説明

電極およびそれを含む電子素子

【課題】優秀な導電性及び大きい仕事関数を有する電極及びそれを含んだ電子素子を提供する。
【解決手段】グラフェン含有層と、前記グラフェン含有層上に形成される仕事関数傾斜層と、を含み、前記仕事関数傾斜層は、前記グラフェン含有層と接触する第1面、及び前記第1面に対向する第2面を有する単一層であり、前記仕事関数傾斜層の仕事関数は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に沿って漸進的に増大する電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極およびそれを含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light emitting device)は、自己発光型素子であって、視野角が広く、コントラストにすぐれるだけではなく、応答時間が速く、輝度、駆動電圧及び応答速度特性にすぐれ、多色化が可能であるという長所を有している。
【0003】
一般的な有機発光素子は、アノード及びカソードと、前記アノード及びカソード間に介在された有機層とを含む。前記有機層は、電子注入層(EIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)などを含んでもよい。前記アノード及びカソード間に電圧を印加すれば、アノードから注入された正孔は、正孔輸送層を経由して発光層に移動し、カソードから注入された電子は、電子輸送層を経由して発光層に移動する。前記正孔及び電子のようなキャリアは、発光層領域で再結合して励起子(exiton)を生成するが、この励起子が励起状態から基底状態に変わると、発光する。
【0004】
一方、全世界的に再生可能エネルギーへの関心が高まっている現時点で、未来エネルギー源としての可能性及び多様な長所を有した有機太陽電池が注目されている(例えば、特許文献1参照)。前記有機太陽電池は、シリコンを利用した無機太陽電池に比べ、薄膜化及び低コスト製造が可能であり、今後各種フレキシブル素子に多様に適用されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2003−47888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電極の機械的強度、化学物質耐性(chemical resistance)、仕事関数、導電性、光透過性は、満足すべきレベルに至らず、高品位の電子素子製作に限界がある。
【0007】
しがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、優秀な導電性及び大きい仕事関数を有する電極を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、前記電極を採用した電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、グラフェン含有層(graphene-containing layer)と、前記グラフェン含有層上に形成される仕事関数傾斜層(layer having gradient work function layers)と、を含み、前記仕事関数傾斜層は、前記グラフェン含有層と接触する第1面、及び前記第1面に対向する第2面を有する単一層(single layer)であり、前記仕事関数傾斜層の仕事関数は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に沿って漸進的に増大する電極が提供される。すなわち、本発明の電極は、大きい仕事関数を有するように表面が改質されたグラフェン電極でありうる。
【0010】
前記グラフェン含有層におけるグラフェンは、複数個の炭素原子が互いに共有結合し、第1方向(基板平面に水平な方向、図2のX軸方向またはZ軸方向)に延長して配列される多環芳香族分子からなるシートをn枚(ここで、前記nは、1以上の整数である)含んでもよい。ここで、前記nは、2以上である場合、n枚のシートは、前記第1方向に対して垂直である第2方向(基板平面に垂直である方向、図2のY軸方向)に沿って積層されている。
【0011】
前記グラフェン含有層は、p型ドーパントをさらに含んでもよい。
【0012】
前記仕事関数傾斜層の第1面の仕事関数は、4.0eVないし5.3eVの範囲であり、前記第2面の仕事関数は、5.3eVないし6.5eVの範囲であってもよい。
【0013】
前記仕事関数傾斜層は、導電性物質(conductive material)及び低表面エネルギー物質(material having low surface energy)を含んでもよい。
【0014】
前記仕事関数傾斜層において低表面エネルギー物質は、前記低表面エネルギー物質からなる薄膜(例えば、150nm未満の厚みを有する)が、30mN/m以下の表面エネルギーおよび10−1ないし10−15S/cmの導電率を有する物質であってもよい。または、前記低表面エネルギー物質を含む導電性高分子組成物を利用して形成される薄膜(例えば、150nm未満の厚みを有する)が、30mN/m以下の表面エネルギーおよび10−7ないし10−1S/cmの導電率を有する物質であってもよい。
【0015】
前記仕事関数傾斜層において低表面エネルギー物質の濃度は、前記第1面(すなわち、仕事関数傾斜層の両面のうち、前記グラフェン含有層と接触する面、図1の参照番号13A)から前記第2面(すなわち、前記仕事関数傾斜層両面のうち、前記第1面に対向する面、図1の参照番号13B)に向かって漸進的に増大しうる。
【0016】
前記仕事関数傾斜層の第1面の仕事関数は、前記導電性物質の仕事関数と同じであり、前記仕事関数傾斜層の第2面に存在する低表面エネルギー物質の含有量は、前記第1面に存在する低表面エネルギー物質の含有量より多いので、前記仕事関数傾斜層の第2面の仕事関数は、前記仕事関数傾斜層の第1面の仕事関数より大きくてもよい。
【0017】
前記低表面エネルギー物質は、少なくとも1つのフッ素原子(F)を含んだ物質であってもよい。例えば、前記低表面エネルギー物質は、フッ素化ポリマーまたはフッ素化オリゴマーであってもよい。
【0018】
前記仕事関数傾斜層において導電性物質は、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスチレン、スルホン化されたポリスチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、自己ドープ型導電性高分子(self-doped conductive polymer)、例えば、自己ドープ型ポリチオフェン、自己ドープ型ポリアニリン、自己ドープ型ポリピロール、またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の他の態様によれば、前記電極を含んだ電子素子が提供される。
【0020】
前記電子素子は、フレキシブル特性を有することができる。
【0021】
前記電子素子は、有機発光素子、有機太陽電池、有機メモリ素子または有機トランジスタ(特に有機薄膜トランジスタ)であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電極は、優れた導電性及び大きい仕事関数を有する。また、本発明の電極は、優秀な機械的強度、耐久性、化学物質耐性の少なくとも一つを有する。このため、本発明の電極は、各種電子素子に有用に使われうる。また、上記電子素子は、フレキシブル特性を有するので、フレキシブル電子素子として有用に使われうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の電極の一実施形態の断面を概略的に説明した図面である。
【図2】本発明の電極のグラフェン含有層の一実施形態の分解斜視図を概略的に説明した図面である。
【図3】本発明の電極と、該電極上部に形成された層との仕事関数関係を概略的に図示した図面である。
【図4】有機発光素子の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図5】有機太陽電池の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図6】有機トランジスタの一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【図7】本発明の電極のグラフェン含有層の一実施形態の光透過率(%)を示したグラフである。
【図8】本発明の電極のグラフェン含有層の一実施形態の紫外線光電子(UPS)スペクトルを示したグラフである。
【図9】本発明の電極の一実施形態の深さ別の分子組成を示したグラフである。
【図10A】本発明の電極の一実施形態のDI−SCLC(dark injection space charge limited current)の評価結果として得た電界−電流密度のグラフである。
【図10B】本発明の電極の一実施形態のDI−SCLC(dark injection space charge limited current)の評価結果として得た電界−正孔注入効率のグラフである。
【図11】本発明の有機発光素子の一実施形態を折り曲げた写真である。
【図12】本発明の有機発光素子の一実施形態の電圧−電流効率のグラフを示した図面である。
【図13】本発明の有機発光素子の一実施形態の電圧−電力効率のグラフを示した図面である。
【図14】本発明の有機発光素子の他の実施形態のEL(electroluminescent)スペクトルを示した図面である。
【図15】本発明の有機発光素子の他の実施形態の電圧−電流効率のグラフを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による電極10の概略断面である。前記電極10は、グラフェン含有層11、及び仕事関数傾斜層(layer having gradient work function layers)13を含む。前記仕事関数傾斜層13は、前記グラフェン含有層11と接触する第1面13A、及び前記第1面13Aに対向する第2面13Bを有する。前記グラフェン含有層11の下部は、任意の基板と接触しう。
【0026】
本明細書において、「仕事関数傾斜層(layer having work function gradient)」は、層の深さによって仕事関数が傾斜する(勾配を有する)層を意味する。
