電極板型抜装置、電極板の製造方法
【課題】電極活物質の剥離や脱離を防止する。
【解決手段】本発明の電極板型抜装置は、電極板の原板を支持可能な原板支持部と、原板支持部に刃先を向けて配置された抜き刃36と、原板支持部に支持された状態の原板に刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備える。抜き刃36は、第1の方向に延在する第1の延在部361と、第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部363と、第1の延在部361と第2の延在部363とを接続する角部367と、を有する。原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部361から角部367を経て第2の延在部363まで時間順次で変化するようになっている。
【解決手段】本発明の電極板型抜装置は、電極板の原板を支持可能な原板支持部と、原板支持部に刃先を向けて配置された抜き刃36と、原板支持部に支持された状態の原板に刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備える。抜き刃36は、第1の方向に延在する第1の延在部361と、第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部363と、第1の延在部361と第2の延在部363とを接続する角部367と、を有する。原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部361から角部367を経て第2の延在部363まで時間順次で変化するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板型抜装置、電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電気装置の電力源として電池セルが用いられている。繰返し充放電することが可能な電池セルである二次電池は、電力源の他に発電装置等の電力バッファとして用いられることもある。電池セルの構成例として、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層体を有する構成が挙げられる。電極板(正極板または負極板)は、集電材の表面に電極活物質が設けられたものである。電極板の製造方法の一例として、特許文献1に開示されている方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、集電材の母材の表面に電極活物質を塗布して電極板の原板を形成した後に、抜き型(トムソン型)を用いて原板を型抜きすることにより電極板を製造している。抜き型は、支持基板に帯状の抜き刃(トムソン刃)を垂直に固定し、抜き刃の近傍に弾性材料からなる押さえ部材を取付けたものである。抜き型を原板に押し付けていない状態で、押さえ部材が抜き刃よりも支持基板から突出している。
【0004】
支持台に支持されている原板に抜き型を押し付けると、押さえ部材が圧縮変形して、抜き刃が押さえ部材よりも支持基板から突出するようになる。原板が、押さえ部材の弾性反発力により支持台に向かって押圧されるとともに、抜き刃により切断される。原板を支持台に押圧しつつ切断するので、切断面が抜き刃の側面に追従することによる切断部の変位が軽減され、切断部の変位によるバリの発生や電極活物質の脱離が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−100288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術にあっては、次に説明するように、原板が切断部の近傍で集中的に圧縮され、電極板の周縁部、特に角部で電極活物質が集電材から剥離して脱離することがある。
【0007】
抜き刃は有限の板厚をもっており、刃先に向かうにつれて板厚が薄くなっている。抜き刃が原板に侵入するにつれて、切断部は、抜き刃の板厚方向すなわち原板の主面に沿う方向に押し広げられ、切断部の周縁部の原板は主面に沿う方向に圧縮される。
【0008】
切断部の近傍が押さえ部材により押圧されているので、切断部の周縁部で変位可能な範囲が切断部の近傍に限定され、切断部の近傍で原板が集中的に圧縮される。通常は、抜き刃を原板に垂直に押し当てて、抜き刃の全周でほぼ同時に原板を切断して型抜している。したがって、原板の圧縮による歪が抜き刃の周方向で緩和されにくくなり、切断部の近傍で原板が集中的に圧縮される。特に、電極板の角部になる部分では、角部に連続する2辺から同時に原板が圧縮される。
【0009】
原板が集中的に圧縮されると、電極活物質と集電材とで材質の違いにより機械特性が異なるので、電極活物質の変形が集電材の変形に追従できなくなる。すると、電極活物質と集電材との密着力が低下し、型抜の過程や型抜後に電極活物質が集電材から剥離して脱離してしまう。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑み成されたものであって、電極活物質の剥離や脱離を生じにくい電極板型抜装置および電極板の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、前記目的を達成するために以下の手段を採用している。
本発明の電極板型抜装置は、電極板の原板を支持可能な原板支持部と、前記原板支持部に刃先を向けて配置される抜き刃と、前記原板支持部に支持された状態の前記原板に前記刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備え、前記抜き刃は、第1の方向に延在する第1の延在部と、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部と、前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部と、を有し、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置が、前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が時間順次で変化するので、刃先が侵入して押し広げられる部位が原板内で時間順次で変化する。したがって、原板の圧縮される部位が時間順次で変化し、切断が進行する方向(以下、切断方向という)の前方や後方に圧縮による歪を逃がすことができるので圧縮力が緩和される。また、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。
【0013】
このように、切断部の近傍、特に角部で電極活物質の剥離が回避されるので、電極活物質の脱離を減らすことができる。抜き刃が複数の角部を有している場合には、原板に接触する刃先の位置が、少なくとも1つの角部に対して、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていれば、上述の効果が得られる。また、原板に接触する刃先の位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで、時間的に連続して変化してもよいし、断続的に変化してもよい。
【0014】
本発明に係る電極板型抜装置は、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
前記抜き刃を支持する支持基板を備え、前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対位置を変化させるとよい。
このようにすれば、抜き刃が支持基板に支持されるので、支持基板に対する刃先の位置が規定される。原板支持部に原板が支持された状態で、駆動系が支持基板と原板支持部との距離を変化させるので、原板と刃先との相対位置を高精度に制御することができる。
【0015】
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対的な姿勢を変化させるとよい。
このようにすれば、抜き刃が支持基板に支持されているので、原板に対する刃先の姿勢を高精度に制御することができる。支持基板と原板支持部との相対的な姿勢を変化させると、原板支持部に支持された原板に対して抜き刃が接触する部位が時間的に変化する。このように、抜き刃の所望の部位の刃先を原板に接触させることが可能になる。
【0016】
前記刃先が前記支持基板の主面と交差する向きに前記支持基板から突出しており、前記主面と前記刃先との距離が該抜き刃の部位で変化しているとよい。
このようにすれば、支持基板の主面と刃先との距離(以下、刃高という)が抜き刃の部位で変化しているので、例えば支持基板と原板支持部との間隔を変化させるだけでも、原板に接触する刃先の抜き刃における位置を変化させることができる。したがって、駆動系の構成をシンプルにすることが可能になり、電極板型抜装置の装置コストを低減することが可能になる。
【0017】
記抜き刃が、前記原板支持部と向かい合う平面に沿う方向に閉じた形状に形成されており、該抜き刃の内周面の前記刃先に向かう部分が前記平面の法線方向となす角度は、該抜き刃の外周面の前記刃先に向かう部分が前記法線方向となす角度よりも小さいとよい。
【0018】
このようにすれば、抜き刃が閉じた形状に形成されており、抜き刃の内周面に囲まれる部分が電極板として型抜される。また、抜き刃に向かう部分の傾斜は、外周面よりも内周面において緩やかであるので、抜き刃の侵入により切断部が押し広げられる量は、抜き刃の内周面側で外周面側よりも小さくなる。したがって、刃先の侵入により生じる電極活物質と集電材との間の圧縮力が内周面側で小さくなり、電極板になる部分で電極活物質の剥離を生じにくくなる。
【0019】
本発明の電極板の製造方法は、集電材の表面に電極活物質が設けられてなる電極板の原板を準備する原板準備工程と、第1の方向に延在する第1の延在部、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部、および前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部を有する抜き刃を準備する抜き刃準備工程と、前記原板に抜き刃の刃先を接触させ、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置を前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化させる処理を含んで前記原板を型抜きする型抜工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、上述のように、原板への刃先の侵入により圧縮力を生じる部位が原板内で時間順次で変化するので、圧縮力が集中的に作用することが回避される。原板に接触する刃先の位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。このように、切断部の近傍、特に角部で電極活物質の剥離が回避されるので、電極活物質の脱離を減らすことができる。抜き刃が複数の角部を有している場合には、少なくとも1つの角部に対して上記の条件を満たすことにより上述の効果が得られる。
【0021】
前記原板準備工程では、前記電極活物質が設けられている形成領域と、前記電極活物質が設けられていない非形成領域と、を有する前記原板を準備し、前記型抜工程では、前記原板において前記刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を前記非形成領域の内側に設定するとよい。
【0022】
刃先が接触する経路の始点では、原板の各点の相対位置が固定されているので、刃先の侵入による圧縮力を逃がすことが難しい。原板の切断に伴う歪は切断方向の前方に蓄積されやすいので、刃先が接触する経路の終点では原板の変形が大きくなりやすい。刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を非形成領域の内側に設定すれば、非形成領域に電極活物質が設けられていないので、始点における圧縮力の集中や終点における原板の変形による電極活物質の剥離を生じなくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、切断部の近傍の圧縮力が緩和され、また角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。したがって、電極活物質が圧縮力により集電材から剥離して脱離すること低減され、例えば電極活物質の量が減ることによる性能低下や集電材が露出することによる短絡の発生が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電池セルの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は電極板を示す平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。
【図3】電池セルの製造方法を概略して示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】駆動系を下方から、原板支持部を透かして見た斜視図である。
【図6】(a)は電極板型抜装置の上面図、(b)は電極板型抜装置の側面図である。
【図7】(a)は抜き型の平面図、(b)は(a)のB−B’線断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、抜き型の動きを示す説明図である。
【図9】第1実施形態の電極板型抜装置の動作例のタイミングチャートである。
【図10】(a)は原板が切断される切断方向を示す模式図、(b)は原板の切断部の近傍を拡大して示す断面図、(c)は切断部の近傍に働く力を示す説明図である。
【図11】は変形例1における駆動系を示す模式図である。
【図12】第2実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】(a)は抜き刃を拡大して示す斜視図、(b)は抜き刃の展開図である。
【図14】第3実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図15】(a)は、抜き刃を周方向に展開した平面図、(b)は電極板型抜装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。実施形態で説明する内容の全てが本発明に必須であるとは限らない。実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。本発明に係る電極板型抜装置および電池セルの製造方法の説明に先立ち、まず、電池セルの構成例について説明する。
【0026】
図1は、電池セルの構成例を示す分解斜視図、図2(a)は電極板の一例を示す平面図、図2(b)は図2(a)のA−A’線矢視断面図である。
【0027】
図1に示すように電池セル1は、内部に電解液を貯留する電池容器10を備える。電池セル1は、例えばリチウムイオン二次電池である。本発明の適用範囲は電池容器の形状や材質に限定されない。本例の電池容器10は、アルミニウム製の中空容器であり、外形が略角柱状(略直方体状)である。電池容器10は、開口を有する容器本体11と、この開口を塞いで容器本体11に接合された蓋12とを有している。
【0028】
蓋12には、電極端子13、14が設けられている。例えば、電極端子13が正極端子であり、電極端子14が負極端子である。電池容器10の内部に、複数の電極板15、16および複数のセパレータ17が収容されている。例えば、電極板15が正極板であり、電極板16が負極板である。複数の電極板15、16は、正極板と負極板とが交互に並ぶように繰り返し配置されている。
【0029】
セパレータ17は、一対の電極板15、16に挟まれて配置されており、電極板15、16が互いに直接接触しないようになっている。セパレータ17は、多孔質の絶縁材料等からなり、リチウムイオン等の電解成分を通すようになっている。実際には、複数の正極板、複数の負極板および複数のセパレータが積層されて積層体が構成されている。電池セル1は、電池容器10に前記積層体が収容された構造になっている。電解液は、電池容器10の内部で電極板15、16と接触するように貯留される。
【0030】
図2(a)に示すように電極板15は、母部150および電極タブ151を有している。母部150の平面形状は、例えば矩形の角部を丸めた略矩形状である。電極タブ151は、母部150の一辺を基端として母部150の外側に突出するように形成されている。電極タブ151が突出する方向は、例えば、前記基端を有する一辺(以下、タブ設置辺という)に略直交し、かつ母部150の主面に沿う方向である。電極タブ151は、タブ設置辺の片方に偏らせて形成されている。複数の電極板15の電極タブ151が一括して、電極端子13と電気的に接続されている。
【0031】
図2(b)に示すように電極板15は、集電材152および電極活物質153を有している。集電材152は、例えばアルミニウムや銅などからなり、厚みが例えば数十μm程度のシート状のものである。電極活物質153は、電解液の種類に応じた形成材料からなり、集電材152の両面に設けられている。電極活物質153の厚みは、例えば数十μm〜数百μm程度である。
【0032】
本例の電極板15は、電極活物質153が設けられている形成領域154と、電極活物質153が設けられていない非形成領域155とを有している。形成領域154は、母部150の略全体と、電極タブ151において母部150と連続する側の一部とにまたがっている。電極タブ151の先端側は、非形成領域155になっている。電極板15は、非形成領域155にて導電部材と接続され、この導電部材を介して電極端子13と電気的に接続される
【0033】
電極板16は、電極活物質の形成材料や、母部あるいは電極タブの寸法等が電極板15と異なり、構造や形状については電極板15と同様である。図1に示したように電極板16の電極タブ161は、電極板15の電極タブ151と重ならないように配置されている。複数の電極板16の電極タブ161が一括して、電極端子14と電気的に接続されている。
【0034】
図3は、電池セルの製造方法を概略して示すフローチャートである。
