説明

電床および電位治療美容器

【課題】製造が容易であり、製造に要する費用が嵩むことを防止することができ、所望の柔軟性および通気性および防水性を確保しつつ、人体への装着時に違和感が生じることを防止する。
【解決手段】電位治療美容器10は、人体の頭部に装着可能であって、電気的絶縁材からなる覆布片および覆布片の内部に収容されて人体に対して絶縁された電極体片を備える易変形性の電床11と、電床11の電極体片と人体との間に所定電位差を発生可能な電位発生装置12とを備え、覆布片は防水性および通気性および伸縮性を有し、電極体片はメッシュ状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電床および電位治療美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば人体の局部治療部位(例えば、足部あるいは腕部など)に巻き付けて電位治療をおこなうことができる治療電極体として、柔軟性を有する導体の外周をビニール布などで絶縁被覆して構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2649160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術の一例に係る治療電極体を用いて人体の頭部の電位治療をおこなう場合には、治療電極体を頭部に密着させる必要があることから、治療電極体に所望の柔軟性を確保することが望まれている。
しかも、治療電極体を頭部に密着させた状態での頭部の蒸れを抑制するために、治療電極体に所望の通気性を確保すると共に、人体の感電を防止するために、治療電極体に所望の防水性を確保することが望まれている
また、治療電極体の人体への装着時に外部の電源などとを接続される接続端子が人体の体位(例えば、臥位など)に応じて邪魔となることを防止することが望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、製造が容易であり、製造に要する費用が嵩むことを防止することができ、所望の柔軟性および通気性および防水性を確保しつつ、人体への装着時に違和感が生じることを防止することが可能な電床および電位治療美容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電床は、電位治療または電位美容に用いる電床(実施の形態での電床11)であって、前記電床は、人体の頭部に装着可能であり、電気的絶縁性および防水性および通気性および伸縮性を有する材質からなる被覆部材(実施の形態での覆布片22)および該被覆部材の内部に収容されて人体に対して絶縁されたメッシュ状の電極体(実施の形態での電極体片23)を備え、かつ易変形性である。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係る電床では、前記電極体は、糸状または紐状の線条素材(実施の形態での線材23a)の表面に導電性物質からなる導電層が設けられた後に前記線条素材が編組または織込されて形成されたメッシュ状の電極である。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係る電床は、前記電床は、一体に接続される複数の電床片(実施の形態での電床片21,…,21)により構成され、前記電極体は、前記電床片毎に具備されるメッシュ状の電極体片(実施の形態での電極体片23,…,23)が接続されて構成され、前記電極体に電位を導く電線(実施の形態での電線14)を接続する接続部(実施の形態での上部プロテクタ24および下部プロテクタ25)を備える。
【0007】
さらに、本発明の第4態様に係る電床では、前記接続部は、前記電床の頭頂部近傍に設けられている。
【0008】
さらに、本発明の第5態様に係る電床では、前記電床片は、湾曲した2辺の湾曲辺を有する略二等辺三角形状であり、前記電床は、周方向で隣り合う前記電床片同士の互いの前記湾曲辺同士が接続されて略半球状に構成されている。
【0009】
さらに、本発明の第6態様に係る電床は、前記電床の開口端部に弾性部材(実施の形態でのゴムひも15)を備え、該弾性部材は弾性変形により前記開口端部の開口径を変更可能である。
【0010】
