説明

電柱用支柱

【課題】電柱に対する設置位置とは反対側に作用する転倒モーメントに対応した別の電柱用支柱を設けなくても、電柱が傾くことを防止することのできる電柱用支柱を提供することを課題とする。
【解決手段】
柱状に形成されて長手方向に剛性を有する支柱本体2を備え、支柱本体2は、第一端部と該第一端部とは反対側の第二端部とを有し、ケーブルを支持した電柱に第一端部が連結され、且つ第二端部が前記電柱から所定距離離れた位置に埋設されて地盤に支持されることによって、電柱に対して傾斜した姿勢で設置される電柱用支柱1において、支柱本体2の外周面から延出する少なくとも一つのアンカー部材3を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱が傾いたり、倒れたりすることを防止するための電柱用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、送電線や電話線等のケーブルは、張力がかけられた状態で所定の間隔毎に設置された電柱間に架け渡される。そのため、電柱には、ケーブルの張力や、ケーブルの張力に加えて、ケーブルに作用する風圧荷重の影響で転倒モーメントが生じる。これにより、電柱は、転倒モーメントが作用する方向に傾いたり、倒れたりする虞がある。
【0003】
このような状況において、電柱が傾いたり、倒れたりすることを防止するための電柱用支柱が提供されている。かかる電柱用支柱は、鋼管やコンクリート等で柱状に形成され、長手方向において剛性を有する支柱本体を備えている。支柱本体は、長手方向において第一端部と該第一端部の反対側の第二端部とを有している。そして、支柱本体の断面形状は、第一端部から第二端部に亘って同一又は略同一に形成されている。
【0004】
支柱本体の第一端部は、電柱の上部に連結される。その一方で、支柱本体の第二端部側は、転倒モーメントが作用する方向に電柱から所定距離離れた地中に埋設される。これにより、支柱本体は、電柱に対して傾斜した姿勢で設置される。
【0005】
そして、支柱本体は、長手方向において剛性を有しているため、第二端部が地盤に支持されることで、電柱に作用する転倒モーメントの影響で軸方向の押込力が作用しても、電柱に作用する転倒モーメントに対抗できる。
【0006】
従って、上記構成の電柱用支柱は、ケーブルの張力等の影響を受ける方向(転倒モーメントの作用する方向)に向けて電柱が傾いたり倒れたりすることを防止できるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−111769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電柱に支持されるケーブルは、一本に限らず、二本以上のケーブルがそれぞれ異なる方向に向けて延びるように電柱に支持されることがある。そのため、電柱には、複数本のケーブルの張力等の影響で電柱用支柱が設置されている側の反対側(電柱の中心を境とした反対側)に転倒モーメントが作用する場合がある。このような場合、転倒モーメントが作用する方向に対応させて電柱用支柱を設置することが必要となる。
【0009】
しかしながら、電柱用支柱の第二端部は、転倒モーメントが作用する方向で電柱から離れた位置に埋設されるため、電柱用支柱を転倒モーメントの作用する方向に対応させて設置するには、電柱の周囲に所定の広さのスペースが必要となる。
【0010】
そのため、電柱の設置条件によっては(例えば、電柱がビルの近傍に設置されている場合)、電柱用支柱の設置に必要となるスペースを確保できず、転倒モーメントに対応する位置の全てに電柱用支柱を設置することができない場合がある。このような場合、電柱に対して、電柱用支柱が設置されている側とは反対側に転倒モーメントが作用すると、設置された電柱用支柱の支柱本体に軸方向の引抜力が作用することになる。
【0011】
上述のように、電柱用支柱は、支柱本体の第一端部から第二端部に亘って断面形状が同一又は略同一となるように形成されているため、支柱本体の埋設されている部分と地盤との間に生じる摩擦抵抗が小さい。そのため、電柱用支柱は、支柱本体に軸方向の引抜力が作用すると引き抜かれる傾向にあり、電柱が転倒モーメントの作用する方向に傾くことを防止することができない場合がある。
