説明

電子顕微鏡システム及びそれを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法

【課題】
本発明の目的は、インラインのプロセス管理の一環として適用が可能な,高スループットなレジストパターンの膜減り検知ないし,膜減り計測を実現するシステムを提供することにある。
【解決手段】
走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得する電子線画像取得手段と、該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化する定量化手段と、該定量化手段で定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出する指標値算出手段と、該指標値算出手段で算出した指標値の情報を画面上に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子顕微鏡システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体製造プロセスにおいて,ウェーハ上に形成されたレジストパターンを評価,管理する方法に関し,特に、レジストパターンの電子顕微鏡像を用いて,レジストの膜減り量(レジストパターン高さの減少)を計測・評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,リソグラフィプロセスにおいては,パターンの寸法計測を目的とした電子顕微鏡である測長SEM(Scanning Electron Microscope)がプロセス管理ツールとして広く用いられている。測長SEMは,10万倍から30万倍の高倍率での撮像が可能で,数十ナノメートルオーダの微細パターンの寸法を,1ナノメートル以下の精度で計測することができる。非特許文献1には,測長SEMの基本構成が開示されている。
【0003】
リソグラフィプロセスは,レジストの露光・現像によるウェーハ上への回路パターンの転写,及び,転写されたレジストパターンに従ったエッチング処理から成り,測長SEMは転写されたレジストパターン,あるいは,エッチング後のパターンの寸法計測に用いられている。特に,トランジスタゲート配線をはじめとする配線パターンは,そのパターン幅とデバイス動作特性に強い関連があるため,厳しい寸法管理が行われている。
【0004】
図2(a)は左から順に,エッチング開始前,エッチング途中,エッチング終了後のパターンの断面形状を示したものである。測長SEMが計測するのは,レジストパターン幅W1,あるいは,エッチング後のパターン幅W2である。
【0005】
従来のリソグラフィプロセスでは,レジストパターン幅W1が規格内であれば,エッチング後のパターン幅W2も規格内におさまるという関係が成り立っていたため、W1とW2の計測結果を監視することで,十分なプロセス管理が可能であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】東木達彦,「光リソグラフィ技術II −計測と制御−」,EDリサーチ社,pp.31−41(2003)
【非特許文献2】高木幹雄,下田陽久,「画像解析ハンドブック」,東京大学出版,機能編第I部第2章(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パターン微細化のニーズに応えるため,露光プロセスにおいては,微細パターン形成に必要な解像度を得るための高NA露光技術の導入が進んでいる。その結果,露光プロセスのマージンが小さくなり,露光時のドーズ量,フォーカス位置といった露光パラメータの僅かな変動が正常露光時に対してレジストパターンの膜減り,すなわち,高さの減少を引き起こすようになってきた。
【0008】
図2(b)のように,図2(a)の場合と比べてエッチング開始前のパターン幅が等しくとも(w1=W1),パターン高さが低い(h1<H1)場合には,エッチング後のパターン幅はより小さくなる(w2<W2)。エッチング工程の途中,レジストの膜厚は徐々に薄くなっていくため,もとのパターン高さが低いと,図2(b)の中央の図のように,途中でレジストパターンがほぼ消失してしまい,以後,加工対象膜そのものがエッチングされてしまうからである。上記したように,エッチング後のパターン幅は,デバイスの動作特性に直結している。エッチング後のパターン幅減少を引き起こす原因となる図2(b)に示したような状態はあってはならない状況である。
【0009】
高NA露光技術の導入下にあっては,プロセス管理の観点からすると,レジストパターン段階での計測はパターン幅(W1,w1)の計測だけでは不十分であり,パターン高さ(H1,h1)も併せて計測することが望ましい。パターン高さを計測する方法としては,ウェーハ割って断面観察用の電子顕微鏡を用いる,あるいは,AFM(原子間力顕微鏡)による計測といった方法があり得るが,前者はウェーハを割る必要があるので,インラインの日常的なプロセス管理に適用できないのは明らかであり,後者も高スループットであることが要求されるプロセス監視の用途に適した方法とはいえない。