電池セル1を製造するには、ステップS1で集電材の母材に電極活物質を塗工する。母材は、例えば、ロール状に巻き取られた帯状の導電箔である。次いでステップS2で、電極活物質を母材に圧着し、また電極活物質を乾燥させる。必要に応じて後処理を行うこと等により、ステップS3で電極板の原板を完成させる。原板は、母材の両面に電極活物質が設けられたものである。このように、ステップS1〜S3で原板を準備する。本発明の適用範囲は、原板の準備方法に限定されない。例えば、製品化された原板を購入等により入手して準備してもよい。
【0035】
そして、予め抜き刃を準備しておき、ステップS4で原板から電極板を型抜すること等により、所望の形状の電極板を完成させる。例えば、本発明に係る電極板型抜装置を用いて電極板を型抜することができる。次いで、ステップS5で、正極板と負極板とをセパレータを介して積層することにより、積層体を形成する。次いで、ステップS6で、電池容器の内部に積層体を収容して封止する。例えば、容器本体に積層体を挿入する。そして、正極板を正極端子と電気的に接続し、また負極板を負極端子と接続する。そして、容器本体に蓋を溶接等により接合する。次いで、ステップS7で、電池容器の内部に電解液を注入して封止すること等により、電池セルが得られる。
【0036】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態の電極板型抜装置について説明する。また、本発明に係る電極板の製造方法の一実施形態について、電極板型抜装置の使用方法とあわせて説明する。
【0037】
図4は、第1実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図5は、駆動系を下方から、原板支持部を透かして見た分解斜視図、図6(a)は電極板型抜装置の上面図、図6(b)は電極板型抜装置の側面図、図7(a)は抜き型の平面図、図7(b)は図7(a)のB−B’線矢視断面図である。
【0038】
図4、図5に示すように第1実施形態の電極板型抜装置2は、原板支持部20、搬送ローラー21〜24、駆動系3、および抜き型34、35を備える。抜き型34、35は、例えばトムソン型であり抜き刃36、37としてのトムソン刃を有する。本実施形態の駆動系3は、制御部30、駆動部31および保持部32、33により構成されている。
【0039】
電極板型抜装置2の構成要素は、概ね下記のように配置されている。駆動部31は、原板支持部20の上方に設けられている。保持部32、33は、駆動部31の下方に配置されており、駆動部31に接続されている。抜き型34は、保持部32の下方に取付けられている。抜き型35は、保持部33の下方に取付けられている。
【0040】
保護シートの搬送用である搬送ローラー21、22は、原板支持部20の上面20aに沿う一方向(Y方向)に原板支持部20を挟んで設けられている。原板の搬送用である搬送ローラー23、24は、原板支持部20の上面20aに沿う一方向(Y方向)に保護シート用の搬送ローラー21、22を挟んで設けられている。前記一方向が、搬送ローラー21〜24による搬送方向になっている。
【0041】
電極板型抜装置2は、概略すると以下のように動作する。制御部30は、搬送ローラー21〜24および駆動部31を制御する。原板支持部20の上面20aに、原板91が搬送ローラー21〜24により搬送される。また、原板支持部20の上面20aに、保護シート90が搬送ローラー21、22により搬送される。原板91と上面20aとの間に保護シート90が配置されるように、原板91は保護シート90の上に重ね合わされて搬送される。制御部30は、所定の送り幅で原板91を搬送した後に搬送ローラー21〜24を停止させる。
【0042】
搬送ローラー21〜24が停止した後に、制御部30が駆動部31を制御し、駆動部31が保持部32、33を上下方向に移動させる。保持部32、33が下方に移動すると、抜き型34、35が原板支持部20の上面20aに向かって移動し、上面20aに搬送された原板91に抜き型34、35が押し当てられる。すると、抜き刃36、37が原板91を貫通して切断し、抜き刃36に囲まれる部分と抜き刃37に囲まれる部分とが、それぞれ電極板として原板91から型抜される。
【0043】
電極板が型抜された後に、保持部32、33が上方に移動し、抜き型34、35が原板91から上方に退避する。そして、搬送ローラー21〜24が、保護シート90および原板91を所定の送り幅で搬送する。これにより、型抜された部分の原板91が抜き型34,35の下方から搬送されてゆき、型抜されていない部分の原板91が抜き型34,35の下方に搬送されてくる。電極板型抜装置2は、上記の動作を繰り返して、原板91を繰返し型抜する。
【0044】
次に、電極板型抜装置2の構成要素について詳しく説明する。
原板支持部20は、原板91に抜き型34、35が押し当てられた状態で、原板91を下方から支持することが可能なものである。原板支持部20は、例えばワークテーブルであり、略平坦な上面20aを有している。
【0045】
保護シート90の搬送用である搬送ローラー21、22は、制御部30からの制御信号に基づいて駆動され、回転あるいは停止する。保護シート90は、搬送ローラー21、22に懸架され、搬送ローラー21、22の回転により搬送される。原板91を型抜するときに刃先が上面20aと直接接触しないように、保護シート90の厚みが設定されている。これにより、上面20aと刃先とが、互いの接触による損傷から保護される。
【0046】
原板91の搬送用である搬送ローラー23、24は、搬送ローラー21、22よりも下方に配置されている。原板91は、搬送ローラー23、24に懸架されて搬送される。原板91は、搬送ローラー23、24の間で搬送ローラー21、22に懸架されることにより、保護シート90と重ね合わされる。搬送ローラー23、24は、制御部30からの制御信号に基づいて駆動され、搬送ローラー21、22と同期して回転あるいは停止する。原板91は、搬送ローラー21〜24が停止した状態で、保護シート90と重ね合わされたまま抜き型34、35により型抜される。
【0047】
原板91は、集電材の母材の両面に電極活物質が設けられたものである。ここでは、原板91に部分的に電極活物質が設けられている。原板91の幅方向(X方向)の両端部は、電極活物質が設けられていない非形成領域93になっている。原板91の幅方向の中央部は、電極活物質が設けられている形成領域92になっている。
【0048】
駆動部31から下方に突出させて、主軸310、315および副軸311〜314、316〜319(以下、可動軸と総称する)が設けられている。駆動部31は、複数のアクチュエータを内包している。アクチュエータは、可動軸ごとに設けられている。複数のアクチュエータは、制御部30により互いに独立して制御される。複数のアクチュエータの各々は、対応する可動軸の下端が上下方向に移動するように、可動軸を動作させる。
【0049】
図6(a)、図6(b)に示すように、主軸310の下端は、保持部32の上面の中央部と接続されている。主軸310と保持部32との接続部は、回転支持により構成されている。この接続部により、主軸310の先端部と保持部32との相対位置が固定されており、主軸310と保持部32の主面とがなす角度を変化可能になっている。
【0050】
副軸311〜314の下端は、角が丸められており、保持部32の上面に滑り移動可能に当接している。保持部32の搬送方向(Y方向)の下流側の部分において、原板91の端部側の位置に第1の副軸311が当接しており、原板91の中央部側の位置に第2の副軸312が当接している。保持部32の搬送方向(Y方向)の上流側の部分において、原板91の中央部側の位置に第3の副軸313が当接しており、原板91の端部側の位置に第4の副軸314が当接している。第1の副軸311は、主軸310に対して第3の副軸313と対称的な位置に配置されている。第2の副軸312は、主軸310に対して第4の副軸314と対称的な位置に配置されている。
【0051】
主軸310および第1〜第4の副軸311〜314をいずれも同じ変位で上下方向に移動させると、保持部32が上下方向に移動する。すると、保持部32に取付けられている抜き型34が原板支持部20の上面20aに向かって移動し、上面20aに対する抜き型34の相対位置が変化する。主軸310を停止させた状態で、第1〜第4の副軸311〜314を互いに異なる変位で上下方向に移動させると、保持部32の姿勢が変化し、上面20aに対する抜き型34の相対的な姿勢が変化する。
【0052】
抜き型35は、原板91の幅方向(X方向)の中心線に対して抜き型34と対称的に設けられている。すなわち、主軸315は、回転支持により保持部33と接続されている。副軸316〜319の下端は、角が丸められており、保持部33の上面に滑り移動可能に当接している。保持部33の搬送方向の下流側の部分で、原板91の端部側の位置に第1の副軸316が当接しており、原板91の中央部側の位置に第2の副軸317が当接している。保持部33の搬送方向の上流側の部分で、原板91の中央部側の位置に第3の副軸318が当接しており、原板91の端部側の位置に第4の副軸319が当接している。主軸315および第1〜第4の副軸316〜319を上下方向に移動させると、上面20aに対する抜き型34の位置が変化する。主軸315を停止させた状態で、第1〜第4の副軸316〜319を互いに異なる変位で上下方向に移動させると、抜き型35の姿勢が変化する。
【0053】
図7(a)、図7(b)に示すように抜き型34は、支持基板34a、抜き刃36、および弾性部材38を備える。支持基板34aは、第1〜第4の角部a〜dを有している。第1の角部aは、第1の副軸311の概ね下方に位置しており、第1の副軸311と対応している。同様に、第2の角部bは第2の副軸312と、第3の角部cは第3の副軸313と、第4の角部dは第4の副軸314と、それぞれ対応している。
【0054】
支持基板34aの保持部32と反対側の主面34bには、この主面34bと交差する方向に刃先36cが向くように抜き刃36が設けられている。本実施形態の抜き刃36は、帯状のものであり、支持基板34aの主面34bに略垂直に取付けられている。支持基板34aの主面を平面視すると、抜き刃36は閉じた形状になっており、刃先36cは閉じた形状の内周に沿って連続している。抜き刃36の平面形状は、型抜の対象となる電極板の輪郭と略一致している。
【0055】
抜き刃36は、第1の延在部361、362、第2の延在部363、364、タブ形成部365、および第1〜第4の角部366〜369を有している。第1の延在部361、362は、第1の方向(ここではX方向)に延在している。第1の延在部361、362は、図2(a)に示した電極板15の母部150の一方の対辺(ここでは長辺)に対応している。第2の延在部363、364は、第1の方向に交差する第2の方向(ここでY方向)に延在している。第2の延在部363、364は、電極板15の母部150の他方の対辺(ここでは短辺)に対応している。
【0056】
タブ形成部365の一端は、第1の角部366と連続しており、他端は第2の延在部364と連続している。タブ形成部365は、電極板15の電極タブ151に対応している。原板91において電極活物質が設けられていない非形成領域93(図6(a)参照)にタブ形成部365が重なるように、抜き型34が配置されている。
【0057】
第1の角部366は、タブ形成部365の一端(Y正方向側)と連続し、かつ第1の延在部361の一端(X正方向側)と連続している。
第2の角部367は、第1の延在部361の他端(X負方向側)と連続し、かつ第2の延在部363の一端(Y正方向側)と連続している。
第3の角部368は、第2の延在部363の他端(Y負方向側)と連続し、かつ第1の延在部362の一端(X負方向側)と連続している。
第4の角部369は、第1の延在部362の他端(X正方向側)と連続し、かつ第2の延在部364の一端(Y負方向側)と連続している。
【0058】
本実施形態では、刃先36cの近傍で抜き刃36の内周面36bが支持基板34aの主面34bの法線方向となす角度が、外周面36aが主面34bの法線方向となす角度よりも小さくなっている。ここでは、抜き刃36の内周面36bが、主面34bに対して略垂直(前記角度が略0°)になっており、抜き刃36が片刃により構成されている。ここでは、主面34bと刃先36cとの距離(刃高)が、抜き刃36の周方向で略均一になっている。
【0059】
弾性部材38は、主面34bにおいて抜き刃36を除いた部分、すなわち抜き刃36の内側および外側に設けられている。弾性部材38は、抜き刃36よりも圧縮変形しやすい材質、例えばスポンジやゴム等からなる。弾性部材38は、その表面38aが刃先36cと略面一あるいは刃先36cよりも主面34bから突出するように設けられている。
【0060】
抜き型35(図5参照)は、支持基板35a、抜き刃37、および弾性部材39を有している。支持基板35aは支持基板34aと同様のものであり、抜き刃37は抜き刃36と、弾性部材39は弾性部材38と、それぞれ同様のものである。
【0061】
次に、電極板型抜装置2の動作について説明する。図8(a)は図7(a)のD−D’線矢視断面にて抜き型の動作例を示す説明図、図8(b)は図7(a)のE−E’線矢視断面にて抜き型の他の動作例を示す説明図、図8(c)は抜き型の姿勢変化の例を示す斜視図、図9は電極板型抜装置の動作の一例を示すタイミングチャート、図10(a)は抜き刃による切断方向を示す平面図、図10(b)は原板を切断しているときの抜き刃を拡大して示す断面図、図10(c)は原板に働く力を模式的に示す説明図である。図8(a)、図8(b)には、抜き型の傾きを誇張して図示している。
【0062】
図8(a)に示す動作例は、図6(a)に示した第2、第4の副軸312、314を移動させないで、第1の副軸311を所定の変位だけ下方に移動させ、かつ第3の副軸313を前記所定の変位だけ上方に移動させた例である。保持部32が主軸310に回転支持されているので、保持部32が第1の副軸311に押し下げられて回動軸F1周りに回動する。これにより、抜き型34の第1の角部aが原板支持部20に近づくとともに、第3の角部cが原板支持部20から遠ざかる。
【0063】
原理的に回動軸F1は、第2の副軸312と保持部32とが当接する位置および主軸310と保持部32との接続部の位置を結ぶ線、または第4の副軸314と保持部32とが当接する位置および主軸310と保持部32との接続部の位置を結ぶ線に略平行になる。この例では、回動軸F1が、第2の角部bと第4の角部dとに対応する対角線に略平行になる。第2、第4の副軸312、314を移動させないで、第1の副軸311を上方に移動させ、かつ第3の副軸313を下方に移動させると、回動軸F1は変化せずに保持部32が回動する向きが反転する。
【0064】
第1、第3の副軸311、313を移動させないで、第2の副軸312を上方に移動させ、かつ第4の副軸314を下方に移動させると、図8(c)に示すように第1の角部aと第3の角部cとに対応する対角線に略平行な回動軸F2周りに、抜き型34が回動する。これにより、第4の角部dが原板支持部20に近づくとともに、第2の角部bが原板支持部20から遠ざかる。
【0065】
図8(b)に示す動作例は、第1、第4の副軸311、314を所定の変位だけ下方に移動させ、かつ第2、第3の副軸312、313を前記所定の変位だけ上方に移動させた例である。保持部32が第1、第4の副軸311、314に押し下げられて回動軸G1周りに回動する。これにより、第1、第4の角部a、dが原板支持部20に近づくとともに、第2、第3の角部b、cが原板支持部20から遠ざかる。
【0066】
原理的に回動軸G1は、第1の副軸311と保持部32とが当接する位置、および第4の副軸314と保持部32とが当接する位置を結ぶ線に略平行になる。この例では、回動軸G1が、第1の角部aと第4の角部dとの間の辺に略平行になる。第1、第4の副軸311、314を上方に移動させ、かつ第2、第3の副軸312、313を下方に移動させると、回動軸G1は変化せずに保持部32が回動する向きが反転する。
【0067】
第1、第2の副軸311、312を上方に移動させ、かつ第3、第4の副軸313、314を下方に移動させると、図8(c)に示すように第1の角部aと第2の角部bとの間の辺に略平行な回動軸G2周りに、抜き型34が回動する。これにより、第3、第4の角部c、dが原板支持部20に近づくとともに、第1、第2の角部a、bが原板支持部20から遠ざかる。
【0068】
主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ下方に移動させると、抜き型34の全体が下方に平行移動して原板支持部20に近づく。主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ上方に移動させると、抜き型34の全体が上方に平行移動して原板支持部20から遠ざかる。
以上のように、抜き型34を3次元的に変位させることができ、抜き型34の位置および姿勢を制御することが可能になっている。
【0069】
図9に示すように、t0よりも前に制御部30は、搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送し、t0に搬送ローラー21〜24を停止させる。保護シート90および原板91の搬送過程で、抜き型34は原板91に接触しない程度のマージンをとって原板支持部20から離れた初期位置に保持されている。t0よりも前の時間では、抜き型34を初期位置に保持するように、主軸310および第1〜第4の副軸311〜314が所定の位置(退避位置、図9では退避と略記している)に保持されている。
【0070】
制御部30は、t0からt1の間に主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ下方に移動させて近接位置(図9では近接と略記している)に向かわせる。近接位置は、例えば弾性部材38の表面38aが原板91の表面に接触する程度に設定される。
【0071】
制御部30は、t1からt7の間に主軸310を近接位置に待機させる。制御部30は、t1からt2の間に第1の副軸311を下位置(図9では下と略記している)まで移動させ、第3の副軸313を上位置(図9では上と略記している)まで移動させるとともに、第2、第4の副軸312、314を近接位置に待機させる。
【0072】