【0012】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、電柱に対する設置位置とは反対側に作用する転倒モーメントに対応した別の電柱用支柱を設けなくても、電柱が傾くことを防止することのできる電柱用支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電柱用支柱は、柱状に形成されて長手方向に剛性を有する支柱本体を備え、支柱本体は、第一端部と該第一端部の反対側の第二端部とを有し、ケーブルを支持した電柱に第一端部が連結され、且つ第二端部が前記電柱から所定距離離れた位置に埋設されて地盤に支持されることによって、電柱に対して傾斜した姿勢で設置される電柱用支柱において、支柱本体の外周面から延出する少なくとも一つのアンカー部材を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成の電柱用支柱において、ケーブルの張力等の影響で、電柱の支柱本体が連結されている側に転倒モーメントが作用すると、支柱本体は、該電柱から軸線方向の押込力を受けることになる。しかしながら、支柱本体は、長手方向において剛性を有し、支柱本体の第二端部が電柱から離れた位置に埋設されることで地盤に支持されるため、電柱に作用する転倒モーメントに対抗する。従って、電柱用支柱は、電柱が支柱本体の連結されている側に倒れることを防止できる。
【0015】
そして、上記構成の電柱用支柱において、ケーブルの張力等の影響で、電柱の支柱本体が連結されている側とは反対側に転倒モーメントが作用すると、支柱本体は、該電柱から軸方向の引抜力を受けることになる。しかしながら、少なくとも一つのアンカー部材が支柱本体の外周面から延出しているため、支柱本体に軸方向の引抜力が作用すると、アンカー部材が地盤に引っ掛かることで該引抜力に対する抗力を作用させる。
【0016】
これにより、電柱用支柱は、支柱本体に軸方向の引抜力が作用しても、地盤から引き抜かれることなく、電柱の支柱本体が連結されている側とは反対側に作用する転倒モーメントに対抗する。従って、電柱用支柱は、電柱が支柱本体の連結されている側とは反対側に倒れることを防止できる。
【0017】
さらに、上記構成の電柱用支柱のアンカー部材は、支柱本体の外周面から延出するため、支柱本体の支点をかわした位置に配置される。そのため、電柱用支柱が設置されるにあたり、支柱本体の第二端部側が地盤に支えられた状態にされても、アンカー部材が支柱本体によって地盤に押し付けられることを防止できる。従って、アンカー部材の破損を防止した状態で支柱本体の第二端部を埋設できる。
【0018】
本発明の一態様として、アンカー部材は、支柱本体に対する姿勢が変更可能に構成されていてもよい。このようにすれば、支柱本体の第二端部が埋設されるにあたってアンカー部材が支柱本体によって地盤に押し付けられる虞がある場合、アンカー部材の支柱本体に対する姿勢を適宜変更することで、該アンカー部材が支柱本体によって地盤に押し付けられることを防止できる。従って、電柱用支柱は、アンカー部材の破損をより確実に防止することができる。
【0019】
この場合、支柱本体の外周面に沿って湾曲する帯状の湾曲部と該湾曲部の長手方向における両端部のそれぞれに延設される固定片部とを有する一対の固定部材を備え、アンカー部材は、一方向に長手をなす延出部と、延出部に連結されるとともに、該延出部の長手方向と交差する方向に延びる引掛部とを備え、一対の固定部材のそれぞれは、湾曲部が支柱本体に当接した状態で、互いに対向する固定片部同士が連結されることで支柱本体に固定されるように構成され、アンカー部材は、一対の固定部材のそれぞれの固定片部に挟み込まれて固定された状態と、一対の固定部材のそれぞれの固定片部によるアンカー部材に対する挟み込みが解除されて支柱本体に対する姿勢変更が許容された状態とに切替可能に構成されていてもよい。このようにすれば、電柱用支柱は、アンカー部材の支柱本体に対する姿勢を変更した状態で、該アンカー部材を固定することができる。
【0020】
この場合、固定部材の固定片部とアンカー部材との間に配置された弾性部材をさらに備えていてもよい。
【0021】
このようにすれば、アンカー部材は、弾性部材によって固定部材の固定片部に向けて付勢されて該固定部材の固定片部に圧接した状態になる。そのため、アンカー部材は、固定部材の固定片部との間に生じる摩擦力によって支柱本体に対する姿勢が維持される。これに伴い、上記構成の電柱用支柱では、アンカー部材が一対の固定部材のそれぞれの固定片部のみに挟み込まれる場合に比して、一対の固定部材のそれぞれの固定片部のアンカー部材を挟み込む力を小さくしつつ、アンカー部材の支柱本体に対する姿勢を維持することができる。
【0022】
