説明

電極およびこれを用いた電気デバイス

【課題】電池の製造工程における積層ずれを低減しうる手段を提供する。
【解決手段】非導電性の多孔質体を基材として有し、前記多孔質体の一方の側の表層部の空孔内に正極活物質が保持され、他方の側の表層部の空孔内に負極活物質が保持されてなる、電極である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極およびこれを用いた電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、活物質等がバインダとともに集電体に塗布されてなる活物質層を有する正極および負極が、セパレータに電解質が保持された電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している(例えば、特許文献1)。
【0004】
上述したような自動車等のモータ駆動用電源として用いられる非水電解質二次電池には、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用非水電解質二次電池と比較して極めて高い出力特性を有することが求められている。このような要求に応えるべく、鋭意研究開発が進められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2000/59063号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されるような構成の電池の製造工程は、通常、正極、電解質層、負極を順に積層する工程を含む。一般的なリチウムイオン二次電池においては、正極、電解質層、負極から構成される単電池層が複数積層されるため、これらの層を繰り返し積層する工程において積層ずれが生じることがある。このような積層ずれが生じると、高性能の電池を安定に製造することが難しくなるため、積層ずれを回避するために位置決め機構などの付加的な方策が必要であった。
【0007】
そこで本発明は、電池の製造工程における積層ずれを低減しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、非導電性の多孔質体の厚み方向の中心部をセパレータとして用い、その両側の表層部の空孔内にそれぞれ正極活物質および負極活物質が保持された電極を用いることによって、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、非導電性の多孔質体を基材として有し、前記多孔質体の一方の側の表層部の空孔内に正極活物質が保持され、他方の側の表層部の空孔内に負極活物質が保持されてなる、電極である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正極活物質層、セパレータ、および負極活物質層を一体構造として製造することができる。これによって、各層を積層する際に生じる積層ずれを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電気デバイスの一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型の非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。
【図2】本実施形態の電極を表す断面概略図である。
【図3】本実施形態の電極における活物質層を表す模式図である。
【図4】本実施形態の電極の製造に用いられる非導電性の多孔質体を表す断面概略図である。
【図5】本実施形態の電極の製造工程を示す概略図である。
【図6】本実施形態の電極を表す断面概略図である。
【図7】本実施形態の電極を表す断面概略図である。
【図8】電気デバイスの一実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、電気デバイスの好ましい実施形態として、非水電解質リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
リチウムイオン二次電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0014】
また、リチウムイオン電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
【0015】
同様に、電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質は、これらをセパレータに含浸させて使用することができる。
【0016】
以下の説明では、非双極型(内部並列接続タイプ)リチウムイオン電池につき図面を用いて説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
【0017】
図1は、扁平型(積層型)の非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の一実施形態の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節することができる。
【0018】
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0019】
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0020】
以下、本実施形態の電極について、さらに詳細に説明する。
【0021】
図2は、図1に示すリチウムイオン二次電池10に用いられる本実施形態の電極30を拡大して表す断面概略図である。
【0022】
本実施形態の電極30は、非導電性の多孔質体31を基材として構成される。前記多孔質体31の一方の側の表層部の空孔内に正極活物質32aが保持され、正極活物質層33が形成される。また、前記多孔質体31の他方の側の表層部の空孔内に負極活物質32bが保持され、負極活物質層35が形成される。そして、正極活物質層33と負極活物質層と35との間に、活物質を含まない層であるセパレータ37を有する。
【0023】
本実施形態の電極30における正極活物質層33および負極活物質層35は、図3に示すように、例えば、非導電性の多孔質体31である不織布に、粒子状の活物質32(32a、32b)が保持されて形成されている。非導電性の多孔質体31は、図2に示すように、その厚さ方向の中心部を除いた上下の表層部において活物質層33、35の3次元的な骨格として機能しつつ、粒子上の活物質32(32a、32b)を保持している。