第1の副軸311を近接位置から下方に押し下げると、抜き型34が接触位置よりも下方に押し下げられる。すると、弾性部材38が圧縮変形し、その反発力により原板91が原板支持部20の上面20a側に押し付けられる。第1の副軸311を押し下げていくと、図10(b)に示すように、抜き刃36が弾性部材38の表面よりも下方に突出して原板91に接触し、やがて抜き刃36の刃先36cが原板91に侵入し、原板91を貫通して切断する。
【0073】
第1の副軸311を下位置まで移動させた状態で抜き刃36において最も下方に位置する部位が、原板91を貫通しつつ保護シート90を貫通しないように、近接位置から下位置までの変位が設定されている。本例では、近接位置から上位置までの変位は、近接位置から下位置までの変位と略一致している。
【0074】
t2で第1の角部aが最も下方に位置している。第1の角部aの付近に配置されている部位であるタブ形成部365の少なくとも一部は、t1からt2の間に原板91を貫通し、電極タブ151の少なくとも一部を形成する。
【0075】
制御部30は、t2からt3の間に第1、第3の副軸311、313を待機させ、第2の副軸312を下位置まで移動させるとともに、第4の副軸314を上位置まで移動させる。t2からt3の間に第2の角部bが押し下げられ、第1の延在部361の刃先36cが、第1の角部aから第2の角部bに向かう切断方向H1に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を貫通して切断する。そして、抜き刃36の第2の角部367が原板91を切断した後、第2の角部367と連続する第2の延在部363が原板91を切断する。
【0076】
制御部30は、t3からt4の間に第2、第4の副軸312、314を待機させ、第1の副軸311を上位置まで移動させるとともに、第3の副軸313を下位置まで移動させる。t3からt4の間に第3の角部cが押し下げられ、第2の延在部363が、第2の角部bから第3の角部cに向かう切断方向H2に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。そして、抜き刃36の第3の角部368が原板91を切断した後、第3の角部368と連続する第1の延在部362原板91を切断する。
【0077】
制御部30は、t4からt5の間に第1、第3の副軸311、313を待機させ、第2の副軸312を上位置まで移動させるとともに、第4の副軸314を下位置まで移動させる。t4からt5の間に第4の角部dが押し下げられ、第1の延在部362が、第3の角部cから第4の角部dに向かう切断方向H3に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。そして、抜き刃36の第4の角部369が原板91を切断した後、第4の角部369と連続する第1の延在部362が原板91を切断する。
【0078】
制御部30は、t5からt6の間に第2、第4の副軸312、314を待機させ、第3の副軸313を上位置まで移動させるとともに、第1の副軸311を下位置まで移動させる。t5からt6の間に第1の角部aが押し下げられ、第2の延在部364が、第4の角部dからタブ形成部365に向かう切断方向H4に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。
【0079】
以上のように、t1からt6の間に、抜き刃36のうちで原板91と接触する部位は、抜き刃36における位置が時間的に変化する。ここでは、原板91と接触する部位が、抜き刃36の周方向の一方(図10では時計回り)に概ね沿って時間順次で変化する。これにより、原板91が抜き刃36のパターンに切断され、抜き刃36に囲まれる部分が原板91から電極板として型抜される。型抜された電極板は、図示略の分離手段により原板91から分離される。
【0080】
制御部30は、t6からt7の間に第1〜第4の副軸311〜314を近接位置まで移動させる。そして、制御部30は、t7からt8の間に、主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を退避位置まで移動させる。そして、制御部30は、t8に搬送ローラー21〜24の回転を開始させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送する。
【0081】
制御部30は、抜き型35についても抜き型34と同様に動作させる。このように電極板型抜装置2は、原板91の幅方向の両側でほぼ同時に電極板を型抜する。また、制御部30は、以下同様にして、t0からt8までの動作を繰り返し実行させ、電極板型抜装置2は、繰り返し原板91を型抜する。
【0082】
図10(b)に示すように、原板91に抜き刃36が侵入すると、抜き刃36の両側の切断部は、侵入した部分の抜き刃36の厚み分だけ互いに離れる方向に押し広げられる。原板91は、切断部が押し広げられた分だけ、原板91の主面に沿う方向に圧縮される。切断部の近傍の原板91は、原板91の主面に沿う方向の圧縮力J1、J2を受ける。電極活物質と集電材とで材質が異なり機械特性が異なる。したがって、圧縮力の大きさがある程度以上になると、集電材と電極活物質とが互いに追従して変形することができなくなり、集電材と電極活物質との間の密着力が低下し、型抜の過程や型抜後の電極板において集電材から電極活物質が剥離しやすくなる。
【0083】
通常の電極板型抜装置では、抜き刃の全周でほぼ同時に原板を切断している。したがって、切断部の歪が抜き刃の周方向に逃げにくくなり、圧縮力が緩和され難くなるので、電極活物質が剥離しやすくなる。特に、抜き刃の角部に切断される部分の原板は、角部に連続する一辺と他辺に沿って2方向からせん断力を受けるので、電極活物質の剥離を生じやすくなる。このように、通常の電極板型抜装置では、切断部の近傍、特に電極板の角部になる部分で、電極活物質の剥離を生じやすくなっている。
【0084】
第1実施形態の電極板型抜装置2にあっては、抜き刃36において原板91に接触する部位が時間的に変化する。したがって、図10(c)に示すように切断部94の先端位置が時間的に変化し、圧縮力J1、J2が切断方向の前方や後方等に分散される。切断方向の後方における切断部94は自由端になっているので、切断方向の後方に向かって原板の変形が許容され、圧縮による歪が緩和されて圧縮力J1、J2が小さくなる。また、抜き刃36が片刃により構成されており、抜き刃36の内周面が原板91の主面に略垂直であるので、抜き刃36の内周面側の圧縮力J1が小さくなる。このように、圧縮力J1、J2を小さくすることや分散させることができるので、圧縮力J1、J2に起因する電極活物質の剥離が低減される。
【0085】
また、抜き刃36の第2の角部367において、第1の延在部361に連続する部分と、第2の延在部363に連続する部分とで原板91に接触するタイミングがずれている。したがって、電極板の角部になる部分に2方向からせん断が働くことが回避され、電極活物質の剥離が格段に低減される。第1、第3、第4の角部366、368、369においても同様に、電極活物質の剥離が格段に低減される。
【0086】
ところで、原板91において、1回の型抜工程で最初に切断された部分(起点)や最後に切断された部分(終点)は、他の部分と比較して、原板91の変形や電極活物質が剥離しやすいと考えられる。最初に切断される部分は、抜き刃36の侵入による衝撃力を受けやすく、また抜き刃36の侵入による圧縮力の逃げ場がないからである。また、最後に切断される部分は、切断の進行に伴って原板91の歪が蓄積しやすいからである。
【0087】
第1実施形態では、タブ形成部365が原板91に対して最初に接触するように抜き型34が動作する。すなわち、最初に切断される部分は、電極タブ151に対応する部分であり、この部分に電極活物質の剥離を生じたとしても電池性能の低下を生じにくい。そもそも、タブ形成部365が非形成領域93に重なるように抜き型34が配置されているので、最初に切断される部分が非形成領域93に位置しており、この部分に電極活物質の剥離を生じることがない。また、タブ形成部365が、原板91に対して最後に接触するように抜き型34が動作するので、電極板15の母部150の歪を電極タブ151に吸収させることができる。
【0088】
このように、原板91の変形や電極活物質の剥離による悪影響を受けにくい部分が起点あるいは終点になるように、抜き型34の配置や動作が設定されているので、高品質な電極板を製造することができる。
【0089】
抜き刃36が支持基板34aに支持されており、駆動部31が支持基板34aと原板支持部20との相対位置を変化させるので、刃先36cと原板91との相対位置を高精度に制御することができる。
【0090】
抜き刃36において原板91に向かって最も突出する部位が時間的に変化するように、駆動部31が制御されている。これにより、抜き刃36の所望の部位の刃先36cを原板91に接触させ、所望の刃高まで原板91に侵入させることが可能になる。したがって、原板91に抜き刃36が侵入する量(以下、侵入量という)を抜き刃36の部位ごとに高精度に制御することができ、抜き刃36の周方向で侵入量を揃えることができる。切断部の近傍で原板が圧縮される量(変位)は、抜き刃36の侵入量に応じて定まるので、原板の変位を抜き刃36の周方向で揃えることができ、変位の不均一性に起因する電極活物質の剥離や脱離を減らすことができる。また、抜き刃36の周方向で侵入量を揃えることができるので、侵入量を電極板の切断に必要な最小限の値にすることができる。これにより、原板が圧縮される量を最小限にすることができ、電極活物質の剥離や脱離を減らすことができる。
【0091】
制御部30が、駆動部31と搬送ローラー21〜24とを同期させて制御するので、型抜工程を自動化することができ、効率よく電極板を製造することができる。主軸310により保持部32の位置を規制しつつ保持部32の姿勢を変化させるので、抜き刃36が原板91を切断している過程で、抜き刃36と原板91とが抜き型34の主面に沿う方向に位置ずれを生じにくくなる。したがって、抜き刃36の形状を正確に原板91に転写して電極板を型抜することができ、高精度な形状の電極板を製造することができる。第1〜第4の副軸311〜314の上下移動のみでも抜き型34の姿勢を高い自由度で制御可能であるので、制御部30による制御の方法や駆動部31の機構が複雑になることが回避される。
【0092】
以上のように第1実施形態の電極板型抜装置2によれば、電極活物質からなる電極活物質の剥離を低減することができる。したがって、電極板あたりの電極活物質の量が減少することによる電池性能の低下が回避され、高性能な電池セルを構成することが可能になる。また、電極活物質に剥離による集電材の露出が回避され、集電材の露出による短絡が回避されるので、不具合を生じにくい電池セルを構成することが可能になる。
また、本発明の電極板の製造方法によれば、上述の理由により、電極活物質からなる電極活物質の剥離を低減することができ、高性能な電池セルを構成することが可能な電極板を製造することができる。
【0093】
なお、駆動系3については、抜き型34、35の位置および姿勢を制御可能なものであれば、その構成に限定されない。例えば、下記の変形例1の駆動系を採用してもよい。
【0094】
図11は、変形例1の駆動系の概略構成を模式的に示す斜視図である。図11に示すように、変形例1における駆動系3Bは、制御部30B、駆動部31B、および保持部32Bを備える。駆動部31Bは、回転部311B〜313B、および接続ロッド314B〜316Bを有する。
【0095】
回転部311Bは、例えば略円板状のものであり、回転軸からずれた位置に接続ロッド314Bの一端が回転支持により接続されている。接続ロッド314Bの他端は、保持部32Bと回転支持により接続されている。回転部312B、313Bは、回転部311Bと同様のものであり、接続ロッド315B、316Bは接続ロッド314Bと同様のものである。回転部312Bは、接続ロッド315Bを介して保持部32Bと接続されている。回転部313Bは、接続ロッド316Bを介して保持部32Bと接続されている。保持部32Bが接続ロッド314B〜316Bの各々に支持される支点は、同一直線上に並ばないように設定されている。3つの支点により1つの平面が定まり、回転部311B〜313Bの回転角に応じて保持部32Bの位置および姿勢が制御される。
【0096】
保持部32Bには、例えば第1実施形態と同様の抜き型34が、抜き刃36を原板支持部20に向けて取付けられる。制御部30Bは、回転部311B〜313Bの各々の回転角を示す制御信号を駆動部31Bに供給する。駆動部31Bは、制御信号に基づいて回転部311B〜313Bを互いに独立に回転させる。例えば、回転部311B〜313Bの回転角を揃えて制御することや、回転部311B〜313Bの回転角を互いに異なる値で制御することが可能になっている。
【0097】
回転部311B〜313Bの回転角を揃えて変化させると、保持部32Bが上下方向に平行移動し、原板91に対する抜き刃36の位置が変化する。回転部311B〜313Bの回転角を互いに異ならせて制御すると、保持部32Bの姿勢し、原板91に対する抜き刃36の姿勢が変化する。
【0098】
変形例1の駆動系3Bにあっては、第1実施形態の駆動系3と比較して、駆動対象(変形例1では回転部311B〜313B)の数を減らすことができ、駆動系3Bの構成をシンプルにすることができる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電極板型抜装置について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、2つの抜き刃が1つの抜き型に設けられている点、支持基板から抜き刃の刃先までの高さが抜き刃の周方向で変化している点、および原板を切断するときに駆動系が抜き型を上下方向のみに移動させる点である。
【0100】
図12は、第2実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図13(a)は抜き刃を拡大して示す斜視図、図13(b)は抜き刃を周方向に沿って展開した平面図である。図12では、第1実施形態と共通の構成要素についてはその一部の図示を省略している。図13(a)、図13(b)では、刃高を誇張して図示している。
【0101】
図12に示すように、第2実施形態の電極板型抜装置4は、制御部40、駆動部41、保持部42、および抜き型43を備える。また、電極板型抜装置4は、図4に示した原板支持部20および搬送ローラー21〜24を備えている。
【0102】
駆動部41は、下方すなわち原板91に向かう方向に延びる支柱410を有している。制御部40は、駆動部41に制御信号を供給し、駆動部41は制御信号に基づいて支柱410を上下移動させる。保持部42は、駆動部41の下方に設けられており、支柱410の下端と固定されている。支柱410の上下移動に伴って、保持部42は上下方向に平行移動する。保持部42の下方に抜き型43が取付けられている。
【0103】
抜き型43は、支持基板44、抜き刃45、46、および弾性部材47を有する。抜き刃46は、抜き刃45と同様のものであり、搬送方向に平行な対称軸に対して抜き刃45と対称的に設けられている。抜き刃45、46は、共通の支持基板44に設けられている。弾性部材47は、第1実施形態の弾性部材38、39が一体化されたものであり、抜き刃45、46に共通して設けられている。
【0104】
図13(a)、図13(b)に示すように抜き刃45は、原板91と向かい合わされる支持基板44の主面44aから刃先450を突出させて設けられている。型抜工程を行うときに、主面44aは原板91の主面と略平行に配置される。主面44aを平面視した状態で、刃先450は閉じた形状に沿って連続しており、この閉じた形状は、型抜の対象となる電極板の輪郭と略一致している。
【0105】
抜き刃45は、第1の延在部451、452、第2の延在部453、454、タブ形成部455、および第1〜第8の角部45a〜45hを備える。第1の延在部451、452は、例えば図2に示した電極板15の母部150の長辺を形成する部分である。第2の延在部453、454は、例えば母部150の短辺を形成する部分である。タブ形成部455は、例えば電極タブ151を形成する部分である。
【0106】
第1〜第8の角部45a〜45hは、抜き刃45の周方向に順に並んでいる。
第1、第8の角部45a、45hは、電極タブ151の先端に対応する部分である。
第2、第7の角部45b、45gは、電極タブ151の基端に対応する部分である。
第3の角部45cは、第1の延在部451とタブ形成部455との接続部分である。
第4の角部45dは、第1の延在部451と第2の延在部453との接続部分である。
第5の角部45eは、第2の延在部453と第1の延在部452との接続部分である。
第6の角部45fは、第1の延在部452と第2の延在部454との接続部分である。
第7の角部45gは、第2の延在部454とタブ形成部455との接続部分である。
【0107】
本実施形態では、主面44aから刃先450までの距離(刃高)は、第1の角部45aで最も高くなっており、第8の角部45hで最も低くなっている。刃高は、第1の角部45aから第2の角部45bを経て第8の角部45hに至るまで、単調に減少している。刃高は、第1の角部45aから第2の角部45bと反対の周方向に沿って第8の角部45gに至るまで、単調に減少している。
【0108】
以上のような構成の電極板型抜装置4において、保持部42が下方に移動すると抜き刃45が原板91に接触する。抜き刃45において刃高が高い部位であるほど、原板91に接触するタイミングが早くなる。
【0109】
詳しくは、まず第1の角部45aが原板91を貫通して切断し、第1の角部45aから第2の角部45bに向かう方向と、第1の角部45aから第8の角部45hに向かう方向に原板91の切断が進行する。すなわち、第1の角部45aと接触する部分の原板91が、原板91に刃先450が接触する経路の始点になる。
【0110】