そして、上記構成の電柱用支柱では、支柱本体に対する姿勢が決定されたアンカー部材に大きな外力が作用すると、アンカー部材の支柱本体に対する姿勢が変更される。従って、上記構成の電柱用支柱は、アンカー部材に大きな外力が作用したとしても、該アンカー部材が破損することを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の電柱用支柱によれば、電柱に対する設置位置とは反対側に作用する転倒モーメントに対応した別の電柱用支柱を設けなくても、電柱が傾くことを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る電柱用支柱の部分正面図である。
【図2】図2は、同実施形態に係る電柱用支柱におけるアンカー部材の延出部の正面図である。
【図3】図3は、同実施形態に係る電柱用支柱におけるアンカー部材の引掛部の概略図であって、図3(a)は、引掛部の正面図であり、図3(b)は、引掛部の平面図である。
【図4】図4は、同実施形態に係る電柱用支柱における固定部材の概略図であって、図4(a)は、固定部材の平面図であり、図4(b)は、固定部材の正面図である。
【図5】図5は、同実施形態に係る電柱用支柱が設置されている状態図であって、連結部材周辺の部分拡大図を含む状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態に係る電柱用支柱について添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電柱用支柱は、ケーブルを支持している電柱に対して傾斜した状態で設置されるものであり、電柱にケーブルの張力の影響で転倒モーメントが作用しても、電柱が転倒モーメントの作用する方向に倒れることを防止するためのものである。
【0026】
具体的に説明すると、電柱用支柱は、図1に示す如く、柱状に形成されて長手方向に剛性を有する支柱本体2を備えている。また、電柱用支柱1は、支柱本体2の外周面から延出する少なくとも一つのアンカー部材3を備えている(本実施形態では、一対のアンカー部材3,3を備えている)。本実施形態に係る電柱用支柱1は、支柱本体2の外周面に沿って湾曲する帯状の湾曲部40、及び該湾曲部40の長手方向における両端部のそれぞれに延設される固定片部41,41を有する一対の固定部材4,4を備えている。
【0027】
支柱本体2は、鋼管やコンクリート等で形成されている。また、支柱本体2は、長手方向に第一端部及び該第一端部の反対側の第二端部を有する。そして、支柱本体2の断面形状は、第一端部から第二端部に亘って同一に形成されている。
【0028】
一対のアンカー部材3,3のそれぞれは、一方向に長手をなす延出部30と、延出部30に連結されるとともに、延出部30の長手方向と交差する方向に延びる引掛部31とを備えている。
【0029】
延出部30は、図2に示す如く、一方向に長手をなし、長手方向に第一端部及び該第一端部の反対側の第二端部を有する棒部300と、棒部300の第一端部に連結された連結部301と、棒部300の第二端部に連結された抜止部302とを備えている。
【0030】
棒部300は、長手方向で伸縮しにくく構成されている。本実施形態において、棒部300は、金属製の材料で棒状に形成されている。連結部301は、平板状に形成されている。また、連結部301には、連結孔301aが設けられている。
【0031】
抜止部302は、平板状に形成されている。また、抜止部302の上端部(棒部300が設けられている側の端部)における両端部は、支柱本体2の第一端部から第二端部に向かう方向に傾斜するように形成されている。
【0032】
引掛部31は、図3(a)、及び図3(b)に示す如く、一方向に長手をなし、長手方向における一端部同士が接合される一対の引掛部本体310,310を備える。また、引掛部31は、延出部30(延出部30の連結部301、及び延出部30の棒部300)を挿通可能な挿通部311が形成されている。具体的に説明すると、引掛部31は、一方向に長手をなし、長手方向における一端部同士が接合される一対の引掛部本体310,310と、前記挿通部311を形成するための一対の挿通部形成部材312とを備えている。
【0033】
一対の引掛部本体310,310のそれぞれは、一方向に長手をなす第一本体形成部310aと、第一本体形成部310aの長手方向における一端部に設けられる第二本体形成部310bとを備えている。
【0034】
