説明

電柱広告塔を利用した交通安全装置、交通安全システム、および交通安全方法

【課題】表示面を大型化することなく、しかも、見る者に交通安全情報を強く印象付けることができる態様で、電柱設置の電子広告を利用して交通安全情報を提供すること。
【解決手段】交差点Xをなす二本の道路RDの交差点X付近にある一対の電柱11に電柱広告塔101を設置する。電柱広告塔101は、交差点Xに進入する方向から見られるように電柱11に取り付けられた電子的な表示装置Dを備え、交差点Xに向かう物体Oが交差点Xの手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と交差点Xに至ったことを検出する到来検出とを実行し、近接検出に応じて警告開始信号を、到来検出に応じて警告終了信号を、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101に向けて送信出力する。表示装置Dに広告情報を表示させている時、警告開始信号を受信してから警告終了信号を受信するまでの間、表示装置Dの表示を広告情報から警告情報に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱広告塔を利用して交通安全情報の提供を行なうようにした交通安全装置、交通安全システム、および交通安全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱に広告看板を取り付け、電柱を広告塔として利用することが従来から行なわれている。このような広告看板は、一般的には電柱に対して固定的に取り付けられるため、その設置作業及び撤去作業を手軽に行なうことができない。このため、一度設置された広告看板は、ある程度長期に渡り設置され続けることになる。
【0003】
これに対して、特許文献1には、可視画像を可変自在に表示することができる表示装置を電柱に取り付け、この表示装置に遠隔地から広告のコンテンツデータを配信して広告の内容を自由に変更できるようにした発明が記載されている。つまり、特許文献1に記載されているのは、言わば、電柱に設置される電子広告である。
【0004】
一方、交通安全について着目すると、交差点内における事故の多さは、従来から問題となっているところである。このような点に着目した交通安全システムとして、例えば、特許文献2に開示されているようなものがある。つまり、交差点の上方に魚眼レンズカメラを設置し、交差点付近の車両の画像を取得する。この画像を画像処理して車両の動作状態を把握し、交差点で発生し得る危険を判断する。危険判断した場合は、信号機に設置した小型表示装置に危険内容を簡単に表示し、車両の運転者に報知する。これが、特許文献2に開示された技術の内容である。
【0005】
特許文献2に類似の技術は、例えば特許文献3にも記載されている。特許文献3では、信号とは別途にポールを道路上に立設し、このポールに表示装置を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−043968公報
【特許文献2】特開2002−329291公報
【特許文献3】特開2007−042042公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2、3に開示されている交通安全システムでは、交通安全情報を表示する表示機を信号機に設置したり(特許文献2)、別途に設けたポールに設置したりしている(特許文献3)。
【0008】
これに対して、この出願の発明者等は、特許文献1に記載されているような電柱に設置する電子広告を利用して、交通安全用の情報を運転者や歩行者等に提供できないものであろうかと思案を巡らせた。ところが、単純に特許文献1記載の技術と特許文献2、3記載の技術とを組み合わせた場合、表示装置には、広告を表示するための表示領域と交通安全情報を表示するための表示領域とが必要となり、勢い、表示装置の表示面が大型化してしまうという問題に直面した。こうして表示装置の表示面が大型化すると、電柱から表示装置が大きく飛び出してしまうことになるが、このような事態は、安全上および景観上の観点からはなはだ不都合である。
【0009】
また、一つの表示面に広告と交通安全情報とを表示するとなると、情報量の多さからどうしても表示状態が散漫になり、いずれの情報もこれを見る者の顕在意識に届きにくくなることが予想される。この場合、より切実な問題は、せっかく交通安全情報を提供したとしても、これが十分に生かされずに交通安全を図ることができないということである。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、表示面を大型化することなく、しかも、見る者に交通安全情報を強く印象付けることができる態様で、電柱に設置される電子広告を利用して交通安全情報を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱にそれぞれ設置される一対の電柱広告塔の一つであって、設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられ、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出手段と、前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供手段と、前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示手段と、前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示手段と、を備える電柱広告塔を利用した交通安全装置によって上記課題を解決する。
【0012】
本発明の別一態様は、交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱と、前記一対の電柱にそれぞれ設置される一対の電柱広告塔と、を備え、前記一対の電柱広告塔は、それぞれ、設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられて、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出手段と、前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供手段と、前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示手段と、前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示手段と、を備える電柱広告塔を利用した交通安全システムによって上記課題を解決する。
【0013】
