説明

電極パッド

【課題】構造を複雑にすることなく、対象物との接触状態を容易に確認できる電極パッドを提供する。
【解決手段】対象物Hに接触させて使用され、電源101に電気的に接続されるとともに、前記対象物H内に電流を通過させる電極パッド10であって、光透過性の導電層を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気メス装置の対極板等に用いられ、生体に密着される電極パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体や動物等の生体の手術を行う際に、電気メス装置が使用されている。この種の電気メス装置として、例えば下記特許文献1、2には、高周波電流の発生回路を有する装置本体と、この装置本体に配線を介して電気的に接続される電気メスのアクティブ電極と、該装置本体に配線を介して電気的に接続され、アクティブ電極の対極板として生体に接触させて用いられる電極パッドと、を備えたモノポーラ型のものが記載されている。
【0003】
一般に、電気メス装置の電極パッドは、広い面積を有しており、装置本体から電気メスのアクティブ電極の先端部を通じて生体内に流れる高周波電流を、電流密度を低下させた状態で回収する拡散電極となっている。
尚、下記特許文献1には、アルミニウムからなる電極板(導電層)の生体側に導電性の粘着ゲル(粘着層)が設けられ、該粘着ゲルが生体に密着される導電型の電極パッドが記載されている。また、下記特許文献2には、アルミニウムからなる電極板と生体に密着される接着材層(粘着層)との間に、合成樹脂フィルム(誘電層)が設けられた容量結合型(静電容量型)の電極パッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175159号公報
【特許文献2】特開平8−196545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電極パッドにおいては、生体に対して確実に密着されたか否かを確認することが難しかった。すなわち、この種の電極パッドに対しては、構造を複雑にすることなく、生体との接触状態を容易に確認できることが要求されていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構造を複雑にすることなく、生体(対象物)との接触状態を容易に確認できる電極パッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、対象物に接触させて使用され、電源に電気的に接続されるとともに、前記対象物内に電流を通過させる電極パッドであって、光透過性の導電層を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の電極パッドによれば、導電層が光透過性を有しているので、対象物に接触させて使用する際に、電極パッドと対象物との接触状態を、導電層を通して(透視して)、観察・確認することができる。すなわち、電極パッドと対象物との間に空気(気泡)や塵等が混入したことを、外部から容易に視認できる。
【0009】
詳しくは、従来の電極パッドにおいては、導電層がアルミニウム等からなり光透過性を有していないため、対象物に対して確実に密着されたか否かを目視で確認することができず、使用者の感覚に頼らざるを得なかったり、複雑な構造を用いて電気的に確認せざるを得なかった。一方、本発明によれば、構造を複雑にすることなく、電極パッドと対象物との接触状態を目視で容易かつ確実に確認でき、例えば長時間に亘る手術中においても、この接触状態の確認が都度簡便に行える。従って、電極パッドの性能が十分に確保されるとともに、使用者のストレス等が軽減される。
尚、ここで言う「光透過性」とは、全光線透過率が5%以上であることを差す。
【0010】
また、本発明に係る電極パッドにおいて、前記導電層の厚さ方向の一方側に配置され、前記対象物に密着される光透過性の粘着層を備えたこととしてもよい。
【0011】
この場合、電極パッドが、前記導電層以外に光透過性を有する粘着層を備えているので、前述の効果が得られつつ、下記の効果を奏する。
すなわち、粘着層が対象物に密着されて、この電極パッドと対象物との接触状態が良好に維持される。このように構成された電極パッドは、使い勝手が高められていて、例えば、電気メス装置、ECG(Electrocardiogram)装置、AED(Automated External Defibrillator)装置、低周波治療器等に用いて有効である。
【0012】
また、本発明に係る電極パッドにおいて、前記粘着層は、導電性を有していることとしてもよい。
【0013】
この場合、導電型の電極パッドが簡単な構造として構成され、容易に作製できる。
【0014】
また、本発明に係る電極パッドにおいて、前記導電層と前記粘着層との間に、光透過性の誘電層が設けられることとしてもよい。
【0015】
この場合、容量結合型(静電容量型)の電極パッドが簡単な構造として構成され、容易に作製できる。また、容量結合型の電極パッドは、例えば電気メス装置に用いた場合に、対象物との接触領域(面積)に対応した高周波電流を流すことができることから、前述の効果と相俟って、拡散電極としてより安全性が高められた電極パッドと言える。
【0016】