第一本体形成部310aは、図3(a)に示す如く、部分的に長手方向に沿って、面直交方向(以下、厚み方向とする)における一方側に向けて膨出するように形成されている。これにより、第一本体形成部310aには、長手方向に沿って延びる嵌合溝310cが形成されている。本実施形態において、嵌合溝310cは、第一本体形成部310aの幅方向における中央部に形成されている。また、嵌合溝310cは、延出部30の抜止部302における上端部が嵌まり込み可能に形成されている。
【0035】
本実施形態に係る第二本体形成部310bは、第一本体形成部310aの頂部の両側のそれぞれに設けられている。一対の第二本体形成部310b,310bのそれぞれは、第一本体形成部310aに対して傾斜した状態で、第一本体形成部310aの長手方向における一端部から延出するように構成されている。本実施形態では、一対の第二本体形成部310b,310b同士の間隔がアンカー部材3の連結部301よりも広く設定されている。
【0036】
そして、一対の引掛部本体310,310のそれぞれにおいて、一方の第二本体形成部310b同士が接合されるとともに、他方の第二本体形成部310b同士が接合されている。これにより、一対の第一本体形成部310aのそれぞれは、長手方向における一端部側から他端部側に向けて互いに離間するように構成される。また、上述のように、一対の第二本体形成部310b,310b同士の間隔がアンカー部材3の連結部301よりも広く設定されているため、一対の引掛部本体310,310のそれぞれは、互いの間にアンカー部材3の連結部301を挿通させることができるようになっている。
【0037】
一対の挿通部形成部材312,312のそれぞれは、円弧状に形成された円弧部312aと、該円弧部312aの両端側のそれぞれに設けられる一対の片部312b,312bとを備えている。
【0038】
具体的に説明すると、一方の挿通部形成部材312の各片部312b,312bのそれぞれは、一方の引掛部本体310の各第二本体形成部310b,310bのそれぞれに接合されている。さらに、他方の挿通部形成部材312の各片部312b,312bのそれぞれは、他方の引掛部本体310の各第二本体形成部310b,310bのそれぞれに接合されている。これにより、一対の挿通部形成部材312,312のそれぞれの各円弧部312a,312aが前記挿通部311を形成している。
【0039】
これにより、一対の挿通部形成部材312,312のそれぞれは、互いの片部312b,312b間、及び互いの円弧部312a,312a間にアンカー部材3の連結部301を挿通可能に配置されている。また、一対の挿通部形成部材312,312のそれぞれは、互いの円弧部312a,312a間にアンカー部材3の棒部300を挿通可能に配置されている。従って、本実施形態では、連結部301及び棒部300が挿通部311に挿通され、抜止部302の上端部が引掛部31の嵌合溝310cに嵌合されることでアンカー部材3が構成される。
【0040】
一対の固定部材4,4のそれぞれは、図4(a)、及び図4(b)に示す如く、互いの湾曲部40,40で支柱本体2を挟み込んだ状態で、互いに対向する固定片部41,41同士が連結されることで支柱本体2に固定されるように構成される。具体的に説明すると、一対の固定部材4,4のそれぞれは、互いの固定用孔410,410に挿通させたボルトBにナットNが螺合されることで、互いに連結される。
【0041】
本実施形態では、一対の固定部材4,4の固定片部41,41の間にアンカー部材3の延出部30における連結部301が配置される。このようにすれば、一対の固定部材4,4のそれぞれの固定用孔410,410とアンカー部材3の連結孔301aとに挿通させたボルトBにナットNが螺合されることによって、アンカー部材3の連結部301が一対の固定部材4,4のそれぞれの固定用孔410,410によって挟み込まれる。これにより、アンカー部材3は、一対の固定部材4,4によって、支柱本体2に対する姿勢が決定されるとともに、支柱本体2に固定される。
【0042】
本実施形態に係る電柱用支柱1は、弾性部材をさらに備えている。弾性部材5は、一方向で伸縮することができるように構成されている。本実施形態に係る弾性部材5は、帯状の金属性の材料を面直交方向における一方側と他方側とに交互に屈曲させることで蛇腹状に形成されている。
【0043】
上述のように、一対の固定部材4,4のそれぞれは、一方の固定部材4の固定用孔410と他方の固定部材4の固定用孔410とに挿通されたボルトBにナットNが螺合されることで互いに連結された状態になるように構成されている。そのため、弾性部材5には、一方向に沿って並ぶ複数の挿通孔(図示しない)が設けられている。