【0024】
また、非導電性の多孔質体31は、その厚さ方向の中心部がセパレータ37として機能し、これに電解質を保持させることで電解質層を形成することができる。
【0025】
一般的なリチウムイオン二次電池の製造工程は、正極活物質層を塗布した正極、セパレータに電解質を保持させてなる電解質層、および負極活物質層を塗布した負極を別々に準備し、これらを順に積層する工程を含む。しかしながら、このような電池の製造工程においては、正極、電解質層、および負極を積層する際の積層ずれを回避することは難しい。積層ずれが生じると、高性能で信頼性の高い電池を安定的に製造することが困難になる。このような積層ずれは、特に電気自動車用のリチウムイオン二次電池などの大型の平板積層型の電池を製造する場合や、正極、電解質層、および負極から構成される単電池層の積層数が多い場合には影響が大きい。そのため、位置決め機構などを用いて積層ずれを抑制する必要があった。
【0026】
これに対し、本実施形態の電極30によれば、図2に示すように、非導電性の多孔質体31を基材として、正極活物質層33、セパレータ37、および負極活物質層35が一体構造として形成される。このような一体構造とすることで、正極、電解質層、および負極をそれぞれ作製した後に積層する場合と比較して、積層ずれが大幅に低減されうる。特に、単電池層内に生じうる積層ずれを完全に回避できる。そのため、高性能で信頼性の高い電池が安定的に得られうる。
【0027】
本実施形態の電極30に用いられる非導電性の多孔質体31は、図4(a)に示すように、厚さ方向において均一な材質、空孔率、空孔の平均直径を有するものであってもよい。また、図4(b)に示すように、厚さ方向に異なる材質、空孔率、空孔の平均直径を有する多孔質体(例えば、積層構造を有する多孔質体31’)を用いてもよい。この場合、積層構造を有する多孔質体31’の表層部311に活物質を保持させて活物質層を形成し、中心部312を用いてセパレータを形成することが好ましい。さらに、積層構造を有する多孔質体31’は、厚さ方向の中心部312の空孔率が、表層部311の空孔率よりも小さい形態であることが好ましい。このような形態にすることで、相対的に空孔率の低い中心部312に活物質が浸透しにくくなるため、セパレータとしてより確実な機能が得られうる。また、正極活物質層、負極活物質層の膜厚を均一にすることができる。このため、電極の平面方向における電流密度の分布が均一になり、劣化しにくい電池が得られうる。
【0028】
好ましくは、積層構造を有する多孔質体31’において、厚さ方向の中心部312に存在する空孔の平均直径が、表層部311に存在する空孔の平均直径よりも小さい。このような形態にすることで、相対的に空孔率の低い中心部312に活物質を含む溶液が浸透しにくくなるため、セパレータとしてより確実な機能が得られうる。また、正極活物質層、負極活物質層の膜厚を均一にすることができる。このため、電極の平面方向における電流密度の分布が均一になり、劣化しにくい電池が得られうる。
【0029】
また、積層構造を有する多孔質体31’は、厚さ方向の中心部312と表層部311とが疎水性/親水性の異なる材料から構成されていてもよい。後述するように、本実施形態の電極は、例えば、多孔質体の表層部に活物質を含むスラリーを含浸塗工することによって製造される。この際、水や水溶性の溶媒を用いたスラリーを塗工する場合には、厚さ方向の中心部312が疎水性の材料で構成され、表層部311が親水性の材料から構成されることが好ましい。このようにすることで、表層部311に活物質が保持されるが、厚み方向の中心部312には活物質を含む溶液が浸透しにくくなる。このため、セパレータとしてより確実な機能が得られうる。この際、厚さ方向の中心部312の空孔率または空孔の平均直径が、表層部311の空孔率または空孔の平均直径よりも小さいことがさらに好ましい。
【0030】
(非導電性の多孔質体)
前記非導電性の多孔質体31は、例えば、不織布を用いて形成されうる。不織布を用いることで、電極の作製が容易になり、かつプレスによって空孔率を容易に調整できる。不織布は、繊維が異方向に重なって形成されている。不織布には、樹脂製の非導電性材料が使用され、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのエステル系樹脂、セルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ナイロン等の繊維が適用されうる。中でも、ポリオレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂は、電池動作環境に対する耐性が高く、電池の長期信頼性が向上しうるため好ましい。なお、非導電性の多孔質体31は、不織布以外の材料を用いて形成されてもよい。不織布以外の材料としては、樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート)製の織布などが考えられる。このように、展性、延性があり、比較的軽量で強度のある樹脂製織布または不織布を用いることで上記のような構造を達成できる。
【0031】
また、基材として図4(b)に示すような積層構造の多孔質体(不織布)31’を用いることができる。積層構造の不織布31’を製造する方法についても特に制限されず、表層部311および中心部312を構成する不織布を、例えば熱融着処理、熱エンボス加工、水流交絡処理などによって積層することができる。
【0032】
なお、本実施形態に用いられうる不織布は、繊維表面にスルホン酸基、アルキレン基、カーボネート基などの官能基が導入されたものであってもよい。このような官能基は、カチオンに対して配位性を有するため、セパレータとして使用する際に、電解質のカチオンの移動を促進する機能を有する。特に、積層構造の不織布の中心部分を構成する不織布として、繊維表面にこれらの官能基が導入された不織布を導入することが好ましい。繊維表面に官能基を導入する方法についても特に制限されない。例えば、濃硫酸などの浴中に不織布を浸漬してスルホン化処理をすることでスルホン酸基を導入することができる。
【0033】