本発明の更に別の一態様は、交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱にそれぞれ設置され、設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられて、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、を備える一対の電柱広告塔の間で、設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出工程と、前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供工程と、前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示工程と、前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示工程と、を実行する電柱広告塔を利用した交通安全方法によって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可視画像を可変自在に表示する表示装置に広告情報と交通安全用の警告情報とを表示し、また、死角となる道路の側に設置される別の電柱広告塔から送信された警告開始信号から警告終了信号の間だけ広告情報を警告情報に切り替えるようにしたので、表示面を大型化することなく、しかも、広告情報から警告情報へ切り替わり動作するという見る者に交通安全情報を強く印象付けることができる態様で、電柱用の広告表示を利用して交通安全情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の一形態として、交通安全システムの概略を示す交差点付近を上空から見た模式図。
【図2】交差点に設置されている個々の電柱広告塔の通報領域を例示する交差点を上空から見た模式図。
【図3】電柱広告塔が備える表示装置の各種形態として、(a)は図4ないし図16に基づいて説明する巻物形態の表示媒体を採用した一例、(b)は電柱に巻く防護管形態の表示媒体を採用した一例、(c)は電柱の高所に設置する信号機形態の表示媒体を採用した一例、をそれぞれ示す電柱広告塔の正面図。
【図4】電柱広告塔の外観を示す正面図。
【図5】電柱広告塔の外観を示す側面図。
【図6】使用の一態様を示す電柱広告塔の正面図。
【図7】(a)は表示媒体が収納されている状態、(b)は表示媒体が少し引き出された状態をそれぞれ示す媒体保持部の斜視図。
【図8】昇降体を昇降駆動するための鍵付きハンドルを示す斜視図。
【図9】電柱広告塔の縦断正面図。
【図10】電柱広告塔の横断平面図。
【図11】昇降機構の分解斜視図。
【図12】昇降体、昇降機構及び巻回機構の縦断正面図。
【図13】昇降体において表示媒体を保持する媒体保持筒と昇降体のフロントパネルの裏面側との分解斜視図。
【図14】電柱広告塔の各部の電気的接続を示すブロック図。
【図15】電柱広告塔が実行する交通安全情報の通報処理の流れを示すフローチャート。
【図16】電柱広告塔が実行する交通安全情報の報知処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の一形態を図1ないし図16に基づいて説明する。
【0017】
図1は、電柱広告塔101を利用した交通安全システム1の概略を示す交差点付近を上空から見た模式図である。電柱広告塔101(101a、101b)は、交差点Xをなす二本の道路RD(RDa、RDb)の交差点X付近それぞれに立てられた一対の電柱11(11a、11b)にそれぞれ設置されている。ここでは、説明の便宜上、図1中、縦方向に走る道路RDを道路RDa、横方向に走る道路RDを道路RDbと呼ぶ。そして、道路RDaに設置されている電柱11とこの電柱11に設置されている電柱広告塔101とをそれぞれ電柱11a、電柱広告塔101aと呼び、道路RDbに設置されている電柱11とこの電柱11に設置されている電柱広告塔101とをそれぞれ電柱11b、電柱広告塔101bと呼ぶ。これに対して、単に、道路RD、電柱11、電柱広告塔101と呼ぶ場合には、両方の道路RDaおよびRDb、電柱11aおよび11b、電柱広告塔101aおよび101bを含むものとする。
【0018】
個々の電柱広告塔101は、それぞれ、交差点Xに進入する方向から視認可能な表示装置Dを備えている。表示装置Dは、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する。このような表示装置Dが備える表示媒体DM(図3、図4、図6、図7参照)の一例として、本実施の形態では、有機ELシートELS(図3、図6、図14参照)が用いられている。
【0019】
個々の電柱広告塔101は、また、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101との間で情報を送受信する送受信部としての通信回路154(図14参照)を備えている。「死角となる道路RD」というのは、電柱広告塔101aを主体として見た場合には道路RDbであり、反対に、電柱広告塔101bを主体として見た場合には道路RDaである。したがって、電柱広告塔101aを主体として見た場合、電柱広告塔101bが「死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101」となり、反対に、電柱広告塔101bを主体として見た場合、電柱広告塔101aが「死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101」となる。
【0020】
このような電柱広告塔101は、ソナーセンサSとカメラCとを備えている。ソナーセンサSとカメラCとのいずれか一方または両方は、電柱広告塔101それ自体に一体的に取り付けられていても、電柱広告塔101が設置されている電柱11に取り付けられていても、あるいはそれら以外の場所に設置されていても、いずれでも良い。
【0021】
ソナーセンサSは、個々の電柱広告塔101が設置されている道路RD上で、その電柱広告塔101が設置されている交差点Xに至る手前側に位置する物体Oを検知するセンサである。つまり、ソナーセンサSは、電柱広告塔101から見ると、この電柱広告塔101が設置され道路RDを通って交差点Xに向かう物体Oを検知することになる。このようなソナーセンサSは、超音波を利用して物体Oを検知してその検知結果を出力するわけであるが、同様の目的を達成することができるセンサであれば、他の種類のセンサを用いても良い。あるいは、カメラCで撮影した動画の画像データを分析することで、物体Oを検出する技術を採用しても良い。
【0022】
なお、図1中、物体Oとして自動車が示されているが、物体Oはこれに限らず、歩行者、自転車、自動二輪車、猫や犬などの動物、その他であっても差し支えない。
【0023】
カメラCは、個々の電柱広告塔101が設置されている道路RD上で、その電柱広告塔101が設置されている交差点Xに至る手前側に位置する物体Oを動画で撮影する撮影装置である。つまり、カメラCは、電柱広告塔101から見ると、この電柱広告塔101が設置され道路RDを通って交差点Xに向かう物体Oを撮影することになる。このようなカメラCは、撮影した動画の画像を画像データとして出力する。
【0024】
そして、個々の電柱広告塔101の制御回路151は、各種処理を実行する制御部152を備えている(図14参照)。制御部152は、ソナーセンサSからの出力を取り込み、この出力値を参照することで、交差点Xに至るまでの物体Oの距離を求めることができる。また、制御部152は、カメラCからの画像データも取り込み、これを死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101に転送する。この際、画像データの転送は、通信回路154を介して行なう。