【0044】
そして、弾性部材5は、一方向で縮められた状態で、互いに対向する対向片部41,41間に配置されている。本実施形態では、アンカー部材3の延出部30の両側のそれぞれに弾性部材5が配置されている。そのため、本実施形態に係る電柱用支柱1では、弾性部材5,5がアンカー部材3の延出部30(連結部301)に圧接した状態になっている。これにより、一対のアンカー部材3,3のそれぞれは、延出部30(連結部301)と弾性部材5,5との間に生じる摩擦力によって支柱本体に対する姿勢が維持できるように構成されている。
【0045】
さらに、本実施形態に係る電柱用支柱1は、支柱本体2の第一端部を電柱に連結するための連結部材6を備えている。連結部材6は、図5に示す如く、支柱本体2の第一端部に固定可能な支柱用連結部60と、電柱に固定可能な電柱用連結部61と、支柱用連結部60及び電柱用連結部61を連結する中継部62とを備える。
【0046】
支柱用連結部60は、帯状に形成され、長手方向に第一端部及び該第一端部の反対側の第二端部を有する一対の支柱用帯部600,600を備えている。一対の支柱用帯部600,600のそれぞれの長手方向における中央部は、支柱本体2の第一端部の曲率と略同一の曲率で湾曲した態様になっている。また、一対の支柱用帯部600,600のそれぞれの第一端部は、中継部62に連結される。そして、一対の支柱用帯部600,600のそれぞれの第二端部には、支柱用連結孔601が設けられている。
【0047】
そのため、本実施形態に係る支柱用連結部60は、一対の支柱用帯部600,600のそれぞれを支柱本体2の第一端部側の外周部に当接させて、一対の支柱用帯部600,600のそれぞれの支柱用連結孔601,601に挿通させたボルトBにナットを螺合させることによって、支柱本体2の第一端部側に連結されている。
【0048】
電柱用連結部61は、帯状に形成され、長手方向に第一端部及び該第一端部の反対側の第二端部を有する一対の電柱用帯部610,610を備えている。一対の電柱用帯部610,610のそれぞれの長手方向における中央部は、電柱Dの第一端部の曲率と略同一の曲率で湾曲した態様になっている。また、一対の電柱用帯部610,610のそれぞれの第一端部は、中継部62に連結される。そして、一対の電柱用帯部610,610のそれぞれの第二端部には、電柱用連結孔611が設けられている。
【0049】
そのため、本実施形態に係る電柱用連結部61は、一対の電柱用帯部610,610のそれぞれを電柱Dの外周部に当接させて、一対の電柱用帯部610,610のそれぞれの電柱用連結孔611,611に挿通させたボルトBにナットを螺合させることによって、電柱Dの上部に連結される。
【0050】
本実施形態に係る電柱用支柱1は、以上の通りであり、続いて、該電柱用支柱1が電柱の設置、及び傾きを防止する仕組みについて添付図面を参照しつつ説明を行うこととする。
【0051】
電柱用支柱1を設置するにあたって、まず、電柱から所定距離離れた位置に支柱本体2の第二端部を埋設するための埋設穴Hが掘削される。そして、一対の固定部材4,4のそれぞれによって、一対のアンカー部材3,3のそれぞれが支柱本体2の第二端部側に固定される。このとき、一対のアンカー部材3,3のそれぞれは、埋設穴Hの状態に応じて支柱本体2に対する姿勢が決定される。
【0052】
さらに、上述のように、連結部材6によって、支柱本体2の第一端部を電柱Dに連結する。そして、支柱本体2の第二端部を埋設穴Hの内部に配置する。このとき、一方のアンカー部材3が支柱本体2によって地盤に押し付けられる虞がある場合、一対の固定部材4,4のそれぞれの一方の固定片部41,41によるアンカー部材3に対する挟み込みによる固定が解除された後に、該アンカー部材3が固定片部41,41同士の対向する方向に沿って延びる軸線周りで回転させられる。これにより、支柱本体2によって地盤に押し付けられる虞があるアンカー部材3の姿勢が変更される。そして、アンカー部材3が一対の固定部材4,4のそれぞれの一方の固定片部41,41で挟み込まれて固定されることで、該アンカー部材3の姿勢が再度決定される。
【0053】