【0027】
前記グラフェン含有層11は、電荷、例えば、正孔を伝達する役割を行う。前記グラフェン含有層11は、グラフェンを含む。
【0028】
前記グラフェン含有層11に一般的な溶媒が提供されても、前記グラフェン含有層11は、前記溶媒に実質的に溶解しない。従って、前記グラフェンは、優秀な化学物質耐性を有する。これに対して、従来の電極である酸化インジウムスズ(ITO)電極に一般的な溶媒が提供される場合、インジウム及び/または酸素が溶出し、ITO電極上の層に移動する。従来のITO電極が一般的な溶媒と接触し、ITOのインジウム及び酸素が溶出すると、ITO電極表面上に、界面トラップ(interfacial trap)が形成して、正孔注入効率を低下させる原因になる。従って、従来のITO電極は、特に、溶媒を使用した湿式工程によって形成される高分子有機層を具備した有機発光素子、有機太陽電池などでは、効果的な正孔注入効率を提供するのに限界がある。
【0029】
前記グラフェンは、薄膜に成膜可能であり、機械的ストレスに対して優秀な耐性を有するため、優秀な機械的強度を有する。すなわち、前記グラフェンは、外部ストレスが印加される場合、壊れるというよりは曲がる。従って、前記グラフェンは、フレキシブル特性(flexibility)により、フレキシブル電子素子に有用に使われうる。
【0030】
また、前記グラフェンは、製造コストが比較的廉価であるが、これは、高価の金属を含み、相対的に高価である従来の電極ITOと明確に区分されるのである。
【0031】
前記グラフェンは、1原子の厚さのsp結合炭素原子のシートであり、複数個の炭素原子が互いに共有結合し、第1方向(すなわち、基板に平行な方向)に延長して配列する多環芳香族分子からなるシートをn枚(ここで、前記nは、1以上の整数である)含むものであってもよい。
【0032】
前記nは、1ないし1,000、例えば、1ないし100の整数であってもよい。または、前記nは、1ないし50の整数であってもよいし、1ないし10の整数であってもよい。また、前記nが2以上で、n枚のシートは、前記第1方向に対して垂直である第2方向に沿って積層してもよい。この際、前記nは、2ないし10の整数であってもよい。一実施形態によれば、前記nは、2、3または4であるが、これらに限定されるものではない。前記nは、グラフェン含有層の形成方法によって多様に選択されてもよい。
【0033】
図2は、前記グラフェン含有層11(n=4)に含まれるグラフェンの一実施形態の分解斜視図を概略的に図示したものである。図2のグラフェンは、複数個の炭素原子が互いに共有結合し、第1方向に延長して配列する多環芳香族分子からなるシート4枚S1,S2,S3,S4を含む。図2において、円内には、前記シートS1,S2,S3,S4の一部の拡大図面が図示される。それぞれのシートは、複数個の炭素原子が互いに共有結合し、第1方向(図2の「X」軸方向または「Z」軸方向)に延長して配列する多環芳香族分子を含む、または当該多芳香族分子からなる。前記4枚のシートS1,S2,S3,S4は、前記第1方向に対して垂直である方向(図2の「Y」軸方向)に沿って積層されている。
【0034】
前記グラフェン含有層は、導電性を向上させることができ、面抵抗を低減させるp型ドーパントをさらに含んでもよい。前記p型ドーパントは、金属粒子、各種置換基などであってもよい。例えば、前記p型ドーパントは、HNO、AuCl、HCl、ニトロメタン(nitromethane)、HSO、HAuCl、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、酸末端処理された低分子(acid-terminated small molecules)(例えば、3−メルカプトプロピオン酸、16−メルカプトヘキサデカン酸、ベンゾスルホン酸、ベンゼンホスホン酸など)、高分子酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸など)であるが、それらに限定されるものではない。
【0035】
図1において、前記仕事関数傾斜層13は、仕事関数傾斜層13の深さLに対して変化する仕事関数を有する。例えば、前記仕事関数傾斜層13は、第1面13Aから前記第2面13Bに向かう方向Dに沿って漸進的に増大する仕事関数の傾斜(勾配)を有する。前記仕事関数傾斜層13によって、前記仕事関数傾斜層13上に形成される層と、前記グラフェン含有層11と、の間の正孔注入障壁(hole injection barrier)が低くなる。
【0036】
図3は、図1の電極10と、仕事関数傾斜層13上に形成される層15との仕事関数の関係を概略的に図示した図面である。
【0037】
前記電極10において、グラフェン含有層11の仕事関数は、XeVである。前記Xは、例えば、3.8ないし5.2eV、4.0ないし4.7eVの実数であるが、これに限定されるものではない。
【0038】
一方、仕事関数傾斜層13の仕事関数は、図3から分かるように、仕事関数傾斜層13の第1面13Aから第2面13Bに向かう方向に沿って漸進的に増大する傾斜を有する変数である。前記仕事関数傾斜層13において、第1面13Aの仕事関数は、YeVであり、第2面13Bの仕事関数は、YeVであるが、Y<Yである。これにより、グラフェン含有層11と層15との間の正孔移動効率が上昇しうる。また、前記電極10が有機発光素子のアノードとして使用される場合、前記仕事関数傾斜層13によって、層15を介して電子がグラフェン含有層11に流入することが効果的に防止される。
【0039】
前記仕事関数傾斜層13上に形成された任意の層15の仕事関数は、ZeVである。前記層15は、前記電極10を備える電子素子によって、多様に選択される層であり、例えば、前記電極10を備える電子素子が、有機発光素子であるならば、前記層15は、正孔輸送層であるなど、多様な変化が可能である。前記Zは、5.4ないし5.6eVの実数であるが、これに限定されるものではない。
【0040】
例えば、グラフェン含有層11の仕事関数値であるXと、仕事関数傾斜層13の第1面13Aの仕事関数値であるYは、X≦Yの関係を有してもよい。また、仕事関数傾斜層13の第2面13Bの仕事関数値であるYと、層15の仕事関数値であるZは、Z≦Yの関係を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
前記仕事関数傾斜層13の第1面13Aの仕事関数値であるYは、4.8ないし5.3eV、例えば、5.0ないし5.2eVの範囲であってもよい。前記仕事関数傾斜層13の第2面13Bの仕事関数値であるYは、5.3eVないし6.5eV、例えば、5.3eVを超えて(好ましくは5.5eV以上)6.5eV以下、5.7ないし6.0eVの範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記仕事関数傾斜層13は、導電性物質(conductive material)及び低表面エネルギー物質(material having low surface energy)を含んでもよい。
【0043】
本明細書において、「低表面エネルギー物質」とは、低い表面エネルギーを有する膜を形成することができる物質であり、具体的には、前記導電性高分子より低い表面エネルギーを有する物質を指す。
【0044】
前記低表面エネルギー物質は、少なくとも1つのフッ素原子(F)を含む物質であり、前記導電性物質の疎水性よりさらに大きい疎水性を有してもよい。また、前記低表面エネルギー物質は、前記導電性物質の仕事関数より大きい仕事関数を提供することができる物質であってもよい。例えば、前記低表面エネルギー物質は、前記低表面エネルギー物質からなる薄膜(例えば、150nm未満の厚みを有する)が、30mN/m以下の表面エネルギーを有し、10−1ないし10−15S/cmの導電率を有する物質であってもよい。または、前記低表面エネルギー物質を含む導電性高分子組成物を利用して製造された薄膜(例えば、150nm未満の厚みを有する)が、30mN/m以下の表面エネルギーを有し、10−1ないし10−7S/cmの導電率を有する物質であってもよい。
【0045】
従って、前記導電性物質と前記低表面エネルギー物質とを含む混合物を含んだ膜を形成すれば、前記低表面エネルギー物質の低い表面エネルギーのために、導電性物質と前記低表面エネルギー物質は、均一に(homogeneously)混合されない。その代わりに、前記低表面エネルギー物質の濃度が前記第1面13Aから前記第2面13Bに向かって漸進的に増大(上昇)し、相対的に、前記導電性物質の濃度が前記第2面13Bから前記第1面13Aに向かって漸進的に増大(上昇)するように、導電性物質と低表面エネルギー物質とが分布してもよい。従って、前記仕事関数傾斜層13に、仕事関数の傾斜(勾配)が形成されるのである。
【0046】
このような仕事関数傾斜層13は、導電性物質と低表面エネルギー物質との自己配列(self-arrangement)によって形成されるものであるから、導電性物質層と低表面エネルギー物質層との境界が区分されない単一層(single layer)の形態を有する。
【0047】
前記仕事関数傾斜層13の第1面13Aの仕事関数は、前記導電性高分子の仕事関数と同一であり、前記仕事関数傾斜層13の第2面13Bの仕事関数は、前記低表面エネルギー物質の仕事関数と同一であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記低表面エネルギー物質は、極性溶媒に対して、90%以上の溶解度、例えば、95%以上の溶解度を有する物質であってもよい。前記極性溶媒の例としては、水、アルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記低表面エネルギー物質は、少なくとも1つのフッ素原子(F)を含む物質であってもよい。例えば、前記低表面エネルギー物質は、少なくとも1つのフッ素原子(F)を含むフッ素化ポリマーまたはフッ素化オリゴマーであってもよい。
【0050】
一実施形態によれば、前記低表面エネルギー物質は、下記化学式1ないし3のうちいずれか1つの繰り返し単位を有するフッ素化ポリマーであってもよい。なお、本明細書において、「C−C」とは、「炭素数x〜yの」を意味する。このため、例えば、「C−C20アルキル基」は、「炭素数1〜20のアルキル基」を指す:
【0051】
【化1】

