電極構造体、低圧放電ランプ、照明装置および画像表示装置
【課題】電極構造体のガラス部材の歪を低減することで、電極構造体を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体の封着部が破損するのを防止することを目的とする。
【解決手段】電極101と、一端部が電極101に接続された封着線102と、前記封着線102の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材103とを有する電極構造体100であって、封着線102の熱膨張係数をKl[K-1]とし、ガラス部材103の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つ。
【解決手段】電極101と、一端部が電極101に接続された封着線102と、前記封着線102の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材103とを有する電極構造体100であって、封着線102の熱膨張係数をKl[K-1]とし、ガラス部材103の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造体、低圧放電ランプ、照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低圧放電ランプを図12に示す。従来の低圧放電ランプ(以下、「ランプ1」という。)は、硬質ガラスからなるガラスバルブ2より構成される冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ2はその内面に蛍光体層3が被着されており、ガラスバルブ2は、紫外光を放出する封入ガス成分、2つ以上のホロー電極4、2つ以上の封着線5および封着線5を真空に耐える気密性を持つシールでバルブに結合する2つ以上のガラスビード(ガラス部材)6を含んでおり、封着線5が少なくともガラスビード6の長さにわたりモリブデン又はモリブデン合金で作られており、ホロー電極4がモリブデン、モリブデン合金、ニオブ、ニオブ合金の群のうちの材料で少なくとも部分的に作られており、ガラスビード6が、4.0〜5.3×10-6[K-1]の熱膨張係数(20[℃]〜300[℃])および、SiO2を55〜75[重量%]、B2O3を13〜25[重量%] 、Al2O3を0〜10[重量%] 、アルカリ酸化物を5〜12[重量%] 、アルカリ土類酸化物を0〜3[重量%]、ZrO2を0〜5重量%、TiO2を0〜1 0[重量%]、および残余の酸化物が0〜5[重量%]であって、ガラスビード6における熱膨張係数α2と封着線の熱膨張係数α3が、1×10-7[K-1]≦(α3−α2)≦1.3×10-6[K-1]を満たす(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者らの検討により、ガラスバルブの封止に用いる電極構造体においては、ガラス部材に熱膨張係数が90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内の軟質ガラスを用いる場合、電極構造体の封着線とガラス部材との熱膨張係数を一致させたとしても、電極構造体のガラス部材には歪が残存してしまうことがわかった。電極構造体のガラス部材に歪が残存したままの状態で、電極構造体をガラスバルブに封着させると、その封着部において歪が残存し、封止等の熱衝撃を伴う工程において、封着部分が破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明に係る電極構造体は、電極構造体のガラス部材の歪を低減することで、電極構造体を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体の封着部が破損するのを防止することを目的とする。
【0006】
また、本発明に係る低圧放電ランプは、電極構造体の封着部が破損するのを防止することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、内部に備える低圧放電ランプが衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電極構造体は、電極と、一端部が前記電極に接続された封着線と、前記封着線の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材とを有する電極構造体であって、前記封着線の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電極構造体は、さらに、9×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7の関係が成り立つことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電極構造体は、前記封着線における少なくとも前記ガラス部材に覆われている部分の表面には、酸化膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る電極構造体は、前記酸化膜には、FeOまたはFe3O4が含まれていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電極構造体は、前記封着線は、鉄とニッケルとの合金からなることが好ましい。
【0013】
本発明に係る低圧放電ランプは、ガラスバルブと、前記ガラスバルブの少なくとも一方の端部に設けられた前記電極構造体とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る照明装置は、前記低圧放電ランプを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像表示装置は、前記照明装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電極構造体は、電極構造体のガラス部材の歪を低減することで、電極構造体を用いてガラスバルブを封止した場合に、電極構造体の封着部が破損するのを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る低圧放電ランプは、電極構造体の封着部が破損するのを防止することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、内部に備える低圧放電ランプが衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸を含む断面図
