電極を有する生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよび生体情報計測装置、および装置制御方法
【課題】 簡易な構成でありながら、被験者の体格等の相違にもかかわらず精度良く生体情報を計測することを可能とする生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよび生体情報計測装置、および装置制御方法を提供する。
【解決手段】 被験者が生体情報計測シャツ301を着用した場合、四肢電極部351および352は、被験者の鎖骨付近の体表面を覆う位置に配置される。四肢電極部362および363は、被験者の骨盤付近の体表面を覆う位置に配置される。胸部電極部353〜358は、生体情報計測シャツ301において、着用時、体軸垂直方向については被験者の胸骨前部付近(胸の中心付近)の体表面から左胸側部付近(左脇の下付近)の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近の体表面を覆う位置に配置される。
【解決手段】 被験者が生体情報計測シャツ301を着用した場合、四肢電極部351および352は、被験者の鎖骨付近の体表面を覆う位置に配置される。四肢電極部362および363は、被験者の骨盤付近の体表面を覆う位置に配置される。胸部電極部353〜358は、生体情報計測シャツ301において、着用時、体軸垂直方向については被験者の胸骨前部付近(胸の中心付近)の体表面から左胸側部付近(左脇の下付近)の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近の体表面を覆う位置に配置される。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
日本国特許出願2004−86110号(2004年3月24日出願)の明細書、特許請求の範囲、図面および要約を含む全開示内容は、本出願内容に合体される。
【技術分野】
【0002】
この発明は、生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよび生体情報計測装置、および装置制御方法に関するものである。特に、簡易な構成でありながら、被験者の体格等の相違にもかかわらず精度良く生体情報を計測することに関する発明である。
【背景技術】
【0003】
心電図記録を含めた生体情報の計測は、被験者が安静な状態にあるときに行われるのが一般的である。例えば心電図の計測の場合、被験者は診察台の上に仰向けになって安静にする。測定者は、被験者の胸部、手首、足首のそれぞれにelectrocardiogram(ECG)電極を吸着した後、心電図計測装置によって心電図を記録する。このようなECG電極の吸着等による計測方法では、例えば計測準備の手間や、電極吸着による不快感等が生じてしまい、被験者に与える負荷が大きくなるのが一般的である。
【0004】
被験者に与える負荷を抑え、かつ、必要な生体情報を得ることを可能にするものとして、例えば、生体電気信号を記録器に伝達するための導電性部材を被服に縫合したTシャツ着衣型被服に関する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−159458(第1図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている従来技術によれば、生体情報の計測時においても被験者に与える負荷を抑えることができる点で有益である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術においては、被験者に与える負荷の抑制を考慮するにすぎない。一方、生体情報の計測については、個々の被験者によって体格が相違するのが一般であるから、そのような相違が原因で生体情報の計測感度が低くなる可能性も考慮しなければならない。また、被験者の体動が大きい場合(例えば運動時等)には、計測感度の低下がより一層大きくなることが予想される。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みて、簡易な構成でありながら、被験者の体格等の相違にもかかわらず精度良く生体情報を計測することを可能とする、生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1)本発明の生体情報計測用衣服は、
被験者の上半身に密着する程度の伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際には、被験者の第4肋骨付近の体表から第6肋骨付近の体表までを覆う長さを有することによって心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近に接する位置から左胸側部付近に接する位置の間の少なくとも6箇所に配置されること、
を特徴としている。
【0010】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部を介して、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0011】
2)本発明の生体情報計測用衣服は、
伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
衣服前面中央部付近から衣服左縁付近において、衣服身丈方向に5cm(センチメートル)以上30cm以下の長さを有する、被験者が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が配置されていること、
を特徴としている。
【0012】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記導電性素材を介して、被験者(または「被検者」、以下同様)が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0013】
3)本発明の生体情報計測用衣服は、
非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際に被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置されること、
を特徴としている。
【0014】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部を介して、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0015】
4)本発明の前記生体情報計測用衣服は、被験者の上半身用のシャツであり、
そのシャツは、さらに、
少なくとも、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表を覆う面積を有し、かつ、生体から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達可能な導線性素材で形成した四肢誘導電極部、
を備えたことを特徴としている。
【0016】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記四肢誘導電極部を介して、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達することができる。
【0017】
5)本発明の前記生体情報計測用衣服は、さらに、
前記胸部誘導電極部に加えて、被験者の胸骨前部付近から右胸側部付近に向かう位置、または被験者の左胸側部付近から背中に向かう位置に、少なくとも1以上の前記胸部誘導電極部を備えたことを特徴としている。
【0018】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部とは別に追加された前記少なくとも1以上の前記胸部誘導電極を介して、生体から発生する電位を取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0019】
6)本発明の前記生体情報計測用衣服と前記心電図解析装置とを備えた生体情報計測システムにおいて、
前記心電図解析装置は、
複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴としている。
【0020】
これらの特徴により、前記心電図解析装置は、複数の電位情報の中から、例えば検出感度が良好な位置に配置された胸部誘導電極部由来の電位情報を選択して、その電位情報に基づいて心電図データを出力することができる。
【0021】
9)本発明の前記心電図解析出力手段は、さらに、
前記選択された電位情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示することを特徴としている。
【0022】
この特徴により、ユーザは、前記選択された電気情報の測定元を前記模式図に対応づけて視覚的かつ直感的に認識することができる。
【0023】
10)本発明の前記生体情報計測用衣服は、
被験者の呼吸動作による体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を呼吸情報解析装置へ伝達可能な呼吸情報計測センサ部が配置されたことを特徴としている。
【0024】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、心電図の出力のためのデータに加えて、呼吸情報の出力のためのデータを取得することができる。
【0025】
11)本発明の前記呼吸情報計測センサ部は、さらに、
前記生体情報計測用衣服における少なくとも胸回りまたは腹回りに配置され、被験者の呼吸動作による体格変動に伴う伸縮を通じて前記導電性部材の断面積または長さが変化することによって電気抵抗値が変化することを特徴としている。
【0026】
これらの特徴により、前記呼吸情報計測センサ部は、例えば被験者の呼吸動作による胸郭の周長、または腹回り(胴回り)の周長の物理的変化を直接検知することができ、呼吸情報の検出感度を安定にすることができる。
【0027】
12)本発明の前記呼吸情報計測センサ部は、
前記導電性部材における被験者体表への対向面およびその反対面を非導線性素材で覆うことによって、被験者に対して前記通電状態による電気的影響を少なくしたことを特徴としている。
【0028】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記呼吸情報の計測時における被験者に対する電気的影響を少なくすることができる。
【0029】
13)本発明の前記呼吸情報計測センサ部の導電性部材は、前記生体情報計測用衣服において、少なくとも被験者の胸部付近に巻き付く位置または腹部付近に巻き付く位置を含む複数箇所に配置されることと特徴としている。
【0030】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、胸囲長の変化および腹囲長の変化を含めた複数部位の情報に基づいて、前記被験者の呼吸動作を検出することができる。
【0031】
14)本発明の前記生体情報計測用衣服と前記呼吸情報解析装置とを備えた生体情報計測システムにおいて、
前記呼吸情報解析装置は、
複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴としている。
【0032】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析装置は、複数の電気情報の中から、例えば検出感度が良好な位置に配置された前記呼吸情報計測センサ部由来の電気情報を選択して、その電気情報に基づいて呼吸情報データを出力することができる。
【0033】
17)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の変動周期に関する電気周期情報と、前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく心電図のR波高情報の変動周期に関するR波高周期情報とを取得し、いずれか一方の周期情報を選択し、選択した周期情報に基づいて呼吸情報を解析することを特徴としている。
【0034】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析手段は、前記電気周期情報および前記R波高周期情報を含めた複数種類の情報に基づいて、前記被験者の呼吸動作を解析することができる。
【0035】
18)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の振幅に関する電気振幅情報と、前記R波高情報の振幅に関するR波高振幅情報とを取得し、前記電気振幅情報とR波高振幅情報との比較に基づいて前記電気情報またはR波高情報のいずれか一方を選択し、選択した情報の周期情報に基づいて呼吸情報を解析することを特徴としている。
【0036】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析手段は、前記電気周期情報および前記R波高周期情報を含めた複数種類の情報について、例えば検出感度が良好な方の情報を選択して、その周期情報に基づいて前記被験者の呼吸動作を解析することができる。
【0037】
19)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記選択された情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置、または呼吸情報計測センサ部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示することを特徴としている。
【0038】
この特徴により、ユーザは、前記選択された電気情報の測定元を前記模式図に対応づけて視覚的かつ直感的に認識することができる。
【0039】
本発明の特徴、他の目的、用途、効果等は、図面を考慮に入れた上で以下の開示によりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の各実施形態の概要を示す模式図である。
【図2】実施形態による生体情報計測システムの機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態による生体情報計測システムの構成例である。
【図4】図4Aは、第1実施形態による生体情報計測シャツの部分図である。図4Bは、図4AのX−X方向の部分断面を示す図である。図4Cは、図4AのY−Y方向の部分断面を示す図である。
【図5】図5Aは、第1実施形態による生体情報計測用シャツと被験者の体型との対応を示す模式図である。図5Bは、被験者が生体情報計測用シャツを着用した状態を示す図である。
【図6】記録された心電波形データを模式的にグラフによって表したものである。
【図7】第1実施形態による心電図測定結果例を示す図である。
【図8】図8Aは、第1実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。図8Bは、第1実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図9】第2実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。
【図10】第2実施形態による心電図計測処理のフローチャートである。
【図11】第2実施形態による心電図計測処理のフローチャートである。
【図12】図12A、図12B、図12Cは、第2実施形態においてCPUが演算したRS振幅値の記録内容例を示す図である。
【図13】図13A、図13Bは、第2実施形態による心電図計測処理中のディスプレイ表示例である。
【図14】第2実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図15】図15Aは、第3実施形態による生体情報計測シャツの部分図である。図15Bは、図15AのA−A方向の部分断面を示す図である。図15Cは、図15AのB−B方向の部分断面を示す図である。
【図16】図16Aは、第3実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。図16Bは、被験者が生体情報計測用シャツを着用した状態を示す図である。
【図17】記録された呼吸値データを模式的にグラフによって表したものである。
【図18】第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図19】図19Aは、第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。図19Bは、図19AのE−E方向の部分断面を示す図である。
【図20】第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図21】第4実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。
【図22】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図23】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図24】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図25】図25A、図25Bは、第4実施形態においてCPUが演算した抵抗値周期、抵抗値振幅、R波高周期、R波高振幅等の記録内容例を示す図である。
【図26】図26A、図26B、図26Cは、第4実施形態においてCPUが演算した抵抗値(極大値、極小値等)およびR波高(極大値、極小値等)等の記録内容例を示す図である。
【図27】第4実施形態による呼吸値計測処理中のディスプレイ表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る「生体情報計測用衣服」または「生体情報計測システム」の実施形態を説明する。図1は、本発明の各実施形態の概要を示す模式図である。
【0042】
「生体情報計測用衣服」の実施形態としての生体情報計測シャツは、被験者の上半身に装着されるものであり、胸部および四肢部に電極部(A)と、胴回りおよび腹回りにセンサ部(B)を備えている。第1実施形態による心電図測定および第2実施形態による心電図計測処理においては、電極部(A)から伝達される情報を利用する。一方、第3実施形態による呼吸値計測処理においては、センサ部(B)から伝達される情報を利用する。第4実施形態による呼吸値計測処理(心電図R波解析併用)においては、電極部(A)およびセンサ部(B)の両方から伝達される情報を利用する。
【0043】
以下、生体情報計測シャツおよびシステムに含まれる装置のハードウェア構成、特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応を説明し、次に実施形態の説明等を行う。
【0044】
目次
1.生体情報計測シャツおよびシステムの構成
2.特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応
3.第1実施形態(心電図測定)
4.第2実施形態(心電図計測処理)
5.第3実施形態(呼吸値計測処理)
6.第4実施形態(呼吸値計測処理(心電図R波解析併用))
7.その他の実施形態等
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−1.生体情報計測シャツおよびシステムの構成−−
図2は、本発明に係る「生体情報計測システム」の実施形態としての計測システム1000の機能ブロック図を示す。計測システム1000は、生体情報計測用衣服900、心電図解析装置700、呼吸情報解析装置800を備えている。
【0045】
生体情報計測用衣服900は、非導電性素材908で構成され、胸部誘導電極部902、四肢誘導電極部904、呼吸情報計測センサ部906を備えている。心電図解析装置700は、胸部誘導電極部902および(または)四肢誘導電極部904から電位情報を取得する電位情報取得手段702、複数の電位情報を比較する電位情報比較手段706、電位情報に基づいて胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段704、電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段708を備えている。
【0046】
呼吸情報解析装置800は、呼吸情報計測センサ部906から電気情報を取得する電気情報取得手段802、複数の電気情報を比較する電気情報比較手段806、電気情報に基づいて呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段804、電気情報に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段808、呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段810を備えている。
【0047】
図3は、図2に示す計測システム1000における心電図解析装置700および(または)呼吸情報解析装置800を、CPUを用いて実現したハードウェア構成の例を示す。実施形態では、心電図解析装置700および呼吸情報解析装置800の機能を、例示として1つの装置(解析装置100)で実行するものとして説明する。なお、解析装置100は、心電図解析装置700または呼吸情報解析装置800のいずれか一方の機能を実行するものとしてもよい。
【0048】
解析装置100は、CPU10、増幅アンプ11、フィルタ19、A/D変換12、マウス/キーボード13、ディスプレイ14(表示装置)、スピーカ15、メモリ16、Flash−ROM17(フラッシュメモリ等の、記憶したデータを電気的に消去できる書き換え可能な読み出し専用メモリ、以下、F−ROM17とする)、ディスプレイコントローラ18、電源20、抵抗値センサ21、フィルタ22を備えている。解析装置100は、電極コード304および(または)電源コード303を介してコネクタ302に接続される。コネクタ302は、生体情報計測シャツ300に接続される。
【0049】
コネクタ302は、後述する電極を介して得られる患者の心電位を増幅アンプ11に伝達する。増幅アンプ11は、コネクタ302を介して伝達される電位情報(心電位に基づく情報)を増幅する。フィルタ19は、増幅アンプ11からの信号の雑音成分(ノイズ)を除去する。A/D変換12は、電位情報(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。
【0050】
電源20は、電源コード303およびコネクタ302を介して、生体情報計測シャツ300の所定箇所を通電状態にする。抵抗値センサ21は、電源20等を介して一定の電圧を与えた場合に流れる所定箇所の電流値を抵抗測定コード305を介して計測し、その電流値に基づいて所定箇所の抵抗値を取得する。フィルタ22は、抵抗値センサ21からの情報の雑音成分(ノイズ)を除去する。A/D変換12は、抵抗値(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。
【0051】
CPU10は、心電図計測処理、呼吸値計測処理等のほか、解析装置100全体を制御する。F−ROM17は、解析装置100を制御するためのプログラムを記録する。メモリ16は、CPU10のワーク領域等を提供する。マウス/キーボード13またはディスプレイコントローラ18の操作により生成される操作情報はCPU10に入力され、CPU10が生成した画像情報及び音声情報は、ディスプレイ14、スピーカ15にそれぞれ出力される。
【0052】
実施形態では、解析装置100が心電図計測処理および(または)呼吸値計測処理等を実行するためのソフトウェアとして専用のプログラムを利用する。
【0053】
実施形態では、解析装置100のオペレーティングシステム(OS)の例として、マイクロソフト社のWindows(登録商標)XP、NT、2000、98SE、ME、CE等を用いることとする。本実施形態のプログラムは、OSと共働して各機能を実現しているが、これに限らず、制御プログラム単独で各機能を実現するようにしてもよい。
【0054】
なお、実施形態で説明する「心電図」は、被験者の身体の2点間における心電位の差を測定することの結果として得られるものである。したがって、実施形態における「心電図の測定」等の表現は、心電位等を測定する概念を含む。
【0055】
なお、以下に説明する第1実施形態〜第4実施形態は、便宜上、生体情報計測シャツ300が有する各機能および変形例を個別に説明するものである。したがって、生体情報計測シャツ300として、第1実施形態〜第4実施形態で説明する各構成のいずれか1つのみを有するものとして実施することも可能であり、あるいは、それら各構成を組み合わせたものを有するものとして実施することも可能である。
【0056】
生体情報計測シャツ300は、第1実施形態では生体情報計測シャツ301等、第2実施形態では生体情報計測シャツ400等、第3実施形態では生体情報計測シャツ500等、第4実施形態では生体情報計測シャツ600等として説明する。
【0057】
また、以下に説明する生体情報計測シャツは例示であって、寸法、素材、編み方、製造工程等については、当業者に周知の手段によって変形可能である。
【0058】
−−2.請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応−−
請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応は以下の通りである。ただし以下に説明する「対応する実施形態」は、請求の範囲に記載した各用語によって表される構成が有する機能の中の一つの形態(一部の形態)を示すものである。
【0059】
「生体情報計測用衣服」は、生体情報計測シャツ300(図1)等に対応する。「心電図解析装置」は、解析装置100(図3)に対応する。「導電性素材」は、導電性を有する物質を含めて形成されたもの一般を含む概念であり、実施形態では、例えば導電性繊維(または導電性糸)で形成された胸部用電極および(または)四肢用電極(図4)等に対応する。「胸部誘導電極部」は、胸部用電極353、354、355、356、357、358(図4)等に対応する。「四肢誘導電極部」は、四肢用電極351、352、361、362(図4)等に対応する。
【0060】