また、他方のアンカー部材3が支柱本体2によって地盤に押し付けられる虞がある場合、一対の固定部材4,4のそれぞれの他方の固定片部41,41によるアンカー部材3に対する挟み込みが解除された後に、該アンカー部材3が固定片部41,41同士の対向する方向に沿って延びる軸線周りで回転させられる。これにより、支柱本体2によって地盤に押し付けられる虞があるアンカー部材3の姿勢が変更される。そして、アンカー部材3が一対の固定部材4,4のそれぞれの他方の固定片部41,41で挟み込まれて固定されることで、該アンカー部材3の姿勢が再度決定される。
【0054】
そして、埋設穴Hを埋め戻すことで、支柱本体2の第二端部及び一対のアンカー部材3,3のそれぞれが埋設される。
【0055】
上記態様で設置された支柱本体2は、ケーブルCの張力の影響によって、電柱Dの支柱本体2が連結されている側に転倒モーメントが作用すると、該電柱Dから軸線方向の押込力を受けることになる。しかしながら、支柱本体2は、長手方向において剛性を有し、支柱本体2の第二端部が電柱Dから離れた位置に埋設されることで地盤に支持されるため、電柱Dに作用する転倒モーメントに対抗する。従って、電柱用支柱1は、電柱が支柱本体2の連結されている側に倒れることを防止できる。
【0056】
また、上記態様で設置された支柱本体2は、ケーブルCの張力の影響によって、電柱Dの支柱本体2が連結されている側とは反対側に転倒モーメントが作用すると、該電柱Dから軸方向の引抜力を受けることになる。しかしながら、一対のアンカー部材3,3のそれぞれが支柱本体2の外周面から延出しているため、支柱本体2に軸方向の引抜力が作用すると、一対のアンカー部材3,3のそれぞれが地盤に引っ掛かることで該引抜力に対する抗力を作用させる。
【0057】
これにより、電柱用支柱1は、支柱本体2に軸方向の引抜力が作用しても、地盤から引き抜かれることなく、電柱Dの支柱本体2が連結されている側とは反対側に作用する転倒モーメントに対抗する。従って、電柱用支柱1は、電柱Dが支柱本体2の連結されている側とは反対側についても電柱Dが倒れることを防止できる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る電柱用支柱1によれば、電柱Dに対する設置位置とは反対側に作用する転倒モーメントに対応した別の電柱用支柱1を設けなくても、電柱Dが傾くことを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【0059】
そして、本実施形態に係る電柱用支柱1の一対のアンカー部材3,3のそれぞれは、支柱本体2の外周面から延出するため、支柱本体2の支点をかわした位置に配置される。そのため、電柱用支柱1が設置されるにあたり、支柱本体2の第二端部側が地盤に支えられた状態にされても、一対のアンカー部材3,3のそれぞれが支柱本体2によって地盤に押し付けられることを防止できる。従って、電柱用支柱1は、一対のアンカー部材3,3のそれぞれの破損を防止した状態で支柱本体2の第二端部側を埋設できる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る電柱用支柱1は、一対のアンカー部材3,3の延出部30と一対の固定部材4,4の固定片部41,41との間に摩擦力が生じることで、該アンカー部材3,3のそれぞれが支柱本体2に対する姿勢を維持することができるように構成されている。そのため、電柱用支柱1は、一対のアンカー部材3,3のそれぞれの延出部30が一対の固定部材4,4のそれぞれの固定片部41,41のみに挟み込まれる場合に比して、一対の固定部材4,4のそれぞれの固定片部41,41のアンカー部材3の延出部30を挟み込む力を小さくしつつ、アンカー部材3の支柱本体2に対する姿勢を維持することができる。従って、電柱用支柱1を設置した後に、地震等の影響で一対のアンカー部材3,3のそれぞれに外力が作用したとしても、該アンカー部材3,3が破損することを防止できる。
【0061】
尚、本発明に係る電柱用支柱は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
また、上記実施形態において、支柱本体2は、第一端部から第二端部に亘って一体的に形成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、長手方向で分割可能に構成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、電柱用支柱1は、一対のアンカー部材3,3を備えていたが、これに限定されるものではなく、例えば、一つのアンカー部材3を備えるようにしたり、三つ以上のアンカー部材3,3…を備えるようにしたりすることもできる。
【0064】