【0010】
本発明の目的は、インラインのプロセス管理の一環として適用が可能な,高スループットなレジストパターンの膜減り検知ないし,膜減り計測を実現するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため,本発明は,走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得する電子線画像取得手段と、該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化する定量化手段と、該定量化手段で定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出する指標値算出手段と、該指標値算出手段で算出した指標値の情報を画面上に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子顕微鏡システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,従来の線幅計測に用いている画像を用いて,膜減り検知ないし,膜減り計測を行うことが可能となるので,従来のプロセス管理のスループットを低下させることなく,重大なプロセス不良であるところの膜減りのモニタリングが可能となる。また,本発明を露光プロセスの条件出し,すなわち,ドーズ量,フォーカス位置の最適化に適用すれば,従来の線幅計測結果だけを用いた場合と比べて,より有効なプロセスウィンド設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するフロー図である。
【図2】レジスト膜減りの説明図である。
【図3】膜減り指標値の算出方法を説明する図である。
【図4】種々の膜減り状態における状況を説明する図である。
【図5】膜減り量と膜減り指標値の関係を登録するためのGUI画面である。
【図6】膜減り量の推定結果の出力画面である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を説明するフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を説明するフロー図である。
【図9】エッチバイアスと膜減り指標値の関係を登録するためのGUI画面である。
【図10】エッチバイアスの推定結果の出力画面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明による電子顕微鏡を用いたレジスト膜減り計測手法について、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明に係る電子顕微鏡によるレジスト膜減り計測手法に関して、SEMシステムの構成と全体フローを述べた後,各ステップについて詳述し,さらに,本手法を搭載したSEMシステムについて述べる。
【0016】
[SEMシステム]
図1(a)に、本実施例による膜減り計測機能を備えた測長SEMシステムの構成を示す。本実施例による測長SEMシステムは、SEM本体10と画像処理・全体制御部109、演算処理部110、データベース部113、で構成され、ネットワークを介してデータサーバ116と繋がっている。
【0017】
SEM本体10は、電子銃101、電子銃101から発射された電子線102を加速する加速電極103、集束レンズ104、電子線102の軌道を偏向させる偏向電極105、電子線102の収束する焦点位置がパターンが形成された試料107の表面に位置するように電子線102の焦点位置を制御する対物レンズ106、電子線102が照射された試料107から発生した2次電子の一部は検出器108で検出される。この検出器108の検出信号は画像処理・全体制御部109に送られて処理され、SEM画像が得られる。このSEM画像を用いて演算処理部110でデータベース部113に蓄積されている情報を参照しながら処理され、膜減りに関連する情報が抽出される。その結果は通信回線を介してデータサーバ116へ送られて記憶される。
【0018】
試料107は図示していないテーブルに載置され、試料上の所望の領域が電子線102の照射領域に位置するように図示していないテーブルが画像処理・全体制御部109で制御される。
【0019】
演算処理部110は、膜減り指標値計測部111、データベース照合部112、膜減り量推定部114、表示画面を備えた入出力部115を備えている。
【0020】
[全体フロー]
図1(b)に演算処理部110で行う膜減り計測の全体フローを示す。
(S1):SEM10にてレジストパターンを撮像し、この撮像して得た信号を画像処理・全体制御部109で処理して試料のSEM画像を得る。