「電位情報」は、図10のステップS203の処理において得られる情報(心電位等)に対応する。「電位情報取得手段」は、電位情報を取得する機能を有するものであり、例えば図10のステップS203および(または)S205の処理を行う解析装置100のCPU10に対応する。「電位情報比較手段」は、電位情報の振幅を比較する機能を有するものであり、例えば図11のステップS260の処理を行うCPU10に対応する。「電位情報選択手段」は、電位情報を選択する機能を有するものであり、例えば図11のステップS262、またはS264、またはS266の処理を行うCPU10に対応する。
【0061】
「心電図データ」は、図10のステップS213においてディスプレイ出力される心電図波形の基礎となるデータに対応する。「心電図解析出力手段」は、電位情報を解析して心電図としてディスプレイ出力する機能を有するものであり、例えば図10のステップS213の処理を行うCPU10に対応する。
【0062】
「導電性部材」は、導電性を有する物質を含めて形成されたもの(または導電性を有する物質を含めて形成されたものの組み合わせ)一般を含む概念であり、実施形態では、例えば導電性繊維(または導電性糸)で形成された胸部呼吸情報センサ502、または腹部呼吸情報センサ504(図15)等に対応する。「電気情報」は、電気抵抗値の変化に基づく情報であり、例えば図22のステップS402の処理においてCPU10が取得する抵抗値データに対応する。「呼吸情報解析装置」は、解析装置100に対応する(図3)。「呼吸情報計測センサ部」は、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504(図15)等に対応する。
【0063】
「電気情報取得手段」は、電気情報を取得する機能を有するものであり、例えば図22のステップS402の処理を行うCPU10に対応する。「電気情報比較手段」は、複数の電気情報の振幅を比較する機能を有するものであり、例えば第4実施形態の図22のステップS500の前提として、胸部呼吸情報センサ601(図21)由来の抵抗値データの振幅(または振幅の合計値)と、腹部呼吸情報センサ602由来の抵抗値データの振幅とを比較する処理を行うCPU10に対応する。「電気情報選択手段」は、電気情報を選択する機能を有するものであり、例えば「電気情報比較手段」の比較結果に基づき、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値データ、または腹部呼吸情報センサ602由来の抵抗値データのいずれか一方を選択する処理を行うCPU10に対応する。
【0064】
「呼吸情報解析手段」は、電気情報の変動周期に基づいて呼吸情報を解析する機能を有するものであり、例えば図22のステップS422において呼吸推定値を演算するCPU10に対応する。「呼吸情報データ」は、S422において演算される呼吸数を示すデータに対応する。「呼吸情報出力手段」は、呼吸情報データを出力する機能を有するものであり、例えば図22のステップS422において呼吸推定値をディスプレイ上に表示するCPU10に対応する。
【0065】
「電気周期情報」は、図22のステップS414の処理においてCPU10が取得する抵抗値の変動周期の情報に対応する(図25Aの「抵抗値周期」の情報)。「R波高情報」は、図22のステップS406の処理において認識されるR波高(R電位)の情報に対応する。「R波高周期情報」は、図22のステップS418の処理においてCPU10が取得するR波高の変動周期の情報に対応する(図25Aの「R波高周期」の情報)。「電気振幅情報」は、S414の処理においてCPU10が取得する抵抗値に振幅の情報に対応する(図25Aの「抵抗値振幅」の情報)。「R波高振幅情報」は、図22のステップS418の処理においてCPU10が取得するR波高の振幅の情報に対応する(図25Aの「R波高振幅」の情報)。
【0066】
−−3.第1実施形態(心電図測定)−−
3−1.生体情報計測シャツ
図4、図5に基づいて、第1実施形態における生体情報計測シャツ300を説明する。図4Aは、第1実施形態による生体情報計測シャツ301(図5)の部分図である。具体的には、図4Aは、生体情報計測シャツ301の製造工程における裁断前の前身ごろ(胸側)を示す。生体情報計測シャツ301は、伸縮性を有する非導電性繊維によって構成されるシャツ部350と、後述する電極部とによって構成される。伸縮性を有する非導電性繊維の例として、以下のものが挙げられる。
【0067】
・ポリウレタン等の伸縮性を有する化学繊維
・綿、麻、絹、毛等の天然繊維を、平編み、または天竺編み、またはゴム編み、またはリブ編み、またはフライス編み等の編み方によって伸縮性を持たせたもの
・ゴム等の伸縮性素材に対して繊維を編み込んだもの
・上記繊維等の組み合わせ
実施形態におけるシャツ部350は、例示として綿糸をゴム編みしたものを採用する。なお、シャツ部は、伸縮性を有する非導電性素材に限らず、伸縮性のない(または伸縮性が低い)非導電性素材を採用してもよい。伸縮性のないシャツ部を採用する場合は、後述する各電極部を、被験者の体表面に密着させる手段を用いるのが好ましい。被験者の体表面に各電極部を密着させるためには、例えば皮膚刺激の少ないアクリル系粘着剤等を各電極の体表接触面側に塗布しておけばよい。
【0068】
生体情報計測シャツ301は、シャツ部350に対して、導電性素材で形成された胸部電極部および四肢電極部が編み込まれている。実施形態では、胸部電極部および四肢電極部の例示として、図4Aのシャツ部350の裏側(被験者の皮膚接触面側)に編み込まれる導電性繊維を採用する。ここでは、導電性繊維の例示として、金属粒子(例えば銀粒子、または銅粒子、または硫化銅粒子等)を付着(例えば化学結合等による)した繊維(例えば、日本蚕毛染色株式会社のサンダーロン(Thunderon)(登録商標)等)を利用したものを実施形態とする。
【0069】
胸部用電極は、胸部用電極353、胸部用電極354、胸部用電極355、胸部用電極356、胸部用電極357、胸部用電極358の合計6個の電極(縦長短冊状の導電部位)によって構成される。四肢用電極は、四肢用電極351、四肢用電極352、四肢用電極361、四肢用電極362の合計4個の四肢誘導用の電極によって構成される。
【0070】
各電極は、導電性素材による結線によって、各結線の端部の集合としてのコネクタ連結部364に接続される。実施形態では、結線およびコネクタ連結部363の例示として、胸部電極部および(または)四肢電極部と同様の導電性繊維を採用する。胸部電極部351は、結線359によってコネクタ連結部363に接続される。胸部電極部352は、結線360によってコネクタ連結部363に接続される。その他の電極部も同様に、結線によってコネクタ連結部363に接続される。なお、四肢用電極361(または362)は、必要に応じて中性電極として利用する。
【0071】
図4Aに例示するシャツ部350および各部の寸法は、大人(男性)の場合の例示として以下のものを挙げることができる。ただし、以下の寸法は例示であって、被験者の年齢、性別等によって変更が可能である。
【0072】
・シャツ部350: 縦(身丈方向、以下同様)約60cm×横約50cm
・四肢電極部351、352、361、362: それぞれ縦約3cm×横約6cm
・四肢電極部351(352)の上辺位置: シャツ部350の上辺から約4.5cm
・四肢電極部351(361)の左辺位置: シャツ部350の左辺から約10.5cm
・四肢電極部352(362)の右辺位置: シャツ部350の右辺から約10.5cm
・四肢電極部361(362)の下辺位置: シャツ部350の下辺から約18cm
・四肢電極部351−352(361−362)間の距離: 約18cm
・胸部電極部353〜358: それぞれ縦約12cm×横約3cm、各胸部電極部の間隔は約1cm(例えば縦方向については、下限が約5cm、または約8cm、または約10cm、上限が約30cm、または約20cm、または約15cmの範囲内における任意の寸法を採用してもよい。)
・胸部電極部358の右辺位置: シャツ部350の右辺から約2cm
・コネクタ連結部363の下辺位置: シャツ部350の下辺から6cm
・結線(例えば結線359、360等): それぞれ幅約6mm
・各結線の位置: シャツ部の各辺から5cm以上の幅があることが望ましい。
【0073】
・コネクタ連結部363: 各結線の幅約3mm
生体情報計測シャツ301の製造工程は、例えば(1)シャツ部350に対する胸部電極部および四肢電極部の編み込み、(2)(1)を裁断して前身ごろを形成、(3)後身ごろ、袖、襟等の形成、(4)前身ごろ、後身ごろ、袖、襟の後身ごろの各部を縫製、の順番に行う。なお、「(1)シャツ部350に対する胸部電極部および四肢電極部の編み込み」の製造工程は、例えば、当業者に周知な手作業による編み込み、またはコンピュータ制御による編み装置等を利用すればよい。
【0074】
図4Bは、図4AのX−X方向の部分断面を示す図である。実施形態では、例示として生体情報計測シャツ301を二重織りで形成する。シャツ部350は、非導電性素材の織り部370および織り部371を重ねて1枚の織物として織られている。織り部371の一部は、非導電性素材に替えて、導電性素材である四肢電極部351および四肢電極部352が編み込まれている。四肢電極部351および四肢電極部352等をシャツ部350に形成する手段は図4に示す方法に限られるものではない。例えば、織り部371の一部を切り取り、その切り取った部分に四肢電極部351および四肢電極部352等を任意の接着部材によって固定してもよいし、または、四肢電極部351および四肢電極部352等を、別糸によって織り部371に編み込むようにしてもよい。
【0075】
結線359および結線360は、それぞれ四肢電極部351および四肢電極部352に対して編み込まれる。したがって、結線359、360は、織り部370と織り部371との間に挟み込まれる位置にて編み込まれる。このように、結線については被験者が接触することができないようにすることで、心電図測定への影響を抑えるのが好ましい。その他の胸部電極部および四肢電極部、およびそれらから接続される結線も同様の二重織りで構成される。
【0076】
図4Cは、図4AのY−Y方向の部分断面を示す図である。織り部370におけるコネクタ連結部363に接する部分は、その繊維の一部が結線の端部とされる。コネクタ連結部363は、織り部370に対して接するように編み込まれる。各電極部から配線される結線は、織り部370と織り部371との間に挟みこまれる位置にて編み込まれ(図4B参照)、コネクタ連結部363に接する部分では織り部370の一部として編み込まれることによってコネクタ連結部363と電気的に接続可能となっている。
【0077】
以上のシャツ部350の構成により、被験者の皮膚に接触する各胸部電極部および各四肢電極部から得られる生体電流は、それぞれの電極部に接続される結線を介してコネクタ連結部363に電気的に伝達される。
【0078】
3−2.生体情報計測シャツ301(着用時)
図5Aは、第1実施形態による生体情報計測用シャツにおける各電極部と被験者の体型との対応を示す模式図である。模式図では、説明の便宜のため、生体情報計測シャツ301の表示を省略し、各電極部と被験者の体型との対比のみを示す。被験者が生体情報計測シャツ301を着用した場合、四肢電極部351および352は、被験者の鎖骨付近の体表面(皮膚面)を覆う位置に配置される。四肢電極部362および363は、被験者の骨盤付近の体表面を覆う位置に配置される。胸部電極部353〜358は、生体情報計測シャツ301において、着用時、体軸垂直方向(シャツの身丈方向に垂直な方向)については被験者の胸骨前部付近(胸の中心付近)の体表面から左胸側部付近(左脇の下付近)の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近(または第7肋骨付近、または第8肋骨付近、または肋骨下縁付近)の体表面を覆う位置に配置される。
【0079】
以上説明した各胸部電極部および各四肢電極部の配置は例示であって、当業者に周知の手段によって変形可能である。例えば、各胸部電極部は、心臓前面の肋骨領域付近の体表面を覆う位置に配置してもよい。ただし、各胸部電極部および各四肢電極部の配置は、筋電等の心電位以外のノイズの影響が少ない位置であることが望ましい。
【0080】
コネクタ連結部363は、各電極部と電気的に接続されるように10個の結線端部を有している。コネクタ302は、それら10個の各結線端部と電気的に接続されるための10個の電気端子を有している。コネクタ連結部363は、コネクタ302に対して接続されることによって電気的に接続される。コネクタ連結部363とコネクタ302との接続は、面ファスナー等を利用した周知の手段によって行う。
【0081】
図5Bは、被験者が生体情報計測シャツ301を着用した状態を示す図である。生体情報計測シャツ301を利用した心電図測定を行う際には、生体情報計測シャツ301のコネクタ連結部363にコネクタ302を接続させる(貼り合わせる)。コネクタ302は、電極コード304を介して解析装置100に接続される。
【0082】
3−3.心電図測定
以上説明した第1実施形態による生体情報計測シャツ301を利用して、心電図の測定を行う。心電図の測定は、例示として以下のような手順で行われる。
【0083】
胸部電極部(353、354、355、356、357、358)および四肢電極部(351、352、361、362)の各電極部から得られた被験者の心電位は、図3に示すコネクタ302を介して解析装置100の増幅アンプ11に伝達される。増幅アンプ11によって増幅された心電位は、フィルタ19によってノイズが除去される。A/D変換12は、心電位データ(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。解析装置100のCPU10は、10個の電極を介して得られるデジタルデータを心電波形データとして連続的にメモリ16(またはF−ROM17、以下同じ)に記録した上で、当業者に周知の心電図解析手段によって12誘導心電図を算出する。12誘導心電図とは、数個から10数個の電極を生体につけることによって得られる12パターンの心電図のことをいう。
【0084】
図6は、一つの誘導について、メモリ16記録された心電波形データを模式的にグラフ(縦軸:電位(電圧)、横軸:時間)によって表したものである。CPU10は、図6に例示する心電図波形グラフを、ディスプレイ14に描画する処理を行う。心電図グラフの描画は、心電図の測定時間の経過にしたがってプロットポイントが移動(ディスプレイ右方向)することによって行われる。また、CPU10は、心電波形データに基づいて心拍1回毎の波形を認識する。図6に示すように、CPU10は、心電図波形データから、P(P電位またはP波高)、Q(Q電位またはQ波高)、R(R電位またはR波高)、S(S電位またはS波高)、T(T電位またはT波高)、ST(STレベル)、QT(QT間隔)、RR(RR間隔)、RS振幅値の全てまたはそれらの一部を認識値データ(特徴量)として認識(抽出)してメモリ16に記録する。CPU10は、正常波形の場合、例えば以下のような処理によって、1心拍の認識、および、心電図の各波を認識する。
【0085】
(1)1心拍の認識:所定時間の心電波形データ(電位値または電圧値)のサンプリングを行った後、所定の閾値を超える極大値成分であるR波と、(所定の閾値を超える極大値成分である)次のR波を認識し、RR間隔を1心拍として認識する。このとき、R波以外の極大値であるT波成分(R波より周波数が低い)を、ローカットフィルタを利用して除去してもよい。
【0086】
(2)P波:R波の位置から200〜300msec(ミリ秒)前の位置に存在する極大値をP波と認識する。
【0087】
(3)Q波:R波の位置の直前に存在する極小値をQ波と認識する。
【0088】
(4)S波:R波の位置の直後に存在する極小値をS波と認識する。
【0089】
(5)T波:R波と次のR波の間に存在する極大値をT波と認識する。
【0090】
(6)ST部:心電図上においてS波とT波との間を直線補間した場合に、その間の極大値成分となる部分をST部と認識する。
【0091】
なお、心電図測定中の被験者の動作等によっては、心電図波形中に異常な周期を有する高周波ノイズが生じてしまい、認識値データの抽出が正確に行われ難い場合も多い。そのような高周波ノイズを除外して正確な認識値データをとる方法として、例えば、特開平6−261871に開示されている技術を利用してもよい。
【0092】
図7は、図4の生体情報計測シャツ301に類似の構成による生体情報計測シャツを用いて得られた心電図測定結果例を示す図である。図では、標準肢誘導(第I誘導,第II誘導,第III誘導),aV誘導(aVR,aVL,aF),胸部誘導(V1,V2,V3,V4,V5,V6)の12種類の誘導毎に心電図が測定された例を示す。
【0093】
3−4.実施形態による効果
実施形態では、被験者の胸部前面付近に配置されうる縦長形状の胸部用電極を採用している(図4等参照)。したがって、被験者毎の体格の相違、あるいは心電図測定中における被験者体内での心臓移動等があった場合であっても、広い面積を有する縦長形状の胸部用電極によって心電位の取得可能性を高めることができる。
【0094】
実施形態では、生体情報計測用衣服として、生体情報計測シャツ300を採用している。また、生体情報計測シャツ300は伸縮性を有する繊維で構成されるから、被験者の上半身に密着する結果、電極等の位置決め、方向性の確認が容易である。さらに、測定毎に類似の生体情報計測シャツを利用することで、被験者の体型に対する電極等の位置が測定毎に異なってしまう可能性を抑えることもできる。
【0095】
実施形態では、四肢誘導に相当する位置に、従来の電極よりも大きい面積を有する四肢電極部を配置している。したがって、四肢誘導の心電図を安定して取得することができる。
【0096】
実施形態では、図4に示す四肢電極部および胸部電極部は、織り部371よりも肉厚となるものを例示した。各電極の厚みはこれに限らず、被験者の体表面に接触する程度の厚みがあればよい。ただし、織り部371よりも肉厚とすると同時にシャツ部350の伸縮度を高めることによって体表面への密着度を増加させ、体表面における電極の移動を抑える(ノイズを減少させる)のが好ましい。また、心電図の測定感度の向上の点では、導電性を高くする(電極自身の抵抗を減少させる)ために各電極部を肉厚にするのが好ましい。
【0097】
3−5.第1実施形態のバリエーション
(1)生体情報計測シャツ301の形状バリエーション
図8は、第1実施形態の生体情報計測シャツ301の変形例である。図8Aは、胸に巻く形状を有する生体情報計測用衣服としての衣類380(着用状態)を示す。衣類380は、生体情報計測シャツ301と同様に、非導電性繊維に対して被験者の体表面側に胸部電極部381が編み込まれている。この場合、別途四肢誘導用電極(ただし、図4Aに示す四肢電極部(351、352、361、362)に限らない)を被験者に対して取り付ける必要がある。
【0098】
図8Bは、胸部電極部を単一電極部とした、生体情報計測シャツ301と同様の生体情報計測シャツ382(着用状態)を示す。生体情報計測シャツ382は、生体情報計測シャツ301と同様に、非導電性繊維に対して被験者の体表面側に胸部電極部383が編み込まれている。胸部電極部383は、生体情報計測シャツ382において、着用時に被験者の心臓前面の肋骨領域を覆う位置に配置される。具体的には、胸部電極部383は、体軸垂直方向については被験者の胸骨前部付近の体表面から胸側部付近の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近(または第7肋骨付近、または第8肋骨付近、または肋骨下縁付近)の体表面を覆う位置に配置される。
【0099】
図8Bは、胸部電極部として単一電極となるものを例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、2個、または3個、または4個、または5個の胸部電極部を採用してもよい。
【0100】
実施形態では、被験者として男性大人が着用することを前提とした生体情報計測シャツ301を例示したが、女性用または子供用の場合、それらの体型に合致する寸法に変形すればよい。その他、生体情報計測用衣服として、シャツ以外の下着、または女性用下着(ブラジャー等)、またはパジャマ(寝間着)、またはポロシャツ等に適した形状を採用してもよい。
【0101】
(2)胸部電極部および(または)四肢電極部の導電性素材のバリエーション
第1実施形態では、胸部電極部および四肢電極部として機能する導電性素材として銀粒子を付着した繊維(導電性繊維)を利用する例を示したが、その他の導電性素材を利用してもよい。例えば、銀粒子以外の導電性物質を付着した繊維、またはシャツ部350に対する金属めっき、または導電性フィルム基板(または導電性プリント基板)の貼り付け、または導電性インクの利用、またはフラーレン蒸着等の手段によって、胸部電極部および(または)四肢電極部を構成してもよい。なお、結線についても、上述のような導電性繊維以外の導電性素材を採用してもよい。
【0102】
その他、生体情報計測シャツ301の前面にアース(0電位)に接続可能なシールドを貼り付ける(または編み込む)ことによって、生体電流以外のノイズの影響を抑えるようにしてもよい。具体的には、コネクタ302の一部をアース端子として設定し、貼り付けたシールドをそのアース端子に接続する。シールドの例示として、表地が綿100%、裏地が電磁波シールド布(ポリエステルモノフィラメント、ニッケル、アクリル皮膜の三層構造の特殊繊維等)の組み合わせ等が挙げられる。
【0103】
(3)生体情報計測シャツ301の織り方のバリエーション
実施形態では、生体情報計測シャツ301を二重織りで形成する例を示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、一重織り、または三重織り等の任意の織り方を採用してもよい。
【0104】
(4)コネクタの構成バリエーション
実施形態では、コネクタ連結部363とコネクタ302とを貼り合わせることによって各電極と解析装置100とを電気的に接続する例を示したが、これに限られるものではない。コネクタ連結部363とコネクタ302とを接続する手段として、所定の嵌合形状を採用してもよい。具体的には、コネクタ連結部363における結線端部を金属プラグとし、一方のコネクタ302にはそれら金属プラグが差し込まれるためのジャックを備える。
【0105】
−−4.第2実施形態(心電図計測処理)−−
4−1.生体情報計測シャツ
第2実施形態における生体情報計測シャツを説明する。第2実施形態は、被験者毎の体型の相違、または体動等の原因により、胸部誘導電極が不適切な配置となる問題点を解消するものである。第2実施形態における生体情報計測シャツは、第1実施形態における生体情報計測シャツ301と同様の構成である。したがって、以下の説明では第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0106】
図9は、第2実施形態による生体情報計測シャツ400の全体図である。生体情報計測シャツ400の胸部用電極は、胸部用電極401、402、403、404、405、406、407、408の合計8個の電極によって構成される。ここでは、コネクタ類の説明を省略する。第2実施形態における四肢誘導用電極としては、第1実施形態で説明した四肢用電極に限らず、一般的な銀/塩化銀電極を採用してもよい。
【0107】
図9に示すように、胸部用電極401、402、403、404、405、406による6電極の組み合わせを胸部誘導セット1、胸部用電極402、403、404、405、406、407による6電極の組み合わせを胸部誘導セット2、胸部用電極403、404、405、406、407、408による6電極の組み合わせを胸部誘導セット3とする。被験者の体軸垂直方向に関する胸部誘導セット1、2、3の配置は、例えば以下のように表現することができる。ただし、被験者毎の体型の相違、または体動等の可能性に応じて、胸部電極部が覆う範囲および(または)胸部電極部の数を変更してもよい。
【0108】
・胸部誘導セット1:被験者の胸骨前部から1胸部電極分ほど右胸側部側に移動した付近から、胸側部付近までの体表面を覆う位置。
【0109】
・胸部誘導セット2:被験者の胸骨前部付近から、左胸側部付近までの体表面を覆う位置(第1実施形態における胸部電極部の配置と同様)。
【0110】
・胸部誘導セット3:被験者の胸骨前部付近から、左胸側部から1胸部電極分ほど左胸側部側に移動した付近までの体表面を覆う位置。
【0111】
4−2.心電図計測処理
図10に基づいて、第2実施形態における解析装置100のCPU10が実行する心電図計測処理のプログラムのフローチャートを説明する。
【0112】
CPU10は、心電図計測処理を開始するとともにタイマをスタートする(ステップS201)。CPU10は、被験者の体表面に接触する胸部電極401〜408および増幅アンプ11等を介して胸部誘導の心電図を測定し、各胸部誘導毎に心電位をメモリ16に記録する(S203)。CPU10は、各胸部誘導毎に1心拍の波形を認識できたか否かを判断する(S205)。このステップS205の判断は、第1実施形態において説明した処理と同様である。S205において1心拍の波形を認識できなかったと判断した場合には、CPU10は再びS203からの処理を繰り返す。
【0113】
一方、S205において1心拍の波形が認識できたと判断した場合には、CPU10はタイマ値が30秒以上であったか否かを判断する(S207)。タイマ値が30秒以上でない場合には、CPU10は、選択された胸部誘導セットの心電位を心電図波形としてディスプレイ出力するための心電図データに基づいて、心電図波形(心電図グラフ)をディスプレイ14に表示する(S213)。実施形態では、胸部誘導セットの初期設定として、例えば図9の胸部誘導セット1が選択されるものとする。
【0114】
図13は、第2実施形態による心電図計測処理中のディスプレイ14の画面表示例である。図13Aは、S213の処理における胸部誘導の心電図波形の画面表示例である。測定位置ガイド480は、現在測定中の胸部誘導セットの名称と、(被験者の体型模式図(体型イメージ図)における)その胸部誘導セットに対応する胸部電極部の位置とを示す。具体的には、測定位置ガイド480は、現在、図9の胸部用電極部401、402、403、404、405、406に基づく心電図波形(胸部誘導セット1に基づく心電図波形)が表示されていることを示すために、被験者上半身の模式図中に、対応する電極位置をハイライト表示(強調表示)している。実施形態では、被験者上半身(被験者の体型)の模式図を例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、生体情報計測シャツの模式図を示してもよい。また、模式図(イメージ図)の表現方法は、当業者に周知の手段によって任意に変形可能である。
【0115】
CPU10は、ディスプレイ14に表示していない心電図データ(未処理データ)が有るか否かを判断する(S215)。未処理データが有ったと判断した場合には、CPU10はS203からの処理を繰り返す。
