説明

電極形成材およびその用途

【課題】高い電極特性を発揮し、かつ優れた導電性を有する電極形成材とその用途を提供する。
【解決手段】電極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部のカーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって導電層が形成されていることを特徴とし、好ましくは、表面が酸化処理されており、該酸化処理による酸素含有量が8〜20wt%に制御されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている電極形成材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの電極を形成する電極形成材に関し、より詳しくは、高い電極特性を発揮し、かつ優れた導電性を有する電極形成材とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やノート型パソコン等のポータブル電子機器の発達に伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。さらに近年、リチウムイオン二次電池は、民生用用途に限らず、バイク、車載等の産業用用途に展開されつつあり、リチウムイオン二次電池について高容量化および高入出力化が求められている。
【0003】
そのために電池の反応物質として使用されている正極の複合金属リチウム酸化物や負極の炭素材自体の高容量化や高入出力化が図られると共に、電池設計面から電極比表面積の増加による見掛け充放電の電流密度の低減化、ならびに耐久性の工夫がなされてきた。
【0004】
現在のリチウム電池に用いられている電極活物質の導電性はさほど高くないので電極の導電性を確保するため、電極活物質粉末に導電材の粉末を加え、結着剤(バインダー)を添加したペーストを金属箔に塗布して電極が形成されている。電極活物質に添加する導電材としては、カーボン、アセチレンブラック、グラファイトなど、および通常のカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が用いられている。
【0005】
例えば、特開2009−170410号公報(特許文献1)には、分散剤を用いてカーボンナノチューブを電極材に適用することが記載されている。また、特開2009−176721号公報(特許文献2)には、電極活物質粒子を繊維状炭素で網目状に包み込むことにより電池の内部抵抗を小さくし、電池の出力特性を向上させることができることが記載されている。しかし、これら従来の材料は、分散剤が分解してガスが発生するなどの問題があり、特許文献2では分散剤を除去する工程が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−170410号公報
【特許文献2】特開2009−176721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の電極形成材における上記問題を解決したものであり、充放電時に分解する分散剤を含有せずに高い電極特性を維持しながら優れた導電性を有する導電層形成材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の構成によって上記課題を解決した電極形成材とその用途が提供される。
〔1〕 電極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部のカーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって導電層が形成されていることを特徴とする電極形成材。
〔2〕 表面が酸化処理されており、該酸化処理による酸素含有量が8〜20wt%に制御されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている上記[1]に記載する電極形成材。
〔3〕 硝酸濃度が10〜30wt%の硝酸と硫酸の混酸を用い、100℃以上で表面処理されたカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている上記[1]または上記[2]に記載する電極形成材。
〔4〕 平均繊維径1nm〜100nmおよびアスペクト比5以上であって、表面が酸化処理されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する電極形成材。
〔5〕 電極活物質がリチウムを含有する遷移金属酸化物であり、リチウム電池の電極に用いられる上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する電極形成材。
〔6〕 電極活物質が天然黒鉛、人造黒鉛、合成黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、有機物の黒鉛化材料、石炭、コークス、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、またはLi4Ti512、あるいは、SnまたはSiの合金系である上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する電極形成材。
〔7〕 上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する電極形成材を溶剤および水から選ばれた一種以上の分散媒に分散させてなる電極形成用分散液。
〔8〕 上記[7]に記載する電極形成用分散液に結着剤を添加した電極成材用塗料。
〔9〕 上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する電極形成材を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極形成材は、カーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって導電層が形成されているので、高い導電性を有し、電池の出力を高めることができる。また、分散剤を含まないので、分散剤の分解によるガス発生がなく、出力特性に優れた電極を形成することができる。
