説明

電極材

【課題】触媒成分を分散担持することが可能な電極材を提供する。
【解決手段】電極材であって、表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔が0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい炭素材料を用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電極材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンで発電効率の高い次世代の発電装置が望まれており、酸素及び水素の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池に対する期待が高まっている。現在、燃料電池の種類として、リン酸型、アルカリ型、溶融炭酸塩型、固体電解質型及び固体高分子型等が知られている。中でも固体高分子型燃料電池は、小規模かつポータブルな電源としての用途、例えば電気自動車用電源や家庭用発電システム、に適すると考えられている。このため、その実用化に向けて、現在精力的に開発が進められている。
【0003】
燃料電池電池では、電極材として用いられる炭素材料と、この炭素材料に担持した白金等の触媒成分とを含む電極触媒が使用されている(特許文献1参照。)。炭素材料は、(1)長時間酸素雰囲気に曝されても酸化消耗しないこと、すなわち耐食性と、(2)白金が高分散していること、すなわち高活性であること、の二つの性質が求められている。この二つの性質は、現段階ではトレードオフの関係にある。しかしながら、燃料電池の実用化のためには、二つの性質を兼ね備えていることが必要不可欠となっている。炭素材料の耐食性を向上させるためには、少なくとも炭素材料表面の結晶性が高く、腐食されやすい炭素材料のエッジサイトを少なくする必要がある。
【特許文献1】特開2004−99355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、炭素材料表面の結晶性が高いと触媒成分である白金を分散担持するためのサイトが少なくなり、電極の担体として用いた場合に電極の反応性が乏しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る電極材は、表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔が0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい炭素材料を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電極の担体として用いた場合に触媒成分を分散担持しやすくなり、電極としての反応性が向上した電極材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態に係る電極材を説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施の形態に係る電極材を用いた燃料電池から構成される燃料電池スタック1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す燃料電池スタック1の詳細な構成を示す展開図である。図3は、本発明の実施の形態に係る電極材を用いた燃料電池の積層方向に沿う断面図である。図4(a)は、図3の酸化剤極触媒層12の表層部の断面図である。図4(b)は、炭素材料の結晶子の斜視図である。
【0009】
図2に示すように、燃料電池スタック1は、電気化学反応により発電を行う基本単位となる単セル2を複数積層して構成される。各単セル2は0.8[V]程度の起電力を生じ、これらの単セル2が、導体としての燃料電池用セパレータ3を介して直列に接続されて規定の出力電圧を発生させる。ここでは、単セル2を燃料電池用セパレータ3で挟持した一組を燃料電池4とし、燃料電池用セパレータ3に挟まれた部分がそれぞれ単セル2として機能する。そして、燃料電池スタック1内で積層されるこれらの要素は、積層方向両端にそれぞれ設けられた一対のエンドフランジ5を締結ボルト6によって締結することにより固定される。また、図1、2に示すように、燃料電池スタック1には、各単セル2に水素ガス等の水素を含有する燃料ガスを供給するための水素供給ラインと、酸化剤ガスとして空気を供給する空気供給ラインと、冷却水を供給する冷却水供給ラインが設けられている。なお、以下の例では、便宜上、図3にしたがって上下を規定する。すなわち燃料電池スタック1の積層方向を上下方向と規定する。
【0010】
図2に示す燃料電池4では、図3に示す断面図のように、電解質膜11の一方の面に酸化剤極、他方の面に燃料極としての触媒層がそれぞれ接合されて、酸化剤極触媒層12と燃料極触媒層13とを構成している。酸化剤極触媒層12及び燃料極触媒層13の外側には、それぞれ酸化剤ガス拡散層14及び燃料ガス拡散層15が配置されている。電解質膜11としては、固体高分子型電解質膜であるスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体膜(Nafion1128(登録商標)、デュポン株式会社)等を使用することができる。酸化剤ガス拡散層14及び燃料ガス拡散層15は、カーボン繊維を用いて形成されており、カーボンクロス、カーボンペーパ等と呼ばれている多孔質炭素膜である。この多孔質炭素膜は、直径10〜50[μm]程度の空孔を有しており、それぞれ反応ガス(水素を含有する燃料ガスとしての水素、及び酸素を含有する酸化剤ガスとしての空気。)の拡散を最適化し、反応ガスと各触媒層12、13との接触を容易にする。