、チャージポンプは、図8のように機械的なスイッチS1−S4を用いず、オペアンプやダイオードを用いて上記のような動作を実現される。
【0044】
駆動用IC72は、上記のようなチャージポンプを複数段に縦続接続したチャージポンプ回路74と、チャージポンプ回路74で昇圧された電荷を蓄えておくコンデンサ75とからなる。コンデンサ75は、金属材料又は導電材料によって作製されていて図5に拡大して示すような断面を有している。すなわち、コンデンサ75は多数の単位コンデンサ75aによって構成されている。1個の単位コンデンサ75aは、平面視で見たとき、1辺が20−30μm程度のサイズで構成されている。
【0045】
カバー基板71内には、第1導電層78と第2導電層77が上下に対向させて平行に形成されている。さらに、第1導電層78と第2導電層77の中間には、1辺が20−30μmの大きさの矩形状をした電極パッド76が規則的に配列されており、各電極パッド76と第1導電層78とはViaホール79によって電気的に接続されている。個々の単位コンデンサ75aは、対向した電極パッド76と第2導電層77の一部によって構成されており、各単位コンデンサ75aはViaホール79と第1導電層78によって互いに並列に接続されている。
【0046】
このようにして多数の単位コンデンサ75aによってコンデンサ75を構成してあれば、何個かの単位コンデンサ75aで不良が発生しても、駆動用IC42の動作に問題が発生しない。また、単位コンデンサ75aのサイズを1辺が20−30μm程度とすることにより、他のプロセスとのスケールの相違を小さくでき、プロセスの安定度が増す。
【0047】
静電アクチュエータを高速で繰り返し動作させる為には、コンデンサ75に十分な電荷を充電しなければならないので、コンデンサ75は静電アクチュエータ46の静電容量(枝電極57と櫛歯電極61の間の静電容量)に対し十分に大きな静電容量を必要とする。また、高速動作が必要なければ、一時貯蔵のコンデンサ75は必ず必要になるものではない。コンデンサ75を図5のように構成すれば、電極パッド76と第2導電層77の間隔が狭くでき、コンデンサ75の静電容量を大きくすることができる。また、電極パッド76として20−30μmのサイズのものを多数規則的に形成することで、コンデンサ75の製造プロセスを安定化させることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0048】
図5に示すように、チャージポンプ回路74とコンデンサ75は、第2部材33の下面において分離して配置され、電気的に接続されている。駆動用IC72(チャージポンプ回路74、コンデンサ75)は、第2部材33に垂直な方向から見たとき、第1部材32のマイクロストリップライン(第1−第3線路43−45)と重ならないように配置されている。したがって、高周波信号を伝送するためのマイクロストリップラインが駆動用ICの影響を受けにくく、マイクロストリップラインを伝送する信号に駆動用IC72に起因するノイズが発生しにくくなる。
【0049】
また、すべての単位コンデンサ75aの向きは同じ方向に揃えられている。コンデンサ75(単位コンデンサ75a)の電極間に発生する電界の方向(図5のX方向)は、第2部材33に垂直な方向から見て、静電アクチュエータ46に発生する電界の方向(枝電極57と櫛歯電極61を結ぶ方向であって、図4、図6のY方向)と直交するように配置されている。このため、コンデンサ75によってコンデンサ外部に生じる電界と静電アクチュエータ46を駆動する電界の方向が直交することになり、コンデンサ75の電界によって静電アクチュエータ46が影響を受けにくくなる(可動電極部52が動くおそれが小さくなる)。
【0050】
第2部材33の下面に設けた3つの接続電極43d、44d、45dは、図3に示すように、それぞれ第1部材32に設けられた第1線路43のパッド部43b、第2線路44のパッド部44b、第3線路45のパッド部45bにそれぞれ接続される。この接続電極43d、44d、45dは、第2部材33を貫通したスルーホール80によって第2部材33の上面に設けた信号入出力用のバンプ81に接続されている。
【0051】
第2部材33の下面に設けた8つの接続電極82は、図2に示すように、それぞれ第1部材32に設けた静電アクチュエータ46、46の各固定電極部51の電極パッド60に接続される。一方、各接続電極82は、第2部材33を貫通したスルーホール83によってカバー基板71の上面に設けたグランド配線85に接続されており、グランド配線85には接地用のバンプ84が設けられている。
【0052】