また、本発明に係る電極パッドにおいて、前記導電層には、フレキシブルプリント基板からなる配線部が一体に形成されていることとしてもよい。
【0017】
この場合、電極パッドの厚さが薄く全体に均一になり、対象物である生体との密着性が高められて、電極パッドの性能が十分に高められる。また、電極パッドが凹凸なく平坦に形成されることから、該電極パッドを対象物下に配設して用いる際の褥瘡(じょくそう)等が防止される。また、電極パッドの重量が軽くなり、取り扱い性が向上するとともに、該電極パッドが使用中に自重で対象物から剥がれるようなことが防止される。さらに、電極パッドの製造時においては、従来の線材等の配線を用いた場合に必要であった面倒なカシメ作業や保護シールの巻付け作業等を、本発明では削減でき、生産性が向上するとともに、製造費用が削減される。また、導電層と配線部が一体であり接続部位が設けられないから、電気的な特性が安定して維持される。さらに、カシメ部分の破損がなくなることで、ケーブル(配線部)の引張強度が高くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電極パッドによれば、構造を複雑にすることなく、対象物との接触状態を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電極パッドを備えた電気メス装置の概略構成を説明する図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電極パッドの平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電極パッドの分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電極パッドの側断面図である。
【図5】本発明に係る電極パッドの変形例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る電極パッドを低周波治療器に用いた例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る電極パッド10について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態の電極パッド10は、電気メス装置(電気手術器)100を構成する一部材であり、人体や動物等の生体(対象物)Hに接触させて使用され、電源に電気的に接続されるとともに、生体H内に電流を通過させるものである。この電気メス装置100は、装置の電源(交流電源)であるとともに高周波電流の発生回路を有する装置本体101と、この装置本体101に配線を介して電気的に接続される電気メスのアクティブ電極102と、装置本体101に配線を介して電気的に接続され、アクティブ電極102の対極板として用いられる電極パッド10と、を備えたモノポーラ型のものである。
【0021】
電気メス装置100を使用する際は、電極パッド10を生体Hに密着させた状態で、装置本体101から電気メスのアクティブ電極102と電極パッド10との間に高周波電流を流すことにより、アクティブ電極102の先端部で生体Hに切開、凝固を行う。詳しくは、アクティブ電極102の先端部から生体Hの組織局部に電流を集中して流すことでジュール熱を発生させ、その熱によって出血している部位の凝固(止血凝固)や組織切開を行う。電極パッド10は、高周波電流を拡散させて回収するために広い面積を有しており、本実施形態においては、生体Hとの接触面積が20cm〜150cmとされている。尚、本実施形態の電極パッド10は、所謂ディスポーザブルタイプの電極パッドである。また、シーツ型など所謂リユーザブルタイプの電極パッド10である場合には、前記接触面積が例えば4700cm以下である。
【0022】
図2、図3に示されるように、電極パッド10は、弾性変形可能な矩形シート状をなし、複数の層が重なり合うように形成されている。電極パッド10は、電気メス装置100の装置本体101に配線を介して電気的に接続される光透過性の導電層1と、導電層1の厚さ方向の一方側(生体H側、図3における上側)に配置され、生体Hに密着される光透過性の粘着層2と、導電層1の厚さ方向の他方側(生体Hとは反対側、図3における下側)に配置され、光透過性を有する絶縁保護層3と、絶縁保護層3の前記他方側に配置され、導電層1、粘着層2及び絶縁保護層3よりも大きな外形を有する光透過性のフォーム層4と、フォーム層4と略同一の外形を有し、粘着層2の前記一方側に配置され、該粘着層2から剥離可能とされた剥離層5と、を備えている。
【0023】
尚、ここで言う「光透過性」とは、全光線透過率が5%以上であることを差す。具体的に、電極パッド10は、フォーム層4、絶縁保護層3、導電層1及び粘着層2を通して、該粘着層2と生体Hとの間に気泡や塵等が混入したことを目視で確認可能な程度の光透過性を有していればよい(従って前記全光線透過率の代わりに、可視光線透過率という表現を用いることもできる)。そして、この電極パッド10は、導電層1、粘着層2、絶縁保護層3及びフォーム層4がそれぞれ光透過性を有しているとともに、これらが一体に積層された電極パッド10全体として、光透過性を有している。尚、電極パッド10全体としての全光線透過率は5%以上であり、好ましくは10%以上であり、より望ましくは50%以上である。また、剥離層5は、電極パッド10の使用時には剥離されることから、光透過性を有していなくても構わない。すなわち、この電極パッド10は、生体Hに接触させて使用する状態において、全光線透過率が5%以上である。