また、各ガス拡散層14、15は導電性を有し、各触媒層12、13と電気的に接続されている。酸化剤ガス拡散層14及び燃料ガス拡散層15の両側には、酸化剤ガスセパレータ18(3)と燃料ガスセパレータ19(3)とが各々配置され、酸化剤ガス拡散層14と酸化剤ガスセパレータ18との間に酸化剤ガス流路16を、また、燃料ガス拡散層15と燃料ガスセパレータ19との間に燃料ガス流路17が形成される。各セパレータ18、19は、プレート状に成形したカーボンや金属の表面にガス流路及び冷却水流路が形成されたものであり、各触媒層12、13に反応ガスの供給を行い、さらには、外部回路に電流を流す役割も果たす。なお、酸化剤ガス流路16を流通する酸化剤ガスと、燃料ガス流路17を流通する燃料ガスは、同一方向に流通するように構成されている。この燃料電池4では、酸化剤極触媒層12側に、酸素を含む酸化剤ガスとして空気を供給し、燃料極触媒層13側に水素を含む燃料ガスとして水素ガスを供給すると、主に、電解質膜11と酸化剤極触媒層12、及び電解質膜11と燃料極触媒層13との間の接触面において電気化学反応が進行し、電力が生成する。
【0011】
各触媒層12、13は、担体として触媒粒子(触媒成分)を担持する電極材と、この電極材に担持された触媒粒子とを有する。この電極材は、表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔dが0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい炭素材料を用いている。
【0012】
図4(a)に、図3に示す酸化剤極触媒層12の表層部の断面図を、図4(b)に、炭素材料の結晶子の斜視図を示す。図4(a)に示すように、酸化剤極触媒層12の表層部は、炭素材料21と、炭素材料21に担持された触媒粒子22として、例えば白金を有する。炭素材料21は少なくとも表面に、炭素原子とは異なる種類の元素である異種原子24を含有する。炭素材料21は、複数の結晶子23からなり、各結晶子23は、図4(b)に示すように、炭素六員環25を含む炭素六角網面23a〜23dの積み重なりにより構成されている。結晶子23は、炭素六角網面23a〜23dの積層方向、すなわち、c軸方向に厚みLcを有する。炭素六角網面23a〜23dは、それぞれ平均面間隔dの間隔を有する。触媒粒子22は、結晶子23の端部(エッジサイト)に担持されている。触媒粒子22が結晶子23の端部に担持されることにより、触媒粒子22は結晶子23と他の結晶子23との間に画成された空間に位置する。異種原子24は、図4(a)に示すように炭素材料21の表面のみに存在してもよく、図4(b)に示す六員環26のように、炭素六員環を構成する炭素原子と置換したヘテロ原子27として炭素材料21中に存在していてもよい。また、単体として炭素材料21に存在していてもよく、酸素又は水素等と化合した化合物の形で存在してもよい。
【0013】
本発明の実施の形態に係る電極材は、表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔dが0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい炭素材料を用いているため、電極の担体として用いた場合に触媒成分を分散担持しやすくなり、電極としての反応性が向上した電極材が提供される。面間隔dが0.36[nm]以上、あるいは結晶子の大きさが1.1[nm]以下のカーボンは、結晶性が低いため燃料電池用の触媒担体として満たすべき耐久性を満足できないだけでなく、表面の酸化処理過程において、表面のみでなく、バルクまで酸化されやすい。これに対し、炭素材料の面間隔dが0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい場合には、燃料電池の電極材として、特に酸化性のガスにさらされる酸化剤極の電極材として必要な耐食性を有する。なお、炭素材料の結晶性については、XRD測定(X線回折測定)により求められる。
【0014】
炭素材料の表面は、酸化性ガス雰囲気で熱処理されている。結晶性の高い炭素材料は触媒担体として使用する場合には、白金を分散担持するためのサイトが少なくなり、結果的に電極触媒の反応性が乏しくなる。そこで、白金を分散担持するためのサイトを増やす目的で、炭素材料の表面を熱処理する。熱処理温度は大気中、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)による測定において10[℃/min]で昇温した場合の分解温度より、200[℃]から50[℃]程度低い温度で行うことが好ましい。表面のみが酸化しているかどうかの確認は、ラマン分光分析やTEM(透過型電子顕微鏡)観察により確認することができる。
【0015】
本発明の実施の形態に係る電極材は、表面に、炭素原子とは異なる種類の元素を含有する炭素材料を用いることが好ましい。この炭素原子とは異なる種類の元素により炭素材料表面に酸素由来の官能基が発生し、炭素材料の表面に親水的な性質が発現する。この親水的な性質により、溶液中において炭素材料単位面積あたりの容量が増加する。この炭素材料を燃料電池用の触媒担体として使用する場合には、触媒である白金を溶液中で分散させる過程において、親水性の発現により白金イオンの吸着能が増加する。このため、電極の担体として用いた場合に白金を分散担持しやすくなり、電極としての反応性が向上した電極材が提供される。
【0016】