【0116】
S207の処理において、タイマ値が30秒以上であったと判断した場合には、CPU10は、S209の胸部誘導セット選択処理を実行する。
【0117】
図11は、図10のS209においてサブルーチンとして示した胸部誘導セット選択処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、各胸部誘導毎に、図10のS205で認識した心拍のR電位およびS電位のデータを取得することにより、測定範囲内(ここでは30秒間)の各心拍の振幅値を算出する(S250)。振幅値は、演算式:|R電位−S電位|(R電位とS電位との差の絶対値)に基づいて算出する。この振幅値は、図6におけるR−S間隔に対応する。
【0118】
図12Aは、S250においてCPUが演算したRS振幅値の記録内容例450を示す図である。「Data No.」は、測定時間の経過に従ってCPU10が認識する各心拍を特定するための番号である。胸部誘導No.1は、図9の胸部用電極401に基づいて得られる誘導、No.2は胸部用電極402に基づいて得られる誘導、No.3は胸部用電極403に基づいて得られる誘導、No.4は胸部用電極404に基づいて得られる誘導、No.5は胸部用電極405に基づいて得られる誘導、No.6は胸部用電極406に基づいて得られる誘導、No.7は胸部用電極407に基づいて得られる誘導、No.8は胸部用電極408に基づいて得られる誘導を示す。ここでは、心拍番号1501〜1530について、各誘導毎にRS振幅値(単位:mV)がメモリ16に記録される。
【0119】
CPU10は、各胸部誘導毎の振幅値の合計を算出する(S252)。具体的には、CPU10は、各誘導毎に心拍番号1501〜1530の全てのRS振幅値を加算する。図12Bは、S252においてCPUが演算したRS振幅値合計の記録内容例452を示す図である。
【0120】
CPU10は、胸部誘導セット1(誘導No.1〜6)の振幅値の合計を算出する(S254)。CPU10は、胸部誘導セット2(誘導No.2〜7)の振幅値の合計を算出する(S256)。CPU10は、胸部誘導セット3(誘導No.3〜8)の振幅値の合計を算出する(S258)。図12Cは、S254、S256、S258においてCPUが演算したRS振幅値合計の記録内容例454を示す図である。
【0121】
CPU10は、振幅値の合計が最大である胸部誘導セットを判断する(S260)。胸部誘導セット1が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット1を選択する(S262)。胸部誘導セット2が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット2を選択する(S264)。胸部誘導セット3が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット3を選択する(S266)。ここでは、図12Cに示すように胸部誘導セット2のRS振幅値合計(111.05)が最大であったと判断され、CPU10はS264の後、図10のS211からの処理を行う。
【0122】
CPU10は、S209の処理の後、タイマをリセットおよび再度スタートして(S211)、S213の処理を実行する。ここでは図11のS264の処理において選択された胸部誘導セット2の心電図データに基づいて、心電図波形をディスプレイ14に表示する。図13Bに示すように、測定位置ガイド481は、現在、図9の胸部用電極部402、403、404、405、406、407に基づく心電図波形(胸部誘導セット2に基づく心電図波形)が表示されていることを示すために、被験者上半身の模式図中に、対応する電極位置をハイライト表示(強調表示)している。CPU10は、S215において未処理データが無いと判断した場合には、処理を終了する。
【0123】
4−3.実施形態による効果
以上の胸部誘導セット選択処理により、CPU10は、複数の胸部用電極から得られる情報について、RS振幅値が大きいものを選択したうえで、その選択したものを心電図の出力の基礎にする。したがって、例えば被験者毎の体格の相違(心臓位置の相違)や、被験者の運動による心臓移動にもかかわらず、適切な胸部誘導を選択することができる。
【0124】
4−4.第2実施形態のバリエーション
(1)生体情報計測シャツ400のバリエーション
図14は、第2実施形態の生体情報計測シャツ400の変形例である。生体情報計測シャツ420は、被験者の胸部全体の体表面に胸部用電極が配置されるように構成されている。具体的には、被験者の左胸側部付近から、右胸側部付近の体表面を覆う位置について、合計12個の胸部用電極が配置される。図面に向かって右側6個の胸部用電極を胸部誘導セット1とし、図面に向かって左側6個の胸部用電極を胸部誘導セット2とする。また、心電図計測処理は、図10、図11に示すプログラムのフローチャートと同様の処理を行う。
【0125】
この変形例により、解析装置100は、心電図の振幅値(例えばRS振幅値)が大きい胸部誘導セットを選択したうえで、それらの心電図波形をディスプレイに表示することができる。この変形例においては、例えば心臓が左側にある被験者だけでなく、心臓が右側にある被験者の心電図測定にも対応することができる。
【0126】
(2)胸部誘導セット選択処理のバリエーション
第2実施形態では、図9の胸部誘導セット1〜3の胸部用電極の組み合わせの中から、RS振幅値の合計値の大きいものを選択することとしたが(図11ステップS260参照)、これに限られるものではない。胸部誘導セット選択処理のその他の実施形態として例えば次のようなバリエーションを採用してもよい。
【0127】
・胸部誘導毎の選択処理: 胸部誘導セット毎ではなく、各胸部用電極に基づく誘導毎に選択処理を行う。図9に示す生体情報計測シャツ400の場合、最大8誘導を取得して、RS振幅値が大きいものから順に6個の誘導を選択する。
【0128】
・RS振幅値の基準値による誘導の選択: 各胸部誘導セット(または各胸部用電極に基づく誘導)の中から、RS振幅値が所定の基準値(例えば0.5mV以上)を超えるもののみを選択する。
【0129】
その他、図12のS250においてCPU10がRS振幅値の計算対象とする測定範囲(実施形態では30秒間)は任意の範囲に変更可能である。
【0130】
例えば、1心拍毎に図11の胸部誘導セット選択処理を実行するようにしてもよい。また、RS振幅値の演算手法は、第2実施形態で説明した合計値を算出する場合のほか、平均値を算出する等の任意の手法に変更可能である。心拍の振幅値としてR値とS値の差を例示したが、これに限られるものではなく、その他の値(例えばR値とQ値の差、またはR値の絶対値等)を採用してもよい。
【0131】
−−5.第3実施形態(呼吸値計測処理)−−
5−1.生体情報計測シャツ
第3実施形態における生体情報計測シャツ500を説明する。生体情報計測シャツ500の全体図は、図16Aに示す。第3実施形態は、呼吸値を計測するための構成を備えている。生体情報計測シャツ500のコネクタ類、シャツ部、接続される解析装置100等は第1実施形態と同様である。したがって、以下の説明では第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0132】
図15Aは、第3実施形態における生体情報計測シャツ500の部分図である。具体的には、図15Aは、生体情報計測シャツ500の製造工程における裁断前の前身ごろ(胸側)を示す。生体情報計測シャツ500は、伸縮性を有する非導電性繊維によって構成されるシャツ部550と、後述するセンサとによって構成される。具体的には、シャツ部550に対して、導電性繊維で形成された胸部呼吸情報センサ502、腹部呼吸情報センサ504が編み込まれている。ここでは、導電性繊維の例示として、金属粒子(例えば銀粒子、または銅粒子、または硫化銅粒子等)を付着(例えば化学結合等による)した繊維(例えば、日本蚕毛染色株式会社のサンダーロン(Thunderon)(登録商標)等)を利用したものを実施形態とする。
【0133】
胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、導電性素材による結線によって、各結線の端部の集合としてのコネクタ連結部に接続される。実施形態では、結線およびコネクタ連結部363の例示として、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504と同様の導電性繊維を採用する。胸部呼吸情報センサ502は、その一端が結線554によってコネクタ連結部506と接続され、他の一端が結線552によってコネクタ連結部506と接続される。腹部呼吸情報センサ504も同様に、結線によってコネクタ連結部506と接続される。
【0134】
図15Aに例示する生体情報計測シャツのシャツ部550における胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、着用時に被験者の呼吸動作によって伸縮が大きくなる箇所に配置するのが好ましい。具体的には、例えば被験者の呼吸動作による胸囲長の変動(胸郭の周長変動)、腹囲長の変動が大きくなることが予想される箇所が好適である。なお、生体情報計測シャツ500は、被験者の呼吸動作によって主に被験者の体軸垂直方向(胸囲方向)に伸縮する。したがって、シャツ部550は、被験者の体軸垂直方向(胸囲方向)への伸縮率が、被験者の体軸方向(シャツの身丈方向)への伸縮率よりも大きくなるように形成するのが好ましい。
【0135】
図15Bは、図15AのA−A方向の部分断面を示す図である。実施形態では、例示として生体情報計測シャツを二重織りで形成する。シャツ部550は、非導電性繊維の織り部560および織り部561を重ねて1枚の織物として織っている。織り部560と織り部561との間に、胸部呼吸情報センサ502が編み込まれる。結線552および結線554は、それぞれ胸部呼吸情報センサ502の両端に編み込まれる。腹部呼吸情報センサ504およびそこから接続される結線も同様の二重織りで構成される。
【0136】
図15Cは、図15AのB−B方向の部分断面を示す図である。織り部560におけるコネクタ連結部506に接する部分は、その繊維の一部が結線の端部とされる。コネクタ連結部506は、織り部560に対して接するように編み込まれる。各センサ部から配線される結線は、シャツ部550において織り部560と織り部561との間に挟みこまれる位置にて編み込まれ(図15B参照)、コネクタ連結部506に接する部分では織り部560の一部として編み込まれることによってコネクタ連結部506と電気的に接続可能となっている。
【0137】
生体情報計測シャツの製造工程は、例えば(1)胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の編み込みを含めたシャツ部550の形成、(2)(1)を裁断して前身ごろを形成、(3)後身ごろ、袖、襟等の形成、(4)前身ごろ、後身ごろ、袖、襟の後身ごろの各部を縫製、の順番に行う。なお、「(1)胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の編み込みを含めたシャツ部550の形成」の製造工程は、例えば、当業者に周知な手作業による編み込み、またはコンピュータ制御による編み装置等を利用すればよい。
【0138】
5−2.生体情報計測シャツ500(全体図)
図16Aは、上記のシャツ部550を含めて製造される生体情報計測シャツ500の全体図である。生体情報計測シャツ500は、胸部呼吸情報センサ502、腹部呼吸情報センサ504、コネクタ連結部506を備える。コネクタ連結部506は、各センサの両端と電気的に接続されるように4個の結線端部を有している。コネクタ508は、それら4個の各結線端部と電気的に接続されるための4個の電気端子を有している。コネクタ連結部506は、コネクタ508に対して接触されることによって電気的に接続される。コネクタ連結部506とコネクタ506との接続は、面ファスナー等を利用した周知の手段によって行う。
【0139】
図16Bは、被験者が生体情報計測シャツ500を着用した状態を示す図である。生体情報計測シャツ500を利用した呼吸値計測を行う際には、生体情報計測シャツ500のコネクタ連結部506にコネクタ508を接続させる。コネクタ508は、電源コード510を介して解析装置100に接続される。
【0140】
5−3.呼吸値計測
以上説明した第3実施形態による生体情報計測シャツ500を利用して、呼吸値の計測を行う。呼吸値の計測は、例示として以下のような手順で行われる。
【0141】
被験者が生体情報計測シャツ500(図16参照)を着用した後、コネクタ連結部506にコネクタ508を接続させる。コネクタ508は、図3に示すコネクタ302と同様の構成による。コネクタ508は、電源コード510を介して解析装置100に接続する(図3参照)。
【0142】
電源20から、電源コード510、コネクタ508、コネクタ連結部506を介して、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504に対して一定の電流(例えば10マイクロアンペア等の微少電流)を流す(微少電流の印加)。
【0143】
被験者の呼吸動作に基づいて、被験者の胸囲周辺または腹囲周辺の体型が変動する。この体型の変動は、例えば胸囲長および(または)腹囲長の変動を含むのが一般的である。この体型の変動に従って、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の形状が変動する。各センサの形状の変動は、例えばセンサの横方向(胸囲方向または腹囲方向)の長さの変動を含むのが一般的である。
【0144】
胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、例示として金属粒子を付着した導電性繊維によって構成される。したがって、電源20によって通電状態とされる胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、被験者の呼吸動作に伴うセンサ形状の変動に応じて、金属粒子同士の接触数(または接触面積、または単位体積当たりの金属粒子密度)が増加または減少し、各センサの有する電気的抵抗値が変化する。例えば、胸囲長(または腹囲長)が長くなった状態では金属粒子同士の接触数が減少して電気的抵抗値が上がり(電流が流れにくくなる)、胸囲長(または腹囲長)が短くなった状態では金属粒子同士の接触数が再び増加して電気的抵抗値が下がる(電流が流れやすくなる)。なお、金属粒子の付着によらない導電性繊維の場合は、被験者の呼吸動作に伴う導電性繊維の長さ(または断面積)の伸縮によって、各導電性繊維の抵抗値が変化する。なお、生体情報計測シャツ500のシャツ部550は、上述したように伸縮性を有する非導電性素材によって形成される。被験者の呼吸動作に伴うセンサ形状の変動量を大きくするために、シャツ部550は被験者の上半身(特に胸囲付近(または腹囲付近))に密着する程度の充分な伸縮性を有するのが好ましい。その他、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の面積を大きくすることによって呼吸値の検出感度を向上させるようにしてもよい。
【0145】
抵抗値センサ21(図3)は、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の抵抗値の変動を検知する。検知された抵抗値の変動は、フィルタ22を介してノイズ除去された後、A/D変換12によってデジタルデータ(抵抗値データ)に変換される。
【0146】
図17は、解析装置100のメモリ16等に記録された抵抗値データを模式的にグラフによって表したものである。図では、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504のいずれか一方の抵抗値の変動が周期的に生ずるものとして示した。抵抗値の変動は、抵抗値周期部分590、抵抗値振幅部分591等によって定義される。
【0147】
解析装置100のCPU10は、抵抗値のデータに基づいて抵抗値の変動の周波数を算出し、その結果に基づいて呼吸値を出力する。具体的には、例えば抵抗値の変動の周波数が1分間当たり15回であれば、呼吸数を15(回/1分間)とする。解析装置100は被験者の呼吸数等の情報をディスプレイ14に出力する。なお、実施形態では抵抗値の変動を検知することとしたが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、解析装置100は、各センサの電流値(または各センサの電圧値)を検知することによって電流(または電圧)の変動周期を算出し、その結果に基づいて呼吸値(または呼吸数の推定値、以下同じ)を出力するようにしてもよい。
【0148】
実施形態では、呼吸値を取得するために胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の二つの手段を採用する例を示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504のいずれか一方のみからの情報に基づいて呼吸値を取得するようにしてもよい。一般的には、被験者の呼吸動作によって胸囲長の変動が大きければ胸部呼吸情報センサ502を採用し、腹囲長の変動が大きければ腹部呼吸情報センサ504を採用する。その他、解析装置100は、2つのセンサに基づいて2つの呼吸値の情報を併せて出力するようにしてもよいし、所定の判定手段(例えば呼吸値の大きい方を選択する等)によっていずれか一方の呼吸値の情報のみを出力するようにしてもよい。
【0149】
5−4.実施形態による効果
実施形態では、生体情報計測シャツ500に配置される胸部呼吸情報センサ502(または腹部呼吸情報センサ504)からの信号に基づいて呼吸値を計測することができる(胸部または腹部の運動に伴うセンサ部の形状の変化を呼吸運動変化として検出)。したがって、簡易な構成でありながら、被験者に対する負荷も少ない状態で呼吸値を計測することができる。
【0150】
実施形態では、図15Bに示すように、非導電性の伸縮性素材である織り部560と織り部561との間に、胸部呼吸情報センサ502(または腹部呼吸情報センサ504)が編み込まれる。したがって、被験者は各センサに接触することもないので、被験者に対する電気的影響を抑えることができるとともに、抵抗値に対するノイズの影響も抑えることができる。
【0151】
5−5.第3実施形態のバリエーション
図18〜図20は、第3実施形態の生体情報計測シャツ500の変形例である。図18に示す生体情報計測シャツ570は、被験者の胸部付近に複数の導電性素材断片の集合である胸部呼吸情報センサ571を備えている。具体的には、胸部呼吸情報センサ571は、被験者の胸囲長が最小である状態(吐き出し状態等)では各導電性素材断片同士が接触しており、胸囲長の増加状態(吸い込み状態等)では断片同士が離れるような位置(または各断片の接触面積が減少する位置)に配置する。導電性素材センサ571は、例えば導電性フィルム基板等によって形成する。被験者の呼吸動作に伴い、導電性素材の断片の全部または一部が接触および非接触を繰り返すこととなり、その結果、胸部呼吸情報センサ502の電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。胸部呼吸情報センサ571は、胸部付近に限らず、腹部付近に配置してもよい。その他、導電性素材センサ571は、被験者の胸囲方向に各導電性素材断片を並列する形状に限らず、各導電性素材断片をジグザグ形(稲妻形)に配置する形状にしてもよい。
【0152】
図19Aに示す生体情報計測シャツ575は、被験者の腹部付近に複数の導電性素材断片の集合である腹部呼吸情報センサ576を備えている。具体的には、腹部呼吸情報センサ576は、被験者の腹囲長が短い状態では各導電性素材断片同士の接触面積が大きい状態であり、腹囲長が長い状態状態では断片同士の距離が離れてそれらの接触面積が小さい状態となるような位置に配置する。生体情報計測シャツ575は、例示として二重織りで形成される。
【0153】
図19Bは、図19AのE−E方向の部分断面を示す図である。生体情報計測シャツ575は、非導電性素材の織り部577および織り部578を重ねて1枚の織物として織られている。織り部578は、被験者の体表面に接触する側である。腹部呼吸情報センサ576における導電性素材の各断片の一部は、織り部578に貼りあわされることによってアンカー部(支え部)として機能し、そのアンカーに対して導電性翼部(板部)が貼りあわされる。導電性板翼部は、隣接する他の導電性板翼部に対して接触する。導電性素材センサ576(またはその導電性翼部)は、例えば導電性フィルム基板等によって形成する。被験者の呼吸動作に伴い、導電性素材断片(導電性翼部)の全部または一部が、隣接する導電性素材断片の接触面積が変動する。その結果、腹部呼吸情報センサ576の電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。腹部呼吸情報センサ576は、腹部付近に限らず、胸部付近に配置してもよい。
【0154】
上記実施形態では、導電性翼部(アンカー部を含む)を織り部578に貼り合わせているが、導電性翼部(アンカー部を含む)を導電性繊維を編み込むことによって形成してもよい。この場合、編み込んだだけでは、広がった翼の面積が確保できず、翼の厚みが大きくなるので、翼になる部分を熱によって平坦にする加工を行うとよい(カレンダー加工)。
【0155】
図20に示す生体情報計測シャツ580は、被験者の胸囲方向に胸部呼吸情報センサ581、腹部付近の体軸方向(身丈方向)に腹部呼吸情報センサ582を備えている。生体情報計測シャツ580に対する各センサの編み込み、各センサの素材等は、第3実施形態におけるものと同様である。被験者の呼吸動作に伴い、胸部呼吸情報センサ581または腹部呼吸情報センサ582が伸縮を繰り返すこととなり、その結果、各センサの電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。解析装置100は、2つのセンサに基づいて2つの呼吸値の情報を併せて出力するようにしてもよいし、所定の判定手段(例えば呼吸値の大きい方を選択する等)によっていずれか一方の呼吸値の情報のみを出力するようにしてもよい。
【0156】
−−6.第4実施形態(呼吸値
計測処理(心電図R波解析併用))−−
6−1.生体情報計測シャツ
第4実施形態における生体情報計測シャツを説明する。第4実施形態は、第3実施形態による呼吸値計測処理と、心電図のR波解析とを組み合わせることにより、呼吸値計測の信頼性を向上させるものである。第4実施形態における生体情報計測シャツは、第1実施形態の生体情報計測シャツ301における胸部電極部および四肢電極部(図4A参照)と同様の胸部電極部および四肢電極部、および第3実施形態の生体情報計測シャツ500における胸部呼吸情報センサ502(図15A参照)と同様の胸部呼吸情報センサを備えている。したがって、以下の説明では第1実施形態および第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0157】
図21は、第4実施形態による生体情報計測シャツ600の全体図である。生体情報計測シャツ600は、胸部誘導セット603、四肢誘導セット604、胸部呼吸情報センサ601、腹部呼吸情報センサ602を備えている。胸部誘導セット603、四肢誘導セット604は、第1実施形態および第2実施形態で説明したものと同様であり、6個の胸部誘導用電極と4個の四肢誘導用電極とによって構成される。胸部呼吸情報センサ601および腹部呼吸情報センサ602は、第3実施形態で説明したものと同様である。ここでは、コネクタ類の説明を省略する。なお、四肢誘導用電極は、四肢誘導セット604に限らず、一般的な銀/塩化銀電極を採用してもよい。
【0158】
6−2.呼吸値計測処理
図22〜図24に基づいて、第4実施形態における解析装置100のCPU10が実行する呼吸値計測処理のプログラムのフローチャートを説明する。
【0159】
解析装置100のCPU10は、呼吸値計測処理を開始するとともにタイマをスタートする(ステップS400)。CPU10は、胸部呼吸情報センサ601および腹部呼吸情報センサ602を介して、抵抗値データ(呼吸値データ)を取得してメモリ16に記録する(S402)。このS402の処理は、第3実施形態において説明した呼吸値計測処理と同様である。
【0160】
CPU10は、被験者の体表面に接触する胸部誘導セット603、四肢誘導セット604及び増幅アンプ11を介して胸部誘導の心電図を測定し、各胸部誘導毎に心電図データをメモリ16に記録する(S404)。CPU10は、各胸部誘導毎に1心拍の波形を認識できたか否かを判断する(S406)。このステップS406の判断は、第1実施形態において説明した処理と同様である。S406において1心拍の波形を認識できなかったと判断した場合には、CPU10は再びS402からの処理を繰り返す。
【0161】
一方、S406において1心拍の波形が認識できたと判断した場合には、CPU10はタイマ値が10秒以上であったか否かを判断する(S408)。タイマ値が10秒以上でない場合には、CPU10は再びS402からの処理を繰り返す。
【0162】
S408の処理においてタイマ値が10秒以上であると判断した場合には、CPU10は、タイマをリセットおよび再度スタートして(S410)、抵抗値データに対するフィルタ処理を行う(S412)。具体的には、例えばデジタルフィルタ処理(バンドパスフィルタ処理)により、CPU10は、周波数帯域0.1Hz〜3Hzにおける振幅10Ω(オーム)以上を基準とした抵抗値データの波形解析を行う。CPU10は、S412の処理に基づいて抵抗値の変動周期および抵抗値の振幅の各データを取得してメモリ16に記録する(S414)。
【0163】
CPU10は、S406で認識した心拍のR波高データに対するフィルタ処理を行う(S416)。具体的には、例えばデジタルフィルタ処理により、CPU10は、周波数帯域0.1Hz〜3Hzにおける振幅0.05mV以上を基準としたR波高データの波形解析を行う。R波高データは、CPU10が認識した各R波の電位(R波高)の時間的な変化を示すデータである。実施形態では、例示としてR波高データの時間的な変化を波形として扱うものとしている。CPU10は、S416の処理に基づいてR波高の変動周期およびR波高の振幅の各データを取得してメモリ16に記録する(S418)。
【0164】
R波高の変動周期は、R波高の時間的変化を波形で表した場合、例えば所定時間内の極大点の数を基準にして算出される。一般的に、被験者の呼吸動作に応じてR波高が変動する場合があることが知られている。実施形態では、呼吸数を推定するために利用可能なファクタとして、胸部呼吸情報センサ502等の抵抗値の変動周期に加えて、R波高の変動周期を採用することとしている。