【0010】
本発明の電極形成材に用いられるカーボンナノファイバーは表面の酸化処理によって親水性を有するので極性溶媒に分散させたときに分散性が良く、また酸化処理による酸素含有量を8〜20wt%に制御したので優れた導電性を維持しており、電極を形成したときに高い電極特性を得ることができる。
【0011】
本発明の電極形成材はカーボンナノファイバーによって電極活物質表面が網目状に被覆されているので、電極活物質表面に導電層が均一に形成されており、電極特性のよい電極を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電極形成材表面の組織状態を示す電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基いて具体的に説明する。
本発明の電極形成材は、電極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部のカーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって導電層が形成されていることを特徴とする電極形成材であり、好ましくは、表面が酸化処理されており、該酸化処理による酸素含有量が8〜20wt%に制御されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている電極形成材である。
【0014】
電極形成材のカーボンナノファイバーの含有量は、電極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部が適当であり、1〜7質量部が好ましい。この含有量が0.5質量部より少ないと導電性を高める効果が乏しく、10質量部より多いと相対的に電極活物質の量が少なくなるので電極材料として適当ではない。
【0015】
本発明の電極形成材において、電極活物質表面の導電層は、カーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって形成されている。電極活物質表面の被覆率が40%未満では導電性が十分に向上せず、一方、この被覆率が80%を超えると電極を形成したときに空隙率が高くなり内部抵抗が大きくなるので好ましくない。
【0016】
導電層を形成するカーボンナノファイバーは、表面が酸化処理されており、該酸化処理による酸素含有量が8〜20wt%に制御されている。このカーボンナノファイバーは表面の酸化処理によって親水性を有し、かつ酸素含有量が8〜20wt%に制御されているので、高い導電性を維持している。酸素含有量が8wt%より少ないと親水性が十分ではなく、極性溶媒に分散させたときにヘーズが高くなる。一方、酸素含有量が20wt%より多いと、導電性が低下する傾向がある。
【0017】
カーボンナノファイバーの表面酸化処理において、酸素含有量を8〜20wt%に制御した酸化処理を行うには、例えば、硝酸濃度が10〜30wt%の硝酸と硫酸の混酸を用い、100℃以上で表面処理すればよい。
【0018】
硝酸と硫酸の混酸において、硝酸濃度比が30wt%より高いと酸化処理が過度になり、カーボンナノファイバーの酸素含有量が20wt%を超えるようになる。一方、硝酸の濃度比が10wt%より低いと酸化処理が不十分になり、カーボンナノファイバーの酸素含有量は8wt%より少なくなる。硝酸の濃度比が10wt%より低いと凝集が発生し、電極活物質表面を凝集塊が覆い、均一な網目状被覆をすることができない。
【0019】
酸化処理は、硝酸と硫酸の混酸中にカーボンナノファイバーを浸漬し、100℃以上の温度下で反応させればよい。液温は100℃〜200℃が良く、100℃〜160℃がより好ましい。100℃未満の液温では酸化が不十分になり、液温が200℃を超えると酸化処理が過度になる。
【0020】
上記酸化処理において、硝酸と硫酸の混酸とカーボンナノファイバーとの量比は、カーボンナノファイバー1重量部に対して混酸1〜100重量部の範囲が適当である。
【0021】
混酸の硝酸濃度比および処理条件を上記のように調整した酸化処理を行うことによって、カーボンナノファイバー表面にカルボキシル基などが導入され、酸素含有量を8〜20wt%に制御したカーボンナノファイバーを得ることができる。この酸素は、XPS分析するとC−O結合のピーク定量値が2〜5%であり、C−O結合を有する基によって導入されている。このカーボンナノファイバーは適度な親水性を有し、アルコールなどの極性溶媒に分散させたときに分散性に優れた分散液が得られる。
【0022】
本発明の電極形成材に用いるカーボンナノファイバーは、繊維径1〜100nm、アスペクト比5以上で、X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の間隔が0.35nm以下であるものが好ましい。繊維径とアスペクト比が上記範囲のカーボンナノファイバーは、溶媒に分散させたときに相互に十分な接触点を形成することができるので、高い導電性を有する導電性塗膜を得ることができる。また、X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の積層間隔が上記範囲内であるカーボンナノファイバーは結晶性が高いため、電気抵抗が小さく、従って高導電性の材料を得ることができる。さらに、カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗値が1.0Ω・cm以下であると、良好な導電性を発揮することができる。
【0023】
上記カーボンナノファイバーは、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造することができる。この気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、トルエン着色透過率が概ね95%以上であり、分散性の観点から好ましい。
【0024】
上記カーボンナノファイバーを溶媒に分散させ、この分散液に電極活物質粉末を結着剤と共に加えて攪拌することによって、電極活物質粉末の表面にカーボンナノファイバーが均一に網目状に付着した電極活物質スラリーを調製し、この電極活物質スラリーを電極集電体の両面に塗布して乾燥し、圧延して電極フィルムを作製し、これを切断して電極が作製される。電極活物質粉末の表面にカーボンナノファイバーが均一に網目状に付着した状態を図1に示す。