炭素原子とは異なる種類の元素は、非金属元素であることが好ましい。非金属元素は、比較的酸素と結合しやすいという性質をもっているので、炭素材料の表面に酸素由来の官能基ができやすい。その結果、溶液中において炭素材料の単位面積あたりの容量が増加する。例えば、燃料電池用の触媒担体として炭素材料を使用する場合には、触媒である白金を溶液中で分散させる過程において、官能基が白金イオンの吸着能を増加する働きをする。白金イオンを炭素材料に吸着した後に白金イオンを還元することにより、炭素材料表面に白金微粒子が高分散する。
【0017】
非金属元素は、ホウ素、窒素、珪素及びリンの中から選択されたことが好ましい。ホウ素、窒素、珪素及びリンは、特に酸素と結合しやすいという性質をもっているため、炭素材料表面に酸素由来の官能基ができやすい。その結果炭素材料表面が親水的になり、白金イオンを分散・吸着させやすい。非金属元素の全体に占める割合は、30[wt%]以下であることが好ましく、20[wt%]以下であることがより好ましい。下限値としては特に制限はないが、0.05[wt%]以下の場合には非金属元素を含むことによる効果が発現しにくいため好ましくない。
【0018】
非金属元素は、ヘテロ原子であることが好ましい。炭素原子がヘテロ原子で置換されることにより、異種元素が安定な形で炭素材料中に存在し、白金を分散担持する効果も安定に発現しやすい。置換量としては3[wt%]以下であることが好ましい。なお、ここでヘテロ原子とは、芳香族炭化水素中で炭素原子と置換された原子のことである。
【0019】
このように、本発明の実施の形態に係る電極材は、少なくとも表面に、炭素原子とは異なる種類の元素を含有する炭素材料を用いたため、電極の担体として用いた場合に白金を分散担持しやすくなり、電極としての反応性が向上した電極材が提供される。そして、この電極材を燃料電池用触媒担体として用いた場合には、発電効率に優れた燃料電池が提供される。
【実施例】
【0020】
以下、実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例5及び参考例1,2により本発明について更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0021】
<実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例5>
炭素材料として、比較例1及び実施例1では、ホウ素を含有するカーボンブラックを用いた。その他はホウ素を含有しないカーボンブラックを用いた。実施例1〜実施例3については、材料を熱処理した。熱処理は大気中、TG/DTA測定において10[℃/min]で昇温した場合の分解温度より、20[℃]から50[℃]低い温度で行うこととし、熱処理温度は、実施例1では650[℃]、実施例1では690[℃]。実施例1では700[℃]で行った。分解温度の測定は、熱重量−示差熱同時分析により行った。測定には、セイコーインスツルメント製 熱重量−示差熱同時分析装置TG−DTA6300を用い、温度:室温〜1200[℃]、雰囲気:空気(100[ml/min])、昇温速度:10[℃/min]で測定した。
【0022】
各材料の面間隔d及び結晶子サイズLcは、各々X線回折測定結果より算出した。測定には、マックサイエンス社製 X線回折装置(MXP18VAHF)を用い、電流:40[kV]、電流:300[mA]、X線波長:CuKα、内部標準:Siで測定を行った。面間隔d及び結晶子サイズLcの算出にはシェラーの式により算出した。
【0023】
各材料のBET比表面積は、堀場製作所製 連続流動式表面積計 SA−9601を用い、窒素吸着BET一点法により測定した。
【0024】
各材料の単位面積あたりの容量は、各材料を用いて試験電極を作製し、図5に示す測定装置30を用いて電流を測定し、測定値から電気二重層容量を算出した。
【0025】
測定装置30は、北斗電工製HZ300を用いた。測定装置30は、ウォーターバス31と、試験槽32と、参照電極槽33と、測定器34とから構成された。ウォーターバス31は温度70[℃]に設定した。試験槽32には1[M]の硫酸酸性溶液を入れ、作製した試験電極32bと、作用極32cと、参照電極槽33と連通する塩橋の一端32dとを硫酸酸性溶液に浸漬した。硫酸酸性溶液には管32aを通して窒素ガスを吹き込んだ。試験電極32b及び作用極32cは測定器34に接続した。参照電極槽33には飽和塩化カリウム溶液を入れ、塩橋の他端33aと飽和カロメル電極(SCE)33bとを飽和塩化カリウム溶液に浸漬した。
【0026】
試験電極32bの作製について説明する。まず、炭素材料の粉末と水とナフィオン(登録商標)分散溶液とを所定の割合で混合し、スラリーを作製した。次に、予めリード線をつないだ金の板の上に、マイクロピペットでスラリーを塗布した後、乾燥して試験電極32bとした。そして、この電極32bを測定装置30の試験槽32の硫酸酸性溶液の中に浸漬した。
【0027】
測定は、温度70[℃]、窒素雰囲気化で行った。電位掃引速度は100[mV/s]、電位範囲は標準水素電極に対して、0.25[V]〜0.5[V]の間で行った。電位を掃引したときの電流の大きさから、次に示す式(1)によって電極の電気二重層容量を算出した。
【0028】
(電流)=(電気二重層容量)×(電位掃引速度)・・・式(1)
劣化試験は上記した測定装置を用い、標準水素電極33bを基準として1[V]の電圧をかけ続け、30[分]後、60[分]後、90[分]後に容量を測定し、60[分]後の容量が減少していないものを電極材として使用可能であると判断した。
【0029】
触媒活性(容量)は、次の式(2)の条件を満たす場合に電極材として使用可能であると判断した。
【0030】
(BET比表面積)×(単位面積あたりの容量)≧15 ・・・式(2)
表1に、熱処理の有無、処理温度、面間隔、結晶子サイズ、BET比表面積、単位面積あたりの容量、劣化試験前の材料の容量及び劣化試験後の容量を示す。また、図6に劣化試験において、時間と容量との関係を示す。
