説明

電柱

【課題】道路幅を広げ、地上部の柱と地中部の柱とを強固に連結し、地上部に突起物が生じない、設置コストが安価な電柱を提供すること。
【解決手段】上下に分断された地中部の地下柱体1と地上部の地上柱体2との間に、側溝用の通水路用部材4が設置され、かつ地下柱体1の上端部と地上柱体2の下端部とが、それらの両方の外周面を支承する内面を有する縦孔を備えていると共に、前記通水路用部材4を挿通するための横孔15を有する鞘管3により接続されていることを特徴とする電柱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側部または歩道側部に設置される電柱に関し、特に、側溝下部の地中および側溝上部の空間部に配置され、車道または歩道の幅を広げるための電柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図15上図に示すように、道路上に設置される電柱17は、通常、道路脇に設けられる側溝部材18を避けて、車道20よりに配置される。しかし、このようにすると、道路通行幅H1が狭くなり、対向車とのすれ違うときに車同士が接触する危険性があり、また車椅子,自転車通勤・通学、ベビーバギー,お年寄りにとっては、車が走行する側に迂回して通行しなければならないため、車と接触し、安全な通行の妨げとなることがある。
【0003】
また、都市の防災対策の観点からも、緊急輸送路の確保のためには、電柱17が障害となる局所的に幅の狭くなる道路は好ましくない。安全で快適な通行空間の形成・歩行空間のバリアフリー化を目的に道路の幅員を確保するために、電線地中化が行われるようになってきているが、コストがかかることから主要な幹線道路等に限られ、非幹線道路(生活道路)では殆ど手付かづの状態で、路上に突き出た電柱17は放置されたままの現状である。
【0004】
そこで、電柱17により道路幅が狭まることを避けるための、いくつか電柱や側溝の構造が提案されている。
例えば、(1)既存の電柱を地表面レベルで切断して、地中部の地下電柱の上端部に平板を接続し、その平板を側溝の上で路肩の方まで延長させ、その平板上に、切断したもう片方の地上部の電柱を偏心させて接続する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この方法によると、既存の電柱をそのまま利用して、道路幅を広げることができる。
【0005】
また、(2)天井部・底部・側面部とを有する中空枠体を側溝に用い、底部の下に電柱を支える地中部材、天井部に電柱を載せる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、(3)鋼管コンクリート複合台柱を地中部の基礎とし、その上部に側溝に相応する切り欠き部を設け、更にその上に接続用底版を介して上柱(地上柱体)を取り付ける構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
前記(2)、(3)のいずれの方法においても、地中部の基礎と上部の柱の重心位置とが一致する構造となっている。
【特許文献1】特開2002−354642号公報
【特許文献2】特開平1−187230号公報
【特許文献3】特開昭58−185865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記(1)の技術では、上部の柱と地中部の基礎とが偏心した構造となっており、上部の柱と地中部の基礎とを接続する地表面部において、電柱が地震や風荷重を受けた際に、大きな曲げモーメントが作用する構造上の弱点となっている。
なお、地上部の柱を固定する電柱狭着具を地表面部に設置する平板から突設形成する場合、大きな外力に抵抗するための具体的な接続方法は現実的に難しという問題がある。
【0008】
前記(2)の技術の場合においては、前記(1)のように上部の柱と地中部の基礎とが偏心するような構造となっておらず、両者の重心が一致する構造となっているが、天井部や底部との柱の接続方法に関しては、嵌合及びボルト締めからなる手段等が考えられるが、大きな曲げ荷重が作用する取り付け基部に対する具体的な接続方法についてまでは知られていない。