第2部材33の下面に設けた2つの出力電極86は、駆動用IC72の出力端子93に設けた電極である。すなわち、出力電極86からは駆動用IC72で昇圧された電圧(静電アクチュエータ駆動用の電圧)が出力可能となっている。各出力電極86は、図3に示すように、静電アクチュエータ46、46の可動電極部52に導通した各接続電極87に接続される。たとえば、接続電極87はバネ支持部54に設けられていてもよく、バネ支持部54に電気的につながっていてもよい。
【0053】
また、図3に示すように、駆動用IC72には、バッテリー電圧を入力するための入力端子88と、グランドに接続するための接地端子91が設けられている。入力端子88は、第2部材33を貫通したスルーホール89によってバッテリ電圧入力用のバンプ90に接続されている。接地端子91は、第2部材33を貫通したスルーホール92によってグランド配線85に接続されている。
【0054】
本発明の実施形態1によるMEMSスイッチ31にあっては、上記のように積層された第1部材32と第2部材33に静電アクチュエータ46と駆動用IC72を設けることにより、駆動用IC72と静電アクチュエータ46を縦集積している。その結果、駆動用IC72と静電アクチュエータ46を一体化することができるとともに、低電圧で動作するMEMSスイッチ31を小型化して実装面積を小さくすることができる。さらに駆動用IC72と静電アクチュエータ46を一体化したことによって両者の配線長を短くでき、外部からのノイズの影響を低減することができる。また、静電アクチュエータ46と駆動用IC72を別々の基板(第1部材32、第2部材33)に設けてあって、両基板を重ね合わせることによって静電アクチュエータ46と駆動用IC72を一体化しているので、MEMSスイッチ31の製造も容易になる。
【0055】
なお、第1部材32と第2部材33の接合方法としては、フュージョン接合、Siダイレクト接合、ガラスフリット接合、陽極接合、金属拡散接合、金属共晶接合、ポリマー接着接合、表面活性化常温接合などを用いることができる。フュージョン接合とは、2枚のウエハを接触させることで自発的な接合に進むことを利用した貼り合わせ方法である。Siダイレクト接合は、ウェットケミカル又はプラズマ活性化処理された誘電層を有するウエハと、そのような誘電層を有しないウエハを室温で貼り合わせる方法である。ガラスフリット接合とは、ガラスフリット(粉末ガラス)を接合面に挟みこみ、炉内焼成してガラス化することによって接合する方法であって、MEMSデバイスを製造するために世界中で広く使われてきた従来型の製造技術である。陽極接合とは、ガラスとSi基板の研磨面を接触させて加熱しながら電圧を掛けることにより、共有結合による強い接合を行わせる方法である。金属拡散接合とは、同種または異種の金属どうしを拡散を利用して原子レベルで接合させる技術であって、従来のガラスフリット接合や陽極接合に比べてより高い気密性を実現できる。金属共晶結合とは、金属どうしの共晶反応によって接合する方法であって、ウエハでの金属共晶接合は先端的なMEMSパッケージや3次元積層技術分野で利用されている。金属共晶接合の特徴は、ハンダのように合金が溶融するので、表面の平坦度を増し、接合面のトポグラフィやパーティクルに対して許容度が大きい点にある。ポリマー接着接合とは、エポキシ、ドライフィルム、BCB、ポリイミド、UV硬化樹脂等の接着剤を用いた接合方法である。表面活性化常温接合とは、接合面を真空中で表面処理することにより、表面の原子を化学結合を形成しやすい活性な状態にして接合する方法である。表面活性化常温接合では、室温での接合もしくは熱処理温度を大幅に下げることを可能にできる。
【0056】
実施形態1のMEMSスイッチ31では、上記接合方法のうち金属共晶接合を用いている。たとえば、図9に示すように、第2部材33の接合部36、出力電極86、接続電極82などの接合部分又は接続部分をTi材料層56によって形成して、その下面にAuSnからなる接合材55を設けておく。また、第1部材32の接合部35、接続電極87、電極パッド60などの接合部分又は接続部分を、たとえばAu層94とする。そして、AuSnからなる接合材55を表面モホロジーの大きなAu層94と接合させることによって、第1部材32と第2部材33の接合部分又は接続部分どうしを金属共晶接合させ、それによって第1部材32と第2部材33を接合させる。
【0057】
なお、MEMSスイッチ31の特性をより安定させるためには、静電アクチュエータ46の動作電圧印加用の接続電極87(又は電極パッド60)や、グランド接続用の電極パッド60(又は接続電極87)をそれぞれ複数設けることが望ましい。また、駆動用IC72に制御信号やモード切替信号などを入力する必要があれば、適宜スルーホールを用いて駆動用IC72のポートと第2部材33の上面のバンプとを接続すればよい。
【0058】