【図2】ガラス部材の熱膨張係数と封着線の熱膨張係数との差によるガラス部材の歪の変化を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【図5】(a)本発明の第4の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸を含む断面図、(b)同じく電極構造体の変形例の長手方向の中心軸を含む断面図
【図6】(a)本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図、(b)同じく低圧放電ランプの変形例の管軸を含む断面図
【図7】本発明の第6の実施形態に係る照明装置の分解斜視図
【図8】本発明の第7の実施形態に係る照明装置の一部切欠斜視図
【図9】(a)本発明の第8の実施形態に係る照明装置の正面図、(b)図9(a)のA−A´線で切った断面図
【図10】本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置の斜視図
【図11】(a)本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例の要部拡大正面図、(b)同じく低圧放電ランプの変形例の管軸を含む要部拡大断面図
【図12】従来の低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸X100を含む断面図を図1に示す。本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100(以下、「電極構造体100」という。)は、電極101と、一端部が電極101に接続された封着線102と、封着線102の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材103とを有する。
【0021】
電極101は、例えば有底筒状であって、内径が2.4[mm]、外径が2.7[mm]、底部の肉厚が0.2[mm]、全長が10[mm]であって、ニッケル(Ni)製である。電極101の材料は、ニッケルに限らず、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)のいずれか一種またはいずれか一種以上の合金を用いることができる。電極101は、その外側底面の略中央部において封着線102の一端面と接続されている。なお、電極101と封着線102とは、直接接続されていてもよいし、例えばニッケル箔やコバール箔からなるろう材等を介して接続されていてもよい。また、電極101と封着線102との接続方法としては、レーザー溶接や抵抗溶接等を用いることができる。
【0022】
封着線102は、例えば、電極101の外側底面と一端面が接続され、側面の一部においてガラス部材103に覆われている。封着線102は、例えば線径が0.8[mm]であって、鉄とニッケルとの合金製である。なお、封着線102において、ガラス部材103に覆われている部分の表面には、酸化膜(図示せず)が形成されていることが好ましい。この場合、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度を向上させることができる。さらに、酸化膜には、FeOおよびFe3O4のうちいずれか1種以上を含まれていることが好ましい。この場合、封着線102に鉄が含まれている場合に、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度を向上させることができる。さらには、酸化膜には、Fe3O4が含まれていることがより好ましい。この場合、封着線102に鉄が含まれている場合に、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度をさらに向上させることができる。
【0023】
封着線102は、例えば鉄とニッケルとの合金の場合、鉄とニッケルとの比率を調節することで、その熱膨張係数Kl[K-1]を調節することができる。例えば、封着線102が49[wt%]の鉄と51[wt%]のニッケルとの合金である場合、封着線102の熱膨張係数Kl[K-1]は、100×10-7[K-1]となる。封着線102に用いる鉄とニッケルとの合金の具体例を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
封着線102の熱膨張係数Klは、封着線102を溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。なお、封着線102の大きさが小さい場合等、封着線102を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、封着線102の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することで封着線102の熱膨張係数を求めることができる。
【0026】
なお、図1に示すように、封着線102の他端部には、外部リード線104が接続されていてもよい。この場合、この場合、電極構造体100を低圧放電ランプに用いた場合に、外部リード線104にかかる応力が封着線102と外部リード線104の接続部で吸収されるため、ガラス部材103へ伝わる応力を緩和することができる。外部リード線104は、例えば線径が0.6[mm]であって、ニッケル製である。外部リード線104は、ニッケルに限られず、ニッケルとマンガンとの合金またはジュメット線であってもよい。なお、外部リード線104の表面は、外部リード線104の酸化防止のために、半田で覆われていてもよい。
【0027】
ガラス部材103は、略球形状であって、その略中心軸に沿って封着線102を封着している。ガラス部材103の熱膨張係数は、例えば、材料となるガラスの組成を調整することにより調整することができる。ガラス部材103に用いるガラス組成の具体例を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、例えばガラスAの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、92.5×10-7[K-1]となり、ガラスBの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、93.6×10-7[K-1]となり、ガラスCの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、94.5×10-7[K-1]となり、ガラスDの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、100×10-7[K-1]となる。