【表1】

【0031】
表1及び図6中のAに示すように、表面を熱処理した実施例1〜実施例3は、熱処理をしていることにより劣化試験によって容量が増加し、耐食性に優れていることがわかった。特にホウ素を含む実施例1では、BET比表面積の値が実施例2、実施例3より低い値を示すものの、単位面積あたりの容量が高い値を示し、更に劣化試験後も容量が高い値を示し、より耐食性に優れていることがわかった。
【0032】
比較例1〜比較例5のうち、炭素材料の面間隔が0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい比較例1〜比較例3については、図6中のBに示すように容量は劣化試験後においても劣化試験前とほぼ同じ値を示し、耐食性に優れていることがわかった。これに対し、炭素材料の面間隔が0.36[nm]以上であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]以下である比較例4及び比較例5については、図6中のCに示すように劣化試験後に容量の値が減少しており、耐食性が劣っていた。このように、炭素材料が表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔が0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい場合には、電極の担体として用いた場合に電極としての反応性が向上すると共に、電極の担体として必要な耐食性に優れることが示された。
【0033】
次に、炭素材料がホウ素を含有する場合の有効性について、参考例1及び参考例2を用いて説明する。
【0034】
<参考例1及び参考例2>
炭素材料として、参考例1ではホウ素を1.0[wt%]含有するアセチレンブラックを、参考例2ではホウ素を含有しないアセチレンブラックを用いた。参考例1及び参考例2で用いた材料は、共に比表面積は40[m]だった。
【0035】
表2に、用いた炭素材料の種類、ホウ素含有量、比表面積及び単位面積あたりの容量を示す。また、図7に、参考例1及び参考例2における単位面積あたりの容量を示す。なお、各材料の単位面積あたりの容量は、上記実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例5と同様の手順によって算出した。
【表2】

【0036】
表2及び図7より、用いた炭素材料がホウ素を含有する場合には、単位面積あたりの容量が約2倍に増加していた。電気二重層容量はイオンの近づけやすさを表していることにより、単位面積あたりの容量が約2倍に増加しているということは、炭素材料に2倍イオンを近づけやすいことを示しており、つまり、炭素材料の親水性が2倍になっていることを示している。このように、炭素材料がホウ素を含有する場合には、炭素材料に親水的な性質が発現して触媒成分を分散担持しやすくなり、電極の担体として用いた場合にホウ素を含有しない場合と比較して、電極としての反応性が向上したことが示された。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記実施の形態の開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料電池から構成される燃料電池スタックの外観を示す斜視図である。
【図2】燃料電池スタックの詳細な構成を示す展開図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る燃料電池の積層方向に沿う断面図である。
【図4】(a)本発明の実施の形態に係る電極触媒の概念図である。(b)炭素材料の結晶子の斜視図である。
【図5】電流を測定する装置を示す模式図である。
【図6】劣化試験において時間と容量との関係を示すグラフである。
【図7】参考例1及び参考例2で得られた電極の単位面積あたりの容量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
12 酸化剤極触媒層
21 炭素材料
22 触媒粒子
23 結晶子
24 異種原子
25 炭素六員環
26 六員環
27 ヘテロ原子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が酸化性ガス雰囲気で熱処理され、かつ面間隔が0.36[nm]未満であり、結晶子の大きさLcが1.1[nm]より大きい炭素材料を用いたことを特徴とする電極材。
【請求項2】
前記表面に、炭素原子とは異なる種類の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の電極材。
【請求項3】
前記元素は、非金属元素であることを特徴とする請求項2に記載の電極材。
【請求項4】
前記非金属元素は、ホウ素、窒素、珪素及びリンの中から選択されたことを特徴とする請求項3に記載の電極材。
【請求項5】
前記非金属元素は、ヘテロ原子であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電極材。
【請求項6】
前記電極材は、燃料電池用触媒担体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電極材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−34236(P2008−34236A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206345(P2006−206345)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】