さらに、本発明の第7態様に係る電位治療美容器(実施の形態での電位治療美容器10)は、第1態様から第6態様の何れかひとつに記載の電床(実施の形態での電床11)と、電位治療または電位美容に用いる電位を発生させる電位発生部(実施の形態での電位発生装置12)と、前記電位発生部が発生した電位を人体に導く導子(実施の形態での導子13)とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様に係る電床によれば、人体の頭部に装着される電床を構成する被覆部材(例えば、覆布など)および電極体は、易変形性とされることで、人体の頭部に密着可能であり、電極体はメッシュ状であることから、所望の通気性を確保することができ、装着時の頭部の蒸れの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る電床によれば、メッシュ状の電極である電極体は、例えば鍍金、蒸着、塗布などにより糸状または紐状の線条素材の表面に導電性物質からなる導電層が設けられた後に、編組または織込によってメッシュ状に形成される。このため、導電性層を有する糸状または紐状の線条素材が互い違いに組み合わされて交差する部位であっても線条素材が変位可能であり、柔軟性を向上させることができる。これに対して、例えば糸状または紐状の線条素材が編組または織込によってメッシュ状に形成された後に、鍍金、蒸着、塗布などにより導電性物質からなる導電層が設けられる場合などでは、線条素材同士が交差する部位が導電性物質によって固定されてしまう虞があり、所望の柔軟性を確保することができないという問題が生じる。
【0013】
本発明の第3態様に係る電床によれば、電床を複数の電床片により構成することで、容易に所望の立体形状に形成することができ、例えば略半球状などの帽子型形状であっても、人体の頭部への密着性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第4態様に係る電床によれば、電極体に電位を導く電線を接続する接続部を頭頂部近傍に備えることから、例えば人体が臥位などの体位であっても、接続部が邪魔となることを防止することができる。
【0015】
本発明の第5態様に係る電床によれば、電床を複数の絶縁電床片により構成することで、容易に所望の立体形状に形成することができ、特に、各電床片を、湾曲した2辺の湾曲辺を有する略二等辺三角形状とすることで、例えば電床が略半球状などの帽子型形状であっても、人体の頭部への密着性を向上させることができる。
しかも、製造が容易であり、製造に要する費用が嵩むことを防止することができることに加えて、各電床片の形状を単位として、帽子型形状の電床を容易に折り畳むことができ、収納性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第6態様に係る電床によれば、電床の開口端部の開口径を弾性部材の弾性変形により変更可能であることから、例えば帽子型形状などの電床の頭部への密着性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第7態様に係る電位治療美容器によれば、電位治療または電位美容を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る電床および電位治療美容器について添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る電位治療美容器10は、電位治療または電位美容をおこなうものであって、例えば図1に示すように、人体の頭部に装着可能な易変形性の電床11と、電位発生装置12と、導子13とを備えている。
電位発生装置12は、接地された第1出力端子12aと、電位治療または電位美容に用いる所定高電位を印加可能な第2出力端子12bとを備えている。
導子13は、電位発生装置12の第1出力端子12aに接続され、人体の所定部位に導通可能に接触して、人体の生体電位を接地電位に維持する。
なお、導子13は、電位発生装置12の第2出力端子12bに接続されて、電位発生装置12が発生した所定高電位を人体に導いてもよい。
【0020】
電床11は、複数(例えば、5つなど)の電床片21,…,21が接続されて構成され、各電床片21は、例えば図1〜図3に示すように、湾曲した2辺の湾曲辺21a,21aを有する略二等辺三角形状に形成されている。
各電床片21は、電気的絶縁材からなる覆布片22と、覆布片22の内部に収容されて人体に対して絶縁された電極体片23とを備えて構成されている。
【0021】
覆布片22は、所定の防水性および通気性および伸縮性および易変形性を有し、例えば図3に示すように、覆布片22の布目は湾曲辺21aに対してバイアスとなるように形成されている。
電極体片23は、例えば、非導電性の繊維からなる糸状または紐状の素材に、導電性材料が鍍金、蒸着、塗布などされてなる線材23aが、編組または織込などによって互い違いに組み合わされて編成された易変形性を有するメッシュ状の電極であり、略二等辺三角形状の本体部23bと、この本体部23bの頂部から突出する突出部23cとを備えている。
【0022】
覆布片22は、例えば、略二等辺三角形状の表地および裏地の周縁部が閉じられた袋状に形成され、電極体片23の本体部23bよりも僅かに大きな内部空間を有する。
また、覆布片22は頂部に形成された頂部開口22aを備え、覆布片22の内部に電極体片23の本体部23bが収納された状態で、覆布片22の頂部開口22aから電極体片23の突出部23cが外部に突出するようになっている。
覆布片22の内部において、覆布片22の表地および裏地と電極体片23の本体部23bとは、電極体片23のメッシュ幅よりも大きい網目間隔を有する熱溶着性の網目状接着材(図示略)によって接着されている。