【0024】
本実施形態のように、電極パッド10を電気メス装置100に用いる場合、熱傷等を確実に防止する目的で、該電極パッド10の全光線透過率は70%以上がより好ましく、さらに、80%以上が望ましい。尚、電極パッド10の全光線透過率の上限は100%である。
【0025】
導電層1は、光透過性及び導電性を有する所謂透明電極であり、例えば、ITO(スズドープ酸化インジウム)やFTO(フッ素ドープ酸化スズ)等で作製される。また、導電層1として、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等の樹脂材料中に、銅や銀からなる金属素材(蒸着粒子やナノ繊維など)が格子状やメッシュ状に配置されて、全体として光透過性及び導電性を備えたものを用いてもよい。
【0026】
また、導電層1の表面抵抗値は、1Ω/□以下とされている。このように、導電層1の表面抵抗値が低く設定されることにより、電気メス装置100の電極パッド10として用いることができる。尚、導電層1は、より低抵抗であることがよく、具体的には、前記表面抵抗値が10−1Ω/□以下であることが好ましい。さらに、前記表面抵抗値は、10−2Ω/□以下であることが望ましい。
【0027】
導電層1は、矩形シート状をなしており、その外周をなす四辺のうち一辺から外方に向けて配線部1Aが突出している。配線部1Aには、線材等からなる配線の一端部がカシメ等により電気的に接続され、該配線の他端部が装置本体101に電気的に接続される。これにより、装置本体101と導電層1とが電気的に接続されている。尚、配線部1Aに線材等からなる配線を接続する代わりに、下記構成とすることが好ましい。すなわち、導電層1には、フレキシブルプリント基板(FPC)からなる帯状の配線部1Aが一体に形成されており、該配線部1Aが、直接、装置本体101に電気的に接続されていてもよい。ただしこの場合、導電層1と配線部1Aが同じ層構造であればケーブル(配線部1A)全体も高周波的に導電性を有することになるので、該ケーブルにおける少なくとも導電側の面を、絶縁部材で被覆することが好ましい。これにより、例えばケーブルに手などが触れることがあっても電気メスの出力を受けるようなことが防止され、安全性が確保される。
【0028】
粘着層2は、粘着性を有するハイドロゲル等からなり、導電性を有している。このような粘着層2として、例えば、積水化成品工業株式会社:テクノゲル(登録商標)を用いることができる。粘着層2は、導電層1と略同一の外形を有する一方で、配線部1Aに対応する部位を有していない。本実施形態の電極パッド10は、導電性の粘着層2と導電層1とが隣接して積層された、導電型の電極パッドとなっている。すなわち、導電層1と粘着層2とが貼り合わされた状態で、導電層1の配線部1Aについては粘着層2に覆われず外部に露出されている。
【0029】
絶縁保護層3は、絶縁性のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなり、導電層1と略同一の外形を有している。尚、本実施形態では、導電層1と絶縁保護層3とが互いに別体として積層されているが、導電層1及び絶縁保護層3は一体に形成されていてもよい。また、絶縁保護層3は、導電層1よりも大きな外形を有していてもよい。
【0030】
フォーム層4は、絶縁性のビニール素材等からなり、導電層1よりも長手方向及び短手方向に大きい矩形シート状に形成されている。また、図2に示すように、フォーム層4において、絶縁保護層3よりも外方(面方向の外方)に位置する矩形枠状の外縁部分4Cのうち、前記一方側(生体H側)を向く面は、粘着性を有している。
【0031】
また、フォーム層4の外縁部分4Cには、導電層1の配線部1Aに対応するように面方向の外方に向けて突出して形成された配線カバー部4Aと、この配線カバー部4Aとは面方向の反対側に向けて突出して形成されたタグ部4Bと、が設けられている。尚、前述のように配線部1AがFPCからなる場合には、配線カバー部4Aは設けられていなくてもよい。
【0032】
剥離層5は、PETフィルム等からなり、フォーム層4と略同一の外形を有している。剥離層5は、前述のように光透過性を有していなくても構わないが、光透過性を有していると、使用前の粘着層2の状態を容易に視認できることから、より好ましい。剥離層5は、粘着層2及びフォーム層4の外縁部分4Cに剥離可能に貼着されており、電極パッド10の使用時には、剥離される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る電極パッド10によれば、導電層1が光透過性を有しているので、生体Hに接触させて使用する際に、電極パッド10と生体Hとの接触状態を、導電層1を通して(透視して)、観察・確認することができる。すなわち、電極パッド10と生体Hとの間に空気(気泡)や塵等が混入したことを、外部から容易に視認できる。
【0034】
詳しくは、従来の電極パッドにおいては、導電層がアルミニウム等からなり光透過性を有していないため、生体Hに対して確実に密着されたか否かを目視で確認することができず、使用者の感覚に頼らざるを得なかったり、複雑な構造を用いて電気的に確認せざるを得なかった。一方、本実施形態によれば、構造を複雑にすることなく、電極パッド10と生体Hとの接触状態を目視で容易かつ確実に確認でき、例えば長時間に亘る手術中においても、この接触状態の確認が都度簡便に行える。従って、電極パッド10の性能が十分に確保されるとともに、使用者のストレス等が軽減される。