(S2):取得した画像から後述の方法により,膜減りの指標値を算出する。
(S3):データベース部113に蓄積されている正常な露光条件で形成されたレジストパターンに対する実際に形成されたパターンの膜減り量と膜減り指標値の対応関係が登録されているデータベース20と照合する。データベース20の作成方法については、後で図1(c)を用いて説明する。
(S4):照合した結果に基づいて正常な露光条件で形成されたレジストパターンに対する実際に形成されたパターンの膜減り量を推定する。 推定した結果は、入出力部115の表示画面上に表示される。以上が膜減り計測の全体フローである。各フローの詳細を、以下に説明する。
【0021】
[膜減り指標値の算出]
図1(b)のS2のステップについて詳細に説明する。
正常な露光条件で形成されたレジストパターンに対する実際に形成されたパターンの膜減りは,本来,光が照射されるべきでないレジストパターン部,特にレジストパターン上部に光が過剰に照射されることによって発生する。レジストパターン上部への過剰な光照射は,露光時のフォーカス位置ずれ,あるいは,ドーズ量の増加によっても起こりうる。
【0022】
そして,一般的に用いられているレジスト材料の場合,照射光量が多いほど,表面のラフネス(表面の荒れ)が増加するという特性がある。膜減りはレジストパターン上部に光が過剰に照射されることによって発生するので,必然的に,レジスト上部表面のラフネスを伴うことになる。
【0023】
本発明はこのメカニズムを利用して,膜減りに伴うパターン上部表面のラフネス変化をSEM画像上で定量化し,膜減り指標値として用いる。
【0024】
図3(a)は膜減りが生じていない場合,図3(b)は膜減りが生じている場合のSEM像である。SEM像においては,傾斜角効果により平坦部は暗く、傾斜部は明るく検出されるため,ラフネスがあると,面荒れのエッジが筋状に明るく検出される。図3(a)において点線で囲んだ部分が,レジストパターンの上面に相当するが,図3(a)に比べて図3(b)の方が明るさにむらのある領域となっているのは,ラフネスが存在することに起因する。この画像上の特徴を定量化する方法として,いくつかの例を挙げる。
【0025】
(イ):SEM画像のパターン上部に相当する領域内(図3(a)及び(b)の点線で囲んだ領域)のy軸への投影波形(図3(c):縦軸SE Intensity はSEM画像の明るさを示し、横軸Yは)を生成し,投影波形の明るさばらつきを標準偏差σで表したものをラフネス指標値,すなわちレジスト膜減り指標値として用いる。ラフネスが大きいほど,明るさむらがますため標準偏差σは大きな値をとる。図4(b)に種々の膜減り量((i)から(v)にかけて、番号が大きくなるほど膜減り大)における,y軸の投影波形を示す。同図が示すように,本指標値は,膜減りが大きいほど,大きな値をとる。本手法によれば,一定範囲の投影をとることで平均化効果によりSEM特有の高周波ノイズの寄与を小さくできるため,表面ラフネスに起因する明るさむらを感度良く検出することができる。また,平均化をパターン線幅方向に行うことにより,膜減り以外のパターン形状変化による明るさ変化の影響を低減することができる。投影波形を生成するパターン長手方向の領域をより長くとれば,より高精度な膜減り指標値としての精度を向上させることが可能である。なお、図4(b)のi)から(v)に示したグラフにおいて、縦軸及び横軸の説明の記載を省略したが、これらは図3(c)に示したグラフの縦軸及び横軸と同じである。
【0026】
(ロ):SEM画像のパターン上部に相当する領域内(図3(a)及び(b)の点線で囲んだ領域)の明るさヒストグラムを作成し(図3(d)),ヒストグラムに対して,正規分布を当てはめ,そのときのσ値もしくは正規分布の中心をレジスト膜減り指標値として用いる。具体的には、(イ)で求めたy軸への投影波形から縦軸の明るさごとに出現頻度を求めて作成する。考え方は,先の(イ)と同じで,ラフネスが大きいほど,平均的に明るい方に明るさむらが増すことを利用した定量化である。図4(c)に種々の膜減り量((i)から(v)にかけて、番号が大きくなるほど膜減り大)におけるヒストグラムを示す。本指標値もまた,膜減りが大きいほど,大きな値をとる。なお、図4(c)のi)から(v)に示したグラフにおいて、縦軸及び横軸の説明の記載を省略したが、これらは図3(d)に示したグラフの縦軸及び横軸と同じである。
(ハ):SEM画像のx軸への投影波形を生成し,中央部の最小値(図3(e)のmin)を膜減り指標値とする。ラフネスの増加に伴い,面荒れのエッジが筋状に明るく検出されるようになるため,ラフネスが大きいほど,平均的に明るくなることを利用した定量化である。図4(d)に種々の膜減り量((i)から(v)にかけて、番号が大きくなるほど膜減り大)におけるx軸への投影波形を示す。本指標値もまた,膜減りが大きいほど,大きな値をとる。本手法によれば,広領域の平均化によるSEMノイズ低減効果が非常に良いという利点がある。ただし,膜減り以外の形状変化,特にパターントップ部における形状変化を伴う場合にその影響を受けやすいため,膜減り以外の形状変化が小さい対象において有効な指標値である。なお、図4(d)のi)から(v)に示したグラフにおいて、縦軸及び横軸の説明の記載を省略したが、これらは図3(e)に示したグラフの縦軸及び横軸と同じである。