【0025】
図2は、交差点Xに設置されている個々の電柱広告塔101の通報領域を例示する交差点を上空から見た模式図である。図2では、道路RDaに設置されている電柱広告塔101をA1、A2として示し、道路RDbに設置されている電柱広告塔101をB1、B2として示している。これらの電柱広告塔101の制御部152が実行する代表的な処理は、物体検出処理、情報提供処理、広告表示処理、および警告表示処理である。
【0026】
物体検出処理は、その電柱広告塔101が設置される道路RDを通って交差点Xに向かう物体Oが交差点Xの手前所定距離(図2中の通報領域)まで近づいたことを検出する近接検出と交差点Xに至ったことを検出する到来検出とを実行する処理である。制御部152は、ソナーセンサSの出力を参照することで物体Oの位置を認識することができるので、この認識結果に基づいて物体検出処理を実行することができる。
【0027】
例えば、図2中のA1で示す電柱広告塔101aを主体として見た場合、この電柱広告塔101aは、物体O(図1参照)が図2中の道路RDaのA1通報領域に入った場合に近接検出を実行し、物体OがA1通報領域を抜けて交差点Xに入ると到来検出を実行する。同様に、図2中のA2で示す電柱広告塔101aは、物体Oが道路RDaのA2通報領域に入った場合に近接検出を実行し、物体OがA2通報領域を抜けて交差点Xに入ると到来検出を実行する。同様に、図2中のB1で示す電柱広告塔101bは、物体Oが道路RDbのB1通報領域に入った場合に近接検出を実行し、物体OがB1通報領域を抜けて交差点Xに入ると到来検出を実行する。そして同様に、図2中のB2で示す電柱広告塔101bは、物体Oが道路RDbのB2通報領域に入った場合に近接検出を実行し、物体OがB2通報領域を抜けて交差点Xに入ると到来検出を実行する。
【0028】
情報提供処理は、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101に対して、近接検出に応じて警告開始信号を、到来検出に応じて警告終了信号を、それぞれ送信出力する処理である。この際の送信出力は、通信回路154を介して行なう。
【0029】
例えば、図2中のA1またはA2で示す電柱広告塔101aを主体として見た場合、これらの電柱広告塔101aにとって死角となる道路RDは道路RDbであり、その道路RDbに設置される別の電柱広告塔101はB1およびB2で示す電柱広告塔101bである。反対に、図2中のB1またはB2で示す電柱広告塔101bを主体として見た場合、これらの電柱広告塔101bにとって死角となる道路RDは道路RDaであり、その道路RDaに設置される別の電柱広告塔101はA1およびA2で示す電柱広告塔101aである。
【0030】
広告表示処理は、表示装置Dに広告情報を表示させる処理である。広告情報は、広告コンテンツを含む画像データに基づいて表示装置Dを駆動することによってなされる。画像データは、一例として、管理用の上位機(図示せず)から配信される。
【0031】
警告表示処理は、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101から警告開始信号を受信し、その後に警告終了信号を受信するまでの間、表示装置Dの表示を広告情報から警告情報に切り替える処理である。警告情報には、死角となる道路RDにおいて交差点Xに物体Oが近づいていることの注意情報や、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101から転送されたそのような物体Oの動画画像等が含まれている。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態よれば、交差点Xに向けて進行する際、交差点Xの近傍に設置されたた電柱広告塔101の表示装置Dに、死角となる道路RDの状況が警告情報として示される。これにより、電柱11用の広告表示を利用して交通安全情報を提供することができる。
【0033】
しかも、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101から送信された警告開始信号から警告終了信号の間だけ、広告情報が警告情報に切り替えられる。これにより、表示装置Dの表示面を大型化することなく、広告情報と警告情報という二種類の情報を表示することができる。これに加えて、広告情報から警告情報に切り替わる瞬間、これを見る者に強い印象が与えられ、その結果、交通安全情報を強く印象付けることができる。したがって、より一層の交通安全の推進を図ることができる。
【0034】
図3は、表示装置Dの各種形態を示す電柱広告塔101の正面図である。ここでは、三種類の表示装置Dを例示する。
【0035】
図3(a)は、図4ないし図16に基づいて後述する巻物形態の表示媒体DMを採用した一例である。この表示媒体DMは、有機ELシートELSを含んでいる。ここでは、有機ELシートELSに、「自動車が来ます。ご注意ください。時速40キロ接近中」という文字からなる警告表示が表示されている一例を示している。
【0036】
図3(b)は、電柱に巻く防護管形態の表示媒体DMを採用した一例である。この表示媒体DMは、有機ELシートELSによって形成されている。ここでは、有機ELシートELSに、右側から自動車が来ることを示す絵柄と共に、「時速40キロ接近中」という文字からなる警告表示が表示されている一例を示している。
【0037】
図3(c)は、電柱の高所に設置する信号機形態の表示媒体DMを採用した一例である。この表示媒体DMも、有機ELシートELSによって形成されている。ここでは、有機ELシートELSに、右側から物体が接近していることを示す絵柄からなる警告表示が表示されている一例を示している。
【0038】
以下、図3(a)に例示するような表示媒体DMを採用した表示装置Dを例に挙げ、その内容を図4ないし図16に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図4は、電柱広告塔101の外観を示す正面図、図5は、電柱広告塔101の外観を示す側面図である。本実施の形態の電柱広告塔101は、電柱11に対して、金属ベルト12とサポート13とによって取り付けられている。電柱広告塔101は、矩形筐体状の基部102の下部に外灯103を取り付け、外灯103の上方位置に昇降体104を昇降自在に設け、昇降体104の昇降動作に応じて広告や地域情報の提供に用いられる表示媒体DMを設置できるようにしている。つまり、電柱広告塔101において、昇降体104はハンドル51の回転操作によって上げ下げ可能である。そこで、表示媒体DMを巻き物のようにして保持する媒体保持部32を基部102の正面下方から飛び出す設置棒105にセットし、昇降体104には表示媒体DMの端部に設けられたバー33をセットする。この状態で、基部102の側部に設けた錠部106にハンドル51の鍵部52(図8参照)を差し込み、ハンドル51を回転操作する。すると、昇降体104が上昇し、媒体保持部32から表示媒体DMが引き出されて出現する。