【0009】
前記(3)の場合は、前記(2)の構造と同様に、上部の柱と地中部の基礎の重心位置とが一致しており、上部の柱と地中部の基礎との具体的な取り付け方法として、地中部基礎の上部と地上部柱の下端に鋼製鉄板を取り付けボルトにて相互を接続し、地上部底部には補強用リブを取り付ける方法も知られている。
【0010】
しかし、このような方法においては、ボルトにて上部の柱と地中部の柱とを接続しなければならず、台風や地震などによる大きな曲げ荷重に耐えることが困難である。また、側溝部分の切欠部を設けたことによる強度低下を補うために、地中の柱を鋼管コンクリート複合柱としているが、既存の電柱と比べて大幅なコストアップになってしまうという問題がある。
【0011】
また、接続部のボルト頭部や補強用リブが道路上に飛び出しており、通行人が足を引っ掛け躓き転倒する恐れがある。
【0012】
本発明は、前記の問題を解決し、地上部の柱と地中部の柱とを強固に連結し、地上部に突起物が生じない、設置コストが安価な電柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために本発明は、次のように構成する。
(1)第1発明の電柱においては、上下に分断された地中部の地下柱体と地上部の地上柱体との間に、側溝用の通水路用部材が設置され、かつ地下柱体の上端部と地上柱体の下端部とが、それらの両方の外周面を支承する内面を有する縦孔を備えていると共に、前記通水路用部材を挿通するための横孔を有する鞘管により接続されていることを特徴とする。
(2)第2発明では、第1発明の電柱において、鞘管として、内周面に溶接にて取り付けた鋼材からなる補剛材で補強した鋼管を用いられていることを特徴とする。
(3)第3発明では、第1発明または第2発明の電柱において、鞘管として、断面耐力が電柱本体と同等以上の耐力の厚肉の鋼管を用いることを特徴とする。
(4)第4発明では、第1発明または第2発明のいずれかに記載の電柱において、鞘管は、外管の内側に間隔をおいて配置された内管を有する2重管構造とされ、かつ内管と外管とで挟まれた内側空間に補剛材が設置され、補剛材と内管と外管とで形成される空隙にコンクリートが充填されていることを特徴とする。
(5)第5発明では、第1、第2発明または第4発明のいずれかに記載の電柱において、鞘管は、外管の内側に補剛材が設置され、補剛材を埋め込むようにコンクリートが充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電柱の構造とすることで、側溝の下部に地中柱体を設置すると共に、側溝の上部に地上柱体を設置する構造の電柱を設置することができるため、通行可能な道路幅を広げることができ、地中部の地中柱体と地上部の地上柱体との間に、既存の側溝と同形状等の排水溝を差し込むために排水溝内での雨水等の流れを遮ることがない上に、更に以下の効果を生み出すことができる。
【0015】
地下柱体と地上柱体が貫通せず柱体の接続部となる鞘管の部分で、中空断面を形成されることになるが、所定の強度を有する鞘管により接続されているため、確実に地中部柱体と地上部柱体とを接続することができる。地下柱体と地上柱体とが鞘管により接続していると共に、通水路用部材を鞘管に挿通させる構造であるので、構造が簡単であり、また設置が容易であると共に設置コストが安価な電柱を提供することができる。また、鞘管による連結部が滑らから表面で覆われるため、通行者に危害を与えるおそれはない。また、鞘管と地下柱体と柱状柱体および通水路用部材の重心位置を同じ縦中心軸線状に位置させることが可能であるので、合理的な設計をすることができる。
【0016】
また、第2発明によると、鋼管内面を補剛材により補強した鞘管を用いるため、剛性の高い鞘管とすることができ、上部柱体に曲げ力が作用した場合に確実に鞘管により支承して、地中柱体に伝達することができる。
【0017】
第3発明によると、断面耐力が電柱本体と同等以上の耐力の厚肉の鋼管からなる鞘管であるので、接続箇所での曲げ、せん断耐力は本体の柱体と同程度以上とすることができる。
【0018】