【0165】
CPU10は、呼吸推定値決定処理を実行する(S500)。
【0166】
図23は、図22のS500においてサブルーチンとして示した呼吸推定値決定処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、抵抗値周期の平均値(以下、説明の便宜上「A1」とも表示する。)、抵抗値振幅の平均値(以下、説明の便宜上「A2」とも表示する。)を算出してメモリ16に記録する(S502)。
【0167】
CPU10は、R波高周期の平均値(以下、説明の便宜上「B1」とも表示する。)、R波高振幅の平均値(以下、説明の便宜上「B2」とも表示する。)を算出してメモリ16に記録する(S504)。
【0168】
なお、第4実施形態においては、図21に示す複数の胸部誘導電極および四肢誘導電極に基づいて複数のR波高に関するデータが得られ、胸部呼吸情報センサ601および602の両者に基づいて複数の抵抗値に関するデータが得られる。以下の説明では、CPU10が、複数のR波高に関するデータの中から1つのR波高に関するデータを選択し、また、複数の抵抗値に関するデータの中から1つの抵抗値に関するデータを選択したものとして説明する。複数の胸部誘導電極から得られるR波高データの中から1つの誘導のR波高データを選択する処理、および胸部呼吸情報センサ601および602の抵抗値データの中のいずれかの抵抗値データを選択する処理は、例えば、S414、S418の処理で得られる各振幅の合計値が大きいものを採用するようにすればよい。具体的には、S414において、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値の合計が12であり、胸部呼吸情報センサ602由来の抵抗値の合計が11.5であった場合には、CPU10は、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値に関するデータのみについてS500以降の処理を行う。その他、複数の胸部誘導電極および四肢誘導電極から得られるR波高データの中から1つの誘導のR波高データを選択する処理については、第2実施形態の心電図計測処理における図11のステップS250で得られるRS振幅値(またはS252で得られるRS振幅値合計)を利用してもよい。具体的には、各胸部誘導毎に所定時間範囲のRS振幅値の合計を演算し、その合計が最も大きい胸部誘導由来のR波高データを選択してS418以降の処理を行うようにすればよい。
【0169】
図25Aは、S418の処理後において抵抗値周期、抵抗値振幅、R波高周期、R波高振幅、及びそれらの平均値を記録したメモリ16の記録内容例を示す図である。「Data No.(データ番号)」は、各周期を特定する番号である。CPU10は、メモリ16内に、例えばミリ秒単位で抵抗値データおよびR波高データを記録し、両者の極大値の位置(または極小値の位置)の差が200ミリ秒以内であるものに関する情報(周期、振幅等)を、図25Aに例示するテーブルにおける同一のデータ番号のカラムに記録する(極大値の位置、極小値の位置等に関する記録内容は、図26参照)。抵抗値周期およびR波高周期は、例示として1秒間当たりの波形の振動数(単位:ヘルツ)で示す。
【0170】
CPU10は、A1=0であったか否か、およびB1=0であったか否かを判断する(S506)。A1=0およびB1=0であった場合には、CPU10は、呼吸推定値として「推定不能」を記録(S508)して図22のS422からの処理を行う。A1(抵抗値周期)=0、B1(R波高周期)=0の場合とは、図22のS412、S416の各フィルタ処理において、波形解析結果として周期が得られなかった場合に該当する。具体的には、例えば抵抗値の場合、被験者の体動によって3Hz以上の周波数帯域の信号が強調された結果、周波数帯域0.1〜3kHzの間に10Ω変動以上の振動を含む波形が解析できないときに抵抗値周期=0となる。
【0171】
S506の処理において、B1=0(A1は0ではない)の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録(S510)して、図22のS422からの処理を行う。S506の処理において、A1=0(B1は0ではない)の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「B1」を記録(S512)して、図22のS422からの処理を行う。この処理によって、抵抗値またはR波高の情報のいずれか一方が有効であれば、有効な方の情報が呼吸推定値として採用される。
【0172】
S506の処理において、A1およびB1が0でない場合には、CPU10は、A1とB1が等しかったか否かを判断する(S514)。A1=B1の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録(S518)して図22のS422からの処理を行う。
【0173】
S514の処理において、A1=B1でなかったと判断した場合には、CPU10は、後述する「単位変換基準」がメモリ16に記録されていたか否かを判断する(S516)。単位変換基準がメモリ16に記録されていたと判断した場合には、CPU10は、A2(またはB2)の単位変換処理を行う(S522)。この単位変換処理の詳細は後述する。
【0174】
S516の処理において単位変換基準がメモリ16に記録されていなかったと判断した場合には、CPU10は、S520の単位変換基準取得処理を実行する。
【0175】
図24は、図23のS520においてサブルーチンとして示した単位変換基準取得処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、メモリ16に記録されている抵抗値データ(図22のS402参照)に基づいて、抵抗値の極大値(Ω)とその極大位置(単位:ミリ秒)、抵抗値の極小値(Ω)とその極小位置(ミリ秒)を演算してメモリ16に記録する(S603)。抵抗値データの極大値および極小値等は、図17に示す波形の各周期における極大値および極小値に相当する。
【0176】
CPU10は、メモリ16に記録されているR波高データ(図22のS404参照)に基づいて、R波高の極大値(mV)とその極大位置(ミリ秒)、R波高の極小値(mV)とその極小位置(ミリ秒)を演算してメモリ16に記録する(S605)。S603およびS605の各波形解析は、例えば図22のS412およびS414におけるフィルタ処理等を利用する。なお、図22のS412、S416、図24のS603、S605における波形解析手法は、上述したものに限られず、その他、Wavelet(ウェーブレット)、FFT(高速フーリエ変換)等の当業者に周知の波形解析手法を利用してもよい。
【0177】
図26Aは、CPUが演算した抵抗値(極大値、極大位置(測定時間情報)、極小値、極小位置(測定時間情報))およびR波高(極大値、極大位置、極小値、極小位置)の記録内容例を示す図である。「Data No.」は、個々の呼吸(個々の呼吸動作)を特定するための番号である。
【0178】
CPU10は、測定時間3分以上に相当する間における極大および極小値のデータがメモリ16に記録されたか否かを判断する(S607)。測定時間3分以上に相当するデータが記録されていなかったと判断した場合には、CPU10は、図22のS402からの処理を繰り返す。測定時間3分以上に相当するデータが記録されたと判断した場合には、CPU10は、抵抗値の極大位置とR波高の極大位置との誤差が50ミリ秒以下であり、かつ、抵抗値の極小位置とR波高の極小位置との誤差が50ミリ秒以下である呼吸データを選択する(S609)。図26Aの場合、Data No.「1501」の呼吸データは、極大値誤差4ミリ秒(=|2502(ミリ秒)−2498(ミリ秒)|)、極小値誤差7ミリ秒(=|4402−4395|))であるから選択対象となる。また、「1543」の呼吸データも同様に選択対象となる。なお実施形態では、S607において測定時間3分以上に相当する間における極大および極小値のデータがメモリ16に記録されたか否かを判断することとしたが、その他任意の時間を採用してもよい。また、S609において誤差が「50ミリ秒以下」の呼吸データを選択するものとしたが、これは、抵抗値データの極大位置(または極小位置)と、R波高データの極大位置(または極小位置)とがおおよそ一致するときの呼吸データを選択するための基準である。したがって、両者がおおよそ一致するときの呼吸データを選択する目的範囲内で、「50ミリ秒」以外の任意の時間を採用してもよい。
【0179】
CPU10は、S609で選択された抵抗値データの極大値の平均値(極大平均値)および極小値の平均値(極小平均値)を算出する(S611)。ここでは、図26Aのデータ番号1501、1543を含む呼吸データが選択されているものとする。CPU10は、極大平均値と極小平均値との差を演算し、演算結果を「抵抗値の基準振幅値」としてメモリ16に記録する(S613)。
【0180】
CPU10は、S609で選択されたR波高データの極大値の平均値(極大平均値)および極小値の平均値(極小平均値)を算出する(S615)。CPU10は、極大平均値と極小平均値との差を演算し、演算結果を「R波高の基準振幅値」としてメモリ16に記録する(S617)。図26Bは、S617の処理後においてCPU10が演算した各値の記録内容例を示す図である。
【0181】
CPU10は、抵抗値の基準振幅値と、R波高の基準振幅値との比を「単位変換基準」としてメモリ16に記録する。ここでは例示として、単位変換基準=(抵抗値の基準振幅値)/(R波高の基準振幅値)として演算する。 図26Cは、S619の処理後においてCPU10が演算した各値の記録内容を示す図である。ここでは、抵抗値の基準振幅値=11.2(Ω)、R波高の基準振幅値(0.24mV)、単位変換基準=24が記録されたものとする。
【0182】
CPU10は、S619の処理の後、図23のS522に示すA2(またはB2)の単位変換のための演算を行う。図25Bは、S522の処理後に得られる各値を記録したメモリ16の記録内容例を示す図である。具体的には、図23のS502で算出された抵抗値振幅の平均値(A2)、S504で算出されたR波高振幅の平均値(B2)に加えて、単位変換後のR波高振幅がメモリ16に記録される。単位変換後のR波高振幅は、CPU10が、B2(単位:mV)に対して(単位変換基準取得処理によって得られた)単位変換基準(ここでは47)を乗じることによって算出する。
【0183】
実施形態では、測定を開始して最初の3分以上のデータを利用して単位変換基準を取得することとしたが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、所定時間の経過後に単位変換基準取得処理(図24)を実行して単位変換基準を更新し続けるようにしてもよい。
【0184】
実施形態では、単位変換基準として「R波高の基準振幅値」に対する「抵抗値の基準振幅値」の比を採用したが、これに限らず、「抵抗値の基準振幅値」に対する「R波高の基準振幅値」の比を採用してもよい。また、単位変換基準としてあらかじめ固定の係数を設定しておき、単位変換基準取得処理(図24)を省略してもよい。
【0185】
CPU10は、A2が単位変換後のB2以上であったか否かを判断する(S524)。A2が単位変換後のB2以上であったと判断した場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録する(S526)して、図22のS422からの処理を行う。A2が単位変換後のB2よりも小さかったと判断した場合には、CPU10は、呼吸推定値として「B1」を記録する(S528)して、図22のS422からの処理を行う。以上の単位変換基準取得処理(図23のS520)およびS522、S524、S526、S528の処理により、抵抗値周期の平均値(A2)とR波高周期の平均値(B2)とが相違する場合に、それら両者の中から、それぞれの振幅(所定時間範囲における平均振幅値)が大きいものに対応する方を選択する。抵抗値の振幅またはR波高の振幅が大きいものに対応する方を選択したうえで、その周期を呼吸推定値として採用することにより、一般的には、被験者の呼吸動作を感度良く取得することができる。
【0186】
CPU10は、S500に示す呼吸推定値決定処理の後、メモリ16に記録された呼吸推定値に基づく呼吸数等をディスプレイ14に出力する(S422)。ここでは、呼吸推定値は周期(単位:ヘルツ)であるから、呼吸数(1分間当たり)を出力する場合は、CPU10は呼吸推定値×60を演算する。例えば、図25Bに示すデータの場合、図23のS524の処理においてA2がB2より小さいと判断され、呼吸推定値として「0.25(図25Aに示すR波高周期の平均値)」が記録される。この場合CPU10は、呼吸数として15(=0.25×60)をディスプレイ14に表示する。
【0187】
図27は、第4実施形態による呼吸値計測処理中のディスプレイ14の画面表示例である。呼吸情報表示エリア650には、呼吸数と、その呼吸数を計測する根拠となった位置(計測位置)が表示される。計測位置は、例えば、図21に示す胸部誘導セット603、四肢誘導セット604、胸部呼吸情報センサ601、腹部呼吸情報センサ602の中から、ディスプレイ表示中の呼吸数の由来となったものを表示する。図25Bに示すR波高振幅の由来が腹部呼吸情報センサ602であった場合には、呼吸情報表示エリア650に「計測位置:腹部呼吸情報センサ」を表示する。計測位置の表示はこれに限られず、例えば図13Aの測定位置ガイド480に類似する表示方法(計測位置を被験者の体型模式図に対して物理的に対応付けて表示する方法)を採用してもよい。
【0188】
6−3.実施形態による効果
実施形態では、通電状態における胸部呼吸情報センサ601(または腹部呼吸情報センサ602)の抵抗値変動の情報に加えて、胸部電極部および四肢誘導電極から得られるR波高の変動の情報を利用して呼吸値を計測する。したがって、例えば被験者の体動等を原因として抵抗値変動の情報が呼吸動作を正確に反映していない場合であっても、R波高変動の情報を選択的に利用することによって呼吸値の情報を得ることができる。
【0189】
6−4.第4実施形態のバリエーション
第4実施形態では、呼吸値計測処理の出力内容として「呼吸数」を例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として「呼吸深度」を出力するようにしてもよい。例えば、図22のステップS414で得られる抵抗振幅値、またはS418で得られるR波振幅の各値は、被験者の呼吸深度に比例するのが一般的である。具体的には、被験者の呼吸深度が高くなると、例えば胸囲長(図21の胸部呼吸情報センサ601の長さ)の変動が大きくなりその結果抵抗振幅値が増加する。したがって、呼吸深度は、被験者の通常状態における抵抗振幅値(またはR波高振幅)に対する、測定時における抵抗振幅値(またはR波高振幅)の割合に基づいて演算することができる。これにより、例えば運動中、または運動後、またはぜんそく状態、または睡眠状態等における呼吸深度の情報を得ることができる。
【0190】
−−7.その他の実施形態等−−
上記説明においては、第1〜第4実施形態を個別の実施例として説明したが、これに限らず、それら各実施形態に含まれる各技術的要素を組み合わせて実施してもよい。例えば、第1(または第2)実施形態と、第3(または第4)実施形態とを組み合わせた実施例の場合、心電図の測定と呼吸値の測定とを同時に行うことができる。
【0191】
上記各実施形態では、CPU10の動作のためのプログラムをF−ROM17に記憶させている。プログラムの記憶場所はこれに限らず、ハードディスク等を含めたその他の記録手段を利用してもよい。CPU10の動作のためのプログラムは、プログラムが記憶されたCD−ROMから読み出してハードディスク等にインストールすればよい。プログラムは、CD−ROM以外に、DVD−ROM、またはフレキシブルディスク(FD)、またはICカード等のコンピュータ可読の記録媒体からインストールするようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてプログラムをダウンロードさせることもできる。また、CD−ROMからプログラムをインストールすることにより、CD−ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにするのではなく、CD−ROMに記憶させたプログラムを直接的に実行するようにしてもよい。
【0192】
なお、コンピュータによって実行可能なプログラムとしては、CPUによって直接実行可能なプログラムだけではなく、ソース形式のプログラム、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、圧縮処理がされたプログラム、暗号化プログラム)、さらには、他のモジュール部分と組み合わして実行可能なプログラムも含む。
【0193】
上記各実施形態では、図2の各機能をCPUおよびプログラムによって実現することとしているが、各機能の一部または全部をハードウェアロジック(論理回路)によって構成してもよい。
【関連出願】
【0001】
日本国特許出願2004−86110号(2004年3月24日出願)の明細書、特許請求の範囲、図面および要約を含む全開示内容は、本出願内容に合体される。
【技術分野】
【0002】
この発明は、生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよび生体情報計測装置、および装置制御方法に関するものである。特に、簡易な構成でありながら、被験者の体格等の相違にもかかわらず精度良く生体情報を計測することに関する発明である。
【背景技術】
【0003】
心電図記録を含めた生体情報の計測は、被験者が安静な状態にあるときに行われるのが一般的である。例えば心電図の計測の場合、被験者は診察台の上に仰向けになって安静にする。測定者は、被験者の胸部、手首、足首のそれぞれにelectrocardiogram(ECG)電極を吸着した後、心電図計測装置によって心電図を記録する。このようなECG電極の吸着等による計測方法では、例えば計測準備の手間や、電極吸着による不快感等が生じてしまい、被験者に与える負荷が大きくなるのが一般的である。
【0004】
被験者に与える負荷を抑え、かつ、必要な生体情報を得ることを可能にするものとして、例えば、生体電気信号を記録器に伝達するための導電性部材を被服に縫合したTシャツ着衣型被服に関する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−159458(第1図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている従来技術によれば、生体情報の計測時においても被験者に与える負荷を抑えることができる点で有益である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術においては、被験者に与える負荷の抑制を考慮するにすぎない。一方、生体情報の計測については、個々の被験者によって体格が相違するのが一般であるから、そのような相違が原因で生体情報の計測感度が低くなる可能性も考慮しなければならない。また、被験者の体動が大きい場合(例えば運動時等)には、計測感度の低下がより一層大きくなることが予想される。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みて、簡易な構成でありながら、被験者の体格等の相違にもかかわらず精度良く生体情報を計測することを可能とする、生体情報計測用衣服、生体情報計測システムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1)本発明の生体情報計測用衣服は、
被験者の上半身に密着する程度の伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際には、被験者の第4肋骨付近の体表から第6肋骨付近の体表までを覆う長さを有することによって心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近に接する位置から左胸側部付近に接する位置の間の少なくとも6箇所に配置されること、
を特徴としている。
【0010】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部を介して、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0011】
2)本発明の生体情報計測用衣服は、
伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
衣服前面中央部付近から衣服左縁付近において、衣服身丈方向に5cm(センチメートル)以上30cm以下の長さを有する、被験者が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が配置されていること、
を特徴としている。
【0012】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記導電性素材を介して、被験者(または「被検者」、以下同様)が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0013】
3)本発明の生体情報計測用衣服は、
非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際に被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置されること、
を特徴としている。
【0014】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部を介して、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0015】
4)本発明の前記生体情報計測用衣服は、被験者の上半身用のシャツであり、
そのシャツは、さらに、
少なくとも、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表を覆う面積を有し、かつ、生体から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達可能な導線性素材で形成した四肢誘導電極部、
を備えたことを特徴としている。
【0016】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記四肢誘導電極部を介して、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達することができる。
【0017】
5)本発明の前記生体情報計測用衣服は、さらに、
前記胸部誘導電極部に加えて、被験者の胸骨前部付近から右胸側部付近に向かう位置、または被験者の左胸側部付近から背中に向かう位置に、少なくとも1以上の前記胸部誘導電極部を備えたことを特徴としている。
【0018】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記胸部誘導電極部とは別に追加された前記少なくとも1以上の前記胸部誘導電極を介して、生体から発生する電位を取得して心電図解析装置へ伝達することができる。
【0019】
6)本発明の前記生体情報計測用衣服と前記心電図解析装置とを備えた生体情報計測システムにおいて、
前記心電図解析装置は、
複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴としている。
【0020】
これらの特徴により、前記心電図解析装置は、複数の電位情報の中から、例えば検出感度が良好な位置に配置された胸部誘導電極部由来の電位情報を選択して、その電位情報に基づいて心電図データを出力することができる。
【0021】
9)本発明の前記心電図解析出力手段は、さらに、
前記選択された電位情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示することを特徴としている。
【0022】
この特徴により、ユーザは、前記選択された電気情報の測定元を前記模式図に対応づけて視覚的かつ直感的に認識することができる。
【0023】
10)本発明の前記生体情報計測用衣服は、
被験者の呼吸動作による体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を呼吸情報解析装置へ伝達可能な呼吸情報計測センサ部が配置されたことを特徴としている。
【0024】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、心電図の出力のためのデータに加えて、呼吸情報の出力のためのデータを取得することができる。
【0025】
11)本発明の前記呼吸情報計測センサ部は、さらに、
前記生体情報計測用衣服における少なくとも胸回りまたは腹回りに配置され、被験者の呼吸動作による体格変動に伴う伸縮を通じて前記導電性部材の断面積または長さが変化することによって電気抵抗値が変化することを特徴としている。
【0026】
これらの特徴により、前記呼吸情報計測センサ部は、例えば被験者の呼吸動作による胸郭の周長、または腹回り(胴回り)の周長の物理的変化を直接検知することができ、呼吸情報の検出感度を安定にすることができる。
【0027】
12)本発明の前記呼吸情報計測センサ部は、
前記導電性部材における被験者体表への対向面およびその反対面を非導線性素材で覆うことによって、被験者に対して前記通電状態による電気的影響を少なくしたことを特徴としている。
【0028】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、前記呼吸情報の計測時における被験者に対する電気的影響を少なくすることができる。
【0029】
13)本発明の前記呼吸情報計測センサ部の導電性部材は、前記生体情報計測用衣服において、少なくとも被験者の胸部付近に巻き付く位置または腹部付近に巻き付く位置を含む複数箇所に配置されることと特徴としている。
【0030】
これらの特徴により、前記生体情報計測用衣服は、胸囲長の変化および腹囲長の変化を含めた複数部位の情報に基づいて、前記被験者の呼吸動作を検出することができる。
【0031】
14)本発明の前記生体情報計測用衣服と前記呼吸情報解析装置とを備えた生体情報計測システムにおいて、
前記呼吸情報解析装置は、
複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴としている。
【0032】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析装置は、複数の電気情報の中から、例えば検出感度が良好な位置に配置された前記呼吸情報計測センサ部由来の電気情報を選択して、その電気情報に基づいて呼吸情報データを出力することができる。
【0033】
17)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の変動周期に関する電気周期情報と、前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく心電図のR波高情報の変動周期に関するR波高周期情報とを取得し、いずれか一方の周期情報を選択し、選択した周期情報に基づいて呼吸情報を解析することを特徴としている。
【0034】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析手段は、前記電気周期情報および前記R波高周期情報を含めた複数種類の情報に基づいて、前記被験者の呼吸動作を解析することができる。
【0035】
18)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の振幅に関する電気振幅情報と、前記R波高情報の振幅に関するR波高振幅情報とを取得し、前記電気振幅情報とR波高振幅情報との比較に基づいて前記電気情報またはR波高情報のいずれか一方を選択し、選択した情報の周期情報に基づいて呼吸情報を解析することを特徴としている。
【0036】
これらの特徴により、前記呼吸情報解析手段は、前記電気周期情報および前記R波高周期情報を含めた複数種類の情報について、例えば検出感度が良好な方の情報を選択して、その周期情報に基づいて前記被験者の呼吸動作を解析することができる。
【0037】
19)本発明の前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記選択された情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置、または呼吸情報計測センサ部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示することを特徴としている。
【0038】
この特徴により、ユーザは、前記選択された電気情報の測定元を前記模式図に対応づけて視覚的かつ直感的に認識することができる。
【0039】
本発明の特徴、他の目的、用途、効果等は、図面を考慮に入れた上で以下の開示によりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の各実施形態の概要を示す模式図である。
【図2】実施形態による生体情報計測システムの機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態による生体情報計測システムの構成例である。
【図4】図4Aは、第1実施形態による生体情報計測シャツの部分図である。図4Bは、図4AのX−X方向の部分断面を示す図である。図4Cは、図4AのY−Y方向の部分断面を示す図である。
【図5】図5Aは、第1実施形態による生体情報計測用シャツと被験者の体型との対応を示す模式図である。図5Bは、被験者が生体情報計測用シャツを着用した状態を示す図である。
【図6】記録された心電波形データを模式的にグラフによって表したものである。
【図7】第1実施形態による心電図測定結果例を示す図である。
【図8】図8Aは、第1実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。図8Bは、第1実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図9】第2実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。
【図10】第2実施形態による心電図計測処理のフローチャートである。
【図11】第2実施形態による心電図計測処理のフローチャートである。
【図12】図12A、図12B、図12Cは、第2実施形態においてCPUが演算したRS振幅値の記録内容例を示す図である。
【図13】図13A、図13Bは、第2実施形態による心電図計測処理中のディスプレイ表示例である。
【図14】第2実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図15】図15Aは、第3実施形態による生体情報計測シャツの部分図である。図15Bは、図15AのA−A方向の部分断面を示す図である。図15Cは、図15AのB−B方向の部分断面を示す図である。
【図16】図16Aは、第3実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。図16Bは、被験者が生体情報計測用シャツを着用した状態を示す図である。
【図17】記録された呼吸値データを模式的にグラフによって表したものである。
【図18】第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図19】図19Aは、第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。図19Bは、図19AのE−E方向の部分断面を示す図である。
【図20】第3実施形態の生体情報計測用シャツの変形例である。
【図21】第4実施形態による生体情報計測用シャツの全体図である。
【図22】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図23】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図24】第4実施形態による呼吸値計測処理のフローチャートである。
【図25】図25A、図25Bは、第4実施形態においてCPUが演算した抵抗値周期、抵抗値振幅、R波高周期、R波高振幅等の記録内容例を示す図である。
【図26】図26A、図26B、図26Cは、第4実施形態においてCPUが演算した抵抗値(極大値、極小値等)およびR波高(極大値、極小値等)等の記録内容例を示す図である。
【図27】第4実施形態による呼吸値計測処理中のディスプレイ表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る「生体情報計測用衣服」または「生体情報計測システム」の実施形態を説明する。図1は、本発明の各実施形態の概要を示す模式図である。
【0042】
「生体情報計測用衣服」の実施形態としての生体情報計測シャツは、被験者の上半身に装着されるものであり、胸部および四肢部に電極部(A)と、胴回りおよび腹回りにセンサ部(B)を備えている。第1実施形態による心電図測定および第2実施形態による心電図計測処理においては、電極部(A)から伝達される情報を利用する。一方、第3実施形態による呼吸値計測処理においては、センサ部(B)から伝達される情報を利用する。第4実施形態による呼吸値計測処理(心電図R波解析併用)においては、電極部(A)およびセンサ部(B)の両方から伝達される情報を利用する。
【0043】
以下、生体情報計測シャツおよびシステムに含まれる装置のハードウェア構成、特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応を説明し、次に実施形態の説明等を行う。
【0044】
目次
1.生体情報計測シャツおよびシステムの構成
2.特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応
3.第1実施形態(心電図測定)
4.第2実施形態(心電図計測処理)
5.第3実施形態(呼吸値計測処理)
6.第4実施形態(呼吸値計測処理(心電図R波解析併用))
7.その他の実施形態等
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−1.生体情報計測シャツおよびシステムの構成−−
図2は、本発明に係る「生体情報計測システム」の実施形態としての計測システム1000の機能ブロック図を示す。計測システム1000は、生体情報計測用衣服900、心電図解析装置700、呼吸情報解析装置800を備えている。
【0045】
生体情報計測用衣服900は、非導電性素材908で構成され、胸部誘導電極部902、四肢誘導電極部904、呼吸情報計測センサ部906を備えている。心電図解析装置700は、胸部誘導電極部902および(または)四肢誘導電極部904から電位情報を取得する電位情報取得手段702、複数の電位情報を比較する電位情報比較手段706、電位情報に基づいて胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段704、電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段708を備えている。
【0046】
呼吸情報解析装置800は、呼吸情報計測センサ部906から電気情報を取得する電気情報取得手段802、複数の電気情報を比較する電気情報比較手段806、電気情報に基づいて呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段804、電気情報に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段808、呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段810を備えている。
【0047】
図3は、図2に示す計測システム1000における心電図解析装置700および(または)呼吸情報解析装置800を、CPUを用いて実現したハードウェア構成の例を示す。実施形態では、心電図解析装置700および呼吸情報解析装置800の機能を、例示として1つの装置(解析装置100)で実行するものとして説明する。なお、解析装置100は、心電図解析装置700または呼吸情報解析装置800のいずれか一方の機能を実行するものとしてもよい。
【0048】
解析装置100は、CPU10、増幅アンプ11、フィルタ19、A/D変換12、マウス/キーボード13、ディスプレイ14(表示装置)、スピーカ15、メモリ16、Flash−ROM17(フラッシュメモリ等の、記憶したデータを電気的に消去できる書き換え可能な読み出し専用メモリ、以下、F−ROM17とする)、ディスプレイコントローラ18、電源20、抵抗値センサ21、フィルタ22を備えている。解析装置100は、電極コード304および(または)電源コード303を介してコネクタ302に接続される。コネクタ302は、生体情報計測シャツ300に接続される。
【0049】
コネクタ302は、後述する電極を介して得られる患者の心電位を増幅アンプ11に伝達する。増幅アンプ11は、コネクタ302を介して伝達される電位情報(心電位に基づく情報)を増幅する。フィルタ19は、増幅アンプ11からの信号の雑音成分(ノイズ)を除去する。A/D変換12は、電位情報(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。
【0050】
電源20は、電源コード303およびコネクタ302を介して、生体情報計測シャツ300の所定箇所を通電状態にする。抵抗値センサ21は、電源20等を介して一定の電圧を与えた場合に流れる所定箇所の電流値を抵抗測定コード305を介して計測し、その電流値に基づいて所定箇所の抵抗値を取得する。フィルタ22は、抵抗値センサ21からの情報の雑音成分(ノイズ)を除去する。A/D変換12は、抵抗値(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。
【0051】
CPU10は、心電図計測処理、呼吸値計測処理等のほか、解析装置100全体を制御する。F−ROM17は、解析装置100を制御するためのプログラムを記録する。メモリ16は、CPU10のワーク領域等を提供する。マウス/キーボード13またはディスプレイコントローラ18の操作により生成される操作情報はCPU10に入力され、CPU10が生成した画像情報及び音声情報は、ディスプレイ14、スピーカ15にそれぞれ出力される。
【0052】
実施形態では、解析装置100が心電図計測処理および(または)呼吸値計測処理等を実行するためのソフトウェアとして専用のプログラムを利用する。
【0053】
実施形態では、解析装置100のオペレーティングシステム(OS)の例として、マイクロソフト社のWindows(登録商標)XP、NT、2000、98SE、ME、CE等を用いることとする。本実施形態のプログラムは、OSと共働して各機能を実現しているが、これに限らず、制御プログラム単独で各機能を実現するようにしてもよい。
【0054】
なお、実施形態で説明する「心電図」は、被験者の身体の2点間における心電位の差を測定することの結果として得られるものである。したがって、実施形態における「心電図の測定」等の表現は、心電位等を測定する概念を含む。
【0055】
なお、以下に説明する第1実施形態〜第4実施形態は、便宜上、生体情報計測シャツ300が有する各機能および変形例を個別に説明するものである。したがって、生体情報計測シャツ300として、第1実施形態〜第4実施形態で説明する各構成のいずれか1つのみを有するものとして実施することも可能であり、あるいは、それら各構成を組み合わせたものを有するものとして実施することも可能である。
【0056】
生体情報計測シャツ300は、第1実施形態では生体情報計測シャツ301等、第2実施形態では生体情報計測シャツ400等、第3実施形態では生体情報計測シャツ500等、第4実施形態では生体情報計測シャツ600等として説明する。
【0057】
また、以下に説明する生体情報計測シャツは例示であって、寸法、素材、編み方、製造工程等については、当業者に周知の手段によって変形可能である。
【0058】
−−2.請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応−−
請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応は以下の通りである。ただし以下に説明する「対応する実施形態」は、請求の範囲に記載した各用語によって表される構成が有する機能の中の一つの形態(一部の形態)を示すものである。
【0059】
「生体情報計測用衣服」は、生体情報計測シャツ300(図1)等に対応する。「心電図解析装置」は、解析装置100(図3)に対応する。「導電性素材」は、導電性を有する物質を含めて形成されたもの一般を含む概念であり、実施形態では、例えば導電性繊維(または導電性糸)で形成された胸部用電極および(または)四肢用電極(図4)等に対応する。「胸部誘導電極部」は、胸部用電極353、354、355、356、357、358(図4)等に対応する。「四肢誘導電極部」は、四肢用電極351、352、361、362(図4)等に対応する。
【0060】
「電位情報」は、図10のステップS203の処理において得られる情報(心電位等)に対応する。「電位情報取得手段」は、電位情報を取得する機能を有するものであり、例えば図10のステップS203および(または)S205の処理を行う解析装置100のCPU10に対応する。「電位情報比較手段」は、電位情報の振幅を比較する機能を有するものであり、例えば図11のステップS260の処理を行うCPU10に対応する。「電位情報選択手段」は、電位情報を選択する機能を有するものであり、例えば図11のステップS262、またはS264、またはS266の処理を行うCPU10に対応する。
【0061】
「心電図データ」は、図10のステップS213においてディスプレイ出力される心電図波形の基礎となるデータに対応する。「心電図解析出力手段」は、電位情報を解析して心電図としてディスプレイ出力する機能を有するものであり、例えば図10のステップS213の処理を行うCPU10に対応する。
【0062】
「導電性部材」は、導電性を有する物質を含めて形成されたもの(または導電性を有する物質を含めて形成されたものの組み合わせ)一般を含む概念であり、実施形態では、例えば導電性繊維(または導電性糸)で形成された胸部呼吸情報センサ502、または腹部呼吸情報センサ504(図15)等に対応する。「電気情報」は、電気抵抗値の変化に基づく情報であり、例えば図22のステップS402の処理においてCPU10が取得する抵抗値データに対応する。「呼吸情報解析装置」は、解析装置100に対応する(図3)。「呼吸情報計測センサ部」は、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504(図15)等に対応する。
【0063】
「電気情報取得手段」は、電気情報を取得する機能を有するものであり、例えば図22のステップS402の処理を行うCPU10に対応する。「電気情報比較手段」は、複数の電気情報の振幅を比較する機能を有するものであり、例えば第4実施形態の図22のステップS500の前提として、胸部呼吸情報センサ601(図21)由来の抵抗値データの振幅(または振幅の合計値)と、腹部呼吸情報センサ602由来の抵抗値データの振幅とを比較する処理を行うCPU10に対応する。「電気情報選択手段」は、電気情報を選択する機能を有するものであり、例えば「電気情報比較手段」の比較結果に基づき、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値データ、または腹部呼吸情報センサ602由来の抵抗値データのいずれか一方を選択する処理を行うCPU10に対応する。
【0064】
「呼吸情報解析手段」は、電気情報の変動周期に基づいて呼吸情報を解析する機能を有するものであり、例えば図22のステップS422において呼吸推定値を演算するCPU10に対応する。「呼吸情報データ」は、S422において演算される呼吸数を示すデータに対応する。「呼吸情報出力手段」は、呼吸情報データを出力する機能を有するものであり、例えば図22のステップS422において呼吸推定値をディスプレイ上に表示するCPU10に対応する。
【0065】
「電気周期情報」は、図22のステップS414の処理においてCPU10が取得する抵抗値の変動周期の情報に対応する(図25Aの「抵抗値周期」の情報)。「R波高情報」は、図22のステップS406の処理において認識されるR波高(R電位)の情報に対応する。「R波高周期情報」は、図22のステップS418の処理においてCPU10が取得するR波高の変動周期の情報に対応する(図25Aの「R波高周期」の情報)。「電気振幅情報」は、S414の処理においてCPU10が取得する抵抗値に振幅の情報に対応する(図25Aの「抵抗値振幅」の情報)。「R波高振幅情報」は、図22のステップS418の処理においてCPU10が取得するR波高の振幅の情報に対応する(図25Aの「R波高振幅」の情報)。
【0066】
−−3.第1実施形態(心電図測定)−−
3−1.生体情報計測シャツ
図4、図5に基づいて、第1実施形態における生体情報計測シャツ300を説明する。図4Aは、第1実施形態による生体情報計測シャツ301(図5)の部分図である。具体的には、図4Aは、生体情報計測シャツ301の製造工程における裁断前の前身ごろ(胸側)を示す。生体情報計測シャツ301は、伸縮性を有する非導電性繊維によって構成されるシャツ部350と、後述する電極部とによって構成される。伸縮性を有する非導電性繊維の例として、以下のものが挙げられる。
【0067】
・ポリウレタン等の伸縮性を有する化学繊維
・綿、麻、絹、毛等の天然繊維を、平編み、または天竺編み、またはゴム編み、またはリブ編み、またはフライス編み等の編み方によって伸縮性を持たせたもの
・ゴム等の伸縮性素材に対して繊維を編み込んだもの
・上記繊維等の組み合わせ
実施形態におけるシャツ部350は、例示として綿糸をゴム編みしたものを採用する。なお、シャツ部は、伸縮性を有する非導電性素材に限らず、伸縮性のない(または伸縮性が低い)非導電性素材を採用してもよい。伸縮性のないシャツ部を採用する場合は、後述する各電極部を、被験者の体表面に密着させる手段を用いるのが好ましい。被験者の体表面に各電極部を密着させるためには、例えば皮膚刺激の少ないアクリル系粘着剤等を各電極の体表接触面側に塗布しておけばよい。
【0068】
生体情報計測シャツ301は、シャツ部350に対して、導電性素材で形成された胸部電極部および四肢電極部が編み込まれている。実施形態では、胸部電極部および四肢電極部の例示として、図4Aのシャツ部350の裏側(被験者の皮膚接触面側)に編み込まれる導電性繊維を採用する。ここでは、導電性繊維の例示として、金属粒子(例えば銀粒子、または銅粒子、または硫化銅粒子等)を付着(例えば化学結合等による)した繊維(例えば、日本蚕毛染色株式会社のサンダーロン(Thunderon)(登録商標)等)を利用したものを実施形態とする。
【0069】
胸部用電極は、胸部用電極353、胸部用電極354、胸部用電極355、胸部用電極356、胸部用電極357、胸部用電極358の合計6個の電極(縦長短冊状の導電部位)によって構成される。四肢用電極は、四肢用電極351、四肢用電極352、四肢用電極361、四肢用電極362の合計4個の四肢誘導用の電極によって構成される。
【0070】
各電極は、導電性素材による結線によって、各結線の端部の集合としてのコネクタ連結部364に接続される。実施形態では、結線およびコネクタ連結部363の例示として、胸部電極部および(または)四肢電極部と同様の導電性繊維を採用する。胸部電極部351は、結線359によってコネクタ連結部363に接続される。胸部電極部352は、結線360によってコネクタ連結部363に接続される。その他の電極部も同様に、結線によってコネクタ連結部363に接続される。なお、四肢用電極361(または362)は、必要に応じて中性電極として利用する。
【0071】
図4Aに例示するシャツ部350および各部の寸法は、大人(男性)の場合の例示として以下のものを挙げることができる。ただし、以下の寸法は例示であって、被験者の年齢、性別等によって変更が可能である。
【0072】
・シャツ部350: 縦(身丈方向、以下同様)約60cm×横約50cm
・四肢電極部351、352、361、362: それぞれ縦約3cm×横約6cm
・四肢電極部351(352)の上辺位置: シャツ部350の上辺から約4.5cm
・四肢電極部351(361)の左辺位置: シャツ部350の左辺から約10.5cm
・四肢電極部352(362)の右辺位置: シャツ部350の右辺から約10.5cm
・四肢電極部361(362)の下辺位置: シャツ部350の下辺から約18cm
・四肢電極部351−352(361−362)間の距離: 約18cm
・胸部電極部353〜358: それぞれ縦約12cm×横約3cm、各胸部電極部の間隔は約1cm(例えば縦方向については、下限が約5cm、または約8cm、または約10cm、上限が約30cm、または約20cm、または約15cmの範囲内における任意の寸法を採用してもよい。)
・胸部電極部358の右辺位置: シャツ部350の右辺から約2cm
・コネクタ連結部363の下辺位置: シャツ部350の下辺から6cm
・結線(例えば結線359、360等): それぞれ幅約6mm
・各結線の位置: シャツ部の各辺から5cm以上の幅があることが望ましい。
【0073】
・コネクタ連結部363: 各結線の幅約3mm
生体情報計測シャツ301の製造工程は、例えば(1)シャツ部350に対する胸部電極部および四肢電極部の編み込み、(2)(1)を裁断して前身ごろを形成、(3)後身ごろ、袖、襟等の形成、(4)前身ごろ、後身ごろ、袖、襟の後身ごろの各部を縫製、の順番に行う。なお、「(1)シャツ部350に対する胸部電極部および四肢電極部の編み込み」の製造工程は、例えば、当業者に周知な手作業による編み込み、またはコンピュータ制御による編み装置等を利用すればよい。
【0074】
図4Bは、図4AのX−X方向の部分断面を示す図である。実施形態では、例示として生体情報計測シャツ301を二重織りで形成する。シャツ部350は、非導電性素材の織り部370および織り部371を重ねて1枚の織物として織られている。織り部371の一部は、非導電性素材に替えて、導電性素材である四肢電極部351および四肢電極部352が編み込まれている。四肢電極部351および四肢電極部352等をシャツ部350に形成する手段は図4に示す方法に限られるものではない。例えば、織り部371の一部を切り取り、その切り取った部分に四肢電極部351および四肢電極部352等を任意の接着部材によって固定してもよいし、または、四肢電極部351および四肢電極部352等を、別糸によって織り部371に編み込むようにしてもよい。
【0075】
結線359および結線360は、それぞれ四肢電極部351および四肢電極部352に対して編み込まれる。したがって、結線359、360は、織り部370と織り部371との間に挟み込まれる位置にて編み込まれる。このように、結線については被験者が接触することができないようにすることで、心電図測定への影響を抑えるのが好ましい。その他の胸部電極部および四肢電極部、およびそれらから接続される結線も同様の二重織りで構成される。
【0076】
図4Cは、図4AのY−Y方向の部分断面を示す図である。織り部370におけるコネクタ連結部363に接する部分は、その繊維の一部が結線の端部とされる。コネクタ連結部363は、織り部370に対して接するように編み込まれる。各電極部から配線される結線は、織り部370と織り部371との間に挟みこまれる位置にて編み込まれ(図4B参照)、コネクタ連結部363に接する部分では織り部370の一部として編み込まれることによってコネクタ連結部363と電気的に接続可能となっている。
【0077】
以上のシャツ部350の構成により、被験者の皮膚に接触する各胸部電極部および各四肢電極部から得られる生体電流は、それぞれの電極部に接続される結線を介してコネクタ連結部363に電気的に伝達される。
【0078】
3−2.生体情報計測シャツ301(着用時)
図5Aは、第1実施形態による生体情報計測用シャツにおける各電極部と被験者の体型との対応を示す模式図である。模式図では、説明の便宜のため、生体情報計測シャツ301の表示を省略し、各電極部と被験者の体型との対比のみを示す。被験者が生体情報計測シャツ301を着用した場合、四肢電極部351および352は、被験者の鎖骨付近の体表面(皮膚面)を覆う位置に配置される。四肢電極部362および363は、被験者の骨盤付近の体表面を覆う位置に配置される。胸部電極部353〜358は、生体情報計測シャツ301において、着用時、体軸垂直方向(シャツの身丈方向に垂直な方向)については被験者の胸骨前部付近(胸の中心付近)の体表面から左胸側部付近(左脇の下付近)の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近(または第7肋骨付近、または第8肋骨付近、または肋骨下縁付近)の体表面を覆う位置に配置される。