【0040】
電柱広告塔101は、その錠部106の位置が地表面から2m程度の高さの位置に設置される。そこで、設置棒105に対して媒体保持部32を着脱したり錠部106に取り付けたハンドル51を回転させたりするに際して、作業者は、脚立等に乗って作業を行なうことになる。
【0041】
図6は、使用の一態様を示す電柱広告塔101の正面図である。図6に一例を示すように、表示媒体DMには広告や地域情報等の提供情報が描かれている。そこで、電柱広告塔101は、昇降体104と媒体保持部32との間に表示媒体DMを出現させることで、提供情報を表示して広告宣伝機能、情報提供機能を果たすことができる。
【0042】
更に、電柱広告塔101は、比較的低所に外灯103を有している。このように低所に配された外灯103によって、電柱11の近くを通行する者の足元を照らす効果が生まれる。そこで、外灯103としてLED照明装置等のような演色性が期待できる照明を用いることにより、今までにない独特な照明空間を発生させることができる。
【0043】
以下、電柱広告塔101の詳細を説明する。
【0044】
図7(a)は表示媒体DMが収納されている状態、図7(b)は表示媒体DMが少し引き出された状態をそれぞれ示す媒体保持部32の斜視図である。表示媒体DMは、筒状の媒体保持部32の内部で中空であって回転自在の中心軸(図示せず)に巻き込まれた状態で保持されており、その端部に設けられたバー33を持って引き出すことで引き出し可能となっている(図7(b)参照)。媒体保持部32は、引き出した表示媒体DMをゼンマイ(図示せず)の力で巻き戻すことができる。そのための構造として、媒体保持部32は、その一端側にゼンマイを巻き戻し動力源とする巻戻し機構(図示せず)を内蔵する巻戻し部34を有している。巻戻し部34の内部では、表示媒体DMが引き出されるにつれてゼンマイが巻かれていき、巻かれたゼンマイは初期状態への復元力を蓄える。これにより、引き出した表示媒体DMをフリーな状態にすると、巻かれたゼンマイの復元力によって表示媒体DMが巻き戻されて媒体保持部32に収納される。このような媒体保持部32は、巻戻し部34と反対側の端部にセット部35を有している。セット部35は、表示媒体DMを保持する前述の中心軸の中空部分に連通するセット孔36を有し、その周囲に一対のフック溝37を有している。フック溝37は、セット孔36の軸を中心とする円周上に位置する溝であり、それらの一端は溝よりも径が大きな大径部37aとなっている。
【0045】
表示媒体DMは、複数の情報提供領域を備えている。個々の情報提供領域には、提供情報が描かれている(図示せず)。また、本実施の形態の表示媒体DMは、有機ELシートELSを含んでいる(図6、図14参照)。電柱広告塔101は、有機ELシートELSに前述した警告情報を表示することができる。
【0046】
図4及び図5に示すように、電柱広告塔101の基部102は、その正面下方に、媒体保持部32をセットして保持できるようにした棒状の設置棒105を突出させている。設置棒105は、媒体保持部32のセット孔36に嵌合する径に形成され、媒体保持部32の内部でその中心軸(図示せず)の中空部分にも嵌合する。図4中、設置棒105の上下に示されているのは、設置棒105にセットされた媒体保持部32を抜け止めするためのフックピン107である。これらのフックピン107は、設置棒105に媒体保持部32がセットされると、媒体保持部32のセット部35に形成されている一対のフック溝37に嵌合する位置に形成されている。そして、フックピン107は、その頭部が大径となっている。この大径の頭部は、フック溝37の大径部37aには挿通して溝部には挿通しない径に定められている。そこで、設置棒105に対する媒体保持部32のセット作業時、フック溝37の大径部37aをフックピン107に位置合わせして媒体保持部32を押し込み右回転させると、媒体保持部32は設置棒105に確実に保持される。
【0047】
図5に示すように、電柱広告塔101の基部102は、その中央部に縦長の長孔108を有しており、この長孔108に沿って昇降体104を移動させる。長孔108は、設置棒105を通る鉛直線上に形成されている。
【0048】
更に、図4〜図6に示すように、基部102の上部にはスピーカ131が取り付けられている。
【0049】
図8は、昇降体104を昇降駆動するための鍵付きのハンドル51を示す斜視図である。ハンドル51は、ハンドルアーム53の一端側に把持部54を突出させ、ハンドルアーム53の他端側に鍵部52を突出させて設けている。ハンドルアーム53の面のうち、鍵部52の突出面と把持部54の突出面とは互いに反対側となっている。鍵部52は、電柱広告塔101の側に設けられた錠部106に差し込むことができる鍵である。したがって、錠部106及び鍵部52は、容易に真似されない形状に形成されていることが望ましい。また、図4及び図6は、電柱広告塔101の左側面を示しているために右側面は示されないが、錠部106は、基部102の左側面のみならず、両側面に形成されていても良い。これにより、右利き及び左利きのいずれの利き腕の作業者にも使い勝手が良いものとなる。
【0050】
図9は、電柱広告塔101の縦断正面図、図10は、電柱広告塔101の横断平面図である。昇降体104は、長孔108が形成された基部102の基部フロントパネル109に三対のローラ対110によって三点支持される昇降機構111を一体的に有している(図11も参照のこと)。この昇降機構111については、図11に基づいて後述する。ハンドル51の回転操作に基づいて昇降機構111に昇降動作を与えているのは、巻き掛け伝動機構である動力変換機構112である。つまり、基部102は、その内部上下位置に一対のプーリ113を設けている。これらのプーリ113は、基部102に回転自在に取り付けられて互いに水平配置された一対の支軸114に固定され、支軸114の回転と共に回転自在である。これらのプーリ113には、ワイヤWが掛け渡されており、これによって巻き掛け伝動機構が構成されている。そこで、昇降機構111に設けた連結体115をワイヤWに連結固定することで(図12も参照のこと)、一対のプーリ113の回転運動を昇降体104の昇降運動に変換して伝達することが可能となる。本実施の形態においては、下方に位置する下部支軸114aに、基部102の側面に設けられた鍵部52を連結している。これにより、下部支軸114aが駆動力を受ける受動部となり、ハンドル51の回転操作によって生ずる回転駆動力に従い下部支軸114aが回転する。動力変換機構112は、受動部である下部支軸114aの回転運動を上方に位置する支軸114と共にワイヤWに伝達してワイヤWを回転させ、これによって昇降体104を昇降させる。つまり、受動部である下部支軸114aの回転運動を昇降体104の昇降運動に変換するわけである。
【0051】