次に、第2の角部45bから第3の角部45cまでが時間順次で原板91を切断する。次に、第1の延在部451から第4の角部45dを経て第2の延在部453までが時間順次で原板91を切断する。次に、第2の延在部453から第5の角部45eを経て第1の延在部452までが時間順次で原板91を切断する。次に、第1の延在部452から第6の角部45fを経て第2の延在部454までが時間順次で原板91を切断する。次に、第2の延在部454から第7の角部45gを経て第8の角部45hまでが時間順次で原板91を切断する。また、第1の角部45aから第2の角部45bを経て第8の角部45gまでが原板91を切断する期間に、第1の角部45aから第2の角部45bと反対の周方向に沿って第8の角部45hまでが原板91を時間順次で切断する。すなわち、第8の角部45hと接触する部分の原板91が、原板91に刃先450が接触する経路の終点になる。このように、電極タブ151の先端に対応する第1、第8の角部65a、65hが、それぞれ、切断経路の始点、終点になっている。
【0111】
第2実施形態の電極板型抜装置4にあっては、抜き刃45において原板91に接触する部位が、抜き刃45の周方向に時間順次で変化する。したがって、原板91の切断部の位置が時間的に変化し、電極活物質の剥離や脱離が低減される。抜き刃45の第4の角部45dにおいて、第1の延在部451に連続する部分と、第2の延在部453に連続する部分とで原板91に接触するタイミングがずれるので、電極板の角部になる部分に2方向からせん断が働くことが回避される。第2、第3、第5〜第7の角部45b、45c、45e〜45hにおいても同様の理由により2方向からせん断が働くことが回避される。このように、電極活物質と集電材との間に作用するせん断力が、電極板の周縁部、特に角部になる部分で低減されるので、電極活物質の剥離や脱離を低減することができる。
【0112】
また、刃先450の刃高が抜き刃45の周方向で変化しているので、抜き型43の姿勢を変化させなくとも、抜き刃45において原板91に接触する部位を時間順次で変化させることができる。したがって、制御部40による制御の方法や駆動部41の機構を簡略化することができ、電極板型抜装置の装置コストを下げることができる。
【0113】
[第3実施形態]
【0114】
次に、第3実施形態の電極板型抜装置について説明する。第3実施形態が第1、第2実施形態と異なる点は、平板状の抜き型に代えて円柱状の抜き型(ロータリーダイカッター)を備えている点である。
【0115】
図14は、電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図15(a)は回転体の外周面に沿って展開した抜き刃の平面図、図15(b)は電極板型抜装置の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【0116】
図14に示すように、電極板型抜装置5は、原板支持部20、搬送ローラー21〜24、駆動系6、および回転体64を備える。駆動系6は、制御部60、駆動部61、および支柱62、63を有している。回転体64は、円柱状の回転体本体65、回転軸65a、65b、および回転体本体65の外周面に設けられた抜き刃66、67を有している。
【0117】
駆動部61は、原板支持部20の上方に設けられている。駆動部61から下方に突出させて、支柱62、63が設けられている。支柱62、63は、搬送ローラー21〜24による搬送方向に並んでいる。回転軸65aは、支柱62に回転可能に取り付けられている。回転軸65bは、支柱63に回転可能に取付けられている。
【0118】
駆動部61は、制御部60から供給される制御信号に基づいて、支柱62、63を移動させ、また回転体64を回転させる。詳しくは、駆動部61は、支柱62、63を互いに独立して上下方向に移動させる。支柱62、63を同じ変位で上下方向に移動させると、回転体64が上下方向に平行移動し、回転体64が原板支持部20に向かって進退制御される。支柱62、63を異なる変位で上下方向に移動させると、回転軸65a、65bの軸方向が変化し、回転体64の姿勢が変化する。また、駆動部61は、回転体64の回転と同期させて、支柱62、63を搬送方向と交差する方向に移動させ、回転体64が原板91に対して滑らずに回転するように、回転体64を移動させる。
【0119】
図14、図15(a)に示す基準線Kは、回転体本体65の外周面に位置し、回転軸と平行な線分である。図15(a)に示すように、抜き刃66、67の平面形状は、第1実施形態の抜き刃36、37と同様である。抜き刃67は、回転体本体65の外周面を平面に展開した状態で、回転体本体65の軸方向に平行かつ周方向に直交する対称線に対して、対称的に設けられている。
【0120】
抜き刃66は、第1の延在部661、662、第2の延在部663、664、タブ形成部665、および第1〜第4の角部66a〜66dを有している。第1の延在部661、662は、回転体本体65の周方向(第1の方向)に延在している。第2の延在部663、664は、回転体本体65の軸方向(第2の方向)に延在している。
【0121】
第1の角部66aで、第1の延在部661の一端と、タブ形成部665の一端とが接続されている。第2の角部66bで、第1の延在部661の他端と、第2の延在部663の一端とが接続されている。第3の角部66cで、第2の延在部663の他端と、第1の延在部662の一端とが接続されている。第4の角部66dで、第1の延在部662の他端と、第2の延在部664の一端とが接続されている。第2の延在部664の他端は、タブ形成部665の他端と接続されている。
【0122】
抜き刃67は、第1の延在部671、672、第2の延在部673、664、タブ形成部675、および第1〜第4の角部67a〜67dを有している。第1の延在部671、672は、回転体本体65の周方向に延在している。第2の延在部673、674は、回転体本体65の軸方向に延在している。
【0123】
第1の角部67aで、第1の延在部671の一端と、タブ形成部675の一端とが接続されている。第2の角部67bで、第1の延在部671の他端と、第2の延在部673の一端とが接続されている。第3の角部67cで、第2の延在部673の他端と、第1の延在部672の一端とが接続されている。第4の角部67dで、第1の延在部672の他端と、第2の延在部674の一端とが接続されている。第2の延在部674の他端は、タブ形成部675の他端と接続されている。
【0124】
本実施形態では、型抜工程の開始直前に、タブ形成部665が原板91の一方の非形成領域93の直上に位置するように、回転体64の初期的な位置および回転角が設定されている。回転体64が概ね一回転すると、タブ形成部675が原板91の他方の非形成領域93と重なるようになっている。
【0125】
図15(b)に示すように、t20よりも前に制御部60は、搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送し、t20に搬送ローラー21〜24を停止させる。t20よりも前に支柱(以下、第1の支柱という)62および支柱63(以下、第2の支柱という)は、上位置に保持されている。第1、第2の支柱62、63が上位置に保持されているときに、回転体64が原板91に接触しないようになっている。
【0126】
制御部60は、t20からt21の間に第1の支柱62および第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、抜き刃66のうちで最も原板支持部20に向かって突出している部分(タブ形成部665の一部)が、原板91を貫通して切断する。制御部60は、t21からt22の間に回転体64を正回転させる。正回転は、抜き刃66において原板支持部20に向かい合う部位が、タブ形成部665から第1の延在部661、662を経て第2の延在部663に変化するような回転方向である。t20からt22の間にタブ形成部665、次いで第2の延在部664が原板91と接触し、切断方向M1に沿って原板91が切断される。
【0127】
制御部60は、t22からt23の間に第1の支柱62を下位置に待機させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。制御部60は、t23からt24の間に回転体64を正回転させる。これにより、第1の延在部661が、第1の角部66aから第2の角部66bに向かう切断方向M2に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0128】
制御部60は、t24からt25の間に第1の支柱62を上位置に移動させ、第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、第2の延在部663が、第2の角部66bから第3の角部66cに向かう切断方向M3に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0129】
制御部60は、t25からt26の間に第1の支柱62を上位置に待機させ、第2の支柱63を下位置に待機させるとともに、抜き刃67のうちで第3の角部67cが最も原板支持部20に接近するまで回転体64を正回転させる。
【0130】
制御部60は、t26からt27の間に第1の支柱62を下位置に移動させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。これにより、第2の延在部673が、第3の角部67cから第2の角部67bに向かう切断方向M4に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0131】
制御部60は、t27からt28の間に回転体を正回転させる。これにより、第1の延在部671が、第2の角部67bから第1の角部67aに向かう切断方向M5に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0132】
制御部60は、t28からt29の間に第1の支柱62を下位置に待機させ、第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、第2の延在部674が、タブ形成部675から第4の角部67dに向かう切断方向M6に沿って、時間順次で原板91を切断する。
制御部60は、t29からt30の間に回転体64を正回転させる。これにより、タブ形成部675が原板91と接触して、切断方向M7に沿って原板91が切断される。
【0133】
制御部60は、t30からt31の間に第1の支柱62を上位置に移動させ、第2の支柱63を下位置に待機させる。制御部60は、t31からt32の間に回転体64を逆回転させる。逆回転は、抜き刃67において原板支持部20に向かい合う部位が、タブ形成部675から第1の延在部671、672を経て第2の延在部673に変化するような回転方向である。t31からt32の間に、抜き刃67の第1の延在部672、次いで抜き刃66の第1の延在部662が原板91と接触して、第4の角部67dから第4の角部66dに向かう切断方向M8に沿って原板91が切断される。
【0134】
制御部60は、t32からt33の間に第1の支柱62を上位置に待機させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。制御部60は、t33から後の時間に搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送する。電極板型抜装置5は、以下同様にt20からt33までの動作を繰り返すことにより、原板91を繰り返し型抜する。
【0135】
以上のような第3実施形態の電極板型抜装置5にあっては、抜き刃66、67において原板91に接触する部位は、回転体64の回転により回転体64の周方向に変化し、支柱62、63の上下移動により回転体64の軸方向に変化する。したがって、原板91の切断部の位置が時間的に変化し、第1、第2実施形態と同様の理由により、電極活物質の剥離や脱離が低減される。
【0136】
抜き刃66、67が、円柱状の回転体本体65の外周面に設けられているので、次に説明するように、抜き刃66、67のうちで原板91に接触する部位を高精細な空間分解能で制御可能になる。理論的に、円柱の外周面は平面と線で接する。つまり、抜き刃66、67のうちで原板支持部20の上面20aに最も接近する部位は、回転体本体65の軸方向に延在する第2の延在部で線状になり、回転体本体65の周方向に延在する第1の延在部で点状になる。したがって、回転体本体65の中心軸と上面20aとがなす角度を制御すれば、抜き刃66、67が最も上面20aに接近する部位が小面積(理論上は1点)になる。抜き刃が平面的に設けられている場合と比較すると、抜き刃66、67で原板91と接触する部位を高精細な位置精度で設定することが可能になる。
【0137】
なお、本発明の技術範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。例えば、原板に刃先が接触する経路の始点あるいは終点は、電極活物質が設けられている形成領域に設定されていてもよい。この場合にも、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が時間順次で変化するようになっていれば、電極活物質の剥離や脱離を低減する効果は得られる。
上述の実施形態では、原板支持部に対して抜き型を進退させて抜き刃を原板に接触させているが、抜き型に対して原板支持部を進退させて抜き型を原板に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1・・・電池セル、2・・・電極板型抜装置、3、3B・・・駆動系、
4・・・電極板型抜装置、5・・・電極板型抜装置、6・・・駆動系、
10・・・電池容器、11・・・容器本体、12・・・蓋、13、14・・・電極端子、
15、16・・・電極板、17・・・セパレータ、20・・・原板支持部、
20a・・・上面、21〜24・・・搬送ローラー、30、30B・・・制御部、
31、31B・・・駆動部、32、32B・・・保持部、33・・・保持部、
34・・・抜き型、34a・・・支持基板、34b・・・主面、35・・・抜き型、
35a・・・支持基板、36・・・抜き刃、36a・・・外周面、36b・・・内周面、
36c・・・刃先、37・・・抜き刃、38・・・弾性部材、38a・・・表面、
39・・・弾性部材、40・・・制御部、41・・・駆動部、42・・・保持部、
43・・・抜き型、44・・・支持基板、44a・・・主面、45・・・抜き刃、
45a〜45h・・・第1〜第8の角部、46・・・抜き刃、47・・・弾性部材、
60・・・制御部、61・・・駆動部、62・・・第1の支柱、63・・・第2の支柱、64・・・回転体、65・・・回転体本体、65a、65b・・・回転軸、
66・・・抜き刃、66a〜66d・・・第1〜第4の角部、67・・・抜き刃、
67a〜67d・・・第1〜第4の角部、90・・・保護シート、91・・・原板、
92・・・形成領域、93・・・非形成領域、94・・・切断部、150・・・母部、
151・・・電極タブ、152・・・集電材、153・・・電極活物質、
154・・・形成領域、155・・・非形成領域、161・・・電極タブ、
310・・・主軸、311〜314・・・第1〜第4の副軸、
311B〜313B・・・回転部、314B〜316B・・・接続ロッド、
315・・・主軸、316〜319・・・第1〜第4の副軸、
361、362・・・第1の延在部、363、364・・・第2の延在部、
365・・・タブ形成部、366〜369・・・第1〜第4の角部、410・・・主軸、
450・・・刃先、451、452・・・第1の延在部、
453、454・・・第2の延在部、455・・・タブ形成部、
661、662・・・第1の延在部、663、664・・・第2の延在部、
665・・・タブ形成部、671、672・・・第1の延在部、
673・・・第2の延在部、674・・・第2の延在部、675・・・タブ形成部、
a〜d・・・第1〜第4の角部、F1、F2、G1、G2・・・回動軸、
H1〜H4・・・切断方向、J1、J2・・・圧縮力、K・・・基準線、
M1〜M8・・・切断方向、S1〜S7・・・ステップ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板型抜装置、電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電気装置の電力源として電池セルが用いられている。繰返し充放電することが可能な電池セルである二次電池は、電力源の他に発電装置等の電力バッファとして用いられることもある。電池セルの構成例として、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層体を有する構成が挙げられる。電極板(正極板または負極板)は、集電材の表面に電極活物質が設けられたものである。電極板の製造方法の一例として、特許文献1に開示されている方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、集電材の母材の表面に電極活物質を塗布して電極板の原板を形成した後に、抜き型(トムソン型)を用いて原板を型抜きすることにより電極板を製造している。抜き型は、支持基板に帯状の抜き刃(トムソン刃)を垂直に固定し、抜き刃の近傍に弾性材料からなる押さえ部材を取付けたものである。抜き型を原板に押し付けていない状態で、押さえ部材が抜き刃よりも支持基板から突出している。
【0004】
支持台に支持されている原板に抜き型を押し付けると、押さえ部材が圧縮変形して、抜き刃が押さえ部材よりも支持基板から突出するようになる。原板が、押さえ部材の弾性反発力により支持台に向かって押圧されるとともに、抜き刃により切断される。原板を支持台に押圧しつつ切断するので、切断面が抜き刃の側面に追従することによる切断部の変位が軽減され、切断部の変位によるバリの発生や電極活物質の脱離が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−100288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術にあっては、次に説明するように、原板が切断部の近傍で集中的に圧縮され、電極板の周縁部、特に角部で電極活物質が集電材から剥離して脱離することがある。
【0007】
抜き刃は有限の板厚をもっており、刃先に向かうにつれて板厚が薄くなっている。抜き刃が原板に侵入するにつれて、切断部は、抜き刃の板厚方向すなわち原板の主面に沿う方向に押し広げられ、切断部の周縁部の原板は主面に沿う方向に圧縮される。
【0008】