地中部の地下柱体と地上部の地上柱体とが、外周面が滑らかな曲面にて形成される鞘管にて連結されると、地上に突起物が生じることなく、周辺を通行する車、自転車、歩行者に対して安全である。
既設の電柱または既設の電柱を切断した上部柱体を鞘管内に差し込むことで、既設の電柱を利用して、本発明の構造の電柱とすることも可能である。
【0019】
第4発明のように、鞘管を補剛材を介在させた2重鋼管構造とし内部にコンクリートを充填したり、第5発明のように、補剛材を埋め込むようにコンクリートを充填する、鋼・コンクリート構造とすると、鞘管の剛性および強度を著しく高めた構造とすることができ、接合部の耐力の増大した電柱を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の電柱について図を参照して説明する。
【0021】
図1および図2は本発明の第1実施形態を示すものであって、図1に示すように、地中部の地下柱体1と地上部の地上柱体2との間に、側溝用の排水溝としての断面溝形の通水路用部材4を設置し、地中部の地下柱体1と地上部の地上柱体2とを内部を図5に示すように補剛材8で補強した鞘管3にて接続している。
前記の地下柱体1と、地上柱体2と、鞘管3とにより電柱2Aが構成され、地上柱体2の鉛直荷重は、通水路用部材4から地下柱体2に伝達されるようにされ、地上柱体2に作用する水平力等の曲げ力は、鞘管3を介して地下柱体1に伝達されるように構成されている。
このような電柱2Aを組立る場合(詳細は後記する。)には、地下柱体1の上部に鞘管3の下部を設置し、鞘管3の横孔3に通水路用部材4を挿通配置し、その通水路用部材4の上に、鞘管3上部内に挿通するように地上柱体2の下部を載置して組み立てればよい。
前記の通水路用部材4を鞘管3と一体化すると、鞘管3の剛性を高めることができる。
【0022】
実施形態では、鞘管3には鋼管を用い、鞘管3の内周面に補剛材8を溶接にて取り付け鞘管3と一体化させている。前記の補剛材8は、通水路用部材4と干渉しない位置において、鞘管3の内周面に周方向に間隔をおいて前後対称位置に複数配置され、半径方向外側の補剛部材8の両側部と鞘管3とは上下方向に溶接により固定され、鞘管3の剛性を高めている。
【0023】
前記の鞘管3の構成としては、各種の形態が可能であり、図1および図2並びにその一部の鞘管3の部分を示す図5〜図8の第1実施形態のように、外管6と内管7と補剛材8との組み合わせ構成としてもよく、図16に示す第5実施形態のように主に外管6を使用する形態、図11〜図13に示す第4実施形態のように、外管6と補剛材8(9,10,11)とを一体化した組み合わせ構成とすることも可能である。
【0024】
前記の補剛材8は、地下柱体1と地上柱体2との接続部としての鞘管3と一体化して、所定の曲げおよびせん断耐力を確保できるように、補剛材8の本数、材質、断面形状については設計により適宜設定すればよい。前記の補剛材8としては、例えば、鋼材が用いられる。
【0025】
補剛材8の断面形状としては、例えば、第1実施形態の図2、第2実施形態として示す図3、第3実施形態の図4に示すように、平面視で、それぞれ、H型形状の補剛材9、山形鋼からなる山形鋼補剛材10、鋼板からなる鋼板補剛材11等を用いることができる。
鞘管3および補剛材8を含めた接続部の曲げ耐力に関しては、例えば、地下柱体1および地上柱体2からなる電柱本体の重心を通る中心軸線を基準とした個々の補剛材8の断面2次モーメントの合計値から求まる抵抗曲げモーメントが、電柱本体の抵抗曲げモーメント以上となるように設定すればよく、また、せん断耐力に対しては、電柱本体の材質と断面積とから求まるせん断耐力以上とすることが、接続部が構造上の弱点となるのを防ぐことができ好ましい。
なお、前記外管6と補剛材8が共同して、あるいは外管6と補剛材8と内管7が共同して、曲げ力およびせん断力に抵抗するように設計するようにしてもよい。
【0026】