【0052】
前記化学式1中、
aは、0ないし10,000,000の数であり、
bは、1ないし10,000,000の数であり、
は、−[O−C(R)(R)−C(R)(R)]−[OCFCF−R、−COOHまたは−O−Rf−Rであり、
前記R,R,R及びRは互いに独立して、−F、−CF、−CHFまたは−CHFであり、
前記c及びdは互いに独立して、0ないし20の数(好ましくは整数)であり、
前記Rは、−(CF−(zは、1ないし50の整数である)または−(CFCFO)−CFCF−(zは、1ないし50の整数である)であり、
前記R及びRは互いに独立して、−SOM、−POまたは−COMであり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す、好ましくは、前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、またはNHを示す;
【0053】
【化2】

【0054】
前記化学式2中、
pは、0ないし10,000,000の数であり、
qは、1ないし10,000,000の数であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換のC−C60アリール基(好ましくは置換もしくは非置換のC−C60アリール基)または−COOHであり、
は、水素原子または置換もしくは非置換のC−C20アルキル基であり、
は、−O−(CF−SOM、−O−(CF−PO、−O−(CF−COMまたは−CO−NH−(CH−(CF−CFであり、
前記r,s及びtは互いに独立して、0ないし20の数(好ましくは整数)であり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す、好ましくは、前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、またはNHを示す;
【0055】
【化3】

【0056】
前記化学式3中、
m及びnは、0≦m<10,000,000、0<n≦10,000,000(好ましくは1<n≦10,000,000)であり、
x及びyはそれぞれ独立して、0ないし20の数(好ましくは整数)であり、
Yは、−SOM、−POまたは−COMであり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す、好ましくは、前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、またはNHを示す;
例えば、前記低表面エネルギー物質は、前記化学式1で表示される繰り返し単位を含むフッ素化ポリマーであるが、これに限定されるものではない。
【0057】
例えば、前記低表面エネルギー物質は、前記化学式1で表示される繰り返し単位を含むフッ素化ポリマーであって、aは、100ないし10,000の数であり、bは、50ないし1,000の数であり、Qは、−[O−C(R)(R)−C(R)(R)]−[OCFCF−Rであるフッ素化ポリマーであってもよい。
【0058】
例えば、前記低表面エネルギー物質は、前記化学式1で表示される繰り返し単位を含むフッ素化ポリマーであって、aは、100ないし10,000の数であり、bは、50ないし1,000の数であり、Qは、−[O−C(R)(R)−C(R)(R)]−[OCFCF−Rであるフッ素化ポリマーであるが、前記cは、1ないし3の数(好ましくは整数)であり、R,R及びRは−Fであり、Rは−CFであり、dは、1ないし3の数(好ましくは整数)であり、Rは−SOMであるが、これに限定されるものではない。
【0059】
一方、前記低表面エネルギー物質は、下記化学式4で表示されるフッ素化オリゴマー(フッ素化シラン系物質)であってもよい:
【0060】
【化4】

【0061】
前記化学式4中、
Xは末端基であり、
は、パーフルオロポリエーテルアルコール、ポリイソシアネート及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマー(isocyanate reactive-non-fluorinated monomer)の縮合反応によって調製されたフッ素化モノマー由来の単位またはフッ素化C−C20アルキレン基を示し、
は、非フッ素モノマー由来の単位を示し、
は、−Si(Y)(Y)−または−Si(Y)(Y)(Y)で表示されるシリル基を有する単位を示し、
前記Y,Y及びYは互いに独立して、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のC−C20アルキル基、置換もしくは非置換のC−C30アリール基または加水分解性置換基を示し、前記Y,Y及びYのうち少なくとも一つは、加水分解性置換基であり、
Gは、連鎖移動剤(chain transfer agent)の残基を含む一価の有機基であり、
nは、1ないし100の数(好ましくは整数)であり、
mは、0ないし100の数(好ましくは整数)であり、
rは、0ないし100の数(好ましくは整数)であり、
n+m+rは、少なくとも2であり、
pは、0ないし10の数(好ましくは整数)である。ここで、pが0である(置換基Gが存在しない)場合には、Mは、−Si(Y)(Y)(Y)で表示されるシリル基を有する単位を示す。一方、pが0以外の数(0を超えて10以下の数)である(置換基Gが存在する)場合には、Mは、−Si(Y)(Y)−で表示されるシリル基を有する単位を示す。
【0062】
例えば、前記Xは、ハロゲン原子であって、前記Mは、フッ素化C−C10アルキレン基であって、Mは、C−C10アルキレン基であって、前記Y,Y及びYは互いに独立して、ハロゲン原子(Br、Cl、Fなど)であって、pは、0であってもよい。例えば、前記化学式4で表示されるフッ素化シラン系物質は、CFCHCHSiClであるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記化学式4で表示されるフッ化シラン系物質に係わる詳細な説明は、米国特許第7,728,098に記述されており、これは、参照されて本明細書に統合される。
【0064】
前記導電性物質は、例えば、公知の任意の導電性高分子であってもよい。
【0065】
例えば、前記導電性物質は、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスチレン、スルホン化されたポリスチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、自己ドープ型導電性高分子(self-doped conductive polymer)、例えば、自己ドープ型ポリチオフェン、自己ドープ型ポリアニリン、自己ドープ型ポリピロール、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。前記誘導体は、各種スルホン酸などをさらに含んでもよいことを意味する。
【0066】
例えば、前記導電性物質は、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani:DBSA)(下記化学式参照)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)(下記化学式参照)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani:CSA)または、ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI:PSS)などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
【化5】

【0068】
前記Rは、HまたはC−C10アルキル基であってもよい。
【0069】
前記自己ドープ型導電性高分子は、重合度10ないし10,000,000を有し、下記化学式5で表示される繰り返し単位を有することができる:
【0070】
【化6】