切断部の近傍が押さえ部材により押圧されているので、切断部の周縁部で変位可能な範囲が切断部の近傍に限定され、切断部の近傍で原板が集中的に圧縮される。通常は、抜き刃を原板に垂直に押し当てて、抜き刃の全周でほぼ同時に原板を切断して型抜している。したがって、原板の圧縮による歪が抜き刃の周方向で緩和されにくくなり、切断部の近傍で原板が集中的に圧縮される。特に、電極板の角部になる部分では、角部に連続する2辺から同時に原板が圧縮される。
【0009】
原板が集中的に圧縮されると、電極活物質と集電材とで材質の違いにより機械特性が異なるので、電極活物質の変形が集電材の変形に追従できなくなる。すると、電極活物質と集電材との密着力が低下し、型抜の過程や型抜後に電極活物質が集電材から剥離して脱離してしまう。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑み成されたものであって、電極活物質の剥離や脱離を生じにくい電極板型抜装置および電極板の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、前記目的を達成するために以下の手段を採用している。
本発明の電極板型抜装置は、電極板の原板を支持可能な原板支持部と、前記原板支持部に刃先を向けて配置される抜き刃と、前記原板支持部に支持された状態の前記原板に前記刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備え、前記抜き刃は、第1の方向に延在する第1の延在部と、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部と、前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部と、を有し、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置が、前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が時間順次で変化するので、刃先が侵入して押し広げられる部位が原板内で時間順次で変化する。したがって、原板の圧縮される部位が時間順次で変化し、切断が進行する方向(以下、切断方向という)の前方や後方に圧縮による歪を逃がすことができるので圧縮力が緩和される。また、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。
【0013】
このように、切断部の近傍、特に角部で電極活物質の剥離が回避されるので、電極活物質の脱離を減らすことができる。抜き刃が複数の角部を有している場合には、原板に接触する刃先の位置が、少なくとも1つの角部に対して、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていれば、上述の効果が得られる。また、原板に接触する刃先の位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで、時間的に連続して変化してもよいし、断続的に変化してもよい。
【0014】
本発明に係る電極板型抜装置は、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
前記抜き刃を支持する支持基板を備え、前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対位置を変化させるとよい。
このようにすれば、抜き刃が支持基板に支持されるので、支持基板に対する刃先の位置が規定される。原板支持部に原板が支持された状態で、駆動系が支持基板と原板支持部との距離を変化させるので、原板と刃先との相対位置を高精度に制御することができる。
【0015】
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対的な姿勢を変化させるとよい。
このようにすれば、抜き刃が支持基板に支持されているので、原板に対する刃先の姿勢を高精度に制御することができる。支持基板と原板支持部との相対的な姿勢を変化させると、原板支持部に支持された原板に対して抜き刃が接触する部位が時間的に変化する。このように、抜き刃の所望の部位の刃先を原板に接触させることが可能になる。
【0016】
前記刃先が前記支持基板の主面と交差する向きに前記支持基板から突出しており、前記主面と前記刃先との距離が該抜き刃の部位で変化しているとよい。
このようにすれば、支持基板の主面と刃先との距離(以下、刃高という)が抜き刃の部位で変化しているので、例えば支持基板と原板支持部との間隔を変化させるだけでも、原板に接触する刃先の抜き刃における位置を変化させることができる。したがって、駆動系の構成をシンプルにすることが可能になり、電極板型抜装置の装置コストを低減することが可能になる。
【0017】
記抜き刃が、前記原板支持部と向かい合う平面に沿う方向に閉じた形状に形成されており、該抜き刃の内周面の前記刃先に向かう部分が前記平面の法線方向となす角度は、該抜き刃の外周面の前記刃先に向かう部分が前記法線方向となす角度よりも小さいとよい。
【0018】
このようにすれば、抜き刃が閉じた形状に形成されており、抜き刃の内周面に囲まれる部分が電極板として型抜される。また、抜き刃に向かう部分の傾斜は、外周面よりも内周面において緩やかであるので、抜き刃の侵入により切断部が押し広げられる量は、抜き刃の内周面側で外周面側よりも小さくなる。したがって、刃先の侵入により生じる電極活物質と集電材との間の圧縮力が内周面側で小さくなり、電極板になる部分で電極活物質の剥離を生じにくくなる。
【0019】
本発明の電極板の製造方法は、集電材の表面に電極活物質が設けられてなる電極板の原板を準備する原板準備工程と、第1の方向に延在する第1の延在部、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部、および前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部を有する抜き刃を準備する抜き刃準備工程と、前記原板に抜き刃の刃先を接触させ、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置を前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化させる処理を含んで前記原板を型抜きする型抜工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、上述のように、原板への刃先の侵入により圧縮力を生じる部位が原板内で時間順次で変化するので、圧縮力が集中的に作用することが回避される。原板に接触する刃先の位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。このように、切断部の近傍、特に角部で電極活物質の剥離が回避されるので、電極活物質の脱離を減らすことができる。抜き刃が複数の角部を有している場合には、少なくとも1つの角部に対して上記の条件を満たすことにより上述の効果が得られる。
【0021】
前記原板準備工程では、前記電極活物質が設けられている形成領域と、前記電極活物質が設けられていない非形成領域と、を有する前記原板を準備し、前記型抜工程では、前記原板において前記刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を前記非形成領域の内側に設定するとよい。
【0022】
刃先が接触する経路の始点では、原板の各点の相対位置が固定されているので、刃先の侵入による圧縮力を逃がすことが難しい。原板の切断に伴う歪は切断方向の前方に蓄積されやすいので、刃先が接触する経路の終点では原板の変形が大きくなりやすい。刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を非形成領域の内側に設定すれば、非形成領域に電極活物質が設けられていないので、始点における圧縮力の集中や終点における原板の変形による電極活物質の剥離を生じなくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が、第1の延在部から角部を経て第2の延在部まで時間順次で変化するので、切断部の近傍の圧縮力が緩和され、また角部が2方向から圧縮力を同時に受けることが回避される。したがって、電極活物質が圧縮力により集電材から剥離して脱離すること低減され、例えば電極活物質の量が減ることによる性能低下や集電材が露出することによる短絡の発生が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電池セルの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は電極板を示す平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。
【図3】電池セルの製造方法を概略して示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】駆動系を下方から、原板支持部を透かして見た斜視図である。
【図6】(a)は電極板型抜装置の上面図、(b)は電極板型抜装置の側面図である。
【図7】(a)は抜き型の平面図、(b)は(a)のB−B’線断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、抜き型の動きを示す説明図である。
【図9】第1実施形態の電極板型抜装置の動作例のタイミングチャートである。
【図10】(a)は原板が切断される切断方向を示す模式図、(b)は原板の切断部の近傍を拡大して示す断面図、(c)は切断部の近傍に働く力を示す説明図である。
【図11】は変形例1における駆動系を示す模式図である。
【図12】第2実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】(a)は抜き刃を拡大して示す斜視図、(b)は抜き刃の展開図である。
【図14】第3実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図15】(a)は、抜き刃を周方向に展開した平面図、(b)は電極板型抜装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。実施形態で説明する内容の全てが本発明に必須であるとは限らない。実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。本発明に係る電極板型抜装置および電池セルの製造方法の説明に先立ち、まず、電池セルの構成例について説明する。
【0026】
図1は、電池セルの構成例を示す分解斜視図、図2(a)は電極板の一例を示す平面図、図2(b)は図2(a)のA−A’線矢視断面図である。
【0027】
図1に示すように電池セル1は、内部に電解液を貯留する電池容器10を備える。電池セル1は、例えばリチウムイオン二次電池である。本発明の適用範囲は電池容器の形状や材質に限定されない。本例の電池容器10は、アルミニウム製の中空容器であり、外形が略角柱状(略直方体状)である。電池容器10は、開口を有する容器本体11と、この開口を塞いで容器本体11に接合された蓋12とを有している。
【0028】
蓋12には、電極端子13、14が設けられている。例えば、電極端子13が正極端子であり、電極端子14が負極端子である。電池容器10の内部に、複数の電極板15、16および複数のセパレータ17が収容されている。例えば、電極板15が正極板であり、電極板16が負極板である。複数の電極板15、16は、正極板と負極板とが交互に並ぶように繰り返し配置されている。
【0029】
セパレータ17は、一対の電極板15、16に挟まれて配置されており、電極板15、16が互いに直接接触しないようになっている。セパレータ17は、多孔質の絶縁材料等からなり、リチウムイオン等の電解成分を通すようになっている。実際には、複数の正極板、複数の負極板および複数のセパレータが積層されて積層体が構成されている。電池セル1は、電池容器10に前記積層体が収容された構造になっている。電解液は、電池容器10の内部で電極板15、16と接触するように貯留される。
【0030】
図2(a)に示すように電極板15は、母部150および電極タブ151を有している。母部150の平面形状は、例えば矩形の角部を丸めた略矩形状である。電極タブ151は、母部150の一辺を基端として母部150の外側に突出するように形成されている。電極タブ151が突出する方向は、例えば、前記基端を有する一辺(以下、タブ設置辺という)に略直交し、かつ母部150の主面に沿う方向である。電極タブ151は、タブ設置辺の片方に偏らせて形成されている。複数の電極板15の電極タブ151が一括して、電極端子13と電気的に接続されている。
【0031】
図2(b)に示すように電極板15は、集電材152および電極活物質153を有している。集電材152は、例えばアルミニウムや銅などからなり、厚みが例えば数十μm程度のシート状のものである。電極活物質153は、電解液の種類に応じた形成材料からなり、集電材152の両面に設けられている。電極活物質153の厚みは、例えば数十μm〜数百μm程度である。
【0032】
本例の電極板15は、電極活物質153が設けられている形成領域154と、電極活物質153が設けられていない非形成領域155とを有している。形成領域154は、母部150の略全体と、電極タブ151において母部150と連続する側の一部とにまたがっている。電極タブ151の先端側は、非形成領域155になっている。電極板15は、非形成領域155にて導電部材と接続され、この導電部材を介して電極端子13と電気的に接続される
【0033】
電極板16は、電極活物質の形成材料や、母部あるいは電極タブの寸法等が電極板15と異なり、構造や形状については電極板15と同様である。図1に示したように電極板16の電極タブ161は、電極板15の電極タブ151と重ならないように配置されている。複数の電極板16の電極タブ161が一括して、電極端子14と電気的に接続されている。
【0034】
図3は、電池セルの製造方法を概略して示すフローチャートである。
電池セル1を製造するには、ステップS1で集電材の母材に電極活物質を塗工する。母材は、例えば、ロール状に巻き取られた帯状の導電箔である。次いでステップS2で、電極活物質を母材に圧着し、また電極活物質を乾燥させる。必要に応じて後処理を行うこと等により、ステップS3で電極板の原板を完成させる。原板は、母材の両面に電極活物質が設けられたものである。このように、ステップS1〜S3で原板を準備する。本発明の適用範囲は、原板の準備方法に限定されない。例えば、製品化された原板を購入等により入手して準備してもよい。
【0035】
そして、予め抜き刃を準備しておき、ステップS4で原板から電極板を型抜すること等により、所望の形状の電極板を完成させる。例えば、本発明に係る電極板型抜装置を用いて電極板を型抜することができる。次いで、ステップS5で、正極板と負極板とをセパレータを介して積層することにより、積層体を形成する。次いで、ステップS6で、電池容器の内部に積層体を収容して封止する。例えば、容器本体に積層体を挿入する。そして、正極板を正極端子と電気的に接続し、また負極板を負極端子と接続する。そして、容器本体に蓋を溶接等により接合する。次いで、ステップS7で、電池容器の内部に電解液を注入して封止すること等により、電池セルが得られる。
【0036】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態の電極板型抜装置について説明する。また、本発明に係る電極板の製造方法の一実施形態について、電極板型抜装置の使用方法とあわせて説明する。
【0037】
図4は、第1実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図5は、駆動系を下方から、原板支持部を透かして見た分解斜視図、図6(a)は電極板型抜装置の上面図、図6(b)は電極板型抜装置の側面図、図7(a)は抜き型の平面図、図7(b)は図7(a)のB−B’線矢視断面図である。
【0038】
図4、図5に示すように第1実施形態の電極板型抜装置2は、原板支持部20、搬送ローラー21〜24、駆動系3、および抜き型34、35を備える。抜き型34、35は、例えばトムソン型であり抜き刃36、37としてのトムソン刃を有する。本実施形態の駆動系3は、制御部30、駆動部31および保持部32、33により構成されている。
【0039】
電極板型抜装置2の構成要素は、概ね下記のように配置されている。駆動部31は、原板支持部20の上方に設けられている。保持部32、33は、駆動部31の下方に配置されており、駆動部31に接続されている。抜き型34は、保持部32の下方に取付けられている。抜き型35は、保持部33の下方に取付けられている。
【0040】
保護シートの搬送用である搬送ローラー21、22は、原板支持部20の上面20aに沿う一方向(Y方向)に原板支持部20を挟んで設けられている。原板の搬送用である搬送ローラー23、24は、原板支持部20の上面20aに沿う一方向(Y方向)に保護シート用の搬送ローラー21、22を挟んで設けられている。前記一方向が、搬送ローラー21〜24による搬送方向になっている。
【0041】
電極板型抜装置2は、概略すると以下のように動作する。制御部30は、搬送ローラー21〜24および駆動部31を制御する。原板支持部20の上面20aに、原板91が搬送ローラー21〜24により搬送される。また、原板支持部20の上面20aに、保護シート90が搬送ローラー21、22により搬送される。原板91と上面20aとの間に保護シート90が配置されるように、原板91は保護シート90の上に重ね合わされて搬送される。制御部30は、所定の送り幅で原板91を搬送した後に搬送ローラー21〜24を停止させる。
【0042】
搬送ローラー21〜24が停止した後に、制御部30が駆動部31を制御し、駆動部31が保持部32、33を上下方向に移動させる。保持部32、33が下方に移動すると、抜き型34、35が原板支持部20の上面20aに向かって移動し、上面20aに搬送された原板91に抜き型34、35が押し当てられる。すると、抜き刃36、37が原板91を貫通して切断し、抜き刃36に囲まれる部分と抜き刃37に囲まれる部分とが、それぞれ電極板として原板91から型抜される。