図11は、昇降機構111の分解斜視図である。昇降機構111は、主フレーム116に三対のローラ対110が固定されて形成されている。ローラ対110のうち、二対は基部102の基部フロントパネル109の外部側に配置され、一対は基部フロントパネル109の内部側に配置される。基部フロントパネル109の外部側に配置される二対のローラ対110は、それぞれ、外側ローラフレーム117の上下に回転自在に取り付けられた一対のローラRである。基部フロントパネル109の内側に配置される一対のローラ対110は、内側ローラフレーム118の左右に回転自在に取り付けられた一対のローラRである。そして、外側ローラフレーム117は、主フレーム116の上下幅と同一寸法の上下幅を有する接合部119を有し、この接合部119を接合させて主フレーム116に固定されている。また、内側ローラフレーム118は、円筒状の連結筒120を介して主フレーム116に固定されている。連結筒120は、基部フロントパネル109に形成された長孔108を通り、基部フロントパネル109の外側においては主フレーム116に連結固定され、基部フロントパネル109の内側においては内側ローラフレーム118に連結固定される。そして、主フレーム116に対する外側ローラフレーム117及び内側ローラフレーム118の固定は、一例としてネジ止めによってなされる。そのために、それらの主フレーム116、外側ローラフレーム117及び内側ローラフレーム118には、ネジ通しのためのネジ通し孔THが複数個形成されている。また、主フレーム116は、その両側が直角に屈曲形成され、この屈曲部分に昇降体104との間の連結固定片121を有している。昇降体104との間の連結固定も、一例としてネジ止めによってなされる。そこで、連結固定片121にも、複数個のネジ通し孔THが形成されている。
【0052】
上記昇降機構111の構成において重要なことは、連結筒120の長さである。連結筒120の長さは、基部フロントパネル109の外側に配置されるローラ対110のローラRと内側に配置されるローラ対110のローラRとの間のクリアランスを決める。この点、図10に示すように、それらの基部フロントパネル109の内外のローラR間のクリアランスは、基部フロントパネル109の厚み分として規定されていなければならない。そこで、連結筒120は、基部フロントパネル109の内外のローラR間のクリアランスを基部フロントパネル109の厚み分とする長さに設定されている。
【0053】
以上説明したように、昇降機構111は、昇降体104に一体的に固定され、基部フロントパネル109の内外で三対のローラ対110によって三点支持され、昇降体104を昇降自在に支持する。
【0054】
図12は、昇降体104、昇降機構111及び巻回機構143の縦断正面図、図13は、昇降体104において表示媒体DMを保持する媒体保持筒122と昇降体104のフロントパネル123の裏面側との分解斜視図である。図12を参照することで、昇降機構111における主フレーム116と連結筒120と内側ローラフレーム118との間の連結結合構造が明らかとなる。つまり、これらの主フレーム116と連結筒120と内側ローラフレーム118とは、昇降体104の内部側からそれらを挿通する長ネジLSがボルトBによって止められることで、一体に連結結合されている。
【0055】
次いで、昇降体104は、表示媒体DMのバー33を着脱自在に保持する構造として、媒体保持筒122を有している。媒体保持筒122は、表示媒体DMのバー33を挿入可能な一端開口の筒状部材である。媒体保持筒122は、昇降体104の内部において、中央部分に配置されており(図10も参照のこと)、先端側を昇降体104のフロントパネル123に固定されたアダプタ124に、後端側をボトムパネル125に固定されたホルダ141にそれぞれ回転自在に支持されている。つまり、図13に示すように、フロントパネル123においては、その裏面に媒体保持筒122が嵌合するアダプタ124が固定されており、媒体保持筒122はアダプタ124に回転自在に嵌合して支持されている。また、ホルダ141に回転自在に支持された媒体保持筒122の後端側には、ホルダ141よりも媒体保持筒122の先端側に位置させてEリング142が装着されている。これにより、媒体保持筒122は、その軸方向への変位が規制されている。
【0056】
昇降体104のフロントパネル123及びアダプタ124とボトムパネル125、それに媒体保持筒122には、表示媒体DMを通すためのスリット123a、124a、125a、122aが形成されており、全体として装着用スリット126を形成している。この装着用スリット126は、設置棒105を含む鉛直線上に位置付けられている(図5参照)。
【0057】
そして、図5に示すように、昇降体104には、フロントパネル123、アダプタ124及び媒体保持筒122を通り、表示媒体DMのバー33をフロントパネル123の前面から挿入するための媒体装着孔SHが形成されている。
【0058】
また、昇降体104は、回転自在に支持した媒体保持筒122を回転駆動するための巻回機構143を内蔵している。この巻回機構143は、減速機構144を介して、アクチュエータとしてのモータMの回転駆動力を媒体保持筒122に伝達するための機構である。減速機構144は、歯車列によって形成され、モータMの回転数を減速して媒体保持筒122に伝達する。媒体保持筒122には、減速機構144の一部をなす従動ギア145が固定されている。
【0059】
図12中には図示しないが、昇降体104には、媒体保持筒122の回転位置を検出するための位置センサS(図14参照)が組み込まれている。昇降体104においては、表示媒体DMのバー33を媒体装着孔SHに挿入して装着するに際して、媒体保持筒122に形成されているスリット122aが必ず真下を向いていなければならない。位置センサSは、媒体保持筒122のスリット122aが真下を向いているかどうかを検出するセンサである。一例として、位置センサSとして反射型光電センサを用い、媒体保持筒122にはそのスリット122aが真下を向いた場合に反射型光電センサに反応を生じさせるマークを印しておく。マークは、通常よりも反射率が高くなるもの、あるいは反対に反射率が低くなるものを用いることができる。
【0060】
本実施の形態の電柱広告塔101は、こうして媒体保持筒122を回転駆動することによって、媒体保持筒122にバー33がセットされている表示媒体DMを巻き取り、あるいは巻き戻し、表示媒体DM中の所望の情報提供領域を昇降体104の直下に出現させることを可能にしている。
【0061】
ここで、前述した設置棒105及びフックピン107は、媒体保持部32を昇降体104の下方位置で基部102に着脱自在に保持させるという役割を担っている。また、媒体保持筒122、媒体装着孔SH及び装着用スリット126は、媒体保持部32から引き出された表示媒体DMを昇降体104に着脱自在に保持させる役割を担っている。そこで、これらの設置棒105、フックピン107、媒体保持筒122及び装着用スリット126は、表示媒体DM及びこれを保持する媒体保持部32を電柱広告塔101にセットし保持するための媒体装着機構127を構成している。
【0062】
図14は、電柱広告塔101の各部の電気的接続を示すブロック図である。電柱広告塔101は、基部102に制御回路151を内蔵している。制御回路151は、情報処理を実行して各部を集中的に制御する制御部152を主体として、この制御部152に、メモリ153、通信回路154、モータ駆動回路155、設置センサ156、音声合成回路157、及びI/O158が接続されて構成されている。