また、上記実施形態1の静電アクチュエータ46においては、固定電極部51側をグランド電位とし、可動電極部52に駆動用IC72の出力電圧を印加するようにしたが、これとは反対になっていてもよい。すなわち、図10に概略断面を示すように、可動電極部52側をグランド電位とし、固定電極部51に駆動用IC72の出力電圧を印加するようにしてもよい。
【0059】
図10に示す本発明の実施形態1の変形例では、駆動用IC72の出力端子93に設けた出力電極86を静電アクチュエータ46の電極パッド60に接続し、駆動用IC72の出力電圧を固定電極部51に印加している。また、駆動用IC72の接地端子91に設けた接続電極82を接続電極87に接続し、静電アクチュエータ46の可動電極部52をグランドに接続させるようにしている。
【0060】
また、駆動用IC72の接地端子91は接合部36に延びていて、接合部36及び接合部35もグランドに接続している。この場合には、可動電極部52に導通した接続電極87は、駆動用IC72の接地端子91に接続しないで、ベース基板41の配線を通じて接合部35に接続してもよい。
【0061】
(第1部材の製造工程)
つぎに、図11−図19を参照して、本発明の実施形態1によるMEMSスイッチ31を製造する工程を説明する。図11−図13は、第1部材32の製造工程を示す。図14は、第2部材33の製造工程を示す。図15−図19は、第1部材32と第2部材33を貼り合わせてMEMSスイッチ31を製造する工程を示す。
【0062】
まず、図11−図13に従って第1部材32の製造工程を説明する。Si基板101とSi基板103の間に酸化膜102(SiO)を挟んで結合させたSOI基板をベース基板41として用いる。まず、位置決めの基準となるアライメントマーク104をベース基板41の上面に設ける(図11(A))。
【0063】
ベース基板41の上面に酸化膜15を設ける。エッチングによって、ベース基板41の下面に位置決め用のアライメントマーク117を設ける(図11(B))。
【0064】
この後、ベース基板41の表面にスパッタ法によってメッキ下地層118を形成する。このメッキ下地層118の上にレジスト膜119を形成し、第1部材32の接合部分や接続部分、マイクロストリップラインを形成しようとする領域でレジスト膜119に開口を設ける(図11(C))。ついで、メッキ下地層118を電極として電解メッキを行い、レジスト膜119の開口内に導電性の接点材料を堆積させ、接合/接続層120を形成する(図12(A))。この接点材料は接触信頼性を考えると貴金属が望ましい。また、このときマイクロストリップラインや可動接点47a、47bとなる部分では、接合/接続層120の上に金属層121を設ける。
【0065】
レジスト膜119を剥離した後(図12(B))、接合/接続層120をマスクとして不要なめっき下地層118を除去する。この結果、ベース基板41の上面には接合/接続層120によって接合部35や電極パッド60などの接合部分や接続部分が形成される。なお、金属層121によって第1接点43aや第2接点44a、共通接点45aなどが形成される(図12(C))。
【0066】
つぎに、ベース基板41の上面をエッチング用マスク124で覆う(図13(A))。エッチング用マスク124には、櫛歯電極61、可動接点47a、47bと第1接点43a、第2接点44a及び共通接点45aとの各対向部位に開口があいている。また、エッチング用マスク124には、櫛歯状の酸化膜115の設けられた領域にも開口があいている。エッチング用マスク124と酸化膜115の開口を通してベース基板41のSi基板103を下方へ向けてエッチングする(図13(B))。
【0067】
Si基板103の下面までエッチングされたら、エッチング用マスク124を剥離する。ついで、可動電極部52の下面の酸化膜102をエッチングによって除去し、可動電極部52をベース基板41(Si基板101)から浮かせて移動可能にする。これは、固定電極部51の幅を可動電極部52より太くするなど、エッチングされにくい部分を作ることで実現できる。また、酸化膜115をエッチングによって除去する。こうして、図13(C)のような第1部材32が製造される。
【0068】
(第2部材の製造工程)
つぎに、図14に従って第2部材33の製造工程を説明する。まず、Si基板131(カバー基板71)の表面に酸化膜132を形成する。このSi基板131の下面には、すでに駆動用IC72が作製されている。ついで、カバー基板71の下面(第1部材32と対向させる面)にTiを堆積させて接合/接続層135を形成する(図14(A))。
【0069】
ついで、接合/接続層135を部分的にエッチングして除去し、接合部36や接続電極82などの接合部分や接続部分に接合/接続層135を残す。この結果、カバー基板71の下面には、接合/接続層135からなる接合部36や接続電極82などの接合部分や接続部分が形成される(図14(B))。