【0027】
(ニ):その他,非特許文献2に記されたようなテクスチャー解析の手法,すなわち,SEM画像のパターン上部に相当する領域内のパワースペクトルを求め、周波数特徴からテクスチャーの粗さを定量化する方法,あるいは,以上述べた種々の方法の併用,あるいは,種々の指標値を重み付けして足し併せる方法なども適用可能である。
【0028】
[データベース20の作成方法]
図1(c)にデータベース部113に蓄積するデータベース20を作成するフローを示す。
(S11):データベース20を作成するため,種々の露光条件でレジストパターンを形成したサンプルを準備する。例えば,1枚のウェーハ上に,露光条件のフォーカス位置とドーズ量を,変動の可能性がある範囲で変化させたFEM(Focus Exposure Matrix)ウェーハを用いると良い。
(S12):準備した,種々の露光条件で形成したレジストパターンサンプルのSEM画像を取得し,先に[膜減り指標値の算出]の項で説明した(イ)乃至(二)の何れかの方法で膜減り指標値を算出する。
(S13):同じサンプルについて,AFM(原子間力顕微鏡)あるいは,スキャッタロメトリ(光波散乱計測),あるいは,SEMによるパターン断面観察等の高さ計測手段により,レジストパターンの高さを計測し,レジストの膜減り量を求める。実際にパターンの高さを計測する代わりに,露光シミュレーションにて上記種々の露光条件下におけるレジストパターンの断面形状を計算して求めた高さを用いてもよい。
(S14):こうして得られた膜減り量と膜減り指標値の関係を,グラフ21に示す。上述のように,膜減り量が大きいほど,膜減り指標値が大きいという関係になっている。この結果に対して,膜減り量と膜減り指標値の関係として近似関数を算出する。同時に,膜減り指標値に対する膜減り量のばらつきを算出してもよい。また、近似関数の代わりに,ルックアップテーブルの形式でも良い。
(S15):膜減り量と膜減り指標値の関係として算出した近似関数をデータベースに保存する。また,算出した膜減り指標値に対する膜減り量のばらつきの関係をデータベースに保存しておく。
【0029】
[データベースとの照合と膜減り量の推定]
図1)b)のS3及びS4のステップについて詳細に説明する。図1(b)のS3ステップにおいては,S2で算出した指標値を,上記データベース20で膜減り量と膜減り指標値の関係として算出しておいた近似関数に代入,あるいは,膜減り量と膜減り指標値の関係に基づくルックアップテーブルを参照することで,膜減り量の絶対値を推定する。また,データベース20に記憶された,膜減り指標値に対する膜減り量のばらつきの関係から,S2で算出した指標値を用いて、上記した膜減り量推定結果の
誤差を把握することもできる。
【0030】
[GUI]
本実施例によるSEMシステムの入出力部115における入出力画面の一例として、図5にGUI(Graphic User Interface)画面500の例を示す。このGUI画面は、膜減り量と膜減り指標値の関係等を予め記憶させてデータベース部113のデータベース20を構築し、更新するために必要な入力画面を備えている。
【0031】
GUI画面500には,新規登録もしくは更新しようとしているデータベース20の名称の入力部分501があり,この入力された名称に応じてデータベース20から選択された情報が,データリスト506およびグラフ507として表示される。また,登録用の膜減り指標値を取得するための計測レシピを選択する部分502と,選択されたレシピに登録された画像503が表示される画像表示領域504があり,表示された画像503上において膜減り指標値の算出に用いるSEM画像上の領域を選択する部分505がある。
【0032】
これらの項目を入力した後,レシピを実行させるボタン508上にカーソル(図示せず)を移動させてマウス(図示せず)をクリックすることにより上記設定した条件に基づいて膜減り指標値の算出が実行される。この算出された膜減り指標値のデータは自動的に更新され、データリスト506も修正される。また,画面500に表示されたデータリスト506上で,他の装置もしくは手段で取得した膜減り量のデータを入力することもできる。入力したデータをデータベース20に保存する場合には、更新ボタン509をクリックすれば良い。これを実行することで,膜減り量と膜減り指標値の関係が関数化され,データベース20に登録される。
【0033】
また,本SEMシステムの入出力部115は,更に、データベース20の情報と照合し,膜減り量の推定を行うための設定部および結果を表示するための出力部を備えたGUI画面600を表示する。図6にGUI画面600の一例を示す。