【0025】
本発明は、上記電極形成材を溶剤(分散媒)に分散させた電極形成材用分散液を含む。分散媒としては極性溶媒が好ましく、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水などを用いることができる。
【0026】
さらに、本発明は上記分散液に結着剤を添加してなる塗料を含む。また、本発明の電極形成材は、二次電池用電極形成のために必要な物質を添加した塗料、スラリー、ペーストの形態で利用することができる。
【0027】
本発明の電極形成材において、電極活物質は、例えば、リチウムを含有する遷移金属酸化物である。具体的には、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnCoO4、LiCoPO4、LiMnCrO4、LiNiVO4、LiMn1.5Ni0.54、LiMnCrO4、LiCoVO4、LiFePO4、および、各上記組成の一部を他のMn、Mg、Ni、Co、Cu、Zn、Geから選択される1種もしくは2種以上の金属元素で置換した非化学量論的化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である。これらはリチウム電池の電極材料として用いられている。
【0028】
リチウムイオン二次電池は、例えば、Ni鋼板製の有底円筒状筐体にロール体が非水電解液と共に密封されている。ロール体は帯状の正極材、セパレータ、負極材、セパレータを順に積層し、ロール状に巻回して作成されている。正極材は例えばAl合金箔の両面に正極活物質としてリチウム遷移金属複酸化物を含む正極形成材を均等かつ均質に塗着し作成されたものである。負極材は例えばCu合金箔の両面に負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な非晶質炭素粉末を含む負極形成材を均等かつ均質に塗着し作成されたものである。本発明の電極形成材は、例えば、上記正極材または負極材を形成する材料として用いられる。
【0029】
ロール体と共に筐体に収容される非水電解液はエチレンカーボネート(EC)等の有機溶媒中にリチウム塩として6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等を溶解したものが使用可能である。セパレータは例えばポリオレフィン系樹脂等の多孔性のポリマーが使用される。ロール体の捲回中心のほぼ延長線上に正極板からの電位を集電するための金属からなる円環状導体の正極が配置され、この正極にリードが接続される。正極は筐体の上部蓋に溶接で接合される。正極の反対側は負極材からの電荷を集めるための負極部が形成されている。負極部はリードを介して負極材に接続される。
【0030】
正極材および負極材の製造方法の一例を以下に示す。
〔正極材の作製〕
正極活物質粉末(リチウム含有遷移金属酸化物粉末:LiFePO4等)を、結着剤(ポリフッ化ビニリデン:PVdF等)と共に、カーボンナノファイバーの分散液(CNF分散液)に加えて攪拌することによって正極活物質粉末表面にカーボンナノファイバーが均一に網目状に付着した正極活物質スラリーを調製する。この正極活物質スラリーをアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布乾燥し、圧延して正極フィルムを作製し、この正極フィルムを切断して正極を作製する。
【0031】
〔負極材の作製〕
負極活物質(黒鉛粉末等)を、結着剤(PVdF等)と共に、上記CNF分散液に加えて攪拌することによって黒鉛粉末表面にCNFが均一に網目状に付着した負極活物質スラリーを調製する。この負極活物質スラリーを銅箔(負極集電体)の両面に塗布乾燥し、圧延して負極フィルムを作製し、この負極フィルムを切断して負極を作製する。
【0032】
〔電池の作製〕
上記正極および負極を、ポリエチレン製セパレータを介し捲回して電極群とし、この電極群を円筒形の電池容器に挿入し、電解液を所定量注入して密封することによって円筒形リチウムイオン二次電池を得ることができる。電解液にはEC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)を体積比で25:60:15に混合した溶液中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解し、さらにその溶液にビニレンカーボネートを添加たものなどを用いることができる。
【実施例】
【0033】
本発明の実施例を比較例と共に以下に示す。なお、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
〔実施例1:酸化処理〕
市販のカーボンナノファイバー(CNFと略記する。三菱マテリアル社製品、繊維径20nm、アスペクト比5以上)を用い、市販の濃硝酸(濃度60wt%)および濃硫酸(濃度95wt%)を用い、表1に示す条件にて表面酸化処理を行い、酸素含有量を制御した表面処理CNFを得た。酸化処理の結果を表1に示す。酸素含有量は不活性ガス搬送融解赤外線吸収法によって測定した。
【0034】
【表1】

【0035】
〔実施例2:分散液、塗料組成物〕
表1のCNFを乾燥して粉末化し、その粉末をエタノールに混合し、ビーズミルを使用してエタノール分散液を調製した。分散液のCNF含有量を表2に示す。
この分散液に乾燥塗膜固形分中のCNF含有量が4.5wt%になるようにアクリル樹脂溶液を混合して塗料組成物を調製した。この塗料組成物を、バーコーターを用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルムの表面に、塗工量0.25g/m2になるように塗布し、80℃で3分間乾燥して塗膜を作製した。
【0036】