【0023】
複数(例えば、5個以上であって、6個など)の電床片21,…,21は周方向に配置され、周方向で隣り合う電床片21,21の互いの湾曲辺21a,21a同士が重ね合わされて、互いの電極体片23,23同士は重なり合わずに覆布片22,22同士のみが重なり合う位置で縫製された後にバイアス仕上げがおこなわれることで、略半球状の帽子型の形状をなすように形成されている。
【0024】
また、複数の電床片21,…,21の覆布片22,…,22から外部に突出する突出部23c,…,23bは適宜の順序で重ね合わされた状態で、各覆布片22の表面側と裏面側との両側から上部プロテクタ24と下部プロテクタ25とによって挟み込まれることで互いに導通状態とされている。
上部プロテクタ24は、例えば図4(A),(B)に示すように、電気的絶縁材による略円錐型の筒状に形成され、電位発生装置12の第2出力端子12bに接続された電線14の端部が装着される電線接続部24aと、複数の電床片21,…,21の覆布片22,…,22から外部に突出する突出部23c,…,23bが収容される収容部24bと、下部プロテクタ25の上面25Aに当接する下面24A上において下部プロテクタ25の嵌合突出部25aを装着可能な嵌合凹部24cとを備えて構成されている。
下部プロテクタ25は、例えば図5(A),(B)に示すように、電気的絶縁材による略円板状に形成され、上部プロテクタ24の下面24Aに当接する上面25A上において上部プロテクタ24の嵌合凹部24cに装着可能な嵌合突出部25aを備えている。
【0025】
上部プロテクタ24の下面24Aと下部プロテクタ25の上面25Aとは、複数の電床片21,…,21の覆布片22,…,22の頂部近傍を各覆布片22の表面側と裏面側との両側から挟み込み、下部プロテクタ25の嵌合突出部25aは適宜の覆布片22を挟み込みつつ上部プロテクタ24の嵌合凹部24cに装着されることで、上部プロテクタ24および下部プロテクタ25と複数の電床片21,…,21とが固定される。
そして、上部プロテクタ24の収容部24bに収容された複数の電床片21,…,21の突出部23c,…,23bは、上部プロテクタ24の電線接続部24aに装着された電線14の端部と接触した状態で固定されることにより、複数の電床片21,…,21の電極体片23,…,23が電線14によって電位発生装置12の第2出力端子12bに接続されている。
なお、導子13が電位発生装置12の第2出力端子12bに接続されている場合には、電線14は電位発生装置12の第2出力端子12bの代わりに第1出力端子12aに接続される。
【0026】
そして、略半球状の帽子型の電床11の開口端部近傍には、周方向に亘ってゴムひも装着部11aが設けられ、このゴムひも装着部11aにゴムひも15が装着されている。ゴムひも装着部11a内でのゴムひも15の長さはコードアジャスタ16により調整可能とされている。これにより、電床11の開口端部の開口径をゴムひも15の弾性変形により変更可能である。
【0027】
上述したように、本実施の形態による電床11によれば、人体の頭部に装着される電床11を構成する覆布片22および電極体片23は、易変形性とされることで、人体の頭部に密着可能であり、電極体片23はメッシュ状であることから、所望の通気性を確保することができ、装着時の頭部の蒸れの発生を抑制することができる。
さらに、電床11は電線14を電極体片23に接続する上部プロテクタ24および下部プロテクタ25を頭頂部近傍に備えることから、例えば人体が臥位などの体位であっても、上部プロテクタ24および下部プロテクタ25が邪魔となることを防止することができる。
【0028】
さらに、電床11を複数の電床片21,…,21により構成することで、容易に所望の立体形状に形成することができ、特に、各電床片21を、湾曲した2辺の湾曲辺21a,21aを有する略二等辺三角形状とすることで、例えば略半球状などの帽子型形状であっても、人体の頭部への密着性を向上させることができる。
しかも、製造が容易であり、製造に要する費用が嵩むことを防止することができることに加えて、各電床片21の形状を単位として帽子型形状の電床11を容易に折り畳むことができ、収納性を向上させることができる。
【0029】
さらに、メッシュ状の電極体片23は、非導電性の繊維からなる糸状または紐状の素材に、導電性材料が鍍金、蒸着、塗布などされてなる線材23aが、編組または織込などによって互い違いに組み合わされて編成されていることから、線材23a,23a同士が交差する部位であっても各線材23aが変位可能であり、例えば糸状または紐状の素材が編組または織込によってメッシュ状に形成された後に、鍍金、蒸着、塗布などにより導電性材料からなる導電層が設けられる場合などでは、素材同士が交差する部位が導電性材料によって固定されてしまう虞があり、所望の柔軟性を確保することができないという問題が生じることに比べて、電極体片23の柔軟性を向上させることができる。
【0030】