【0034】
計測条件設定時には,参照する膜減り量算出用のデータベース20を選択する部分601と,選択により自動的に取得するSEM画像上における膜減り指標値に使用する領域がデータベースの情報に基づいて表示される部分602を有する。また,取得済みの画像セットの中から膜減り量を評価するための画像を選択する部分(膜減り評価画像選択部)603と,選択された画像に対して膜減り指標値算出と膜減り量推定の実行を指示するための実行ボタン604を有する。また、選択された画像605が表示される部分606も備えている。
【0035】
更に、計測レシピを選択する部分(膜減り評価用レシピ選択部)607と、選択したレシピに基づく膜減り指標値算出と膜減り量推定とを実行するための実行ボタン608を有する。画面600上でこの実行ボタン608の上にカーソル(図示せず)を移動させてマウス(図示せず)をクリックすることにより上記設定した条件に基づいて膜減り指標値の算出と膜減り量推定とが実行され、その結果はグラフ610として表示され、また、データリスト609として推定誤差とともに表示される。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば,従来の線幅計測に用いている画像を用いて,膜減り検知ないし,膜減り計測を行うことが可能となるので,従来のプロセス管理のスループットを低下させることなく,膜減りのモニタリングが可能となる。また,露光プロセスの条件出し,すなわち,露光時のドーズ量,フォーカス位置の最適化に適用してもよい。従来の線幅だけを用いたのと比べて,膜減りを発生させないと条件が組み込まれることで,より有効なプロセスウィンドの設定が可能となる。
【実施例2】
【0037】
本発明の第2の実施の形態を図7に示す。第1の実施の形態においては,SEM像から膜減り指標値を算出(S2)した後,データベースと照合(S3)することで,膜減り量の絶対値を推定(S4)して膜減り指標値と膜減り量とを出力したが、第2の実施の形態においては,SEM像から膜減り指標値を算出する(S2)のみで,S3及びS4の膜減り量推定は行わず、膜減り指標値に関する情報だけを出力する(S6)。本実施例におけるSEM像から膜減り指標値を算出する(S2)方法は、第1の実施例で説明した方法と同じである。
【0038】
本実施例における入出力部のGUI画面は、基本的には図5及び図6とで説明したものとほぼ同じであり、図5のデータリスト506において膜減り量の欄が無く、図6のデータリスト609において膜減り量推定結果の欄と推定誤差の欄が欠けている点で相違する。また、本実施例による出力の他の例を、図7(b)に示す。
【0039】
本実施例によれば、指標値は,膜減り量の相対変化を表しているので,図7(b)のように,指標値のトレンドをモニタすることで,プロセス変動を監視することが可能である。
【実施例3】
【0040】
本発明の第3の実施の形態を図8に示す。第1及び第2の実施例においては、ウェハ上に形成されたレジストパターンを計測する方法について説明したが、本実施例では,レジストパターンの膜減りに伴い,このレジストパターンをマスクとしてエッチングした場合にウェハ上に形成された回路パターンの線幅減少を検知することを目的とする。
【0041】
本実施の形態においては,第1の実施の形態における,膜減り量と膜減り指標値の対応関係を登録したデータベースの代わりに,レジスト線幅と,エッチングバイアス,すなわち,レジストパターンの線幅と,エッチング後のパターン線幅の対応関係を登録したデータベース30を用い,膜減り指標値計測結果から,エッチングバイアスを推定する(S23,24)。
【0042】
以下,データベース30の作成方法,及び,本手法を搭載したSEMシステムについて述べる。
【0043】
[SEMシステム]
図8(a)に、本実施例による膜減り計測機能を備えた測長SEMシステムの構成を示す。本実施例による測長SEMシステムは、SEM本体80と画像処理・全体制御部81、演算処理部82、データベース部83、で構成され、ネットワークを介してデータサーバ84と繋がっている。SEM本体80と画像処理・全体制御部81の構成は、第1の実施例において図1(a)を用いて説明したものと同一である。
【0044】
本実施例においては、画像処理・全体制御部81から出力されたSEM画像を用いて演算処理部82でデータベース部83に蓄積されている情報を参照しながら処理され、エッチバイアスに関する情報が抽出される。その結果は通信回線を介してデータサーバ116へ送られて記憶される。
【0045】
演算処理部82は、膜減り指標値計測部821、データベース照合部822、エッチバイアス推定部823、表示画面を備えた入出力部824を備えている。
【0046】
[全体フロー]
図8(b)に演算処理部82で行うエッチバイアス推定の全体フローを示す。
(S21):SEM80にてレジストパターンを撮像し、この撮像して得た信号を画像処理・全体制御部81で処理して試料のSEM画像を得る。