【0071】
前記化学式5中、
0<m<10,000,000、0<n<10,000,000、0≦a≦20(好ましくは整数)、0≦b≦20(好ましくは整数)であり、
,R,R,R’,R’,R’及びR’のうち少なくとも一つは、イオン性基を含んでおり、A,B,A’,B’はそれぞれ独立し、C、Si、Ge、SnまたはPbから選択され、
,R,R,R’,R’,R’及びR’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換もしくは非置換のアミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のC−C30アルキル基、置換もしくは非置換のC−C30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC−C30のヘテロアルコキシ基、置換もしくは非置換のC−C30アリール基、置換もしくは非置換のC−C30アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC−C30アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基、置換もしくは非置換であるC−C30のヘテロアリールオキシ基、置換もしくは非置換であるC−C30のアリールアルキルオキシ基、置換もしくは非置換のC−C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC−C30アルキルエステル基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアルキルエステル基、置換もしくは非置換のC−C30アリールエステル基、及び置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアリールエステル基からなる群から選択され、前記化学式5の繰り返し単位の炭素に、選択的に水素原子またはハロゲン原子が結合可能であり、
は、共役系導電性高分子鎖であり、
X及びX’はそれぞれ独立して、単結合、O、S、置換もしくは非置換のC−C30アルキレン基(好ましくは置換もしくは非置換のC−C30アルキレン基)、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアルキレン基(好ましくは置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアルキレン基)、置換もしくは非置換のC−C30アリーレン基、置換もしくは非置換のC−C30アリールアルキレン基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアリーレン基、置換もしくは非置換のC−C30ヘテロアリールアルキレン基、置換もしくは非置換のC−C20シクロアルキレン基、及び置換もしくは非置換のC−C30ヘテロシクロアルキレン基からなる群から選択され、前記化学式5の繰り返し単位の炭素に、選択的に水素原子またはハロゲン原子が結合可能である。
【0072】
例えば、前記イオン性基が、PO2−、SO、COO、I、CHCOOからなる群から選択される陰イオン;及びNa、K、Li、Mg+2、Zn+2、Al+3のうちから選択される金属イオンと、H、NH、CH(−CH−)(nは、1ないし50の自然数)のうちから選択された有機イオンと、からなる群から選択され、前記陰イオンと対をなす陽イオン;を含んでもよい。
【0073】
例えば、前記化学式5の自己ドープ型導電性高分子で、R,R,R,R’,R’,R’及びR’のうち、それぞれ少なくとも一つは、フッ素原子であるか、あるいはフッ素原子で置換された基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0074】
本明細書において、非置換のアルキル基の具体的な例としては、直鎖型または分枝型であって、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、iso−アミル基、ヘキシル基などを挙げることができ、前記アルキル基に含まれている一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、置換または非置換のアミノ基(−NH、−NH(R)、−N(R’)(R”)、この際、R、R’およびR”は互いに独立して、C−C10アルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、C−C20アルキル基、C−C20ハロゲン化されたアルキル基、C−C20アルケニル基(好ましくはC−C20アルケニル基)、C−C20アルキニル基(好ましくはC−C20アルキニル基)、C−C20ヘテロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アリールアルキル基、C−C20ヘテロアリール基またはC−C20ヘテロアリールアルキル基で置換されてもよい。
【0075】
本明細書において、ヘテロアルキル基は、前記アルキル基の主鎖内の炭素原子のうち一つ以上、望ましくは、1ないし5個の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子のようなヘテロ原子で置換されたものを意味する。
【0076】
本明細書において、アリール基は、一つ以上の芳香族環を含む炭素環芳香族系を意味し、前記環は、ペンダント法で共に付着されたり、あるいは融合(fused)される。アリール基の具体的な例としては、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基のような芳香族基を挙げることができ、前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0077】
本明細書において、ヘテロアリール基は、N、O、PまたはSのうちから選択された1,2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである環原子数5ないし30の環芳香族系を意味し、前記環は、ペンダント法で共に付着されたり、あるいは融合される。そして、前記ヘテロアリール基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0078】
本明細書において、アルコキシ基は、−O−アルキルをいい、このとき、アルキルは、前記で定義された通りである。具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、iso−アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基などを挙げることができ、前記アルコキシ基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0079】
本発明で使われる置換基であるヘテロアルコキシ基は、1個以上のヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄または窒素がアルキル鎖内に存在しうるということを除けば、本質的に、前記アルコキシの意味を有し、例えば、CHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−及びCHO(CHCHO)−などである。
【0080】
本明細書において、アリールアルキル基は、前記で定義されたようなアリール基において、水素原子のうち一部が、低級アルキル、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基のようなラジカルで置換されたものを意味する。例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などがある。前記アリールアルキル基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0081】
本明細書において、ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロアリール基の水素原子一部が、低級アルキル基で置換されたものを意味し、ヘテロアリールアルキル基において、ヘテロアリールに係わる定義は、前述の通りである。前記ヘテロアリールアルキル基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0082】
本明細書において、アリールオキシ基は、−O−アリールをいい、このとき、アリールは、前記で定義された通りである。具体的な例として、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基などがあって、アリールオキシ基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0083】
本明細書において、ヘテロアリールオキシ基は、−O−ヘテロアリールをいい、このとき、ヘテロアリールは、前記で定義された通りである。
【0084】
本明細書において、アリールアルキルオキシ基の具体的な例として、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基などがあって、アリールアルキルオキシ基において一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0085】
本明細書において、シクロアルキル基は、C−C30一価単環系を意味する。前記シクロアルキル基のうち少なくとも一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0086】
本明細書において、ヘテロシクロアルキル基は、N、O、PまたはSのうちから選択された1,2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである環原子数5ないし30の一価単環系を意味する。前記シクロアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0087】
本明細書において、アルキルエステル基は、アルキル基とエステル基とが結合されている作用基を意味し、このとき、アルキル基は、前記で定義された通りである。
【0088】
本明細書において、ヘテロアルキルエステル基は、ヘテロアルキル基とエステル基とが結合されている作用基を意味し、前記ヘテロアルキル基は、前記で定義された通りである。
【0089】
本明細書において、アリールエステル基は、アリール基とエステル基とが結合されている作用基を意味し、このとき、アリール基は、前記で定義された通りである。
【0090】
本明細書において、ヘテロアリールエステル基は、ヘテロアリール基とエステル基とが結合されている作用基を意味し、このとき、ヘテロアリール基は、前記で定義された通りである。
【0091】
本発明で使われるアミノ基は、−NH、−NH(R)または−N(R’)(R”)を意味し、R、R’およびR”は互いに独立して、C−C10アルキル基である。
【0092】
本明細書において、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアスタチン原子であり、それらのうち、フッ素原子が特に望ましい。
【0093】
前記仕事関数傾斜層13において、低表面エネルギー物質の含有量(総濃度)は、特に制限されないが、前記導電性物質100重量部当たり、250重量部ないし450重量部、例えば、300重量部ないし400重量部であるが、これに限定されるものではない。前記低表面エネルギー物質の含有量が、前述のような範囲を満足する場合、仕事関数傾斜層13に効果的な仕事関数の傾斜(勾配)が形成される。
【0094】
前記電極10の厚みは、10nmないし150nm、例えば、50nmないし80nmであってもよい。前記電極10が、前述のような範囲を満足する場合、優秀な仕事関数特性及びフレキシブル特性を提供することができる。
【0095】
前述のような電極10を製造する方法は、基板上に、グラフェン含有層を提供する段階と、前記グラフェン含有層上に仕事関数傾斜層を提供する段階と、を含んでもよい。
【0096】
まず、基板として、一般的な半導体工程で使われる基板が使われる。例えば、前記基板は、シリコン、シリコン酸化物、金属ホイル(例えば、銅ホイル、アルミニウムホイル、ステンレススチールなど)、金属酸化物、高分子基板(polymer substrate)、及びそれらのうち2以上の組み合わせを含んでもよい。前記金属ホイルは、融点(melting point)が高く、グラフェンを形成させることができる触媒としては作用しない物質からなってもよい。前記金属酸化物の例としては、アルミニウム酸化物、モリブデン酸化物、酸化インジウムスズ(ITO)などを挙げることができ、前記高分子基板の例としては、ケプトンホイル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(polyallylate)、ポリイミド(polyimide)、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
例えば、前記基板は、前述のような高分子基板であるが、これに限定されるものではない。
【0098】
次に、前記基板にグラフェン含有層を提供するが、前記基板にグラフェンを直接成長させる方法、前記基板上に溶媒、及びグラフェンまたはグラフェン前駆体を提供した後、前記溶媒を除去することによって、グラフェン層を形成する方法、またはベース基板にグラフェンを形成させた後、既形成のグラフェンを前記基板に転写させる方法など、多様な方法を利用することができる。また、必要な場合、グラフェン・ドーピング工程を追加することができる。グラフェン・ドーピング工程は、HNO、AuCl、HCl、ニトロメタン(nitromethane)、HSO、HAuCl、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノリン(2,3−dichloro−5,6−dicyanobenzoquinone)、酸末端処理された低分子(acid-terminated small molecules)(例えば、3−メルカプトプロピオン酸、16−メルカプトヘキサデカン酸、ベンゾスルホン酸、ベンゼンホスホン酸など)、高分子酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸など)などのように、ドーパント及び/またはその前駆体がグラフェンを接触させた後、熱処理工程などを遂行し、ドーピングされたグラフェン含有層を得ることができる。
【0099】
この後、選択的に、UV(ultraviolet)オゾン、酸素プラズマなどの表面処理を行うことができる。
【0100】
この後、グラフェン形成層上部に、仕事関数傾斜層を形成する。仕事関数傾斜層は、例えば、前述のような導電性物質、低表面エネルギー物質及び溶媒を含んだ混合物を、前記グラフェン含有層上に提供した後、これを熱処理することにより、グラフェン形成層上に仕事関数傾斜層を提供する。
【0101】
前記仕事関数傾斜層は、例えば、導電性物質層及び低表面エネルギー物質層を個別的に形成するものではなく、前述のような導電性物質、低表面エネルギー物質及び溶媒を含んだ混合物を、前記グラフェン含有層上に提供した後、これを熱処理する1回の成膜工程によって形成することができるが(導電性物質と低表面エネルギー物質との表面エネルギー差によって、各物質が自己配列され、それぞれの濃度勾配を形成するためである)、製作工程が簡単である。従って、前記仕事関数傾斜層の形成方法は、大面積電子素子製作に有用に応用される。
【0102】
前述のような電極は、各種電子素子に含まれる。前記電極は、従来のITOとは異なり、フレキシブル特性を有するので、前記電子素子に含まれた基板として、フレキシブル基板を採用するならば、容易にフレキシブル電子素子を得ることができる。従って、前記電子素子は、フレキシブル特性を有する。前記フレキシブル基板としては、前述のような高分子基板を利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記電子素子は、公知の多様な構造及び機能を遂行することができる素子であるが、例えば、有機発光素子、有機太陽電池、有機メモリ素子または有機トランジスタ(特に有機薄膜トランジスタ)であってもよい。
【0104】
前述のような電子素子は、ディスプレイ装置、照明ランプ、半導体チップのような多様な電子装置に含まれる。
【0105】
前記電極を具備した有機発光素子の一実施形態の概略的な構造は、図4を参照する。図4の有機発光素子100は、基板110、第1電極120、正孔輸送層130、発光層140、電子輸送層150、電子注入層160及び第2電極170を含む。前記有機発光素子100の第1電極120及び第2電極170間に電圧を印加すれば、第1電極120から注入された正孔は、正孔輸送層130を経由して発光層140に移動し、第2電極170から注入された電子は、電子輸送層150及び電子注入層160を経由し、発光層140に移動する。前記正孔及び電子のようなキャリアは、発光層140で再結合して励起子(exiton)を生成するが、この励起子が、励起状態から基底状態に変わりつつ光が生成される。前記第1電極110の下部に、基板が位置しうる。
【0106】
前記基板110は、前述のような基板であってもよい。例えば、前記基板110は、フレキシブル基板であるが、その例としては、前述のような高分子基板を挙げることができる。
【0107】
前記第1電極120は、前述のようなグラフェン含有層及び仕事関数傾斜層を含む。前記第1電極120は、正孔注入電極の役割を行うことができる。
【0108】
前記有機発光素子100は、電子注入層を含まなくともよい。それは、前記第1電極120の仕事関数傾斜層によって、正孔輸送層130に容易に正孔注入が可能であるためである。従って、前記第1電極120に含まれた仕事関数傾斜層と前記正孔輸送層130は、互いに接触しうる。
【0109】
前記正孔輸送層130は、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法のような公知の多様な方法のうちから任意に選択された方法によって形成される。このとき、真空蒸着法を選択する場合、蒸着条件は、目的化合物、目的とする層の構造及び熱的特性などによって異なるが、例えば、100ないし500℃の蒸着温度範囲、10−10ないし10−3torrの真空度範囲、0.01ないし100A/secの蒸着速度範囲内で選択されてもよい。一方、スピンコーティング法を選択する場合、コーティング条件は、目的化合物、目的とする層の構造及び熱的特性によって異なるが、2,000rpmないし5,000rpmのコーティング速度範囲、80℃ないし200℃の熱処理温度(コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度)範囲内で選択されてもよい。
【0110】
正孔輸送層130の材料は、公知の正孔輸送材料を利用して形成することができるが、例えば、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、N−フェニルカルバゾール、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)などの芳香族縮合環を有するアミン誘導体;4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)のようなトリフェニルアミン系物質のような公知の正孔輸送物質を使用することができる。このうち、例えば、TCTAの場合、正孔輸送の役割以外にも、発光層140からの励起子拡散防止の役割も行うことができる。
【0111】
前記正孔輸送層130の厚みは5nmないし100nm、例えば、10nmないし60nmであってもよい。前記正孔輸送層130の厚みが前述のような範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔輸送特性を得ることができる。
【0112】
前記発光層140は、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような公知の多様な方法のうちから任意に選択された方法によって形成される。このとき、蒸着条件及びコーティング条件は、目的化合物、目的とする層の構造及び熱的特性などによって異なるが、前述のような正孔輸送層130形成のための条件と類似した範囲内で選択される。
【0113】
前記発光層140は、単一発光材料からもなり、ホスト及びドーパントを含むこともできる。
【0114】
前記ホストの例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBi)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(TBADN)、E3(下記化学式参照)、BeBq2(下記化学式参照)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。必要によって、前記正孔輸送層130材料の一例であるNPBもホストとして使われもする。
【0115】
【化7】