なお、各活物質層33、35およびセパレータ37の厚さについても特に制限はないが、電子抵抗を抑えるという観点から、各活物質層33、35の厚さは、1〜120μm程度であることが好ましく、50〜100μm程度であることがさらに好ましい。また、中心部のセパレータ37の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。セパレータ37の厚さが5μm以上であれば電解質の保持性が良好であり、100μm以下であれば抵抗が過度に増大しにくい。
【0034】
電極の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな電極が用いられる。本実施形態によるリチウムイオン二次電池は、好ましくは大型の平板積層型の電池であり、電極の大きさは、例えば、長辺が100mm以上であり、好ましくは100mm×100mm以上であり、より好ましくは200mm×200mm以上である。
【0035】
なお、本明細書中、多孔質体の空孔内に保持されうる成分(活物質のみならず、バインダや導電助剤などを含む)を総称して「電極構成材料」と称することがある。
【0036】
(活物質)
活物質としては、従来公知のものを使用することができる。
【0037】
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0038】
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0039】
それぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜25μmである。
【0040】
正極活物質、負極活物質の量は、特に制限されないが、好ましくは電極構成材料の総量に対して、50〜99質量%、より好ましくは70〜97%、さらに好ましくは80〜95%の範囲である。
【0041】
(その他の添加剤)
本実施形態の電極に使用される活物質層における多孔質体の空孔内に、活物質が保持されるだけではなく、その他の添加剤(例えば、バインダ(結着剤)、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等)が保持されることも好ましい。
【0042】
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
バインダ量は、活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは電極構成材料の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0044】
その他、上記のように、添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0045】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。導電助剤の含有量は、電極構成材料の総量に対して好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%であり、さらに好ましくは、4〜10質量%である。
【0046】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0047】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0048】
[電極の製造方法]
本実施形態の電極の製造方法は、非導電性の多孔質体を準備する段階と、前記多孔質体の一方の面の表層部に正極活物質を含浸塗工する段階と、前記多孔質体の厚み方向の中心部に未塗工部を残して、他方の面の表層部に負極活物質を含浸塗工する段階と、前記正極活物質および負極活物質を含浸塗工した前記多孔質体をプレスする段階と、を含む。このような工程を用いることにより、本実施形態の電極を効率的に製造できる。
【0049】
本実施形態の電極を製造する好ましい実施形態としては、図5に示すように、はじめに、非導電性の多孔質体を準備する。非導電性の多孔質体の材質は上述した通りである。好ましくは、非導電性の多孔質体である不織布は、目付け量が5〜30g/mであり、より好ましくは5〜15g/mである。また、不織布の空孔率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。不織布の目付け量および空孔率が上記範囲であれば、活物質を効率的に含浸させることができ、均一な厚みの活物質層を形成することができる。また、プレス後に未塗工部の目付け量が増加し、セパレータとして好適に機能しうる目付け量が得られうる。不織布の厚みは特に制限されないが、好ましくは300〜600μmであり、より好ましくは300〜500μmである。上記範囲であれば、適当な厚さの活物質層およびセパレータを形成することができる。
【0050】
非導電性の多孔質体として、積層構造の不織布を用いる場合、表層部の目付け量は、好ましくは5〜30g/mであり、より好ましくは5〜15g/mである。また、表層部の空孔率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。中心部の目付け量は、好ましくは30〜100g/mであり、より好ましくは30〜50g/mである。中心部の空孔率は、好ましくは40〜70%であり、より好ましくは40〜50%である。目付け量および空孔率が上記範囲であれば、中心部に活物質を含むスラリーがより含浸しにくく、セパレータとしてより確実な機能が得られうる。
【0051】
積層構造の不織布を用いる場合、表層部の厚みは、好ましくは50〜150μmであり、中心部の厚みは、好ましくは100〜300μmである。
【0052】
次いで、電極構成材料(例えば、活物質、導電助剤)および溶媒を含む電極スラリー(正極活物質を含むスラリー、および負極活物質を含むスラリー)を準備する。溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、水などが用いられうる。水などの水性溶媒を用いる場合は、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)などを添加するとよい。
【0053】