【0030】
ガラス部材103の熱膨張係数Kgは、ガラス部材103を溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。なお、ガラス部材103の大きさが小さい場合等、ガラス部材103を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、ガラス部材103の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することでガラス部材103の熱膨張係数を求めることができる。
【0031】
封着線102の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つ。この場合、電極構造体に封着させたときに、封着部分に残る歪を低減することができる。
【0032】
(実験)
発明者らは、電極構造体100が電極構造体に封着させたときに、封着部分に残る歪を低減することができるかどうかを確認するために、封着部の歪を測定する実験を行った。実験は、封着線とガラス部材の材料をそれぞれ調節し、Kl−Kgが変化したときのガラス部材の歪を残留応力測定装置(神港精機株式会社製ポーラリメーターSFII−C型)により測定する方法を用いた。
【0033】
実験結果を図2に示す。なお、図2に示す歪とは、封着線102を径方向にしめつける方向を正とする歪である。図2に示すように、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内である場合、ガラス部材の歪を0以上60[kgf/cm2]以下にすることができる。
【0034】
一方、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]より小さい場合、ガラス部材の歪が60[kgf/cm2]よりも大きくなり、ランプ作成時にガラス部材をガラスバルブに封着させる際、その封着部分に発生する歪を取り除きにくくなる。
【0035】
また、Kl−Kgが12×10-7[K-1]より大きい場合、ガラス部材の歪が負の方向に発生するため、ガラス部材の封着性が低下してしまう。
【0036】
すなわち、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内である場合、ガラス部材の歪を低減し、封着線とガラス部材との封着性を向上させることができる。
【0037】
さらに、Kl−Kgが9×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、ガラス部材の歪を0以上40[kgf/cm2]以下にすることができる。
【0038】
さらにまた、ガラス部材の製造時のばらつきを考慮すると、Kl−Kgは、11×10-7[K-1]以下であることが好ましい。この場合、ガラス部材の歪が負の方向に発生することを着実に防止することができる。
【0039】
上記のとおり、本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100の構成によれば、電極構造体100のガラス部材103の歪を低減することで、電極構造体100を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X200を含む断面図を図3に示す。本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200(以下、「ランプ200」)は、冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ201と、ガラスバルブ201の少なくとも一方の端部に設けられた電極構造体100とを有する。
【0041】
ガラスバルブ201は、直管状であり、その管軸に対して略垂直に切った断面が略円環形状である。このガラスバルブ201は、例えば外径が4[mm]、内径が3[mm]、全長が1000[mm]であって、その材料は例えば鉛フリーガラスやソーダガラス等の軟質ガラスである。以下に示すランプ200の寸法は、外径が4[mm]、内径が3[mm]のガラスバルブ201の寸法に対応する値である。ガラスバルブ201の内部には、水銀と希ガスが封入されている。水銀は、例えば3[mg]の水銀が封入されている。希ガスは、例えばネオンとアルゴンがAr:10[mol%]、Ne:90[mol%]のモル比の混合ガスが40[Torr]の圧力で封入されている。
【0042】
また、ガラスバルブ201の内面には蛍光体層202が形成されている。蛍光体層202に用いる蛍光体粒子は、例えば、赤色蛍光体粒子(Y2O3:Eu3+)、緑色蛍光体粒子(LaPO4:Ce3+,Tb3+)および青色蛍光体粒子(BaMg2Al16O27:Eu2+)からなる蛍光体で形成されている。
【0043】
また、ガラスバルブ201の内面と蛍光体層202との間には例えば酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物の保護膜(図示せず)を設けてもよい。これにより、ガラスバルブのナトリウム成分と水銀との反応を抑制することで、輝度維持率を向上させることができる。
【0044】
電極構造体100は、本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100と実質的に同じものであり、ガラスバルブ201の両端部に設けられている。
【0045】
ガラスバルブ201に封着された状態での電極構造体100のガラス部材103の熱膨張係数Kg[K-1]は、ガラス部材103の管軸方向中央部側(図3中鎖線矢印より管軸方向端部側)において、ガラスバルブを切断し、ガラス部材103をガラスバルブ201ごと溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。この場合、ガラスバルブ201の一部がガラス部材に混じってしまうこととなるが、その量がガラス部材103の量と比較して少ないため、影響は小さいものと考えられる。
【0046】
なお、ガラス部材103の大きさが小さい場合等、ガラス部材103を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、ガラス部材103の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することでガラス部材103の熱膨張係数Kgを求めることができる。