【0116】
一方、公知の赤色ドーパントとして、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン(ルブレン)、PtOEP、Ir(piq)、BtpIr(acac)などを利用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
【化8】

【0118】
また、公知の緑色ドーパントとして、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)、10−(2−ベンゾチアゾリル)−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラの[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン(C545T)(下記化学式参照)などを利用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
【化9】

【0120】
一方、公知の青色ドーパントとして、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、4,4’−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(TBP)などを利用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
【化10】

【0122】
前記発光層の厚みは10nmないし100nm、例えば、10nmないし60nmであってもよい。前記発光層の厚みが前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な発光特性を得ることができる。
【0123】
正孔阻止層(図4には図示せず)は、発光層140(例えば、発光層140がリン光化合物を含む場合)の三重項励起子または正孔が第2電極170などに拡散する現象を防止する役割を行うものであり、発光層140の上部に追加して形成され、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような公知の多様な方法のうちから任意に選択された方法によって形成される。このとき、蒸着条件及びコーティング条件は、目的化合物、目的とする層の構造及び熱的特性などによって異なるが、前述のような正孔輸送層130形成のための条件と類似した範囲内で選択される。
【0124】
前記正孔阻止材料は、公知の正孔阻止材料のうちから任意に選択されてもよい。例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などを使用することができる。
【0125】
前記正孔阻止層の厚みは、約5nmないし100nm、例えば、10nmないし30nmであってもよい。前記正孔阻止層の厚みが前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔阻止特性を得ることができる。
【0126】
前記正孔輸送層150は、真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような公知の多様な方法のうちから任意に選択された方法によって、発光層140または正孔阻止層の上部に形成される。このとき、蒸着条件及びコーティング条件は、目的化合物、目的とする層の構造及び熱的特性などによって異なるが、前述のような正孔輸送層形成のための条件と類似した範囲内で選択される。
【0127】
前記電子輸送層150の物質としては、公知の電子輸送材料を使用することができるが、例えば、Alq3、1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)−ベリリウム(BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(p−フェニルフェノラート)−アルミニウム(BAlq)のような公知の材料を使用することもできる:
【0128】
【化11】