そして、正極活物質を含むスラリー不織布の一方の面に、負極活物質を含むスラリーを他方の面に塗布し、乾燥させる。活物質を含むスラリーを塗布する際の目付けは特に制限されないが、好ましくは2〜20g/mである。塗工方法も100μm程度の塗布厚さが得られる方法であれば特に制限はなく、例えば、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。
【0054】
活物質を含むスラリーの塗布厚さは特に制限されないが、50〜150μmであることが好ましく、特に好ましくは100μm程度である。この際、未塗工部分の厚みを、好ましくは100〜300μm、特に好ましくは200μm程度に制御する。ただし、図4(b)のような積層構造の多孔質体31’を用いる場合は、スラリーの塗布厚さを、表層部311の厚み以下に制御する。表層部の空孔率が中心部の空孔率よりも大きい多孔質体を用いることで、活物質層およびセパレータの部分の厚みをより正確に制御することができ、ショートの可能性を回避できる。この際、スラリーを水またはNMPなどの水溶性の溶媒を用いて作製し、積層構造の多孔質体31’を、表層部が親水性の不織布で、中心部を疎水性の不織布で構成することがより好ましい。
【0055】
次いで、塗布した後のスラリーを乾燥させ、溶媒を除去する。乾燥させる方法や条件も特に制限されない。乾燥温度は、例えば、20〜80℃であり、乾燥時間は、例えば、2秒〜50時間である。
【0056】
その後、プレスして正極活物質層、セパレータ、負極活物質層が一体化した電極を得る。プレス手段については、特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、カレンダーロール、平板プレスなどが挙げられる。
【0057】
このようにして得られた電極は、正極活物質層および負極活物質層の厚みが、好ましくはそれぞれ1〜120μmであり、好ましくは50〜100μmである。また、セパレータの部分の厚みが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは、10〜50μmである。
【0058】
図6は、リチウムイオン二次電池10で用いられる、他の実施形態による電極40の断面概略図である。本実施形態による電極40は、図6に示すように、正極活物質層33および活物質負極層35の表面上に、集電体(正極集電体34a、負極集電体34b)を積層することができる。
【0059】
集電体34a、34bの厚さは、特に限定されない。
【0060】
集電体34a、34bは、通常の金属箔などを用いることができるほか、真空プロセスを用いて形成することができる。具体的にはスパッタ、蒸着、イオンプレーティングおよび溶射などのいずれかの方法により形成することもできる。スパッタ法としては、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法、高周波(RF)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲットスパッタ法、ミラートロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。蒸着法としては、CVD(化学気相蒸着法)とPVD(物理気相蒸着法)が挙げられる。CVDとしては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVDなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。PVDとしては、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、電子ビーム蒸着法、溶射法などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本実施形態の電極40においては、正極集電体34a、負極集電体34bの少なくとも一方を、好ましくは、スパッタ、蒸着、イオンプレーティングおよび溶射などの方法で、より好ましくは蒸着によって形成する。金属をスパッタ、蒸着、イオンプレーティングおよび溶射などの方法を用いて成膜することで、集電体の機能を持たせることができ、集電体、活物質層、およびセパレータを一体化することができる。そのため、積層ずれを防ぐ効果が向上しうる。金属を蒸着することによって集電体を形成する場合、金属の蒸着膜の厚さは、好ましくは1μm以下である。
【0061】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。中でも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。
【0062】
図7は、リチウムイオン二次電池10で用いられる、他の実施形態による電極60の断面概略図である。図7に示すように、本実施形態による電極60は、正極集電体34aと、正極活物質層33との間、または負極集電体34bと負極活物質層35との間に、導電性プライマ層38がさらに形成されてなる。導電性プライム層38は、正極側、負極側のいずれか一方に形成されていてもよく、図7のように正極側と負極側との両方に形成されていてもよい。このように、導電性プライマ層38をさらに有する構成によって、電極の表面に対して垂直方向の電子伝導性が、有意に向上しうる。また、導電性プライマ層38は、集電体34a、34bと、活物質層33、35との密着性を向上させる接着剤としての機能をも有するため、集電体34a、34bと、活物質層33、35との間の接触抵抗が低下し、電池として構成した際に高出力を期待することができる。
【0063】
(導電性プライマ層)
導電性プライマ層38は、好ましくは、樹脂、導電材、および分散材を含む樹脂層である。好ましくは、導電性プライマ層は、塩素含有ポリマーを含む。塩素含有ポリマーの具体的な例としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などが挙げられる。また、これら塩素含有ポリマーの相互のブレンド品、またはこれらの塩素含有ポリマーと塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品なども挙げられる。これらの塩素含有ポリマーは、そのまま用いてもよく、溶液の形態またはラテックスの形態で用いてもよい。
【0064】