さらに、電床11の開口端部の開口径をゴムひも15の弾性変形により変更可能であることから、例えば帽子型などの電床11の頭部への密着性を向上させることができる。
さらに、覆布片22の内部において、覆布片22の表地および裏地と電極体片23の本体部23bとは、電極体片23のメッシュ幅よりも大きい網目間隔を有する熱溶着性の網目状接着材によって接着されていることから、電極体片23の柔軟性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0031】
そして、本実施の形態による電位治療美容器10によれば、電床11によって電位治療または電位美容を適切に行うことができる。
【0032】
なお、上述した実施の形態において、覆布片22の表地および裏地と電極体片23の本体部23bとは熱溶着性の網目状接着材(図示略)によって接着されているとしたが、これに限定されず、例えば電極体片23のメッシュ幅よりも大きい間隔を有する格子点位置で熱溶着性の接着材によって接着されてもよい。
【0033】
なお、上述した実施の形態において、導子13は人体の所定部位に導通可能に接触する適宜の形状を有していればよく、例えば人体の手によって把持される棒状など、あるいは、例えば人体の顔面に装着されるマスク状などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る電位治療美容器の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電床の平面図である。
【図3】本発明の実施形態の電床片の平面図である。
【図4】図4(A)は本発明の実施形態の上部プロテクタの側面図であり、図4(B)は本発明の実施形態の上部プロテクタを下面側から見た平面図である。
【図5】図5(A)は本発明の実施形態の下部プロテクタの側面図であり、図5(B)は本発明の実施形態の下部プロテクタを上面側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 電位治療美容器 11 電床 12 電位発生装置(電位発生部) 13 導子 14 電線 15 ゴムひも(弾性部材) 21 電床片 22 覆布片(被覆部材) 23 電極体片(電極体) 23a 線材 24 上部プロテクタ(接続部) 25 下部プロテクタ(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位治療または電位美容に用いる電床であって、
前記電床は、人体の頭部に装着可能であり、
電気的絶縁性および防水性および通気性および伸縮性を有する材質からなる被覆部材および該被覆部材の内部に収容されて人体に対して絶縁されたメッシュ状の電極体を備え、かつ易変形性であることを特徴とする電床。
【請求項2】
前記電極体は、糸状または紐状の線条素材の表面に導電性物質からなる導電層が設けられた後に前記線条素材が編組または織込されて形成されたメッシュ状の電極であることを特徴とする請求項1に記載の電床。
【請求項3】
前記電床は、一体に接続される複数の電床片により構成され、
前記電極体は、前記電床片毎に具備されるメッシュ状の電極体片が接続されて構成され、
前記電極体に電位を導く電線を接続する接続部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電床。
【請求項4】
前記接続部は、前記電床の頭頂部近傍に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電床。
【請求項5】
前記電床片は、湾曲した2辺の湾曲辺を有する略二等辺三角形状であり、
前記電床は、周方向で隣り合う前記電床片同士の互いの前記湾曲辺同士が接続されて略半球状に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電床。
【請求項6】
前記電床の開口端部に弾性部材を備え、
該弾性部材は弾性変形により前記開口端部の開口径を変更可能であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかひとつに記載の電床。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかひとつに記載の電床と、
電位治療または電位美容に用いる電位を発生させる電位発生部と、
前記電位発生部が発生した電位を人体に導く導子と
を備えることを特徴とする電位治療美容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35798(P2010−35798A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201800(P2008−201800)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(591032518)伊藤超短波株式会社 (69)
【Fターム(参考)】