【0129】
前記電子輸送層150の厚みは、約10nmないし100nm、例えば、20nmないし50nmであってもよい。前記電子輸送層150の厚みが前述のような範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子輸送特性を得ることができる。
【0130】
前記電子輸送層150の上部には、電子注入層160が形成される。前記電子注入層の形成材料としては、公知の電子注入材料であるLiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、BaF、Liq(リチウムキノレート)などが使われ、前記電子注入層160の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に、正孔輸送層130の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0131】
前記電子注入層160の厚みは、約0.1nmないし10nm、例えば、0.5nmないし5nmであってもよい。前記電子注入層160の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、満足すべき電子注入特性を得ることができる。
【0132】
前記第2電極170は、カソード(電子注入電極)であって、相対的に小さい仕事関数を有する金属、合金、電気導電性化合物、及びそれらの組み合わせを使用することができる。具体的な例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを挙げることができる。また、前面発光素子を得るために酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などを使用することもできる。
【0133】
前記有機発光素子は、前述のような電極をアノードとして含むが、非常に高い正孔注入効率を有し、さらに、正孔輸送層130を経由しての電子の第1電極120への流入を遮断することができるが、前記有機発光素子100は、優秀な電気的特性を有し、基板110として、フレキシブル基板を採用するならば、前記有機発光素子100は、フレキシブル特性も有する。
【0134】
図5は、前記電極を含んだ有機太陽電池の一実施形態を概略的に図示したものである。
【0135】
図5の有機太陽電池200は、基板210、第1電極220、ヘテロ接合層230、電子受容層240及び第2電極250を含んでもよい。有機太陽電池200に照射された光は、ヘテロ接合層230で、正孔と電子とに分離され、電子は、電子受容層240を経て第2電極250に移動し、正孔は、第1電極220に移動しうる。
【0136】
前記基板210は、前記基板110に係わる説明を参照する。一方、前記第1電極220は、前述のような電極(本発明の電極)であってもよい。
【0137】
前記ヘテロ接合層230は、照射された光から正孔と電子とを分離させることができる物質を含んでもよい。例えば、前記ヘテロ接合層230は、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを含んでもよい。例えば、前記ヘテロ接合層230は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)及びフェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCMB)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0138】
前記電子受容層240は、電子を受容することができる材料からなってもよいが、例えば、前述のような有機発光素子100の電子注入層160材料を利用することができる。
【0139】
前記第2電極250は、カソード(電子注入電極)であって、相対的に小さい仕事関数を有する金属、合金、電気導電性化合物、及びそれらの組み合わせを使用することができる。具体的な例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを挙げることができる。
【0140】
前記有機太陽電池200は、前述のような電極220を採用するので、ヘテロ接合層230で生成された正孔が容易に電極220に移動しうる。従って、優秀な電気的特性を提供することができる。
【0141】
図6は、前記電極を含んだ有機薄膜トランジスタの一実施形態を概略的に図示したものである。
【0142】
図6の有機薄膜トランジスタ300は、基板311、ゲート電極312、絶縁層313、有機半導体層315、並びにソース及びドレイン電極314a,314bを含む。前記ゲート電極312、並びにソース及びドレイン電極314a,314bのうち一つ以上は、前述のような電極(本発明の電極)であってもよい。
【0143】
前記基板311についての説明は、前記基板110についての説明を参照する。
【0144】
前記基板311上には、所定パターンのゲート電極312が形成されている。前記ゲート電極312は、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pt、Pd、Al、Mo、またはAl:Nd、Mo:W合金のような金属または金属の合金からなってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0145】
前記ゲート電極312の上部には、前記ゲート電極312を覆うように、絶縁層313が備わっている。前記絶縁層313は、金属酸化物または金属窒化物のような無機物からなるか、あるいはフレキシブル有機高分子のような有機物からもなるなど、多様な物質で具備可能である。
【0146】
絶縁層313の上部には、有機半導体層315が形成されている。前記有機半導体層315は、ペンタセン(pentacene)、テトラセン(tetracene)、アントラセン(anthracene)、ナフタレン(naphthalene)、アルファ(α)−6−チオフェン、アルファ(α)−4−チオフェン、ペリレン(perylene)及びその誘導体、ルブレンN(rubrene)及びその誘導体、コロネン(coronene)及びその誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(perylene tetracarboxylic diimide)及びその誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水物(perylene tetracarboxylic dianhydride)及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリチオフェンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びその誘導体、ナフタレンのオリゴアセン及びそれらの誘導体、アルファ(α)−5−チオフェンのオリゴアセン及びそれらの誘導体、金属含有あるいは非含有のフタロシアニン及びそれらの誘導体、ピロメリット二無水物及びその誘導体、ピロメリット酸ジイミド及びそれらの誘導体などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0147】
前記有機半導体層315上には、ソース及びドレイン電極314a,314bがそれぞれ形成されている。前記ソース及びドレイン電極314a,314bは、図6から分かるように、一定部分ゲート電極312と重畳するように備わるが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記ソース及びドレイン電極314a,314bは、前記電極からなってもよい。または、前記ソース及びドレイン電極314a,314bは、有機半導体層をなす物質との仕事関数を考慮し、5.0eV以上の貴金属(noble metal)、例えば、Au、Pd、Pt、Ni、Rh、Ru、Ir、Os、及びそれらのうち2以上の組み合わせを使用することができる。
【0148】
以上、前記電子素子について、図4ないし図6を参照して説明したが、それらに限定されるものではない。
【0149】
本発明は、図面に図示された実施例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【実施例】
【0150】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0151】
実施例1:グラフェン含有層の製作
下記方法によって、グラフェン含有層をポリ(エチレンテレフタレート)(PET)基板表面に形成した。
【0152】
単一層グラフェンの形成及び転写
銅ホイル(9cmx15cm)をタブラ炉(tubular furnace)内に装着し、90mtorrでH(8s.c.c.m)を供給しつつ1,000℃まで昇温させた後、30分間前記温度を維持し、前記銅ホイル上に銅グレーンを生成させた。この後、460mtorrで、CH(24s.c.c.m)及びH(8s.c.c.m)を30分間供給した後、90mtorrでHを供給しつつ室温まで冷却させ、前記銅ホイル上に単一層グラフェン(monolayer graphene)を形成した。
【0153】
この後、前記単一層グラフェン上に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)層を加圧し、単一層グラフェンとPMMA層とを接触させた後、銅ホイル/単一層グラフェン/PMMA層のフィルムを銅エッチェントである過酸化硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)溶液(98%)に300〜360分間浸漬させた後、脱イオン水で洗浄し、銅ホイルを除去することによって、単一層グラフェン/PMMA層のフィルムを得た。
【0154】
次に、前記単一層グラフェンが、PET基板表面と接触するように、PET基板上に、前記単一層グラフェン/PMMA層を配置した後、約100℃の温度下で、前記PMMA層上部を加圧することによって、前記単一層グラフェン(厚み:約0.4nm)をPET基板上に転写した。
【0155】
多層グラフェンの製作
前記単一層グラフェン転写工程を2回、3回及び4回反復し(ただし、2回目以上の単一層グラフェン転写工程で、単一層グラフェンは、PET基板に既転写の単一層グラフェン上に転写される)、PET基板上に2層グラフェン(以下、「G2」または「PET/G2フィルム」と表記する)、3層グラフェン(以下、「G3」または「PET/G3フィルム」と表記する)及び4層グラフェン(以下、「G4」または「PET/G4フィルム」と表記する)をそれぞれ製作した。
【0156】
HNOを利用したグラフェン含有層のドーピング
前述のように、PET/G2フィルム、PET/G3フィルム及びPET/G4フィルムをそれぞれ製作した後、それらそれぞれを、HNO溶液(株式会社松野園製薬所、硝酸60%、FW 53.01)に15秒間浸漬させた後で取り出し、窒素ブローを利用してグラフェン表面の硝酸を除去した後、真空下で30分間置き、PET基板表面に、HNOを利用してドーピングされたグラフェン含有層(それぞれ「G2−HNO」、「G3−HNO」及び「G4−HNO」とする)をそれぞれ形成した。
【0157】
AuClを利用したグラフェン含有層ドーピング
前述のように、PET/G2フィルム、PET/G3フィルム及びPET/G4フィルムをそれぞれ製作した後、それらそれぞれを、AuCl(小島化学薬品株式会社、FW=303.33)をニトロメタン(99.0%、CHNO=61.04、assay≧99.0%、SAMCHUN Pure Chemical Co.,Ltd.)に0.025モル濃度で溶解させた溶液に、1分間浸漬及び1分間超音波処理した後で取り出し、窒素ブローを利用してグラフェン表面のAuClを除去した後、真空下で30分間置き、PET基板表面に、AuClを利用してドーピングされたグラフェン含有層(それぞれ「G2−AuCl」、「G3−AuCl」及び「G4−AuCl」とする)をそれぞれ形成した。
【0158】
評価例1:グラフェン含有層特性の評価
前記実施例1で製作したG2、G3、G4(以上、PET基板上に形成される)に対して、UV−spectrometer(SCINCO(S−3100))を利用して光透過率を評価し、その結果を図7に示した。図7によれば、実施例1で製作したG2、G3及びG4は、従来のITOに比べて、優秀な青色光透過率を示すということを確認することができる。
【0159】
一方、実施例1で製作したグラフェン含有層に対して、紫外線光電子スペクトロスコピ(UPS:ultraviolet photoelectron spectroscopy、メーカは、VG Scientificであり、モデル名は、ESCAL AB220iXLである)を利用し、結合エネルギー及び仕事関数を評価し、その結果を図8及び表1に示した。また、KEITHLEY 2612を利用し、実施例1で製作したグラフェン含有層の面抵抗を評価し、その結果を表1に示す:
【0160】
【表1】