【0079】
以上説明した各胸部電極部および各四肢電極部の配置は例示であって、当業者に周知の手段によって変形可能である。例えば、各胸部電極部は、心臓前面の肋骨領域付近の体表面を覆う位置に配置してもよい。ただし、各胸部電極部および各四肢電極部の配置は、筋電等の心電位以外のノイズの影響が少ない位置であることが望ましい。
【0080】
コネクタ連結部363は、各電極部と電気的に接続されるように10個の結線端部を有している。コネクタ302は、それら10個の各結線端部と電気的に接続されるための10個の電気端子を有している。コネクタ連結部363は、コネクタ302に対して接続されることによって電気的に接続される。コネクタ連結部363とコネクタ302との接続は、面ファスナー等を利用した周知の手段によって行う。
【0081】
図5Bは、被験者が生体情報計測シャツ301を着用した状態を示す図である。生体情報計測シャツ301を利用した心電図測定を行う際には、生体情報計測シャツ301のコネクタ連結部363にコネクタ302を接続させる(貼り合わせる)。コネクタ302は、電極コード304を介して解析装置100に接続される。
【0082】
3−3.心電図測定
以上説明した第1実施形態による生体情報計測シャツ301を利用して、心電図の測定を行う。心電図の測定は、例示として以下のような手順で行われる。
【0083】
胸部電極部(353、354、355、356、357、358)および四肢電極部(351、352、361、362)の各電極部から得られた被験者の心電位は、図3に示すコネクタ302を介して解析装置100の増幅アンプ11に伝達される。増幅アンプ11によって増幅された心電位は、フィルタ19によってノイズが除去される。A/D変換12は、心電位データ(アナログデータ)をデジタルデータに変換する。解析装置100のCPU10は、10個の電極を介して得られるデジタルデータを心電波形データとして連続的にメモリ16(またはF−ROM17、以下同じ)に記録した上で、当業者に周知の心電図解析手段によって12誘導心電図を算出する。12誘導心電図とは、数個から10数個の電極を生体につけることによって得られる12パターンの心電図のことをいう。
【0084】
図6は、一つの誘導について、メモリ16記録された心電波形データを模式的にグラフ(縦軸:電位(電圧)、横軸:時間)によって表したものである。CPU10は、図6に例示する心電図波形グラフを、ディスプレイ14に描画する処理を行う。心電図グラフの描画は、心電図の測定時間の経過にしたがってプロットポイントが移動(ディスプレイ右方向)することによって行われる。また、CPU10は、心電波形データに基づいて心拍1回毎の波形を認識する。図6に示すように、CPU10は、心電図波形データから、P(P電位またはP波高)、Q(Q電位またはQ波高)、R(R電位またはR波高)、S(S電位またはS波高)、T(T電位またはT波高)、ST(STレベル)、QT(QT間隔)、RR(RR間隔)、RS振幅値の全てまたはそれらの一部を認識値データ(特徴量)として認識(抽出)してメモリ16に記録する。CPU10は、正常波形の場合、例えば以下のような処理によって、1心拍の認識、および、心電図の各波を認識する。
【0085】
(1)1心拍の認識:所定時間の心電波形データ(電位値または電圧値)のサンプリングを行った後、所定の閾値を超える極大値成分であるR波と、(所定の閾値を超える極大値成分である)次のR波を認識し、RR間隔を1心拍として認識する。このとき、R波以外の極大値であるT波成分(R波より周波数が低い)を、ローカットフィルタを利用して除去してもよい。
【0086】
(2)P波:R波の位置から200〜300msec(ミリ秒)前の位置に存在する極大値をP波と認識する。
【0087】
(3)Q波:R波の位置の直前に存在する極小値をQ波と認識する。
【0088】
(4)S波:R波の位置の直後に存在する極小値をS波と認識する。
【0089】
(5)T波:R波と次のR波の間に存在する極大値をT波と認識する。
【0090】
(6)ST部:心電図上においてS波とT波との間を直線補間した場合に、その間の極大値成分となる部分をST部と認識する。
【0091】
なお、心電図測定中の被験者の動作等によっては、心電図波形中に異常な周期を有する高周波ノイズが生じてしまい、認識値データの抽出が正確に行われ難い場合も多い。そのような高周波ノイズを除外して正確な認識値データをとる方法として、例えば、特開平6−261871に開示されている技術を利用してもよい。
【0092】
図7は、図4の生体情報計測シャツ301に類似の構成による生体情報計測シャツを用いて得られた心電図測定結果例を示す図である。図では、標準肢誘導(第I誘導,第II誘導,第III誘導),aV誘導(aVR,aVL,aF),胸部誘導(V1,V2,V3,V4,V5,V6)の12種類の誘導毎に心電図が測定された例を示す。
【0093】
3−4.実施形態による効果
実施形態では、被験者の胸部前面付近に配置されうる縦長形状の胸部用電極を採用している(図4等参照)。したがって、被験者毎の体格の相違、あるいは心電図測定中における被験者体内での心臓移動等があった場合であっても、広い面積を有する縦長形状の胸部用電極によって心電位の取得可能性を高めることができる。
【0094】
実施形態では、生体情報計測用衣服として、生体情報計測シャツ300を採用している。また、生体情報計測シャツ300は伸縮性を有する繊維で構成されるから、被験者の上半身に密着する結果、電極等の位置決め、方向性の確認が容易である。さらに、測定毎に類似の生体情報計測シャツを利用することで、被験者の体型に対する電極等の位置が測定毎に異なってしまう可能性を抑えることもできる。
【0095】
実施形態では、四肢誘導に相当する位置に、従来の電極よりも大きい面積を有する四肢電極部を配置している。したがって、四肢誘導の心電図を安定して取得することができる。
【0096】
実施形態では、図4に示す四肢電極部および胸部電極部は、織り部371よりも肉厚となるものを例示した。各電極の厚みはこれに限らず、被験者の体表面に接触する程度の厚みがあればよい。ただし、織り部371よりも肉厚とすると同時にシャツ部350の伸縮度を高めることによって体表面への密着度を増加させ、体表面における電極の移動を抑える(ノイズを減少させる)のが好ましい。また、心電図の測定感度の向上の点では、導電性を高くする(電極自身の抵抗を減少させる)ために各電極部を肉厚にするのが好ましい。
【0097】
3−5.第1実施形態のバリエーション
(1)生体情報計測シャツ301の形状バリエーション
図8は、第1実施形態の生体情報計測シャツ301の変形例である。図8Aは、胸に巻く形状を有する生体情報計測用衣服としての衣類380(着用状態)を示す。衣類380は、生体情報計測シャツ301と同様に、非導電性繊維に対して被験者の体表面側に胸部電極部381が編み込まれている。この場合、別途四肢誘導用電極(ただし、図4Aに示す四肢電極部(351、352、361、362)に限らない)を被験者に対して取り付ける必要がある。
【0098】
図8Bは、胸部電極部を単一電極部とした、生体情報計測シャツ301と同様の生体情報計測シャツ382(着用状態)を示す。生体情報計測シャツ382は、生体情報計測シャツ301と同様に、非導電性繊維に対して被験者の体表面側に胸部電極部383が編み込まれている。胸部電極部383は、生体情報計測シャツ382において、着用時に被験者の心臓前面の肋骨領域を覆う位置に配置される。具体的には、胸部電極部383は、体軸垂直方向については被験者の胸骨前部付近の体表面から胸側部付近の体表面を覆い、体軸方向については第4肋骨付近の体表面から第6肋骨付近(または第7肋骨付近、または第8肋骨付近、または肋骨下縁付近)の体表面を覆う位置に配置される。
【0099】
図8Bは、胸部電極部として単一電極となるものを例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、2個、または3個、または4個、または5個の胸部電極部を採用してもよい。
【0100】
実施形態では、被験者として男性大人が着用することを前提とした生体情報計測シャツ301を例示したが、女性用または子供用の場合、それらの体型に合致する寸法に変形すればよい。その他、生体情報計測用衣服として、シャツ以外の下着、または女性用下着(ブラジャー等)、またはパジャマ(寝間着)、またはポロシャツ等に適した形状を採用してもよい。
【0101】
(2)胸部電極部および(または)四肢電極部の導電性素材のバリエーション
第1実施形態では、胸部電極部および四肢電極部として機能する導電性素材として銀粒子を付着した繊維(導電性繊維)を利用する例を示したが、その他の導電性素材を利用してもよい。例えば、銀粒子以外の導電性物質を付着した繊維、またはシャツ部350に対する金属めっき、または導電性フィルム基板(または導電性プリント基板)の貼り付け、または導電性インクの利用、またはフラーレン蒸着等の手段によって、胸部電極部および(または)四肢電極部を構成してもよい。なお、結線についても、上述のような導電性繊維以外の導電性素材を採用してもよい。
【0102】
その他、生体情報計測シャツ301の前面にアース(0電位)に接続可能なシールドを貼り付ける(または編み込む)ことによって、生体電流以外のノイズの影響を抑えるようにしてもよい。具体的には、コネクタ302の一部をアース端子として設定し、貼り付けたシールドをそのアース端子に接続する。シールドの例示として、表地が綿100%、裏地が電磁波シールド布(ポリエステルモノフィラメント、ニッケル、アクリル皮膜の三層構造の特殊繊維等)の組み合わせ等が挙げられる。
【0103】
(3)生体情報計測シャツ301の織り方のバリエーション
実施形態では、生体情報計測シャツ301を二重織りで形成する例を示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、一重織り、または三重織り等の任意の織り方を採用してもよい。
【0104】
(4)コネクタの構成バリエーション
実施形態では、コネクタ連結部363とコネクタ302とを貼り合わせることによって各電極と解析装置100とを電気的に接続する例を示したが、これに限られるものではない。コネクタ連結部363とコネクタ302とを接続する手段として、所定の嵌合形状を採用してもよい。具体的には、コネクタ連結部363における結線端部を金属プラグとし、一方のコネクタ302にはそれら金属プラグが差し込まれるためのジャックを備える。
【0105】
−−4.第2実施形態(心電図計測処理)−−
4−1.生体情報計測シャツ
第2実施形態における生体情報計測シャツを説明する。第2実施形態は、被験者毎の体型の相違、または体動等の原因により、胸部誘導電極が不適切な配置となる問題点を解消するものである。第2実施形態における生体情報計測シャツは、第1実施形態における生体情報計測シャツ301と同様の構成である。したがって、以下の説明では第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0106】
図9は、第2実施形態による生体情報計測シャツ400の全体図である。生体情報計測シャツ400の胸部用電極は、胸部用電極401、402、403、404、405、406、407、408の合計8個の電極によって構成される。ここでは、コネクタ類の説明を省略する。第2実施形態における四肢誘導用電極としては、第1実施形態で説明した四肢用電極に限らず、一般的な銀/塩化銀電極を採用してもよい。
【0107】
図9に示すように、胸部用電極401、402、403、404、405、406による6電極の組み合わせを胸部誘導セット1、胸部用電極402、403、404、405、406、407による6電極の組み合わせを胸部誘導セット2、胸部用電極403、404、405、406、407、408による6電極の組み合わせを胸部誘導セット3とする。被験者の体軸垂直方向に関する胸部誘導セット1、2、3の配置は、例えば以下のように表現することができる。ただし、被験者毎の体型の相違、または体動等の可能性に応じて、胸部電極部が覆う範囲および(または)胸部電極部の数を変更してもよい。
【0108】
・胸部誘導セット1:被験者の胸骨前部から1胸部電極分ほど右胸側部側に移動した付近から、胸側部付近までの体表面を覆う位置。
【0109】
・胸部誘導セット2:被験者の胸骨前部付近から、左胸側部付近までの体表面を覆う位置(第1実施形態における胸部電極部の配置と同様)。
【0110】
・胸部誘導セット3:被験者の胸骨前部付近から、左胸側部から1胸部電極分ほど左胸側部側に移動した付近までの体表面を覆う位置。
【0111】
4−2.心電図計測処理
図10に基づいて、第2実施形態における解析装置100のCPU10が実行する心電図計測処理のプログラムのフローチャートを説明する。
【0112】
CPU10は、心電図計測処理を開始するとともにタイマをスタートする(ステップS201)。CPU10は、被験者の体表面に接触する胸部電極401〜408および増幅アンプ11等を介して胸部誘導の心電図を測定し、各胸部誘導毎に心電位をメモリ16に記録する(S203)。CPU10は、各胸部誘導毎に1心拍の波形を認識できたか否かを判断する(S205)。このステップS205の判断は、第1実施形態において説明した処理と同様である。S205において1心拍の波形を認識できなかったと判断した場合には、CPU10は再びS203からの処理を繰り返す。
【0113】
一方、S205において1心拍の波形が認識できたと判断した場合には、CPU10はタイマ値が30秒以上であったか否かを判断する(S207)。タイマ値が30秒以上でない場合には、CPU10は、選択された胸部誘導セットの心電位を心電図波形としてディスプレイ出力するための心電図データに基づいて、心電図波形(心電図グラフ)をディスプレイ14に表示する(S213)。実施形態では、胸部誘導セットの初期設定として、例えば図9の胸部誘導セット1が選択されるものとする。
【0114】
図13は、第2実施形態による心電図計測処理中のディスプレイ14の画面表示例である。図13Aは、S213の処理における胸部誘導の心電図波形の画面表示例である。測定位置ガイド480は、現在測定中の胸部誘導セットの名称と、(被験者の体型模式図(体型イメージ図)における)その胸部誘導セットに対応する胸部電極部の位置とを示す。具体的には、測定位置ガイド480は、現在、図9の胸部用電極部401、402、403、404、405、406に基づく心電図波形(胸部誘導セット1に基づく心電図波形)が表示されていることを示すために、被験者上半身の模式図中に、対応する電極位置をハイライト表示(強調表示)している。実施形態では、被験者上半身(被験者の体型)の模式図を例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、生体情報計測シャツの模式図を示してもよい。また、模式図(イメージ図)の表現方法は、当業者に周知の手段によって任意に変形可能である。
【0115】
CPU10は、ディスプレイ14に表示していない心電図データ(未処理データ)が有るか否かを判断する(S215)。未処理データが有ったと判断した場合には、CPU10はS203からの処理を繰り返す。
【0116】
S207の処理において、タイマ値が30秒以上であったと判断した場合には、CPU10は、S209の胸部誘導セット選択処理を実行する。
【0117】
図11は、図10のS209においてサブルーチンとして示した胸部誘導セット選択処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、各胸部誘導毎に、図10のS205で認識した心拍のR電位およびS電位のデータを取得することにより、測定範囲内(ここでは30秒間)の各心拍の振幅値を算出する(S250)。振幅値は、演算式:|R電位−S電位|(R電位とS電位との差の絶対値)に基づいて算出する。この振幅値は、図6におけるR−S間隔に対応する。
【0118】
図12Aは、S250においてCPUが演算したRS振幅値の記録内容例450を示す図である。「Data No.」は、測定時間の経過に従ってCPU10が認識する各心拍を特定するための番号である。胸部誘導No.1は、図9の胸部用電極401に基づいて得られる誘導、No.2は胸部用電極402に基づいて得られる誘導、No.3は胸部用電極403に基づいて得られる誘導、No.4は胸部用電極404に基づいて得られる誘導、No.5は胸部用電極405に基づいて得られる誘導、No.6は胸部用電極406に基づいて得られる誘導、No.7は胸部用電極407に基づいて得られる誘導、No.8は胸部用電極408に基づいて得られる誘導を示す。ここでは、心拍番号1501〜1530について、各誘導毎にRS振幅値(単位:mV)がメモリ16に記録される。
【0119】
CPU10は、各胸部誘導毎の振幅値の合計を算出する(S252)。具体的には、CPU10は、各誘導毎に心拍番号1501〜1530の全てのRS振幅値を加算する。図12Bは、S252においてCPUが演算したRS振幅値合計の記録内容例452を示す図である。
【0120】
CPU10は、胸部誘導セット1(誘導No.1〜6)の振幅値の合計を算出する(S254)。CPU10は、胸部誘導セット2(誘導No.2〜7)の振幅値の合計を算出する(S256)。CPU10は、胸部誘導セット3(誘導No.3〜8)の振幅値の合計を算出する(S258)。図12Cは、S254、S256、S258においてCPUが演算したRS振幅値合計の記録内容例454を示す図である。
【0121】
CPU10は、振幅値の合計が最大である胸部誘導セットを判断する(S260)。胸部誘導セット1が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット1を選択する(S262)。胸部誘導セット2が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット2を選択する(S264)。胸部誘導セット3が最大であったと判断した場合には、CPU10は胸部誘導セット3を選択する(S266)。ここでは、図12Cに示すように胸部誘導セット2のRS振幅値合計(111.05)が最大であったと判断され、CPU10はS264の後、図10のS211からの処理を行う。
【0122】
CPU10は、S209の処理の後、タイマをリセットおよび再度スタートして(S211)、S213の処理を実行する。ここでは図11のS264の処理において選択された胸部誘導セット2の心電図データに基づいて、心電図波形をディスプレイ14に表示する。図13Bに示すように、測定位置ガイド481は、現在、図9の胸部用電極部402、403、404、405、406、407に基づく心電図波形(胸部誘導セット2に基づく心電図波形)が表示されていることを示すために、被験者上半身の模式図中に、対応する電極位置をハイライト表示(強調表示)している。CPU10は、S215において未処理データが無いと判断した場合には、処理を終了する。
【0123】
4−3.実施形態による効果
以上の胸部誘導セット選択処理により、CPU10は、複数の胸部用電極から得られる情報について、RS振幅値が大きいものを選択したうえで、その選択したものを心電図の出力の基礎にする。したがって、例えば被験者毎の体格の相違(心臓位置の相違)や、被験者の運動による心臓移動にもかかわらず、適切な胸部誘導を選択することができる。
【0124】
4−4.第2実施形態のバリエーション
(1)生体情報計測シャツ400のバリエーション
図14は、第2実施形態の生体情報計測シャツ400の変形例である。生体情報計測シャツ420は、被験者の胸部全体の体表面に胸部用電極が配置されるように構成されている。具体的には、被験者の左胸側部付近から、右胸側部付近の体表面を覆う位置について、合計12個の胸部用電極が配置される。図面に向かって右側6個の胸部用電極を胸部誘導セット1とし、図面に向かって左側6個の胸部用電極を胸部誘導セット2とする。また、心電図計測処理は、図10、図11に示すプログラムのフローチャートと同様の処理を行う。
【0125】
この変形例により、解析装置100は、心電図の振幅値(例えばRS振幅値)が大きい胸部誘導セットを選択したうえで、それらの心電図波形をディスプレイに表示することができる。この変形例においては、例えば心臓が左側にある被験者だけでなく、心臓が右側にある被験者の心電図測定にも対応することができる。
【0126】
(2)胸部誘導セット選択処理のバリエーション
第2実施形態では、図9の胸部誘導セット1〜3の胸部用電極の組み合わせの中から、RS振幅値の合計値の大きいものを選択することとしたが(図11ステップS260参照)、これに限られるものではない。胸部誘導セット選択処理のその他の実施形態として例えば次のようなバリエーションを採用してもよい。
【0127】
・胸部誘導毎の選択処理: 胸部誘導セット毎ではなく、各胸部用電極に基づく誘導毎に選択処理を行う。図9に示す生体情報計測シャツ400の場合、最大8誘導を取得して、RS振幅値が大きいものから順に6個の誘導を選択する。
【0128】
・RS振幅値の基準値による誘導の選択: 各胸部誘導セット(または各胸部用電極に基づく誘導)の中から、RS振幅値が所定の基準値(例えば0.5mV以上)を超えるもののみを選択する。
【0129】
その他、図12のS250においてCPU10がRS振幅値の計算対象とする測定範囲(実施形態では30秒間)は任意の範囲に変更可能である。
【0130】
例えば、1心拍毎に図11の胸部誘導セット選択処理を実行するようにしてもよい。また、RS振幅値の演算手法は、第2実施形態で説明した合計値を算出する場合のほか、平均値を算出する等の任意の手法に変更可能である。心拍の振幅値としてR値とS値の差を例示したが、これに限られるものではなく、その他の値(例えばR値とQ値の差、またはR値の絶対値等)を採用してもよい。
【0131】
−−5.第3実施形態(呼吸値計測処理)−−
5−1.生体情報計測シャツ
第3実施形態における生体情報計測シャツ500を説明する。生体情報計測シャツ500の全体図は、図16Aに示す。第3実施形態は、呼吸値を計測するための構成を備えている。生体情報計測シャツ500のコネクタ類、シャツ部、接続される解析装置100等は第1実施形態と同様である。したがって、以下の説明では第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0132】
図15Aは、第3実施形態における生体情報計測シャツ500の部分図である。具体的には、図15Aは、生体情報計測シャツ500の製造工程における裁断前の前身ごろ(胸側)を示す。生体情報計測シャツ500は、伸縮性を有する非導電性繊維によって構成されるシャツ部550と、後述するセンサとによって構成される。具体的には、シャツ部550に対して、導電性繊維で形成された胸部呼吸情報センサ502、腹部呼吸情報センサ504が編み込まれている。ここでは、導電性繊維の例示として、金属粒子(例えば銀粒子、または銅粒子、または硫化銅粒子等)を付着(例えば化学結合等による)した繊維(例えば、日本蚕毛染色株式会社のサンダーロン(Thunderon)(登録商標)等)を利用したものを実施形態とする。
【0133】
胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、導電性素材による結線によって、各結線の端部の集合としてのコネクタ連結部に接続される。実施形態では、結線およびコネクタ連結部363の例示として、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504と同様の導電性繊維を採用する。胸部呼吸情報センサ502は、その一端が結線554によってコネクタ連結部506と接続され、他の一端が結線552によってコネクタ連結部506と接続される。腹部呼吸情報センサ504も同様に、結線によってコネクタ連結部506と接続される。
【0134】
図15Aに例示する生体情報計測シャツのシャツ部550における胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、着用時に被験者の呼吸動作によって伸縮が大きくなる箇所に配置するのが好ましい。具体的には、例えば被験者の呼吸動作による胸囲長の変動(胸郭の周長変動)、腹囲長の変動が大きくなることが予想される箇所が好適である。なお、生体情報計測シャツ500は、被験者の呼吸動作によって主に被験者の体軸垂直方向(胸囲方向)に伸縮する。したがって、シャツ部550は、被験者の体軸垂直方向(胸囲方向)への伸縮率が、被験者の体軸方向(シャツの身丈方向)への伸縮率よりも大きくなるように形成するのが好ましい。
【0135】
図15Bは、図15AのA−A方向の部分断面を示す図である。実施形態では、例示として生体情報計測シャツを二重織りで形成する。シャツ部550は、非導電性繊維の織り部560および織り部561を重ねて1枚の織物として織っている。織り部560と織り部561との間に、胸部呼吸情報センサ502が編み込まれる。結線552および結線554は、それぞれ胸部呼吸情報センサ502の両端に編み込まれる。腹部呼吸情報センサ504およびそこから接続される結線も同様の二重織りで構成される。
【0136】
図15Cは、図15AのB−B方向の部分断面を示す図である。織り部560におけるコネクタ連結部506に接する部分は、その繊維の一部が結線の端部とされる。コネクタ連結部506は、織り部560に対して接するように編み込まれる。各センサ部から配線される結線は、シャツ部550において織り部560と織り部561との間に挟みこまれる位置にて編み込まれ(図15B参照)、コネクタ連結部506に接する部分では織り部560の一部として編み込まれることによってコネクタ連結部506と電気的に接続可能となっている。
【0137】
生体情報計測シャツの製造工程は、例えば(1)胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の編み込みを含めたシャツ部550の形成、(2)(1)を裁断して前身ごろを形成、(3)後身ごろ、袖、襟等の形成、(4)前身ごろ、後身ごろ、袖、襟の後身ごろの各部を縫製、の順番に行う。なお、「(1)胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の編み込みを含めたシャツ部550の形成」の製造工程は、例えば、当業者に周知な手作業による編み込み、またはコンピュータ制御による編み装置等を利用すればよい。
【0138】
5−2.生体情報計測シャツ500(全体図)
図16Aは、上記のシャツ部550を含めて製造される生体情報計測シャツ500の全体図である。生体情報計測シャツ500は、胸部呼吸情報センサ502、腹部呼吸情報センサ504、コネクタ連結部506を備える。コネクタ連結部506は、各センサの両端と電気的に接続されるように4個の結線端部を有している。コネクタ508は、それら4個の各結線端部と電気的に接続されるための4個の電気端子を有している。コネクタ連結部506は、コネクタ508に対して接触されることによって電気的に接続される。コネクタ連結部506とコネクタ506との接続は、面ファスナー等を利用した周知の手段によって行う。