集電体と活物質層との密着性の観点から、塩素含有ポリマーは、好ましくはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、または塩化ビニリデンを含む共重合体(ポリ塩化ビニリデン系共重合体)であり、より好ましくはポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデンを含む共重合体である。さらに好ましくは塩化ビニリデンを含む共重合体である。特に、塩化ビニリデンを含む共重合体のラテックスを用いることが好ましい。
【0065】
さらに、導電性プライマ層は、導電材および前記導電材を分散させるための分散材を含む。
【0066】
前記導電材の例としては、例えば、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種のカーボン材料が好ましく挙げられる。これらのカーボン材は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン材は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン材は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。
【0067】
カーボン材の形状は、特に制限はなく、粒子状、粉末状、繊維状、板状、塊状、布状、またはメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。
【0068】
カーボン材の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。前述した活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0069】
前記分散材の具体的な例としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのポリカルボン酸;ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマーまたはイソシアネートプレポリマーを反応させて得た生成物に、さらに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるアクリルウレタン樹脂などが挙げられる。好ましくはカルボキシメチルセルロースである。
【0070】
導電性プライマ層に含まれる塩素含有ポリマーの含有量は、塩素含有ポリマー、導電材、および分散材の合計を100質量%として、好ましくは30〜98.9質量%、より好ましくは33〜97質量%である。また、導電性プライマ層に含まれる導電材の含有量は、塩素含有ポリマー、導電材、および分散材の合計を100質量%として、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜48質量%である。さらに、導電性プライマ層に含まれる分散材の含有量は、塩素含有ポリマー、導電材、および分散材の合計を100質量%として、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜19質量%である。上記のような範囲であれば、導電性プライマ層としての効果が効率良く得られる。
【0071】
上記導電性プライマ層には、塩素含有ポリマー、導電材および分散材の他に、他の添加
剤を含んでいてもよい。
【0072】
導電性プライマ層は、従来公知の手法により製造できる。例えば、スプレー法またはコーティング法を用いることにより製造可能である。具体的には、塩素含有ポリマーを含むスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。この塗布の際には、所望の溶媒(例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)など)で調製して、塗布液の形態にしてもよい。スラリーの調製に用いられる塩素含有ポリマーの具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。前記スラリーに含まれる他の成分としては、導電材および分散材が挙げられるが、これらの具体例についても上述の通りであるために、ここでは説明を省略する。あるいは、塩素含有ポリマーおよび導電材、分散材、およびその他の添加剤を従来公知の混合方法にて混合し得られた混合物をフィルム状に成形した後、フィルムを集電体上に積層することにより、導電性プライマ層が形成される。
【0073】
導電性プライマ層の厚さにも特に制限はないが、例えば、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜9μmである。
【0074】
(電解質層)
本実施形態による電極は、セパレータの部分に電解質を保持させて電解質層を形成することによって、図1に示す電池10における単電池層を構成することができる。電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等のポリマー電解質を適宜用いることができる。セパレータの部分に電解質を保持させる手段は特に制限されず、例えば、含浸、塗布、スプレーなどの手段が適用されうる。
【0075】
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。また、支持塩(リチウム塩)としては、特に制限はないが、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0076】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。ゲル電解質は、Li伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。Li伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVdF、PVdF−HFPを用いることが望ましい。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。
【0077】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0078】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれていてもよい。