【0161】
図8及び表1によれば、グラフェン含有層におけるグラフェン層数が増加するほど、グラフェン含有層の仕事関数は増大し、面抵抗は低下するということを確認することができ、ドーピングされたグラフェン含有層が、非ドーピングのグラフェン含有層に比べ、大きい仕事関数及び低い面抵抗を有するということを確認することができる。
【0162】
実施例2:アノード製作
前記実施例1に記載された方法によって、PET基板にグラフェン含有層として、G2−HNO、G3−HNO、G4−HNO及びG4−AuClをそれぞれ形成した。
【0163】
次に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)水溶液(CLEVIOSTM P VP AI4083/PEDOT 1重量部当たり、PSSは6重量部である)、及び下記化学式6の物質を含んだ溶液(水とアルコールとの混合物(水:アルコール=4.5:5.5(v/v))に化学式6の物質が5重量%で分散されているもの、Aldrich Co.社製)を混合した混合物を準備した。ここで、前記PEDOT:PSS水溶液と、前記化学式6の物質を含んだ溶液との混合比は、PEDOT 1重量部当たり、前記化学式6の物質の含有量が、25.4重量部になるように調節した。
【0164】
【化12】

【0165】
前記化学式6で、x=1,300、y=200、z=1である。
【0166】
前記混合物を、前記グラフェン含有層上にスピンコーティングした後、30分間150℃で熱処理し、50nm厚の仕事関数傾斜層を形成し、PET基板上に、下記表2のような構成を有するグラフェン含有層/仕事関数傾斜層からなるアノード1,2,3及び4を形成した。
【0167】
【表2】

【0168】
評価例2:アノード特性評価
前記アノード4の深さ別(すなわち、スパッタ時間別)分子分布を知るために、アノード4に対して、X線光電子スペクトロスコピ(XPS、メーカーは、VG Scientificであり、モデル名は、ESCALAB 220iXLである)で評価を行い、その結果を、図9に示した。ここで、XPSスペクトルで、PEDOT(164.5eV)、スルホン酸(168.4及び168.9eV)、スルフィド(162eV)及びスルホン(166.6eV)の濃度に対するdeconvoluted S2pピーク、及び化学式6の物質(291.6eV)に対するC1sピークは、291.6eVを分析し、それぞれの濃度を評価した。図9によれば、アノード4の表面である仕事関数傾斜層の表面(すなわち、仕事関数傾斜層の第2面、スパッタタイム=0秒)からグラフェン含有層に向かう方向(すなわち、仕事関数傾斜層の第1面に向かう方向)に沿って、化学式6の低表面エネルギー物質の濃度を示すCFモイエティの濃度は、実質的に低減し、PEDOTの濃度は、実質的に上昇するということが分かる。従って、アノード4の仕事関数傾斜層に含まれた物質は、均一な(homogeneous)分布を有するものではなく、仕事関数傾斜層の深さによって変化する濃度勾配を有するということを確認することができる。
【0169】
一方、前記アノード4の表面、すなわち、仕事関数傾斜層において、第1面及び第2面の仕事関数を、前記評価例1に記載された方法と同じ方法を利用して測定した結果、それぞれ、5.1eVおよび5.95eVであることを確認した。同様にして、アノード1〜3の仕事関数傾斜層において、第1面及び第2面の仕事関数を、前記評価例1に記載された方法と同じ方法を利用して測定した結果、アノード1の、第1面の仕事関数=4.6eV、第2面の仕事関数=5.95eV;アノード2の、第1面の仕事関数=4.6eV、第2面の仕事関数=5.95eV;ならびにアノード3、の第1面の仕事関数=4.6eV、第2面の仕事関数=5.95eVであることを確認した。
【0170】
次に、前記アノード1,2及び3の正孔注入効率を評価し、その結果を図10A(電界−電流密度のグラフ)及び図10B(電界−正孔注入効率のグラフ)に示した。正孔注入効率の評価時、DI SCLC(dark injection space-charge-limited-current)転移測定法を利用したが、アノード(アノード1,2,3)/NPB層(約2.6μm)/Al構造を有する正孔only素子を製作した後、DI SCLC転移評価を行った。前記DI SCLC(dark injection space-charge-limited-current)転移評価時、パルス生成器(HP 214B)及びデジタルオシロスコープ(Agilent Infiniium 54832B)を利用した。図10A及び図10Bから、前記アノード1,2及び3は、優秀な正孔注入効率を有するということを確認することができる。
【0171】
実施例3:緑色発光OLEDの製作
前記実施例2に記載された方法によって、PET基板上に、アノード1,2,3及び4をそれぞれ形成した。前記アノードを酸素プラズマを利用した反応性イオンエッチング法を利用してパターニングした後、その上部に、20nm厚のNPB正孔輸送層、20nm厚のBeBq2:C545T(C545Tの含有量は、1.5重量%)発光層、20nm厚のBeBq2電子輸送層、1nm厚のLiq電子注入層、及び130nm厚のAlカソードを順に形成し(以上、真空蒸着法を利用)、OLED(発光領域は、2x3mmである)を製作した。以下、アノード1,2,3及び4をそれぞれ採用したOLEDを、それぞれOLED1,2,3及び4とする。
【0172】
比較例A
実施例1に記載されたところと同じ方法を利用し、PET基板上に、アノードとしてG4−AuClを形成した後(すなわち、本比較例Aのアノードは、仕事関数傾斜層を含まず)、前記G4−AuCl上に、50nm厚のPEDOT:PSS正孔注入層(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(CLEVIOSTMP VP AI4083/PEDOT 1重量部当たり、PSSは6重量部である)をG4−AuCl上にスピンコーティングし、30分間150℃で熱処理して形成する)、20nm厚のNPB正孔輸送層、20nm厚のBebq2:C545T(C545Tは、1.5重量%林)発光層、20nm厚のBebq2電子輸送層、1nm厚のLiq電子輸送層及び130nm厚のAlカソードを順に形成し(以上、真空蒸着法を利用)、OLEDを製作した。これをOLED Aとする。
【0173】
比較例B
50nm厚のPEDOT:PSS正孔注入層を形成しなかったという点を除いては、前記比較例Aと同じ方法でOLEDを製作した。これをOLED Bとする。
【0174】
比較例C
アノードとして、PET基板上に形成されたG4−AuClの代わりに、コーニング社(Corning)の15Ω/cm(1,200Å)ITOガラス基板を利用した(すなわち、アノードとして、ガラス基板上に形成されたITOを使用)という点を除いては、前記比較例Aと同じ方法でOLEDを製作した。これをOLED Cとする。
【0175】
比較例D
50nm厚のPEDOT:PSS正孔注入層を形成しなかったという点を除いては、前記比較例Cと同じ方法でOLEDを製作した。これをOLED Dとする。
【0176】
以上で製作されたOLED構成及びフレキシブル特性(O:柔軟である/X:曲がらない)を整理すれば、下記表3の通りである。ここで、OLED4のフレキシブルは、図11から確認することができる:
【0177】
【表3】