(S22):取得した画像から第1の実施例におけるS2のステップと同様の方法により,膜減りの指標値を算出する。
(S23):データベース部83に蓄積されているレジストパターンの線幅とエッチング後のパターン線幅の対応関係を登録したデータベース30と照合する。データベース30の作成方法については、後で図8(c)を用いて説明する。
(S24):照合した結果に基づいてエッチバイアスを推定する。
(S25):推定した結果を、入出力部824の表示画面上に表示する。また、通信回線を介してデータサーバ84へ送られて記憶される。
【0047】
以上が本実施例におけるエッチバイアス推定の全体フローである。主なフローの詳細を、以下に説明する。
【0048】
[データベースの作成方法]
図8(c)に、本実施例におけるレジストパターンの線幅とエッチング後のパターン線幅の対応関係を登録したデータベース30の作成のフローを示す。
(S31):第1の実施の形態におけるS11の説明で述べたのと同様に、種々の露光条件でレジストパターンを形成したサンプルを準備する。
(S32):第1の実施の形態におけるS12と同様に、膜減り指標値を算出すると共にパターンの線幅を計測する。
(S33):第1の実施の形態におけるS13の説明で述べたのと同様に,レジストパターンの高さを計測し,レジストの膜減り量を求める。
(S34):レジストパターンを形成したウェハをエッチング処理する。
(S35):エッチング処理を施してウェハ上に形成されたパターンの線幅の計測を行う。なお,本ステップで用いるウェーハは,S32,S33で用いたのと同一ウェーハでも良いし,同一プロセスによる,別ウェーハでも良い。計測したエッチング処理後のウェハ上に形成されたパターンの線幅のデータを、S32で計測したレジストパターン寸法、及びS33で計測したレジストパターンの高さのデータと対応させて記憶する。
(S36):S32で求めたレジストパターンの線幅と,S35で求めたエッチング後のパターンの線幅との差であるところのエッチングバイアスと,S33で求めたレジスト膜減り量の対応関係を求める。この求めた一例をグラフ31に表す。この結果に基づき,近似関数を算出し,エッチングバイアスと膜減り指標値の関係を求める。
(S37):求めたエッチングバイアスと膜減り指標値の関係をデータベース30に保存する。同時に,エッチングバイアスが増加する膜減り指標値を閾値として保存し,さらに膜減り指標値に対するエッチングバイアスのばらつきを算出し,データベース30に保存しておく。
【0049】
[エッチングバイアスの推定]
図8(b)のS24のエッチバイアスを推定するステップにおいては,S22で算出した膜減り指標値を,上記S36で算出したデータベース30上の近似関数に代入することで,エッチングバイアスを推定する。もしくは,エッチングバイアスが閾値を超えているかどうかの判定を行う。
【0050】
[GUI]
本実施例によるSEMシステムの入出力部84における入出力画面の一例として、図9にGUI画面900の例を示す。このGUI画面は、実施例1における図5のGUI画面において,膜減り量をエッチバイアスに置き換えたものと同様である。
【0051】
更に詳しく説明すると、GUI画面900には,新規登録もしくは更新しようとしているデータベース30の名称の入力部分901があり,この入力された名称に応じてデータベース30から選択された情報が,データリスト906およびグラフ907として表示される。本実施例におけるデータリスト906には、レジストパターンの膜減り指標値のほかに、図5に示した第一の実施例のデータリスト506における膜減り量の欄の代わりに、レジストCD値(SEM画像からレジストパターンの寸法を求めた値)とエッチCD値(SEM画像からエッチング後にウェハ上に形成されたパターンの寸法を求めた値)及びレジストパターンの線幅(レジストCD値)とエッチング後のパターンの線幅(エッチCD値)との差であるところのエッチングバイアス値が表示される。また,本実施例において表示されるグラフ907は、エッチバイアスと膜減り指標値との関係が表示される点で図5に示した第一の実施例の場合と異なる。
【0052】
一方、登録用の膜減り指標値を取得するための計測レシピを選択する部分902と,選択されたレシピに登録された画像903が表示される画像表示領域904,表示された画像903上において膜減り指標値の算出に用いるSEM画像上の領域を選択する部分905、これらの項目を入力した後,レシピを実行させるボタン908、上記設定した条件に基づいて膜減り指標値の算出が実行され、データが自動的に更新され、データリスト906も修正される点は、第1のじっしれいのばあいとどうようである。また,画面900に表示されたデータリスト906上で,他の装置もしくは手段で取得した膜減り量のデータを入力することもできる。入力したデータをデータベース30に保存する場合には、更新ボタン909をクリックすれば良い。これを実行することで,膜減り量と膜減り指標値の関係が関数化され,データベース30に登録される。