【0079】
上記で説明したリチウムイオン二次電池は、電極に特徴を有する。以下、その他の主要な構成部材について説明する。
【0080】
[タブおよびリード]
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0081】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0082】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0083】
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を
覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用い
られうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順
に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら
制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池
に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0084】
なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することがで
きる。
【0085】
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図8は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0086】
図8に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図
1に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。
発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)
15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0087】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0088】
また、図8に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図8に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0089】
上記リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0090】
なお、上記実施形態では、電気デバイスとしてリチウムイオン二次電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには、一次電池にも適用できる。また、電池だけではなく、キャパシタにも適用できる。
【符号の説明】
【0091】
10、50 リチウムイオン二次電池、
11、34a 正極集電体、
12、34b 負極集電体、
13、33 正極活物質層、
15、35 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 電池外装材、
30、40、60 電極、
31 非導電性の多孔質体、
31’ 積層構造の非導電性の多孔質体、
32 活物質、
32a 正極活物質、
32b 負極活物質、
37 セパレータ、
38 導電性プライマ層、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
311 表層部、
312 中心部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の多孔質体を基材として有し、前記多孔質体の一方の側の表層部の空孔内に正極活物質が保持され、他方の側の表層部の空孔内に負極活物質が保持されてなる、電極。
【請求項2】
前記多孔質体は、厚み方向の中心部の空孔率が表層部の空孔率よりも小さい不織布を用いて形成される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記多孔質体は、厚み方向の中心部が疎水性であり、表層部が親水性である、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記多孔質体の厚み方向の中心部に、電解質が保持されてなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
【請求項5】
前記正極活物質または負極活物質が保持された側の表面に、集電体として金属膜が蒸着されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記金属膜と前記正極活物質または負極活物質が保持された側の表面との間に導電性プライマ層を有する、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極を含む、電気デバイス。
【請求項8】
非導電性の多孔質体を準備する段階と、
前記多孔質体の一方の面の表層部に正極活物質を含浸塗工する段階と、
前記多孔質体の厚み方向の中心部に未塗工部を残して、他方の面の表層部に負極活物質を含浸塗工する段階と、
前記正極活物質および前記負極活物質を含浸塗工した前記多孔質体をプレスする段階と、
を含む、電極の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質体は、厚み方向の中心部の空孔率が表層部の空孔率よりも小さい不織布である、請求項8に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65471(P2013−65471A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203652(P2011−203652)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】