【0139】
図16Bは、被験者が生体情報計測シャツ500を着用した状態を示す図である。生体情報計測シャツ500を利用した呼吸値計測を行う際には、生体情報計測シャツ500のコネクタ連結部506にコネクタ508を接続させる。コネクタ508は、電源コード510を介して解析装置100に接続される。
【0140】
5−3.呼吸値計測
以上説明した第3実施形態による生体情報計測シャツ500を利用して、呼吸値の計測を行う。呼吸値の計測は、例示として以下のような手順で行われる。
【0141】
被験者が生体情報計測シャツ500(図16参照)を着用した後、コネクタ連結部506にコネクタ508を接続させる。コネクタ508は、図3に示すコネクタ302と同様の構成による。コネクタ508は、電源コード510を介して解析装置100に接続する(図3参照)。
【0142】
電源20から、電源コード510、コネクタ508、コネクタ連結部506を介して、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504に対して一定の電流(例えば10マイクロアンペア等の微少電流)を流す(微少電流の印加)。
【0143】
被験者の呼吸動作に基づいて、被験者の胸囲周辺または腹囲周辺の体型が変動する。この体型の変動は、例えば胸囲長および(または)腹囲長の変動を含むのが一般的である。この体型の変動に従って、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の形状が変動する。各センサの形状の変動は、例えばセンサの横方向(胸囲方向または腹囲方向)の長さの変動を含むのが一般的である。
【0144】
胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、例示として金属粒子を付着した導電性繊維によって構成される。したがって、電源20によって通電状態とされる胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504は、被験者の呼吸動作に伴うセンサ形状の変動に応じて、金属粒子同士の接触数(または接触面積、または単位体積当たりの金属粒子密度)が増加または減少し、各センサの有する電気的抵抗値が変化する。例えば、胸囲長(または腹囲長)が長くなった状態では金属粒子同士の接触数が減少して電気的抵抗値が上がり(電流が流れにくくなる)、胸囲長(または腹囲長)が短くなった状態では金属粒子同士の接触数が再び増加して電気的抵抗値が下がる(電流が流れやすくなる)。なお、金属粒子の付着によらない導電性繊維の場合は、被験者の呼吸動作に伴う導電性繊維の長さ(または断面積)の伸縮によって、各導電性繊維の抵抗値が変化する。なお、生体情報計測シャツ500のシャツ部550は、上述したように伸縮性を有する非導電性素材によって形成される。被験者の呼吸動作に伴うセンサ形状の変動量を大きくするために、シャツ部550は被験者の上半身(特に胸囲付近(または腹囲付近))に密着する程度の充分な伸縮性を有するのが好ましい。その他、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の面積を大きくすることによって呼吸値の検出感度を向上させるようにしてもよい。
【0145】
抵抗値センサ21(図3)は、胸部呼吸情報センサ502および(または)腹部呼吸情報センサ504の抵抗値の変動を検知する。検知された抵抗値の変動は、フィルタ22を介してノイズ除去された後、A/D変換12によってデジタルデータ(抵抗値データ)に変換される。
【0146】
図17は、解析装置100のメモリ16等に記録された抵抗値データを模式的にグラフによって表したものである。図では、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504のいずれか一方の抵抗値の変動が周期的に生ずるものとして示した。抵抗値の変動は、抵抗値周期部分590、抵抗値振幅部分591等によって定義される。
【0147】
解析装置100のCPU10は、抵抗値のデータに基づいて抵抗値の変動の周波数を算出し、その結果に基づいて呼吸値を出力する。具体的には、例えば抵抗値の変動の周波数が1分間当たり15回であれば、呼吸数を15(回/1分間)とする。解析装置100は被験者の呼吸数等の情報をディスプレイ14に出力する。なお、実施形態では抵抗値の変動を検知することとしたが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、解析装置100は、各センサの電流値(または各センサの電圧値)を検知することによって電流(または電圧)の変動周期を算出し、その結果に基づいて呼吸値(または呼吸数の推定値、以下同じ)を出力するようにしてもよい。
【0148】
実施形態では、呼吸値を取得するために胸部呼吸情報センサ502および腹部呼吸情報センサ504の二つの手段を採用する例を示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、胸部呼吸情報センサ502または腹部呼吸情報センサ504のいずれか一方のみからの情報に基づいて呼吸値を取得するようにしてもよい。一般的には、被験者の呼吸動作によって胸囲長の変動が大きければ胸部呼吸情報センサ502を採用し、腹囲長の変動が大きければ腹部呼吸情報センサ504を採用する。その他、解析装置100は、2つのセンサに基づいて2つの呼吸値の情報を併せて出力するようにしてもよいし、所定の判定手段(例えば呼吸値の大きい方を選択する等)によっていずれか一方の呼吸値の情報のみを出力するようにしてもよい。
【0149】
5−4.実施形態による効果
実施形態では、生体情報計測シャツ500に配置される胸部呼吸情報センサ502(または腹部呼吸情報センサ504)からの信号に基づいて呼吸値を計測することができる(胸部または腹部の運動に伴うセンサ部の形状の変化を呼吸運動変化として検出)。したがって、簡易な構成でありながら、被験者に対する負荷も少ない状態で呼吸値を計測することができる。
【0150】
実施形態では、図15Bに示すように、非導電性の伸縮性素材である織り部560と織り部561との間に、胸部呼吸情報センサ502(または腹部呼吸情報センサ504)が編み込まれる。したがって、被験者は各センサに接触することもないので、被験者に対する電気的影響を抑えることができるとともに、抵抗値に対するノイズの影響も抑えることができる。
【0151】
5−5.第3実施形態のバリエーション
図18〜図20は、第3実施形態の生体情報計測シャツ500の変形例である。図18に示す生体情報計測シャツ570は、被験者の胸部付近に複数の導電性素材断片の集合である胸部呼吸情報センサ571を備えている。具体的には、胸部呼吸情報センサ571は、被験者の胸囲長が最小である状態(吐き出し状態等)では各導電性素材断片同士が接触しており、胸囲長の増加状態(吸い込み状態等)では断片同士が離れるような位置(または各断片の接触面積が減少する位置)に配置する。導電性素材センサ571は、例えば導電性フィルム基板等によって形成する。被験者の呼吸動作に伴い、導電性素材の断片の全部または一部が接触および非接触を繰り返すこととなり、その結果、胸部呼吸情報センサ502の電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。胸部呼吸情報センサ571は、胸部付近に限らず、腹部付近に配置してもよい。その他、導電性素材センサ571は、被験者の胸囲方向に各導電性素材断片を並列する形状に限らず、各導電性素材断片をジグザグ形(稲妻形)に配置する形状にしてもよい。
【0152】
図19Aに示す生体情報計測シャツ575は、被験者の腹部付近に複数の導電性素材断片の集合である腹部呼吸情報センサ576を備えている。具体的には、腹部呼吸情報センサ576は、被験者の腹囲長が短い状態では各導電性素材断片同士の接触面積が大きい状態であり、腹囲長が長い状態状態では断片同士の距離が離れてそれらの接触面積が小さい状態となるような位置に配置する。生体情報計測シャツ575は、例示として二重織りで形成される。
【0153】
図19Bは、図19AのE−E方向の部分断面を示す図である。生体情報計測シャツ575は、非導電性素材の織り部577および織り部578を重ねて1枚の織物として織られている。織り部578は、被験者の体表面に接触する側である。腹部呼吸情報センサ576における導電性素材の各断片の一部は、織り部578に貼りあわされることによってアンカー部(支え部)として機能し、そのアンカーに対して導電性翼部(板部)が貼りあわされる。導電性板翼部は、隣接する他の導電性板翼部に対して接触する。導電性素材センサ576(またはその導電性翼部)は、例えば導電性フィルム基板等によって形成する。被験者の呼吸動作に伴い、導電性素材断片(導電性翼部)の全部または一部が、隣接する導電性素材断片の接触面積が変動する。その結果、腹部呼吸情報センサ576の電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。腹部呼吸情報センサ576は、腹部付近に限らず、胸部付近に配置してもよい。
【0154】
上記実施形態では、導電性翼部(アンカー部を含む)を織り部578に貼り合わせているが、導電性翼部(アンカー部を含む)を導電性繊維を編み込むことによって形成してもよい。この場合、編み込んだだけでは、広がった翼の面積が確保できず、翼の厚みが大きくなるので、翼になる部分を熱によって平坦にする加工を行うとよい(カレンダー加工)。
【0155】
図20に示す生体情報計測シャツ580は、被験者の胸囲方向に胸部呼吸情報センサ581、腹部付近の体軸方向(身丈方向)に腹部呼吸情報センサ582を備えている。生体情報計測シャツ580に対する各センサの編み込み、各センサの素材等は、第3実施形態におけるものと同様である。被験者の呼吸動作に伴い、胸部呼吸情報センサ581または腹部呼吸情報センサ582が伸縮を繰り返すこととなり、その結果、各センサの電気的抵抗値が変動する。解析装置100は、その抵抗値変動に基づいて呼吸値を取得する。解析装置100は、2つのセンサに基づいて2つの呼吸値の情報を併せて出力するようにしてもよいし、所定の判定手段(例えば呼吸値の大きい方を選択する等)によっていずれか一方の呼吸値の情報のみを出力するようにしてもよい。
【0156】
−−6.第4実施形態(呼吸値
計測処理(心電図R波解析併用))−−
6−1.生体情報計測シャツ
第4実施形態における生体情報計測シャツを説明する。第4実施形態は、第3実施形態による呼吸値計測処理と、心電図のR波解析とを組み合わせることにより、呼吸値計測の信頼性を向上させるものである。第4実施形態における生体情報計測シャツは、第1実施形態の生体情報計測シャツ301における胸部電極部および四肢電極部(図4A参照)と同様の胸部電極部および四肢電極部、および第3実施形態の生体情報計測シャツ500における胸部呼吸情報センサ502(図15A参照)と同様の胸部呼吸情報センサを備えている。したがって、以下の説明では第1実施形態および第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0157】
図21は、第4実施形態による生体情報計測シャツ600の全体図である。生体情報計測シャツ600は、胸部誘導セット603、四肢誘導セット604、胸部呼吸情報センサ601、腹部呼吸情報センサ602を備えている。胸部誘導セット603、四肢誘導セット604は、第1実施形態および第2実施形態で説明したものと同様であり、6個の胸部誘導用電極と4個の四肢誘導用電極とによって構成される。胸部呼吸情報センサ601および腹部呼吸情報センサ602は、第3実施形態で説明したものと同様である。ここでは、コネクタ類の説明を省略する。なお、四肢誘導用電極は、四肢誘導セット604に限らず、一般的な銀/塩化銀電極を採用してもよい。
【0158】
6−2.呼吸値計測処理
図22〜図24に基づいて、第4実施形態における解析装置100のCPU10が実行する呼吸値計測処理のプログラムのフローチャートを説明する。
【0159】
解析装置100のCPU10は、呼吸値計測処理を開始するとともにタイマをスタートする(ステップS400)。CPU10は、胸部呼吸情報センサ601および腹部呼吸情報センサ602を介して、抵抗値データ(呼吸値データ)を取得してメモリ16に記録する(S402)。このS402の処理は、第3実施形態において説明した呼吸値計測処理と同様である。
【0160】
CPU10は、被験者の体表面に接触する胸部誘導セット603、四肢誘導セット604及び増幅アンプ11を介して胸部誘導の心電図を測定し、各胸部誘導毎に心電図データをメモリ16に記録する(S404)。CPU10は、各胸部誘導毎に1心拍の波形を認識できたか否かを判断する(S406)。このステップS406の判断は、第1実施形態において説明した処理と同様である。S406において1心拍の波形を認識できなかったと判断した場合には、CPU10は再びS402からの処理を繰り返す。
【0161】
一方、S406において1心拍の波形が認識できたと判断した場合には、CPU10はタイマ値が10秒以上であったか否かを判断する(S408)。タイマ値が10秒以上でない場合には、CPU10は再びS402からの処理を繰り返す。
【0162】
S408の処理においてタイマ値が10秒以上であると判断した場合には、CPU10は、タイマをリセットおよび再度スタートして(S410)、抵抗値データに対するフィルタ処理を行う(S412)。具体的には、例えばデジタルフィルタ処理(バンドパスフィルタ処理)により、CPU10は、周波数帯域0.1Hz〜3Hzにおける振幅10Ω(オーム)以上を基準とした抵抗値データの波形解析を行う。CPU10は、S412の処理に基づいて抵抗値の変動周期および抵抗値の振幅の各データを取得してメモリ16に記録する(S414)。
【0163】
CPU10は、S406で認識した心拍のR波高データに対するフィルタ処理を行う(S416)。具体的には、例えばデジタルフィルタ処理により、CPU10は、周波数帯域0.1Hz〜3Hzにおける振幅0.05mV以上を基準としたR波高データの波形解析を行う。R波高データは、CPU10が認識した各R波の電位(R波高)の時間的な変化を示すデータである。実施形態では、例示としてR波高データの時間的な変化を波形として扱うものとしている。CPU10は、S416の処理に基づいてR波高の変動周期およびR波高の振幅の各データを取得してメモリ16に記録する(S418)。
【0164】
R波高の変動周期は、R波高の時間的変化を波形で表した場合、例えば所定時間内の極大点の数を基準にして算出される。一般的に、被験者の呼吸動作に応じてR波高が変動する場合があることが知られている。実施形態では、呼吸数を推定するために利用可能なファクタとして、胸部呼吸情報センサ502等の抵抗値の変動周期に加えて、R波高の変動周期を採用することとしている。
【0165】
CPU10は、呼吸推定値決定処理を実行する(S500)。
【0166】
図23は、図22のS500においてサブルーチンとして示した呼吸推定値決定処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、抵抗値周期の平均値(以下、説明の便宜上「A1」とも表示する。)、抵抗値振幅の平均値(以下、説明の便宜上「A2」とも表示する。)を算出してメモリ16に記録する(S502)。
【0167】
CPU10は、R波高周期の平均値(以下、説明の便宜上「B1」とも表示する。)、R波高振幅の平均値(以下、説明の便宜上「B2」とも表示する。)を算出してメモリ16に記録する(S504)。
【0168】
なお、第4実施形態においては、図21に示す複数の胸部誘導電極および四肢誘導電極に基づいて複数のR波高に関するデータが得られ、胸部呼吸情報センサ601および602の両者に基づいて複数の抵抗値に関するデータが得られる。以下の説明では、CPU10が、複数のR波高に関するデータの中から1つのR波高に関するデータを選択し、また、複数の抵抗値に関するデータの中から1つの抵抗値に関するデータを選択したものとして説明する。複数の胸部誘導電極から得られるR波高データの中から1つの誘導のR波高データを選択する処理、および胸部呼吸情報センサ601および602の抵抗値データの中のいずれかの抵抗値データを選択する処理は、例えば、S414、S418の処理で得られる各振幅の合計値が大きいものを採用するようにすればよい。具体的には、S414において、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値の合計が12であり、胸部呼吸情報センサ602由来の抵抗値の合計が11.5であった場合には、CPU10は、胸部呼吸情報センサ601由来の抵抗値に関するデータのみについてS500以降の処理を行う。その他、複数の胸部誘導電極および四肢誘導電極から得られるR波高データの中から1つの誘導のR波高データを選択する処理については、第2実施形態の心電図計測処理における図11のステップS250で得られるRS振幅値(またはS252で得られるRS振幅値合計)を利用してもよい。具体的には、各胸部誘導毎に所定時間範囲のRS振幅値の合計を演算し、その合計が最も大きい胸部誘導由来のR波高データを選択してS418以降の処理を行うようにすればよい。
【0169】
図25Aは、S418の処理後において抵抗値周期、抵抗値振幅、R波高周期、R波高振幅、及びそれらの平均値を記録したメモリ16の記録内容例を示す図である。「Data No.(データ番号)」は、各周期を特定する番号である。CPU10は、メモリ16内に、例えばミリ秒単位で抵抗値データおよびR波高データを記録し、両者の極大値の位置(または極小値の位置)の差が200ミリ秒以内であるものに関する情報(周期、振幅等)を、図25Aに例示するテーブルにおける同一のデータ番号のカラムに記録する(極大値の位置、極小値の位置等に関する記録内容は、図26参照)。抵抗値周期およびR波高周期は、例示として1秒間当たりの波形の振動数(単位:ヘルツ)で示す。
【0170】
CPU10は、A1=0であったか否か、およびB1=0であったか否かを判断する(S506)。A1=0およびB1=0であった場合には、CPU10は、呼吸推定値として「推定不能」を記録(S508)して図22のS422からの処理を行う。A1(抵抗値周期)=0、B1(R波高周期)=0の場合とは、図22のS412、S416の各フィルタ処理において、波形解析結果として周期が得られなかった場合に該当する。具体的には、例えば抵抗値の場合、被験者の体動によって3Hz以上の周波数帯域の信号が強調された結果、周波数帯域0.1〜3kHzの間に10Ω変動以上の振動を含む波形が解析できないときに抵抗値周期=0となる。
【0171】
S506の処理において、B1=0(A1は0ではない)の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録(S510)して、図22のS422からの処理を行う。S506の処理において、A1=0(B1は0ではない)の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「B1」を記録(S512)して、図22のS422からの処理を行う。この処理によって、抵抗値またはR波高の情報のいずれか一方が有効であれば、有効な方の情報が呼吸推定値として採用される。
【0172】
S506の処理において、A1およびB1が0でない場合には、CPU10は、A1とB1が等しかったか否かを判断する(S514)。A1=B1の場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録(S518)して図22のS422からの処理を行う。
【0173】
S514の処理において、A1=B1でなかったと判断した場合には、CPU10は、後述する「単位変換基準」がメモリ16に記録されていたか否かを判断する(S516)。単位変換基準がメモリ16に記録されていたと判断した場合には、CPU10は、A2(またはB2)の単位変換処理を行う(S522)。この単位変換処理の詳細は後述する。
【0174】
S516の処理において単位変換基準がメモリ16に記録されていなかったと判断した場合には、CPU10は、S520の単位変換基準取得処理を実行する。
【0175】
図24は、図23のS520においてサブルーチンとして示した単位変換基準取得処理のプログラムのフローチャートである。CPU10は、メモリ16に記録されている抵抗値データ(図22のS402参照)に基づいて、抵抗値の極大値(Ω)とその極大位置(単位:ミリ秒)、抵抗値の極小値(Ω)とその極小位置(ミリ秒)を演算してメモリ16に記録する(S603)。抵抗値データの極大値および極小値等は、図17に示す波形の各周期における極大値および極小値に相当する。
【0176】
CPU10は、メモリ16に記録されているR波高データ(図22のS404参照)に基づいて、R波高の極大値(mV)とその極大位置(ミリ秒)、R波高の極小値(mV)とその極小位置(ミリ秒)を演算してメモリ16に記録する(S605)。S603およびS605の各波形解析は、例えば図22のS412およびS414におけるフィルタ処理等を利用する。なお、図22のS412、S416、図24のS603、S605における波形解析手法は、上述したものに限られず、その他、Wavelet(ウェーブレット)、FFT(高速フーリエ変換)等の当業者に周知の波形解析手法を利用してもよい。
【0177】
図26Aは、CPUが演算した抵抗値(極大値、極大位置(測定時間情報)、極小値、極小位置(測定時間情報))およびR波高(極大値、極大位置、極小値、極小位置)の記録内容例を示す図である。「Data No.」は、個々の呼吸(個々の呼吸動作)を特定するための番号である。
【0178】
CPU10は、測定時間3分以上に相当する間における極大および極小値のデータがメモリ16に記録されたか否かを判断する(S607)。測定時間3分以上に相当するデータが記録されていなかったと判断した場合には、CPU10は、図22のS402からの処理を繰り返す。測定時間3分以上に相当するデータが記録されたと判断した場合には、CPU10は、抵抗値の極大位置とR波高の極大位置との誤差が50ミリ秒以下であり、かつ、抵抗値の極小位置とR波高の極小位置との誤差が50ミリ秒以下である呼吸データを選択する(S609)。図26Aの場合、Data No.「1501」の呼吸データは、極大値誤差4ミリ秒(=|2502(ミリ秒)−2498(ミリ秒)|)、極小値誤差7ミリ秒(=|4402−4395|))であるから選択対象となる。また、「1543」の呼吸データも同様に選択対象となる。なお実施形態では、S607において測定時間3分以上に相当する間における極大および極小値のデータがメモリ16に記録されたか否かを判断することとしたが、その他任意の時間を採用してもよい。また、S609において誤差が「50ミリ秒以下」の呼吸データを選択するものとしたが、これは、抵抗値データの極大位置(または極小位置)と、R波高データの極大位置(または極小位置)とがおおよそ一致するときの呼吸データを選択するための基準である。したがって、両者がおおよそ一致するときの呼吸データを選択する目的範囲内で、「50ミリ秒」以外の任意の時間を採用してもよい。
【0179】
CPU10は、S609で選択された抵抗値データの極大値の平均値(極大平均値)および極小値の平均値(極小平均値)を算出する(S611)。ここでは、図26Aのデータ番号1501、1543を含む呼吸データが選択されているものとする。CPU10は、極大平均値と極小平均値との差を演算し、演算結果を「抵抗値の基準振幅値」としてメモリ16に記録する(S613)。
【0180】
CPU10は、S609で選択されたR波高データの極大値の平均値(極大平均値)および極小値の平均値(極小平均値)を算出する(S615)。CPU10は、極大平均値と極小平均値との差を演算し、演算結果を「R波高の基準振幅値」としてメモリ16に記録する(S617)。図26Bは、S617の処理後においてCPU10が演算した各値の記録内容例を示す図である。
【0181】
CPU10は、抵抗値の基準振幅値と、R波高の基準振幅値との比を「単位変換基準」としてメモリ16に記録する。ここでは例示として、単位変換基準=(抵抗値の基準振幅値)/(R波高の基準振幅値)として演算する。 図26Cは、S619の処理後においてCPU10が演算した各値の記録内容を示す図である。ここでは、抵抗値の基準振幅値=11.2(Ω)、R波高の基準振幅値(0.24mV)、単位変換基準=24が記録されたものとする。
【0182】
CPU10は、S619の処理の後、図23のS522に示すA2(またはB2)の単位変換のための演算を行う。図25Bは、S522の処理後に得られる各値を記録したメモリ16の記録内容例を示す図である。具体的には、図23のS502で算出された抵抗値振幅の平均値(A2)、S504で算出されたR波高振幅の平均値(B2)に加えて、単位変換後のR波高振幅がメモリ16に記録される。単位変換後のR波高振幅は、CPU10が、B2(単位:mV)に対して(単位変換基準取得処理によって得られた)単位変換基準(ここでは47)を乗じることによって算出する。
【0183】
実施形態では、測定を開始して最初の3分以上のデータを利用して単位変換基準を取得することとしたが、これに限られるものではない。その他の実施形態として、所定時間の経過後に単位変換基準取得処理(図24)を実行して単位変換基準を更新し続けるようにしてもよい。
【0184】
実施形態では、単位変換基準として「R波高の基準振幅値」に対する「抵抗値の基準振幅値」の比を採用したが、これに限らず、「抵抗値の基準振幅値」に対する「R波高の基準振幅値」の比を採用してもよい。また、単位変換基準としてあらかじめ固定の係数を設定しておき、単位変換基準取得処理(図24)を省略してもよい。
【0185】
CPU10は、A2が単位変換後のB2以上であったか否かを判断する(S524)。A2が単位変換後のB2以上であったと判断した場合には、CPU10は、呼吸推定値として「A1」を記録する(S526)して、図22のS422からの処理を行う。A2が単位変換後のB2よりも小さかったと判断した場合には、CPU10は、呼吸推定値として「B1」を記録する(S528)して、図22のS422からの処理を行う。以上の単位変換基準取得処理(図23のS520)およびS522、S524、S526、S528の処理により、抵抗値周期の平均値(A2)とR波高周期の平均値(B2)とが相違する場合に、それら両者の中から、それぞれの振幅(所定時間範囲における平均振幅値)が大きいものに対応する方を選択する。抵抗値の振幅またはR波高の振幅が大きいものに対応する方を選択したうえで、その周期を呼吸推定値として採用することにより、一般的には、被験者の呼吸動作を感度良く取得することができる。