鞘管3を下部柱体1に対して、所定の位置に設置するために、内管7を備えた鞘管3である場合には、内管7における半径方向内側に、図8に示すように、ボルト孔26を有するL型鋼材等の補剛材用接続金具24を溶接またはボルトにて取り付け、また、これに対応して、地下柱体1の上端部にもボルト孔26を有するL型鋼材等の地下柱体用接続金具25を取り付け、両接続金具24,25の上下の位置を対応させ、ボルトおよびナットにて接続金具24,25同士を連結させ、鞘管3が地中部柱1から抜け出さないよう一体化させる。
【0027】
また、前記の内管7を設けない場合には、図12に示すように、鞘管3を下部柱体1に対して、所定の位置に設置するために、補剛材8における半径方向内側に、ボルト孔26を有する補剛材用接続金具24を溶接またはボルトにて取り付けるようにすればよい。
前記のいずれの形態でも、前記の補剛材用接続金具24および地下柱体用接続金具25は、地下柱体1の上端に載置させる通水路用部材4と干渉しない平面位置となるように横方向に位置をずらして取り付ける。具体的には、補剛材用接続金具24は、補剛材8における半径方向内側と通水路用部材4外壁(側壁部)とで形成される隙間内に収まるように設けられ、地下柱体用接続金具25は地下柱体1の上端部23から突出しないように設けられている。補剛材8における半径方向内側と通水路用部材4外壁とで形成される隙間の広さに応じて接続金具24、25の仕様を決定するが、少なくとも通水路用部材の左右に1箇所ずつ配置することが好ましい。通水路用部材4の底部と地下柱体1の上端部23とが接することで、通水路用部材4に載置される地上柱体2の重量を伝達可能にされ、鞘管3は地上柱体2の重量を負担しないようにされている。
【0028】
鞘管3の側面には、その上下方向の中間部に、通水路用部材4を横方向から挿入できるよう、通水路用部材4の外形寸法または外周寸法と等しい大きさの横孔15を設ける。横孔15は、鞘管3の中心を挟んで両側に2箇所設けられ、当該通水路用部材4を組み込んだ場合、その通水路用部材4が隣接する既存の側溝部材18と連結できるようにする。鞘管3内側の上下方向の縦孔は、横孔15を挟んで、上部の縦孔内面で、地上柱体2の外面に横方向の力が作用した場合に支承し、下部の縦孔内面で、地下柱体1の外面に横方向の力が作用した場合に支承し、このように、鞘管3には、地上柱体2および地下柱体1の両方の外周面を支承する内面を有する縦孔を備え、前記の縦孔は断面円形の鋼製内周面の縦孔であるのが好ましい。
【0029】
地下柱体1および地上柱体2との間の接続部に挿入する通水路用部材4の内寸法は、隣接する側溝部材18の内面形状と等しくなるように通水路用部材4を設置する。
通水路用部材4の側壁部22上端には、通水路用部材4の上に載置する地上柱体2からの鉛直荷重が載荷されるため、通水路用部材4としては鋼材を用いることが好ましいが、地上柱体2からの鉛直荷重が小さい場合には、コンクリート製の通水路用部材を用いていも構わない。通水路用部材4として鋼材を用いた場合は腐食を避けるため、その表面に重防食塗装を施すとよい。特に、排水溝内面5においては、隣接する側溝部材18との連続性を確保するために、側溝部材18と同じ材質のコンクリート製のブロックを嵌め込んでも構わない。
【0030】
地上柱体2は、直接、通水路用部材4の側壁部22上端部に載せても構わないが、地上柱体2の直径が、通水路用部材4の溝幅内寸よりも小さい場合や、地上柱体2下端部と通水路用部材4上端部との重なりが小さく、通水路用部材4の耐力が小さくなってしまう場合は、図9に示すように、通水路用部材4上部に、地上柱体受け16を設け、その上に地上柱体2の下端部を設置するような構造としてもよい。
地上柱体受け16と通水路用部材4の側壁部22とを溶接にて連結するか、図示を省略するが、地上柱体受16の下端部に雌ねじ孔またはボルト孔を有する連結用突片を下向きに設け、側壁部22上端にボルト挿入用に切り欠いた孔を設け、前記連結用突片を側壁部22に当接または近接配置した状態で、地上部柱受け16とボルト接合またはボルト・ナットにより締結して一体化する。
また、上部柱体2の直径が通水路用部材4の溝幅内寸よりも小さい場合に、地上柱体2を鞘管3にて支えるためには、図17に示す第6実施形態のように、鞘管3上部に地中柱体1の直径分の円形状の空間を形成できるよう、補剛材8を鞘管3内面に溶接にて取り付ける。
【0031】