また、上記実施形態において、引掛部31は、延出部30の長手方向と交差する方向に延びるように形成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、引掛部31は、皿状や、円錐状に形成されていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、一対の固定部材4,4のそれぞれの固定片部41,41が並ぶ方向におけるアンカー部材3の延出部30の両側のそれぞれに弾性部材5が配置されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、一対の固定部材4,4のそれぞれの固定片部41,41が並ぶ方向におけるアンカー部材3の延出部30の片側に弾性部材5が配置されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、弾性部材5は、帯状の金属性の材料を面直交方向における一方側と他方側とに交互に屈曲させることで蛇腹状に形成されていたが、これに限定されるものではなく、コイルバネであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、弾性部材5は、帯状の金属性の材料を面直交方向における一方側と他方側とに交互に屈曲させることで蛇腹状に形成されていたが、これに限定されるものではなく、ブロック状に形成されたゴムや、合成樹脂であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…電柱用支柱、2…支柱本体、3…アンカー部材、4…固定部材、5…弾性部材、6…連結部材、30…延出部、31…引掛部、40…湾曲部、41…固定片部、60…支柱用連結部、61…電柱用連結部、62…中継部、300…棒部、301…連結部、301a…連結孔、302…抜止部、310…引掛部本体、310a…第一本体形成部、310b…第二本体形成部、310c…嵌合溝、311…挿通部、312…挿通部形成部材、312a…円弧部、312b…片部、410…固定用孔、600…支柱用帯部、601…支柱用連結孔、610…電柱用帯部、611…電柱用連結孔、B…ボルト、C…ケーブル、D…電柱、H…埋設穴、N…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に形成されて長手方向に剛性を有する支柱本体を備え、支柱本体は、第一端部と該第一端部の反対側の第二端部とを有し、ケーブルを支持した電柱に第一端部が連結され、且つ第二端部が前記電柱から所定距離離れた位置に埋設されて地盤に支持されることによって、電柱に対して傾斜した姿勢で設置される電柱用支柱において、支柱本体の外周面から延出する少なくとも一つのアンカー部材を備えることを特徴とする電柱用支柱。
【請求項2】
アンカー部材は、支柱本体に対する姿勢が変更可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の電柱用支柱。
【請求項3】
支柱本体の外周面に沿って湾曲する帯状の湾曲部と該湾曲部の長手方向における両端部のそれぞれに延設される固定片部とを有する一対の固定部材を備え、アンカー部材は、一方向に長手をなす延出部と、延出部に連結されるとともに、該延出部の長手方向と交差する方向に延びる引掛部とを備え、一対の固定部材のそれぞれは、湾曲部が支柱本体に当接した状態で、互いに対向する固定片部同士が連結されることで支柱本体に固定されるように構成され、アンカー部材は、一対の固定部材のそれぞれの固定片部に挟み込まれて固定された状態と、一対の固定部材のそれぞれの固定片部によるアンカー部材に対する挟み込みが解除されて支柱本体に対する姿勢変更が許容された状態とに切替可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の電柱用支柱。
【請求項4】
固定部材の固定片部とアンカー部材の延出部との間に配置された弾性部材をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の電柱用支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102564(P2013−102564A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243684(P2011−243684)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】