【0063】
制御部152は、一例として、予め決められたシーケンスを実行する回路が印刷された半導体チップによって構成されている。もっとも、情報処理機能を有していれば、そのような半導体チップ構成のものでなくても良い。
【0064】
メモリ153は、制御部152と共に1チップ化されていても、制御部152とは別体で用意されたものであっても良い。
【0065】
通信回路154は、別の電柱広告塔101や管理用の上位機(図示せず)等とデータ通信するための回路である。
【0066】
モータ駆動回路155は、媒体保持筒122を回転駆動するためのモータMを駆動するための回路である。また、本実施の形態では、モータ駆動回路155に、位置センサSの出力を取り込むための回路が組み込まれている。
【0067】
設置センサ156は、電柱広告塔101に媒体保持部32及び表示媒体DMが装着されて昇降体104が所期の上昇位置まで上げられたかどうかを検出するセンサである。つまり、設置センサ156は、設置棒105及びフックピン107に媒体保持部32が正しく装着されたこと、昇降体104の媒体保持筒122に表示媒体DMのバー33が正しく装着されたこと、そして昇降体104が所期の上昇位置まで上げられたこと、の三つの物理現象を検出し、検出結果を出力する。このような設置センサ156としては、リレースイッチを利用したセンサ、マイクロスイッチを利用したセンサ、光電センサ等、従来の各種のセンサを用いることができる。
【0068】
音声合成回路157は、音声データに基づいて音声を合成する音声合成LSIを含み、音声合成LSIの出力をアナログ信号に変換して増幅し、スピーカ131から音声発生させる回路である。
【0069】
I/O158は、有機ELシートELSに対するデータ入出力用である。I/O158は、接続部159を介して有機ELシートELSのドライブ回路42に接続している。
【0070】
ここで、有機ELシートELSのドライブ回路42、そして、このドライブ回路42を電柱広告塔101の制御部152にI/O158経由で接続させる接続部159について説明する。
【0071】
まず、ドライブ回路42は、表示媒体DMをロール状にして保持する媒体保持部32に内蔵されている。一例として、ドライブ回路42は、媒体保持部32における表示媒体DMの支軸に組み込まれており、表示媒体DMの側部にプリントされたフレキシブルな配線(図示せず)を介して有機ELシートELSに接続されている。本実施の形態では、有機ELシートELSはバー33に最も近い情報提供領域をなす位置に配置されているわけであるが、ドライブ回路42との間の配線を考慮すると、表示媒体DMの支軸に最も近い情報提供領域に有機ELシートELSを配置することも好ましい。いずれにしても、有機ELシートELSとドライブ回路42とは多数本の配線を介して接続されている必要がある。
【0072】
次いで、接続部159は、一例として、基部102に設けられたフックピン107と媒体保持部32に設けられたフック溝37とを利用して形成されている。つまり、フック溝37には、ドライブ回路42に接続する複数個の接点を仕組んでおく。そして、フックピン107にも、制御部152に接続されたI/O158に接続する複数個の接点を設けておく。そして、設置棒105に対する媒体保持部32の装着に伴いフック溝37にフックピン107がフックした状態で、フック溝37側の接点とフックピン107側の接点とが接続されるようにするわけである。あるいは、別の一例として、媒体保持部32が有するセット部35の端面と基部102における設置棒105の周囲とに複数個の接点を用意しておき、設置棒105に対する媒体保持部32の装着に伴いフック溝37にフックピン107がフックすると、それらの接点同士が個々に接続されるような構造の接続部159としても良い。有機ELシートELSのドライブ回路42とI/O158との接続にはそれ程多くの接点を必要としないため、各種の構造によって容易に接続部159を構成することができる。
【0073】
さらに、制御部152には、ソナーセンサSの出力およびカメラCの画像データを取り込むためのI/O160も接続されている。これらのソナーセンサSおよびカメラCは、基部102には取り付けられず、電柱広告塔101が設置される電柱11の上方位置に設置されている。
【0074】
前述したように、電柱広告塔101の制御部152は、代表的な処理として、物体検出処理、情報提供処理、広告表示処理、および警告表示処理を実行する。これらのうち、物体検出処理および情報提供処理は、死角となる道路RDに設置されている別の電柱広告塔101に交通安全情報の通報を行なうための処理であり、この意味で、交通安全情報の通報処理という範疇で括ることができる。これに対して、広告表示処理および警告表示処理は、死角となる道路RDに設置されている別の電柱広告塔101から通報を受けた場合に自ら行なう交通安全情報の報知のための処理であり、この意味で、交通安全情報の報知処理という範疇で括ることができる。そこで、電柱広告塔101の制御部152は、交通安全情報の通報処理のためのルーチンと交通安全情報の報知処理のためのルーチンとを別個に実行する。
【0075】
図15は、電柱広告塔101が実行する交通安全情報の通報処理の流れを示すフローチャートである。制御部152は、ソナーセンサSの出力を取り込んで物体Oの検知を行なうと(ステップS101)、速度予測処理を実行する(ステップS102)。これは、一例として、微小時間の時間間隔を隔てて受信したソナーセンサSの出力に基づき物体Oの移動距離を計算することで、算出することができる。
【0076】
ついで、制御部152は、ソナーセンサSの出力に基づいて、物体Oが自らの通報領域(図2参照)内に入ったかどうかを判定する(ステップS103)。制御部152は、物体Oが自らの通報領域内に入ったと判定した場合(ステップS103のYES)、物体Oが通報領域外に抜けたことを判定するまで(ステップS105のYES)、通報処理を実行する(ステップS104)。そして、制御部152は、物体Oが通報領域外に抜けたことを判定すると(ステップS105のYES)、通報終了信号を送信する(ステップS106)。
【0077】
ここで、物体Oが自らの通報領域内に入ったことの判定(ステップS103のYES)は、交差点Xに向かう物体Oが交差点Xの手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出を意味する。そして、物体Oが通報領域外に抜けたことの判定(ステップS105のYES)は、通報領域に入った物体Oが交差点Xに至ったことを検出する到来検出を意味する。したがって、これらのステップS103、ステップS105の処理によって、物体検出手段の機能および物体検出工程が実行される。
【0078】
ステップS104の通報処理は、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101に対して、警告開始信号およびステップS102で予測した速度のデータからなる通報データを送信出力する処理である。また、ステップS106の通報終了信号の送信は、死角となる道路RDの側に設置される別の電柱広告塔101に対して、警告終了信号を通報データとしての送信出力する処理である。したがって、これらのステップS104、ステップS106の処理によって、情報提供手段の機能および情報提供工程が実行される。