【0070】
この後、接合/接続層135の下面に電極層139を形成し、さらに電極層139の下面中央部に、AuSnからなる接合材55を形成する(図14(C))。この結果、カバー基板71の下面に接合部36や接続電極82などの接合部分や接続部分が作製され、図14(C)に示すような構造の第2部材33が製造される。
【0071】
(MEMSスイッチの製造工程)
つぎに、上記のようにして製造された第1部材32と第2部材33を貼り合わせてMEMSスイッチ31を製造する工程について説明する。図15(A)は、図13(C)の第1部材32の上に図14(C)の第2部材33を重ね合わせ、各接合部分又は接続部分において第2部材33の接合材55を第1部材32の接合/接続層120に金属共晶接合させた状態を示す。この状態では、空隙部34内は気密的に封止されている。
【0072】
まず、カバー基板71の厚みを薄くし、カバー基板71の上面に絶縁膜151を堆積させる(図15(B))。絶縁膜151をエッチングし、スルーホール80、83、89、92などのスルーホール形成位置に対応させて絶縁膜151に窓154を開口する(図16(A))。ついで、絶縁膜151をマスクとしてカバー基板71に貫通孔155を形成する(図16(B))。
【0073】
この後、貫通孔155の内面及びカバー基板71の上面にさらに絶縁膜を堆積させて貫通孔155の内面とカバー基板71の上面を絶縁膜151で覆う(図17(A))。この貫通孔155の底面の絶縁膜151をエッチングによって除去し、接合/接続層135を露出させる。ついで、貫通孔155の内周面、接合/接続層135の上面およびカバー基板71の上面にスパッタリングなどによってCuやAlなどの金属材料からなる導電層157を設け、貫通孔155内にスルーホールを形成する(図17(B))。
【0074】
つぎに、スルーホール及びそのフランジや導通配線となる領域を残して導電層157の不要部分を除去し、スルーホールのフランジ部分やスルーホールに導通した配線部分を形成する(図18(A))。ついで、カバー基板71の上面をポリイミドからなるコート層159で覆い、スルーホールの電極部分の適所においてコート層159に開口160を設け、開口160内に順次Niメッキ層161とAuメッキ層162を設ける(図18(B))。このAuメッキ層162の上には、必要に応じてバンプを形成することができる。
【0075】
最後に、図19に示すように、ベース基板41の下面を研磨して第1部材32の厚みを薄くし、小型化されたMEMSスイッチ31を製造する。
【0076】
(実施形態2)
図20は本発明の実施形態2によるMEMSスイッチ201を示す概略断面図である。実施形態2のMEMSスイッチ201では、駆動用IC72を、第1−第3線路43−45からなるマイクロストリップや可動接点47a、47bの上方にも位置させている。そして、第1−第3線路43−45からなるマイクロストリップや可動接点47a、47bの下には、グランドに接続された金属シールド層202(接地層)を設けている。
【0077】
このような実施形態によれば、駆動用IC72の配置が制約を受けにくく、また広い面積に駆動用IC72を設けることができる。しかも、駆動用IC72や第2部材33による影響を考慮しないで、マイクロストリップラインのインピーダンス設計が可能になる。
【0078】
(実施形態3)
図21は本発明の実施形態3によるMEMSスイッチ203を示す概略断面図である。実施形態3のMEMSスイッチ203では、第2部材33の下面にマイクロストリップライン、すなわち第1−第3線路43−45を設けている。そのため、第1部材32に設けた静電アクチュエータ46の可動接点47a、47bが、第2部材33に設けた第1−第3線路43−45の第1接点43a、第2接点44a及び共通接点45aに接離することになる。このような実施形態によれば、可動接点47a、47bが第1部材32に設けられ、固定接点となる第1接点43a、第2接点44a及び共通接点45aが第2部材33に設けられるので、配線の自由度が高くなる。
【0079】
(実施形態4)
図22は本発明の実施形態4によるMEMSスイッチ204を示す概略断面図である。実施形態4のMEMSスイッチ204では、ベース基板41に設けた凹部42の底面の下に埋め込むようにして静電アクチュエータ46、46を設けている。このような実施形態によれば、静電アクチュエータ46と駆動用IC72のコンデンサ75との距離を大きくすることができるので、静電アクチュエータ46がコンデンサ75の影響をさらに受けにくくなる。
【0080】
(実施形態5)