【0043】
電極板が型抜された後に、保持部32、33が上方に移動し、抜き型34、35が原板91から上方に退避する。そして、搬送ローラー21〜24が、保護シート90および原板91を所定の送り幅で搬送する。これにより、型抜された部分の原板91が抜き型34,35の下方から搬送されてゆき、型抜されていない部分の原板91が抜き型34,35の下方に搬送されてくる。電極板型抜装置2は、上記の動作を繰り返して、原板91を繰返し型抜する。
【0044】
次に、電極板型抜装置2の構成要素について詳しく説明する。
原板支持部20は、原板91に抜き型34、35が押し当てられた状態で、原板91を下方から支持することが可能なものである。原板支持部20は、例えばワークテーブルであり、略平坦な上面20aを有している。
【0045】
保護シート90の搬送用である搬送ローラー21、22は、制御部30からの制御信号に基づいて駆動され、回転あるいは停止する。保護シート90は、搬送ローラー21、22に懸架され、搬送ローラー21、22の回転により搬送される。原板91を型抜するときに刃先が上面20aと直接接触しないように、保護シート90の厚みが設定されている。これにより、上面20aと刃先とが、互いの接触による損傷から保護される。
【0046】
原板91の搬送用である搬送ローラー23、24は、搬送ローラー21、22よりも下方に配置されている。原板91は、搬送ローラー23、24に懸架されて搬送される。原板91は、搬送ローラー23、24の間で搬送ローラー21、22に懸架されることにより、保護シート90と重ね合わされる。搬送ローラー23、24は、制御部30からの制御信号に基づいて駆動され、搬送ローラー21、22と同期して回転あるいは停止する。原板91は、搬送ローラー21〜24が停止した状態で、保護シート90と重ね合わされたまま抜き型34、35により型抜される。
【0047】
原板91は、集電材の母材の両面に電極活物質が設けられたものである。ここでは、原板91に部分的に電極活物質が設けられている。原板91の幅方向(X方向)の両端部は、電極活物質が設けられていない非形成領域93になっている。原板91の幅方向の中央部は、電極活物質が設けられている形成領域92になっている。
【0048】
駆動部31から下方に突出させて、主軸310、315および副軸311〜314、316〜319(以下、可動軸と総称する)が設けられている。駆動部31は、複数のアクチュエータを内包している。アクチュエータは、可動軸ごとに設けられている。複数のアクチュエータは、制御部30により互いに独立して制御される。複数のアクチュエータの各々は、対応する可動軸の下端が上下方向に移動するように、可動軸を動作させる。
【0049】
図6(a)、図6(b)に示すように、主軸310の下端は、保持部32の上面の中央部と接続されている。主軸310と保持部32との接続部は、回転支持により構成されている。この接続部により、主軸310の先端部と保持部32との相対位置が固定されており、主軸310と保持部32の主面とがなす角度を変化可能になっている。
【0050】
副軸311〜314の下端は、角が丸められており、保持部32の上面に滑り移動可能に当接している。保持部32の搬送方向(Y方向)の下流側の部分において、原板91の端部側の位置に第1の副軸311が当接しており、原板91の中央部側の位置に第2の副軸312が当接している。保持部32の搬送方向(Y方向)の上流側の部分において、原板91の中央部側の位置に第3の副軸313が当接しており、原板91の端部側の位置に第4の副軸314が当接している。第1の副軸311は、主軸310に対して第3の副軸313と対称的な位置に配置されている。第2の副軸312は、主軸310に対して第4の副軸314と対称的な位置に配置されている。
【0051】
主軸310および第1〜第4の副軸311〜314をいずれも同じ変位で上下方向に移動させると、保持部32が上下方向に移動する。すると、保持部32に取付けられている抜き型34が原板支持部20の上面20aに向かって移動し、上面20aに対する抜き型34の相対位置が変化する。主軸310を停止させた状態で、第1〜第4の副軸311〜314を互いに異なる変位で上下方向に移動させると、保持部32の姿勢が変化し、上面20aに対する抜き型34の相対的な姿勢が変化する。
【0052】
抜き型35は、原板91の幅方向(X方向)の中心線に対して抜き型34と対称的に設けられている。すなわち、主軸315は、回転支持により保持部33と接続されている。副軸316〜319の下端は、角が丸められており、保持部33の上面に滑り移動可能に当接している。保持部33の搬送方向の下流側の部分で、原板91の端部側の位置に第1の副軸316が当接しており、原板91の中央部側の位置に第2の副軸317が当接している。保持部33の搬送方向の上流側の部分で、原板91の中央部側の位置に第3の副軸318が当接しており、原板91の端部側の位置に第4の副軸319が当接している。主軸315および第1〜第4の副軸316〜319を上下方向に移動させると、上面20aに対する抜き型34の位置が変化する。主軸315を停止させた状態で、第1〜第4の副軸316〜319を互いに異なる変位で上下方向に移動させると、抜き型35の姿勢が変化する。
【0053】
図7(a)、図7(b)に示すように抜き型34は、支持基板34a、抜き刃36、および弾性部材38を備える。支持基板34aは、第1〜第4の角部a〜dを有している。第1の角部aは、第1の副軸311の概ね下方に位置しており、第1の副軸311と対応している。同様に、第2の角部bは第2の副軸312と、第3の角部cは第3の副軸313と、第4の角部dは第4の副軸314と、それぞれ対応している。
【0054】
支持基板34aの保持部32と反対側の主面34bには、この主面34bと交差する方向に刃先36cが向くように抜き刃36が設けられている。本実施形態の抜き刃36は、帯状のものであり、支持基板34aの主面34bに略垂直に取付けられている。支持基板34aの主面を平面視すると、抜き刃36は閉じた形状になっており、刃先36cは閉じた形状の内周に沿って連続している。抜き刃36の平面形状は、型抜の対象となる電極板の輪郭と略一致している。
【0055】
抜き刃36は、第1の延在部361、362、第2の延在部363、364、タブ形成部365、および第1〜第4の角部366〜369を有している。第1の延在部361、362は、第1の方向(ここではX方向)に延在している。第1の延在部361、362は、図2(a)に示した電極板15の母部150の一方の対辺(ここでは長辺)に対応している。第2の延在部363、364は、第1の方向に交差する第2の方向(ここでY方向)に延在している。第2の延在部363、364は、電極板15の母部150の他方の対辺(ここでは短辺)に対応している。
【0056】
タブ形成部365の一端は、第1の角部366と連続しており、他端は第2の延在部364と連続している。タブ形成部365は、電極板15の電極タブ151に対応している。原板91において電極活物質が設けられていない非形成領域93(図6(a)参照)にタブ形成部365が重なるように、抜き型34が配置されている。
【0057】
第1の角部366は、タブ形成部365の一端(Y正方向側)と連続し、かつ第1の延在部361の一端(X正方向側)と連続している。
第2の角部367は、第1の延在部361の他端(X負方向側)と連続し、かつ第2の延在部363の一端(Y正方向側)と連続している。
第3の角部368は、第2の延在部363の他端(Y負方向側)と連続し、かつ第1の延在部362の一端(X負方向側)と連続している。
第4の角部369は、第1の延在部362の他端(X正方向側)と連続し、かつ第2の延在部364の一端(Y負方向側)と連続している。
【0058】
本実施形態では、刃先36cの近傍で抜き刃36の内周面36bが支持基板34aの主面34bの法線方向となす角度が、外周面36aが主面34bの法線方向となす角度よりも小さくなっている。ここでは、抜き刃36の内周面36bが、主面34bに対して略垂直(前記角度が略0°)になっており、抜き刃36が片刃により構成されている。ここでは、主面34bと刃先36cとの距離(刃高)が、抜き刃36の周方向で略均一になっている。
【0059】
弾性部材38は、主面34bにおいて抜き刃36を除いた部分、すなわち抜き刃36の内側および外側に設けられている。弾性部材38は、抜き刃36よりも圧縮変形しやすい材質、例えばスポンジやゴム等からなる。弾性部材38は、その表面38aが刃先36cと略面一あるいは刃先36cよりも主面34bから突出するように設けられている。
【0060】
抜き型35(図5参照)は、支持基板35a、抜き刃37、および弾性部材39を有している。支持基板35aは支持基板34aと同様のものであり、抜き刃37は抜き刃36と、弾性部材39は弾性部材38と、それぞれ同様のものである。
【0061】
次に、電極板型抜装置2の動作について説明する。図8(a)は図7(a)のD−D’線矢視断面にて抜き型の動作例を示す説明図、図8(b)は図7(a)のE−E’線矢視断面にて抜き型の他の動作例を示す説明図、図8(c)は抜き型の姿勢変化の例を示す斜視図、図9は電極板型抜装置の動作の一例を示すタイミングチャート、図10(a)は抜き刃による切断方向を示す平面図、図10(b)は原板を切断しているときの抜き刃を拡大して示す断面図、図10(c)は原板に働く力を模式的に示す説明図である。図8(a)、図8(b)には、抜き型の傾きを誇張して図示している。
【0062】
図8(a)に示す動作例は、図6(a)に示した第2、第4の副軸312、314を移動させないで、第1の副軸311を所定の変位だけ下方に移動させ、かつ第3の副軸313を前記所定の変位だけ上方に移動させた例である。保持部32が主軸310に回転支持されているので、保持部32が第1の副軸311に押し下げられて回動軸F1周りに回動する。これにより、抜き型34の第1の角部aが原板支持部20に近づくとともに、第3の角部cが原板支持部20から遠ざかる。
【0063】
原理的に回動軸F1は、第2の副軸312と保持部32とが当接する位置および主軸310と保持部32との接続部の位置を結ぶ線、または第4の副軸314と保持部32とが当接する位置および主軸310と保持部32との接続部の位置を結ぶ線に略平行になる。この例では、回動軸F1が、第2の角部bと第4の角部dとに対応する対角線に略平行になる。第2、第4の副軸312、314を移動させないで、第1の副軸311を上方に移動させ、かつ第3の副軸313を下方に移動させると、回動軸F1は変化せずに保持部32が回動する向きが反転する。
【0064】
第1、第3の副軸311、313を移動させないで、第2の副軸312を上方に移動させ、かつ第4の副軸314を下方に移動させると、図8(c)に示すように第1の角部aと第3の角部cとに対応する対角線に略平行な回動軸F2周りに、抜き型34が回動する。これにより、第4の角部dが原板支持部20に近づくとともに、第2の角部bが原板支持部20から遠ざかる。
【0065】
図8(b)に示す動作例は、第1、第4の副軸311、314を所定の変位だけ下方に移動させ、かつ第2、第3の副軸312、313を前記所定の変位だけ上方に移動させた例である。保持部32が第1、第4の副軸311、314に押し下げられて回動軸G1周りに回動する。これにより、第1、第4の角部a、dが原板支持部20に近づくとともに、第2、第3の角部b、cが原板支持部20から遠ざかる。
【0066】
原理的に回動軸G1は、第1の副軸311と保持部32とが当接する位置、および第4の副軸314と保持部32とが当接する位置を結ぶ線に略平行になる。この例では、回動軸G1が、第1の角部aと第4の角部dとの間の辺に略平行になる。第1、第4の副軸311、314を上方に移動させ、かつ第2、第3の副軸312、313を下方に移動させると、回動軸G1は変化せずに保持部32が回動する向きが反転する。
【0067】
第1、第2の副軸311、312を上方に移動させ、かつ第3、第4の副軸313、314を下方に移動させると、図8(c)に示すように第1の角部aと第2の角部bとの間の辺に略平行な回動軸G2周りに、抜き型34が回動する。これにより、第3、第4の角部c、dが原板支持部20に近づくとともに、第1、第2の角部a、bが原板支持部20から遠ざかる。
【0068】
主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ下方に移動させると、抜き型34の全体が下方に平行移動して原板支持部20に近づく。主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ上方に移動させると、抜き型34の全体が上方に平行移動して原板支持部20から遠ざかる。
以上のように、抜き型34を3次元的に変位させることができ、抜き型34の位置および姿勢を制御することが可能になっている。
【0069】
図9に示すように、t0よりも前に制御部30は、搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送し、t0に搬送ローラー21〜24を停止させる。保護シート90および原板91の搬送過程で、抜き型34は原板91に接触しない程度のマージンをとって原板支持部20から離れた初期位置に保持されている。t0よりも前の時間では、抜き型34を初期位置に保持するように、主軸310および第1〜第4の副軸311〜314が所定の位置(退避位置、図9では退避と略記している)に保持されている。
【0070】
制御部30は、t0からt1の間に主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を所定の変位だけ下方に移動させて近接位置(図9では近接と略記している)に向かわせる。近接位置は、例えば弾性部材38の表面38aが原板91の表面に接触する程度に設定される。
【0071】
制御部30は、t1からt7の間に主軸310を近接位置に待機させる。制御部30は、t1からt2の間に第1の副軸311を下位置(図9では下と略記している)まで移動させ、第3の副軸313を上位置(図9では上と略記している)まで移動させるとともに、第2、第4の副軸312、314を近接位置に待機させる。
【0072】
第1の副軸311を近接位置から下方に押し下げると、抜き型34が接触位置よりも下方に押し下げられる。すると、弾性部材38が圧縮変形し、その反発力により原板91が原板支持部20の上面20a側に押し付けられる。第1の副軸311を押し下げていくと、図10(b)に示すように、抜き刃36が弾性部材38の表面よりも下方に突出して原板91に接触し、やがて抜き刃36の刃先36cが原板91に侵入し、原板91を貫通して切断する。
【0073】
第1の副軸311を下位置まで移動させた状態で抜き刃36において最も下方に位置する部位が、原板91を貫通しつつ保護シート90を貫通しないように、近接位置から下位置までの変位が設定されている。本例では、近接位置から上位置までの変位は、近接位置から下位置までの変位と略一致している。
【0074】
t2で第1の角部aが最も下方に位置している。第1の角部aの付近に配置されている部位であるタブ形成部365の少なくとも一部は、t1からt2の間に原板91を貫通し、電極タブ151の少なくとも一部を形成する。
【0075】
制御部30は、t2からt3の間に第1、第3の副軸311、313を待機させ、第2の副軸312を下位置まで移動させるとともに、第4の副軸314を上位置まで移動させる。t2からt3の間に第2の角部bが押し下げられ、第1の延在部361の刃先36cが、第1の角部aから第2の角部bに向かう切断方向H1に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を貫通して切断する。そして、抜き刃36の第2の角部367が原板91を切断した後、第2の角部367と連続する第2の延在部363が原板91を切断する。
【0076】
制御部30は、t3からt4の間に第2、第4の副軸312、314を待機させ、第1の副軸311を上位置まで移動させるとともに、第3の副軸313を下位置まで移動させる。t3からt4の間に第3の角部cが押し下げられ、第2の延在部363が、第2の角部bから第3の角部cに向かう切断方向H2に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。そして、抜き刃36の第3の角部368が原板91を切断した後、第3の角部368と連続する第1の延在部362原板91を切断する。
【0077】
制御部30は、t4からt5の間に第1、第3の副軸311、313を待機させ、第2の副軸312を上位置まで移動させるとともに、第4の副軸314を下位置まで移動させる。t4からt5の間に第4の角部dが押し下げられ、第1の延在部362が、第3の角部cから第4の角部dに向かう切断方向H3に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。そして、抜き刃36の第4の角部369が原板91を切断した後、第4の角部369と連続する第1の延在部362が原板91を切断する。
【0078】
制御部30は、t5からt6の間に第2、第4の副軸312、314を待機させ、第3の副軸313を上位置まで移動させるとともに、第1の副軸311を下位置まで移動させる。t5からt6の間に第1の角部aが押し下げられ、第2の延在部364が、第4の角部dからタブ形成部365に向かう切断方向H4に沿って時間順次で原板91に接触し、原板91を切断する。
【0079】
以上のように、t1からt6の間に、抜き刃36のうちで原板91と接触する部位は、抜き刃36における位置が時間的に変化する。ここでは、原板91と接触する部位が、抜き刃36の周方向の一方(図10では時計回り)に概ね沿って時間順次で変化する。これにより、原板91が抜き刃36のパターンに切断され、抜き刃36に囲まれる部分が原板91から電極板として型抜される。型抜された電極板は、図示略の分離手段により原板91から分離される。
【0080】
制御部30は、t6からt7の間に第1〜第4の副軸311〜314を近接位置まで移動させる。そして、制御部30は、t7からt8の間に、主軸310および第1〜第4の副軸311〜314を退避位置まで移動させる。そして、制御部30は、t8に搬送ローラー21〜24の回転を開始させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送する。