【0079】
これに加えて、ステップS104の通報処理は、カメラCが撮影した動画の画像データも通報データとして送信出力する。この画像データは、交差点Xに向かう物体Oを動画撮影した動画である。そこで、制御部152は、近接検出から到来検出までの間、動画データを別の電柱広告塔101に向けて配信する(動画配信手段、動画配信工程)。
【0080】
図16は、電柱広告塔101の制御部152が実行する交通安全情報の報知処理の流れを示すフローチャートである。制御部152は、通報データ(図15のフローチャート中のステップS104参照)の受信に待機している(ステップS201)。通報データの受信を判定しない場合(ステップS201のNO)、制御部152は、広告表示処理を実行している。つまり、電柱広告塔101は、一例として、管理用の上位機(図示せず)から配信された広告コンテンツを含む画像データを受信し、これをメモリ153に保存している。そこで、制御部152は、メモリ153に保存した画像データに従った有機ELシートELSの駆動用信号を生成し、これをI/O158に出力する。有機ELシートELSのドライブ回路42は、I/O158から出力された駆動用信号を受信すると、有機ELシートELSに駆動用信号の元となる画像データに応じた画像を表示させる。この場合、メモリ153に保存されているのは、広告コンテンツを含む画像データであるので、電柱広告塔101は有機ELシートELSに広告を映し出すことができる。あるいは、電柱広告塔101は、別の一例として、管理用の上位機(図示せず)から外部に露出させる表示媒体DMの情報提供領域を特定する情報を受信し、これをメモリ153に保存している。そこで、制御部152は、メモリ153に保存した情報提供領域を特定する情報に従い、当該情報提供領域が外部に表示されるようモータMを駆動制御し、表示媒体DMの位置を調整する。ここに、表示装置Dに広告情報を表示させる広告表示手段の機能および広告表示工程が実行される。
【0081】
これに対して、制御部152は、通報データの受信を判定すると(ステップS201のYES)、現在、警告情報を報知中であるかどうかを確認する(ステップS202)。図15のフローチャート中のステップS104の通報処理では、死角になる道路RDに設置されている左右の電柱広告塔101に通報データを送信出力することになる。このため、制御部152が、図16のフローチャート中のステップS201で通報データの受信判定をした際(ステップS201のYES)、既に左右いずれかの電柱広告塔101から通報データを受信中である可能性がある。これを判定するのがステップS202の処理である。
【0082】
制御部152は、ステップS202で、現在、警告情報を報知中ではないと判定した場合(ステップS202のNO)、通報終了信号(図15のフローチャート中のステップS106参照)を受信するまで(ステップS204のYES)、報知処理を実行する(ステップS203)。制御部152は、報知処理に当たり、有機ELシートELSが表示されるようにモータMを駆動制御し、この有機ELシートELSに警告情報を表示する。一例として、警告情報は、「右から自動車が来ます。ご注意ください。時速40キロ接近中」という文字からなる警告表示によってなされる(図6参照)。右から物体Oが来ることは、ステップS201で受信判定した通報データの送信元の情報から知ることができ、その物体Oが自動車であることと時速が40キロであることは、そのような通報データに含まれている速度情報等によって知ることができる。
【0083】
これに加えて、制御部152は、通報データとして、別の電柱広告塔101が有するカメラCが撮影した動画である画像データを受信している。そこで、図6等には例示しないが、制御部152は、受信した画像データに基づく映像を警告情報に含ませる(動画放映手段、動画放映工程)。
【0084】
さらに、制御部152は、報知処理として、必要に応じて、音声報知を行うようにしても良い。音声報知は、音声データを生成し、生成した音声データに基づく音声合成回路157によって合成音声を生成し、これをスピーカ131から音声出力することによりなされる。一例として、死角となる道路RDから交差点Xに向かう物体Oが危険なほど高い速度であるような場合、音声報知を併用することで、安全性を格段に向上させることができる。
【0085】
その後、制御部152は、通報終了信号(図15のフローチャート中のステップS106参照)の受信を判定すると(ステップS204のYES)、通報データ受信中であるかどうかを確認する(ステップS205)。ステップS203での報知処理の間に、別の電柱広告塔101から通報データを受信している可能性があるからである。
【0086】
制御部152は、ステップS205で、通報データ受信中であると判定すると(ステップS205のYES)、ステップS203での報知処理の間に、別の電柱広告塔101から通報データを受信しているはずなので、ステップS203における報知処理にリターンする。
【0087】
また、制御部152は、ステップS202で、現在、警告情報を報知中であると判定した場合(ステップS202のYES)、分割報知処理を実行する(ステップS206)。分割報知処理というのは、交差点Xの死角となる道路RDの右側と左側とにそれぞれ設置されている二台の電柱広告塔101から送信された通報データを、一画面中に分割して表示する処理である。この条件では、二台の電柱広告塔101から通報データを受信していることになるからである。
【0088】
制御部152は、分割表示処理中(ステップS206)、二台のうちのいずれか一方の電柱広告塔101からの通報終了信号の受信を判定すると(ステップS207のYES)、ステップS204の判定処理に移行し、もう一台の電柱広告塔101からも通報終了信号を受信したかどうかを判定する。この際、分割表示ではない通常の表示処理に復帰する(ステップS203)。
【0089】
そして、制御部152は、ステップS205で、通報データ受信中ではないと判定すると(ステップS205のNO)、図16のフローチャートに示す処理を終了する。これにより、制御部152は、表示装置Dの表示を、警告表示から広告表示に復帰させる。つまり、制御部152は、警告開始信号を受信してから(ステップS201のYES)、警告終了信号を受信するまで(ステップS205のNO)の間のみ、表示装置Dの表示を広告情報から警告情報に切り替え、その後は、警告表示を広告表示に復帰させるわけである。
【0090】
以上説明したステップS201〜ステップS207の処理によって、警告表示手段の機能および警告表示工程が実行される。
【0091】
こうして、図4ないし図16に基づいて説明した図3(a)に例示するような表示媒体DMを採用した表示装置Dを用いた電柱広告塔101によれば、媒体保持部32の巻戻し部34には巻戻し機構が仕組まれているため、表示媒体DMを保持している昇降体104を下降させると、これに合せて表示媒体DMが媒体保持部32に巻き戻される。したがって、表示媒体DMの撤去作業が極めて容易となる。
【0092】