次、前記各実施形態の本発明の電柱の構築方法について、図18を参照して説明すると、まず補剛材8を取り付けた鞘管3を地中柱体1の上端部に被せ、接続金具24,25同士をボルト・ナットにて連結する。
次に、鞘管3に設けた横孔15に横方向から排水溝4を挿入し、地中柱体1の上に設置する。
【0032】
通水路用部材4は既存の隣接する側溝部材18の間に埋め込まれたとき、両隣の側溝部材18とモルタル、接着剤等とで連結され、側溝部材18の軸方向には動かなくなり固定されるが、必要に応じて、通水路用部材4を電柱2Aに固定するために、通水路形成部材4と鞘管3とを溶接にて仮止めしてもよい。通水路用部材4と鞘管3との溶接には、鞘管3における外管6、補剛材8、内管7のいずれか1つ以上との溶接でよい。
この時点で、必要に応じて、鞘管3内に配置するようにして、通水路用部材4の上端に、地上部柱受け16を設置する。前記地上部受け16を必要に応じ、通水路用部材4に溶接等により固定してもよい。なお、地上部受け16としては、図示のように一対のH形鋼材を使用してもよく、矩形環状の鋼材を使用してもよい。最後に、地上柱体2を鞘管3内に上から挿入し、前記通水用部材4の上に載置する。これにより、地上柱体2からの鉛直荷重は、通水路用部材4から地下柱体1に伝達される。
【0033】
地上柱体2の鞘管3内からの抜け出し防止、あるいは浮き上がり防止対策として、図13に示すように、地上柱体2の外周面に周方向に間隔をおいて1つ以上の側方に突出する引っ掛かり部材(係合部)28を溶接等により取り付ける。
また、内管7を備えている鞘管3では、図示を省略するが、内管7の内側に上下方向に延長する縦溝とこれに接続する横溝を内管7周方向に間隔をおいて1つ以上設ける。また、内管7を設けない鞘管3では、補剛材8の中間部の所定の位置に、切り欠き等の横溝からなる引っ掛かり受け(係止溝)29を設けおく。
そして、地上柱体2を鞘管3内に建て込む際に、引っ掛かり部材28が内管7または補剛材8の間に位置するようにし、地上柱体2を所定の位置まで建て込んだ後は、地上柱体2を水平回転させ、引っ掛かり部材28を内管7または補剛材8を切り欠いて形成させた引っ掛かり受け29に嵌合係止させるようにしても構わない。地上柱体2が鋼管の時は、引っ掛かり部材28を溶接にて地上柱体2に取り付け、地上柱体2がコンクリート製の時は、地上柱体2側面にボルト孔(雌ねじ孔)を設け、引っ掛かり部材28をボルトにて接合ればよい。
但し、地上柱体2は、その自重によって鞘管3内におさまっているため、鞘管3の曲げ耐力が地下柱体1または地上柱体2と同等以上である場合は、鞘管3が塑性変形して地上柱体2が鞘管3内から抜け出すことはないため、上記引っ掛かり部材28は、特になくても構わない。
但し、鞘管3と地上部柱2との上下方向の重なる部分があまり短すぎると、地上部柱2が倒れようとしたときに鞘管3から抜け出す可能があるため、重なり部分の長さは地上部柱2の直径以上あることが望ましい。重なり部分の上限は、特に設けないが、全体のコスト経済性を加味してある所定の長さ以下(例えば、地上柱体2の直径の1.5倍以下)に抑えることが望ましい。地中柱体1においても、鞘管3との上下方向の重なり長さは、上記の地上柱体1の場合と同様の理由で、少なくとも地中部柱1の直径以上あることが好ましく、また、全体のコスト経済性を加味してある所定の長さ以下(例えば、地中柱体1の直径の1.5倍以下)に抑えることが望ましい。
【0034】
上記発明の実施形態に対して、更に、接続部としての鞘管3の剛性、強度を増強するための方法を以下に説明する。
【0035】
図5〜図8に示すように、補剛材8を取り付けた鞘管用の外管6内部に、補剛材8の内面に沿うように鞘管3用の内管7を設置する。前記の内管7の上下両端部と補剛材8の上下両端部は、適宜溶接により一体化される。鞘管3の上下部には蓋としてリング状の鞘管上蓋13や鞘管下蓋14を溶接にて取り付けることができる。