【0186】
CPU10は、S500に示す呼吸推定値決定処理の後、メモリ16に記録された呼吸推定値に基づく呼吸数等をディスプレイ14に出力する(S422)。ここでは、呼吸推定値は周期(単位:ヘルツ)であるから、呼吸数(1分間当たり)を出力する場合は、CPU10は呼吸推定値×60を演算する。例えば、図25Bに示すデータの場合、図23のS524の処理においてA2がB2より小さいと判断され、呼吸推定値として「0.25(図25Aに示すR波高周期の平均値)」が記録される。この場合CPU10は、呼吸数として15(=0.25×60)をディスプレイ14に表示する。
【0187】
図27は、第4実施形態による呼吸値計測処理中のディスプレイ14の画面表示例である。呼吸情報表示エリア650には、呼吸数と、その呼吸数を計測する根拠となった位置(計測位置)が表示される。計測位置は、例えば、図21に示す胸部誘導セット603、四肢誘導セット604、胸部呼吸情報センサ601、腹部呼吸情報センサ602の中から、ディスプレイ表示中の呼吸数の由来となったものを表示する。図25Bに示すR波高振幅の由来が腹部呼吸情報センサ602であった場合には、呼吸情報表示エリア650に「計測位置:腹部呼吸情報センサ」を表示する。計測位置の表示はこれに限られず、例えば図13Aの測定位置ガイド480に類似する表示方法(計測位置を被験者の体型模式図に対して物理的に対応付けて表示する方法)を採用してもよい。
【0188】
6−3.実施形態による効果
実施形態では、通電状態における胸部呼吸情報センサ601(または腹部呼吸情報センサ602)の抵抗値変動の情報に加えて、胸部電極部および四肢誘導電極から得られるR波高の変動の情報を利用して呼吸値を計測する。したがって、例えば被験者の体動等を原因として抵抗値変動の情報が呼吸動作を正確に反映していない場合であっても、R波高変動の情報を選択的に利用することによって呼吸値の情報を得ることができる。
【0189】
6−4.第4実施形態のバリエーション
第4実施形態では、呼吸値計測処理の出力内容として「呼吸数」を例示したが、これに限られるものではない。その他の実施形態として「呼吸深度」を出力するようにしてもよい。例えば、図22のステップS414で得られる抵抗振幅値、またはS418で得られるR波振幅の各値は、被験者の呼吸深度に比例するのが一般的である。具体的には、被験者の呼吸深度が高くなると、例えば胸囲長(図21の胸部呼吸情報センサ601の長さ)の変動が大きくなりその結果抵抗振幅値が増加する。したがって、呼吸深度は、被験者の通常状態における抵抗振幅値(またはR波高振幅)に対する、測定時における抵抗振幅値(またはR波高振幅)の割合に基づいて演算することができる。これにより、例えば運動中、または運動後、またはぜんそく状態、または睡眠状態等における呼吸深度の情報を得ることができる。
【0190】
−−7.その他の実施形態等−−
上記説明においては、第1〜第4実施形態を個別の実施例として説明したが、これに限らず、それら各実施形態に含まれる各技術的要素を組み合わせて実施してもよい。例えば、第1(または第2)実施形態と、第3(または第4)実施形態とを組み合わせた実施例の場合、心電図の測定と呼吸値の測定とを同時に行うことができる。
【0191】
上記各実施形態では、CPU10の動作のためのプログラムをF−ROM17に記憶させている。プログラムの記憶場所はこれに限らず、ハードディスク等を含めたその他の記録手段を利用してもよい。CPU10の動作のためのプログラムは、プログラムが記憶されたCD−ROMから読み出してハードディスク等にインストールすればよい。プログラムは、CD−ROM以外に、DVD−ROM、またはフレキシブルディスク(FD)、またはICカード等のコンピュータ可読の記録媒体からインストールするようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてプログラムをダウンロードさせることもできる。また、CD−ROMからプログラムをインストールすることにより、CD−ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにするのではなく、CD−ROMに記憶させたプログラムを直接的に実行するようにしてもよい。
【0192】
なお、コンピュータによって実行可能なプログラムとしては、CPUによって直接実行可能なプログラムだけではなく、ソース形式のプログラム、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、圧縮処理がされたプログラム、暗号化プログラム)、さらには、他のモジュール部分と組み合わして実行可能なプログラムも含む。
【0193】
上記各実施形態では、図2の各機能をCPUおよびプログラムによって実現することとしているが、各機能の一部または全部をハードウェアロジック(論理回路)によって構成してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の上半身に密着する程度の伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際には、被験者の第4肋骨付近の体表から第6肋骨付近の体表までを覆う長さを有することによって心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近に接する位置から左胸側部付近に接する位置の間の少なくとも6箇所に配置されること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項2】
伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
衣服前面中央部付近から衣服左縁付近において、衣服身丈方向に5cm(センチメートル)以上30cm以下の長さを有する、被験者が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が配置されていること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項3】
非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際に被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置されること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの前記生体情報計測用衣服は、被験者の上半身用のシャツであり、
そのシャツは、さらに、
少なくとも、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表を覆う面積を有し、かつ、生体から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達可能な導線性素材で形成した四肢誘導電極部、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの前記生体情報計測用衣服は、さらに、
前記胸部誘導電極部に加えて、被験者の胸骨前部付近から右胸側部付近に向かう位置、または被験者の左胸側部付近から背中に向かう位置に、少なくとも1以上の前記胸部誘導電極部を備えたこと、
を特徴とする請求項1〜4のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの前記生体情報計測用衣服と、
前記心電図解析装置とを備えた生体情報計測システムであって、
前記心電図解析装置は、
複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴とする生体情報計測システム。
【請求項7】
生体情報計測用衣服における複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴とする心電図解析装置。
【請求項8】
コンピュータを心電図解析装置として機能させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、
前記プログラムは、
生体情報計測用衣服における複数の胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
前記心電図解析出力手段は、さらに、
前記選択された電位情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示すること、
を特徴とする請求項6〜8のいずれかの前記生体情報計測システム、または前記心電図解析装置、またはプログラム。
【請求項10】
被験者の呼吸動作による体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を呼吸情報解析装置へ伝達可能な呼吸情報計測センサ部が配置されたこと、
を特徴とする請求項1〜9のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項11】
請求項10の前記呼吸情報計測センサ部は、さらに、
前記生体情報計測用衣服における少なくとも胸回りまたは腹回りに配置され、被験者の呼吸動作による体格変動に伴う伸縮を通じて前記導電性部材の断面積または長さが変化することによって電気抵抗値が変化すること、
を特徴とする請求項10の前記生体情報計測用衣服。
【請求項12】
請求項10または11のいずれかの前記呼吸情報計測センサ部は、
前記導電性部材における被験者体表への対向面およびその反対面を非導線性素材で覆うことによって、被験者に対して前記通電状態による電気的影響を少なくしたこと、
を特徴とする請求項10または11のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項13】
前記呼吸情報計測センサ部の導電性部材は、前記生体情報計測用衣服において、少なくとも被験者の胸部付近に巻き付く位置または腹部付近に巻き付く位置を含む複数箇所に配置されること、
を特徴とする請求項10〜12のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかの前記生体情報計測用衣服と、
前記呼吸情報解析装置とを備えた生体情報計測システムであって、
前記呼吸情報解析装置は、
複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴とする生体情報計測システム。
【請求項15】
生体情報計測用衣服における複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴とする呼吸情報解析装置。
【請求項16】
コンピュータを呼吸情報解析装置として機能させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、
前記プログラムは、
呼吸動作に伴う被験者の体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を取得して呼吸情報解析装置へ伝達可能な、生体情報計測用衣服における複数の呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の変動周期に関する電気周期情報と、前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく心電図のR波高情報の変動周期に関するR波高周期情報とを取得し、いずれか一方の周期情報を選択し、選択した周期情報に基づいて呼吸情報を解析すること、
を特徴とする請求項14〜16のいずれかの前記呼吸情報解析システム、または前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項18】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の振幅に関する電気振幅情報と、前記R波高情報の振幅に関するR波高振幅情報とを取得し、前記電気振幅情報とR波高振幅情報との比較に基づいて前記電気情報またはR波高情報のいずれか一方を選択し、選択した情報の周期情報に基づいて呼吸情報を解析すること、
を特徴とする請求項17のいずれかの前記呼吸情報解析システム、または前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項19】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記選択された情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置、または呼吸情報計測センサ部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示すること、
を特徴とする請求項17または18のいずれかの前記呼吸情報解析システム、前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項20】
被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置される、被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得可能な導電性素材で形成した複数の胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得するステップ、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較するステップ、
前記比較した結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択するステップ、
前記選択した前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力するステップ、
を含むことを特徴とする心電図解析装置制御方法。
【請求項21】
呼吸動作に伴う被験者の体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を取得可能な複数の呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得するステップ、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較するステップ、
前記比較した結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択するステップ、
前記選択された前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析するステップ、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力するステップ、
を含むことを特徴とする呼吸情報解析装置制御方法。
【請求項1】
被験者の上半身に密着する程度の伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際には、被験者の第4肋骨付近の体表から第6肋骨付近の体表までを覆う長さを有することによって心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近に接する位置から左胸側部付近に接する位置の間の少なくとも6箇所に配置されること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項2】
伸縮性を有する非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
衣服前面中央部付近から衣服左縁付近において、衣服身丈方向に5cm(センチメートル)以上30cm以下の長さを有する、被験者が装着した際に胸部付近の心電位を取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が配置されていること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項3】
非導電性素材で形成された生体情報計測用衣服であって、
前記生体情報計測用衣服は、
被験者が装着した際に被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得して心電図解析装置へ伝達可能な導電性素材で形成した胸部誘導電極部が、被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置されること、
を特徴とする生体情報計測用衣服。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの前記生体情報計測用衣服は、被験者の上半身用のシャツであり、
そのシャツは、さらに、
少なくとも、被験者の鎖骨付近の体表または被験者の骨盤付近の体表を覆う面積を有し、かつ、生体から発生する電位を取得して前記心電図解析装置へ伝達可能な導線性素材で形成した四肢誘導電極部、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの前記生体情報計測用衣服は、さらに、
前記胸部誘導電極部に加えて、被験者の胸骨前部付近から右胸側部付近に向かう位置、または被験者の左胸側部付近から背中に向かう位置に、少なくとも1以上の前記胸部誘導電極部を備えたこと、
を特徴とする請求項1〜4のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの前記生体情報計測用衣服と、
前記心電図解析装置とを備えた生体情報計測システムであって、
前記心電図解析装置は、
複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴とする生体情報計測システム。
【請求項7】
生体情報計測用衣服における複数の前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
を備えたことを特徴とする心電図解析装置。
【請求項8】
コンピュータを心電図解析装置として機能させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、
前記プログラムは、
生体情報計測用衣服における複数の胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得する電位情報取得手段、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較する電位情報比較手段、
前記電位情報比較手段による比較結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択する電位情報選択手段、
前記選択された前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力する心電図解析出力手段、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
前記心電図解析出力手段は、さらに、
前記選択された電位情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示すること、
を特徴とする請求項6〜8のいずれかの前記生体情報計測システム、または前記心電図解析装置、またはプログラム。
【請求項10】
被験者の呼吸動作による体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を呼吸情報解析装置へ伝達可能な呼吸情報計測センサ部が配置されたこと、
を特徴とする請求項1〜9のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項11】
請求項10の前記呼吸情報計測センサ部は、さらに、
前記生体情報計測用衣服における少なくとも胸回りまたは腹回りに配置され、被験者の呼吸動作による体格変動に伴う伸縮を通じて前記導電性部材の断面積または長さが変化することによって電気抵抗値が変化すること、
を特徴とする請求項10の前記生体情報計測用衣服。
【請求項12】
請求項10または11のいずれかの前記呼吸情報計測センサ部は、
前記導電性部材における被験者体表への対向面およびその反対面を非導線性素材で覆うことによって、被験者に対して前記通電状態による電気的影響を少なくしたこと、
を特徴とする請求項10または11のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項13】
前記呼吸情報計測センサ部の導電性部材は、前記生体情報計測用衣服において、少なくとも被験者の胸部付近に巻き付く位置または腹部付近に巻き付く位置を含む複数箇所に配置されること、
を特徴とする請求項10〜12のいずれかの前記生体情報計測用衣服。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかの前記生体情報計測用衣服と、
前記呼吸情報解析装置とを備えた生体情報計測システムであって、
前記呼吸情報解析装置は、
複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴とする生体情報計測システム。
【請求項15】
生体情報計測用衣服における複数の前記呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
を備えたことを特徴とする呼吸情報解析装置。
【請求項16】
コンピュータを呼吸情報解析装置として機能させるための、コンピュータ読取可能なプログラムであって、
前記プログラムは、
呼吸動作に伴う被験者の体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を取得して呼吸情報解析装置へ伝達可能な、生体情報計測用衣服における複数の呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得する電気情報取得手段、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較する電気情報比較手段、
前記電気情報比較手段による比較結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択する電気情報選択手段、
前記電気情報選択手段が選択した前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析する呼吸情報解析手段、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力する呼吸情報出力手段、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の変動周期に関する電気周期情報と、前記胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく心電図のR波高情報の変動周期に関するR波高周期情報とを取得し、いずれか一方の周期情報を選択し、選択した周期情報に基づいて呼吸情報を解析すること、
を特徴とする請求項14〜16のいずれかの前記呼吸情報解析システム、または前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項18】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記電気情報の振幅に関する電気振幅情報と、前記R波高情報の振幅に関するR波高振幅情報とを取得し、前記電気振幅情報とR波高振幅情報との比較に基づいて前記電気情報またはR波高情報のいずれか一方を選択し、選択した情報の周期情報に基づいて呼吸情報を解析すること、
を特徴とする請求項17のいずれかの前記呼吸情報解析システム、または前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項19】
前記呼吸情報解析手段は、さらに、
前記選択された情報の測定元となった前記胸部誘導電極部の位置、または呼吸情報計測センサ部の位置を、前記生体情報計測用衣服の模式図または前記被験者の体型模式図に対応づけて表示すること、
を特徴とする請求項17または18のいずれかの前記呼吸情報解析システム、前記呼吸情報解析装置、またはプログラム。
【請求項20】
被験者の胸骨前部付近から左胸側部付近の間に配置される、被験者の胸部の体表を覆う長さを有することによって、心臓位置の変動にも拘わらず胸部付近の心電位を筋電の影響が少ない状態で取得可能な導電性素材で形成した複数の胸部誘導電極部から伝達される電位に基づく電位情報を取得するステップ、
前記取得した複数の電位情報の振幅を比較するステップ、
前記比較した結果に基づき、心電図の出力の基礎にする電位情報として前記振幅が大きい前記胸部誘導電極部を選択するステップ、
前記選択した前記胸部誘導電極部の電位情報を解析して心電図データを出力するステップ、
を含むことを特徴とする心電図解析装置制御方法。
【請求項21】
呼吸動作に伴う被験者の体格変動に伴って形状が変化することにより、通電状態において電気抵抗値が変化する導電性部材を含み、その電気抵抗値の変化に基づく電気情報を取得可能な複数の呼吸情報計測センサ部から伝達される電気情報を取得するステップ、
前記取得した複数の電気情報の振幅を比較するステップ、
前記比較した結果に基づき、呼吸情報の出力の基礎にする電気情報として前記振幅が大きい前記呼吸情報計測センサ部を選択するステップ、
前記選択された前記呼吸情報計測センサ部の電気情報の変動周期を判断し、その周期に基づいて呼吸情報を解析するステップ、
前記解析された呼吸情報に基づいて呼吸情報データを出力するステップ、
を含むことを特徴とする呼吸情報解析装置制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−172964(P2011−172964A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101165(P2011−101165)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−511320(P2006−511320)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−511320(P2006−511320)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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