【0035】
特に、本実施形態のように、電極パッド10を電気メス装置100に用いる場合、電極パッド10と生体Hとの間の接触面積が確保できないと、これらの接触部位に熱傷が生じるおそれがある。従って、使用者は、電極パッド10を生体Hに貼り付けるときにシワが生じたり、生体Hの皮膚表面の凹凸形状や発汗により電極パッド10が剥がれたりしないように、電極パッド10と生体Hとの接触状態を適宜確認する必要がある。本実施形態の電極パッド10によれば、生体Hに対する接触状態を、該電極パッド10を剥がすようなことなく、外部から簡便かつ確実に視認できるので、前記熱傷が防止される。
【0036】
詳しくは、この電極パッド10は、前記導電層1以外に、光透過性を有する粘着層2、絶縁保護層3及びフォーム層4を備えているので、前述の効果が得られつつ、下記の効果を奏する。
すなわち、粘着層2が生体Hに密着されて、この電極パッド10と生体Hとの接触状態が良好に維持される。また、粘着層2は、導電性を有しているので、導電型の電極パッド10が簡単な構造とされ、容易に作製できる。
また、絶縁保護層3が導電層1と外部との電気的なリークを防止するので、電極パッド10の性能が安定して確保される。
【0037】
また、導電層1よりも大きい外形を有する絶縁性のフォーム層4が設けられるとともに、該フォーム層4の粘着性を有する外縁部分4Cが生体Hに密着されることにより、この外縁部分4Cの面方向の内方に位置する導電層1と外部とが電気的に絶縁される。これにより、手術中に生理食塩水や血液等の液体が電極パッド10に飛散した場合であっても、導電層1と外部との電気的なリークが防止される。
【0038】
また、導電層1にFPCからなる配線部1Aが一体に形成される場合には、下記の効果をも奏する。
すなわち、この場合、電極パッド10の厚さが薄く全体に均一になり、生体Hとの密着性が高められて、電極パッド10の性能が十分に高められる。また、電極パッド10が凹凸なく平坦に形成されることから、図1に示されるように、該電極パッド10を生体H下に配設して用いる際の褥瘡等が防止される。また、電極パッド10の重量が軽くなり、取り扱い性が向上する。また、特に電極パッド10が生体Hの側面や上面に貼り付けられる場合において、該電極パッド10が使用中に自重で生体Hから剥がれるようなことが防止される。さらに、電極パッド10の製造時においては、面倒なカシメ作業や保護シールの巻付け作業等を削減でき、生産性が向上するとともに、製造費用が削減される。また、導電層1と配線部1Aが一体であり接続部位が設けられないから、電気的な特性が安定して維持される。さらに、カシメ部分の破損がなくなることで、ケーブル(配線部1A)の引張強度が高くなる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電極パッド20について、図4を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
本実施形態の電極パッド20は、前述した粘着層2の代わりに、光透過性を有する非導電性の粘着層12を備えている。また、導電層1と粘着層12との間には、光透過性の誘電層6が設けられている。また、本実施形態では、絶縁保護層3の前記他方側(生体Hとは反対側、図4における下側)には、フォーム層4は設けられていない。
【0041】
粘着層12は、例えば医療用の両面テープ等からなり、電極パッド20の使用時に、誘電層6の前記一方側(生体H側、図4における上側)の面に貼着されるものである。
誘電層6は、絶縁性のPET、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PI(ポリイミド)フィルム等で形成されている。
【0042】
導電層1は、スパッタリングにより形成され、誘電層6の前記他方側に隣接するスパッタ層13と、蒸着により形成され、スパッタ層13の前記他方側に隣接する蒸着層14と、を備えている。この導電層1を構成する導電体としては、例えば、金、銀、銅、チタン、ニッケル、アルミ、スズ、インジウム、酸化チタン等の導電性セラミックなどを用いることができる。尚、光透過性を所定以上に確保するために、導電層1に適宜エッチング加工等を施してもよい。
【0043】
このように構成された電極パッド20は、粘着層12、誘電層6、導電層1及び絶縁保護層3がそれぞれ光透過性を有しているとともに、これらが一体に積層された電極パッド20全体として、光透過性を有している。尚、特に図示しないが、電極パッド20の絶縁保護層3の前記他方側にフォーム層4が設けられていてもよく、この場合、粘着層12、誘電層6、導電層1、絶縁保護層3及びフォーム層4が一体に積層された電極パッド20全体として、光透過性を有する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の電極パッド20によれば、前述した電極パッド10と同様の効果を得ることができる。また、この電極パッド20は、容量結合型(静電容量型)の電極パッドであり、簡単な構造であることから容易に作製できる。