鞘管3の外管6と内管7、及び補剛材8とで形成される空間にコンクリート12を打設して、鞘管3の剛性、強度を増大させる。前記のコンクリート12の通水路への漏洩を防止するために、通水路用部材4の上端部を閉塞するための底部型枠として、図14に示すように、中蓋27や中蓋27aを外管6の中間部内面に周方向に間隔をおいて溶接等により固定して設けるとよく、補剛材8の断面形状に応じて、これに近接配置可能な形状とすればよい。図14の場合は、補剛材8がH形形状の補剛材9である場合に対応した形態であり、平面円弧状で周方向の側端部半径方向中間部に周方向に突出する凸部を有する形態であり、図3および図4に示される山形鋼補剛材10あるいは鋼板補剛材11の形態では、各中蓋27には、前記のような側端部半径方向中間部に周方向に突出する凸部を設ける必要がなく、直線状の側端部とすればよい。中蓋27の形状が複雑にならないよう、加工手間が省けるように、本形態における補剛材8としては、図4に示すような板状の鋼板を用いるのが好ましい。また地上中柱2と鞘管3との接続箇所のみにおいて、鞘管の剛性、強度を増加させる場合には、鞘管内面の通水路用部材4の上端位置に中蓋27、27aを設置し、地上柱体2と鞘管3および補剛材8とで囲まれた空間にコンクリートを打設すればよい。
また、内管7を備えていない形態の鞘管3では、補剛材8(9,10,11)の半径方向の内端を適宜露出させ接続金物24を取付け、分離可能な内型枠を配置した状態で補剛材8側面間を埋め込むように前記コンクリート12を打設することにより、鋼・コンクリート製の鞘管3とすることもできる。
【0036】
鞘管3の上下端部において、補剛材8断面を隠し平坦面を形成させるために、図5〜図8に示すように、鞘管用上蓋13、鞘管用下蓋14を取り付けてもよい。前記の鞘管用上蓋13、鞘管用下蓋14は、内管7および外管6に溶接等により固定される。
【0037】
また接続部の形状をシンプルにするための別の実施形態を以下に説明する。
地上柱体2と地中柱体1の接続部を構成する鞘管3部分には、通水路用部材4用の切り欠き部を設けた後でも、電柱2A本体の柱体1,2と同等以上の曲げ剛性、耐力を必要とするが、鞘管3として、図16に示すように、厚肉鋼管30からなる鞘管3を用いても構わない。こうすることで、補剛材8の溶接加工がなくなり、加工費の低減を図ることができる。
【0038】
厚肉鋼管30の厚み寸法は、切り欠き部(横孔15あるいは、引っ掛かり受け29あるいはこれに接続する縦溝)の断面欠損を控除して、電柱本体と同等以上の剛性、耐力が確保できる分を確保する。当厚肉鋼管30からなる鞘管3を地中柱体1の上に載置させるときは、図11または図12に示すのと同じ手法で、接続金具24を直接厚肉鋼管30内面に溶接またはボルトにて取り付け、地中柱体1上部内側に取り付ける接続金具25とボルト・ナットにて連結する。
【0039】
地上柱体2は、図10に示すように既設の電柱17をバンドソー等を用いて切断して、電柱17の上部側を上部柱体2として、鞘管3の中に建て込んでも構わない。既設の電柱17を切断後、図18(a)に示すように、既設の電柱17における地下柱体1の周囲を掘削して、地下柱体1の中心が側溝部材18の中心軸線上に位置するように、位置を変更してその下部を埋め込み設置するか、新たな地下柱体1を設置した後、図18(b)に示すように、その地下柱体1の上部に鞘管3を設置する。そして図18(c)に示すように、通水路用部材4またはこれに嵌設された側溝用のコンクリート製ブロックを設置する。また、地上柱体2を鞘管3内に収めるためには、一度電柱17に付属する電線を既設の電柱17から取り外し、クレーン等で保持し、切断した既設の電柱17における地上柱体2を鞘管3上部から吊り下ろし挿入して、図18(d)に示すように、鞘管3と既設の柱17における地上柱体2とを一体化させ、最後に電線を地上柱体2におけるまた元の位置に取り付けるようにすればよい。
【0040】
本発明を実施する場合、通水路用部材4またはこれに嵌め込まれたコンクリート製ブロックの断面形状は、側溝部材18の断面形状に合せて、適宜、設定するようにすればよく、断面溝形以外の断面形状であってもよい。
また、本発明を実施する場合、必要に応じ鞘管3内周面と上部柱体2の外周面との間に接着剤あるいは充填材を充填して一体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の電柱の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】補剛材としてH型形状部材を用いた場合の図1のA−A方向から見た断面図である。