【0081】
制御部30は、抜き型35についても抜き型34と同様に動作させる。このように電極板型抜装置2は、原板91の幅方向の両側でほぼ同時に電極板を型抜する。また、制御部30は、以下同様にして、t0からt8までの動作を繰り返し実行させ、電極板型抜装置2は、繰り返し原板91を型抜する。
【0082】
図10(b)に示すように、原板91に抜き刃36が侵入すると、抜き刃36の両側の切断部は、侵入した部分の抜き刃36の厚み分だけ互いに離れる方向に押し広げられる。原板91は、切断部が押し広げられた分だけ、原板91の主面に沿う方向に圧縮される。切断部の近傍の原板91は、原板91の主面に沿う方向の圧縮力J1、J2を受ける。電極活物質と集電材とで材質が異なり機械特性が異なる。したがって、圧縮力の大きさがある程度以上になると、集電材と電極活物質とが互いに追従して変形することができなくなり、集電材と電極活物質との間の密着力が低下し、型抜の過程や型抜後の電極板において集電材から電極活物質が剥離しやすくなる。
【0083】
通常の電極板型抜装置では、抜き刃の全周でほぼ同時に原板を切断している。したがって、切断部の歪が抜き刃の周方向に逃げにくくなり、圧縮力が緩和され難くなるので、電極活物質が剥離しやすくなる。特に、抜き刃の角部に切断される部分の原板は、角部に連続する一辺と他辺に沿って2方向からせん断力を受けるので、電極活物質の剥離を生じやすくなる。このように、通常の電極板型抜装置では、切断部の近傍、特に電極板の角部になる部分で、電極活物質の剥離を生じやすくなっている。
【0084】
第1実施形態の電極板型抜装置2にあっては、抜き刃36において原板91に接触する部位が時間的に変化する。したがって、図10(c)に示すように切断部94の先端位置が時間的に変化し、圧縮力J1、J2が切断方向の前方や後方等に分散される。切断方向の後方における切断部94は自由端になっているので、切断方向の後方に向かって原板の変形が許容され、圧縮による歪が緩和されて圧縮力J1、J2が小さくなる。また、抜き刃36が片刃により構成されており、抜き刃36の内周面が原板91の主面に略垂直であるので、抜き刃36の内周面側の圧縮力J1が小さくなる。このように、圧縮力J1、J2を小さくすることや分散させることができるので、圧縮力J1、J2に起因する電極活物質の剥離が低減される。
【0085】
また、抜き刃36の第2の角部367において、第1の延在部361に連続する部分と、第2の延在部363に連続する部分とで原板91に接触するタイミングがずれている。したがって、電極板の角部になる部分に2方向からせん断が働くことが回避され、電極活物質の剥離が格段に低減される。第1、第3、第4の角部366、368、369においても同様に、電極活物質の剥離が格段に低減される。
【0086】
ところで、原板91において、1回の型抜工程で最初に切断された部分(起点)や最後に切断された部分(終点)は、他の部分と比較して、原板91の変形や電極活物質が剥離しやすいと考えられる。最初に切断される部分は、抜き刃36の侵入による衝撃力を受けやすく、また抜き刃36の侵入による圧縮力の逃げ場がないからである。また、最後に切断される部分は、切断の進行に伴って原板91の歪が蓄積しやすいからである。
【0087】
第1実施形態では、タブ形成部365が原板91に対して最初に接触するように抜き型34が動作する。すなわち、最初に切断される部分は、電極タブ151に対応する部分であり、この部分に電極活物質の剥離を生じたとしても電池性能の低下を生じにくい。そもそも、タブ形成部365が非形成領域93に重なるように抜き型34が配置されているので、最初に切断される部分が非形成領域93に位置しており、この部分に電極活物質の剥離を生じることがない。また、タブ形成部365が、原板91に対して最後に接触するように抜き型34が動作するので、電極板15の母部150の歪を電極タブ151に吸収させることができる。
【0088】
このように、原板91の変形や電極活物質の剥離による悪影響を受けにくい部分が起点あるいは終点になるように、抜き型34の配置や動作が設定されているので、高品質な電極板を製造することができる。
【0089】
抜き刃36が支持基板34aに支持されており、駆動部31が支持基板34aと原板支持部20との相対位置を変化させるので、刃先36cと原板91との相対位置を高精度に制御することができる。
【0090】
抜き刃36において原板91に向かって最も突出する部位が時間的に変化するように、駆動部31が制御されている。これにより、抜き刃36の所望の部位の刃先36cを原板91に接触させ、所望の刃高まで原板91に侵入させることが可能になる。したがって、原板91に抜き刃36が侵入する量(以下、侵入量という)を抜き刃36の部位ごとに高精度に制御することができ、抜き刃36の周方向で侵入量を揃えることができる。切断部の近傍で原板が圧縮される量(変位)は、抜き刃36の侵入量に応じて定まるので、原板の変位を抜き刃36の周方向で揃えることができ、変位の不均一性に起因する電極活物質の剥離や脱離を減らすことができる。また、抜き刃36の周方向で侵入量を揃えることができるので、侵入量を電極板の切断に必要な最小限の値にすることができる。これにより、原板が圧縮される量を最小限にすることができ、電極活物質の剥離や脱離を減らすことができる。
【0091】
制御部30が、駆動部31と搬送ローラー21〜24とを同期させて制御するので、型抜工程を自動化することができ、効率よく電極板を製造することができる。主軸310により保持部32の位置を規制しつつ保持部32の姿勢を変化させるので、抜き刃36が原板91を切断している過程で、抜き刃36と原板91とが抜き型34の主面に沿う方向に位置ずれを生じにくくなる。したがって、抜き刃36の形状を正確に原板91に転写して電極板を型抜することができ、高精度な形状の電極板を製造することができる。第1〜第4の副軸311〜314の上下移動のみでも抜き型34の姿勢を高い自由度で制御可能であるので、制御部30による制御の方法や駆動部31の機構が複雑になることが回避される。
【0092】
以上のように第1実施形態の電極板型抜装置2によれば、電極活物質からなる電極活物質の剥離を低減することができる。したがって、電極板あたりの電極活物質の量が減少することによる電池性能の低下が回避され、高性能な電池セルを構成することが可能になる。また、電極活物質に剥離による集電材の露出が回避され、集電材の露出による短絡が回避されるので、不具合を生じにくい電池セルを構成することが可能になる。
また、本発明の電極板の製造方法によれば、上述の理由により、電極活物質からなる電極活物質の剥離を低減することができ、高性能な電池セルを構成することが可能な電極板を製造することができる。
【0093】
なお、駆動系3については、抜き型34、35の位置および姿勢を制御可能なものであれば、その構成に限定されない。例えば、下記の変形例1の駆動系を採用してもよい。
【0094】
図11は、変形例1の駆動系の概略構成を模式的に示す斜視図である。図11に示すように、変形例1における駆動系3Bは、制御部30B、駆動部31B、および保持部32Bを備える。駆動部31Bは、回転部311B〜313B、および接続ロッド314B〜316Bを有する。
【0095】
回転部311Bは、例えば略円板状のものであり、回転軸からずれた位置に接続ロッド314Bの一端が回転支持により接続されている。接続ロッド314Bの他端は、保持部32Bと回転支持により接続されている。回転部312B、313Bは、回転部311Bと同様のものであり、接続ロッド315B、316Bは接続ロッド314Bと同様のものである。回転部312Bは、接続ロッド315Bを介して保持部32Bと接続されている。回転部313Bは、接続ロッド316Bを介して保持部32Bと接続されている。保持部32Bが接続ロッド314B〜316Bの各々に支持される支点は、同一直線上に並ばないように設定されている。3つの支点により1つの平面が定まり、回転部311B〜313Bの回転角に応じて保持部32Bの位置および姿勢が制御される。
【0096】
保持部32Bには、例えば第1実施形態と同様の抜き型34が、抜き刃36を原板支持部20に向けて取付けられる。制御部30Bは、回転部311B〜313Bの各々の回転角を示す制御信号を駆動部31Bに供給する。駆動部31Bは、制御信号に基づいて回転部311B〜313Bを互いに独立に回転させる。例えば、回転部311B〜313Bの回転角を揃えて制御することや、回転部311B〜313Bの回転角を互いに異なる値で制御することが可能になっている。
【0097】
回転部311B〜313Bの回転角を揃えて変化させると、保持部32Bが上下方向に平行移動し、原板91に対する抜き刃36の位置が変化する。回転部311B〜313Bの回転角を互いに異ならせて制御すると、保持部32Bの姿勢し、原板91に対する抜き刃36の姿勢が変化する。
【0098】
変形例1の駆動系3Bにあっては、第1実施形態の駆動系3と比較して、駆動対象(変形例1では回転部311B〜313B)の数を減らすことができ、駆動系3Bの構成をシンプルにすることができる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電極板型抜装置について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、2つの抜き刃が1つの抜き型に設けられている点、支持基板から抜き刃の刃先までの高さが抜き刃の周方向で変化している点、および原板を切断するときに駆動系が抜き型を上下方向のみに移動させる点である。
【0100】
図12は、第2実施形態の電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図13(a)は抜き刃を拡大して示す斜視図、図13(b)は抜き刃を周方向に沿って展開した平面図である。図12では、第1実施形態と共通の構成要素についてはその一部の図示を省略している。図13(a)、図13(b)では、刃高を誇張して図示している。
【0101】
図12に示すように、第2実施形態の電極板型抜装置4は、制御部40、駆動部41、保持部42、および抜き型43を備える。また、電極板型抜装置4は、図4に示した原板支持部20および搬送ローラー21〜24を備えている。
【0102】
駆動部41は、下方すなわち原板91に向かう方向に延びる支柱410を有している。制御部40は、駆動部41に制御信号を供給し、駆動部41は制御信号に基づいて支柱410を上下移動させる。保持部42は、駆動部41の下方に設けられており、支柱410の下端と固定されている。支柱410の上下移動に伴って、保持部42は上下方向に平行移動する。保持部42の下方に抜き型43が取付けられている。
【0103】
抜き型43は、支持基板44、抜き刃45、46、および弾性部材47を有する。抜き刃46は、抜き刃45と同様のものであり、搬送方向に平行な対称軸に対して抜き刃45と対称的に設けられている。抜き刃45、46は、共通の支持基板44に設けられている。弾性部材47は、第1実施形態の弾性部材38、39が一体化されたものであり、抜き刃45、46に共通して設けられている。
【0104】
図13(a)、図13(b)に示すように抜き刃45は、原板91と向かい合わされる支持基板44の主面44aから刃先450を突出させて設けられている。型抜工程を行うときに、主面44aは原板91の主面と略平行に配置される。主面44aを平面視した状態で、刃先450は閉じた形状に沿って連続しており、この閉じた形状は、型抜の対象となる電極板の輪郭と略一致している。
【0105】
抜き刃45は、第1の延在部451、452、第2の延在部453、454、タブ形成部455、および第1〜第8の角部45a〜45hを備える。第1の延在部451、452は、例えば図2に示した電極板15の母部150の長辺を形成する部分である。第2の延在部453、454は、例えば母部150の短辺を形成する部分である。タブ形成部455は、例えば電極タブ151を形成する部分である。
【0106】
第1〜第8の角部45a〜45hは、抜き刃45の周方向に順に並んでいる。
第1、第8の角部45a、45hは、電極タブ151の先端に対応する部分である。
第2、第7の角部45b、45gは、電極タブ151の基端に対応する部分である。
第3の角部45cは、第1の延在部451とタブ形成部455との接続部分である。
第4の角部45dは、第1の延在部451と第2の延在部453との接続部分である。
第5の角部45eは、第2の延在部453と第1の延在部452との接続部分である。
第6の角部45fは、第1の延在部452と第2の延在部454との接続部分である。
第7の角部45gは、第2の延在部454とタブ形成部455との接続部分である。
【0107】
本実施形態では、主面44aから刃先450までの距離(刃高)は、第1の角部45aで最も高くなっており、第8の角部45hで最も低くなっている。刃高は、第1の角部45aから第2の角部45bを経て第8の角部45hに至るまで、単調に減少している。刃高は、第1の角部45aから第2の角部45bと反対の周方向に沿って第8の角部45gに至るまで、単調に減少している。
【0108】
以上のような構成の電極板型抜装置4において、保持部42が下方に移動すると抜き刃45が原板91に接触する。抜き刃45において刃高が高い部位であるほど、原板91に接触するタイミングが早くなる。
【0109】
詳しくは、まず第1の角部45aが原板91を貫通して切断し、第1の角部45aから第2の角部45bに向かう方向と、第1の角部45aから第8の角部45hに向かう方向に原板91の切断が進行する。すなわち、第1の角部45aと接触する部分の原板91が、原板91に刃先450が接触する経路の始点になる。
【0110】
次に、第2の角部45bから第3の角部45cまでが時間順次で原板91を切断する。次に、第1の延在部451から第4の角部45dを経て第2の延在部453までが時間順次で原板91を切断する。次に、第2の延在部453から第5の角部45eを経て第1の延在部452までが時間順次で原板91を切断する。次に、第1の延在部452から第6の角部45fを経て第2の延在部454までが時間順次で原板91を切断する。次に、第2の延在部454から第7の角部45gを経て第8の角部45hまでが時間順次で原板91を切断する。また、第1の角部45aから第2の角部45bを経て第8の角部45gまでが原板91を切断する期間に、第1の角部45aから第2の角部45bと反対の周方向に沿って第8の角部45hまでが原板91を時間順次で切断する。すなわち、第8の角部45hと接触する部分の原板91が、原板91に刃先450が接触する経路の終点になる。このように、電極タブ151の先端に対応する第1、第8の角部65a、65hが、それぞれ、切断経路の始点、終点になっている。
【0111】
第2実施形態の電極板型抜装置4にあっては、抜き刃45において原板91に接触する部位が、抜き刃45の周方向に時間順次で変化する。したがって、原板91の切断部の位置が時間的に変化し、電極活物質の剥離や脱離が低減される。抜き刃45の第4の角部45dにおいて、第1の延在部451に連続する部分と、第2の延在部453に連続する部分とで原板91に接触するタイミングがずれるので、電極板の角部になる部分に2方向からせん断が働くことが回避される。第2、第3、第5〜第7の角部45b、45c、45e〜45hにおいても同様の理由により2方向からせん断が働くことが回避される。このように、電極活物質と集電材との間に作用するせん断力が、電極板の周縁部、特に角部になる部分で低減されるので、電極活物質の剥離や脱離を低減することができる。
【0112】
また、刃先450の刃高が抜き刃45の周方向で変化しているので、抜き型43の姿勢を変化させなくとも、抜き刃45において原板91に接触する部位を時間順次で変化させることができる。したがって、制御部40による制御の方法や駆動部41の機構を簡略化することができ、電極板型抜装置の装置コストを下げることができる。
【0113】
[第3実施形態]
【0114】
次に、第3実施形態の電極板型抜装置について説明する。第3実施形態が第1、第2実施形態と異なる点は、平板状の抜き型に代えて円柱状の抜き型(ロータリーダイカッター)を備えている点である。
【0115】
図14は、電極板型抜装置の概略構成を示す斜視図、図15(a)は回転体の外周面に沿って展開した抜き刃の平面図、図15(b)は電極板型抜装置の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【0116】
図14に示すように、電極板型抜装置5は、原板支持部20、搬送ローラー21〜24、駆動系6、および回転体64を備える。駆動系6は、制御部60、駆動部61、および支柱62、63を有している。回転体64は、円柱状の回転体本体65、回転軸65a、65b、および回転体本体65の外周面に設けられた抜き刃66、67を有している。
【0117】
駆動部61は、原板支持部20の上方に設けられている。駆動部61から下方に突出させて、支柱62、63が設けられている。支柱62、63は、搬送ローラー21〜24による搬送方向に並んでいる。回転軸65aは、支柱62に回転可能に取り付けられている。回転軸65bは、支柱63に回転可能に取付けられている。
【0118】
駆動部61は、制御部60から供給される制御信号に基づいて、支柱62、63を移動させ、また回転体64を回転させる。詳しくは、駆動部61は、支柱62、63を互いに独立して上下方向に移動させる。支柱62、63を同じ変位で上下方向に移動させると、回転体64が上下方向に平行移動し、回転体64が原板支持部20に向かって進退制御される。支柱62、63を異なる変位で上下方向に移動させると、回転軸65a、65bの軸方向が変化し、回転体64の姿勢が変化する。また、駆動部61は、回転体64の回転と同期させて、支柱62、63を搬送方向と交差する方向に移動させ、回転体64が原板91に対して滑らずに回転するように、回転体64を移動させる。
【0119】
図14、図15(a)に示す基準線Kは、回転体本体65の外周面に位置し、回転軸と平行な線分である。図15(a)に示すように、抜き刃66、67の平面形状は、第1実施形態の抜き刃36、37と同様である。抜き刃67は、回転体本体65の外周面を平面に展開した状態で、回転体本体65の軸方向に平行かつ周方向に直交する対称線に対して、対称的に設けられている。