このCNF分散液のヘーズ、塗膜の表面抵抗率、および塗膜のヘーズ(%)を測定した。これらのヘーズはスガ試験機製ヘーズメーターを用いて測定した。分散液のヘーズ値は、CNF濃度が40ppmになるように分散媒を用いて希釈し、この希釈液を光路長3mmの石英セルに入れ、石英セルのヘーズ(0.3%)を含んで測定した。塗膜のヘーズは、ベースフィルムであるポリエステルフィルムのヘーズ(1.8%)を含んで測定した。塗膜の表面抵抗率(Ω/□)は三菱化学製ハイレスタUPを用いて二重リング電極法にて測定した。これらの結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示すように、酸素含有量が10wt%より少ないB1のCNFは溶媒での分散性が悪い。一方、酸素含有量が20%より多いB2のCNFは溶媒での分散性はよいが、塗膜の表面抵抗が高くなる。一方、A1〜A6のCNF(酸素含有量8〜20%)はCNF濃度40ppmに希釈した分散液のヘーズは0.6以下であり、またCNF含有量4.5wt%の塗膜のヘーズは2.2以下であって、CNFの分散性が良く、また表面抵抗(Ω/□)は5.6×106以下であり、高い導電性を有している。
【0039】
〔実施例3:電極の形成〕
表1に示す条件にて表面を酸化処理したCNFを乾燥し、ビーズミルを使用して上記CNFを粉末にし、このCNF粉末が5wt%濃度のN−メチルピロリドン分散液を調製した。
<正極の作製>
鉄燐酸リチウム粉末(D50:100nm)を正極活物質とし、この活物質100質量部に対してカーボンナノファイバーを表3に示す質量部となるように、上記CNF分散液に上記正極活物質を添加し、混合攪拌後、結着剤のポリフッ化ビニリデン7質量部を混合して、CNFによって形成した網目の被覆率が表3に示す状態の正極形成材を作製した。この形成材を厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後に圧延し裁断して厚さ約150μmの正極を作製した。
【0040】
<負極の作製>
活物質として黒鉛粉末(D50:5μm)100質量部を用い、この活物質100質量部に対してカーボンナノファイバーを表3に示す質量部となるように、上記CNF分散液に負極活物質を添加し、混合攪拌後、結着剤のポリフッ化ビニリデン5質量部を混合して、CNFによって形成した網目の被覆率が表3に示す状態の負極形成材を作製した。この形成材を厚さ10μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥後に圧延し裁断して厚さ約110μmの負極を作製した。
【0041】
<電池の作製>
上記正極および負極を、厚さ20μmのポリエチレン製セパレータを介し捲回して電極群とし、この電極群を円筒形の電池容器に挿入し、電解液を所定量注入後、密封して円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。電解液にはEC、DMC、DECを体積比で25:60:15に混合した溶液中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解し、さらにその溶液にビニレンカーボネートを添加たものを用いた。
【0042】
<比較例:C1〜C3>
A1のCNFを用い、CNFによって形成した導電層が網目状ではないもの(C1)、網目状ではあるが被覆率が本発明の範囲を外れるもの(C2、C3)にした以外は上記と同様にして正極および負極を作成した。
【0043】
<充放電サイクル試験>
充放電サイクル試験を行い、50サイクル後の放電容量を1サイクル後の放電容量で割った値を放電容量維持率として算出した。その結果を表3に示す。
表3の結果に示すように、電極活物質表面の40〜80%がCNFによって網目に被覆されている電極形成材を用いたA1〜A6は、容量維持率の低下がなく、サイクル寿命が80%以上に向上している。
一方、CNFによる導電層が網目ではない比較例(C1)、および網目の被覆率が本発明の範囲を外れる比較例(C2〜C3)は何れも容量維持率が30%〜60%と低い。
【0044】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部のカーボンナノファイバーによって電極活物質表面の40〜80%が網目状に被覆されることによって導電層が形成されていることを特徴とする電極形成材。
【請求項2】
表面が酸化処理されており、該酸化処理による酸素含有量が8〜20wt%に制御されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている請求項1に記載する電極形成材。
【請求項3】
硝酸濃度が10〜30wt%の硝酸と硫酸の混酸を用い、100℃以上で表面処理されたカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている請求項1または請求項2に記載する電極形成材。
【請求項4】
平均繊維径1nm〜100nmおよびアスペクト比5以上であって、表面が酸化処理されているカーボンナノファイバーを用いて導電層が形成されている請求項1〜請求項3の何れかに記載する電極形成材。
【請求項5】
電極活物質がリチウムを含有する遷移金属酸化物であり、リチウム電池の電極に用いられる請求項1〜請求項4の何れかに記載する電極形成材。
【請求項6】
電極活物質が天然黒鉛、人造黒鉛、合成黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、有機物の黒鉛化材料、石炭、コークス、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、またはLi4Ti512、あるいは、SnまたはSiの合金系である請求項1〜請求項5の何れかに記載する電極形成材。
【請求項7】
請求項1〜請求項5の何れかに記載する電極形成材を溶剤および水から選ばれた一種以上の分散媒に分散させてなる電極形成用分散液。
【請求項8】
請求項7に記載する電極形成用分散液に結着剤を添加した電極成材用塗料。
【請求項9】
請求項1〜請求項6の何れかに記載する電極形成材を含むリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−77426(P2013−77426A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216216(P2011−216216)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】