【0178】
評価例3:緑色発光OLED特性の評価
OLED1,2,3,4,A,B,C及びDに対して、Keithley 236 source測定機器及びMinolta CS2000スペクトロラジオメータを利用し、電流効率、電力効率及びELスペクトルを評価し、その結果を図12及び図13にそれぞれ示した。図12及び図13によれば、グラフェン4層を使用したOLEDが最も効率にすぐれるということを確認することができる。
【0179】
実施例4:白色発光OLEDの製作
前記実施例2に記載された方法によって、PET基板上にアノード3を形成した。前記アノードを酸素プラズマを利用した反応性イオンエッチング法によってパターニングした後、その上部に20nm厚のNPB正孔輸送層、10nm厚のNPB:TBADN:ルブレン(ルブレンは、1重量%である)第1発光層/10nm厚のNPT:TBADN:DPAVBi(DPAVBiは、5重量%である)の第2発光層/15nm厚のTBADN:DPAVBi(DPAVBiは、5重量%である)の第3発光層/20nm厚のBebq2電子輸送層、1nm厚のBaF電子輸送層、及び130nm厚のAlカソードを順に形成し(以上、真空蒸着法を利用)、OLEDを製作した。これをOLED5とする。
【0180】
比較例E
アノードとして、PET基板上に形成されたアノード3の代わりに、コーニング社(Corning)の15Ω/cm(1,200Å)ITOガラス基板を利用した(すなわち、アノードとして、ガラス基板上に形成されたITOを使用)という点を除いては、前記実施例5と同じ方法でOLEDを製作した。これをOLED Eとする。
【0181】
評価例4:白色発光OLED特性の評価
評価例3と同じ方法を利用し、OLED5及びEの電流効率及びOLED5のELスペクトルを評価し、図14及び図15に示した。図14から、OLED5は、OLED Eより優秀な電流効率を有するということを確認することができる。一方、OLED5のCIE色座標を評価した結果、(0.32,0.42)で優秀な色純度を示すということを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の電極及びそれを含んだ電子素子は、電子素子関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0183】
10 電極、
11 グラフェン含有層、
13 仕事関数傾斜層、
13A 仕事関数傾斜層の第1面、
13B 仕事関数傾斜層の第2面、
15 層、
S1,S2,S3,S4 シート、
100 有機発光素子、
110,210,311 基板、
120,220 第1電極、
130 正孔輸送層、
140 発光層、
150,240 電子輸送層、
160 電子注入層、
170,250 第2電極、
200 有機太陽電池、
230 ヘテロ接合層、
300 薄膜トランジスタ、
312 ゲート電極、
313 絶縁膜、
314a,314b ソース電極及びドレイン電極、
315 有機半導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン含有層と、
前記グラフェン含有層上に形成される仕事関数傾斜層と、を含み、
前記仕事関数傾斜層は、前記グラフェン含有層と接触する第1面、及び前記第1面に対向する第2面を有する単一層であり、前記仕事関数傾斜層の仕事関数は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に沿って漸進的に増大する電極。
【請求項2】
前記グラフェン含有層におけるグラフェンは、複数個の炭素原子が互いに共有結合し、第1方向に延長して配列される多環芳香族分子からなるシートをn枚(ここで、nは、1以上の整数である)含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記nが2以上で、n枚のシートは、前記第1方向に対して垂直である第2方向に沿って積層する、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記nが2ないし10である、請求項2または3に記載の電極。
【請求項5】
前記グラフェン含有層が、p型ドーパントをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のに記載の電極。
【請求項6】
前記p型ドーパントが、HNO、AuCl、HCl、ニトロメタン、HSO、HAuCl、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、酸末端処理された低分子(acid-terminated small molecule)、高分子酸、またはそれらのうち2以上の組み合わせを含む、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記仕事関数傾斜層の第1面の仕事関数は、4.8eVないし5.3eVの範囲であり、前記仕事関数傾斜層の第2面の仕事関数は、5.3eVないし6.5eVの範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極。
【請求項8】
前記仕事関数傾斜層は、導電性物質及び低表面エネルギー物質を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極。
【請求項9】
前記低表面エネルギー物質は、前記低表面エネルギー物質からなる薄膜が、30mN/m以下の表面エネルギーおよび10−1ないし10−15S/cmの導電率を有する、または前記低表面エネルギー物質を含む導電性高分子組成物を利用して形成される薄膜が、30mN/m以下の表面エネルギーおよび10−7ないし10−1S/cmの導電率を有する、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
前記低表面エネルギー物質の濃度が、前記第1面から前記第2面に向かって、漸進的に上昇する、請求項8または9に記載の電極。
【請求項11】
前記仕事関数傾斜層の第1面の仕事関数が、前記導電性物質の仕事関数と同じであり、前記仕事関数傾斜層の第2面の仕事関数が、前記低表面エネルギー物質の仕事関数と同じである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の電極。
【請求項12】
前記低表面エネルギー物質は、少なくとも1つのフッ素原子(F)を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の電極。
【請求項13】
前記低表面エネルギー物質は、下記化学式1ないし3のうちいずれか1つの繰り返し単位を有するフッ素化ポリマーである、請求項8〜12のいずれか1項に記載の電極:
【化1】

前記化学式1中、
aは、0ないし10,000,000の数であり、
bは、1ないし10,000,000の数であり、
は、−[O−C(R)(R)−C(R)(R)]−[OCFCF−R、−COOHまたは−O−R−Rであり、
前記R,R,R及びRは互いに独立して、−F、−CF、−CHFまたは−CHFであり、
前記c及びdは互いに独立して、0ないし20の数であり、
前記Rは、−(CF−(zは、1ないし50の整数である)または−(CFCFO)−CFCF−(zは、1ないし50の整数である)であり、
前記R及びRは互いに独立して、−SOM、−POまたは−COMであり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す;
【化2】

前記化学式2中、
pは、0ないし10,000,000の数であり、
qは、1ないし10,000,000の数であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換のC−C60アリール基または−COOHであり、
は、水素原子または置換もしくは非置換のC−C20アルキル基であり、
は、−O−(CF−SOM、−O−(CF−PO、−O−(CF)r−COMまたは−CO−NH−(CH−(CF−CFであり、
前記r,s及びtは互いに独立して、0ないし20の数であり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す;
【化3】

前記化学式3中、
m及びnは、0≦m<10,000,000、0<n≦10,000,000であり、
x及びyはそれぞれ独立して、0ないし20の数であり、
Yは、−SOM、−POまたは−COMであり、
前記Mは、Na、K、Li、H、CH(CHNH(wは、0ないし50の整数)、NH、NH、NHSOCF、CHO、COH、CHOH、またはCH(CHCHO(wは、0ないし50の整数)を示す。
【請求項14】
前記低表面エネルギー物質は、下記化学式4で表示されるフッ化オリゴマーである、請求項8〜12のいずれか1項に記載の電極:
【化4】

化学式4
X−M−M−M−(G)
前記化学式4中、
Xは末端基であり、
は、パーフルオロポリエーテルアルコール、ポリイソシアネート及びイソシアネート反応性非フッ素化モノマー(isocyanate reactive-non-fluorinated monomer)の縮合反応によって調製されたフッ素化モノマー由来の単位またはフッ素化C−C20アルキレン基を示し、
は、非フッ素化モノマー由来の単位を示し、
は、−Si(Y)(Y)−または−Si(Y)(Y)(Y)で表示されるシリル基を有する単位を示し、
前記Y,Y及びYは互いに独立して、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のC−C20アルキル基、置換もしくは非置換のC−C30アリール基または加水分解性置換基を示し、前記Y,Y及びYのうち少なくとも一つは、加水分解性置換基であり、
Gは、連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、
nは、1ないし100の数であり、
mは、0ないし100の数であり、
rは、0ないし100の数であり、
n+m+rは、少なくとも2であり、
pは、0ないし10の数であり、pが0である場合には、Mは、−Si(Y)(Y)(Y)で表示されるシリル基を有する単位を示す。
【請求項15】
前記導電性物質は、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスチレン、スルホン化されたポリスチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、自己ドープ型導電性高分子(self-doped conductive polymer)、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8〜14のいずれか1項に記載の記載の電極。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電極を含む電子素子。
【請求項17】
フレキシブル特性を有する、請求項16に記載の電子素子。
【請求項18】
有機発光素子、有機太陽電池、有機メモリ素子または有機トランジスタである、請求項16または17に記載の電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−248842(P2012−248842A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118698(P2012−118698)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(506083693)浦項工科大学校 産学協力団 (11)
【Fターム(参考)】