また、昇降体104を昇降させるに際して、基部102の側の錠部106に適合する鍵部52を有するハンドル51を必要とする。このため、ハンドル51の管理をしっかり行なっていれば、セキュリティ性が高く、愉快犯による犯罪等を防止し抑制することができる。
【符号の説明】
【0093】
11 電柱
11a 電柱
11b 電柱
32 媒体保持部
42 ドライブ回路
101 電柱広告塔
101a 電柱広告塔
101b 電柱広告塔
102 基部
104 昇降体
111 昇降機構
112 動力変換機構
114a 下部支軸(受動部)
127 媒体装着機構
143 巻回機構
152 制御部
154 通信回路(送受信部)
158 I/O(入出力回路)
159 接続部
C カメラ(撮影装置)
D 表示装置
DM 表示媒体
ELS 有機ELシート
M モータ(アクチュエータ)
O 物体
R 道路
RDa 道路
RDb 道路
S ソナーセンサ(センサ)
X 交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱にそれぞれ設置される一対の電柱広告塔の一つであって、
設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられ、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、
死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、
設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出手段と、
前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供手段と、
前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示手段と、
前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示手段と、
を備える、ことを特徴とする電柱広告塔を利用した交通安全装置。
【請求項2】
設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体を動画撮影してその撮影した動画の画像データを出力する撮影装置と、
前記近接検出から前記到来検出までの間、前記動画データを前記別の電柱広告塔に向けて配信する動画配信手段と、
前記送受信部が受信した前記画像データに基づく映像を前記警告情報に含ませる動画放映手段と、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の電柱広告塔を利用した交通安全装置。
【請求項3】
前記物体検出手段は、設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体を検知するセンサの出力に基づいて前記近接検出および前記到来検出を実行する、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一に記載の電柱広告塔を利用した交通安全装置。
【請求項4】
前記表示装置は、有機ELシートを表示媒体として有する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の電柱広告塔を利用した交通安全装置。
【請求項5】
前記表示装置は、
前記電柱に取り付けられる基部と、
前記基部に設けられて昇降体を昇降自在に支持する昇降機構と、
前記基部に設けられて駆動力を受ける受動部の回転運動を前記昇降体の昇降運動に変換する動力変換機構と、
有機ELシートを含む複数の提供情報領域を長手方向に配列する表示媒体をロール状に巻回保持すると共に引き出された前記表示媒体をゼンマイの力を利用して巻き戻す巻戻し機構を有する媒体保持部を前記昇降体の下方位置で前記基部に着脱自在に保持させ、前記媒体保持部から引き出し可能な前記表示媒体を前記昇降体に着脱自在に保持させる媒体装着機構と、
前記有機ELシートを画像データに従い駆動するための前記媒体保持部に設けられているドライブ回路との間の電気的接続を果たす接続部と、
アクチュエータの駆動力によって前記昇降体に保持された表示媒体の巻き取り及び巻き戻しを行なう巻回機構と、
前記接続部に接続された前記有機ELシートのドライブ回路に画像データを送信する入出力回路を備え、前記アクチュエータを駆動制御すると共に前記画像データを前記入出力回路から出力する制御部と、
を備える、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の電柱広告塔を利用した交通安全装置。
【請求項6】
交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱と、
前記一対の電柱にそれぞれ設置される一対の電柱広告塔と、
を備え、
前記一対の電柱広告塔は、それぞれ、
設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられて、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、
死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、
設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出手段と、
前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供手段と、
前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示手段と、
前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示手段と、
を備える、ことを特徴とする電柱広告塔を利用した交通安全システム。
【請求項7】
交差点をなす二本の道路の前記交差点付近それぞれに立てられた一対の電柱にそれぞれ設置され、設置される前記道路を通って前記交差点に進入する方向から視認可能に前記電柱に取り付けられて、画像データに基づき可視画像を可変自在に表示する表示装置と、死角となる前記道路の側に設置される別の前記電柱広告塔との間で情報を送受信する送受信部と、を備える一対の電柱広告塔の間で、
設置される前記道路を通って前記交差点に向かう物体が当該交差点の手前所定距離まで近づいたことを検出する近接検出と前記交差点に至ったことを検出する到来検出とを実行する物体検出工程と、
前記近接検出に応じて警告開始信号を、前記到来検出に応じて警告終了信号を、前記送受信部から前記別の電柱広告塔に向けて送信出力する情報提供工程と、
前記表示装置に広告情報を表示させる広告表示工程と、
前記送受信部が前記警告開始信号を受信してから前記警告終了信号を受信するまでの間、前記表示装置の表示を広告情報から警告情報に切り替える警告表示工程と、
を実行する、ことを特徴とする電柱広告塔を利用した交通安全方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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