【図3】補剛材として山形鋼を用いた場合の図1のA−A方向から見た断面図である。
【図4】補剛材として鋼板を用いた場合の図1のA−A方向から見た断面図である。
【図5】本発明の電柱を分解して示す斜視図である。
【図6】鞘管の上部付近を分解して示す分解斜視図である。
【図7】図6の縦断面図である。
【図8】内管と外管と蓋材との関係を示す斜視図である。
【図9】通水路用部材の上に地上柱体からの鉛直荷重を支えるためにH型形状部材を載せた斜視図である。
【図10】既存の電柱を利用する場合の切断状況図である。
【図11】鞘管と地中柱体に接続金具を取り付けた状況の一部の斜視図である。
【図12】図11の場合の鞘管の断面図である。
【図13】地上柱体の抜け出し防止用に引っ掛かり部材を地上柱体に設けた場合の施工状況図である。
【図14】鞘管における通水路用部材上端部位置に内向きに中蓋を取り付けた断面図である。
【図15】従来の側溝脇に電柱が設置してある場合(上図)と、本発明の電柱を用いた場合の道路幅の比較を示す概念図である。
【図16】鞘管として厚肉鋼管を用いた場合の断面図である。
【図17】地上柱体の直径が通水路用部材の溝幅内寸よりも小さい場合の断面図である。
【図18】(1)〜(4)は本発明の電柱の組立て状況(工程)を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 地中柱体
2 地上柱体
3 鞘管
4 通水路用部材
5 排水溝内面
6 外管(鞘管用)
7 内管(鞘管用)
8 補剛材
9 H型形状の補剛材
10 山形鋼補剛材
11 鋼板補剛材
12 コンクリート
13 鞘管用上蓋
14 鞘管用下蓋
15 通水路用部材用の横孔
16 地上柱体受け
17 既存の電柱
18 側溝部材
19 バンドソー
20 道路
21 本発明の電柱
22 通水路用部材の側壁部
23 地中柱体の上端部
24 補剛材用接続金具(または内管用接続金具)
25 地中柱体用接続金具
26 ボルト孔
27 中蓋
27a 中蓋(地上部のみにコンクリートを打設する場合に使用)
28 引っ掛かり部材
29 引っ掛かり受け
30 厚肉鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分断された地中部の地下柱体と地上部の地上柱体との間に、側溝用の通水路用部材が設置され、かつ地下柱体の上端部と地上柱体の下端部とが、それらの両方の外周面を支承する内面を有する縦孔を備えていると共に、前記通水路用部材を挿通するための横孔を有する鞘管により接続されていることを特徴とする電柱。
【請求項2】
鞘管として、内周面に溶接にて取り付けた鋼材からなる補剛材で補強した鋼管を用いられていることを特徴とする請求項1記載の電柱。
【請求項3】
鞘管として、断面耐力が電柱本体と同等以上の耐力の厚肉の鋼管を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の電柱。
【請求項4】
鞘管は、外管の内側に間隔をおいて配置された内管を有する2重管構造とされ、かつ内管と外管とで挟まれた内側空間に補剛材が設置され、補剛材と内管と外管とで形成される空隙にコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電柱。
【請求項5】
鞘管は、外管の内側に補剛材が設置され、補剛材を埋め込むようにコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項1、2,4のいずれかに記載の電柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−236139(P2007−236139A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56414(P2006−56414)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】