【0047】
上記のとおり、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200の構成によれば、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0048】
なお、ガラスバルブ201の熱膨張係数Kbは、90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、電極構造体100との封着性を向上することができる。
【0049】
さらに、電極101の内面には、セシウム化合物が付着していてもよい。この場合、ランプ200のランプ電圧を低下させることができるとともに、暗黒始動特性を向上させることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X300を含む断面図を図4に示す。本発明の第3の実施形態に係る放電管(以下、「ランプ300」という)は、内部外部電極蛍光ランプである。
【0051】
ランプ300は、その一端部の外表面に外部電極301を有し、それに伴う構成を除いては本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200と実質的に同じ構成を有している。よって、外部電極301とそれに伴う構成については詳細に説明し、それ以外の点については省略する。
【0052】
外部電極301は、例えば、半田からなり、ガラスバルブ201の一端部の外表面を覆うように形成されている。
【0053】
また、外部電極301は、銀ペーストをガラスバルブ201の電極形成部分の全周に塗布することによって形成してもよいし、金属製のキャップをガラスバルブ201の一端部に被せてもよい。さらに、アルミニウムの金属箔を、シリコーン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤(図示せず)によってガラスバルブ201の一端部全体の外周面を覆うように貼着したものであってもよい。なお、導電性粘着剤において、シリコーン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いてもよい。
【0054】
また、ガラスバルブ201の内面であって、外部電極301が形成された領域に例えば酸化イットリウム(Y2O3)の保護膜を設けてもよい。保護膜(図示せず)を設けることにより、ガラスバルブ201のその部分に水銀イオンが衝撃することによって起こるガラス削れやピンホールを防止することができる。
【0055】
なお、保護膜は、酸化イットリウムに代えて、例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、チタニア(TiO2)等の金属酸化物を用いてもよい。特に、保護膜が酸化イットリウムやシリカで形成されている場合には、保護膜に水銀が付着し難く、水銀消費が少ない。
【0056】
なお、ガラスバルブ201の他端部は、ガラス部材103を用いずに、ガラスバルブ201の一端部を加熱して溶融させることにより封着されていてもよい。
【0057】
上記のとおり、本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプ300に係る構成によれば、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸X400を含む断面図を図5(a)に示す。本発明の第4の実施形態に係る電極構造体(以下、「電極構造体400」という)は、電極401と、一端部が電極401に接続された封着線402と、封着線402の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材403とを有する。
【0059】
電極401は、例えばタングステン製のフィラメントコイルである。電極401には、その巻線部にエミッタ(図示せず)が付着している。エミッタには、例えば(Ba,Sr,Ca)O等を用いることができる。なお、電極401は、タングステン製のフィラメントコイルに限らず、レニウムタングステン製のフィラメントコイルであってもよい。この場合、電極401がランプの点灯等により加熱されたときの強度を向上させることができる。
【0060】
電極401は、その両端部を一対の封着線402に担持されている。封着線402は、例えば、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金製である。具体的には、50[wt%]以上52[wt%]以下の範囲内のニッケルと、残部の鉄との合金製であることが好ましい。
【0061】
一対の封着線402は、少なくとも一部がガラス部材403により覆われている。ガラス部材403は、略玉子形状であって、封着線402の線軸に対して垂直に切った断面が略楕円形状となり、一対の封着線402の中点がガラス部材403のほぼ中点を通るように封着線402を封着している点を除いては、ガラス部材103と実質的に同じ構成のものである。
【0062】
なお、ガラス部材403は1[個]に限らず、封着線402の長手方向に複数個設けられていてもよい。ガラス部材403が封着線402の長手方向に2[個]設けられている場合、一方のガラス部材をランプの製造工程における仮封止に使用することができ、ランプを製造しやすくすることができる。
【0063】
上記のとおり、本発明の第4の実施形態に係る電極構造体400の構成によれば、電極構造体400のガラス部材403の歪を低減することで、電極構造体400を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体400の封着部が破損するのを防止することができる。
【0064】
なお、図5(b)に示す電極構造体(以下、「電極構造体404」という)であってもよい。電極構造体404は、電極405が電極構造体404の長手方向の中心軸X404を旋回軸とした二重螺旋構造をしている。この場合、電極構造体400に比べてランプを細径化しやすくすることができる。封着線406は、直線形状であって、形状を除いては封着線402と実質的に同じ構成を有する。
【0065】
なお、図5(b)に示すように、電極405と封着線406とは、接続部材407を介して接続されていることが好ましい。この場合、電極405と封着線406との接続をより確実に行うことができる。接続部材407は、例えばニッケル製である。
【0066】