【0053】
また,本SEMシステムの入出力部824は,更に、データベース30の情報と照合し,膜減り量の推定を行うための設定部および結果を表示するための出力部を備えたGUI画面1000を表示する。このGUI画面1000は、第1の実施例で説明した図6のGUI画面600と類似した構成になっている。
【0054】
第1の実施例で説明したのと同様に、計測条件設定時には,参照する膜減り量算出用のデータベース30を選択する部分1001と,選択により自動的に取得するSEM画像上における膜減り指標値に使用する領域がデータベースの情報に基づいて表示される部分1002を有する。また,取得済みの画像セットの中から膜減り量を評価するための画像を選択する部分(膜減り評価画像選択部)1003と,選択された画像に対して膜減り指標値算出と膜減り量推定の実行を指示するための実行ボタン1004を有する。また、選択された画像1005が表示される部分1006も備えている。
【0055】
GUI画面1000には、更に計測レシピを選択する部分(膜減り評価用レシピ選択部)1007と、選択したレシピに基づく膜減り指標値算出と膜減り量推定とを実行するための実行ボタン1008を有する。画面1000上でこの実行ボタン1008の上にカーソル(図示せず)を移動させてマウス(図示せず)をクリックすることにより上記設定した条件に基づいて膜減り指標値の算出とエッチバイアスの算出、膜減り量の推定誤差、NG判定とが実行され、その結果はデータリスト1009表示され、また、エッチバイアスと膜減り指標値との関係がグラフ1010として表示される。
【0056】
本実施例によれば、図8のグラフ31が示すように,膜減り量とエッチング後のパターン寸法の関係はリニアではなく,膜減り量が一定値を超えると,急速にエッチバイアスが増加するという特性がある。本実施の形態によれば,発生した膜減りがデバイス特性上,問題としなければならないレベルか否かの判断が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
10,80・・・電子顕微鏡 109,81・・・画像処理・全体制御部 110・・・演算処理部 113・・・データベース部 116・・・サーバ 500・・・データベース更新時のGUI 600・・・膜減り推定条件を設定し結果を出力ためのGUI 82・・・演算処理部 83・・・データベース部 84・・・サーバ 900・・・エッチバイアスと膜減り指標値の関係を登録するためのGUI 1000・・・エッチバイアス推定結果を出力ためのGUI

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得する電子線画像取得手段と、
該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化する定量化手段と、
該定量化手段で定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出する指標値算出手段と、
該指標値算出手段で算出した指標値の情報を画面上に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子顕微鏡システム。
【請求項2】
走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得する電子線画像取得手段と、
該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化する定量化手段と、
該定量化手段で定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出する指標値算出手段と、
該指標値算出手段で算出した指標値を用いて前記レジストパターンの膜厚の基準値からの減少量を推定する推定手段と、
該推定手段で算出した前記レジストパターンの膜厚の基準値からの減少量の情報を画面上に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする電子顕微鏡システム。
【請求項3】
前記指標値算出手段は、該定量化手段で定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターンが正常な露光条件で露光されて形成されたときの膜厚を基準値としたときの該基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項4】
前記推定手段は、前記指標値算出手段で算出した指標値を、予め作成して記憶しておいたレジストパターンが基準膜厚のときの指標値とレジストパターンの膜厚の減少量とを関連づけるデータベースに当てはめることによって,レジストパターンの膜減り量を推定することを特徴とする請求項2記載の電子顕微鏡システム。