そして、容量結合型の電極パッド20は、生体Hとの接触領域(面積)に対応した高周波電流を流すことができるので、前述の効果と相俟って、より安全性が高められている。さらに、生体Hとの接触状態を電気的な手段を用いて高精度に把握することが可能であり、かつ、手術中において前記液体が電極パッド20に飛散するようなことがあっても影響を受けにくい。
【0045】
また、導電層1がスパッタ層13を備えているので、該導電層1と誘電層6との剥離強度が十分に高められている。
【0046】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
例えば、前述の実施形態では、電極パッド10、20は、ディスポーザブルタイプであるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、再使用タイプの電極パッド10、20であっても構わない。この場合、電極パッド10、20には、粘着層2、12及び剥離層5が設けられていなくてもよい。
また、電極パッド10、20には、絶縁保護層3又は/及びフォーム層4が設けられていなくても構わない。
【0048】
また、前述の第1実施形態において、粘着層2がハイドロゲル等からなるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、粘着層2として、ハイドロゲルの代わりに、例えば導電性のペースト剤を塗布して用いることとしてもよい。この場合であっても、ペースト剤と生体Hとの接触状態が容易に視認可能である。
【0049】
また、導電層1の配線部1Aには、線材等からなる配線の一端部がカシメ等により電気的に接続されるか、或いは、配線部1Aは導電層1に一体のFPCからなるとともに、装置本体101に直接接続されるとしたが、これらに限定されるものではない。すなわち、例えば、この配線部1Aに、導電層1とは別体のフレキシブルプリント基板(FPC)を繋いで、電気メス装置100の装置本体101に電気的に接続してもよい。
【0050】
また、前述の実施形態では、導電層1が単一のものからなるとしたが、これに限定されるものではない。
図5に示される電極パッド30は、本発明の変形例であり、図示の例では、導電層1は、複数の分割体11からなる。この場合、例えば、導電層1の分割体11同士を、電気メス装置100の装置本体101(或いは他の監視装置)を介して電気的に接続するとともに、これらの間に微弱電流を流して接触抵抗を測定したり、これらの間の静電容量を測定したりすることで、電極パッド30と生体Hとの接触状態をより高精度に監視できる。
【0051】
また、前述の実施形態では、電極パッド10(20、30)が電気メス装置100に用いられることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、電極パッド10(20、30)は、使い勝手が十分に高められており、前述した電気メス装置100以外に、例えば、ECG装置、AED装置、低周波治療器等に用いて有効である。
図6の例では、一対の電極パッド10と、電源(交流電源又は直流電源)であるとともに、これら電極パッド10がそれぞれ配線を介して電気的に接続される装置本体201と、を備えた低周波治療器200が構成されている。
【0052】
その他、本発明の前述の実施形態及び変形例で説明した構成要素を、適宜組み合わせても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の構成要素を周知の構成要素に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 導電層
1A 配線部
2、12 粘着層
6 誘電層
10、20、30 電極パッド
11 分割体(導電層)
101、201 装置本体(電源)
H 生体(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に接触させて使用され、電源に電気的に接続されるとともに、前記対象物内に電流を通過させる電極パッドであって、
光透過性の導電層を備えたことを特徴とする電極パッド。
【請求項2】
請求項1に記載の電極パッドであって、
前記導電層の厚さ方向の一方側に配置され、前記対象物に密着される光透過性の粘着層を備えたことを特徴とする電極パッド。
【請求項3】
請求項2に記載の電極パッドであって、
前記粘着層は、導電性を有していることを特徴とする電極パッド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電極パッドであって、
前記導電層と前記粘着層との間に、光透過性の誘電層が設けられることを特徴とする電極パッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極パッドであって、
前記導電層には、フレキシブルプリント基板からなる配線部が一体に形成されていることを特徴とする電極パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−235824(P2012−235824A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105178(P2011−105178)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】