図示しないが、駆動用IC72には静電気から保護するためのESD(ElectroStatic Discharge)保護回路を設けてあってもよい。たとえば、駆動用IC72内のある箇所とグランドとの間に、グランドからある箇所へ向けて順方向となるようにしてツェナーダイオードを設けておけばよい。かかるESD保護回路を設けておけば、駆動用IC72のある箇所にサージ電圧が加わったときには、ツェナーダイオードが導通してサージ電圧をグランドに逃がすことができるので、駆動用IC72を保護することができる。
【符号の説明】
【0081】
31、201、203、204 MEMSスイッチ
32 第1部材
33 第2部材
34 空隙部
35、36 接合部
41 ベース基板
42 凹部
43 第1線路
43a 第1接点
44 第2線路
44a 第2接点
45 第3線路
45a 共通接点
46 静電アクチュエータ
47a、47b 可動接点
51 固定電極部
52 可動電極部
55 接合材
71 カバー基板
72 駆動用IC
74 チャージポンプ回路
75 コンデンサ
86 出力電極
87 接続電極
88 入力端子
91 接地端子
93 出力端子
202 金属シールド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電アクチュエータを設けた第1部材、
前記静電アクチュエータを駆動するための駆動集積回路を設けた第2部材、
前記第1部材の静電アクチュエータを設けた面と前記第2部材の前記駆動集積回路を設けた面を互いに向かい合わせた状態で前記第1部材と前記第2部材を接合する接合部、及び、
前記第1部材と前記第2部材と前記接合部によって構成された、前記静電アクチュエータ及び前記駆動集積回路を納めるための空隙部
を備えた電子部品。
【請求項2】
前記駆動集積回路はコンデンサを備え、
前記コンデンサは、前記コンデンサに発生する電界の向きと前記静電アクチュエータを駆動するための電界の向きとが交差するように配置されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記コンデンサに発生する電界の向きと前記静電アクチュエータを駆動するための電界の向きとが直交している、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記コンデンサは、前記静電アクチュエータよりも大きな静電容量を有している、請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記駆動集積回路は、入力電圧を昇圧して前記静電アクチュエータに印加するDC−DCコンバータを含んでいる、請求項1に記載の電子部品
【請求項6】
前記駆動集積回路は、チャージポンプとコンデンサにより構成されている、請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記静電アクチュエータ及び前記駆動集積回路が、前記空隙部内に気密的に封止されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
第1部材と第2部材のうち少なくとも一方に設けた信号伝送用の線路、及び、
前記静電アクチュエータの動作により、前記線路に設けた接点間を開閉する可動接点、をさらに備えた、請求項1に記載の電子部品。
【請求項9】
前記静電アクチュエータ、前記駆動集積回路及び前記線路が、前記空隙部内に気密的に封止されている、請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記駆動集積回路は、前記線路と向かい合う領域から外れた領域に設けられている、請求項8に記載の電子部品。
【請求項11】
前記駆動集積回路と前記線路を隔てて前記駆動集積回路と前記線路の間に接地層が設けられている、請求項8に記載の電子部品。
【請求項12】
前記駆動集積回路は、サージ電流をグランドに逃がすための回路を備えている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項13】
前記第1部材の、前記第2部材と向かい合う面に凹部を形成し、
前記凹部の外側に位置し、かつ、前記第2部材と向かい合う前記第1部材の面を含む仮想平面よりも前記第2部材側へ飛び出ないようにして、前記凹部内に前記静電アクチュエータを設けた、請求項1に記載の電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2013−41733(P2013−41733A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177341(P2011−177341)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】