【請求項5】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,基準となるレジストパターンの膜厚に対する前記レジストパターンの膜厚の現象によって生じた前記レジストパターンの所望の領域のラフネスの程度を定量化したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子顕微鏡システム。
【請求項6】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,前記レジストパターンの所望の領域の平均的な明るさを定量化したものであることを特徴とする請求項5記載の電子顕微鏡システム。
【請求項7】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,前記レジストパターンの所望の領域の明るさの分布を定量化したものであることを特徴とする請求項5記載の電子顕微鏡システム。
【請求項8】
走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得し、
該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化し、
該定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出し、
該算出した指標値の情報を画面上に表示することを特徴とする電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項9】
走査型電子顕微鏡を用いて表面にレジストパターンが形成された試料の画像を取得し、
該取得した画像を処理して前記レジストパターンの所望の領域の画像の明るさのばらつきの特徴を定量化し、
該定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出し、
該算出した指標値を用いて前記レジストパターンの膜厚の基準値からの減少量を推定し、
該推定した前記レジストパターンの膜厚の基準値からの減少量の情報を画面上に表示することを特徴とする電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項10】
前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出することを、前記定量化した画像の明るさのばらつきの特徴を前記レジストパターンが正常な露光条件で露光されて形成されたときの膜厚を基準値としたときの該基準値からの減少量と関連付ける指標値を算出することを特徴とする請求項8又は9に記載の電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項11】
前記レジストパターン膜厚基準値からの減少量を推定することを、予め作成して記憶しておいた基準膜厚のレジストパターンの指標値とレジストパターンの膜厚の減少量とを関連づけるデータベースに前記算出した指標値を当てはめることによってレジストパターンの減少量を推定することを特徴とする請求項9記載の電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項12】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,基準となるレジストパターンの膜厚に対する前記レジストパターンの膜厚の減少によって生じた前記レジストパターンの所望の領域のラフネスの程度を定量化したものであることを特徴とする8又は9に記載の電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項13】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,前記レジストパターンの所望の領域の平均的な明るさを定量化したものであることを特徴とする請求項12記載の電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。
【請求項14】
前記電子顕微鏡像から算出する膜減り量と相関を有する指標値は,前記レジストパターンの所望の領域の明るさの分布を定量化したものであることを特徴とする請求項12記載の電子顕微鏡システムを用いたレジストパターンの膜厚減少量評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−40973(P2013−40973A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261855(P2012−261855)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−40818(P2008−40818)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】