【0120】
抜き刃66は、第1の延在部661、662、第2の延在部663、664、タブ形成部665、および第1〜第4の角部66a〜66dを有している。第1の延在部661、662は、回転体本体65の周方向(第1の方向)に延在している。第2の延在部663、664は、回転体本体65の軸方向(第2の方向)に延在している。
【0121】
第1の角部66aで、第1の延在部661の一端と、タブ形成部665の一端とが接続されている。第2の角部66bで、第1の延在部661の他端と、第2の延在部663の一端とが接続されている。第3の角部66cで、第2の延在部663の他端と、第1の延在部662の一端とが接続されている。第4の角部66dで、第1の延在部662の他端と、第2の延在部664の一端とが接続されている。第2の延在部664の他端は、タブ形成部665の他端と接続されている。
【0122】
抜き刃67は、第1の延在部671、672、第2の延在部673、664、タブ形成部675、および第1〜第4の角部67a〜67dを有している。第1の延在部671、672は、回転体本体65の周方向に延在している。第2の延在部673、674は、回転体本体65の軸方向に延在している。
【0123】
第1の角部67aで、第1の延在部671の一端と、タブ形成部675の一端とが接続されている。第2の角部67bで、第1の延在部671の他端と、第2の延在部673の一端とが接続されている。第3の角部67cで、第2の延在部673の他端と、第1の延在部672の一端とが接続されている。第4の角部67dで、第1の延在部672の他端と、第2の延在部674の一端とが接続されている。第2の延在部674の他端は、タブ形成部675の他端と接続されている。
【0124】
本実施形態では、型抜工程の開始直前に、タブ形成部665が原板91の一方の非形成領域93の直上に位置するように、回転体64の初期的な位置および回転角が設定されている。回転体64が概ね一回転すると、タブ形成部675が原板91の他方の非形成領域93と重なるようになっている。
【0125】
図15(b)に示すように、t20よりも前に制御部60は、搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送し、t20に搬送ローラー21〜24を停止させる。t20よりも前に支柱(以下、第1の支柱という)62および支柱63(以下、第2の支柱という)は、上位置に保持されている。第1、第2の支柱62、63が上位置に保持されているときに、回転体64が原板91に接触しないようになっている。
【0126】
制御部60は、t20からt21の間に第1の支柱62および第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、抜き刃66のうちで最も原板支持部20に向かって突出している部分(タブ形成部665の一部)が、原板91を貫通して切断する。制御部60は、t21からt22の間に回転体64を正回転させる。正回転は、抜き刃66において原板支持部20に向かい合う部位が、タブ形成部665から第1の延在部661、662を経て第2の延在部663に変化するような回転方向である。t20からt22の間にタブ形成部665、次いで第2の延在部664が原板91と接触し、切断方向M1に沿って原板91が切断される。
【0127】
制御部60は、t22からt23の間に第1の支柱62を下位置に待機させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。制御部60は、t23からt24の間に回転体64を正回転させる。これにより、第1の延在部661が、第1の角部66aから第2の角部66bに向かう切断方向M2に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0128】
制御部60は、t24からt25の間に第1の支柱62を上位置に移動させ、第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、第2の延在部663が、第2の角部66bから第3の角部66cに向かう切断方向M3に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0129】
制御部60は、t25からt26の間に第1の支柱62を上位置に待機させ、第2の支柱63を下位置に待機させるとともに、抜き刃67のうちで第3の角部67cが最も原板支持部20に接近するまで回転体64を正回転させる。
【0130】
制御部60は、t26からt27の間に第1の支柱62を下位置に移動させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。これにより、第2の延在部673が、第3の角部67cから第2の角部67bに向かう切断方向M4に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0131】
制御部60は、t27からt28の間に回転体を正回転させる。これにより、第1の延在部671が、第2の角部67bから第1の角部67aに向かう切断方向M5に沿って、時間順次で原板91を切断する。
【0132】
制御部60は、t28からt29の間に第1の支柱62を下位置に待機させ、第2の支柱63を下位置に移動させる。これにより、第2の延在部674が、タブ形成部675から第4の角部67dに向かう切断方向M6に沿って、時間順次で原板91を切断する。
制御部60は、t29からt30の間に回転体64を正回転させる。これにより、タブ形成部675が原板91と接触して、切断方向M7に沿って原板91が切断される。
【0133】
制御部60は、t30からt31の間に第1の支柱62を上位置に移動させ、第2の支柱63を下位置に待機させる。制御部60は、t31からt32の間に回転体64を逆回転させる。逆回転は、抜き刃67において原板支持部20に向かい合う部位が、タブ形成部675から第1の延在部671、672を経て第2の延在部673に変化するような回転方向である。t31からt32の間に、抜き刃67の第1の延在部672、次いで抜き刃66の第1の延在部662が原板91と接触して、第4の角部67dから第4の角部66dに向かう切断方向M8に沿って原板91が切断される。
【0134】
制御部60は、t32からt33の間に第1の支柱62を上位置に待機させ、第2の支柱63を上位置に移動させる。制御部60は、t33から後の時間に搬送ローラー21〜24を回転させて、所定の送り幅で保護シート90および原板91を搬送する。電極板型抜装置5は、以下同様にt20からt33までの動作を繰り返すことにより、原板91を繰り返し型抜する。
【0135】
以上のような第3実施形態の電極板型抜装置5にあっては、抜き刃66、67において原板91に接触する部位は、回転体64の回転により回転体64の周方向に変化し、支柱62、63の上下移動により回転体64の軸方向に変化する。したがって、原板91の切断部の位置が時間的に変化し、第1、第2実施形態と同様の理由により、電極活物質の剥離や脱離が低減される。
【0136】
抜き刃66、67が、円柱状の回転体本体65の外周面に設けられているので、次に説明するように、抜き刃66、67のうちで原板91に接触する部位を高精細な空間分解能で制御可能になる。理論的に、円柱の外周面は平面と線で接する。つまり、抜き刃66、67のうちで原板支持部20の上面20aに最も接近する部位は、回転体本体65の軸方向に延在する第2の延在部で線状になり、回転体本体65の周方向に延在する第1の延在部で点状になる。したがって、回転体本体65の中心軸と上面20aとがなす角度を制御すれば、抜き刃66、67が最も上面20aに接近する部位が小面積(理論上は1点)になる。抜き刃が平面的に設けられている場合と比較すると、抜き刃66、67で原板91と接触する部位を高精細な位置精度で設定することが可能になる。
【0137】
なお、本発明の技術範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。例えば、原板に刃先が接触する経路の始点あるいは終点は、電極活物質が設けられている形成領域に設定されていてもよい。この場合にも、原板に接触する刃先の抜き刃における位置が時間順次で変化するようになっていれば、電極活物質の剥離や脱離を低減する効果は得られる。
上述の実施形態では、原板支持部に対して抜き型を進退させて抜き刃を原板に接触させているが、抜き型に対して原板支持部を進退させて抜き型を原板に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1・・・電池セル、2・・・電極板型抜装置、3、3B・・・駆動系、
4・・・電極板型抜装置、5・・・電極板型抜装置、6・・・駆動系、
10・・・電池容器、11・・・容器本体、12・・・蓋、13、14・・・電極端子、
15、16・・・電極板、17・・・セパレータ、20・・・原板支持部、
20a・・・上面、21〜24・・・搬送ローラー、30、30B・・・制御部、
31、31B・・・駆動部、32、32B・・・保持部、33・・・保持部、
34・・・抜き型、34a・・・支持基板、34b・・・主面、35・・・抜き型、
35a・・・支持基板、36・・・抜き刃、36a・・・外周面、36b・・・内周面、
36c・・・刃先、37・・・抜き刃、38・・・弾性部材、38a・・・表面、
39・・・弾性部材、40・・・制御部、41・・・駆動部、42・・・保持部、
43・・・抜き型、44・・・支持基板、44a・・・主面、45・・・抜き刃、
45a〜45h・・・第1〜第8の角部、46・・・抜き刃、47・・・弾性部材、
60・・・制御部、61・・・駆動部、62・・・第1の支柱、63・・・第2の支柱、64・・・回転体、65・・・回転体本体、65a、65b・・・回転軸、
66・・・抜き刃、66a〜66d・・・第1〜第4の角部、67・・・抜き刃、
67a〜67d・・・第1〜第4の角部、90・・・保護シート、91・・・原板、
92・・・形成領域、93・・・非形成領域、94・・・切断部、150・・・母部、
151・・・電極タブ、152・・・集電材、153・・・電極活物質、
154・・・形成領域、155・・・非形成領域、161・・・電極タブ、
310・・・主軸、311〜314・・・第1〜第4の副軸、
311B〜313B・・・回転部、314B〜316B・・・接続ロッド、
315・・・主軸、316〜319・・・第1〜第4の副軸、
361、362・・・第1の延在部、363、364・・・第2の延在部、
365・・・タブ形成部、366〜369・・・第1〜第4の角部、410・・・主軸、
450・・・刃先、451、452・・・第1の延在部、
453、454・・・第2の延在部、455・・・タブ形成部、
661、662・・・第1の延在部、663、664・・・第2の延在部、
665・・・タブ形成部、671、672・・・第1の延在部、
673・・・第2の延在部、674・・・第2の延在部、675・・・タブ形成部、
a〜d・・・第1〜第4の角部、F1、F2、G1、G2・・・回動軸、
H1〜H4・・・切断方向、J1、J2・・・圧縮力、K・・・基準線、
M1〜M8・・・切断方向、S1〜S7・・・ステップ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の原板を支持可能な原板支持部と、
前記原板支持部に刃先を向けて配置される抜き刃と、
前記原板支持部に支持された状態の前記原板に前記刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備え、
前記抜き刃は、
第1の方向に延在する第1の延在部と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部と、
前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部と、
を有し、
前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置が、前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていることを特徴とする電極板型抜装置。
【請求項2】
前記抜き刃を支持する支持基板を備え、
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対位置を変化させることを特徴とする請求項1に記載の電極板型抜装置。
【請求項3】
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対的な姿勢を変化させることを特徴とする請求項2に記載の電極板型抜装置。
【請求項4】
前記刃先が前記支持基板の主面と交差する向きに前記支持基板から突出しており、前記主面と前記刃先との距離が該抜き刃の部位で変化していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電極板型抜装置。
【請求項5】
前記抜き刃が、前記原板支持部と向かい合う平面に沿う方向に閉じた形状に形成されており、該抜き刃の内周面の前記刃先に向かう部分が前記平面の法線方向となす角度は、該抜き刃の外周面の前記刃先に向かう部分が前記法線方向となす角度よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電極板型抜装置。
【請求項6】
集電材の表面に電極活物質が設けられてなる電極板の原板を準備する原板準備工程と、
第1の方向に延在する第1の延在部、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部、および前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部を有する抜き刃を準備する抜き刃準備工程と、
前記原板に抜き刃の刃先を接触させ、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置を前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化させる処理を含んで前記原板を型抜きする型抜工程と、
を有することを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項7】
前記原板準備工程では、前記電極活物質が設けられている形成領域と、前記電極活物質が設けられていない非形成領域と、を有する前記原板を準備し、
前記型抜工程では、前記原板において前記刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を前記非形成領域の内側に設定することを特徴とする請求項6に記載の電極板の製造方法。
【請求項1】
電極板の原板を支持可能な原板支持部と、
前記原板支持部に刃先を向けて配置される抜き刃と、
前記原板支持部に支持された状態の前記原板に前記刃先を接触させることが可能な駆動系と、を備え、
前記抜き刃は、
第1の方向に延在する第1の延在部と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部と、
前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部と、
を有し、
前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置が、前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化するようになっていることを特徴とする電極板型抜装置。
【請求項2】
前記抜き刃を支持する支持基板を備え、
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対位置を変化させることを特徴とする請求項1に記載の電極板型抜装置。
【請求項3】
前記駆動系は、前記支持基板と前記原板支持部との相対的な姿勢を変化させることを特徴とする請求項2に記載の電極板型抜装置。
【請求項4】
前記刃先が前記支持基板の主面と交差する向きに前記支持基板から突出しており、前記主面と前記刃先との距離が該抜き刃の部位で変化していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電極板型抜装置。
【請求項5】
前記抜き刃が、前記原板支持部と向かい合う平面に沿う方向に閉じた形状に形成されており、該抜き刃の内周面の前記刃先に向かう部分が前記平面の法線方向となす角度は、該抜き刃の外周面の前記刃先に向かう部分が前記法線方向となす角度よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電極板型抜装置。
【請求項6】
集電材の表面に電極活物質が設けられてなる電極板の原板を準備する原板準備工程と、
第1の方向に延在する第1の延在部、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の延在部、および前記第1の延在部と前記第2の延在部とを接続する角部を有する抜き刃を準備する抜き刃準備工程と、
前記原板に抜き刃の刃先を接触させ、前記原板に接触する前記刃先の前記抜き刃における位置を前記第1の延在部から前記角部を経て前記第2の延在部まで時間順次で変化させる処理を含んで前記原板を型抜きする型抜工程と、
を有することを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項7】
前記原板準備工程では、前記電極活物質が設けられている形成領域と、前記電極活物質が設けられていない非形成領域と、を有する前記原板を準備し、
前記型抜工程では、前記原板において前記刃先が接触する経路の始点と終点との少なくとも一方を前記非形成領域の内側に設定することを特徴とする請求項6に記載の電極板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−74178(P2012−74178A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216731(P2010−216731)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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