さらに、電極405の周囲をスリーブ408で覆うことが好ましい。この場合、電極405からエミッタが飛散するのを抑制することができる。スリーブ408は、例えばニッケル製であって、一方の接続部材に溶接により接続されている。なお、スリーブ408の材料は、ニッケルに限らず、例えばモリブデン、タンタル、ニオブ、タングステン等を用いることができる。
【0067】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの長手方向の中心軸X500を含む断面図を図6(a)に示す。本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ(以下、「ランプ500」という)は、熱陰極蛍光ランプであって、本発明の第4の実施形態に係る電極構造体400を備えている点を除いては、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200と実質的に同じ構成を有する。
【0068】
上記のとおり、本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500の構成によれば、電極構造体400の封着部が破損するのを防止することができる。
【0069】
なお、図6(b)に示すように、電極構造体404を備えた低圧放電ランプ(以下、「ランプ501」)であってもよい。この場合、電極構造体404の封着部が破損するのを防止することができることに加えて、ガラスバルブ201を細径化することができる。
【0070】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る照明装置の分解斜視図を図7に示す。本発明の第6の実施形態に係る照明装置(以下、「照明装置600」という)は直下方式のバックライトユニットであり、一つの面が開口した直方体状の筐体601と、この筐体601の内部に収納された複数のランプ200と、ランプ200を点灯回路(図示せず)に電気的に接続するための一対のソケット602と、筐体601の開口部を覆う光学シート類603とを備えている。なお、ランプ200は、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200である。なお、ランプ200に限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。
【0071】
筐体601は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製であって、その内面に銀などの金属が蒸着されて反射面604が形成されている。なお、筐体601の材料としては、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウムや冷間圧延材(例えばSPCC)等の金属材料により構成してもよい。また、内面の反射面604として金属蒸着膜以外、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に炭酸カルシウム、二酸化チタン等を添加することにより反射率を高めた反射シートを筐体601に貼付したものを用いてもよい。
【0072】
筐体601の内部には、ソケット602、絶縁体605およびカバー606が配置されている。具体的に、ソケット602は、ランプ200の配置に対応して筐体601の短手方向(縦方向)に各々所定間隔を空けて設けられている。ソケット602は、例えばステンレスやりん青銅からなる板材を加工したものであって、外部リード線104が嵌め込まれる嵌込部602aを有している。そして、外部リード線104を嵌込部602aを押し拡げるように弾性変形させて嵌め込む。その結果、嵌込部602aに嵌め込まれた外部リード線104は、嵌込部602aの復元力によって押圧され、外れにくくなる。これにより、外部リード線104を嵌込部602aへ容易に嵌め込むことができつつ、外れにくくすることができる。
【0073】
ソケット602は、互いに隣り合うソケット602同士で短絡しないように絶縁体605で覆われている。絶縁体605は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で構成されている。なお、絶縁体605は、上記の構成に限定されない。ソケット602はランプ200の動作中に比較的高温となる電極の近傍にあることから絶縁体605は耐熱性のある材料で構成することが好ましい。耐熱性のある絶縁体605の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂やシリコンゴム等を適用することができる。
【0074】
筐体601の内部には、必要に応じた場所にランプホルダ607を設けてもよい。筐体601内側でのランプ200の位置を固定するランプホルダ607は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂であり、ランプ200の外面形状に沿うような形状を有している。「必要に応じた場所」とは、ランプ200の長手方向の中央部付近のように、ランプ200が例えば全長600[mm]を越えるような長尺のものである場合に、ランプ200のたわみを解消するために必要な場所である。
【0075】
カバー606は、ソケット602と筐体601の内側の空間とを仕切るものであり、例えばポリカーボネート(PC)樹脂で構成し、ソケット602の周辺を保温するとともに、少なくとも筐体601側の表面を高反射性とすることにより、ランプ200の端部の輝度低下を軽減することができる。
【0076】
筐体601の開口部は、透光性の光学シート類603で覆われており、内部にちりや埃などの異物が入り込まないように密閉されている。光学シート類603は、拡散板608、拡散シート609およびレンズシート610を積層してなる。
【0077】
拡散板608は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂製の板状体であって、筐体601の開口部を塞ぐように配置されている。拡散シート609は、例えばポリエステル樹脂製である。レンズシート610は、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂の貼り合せである。これらの光学シート類603は、それぞれ拡散板608に順次重ね合わせるようにして配置されている。
【0078】
上記のとおり、本発明の第6の実施形態に係る照明装置600の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0079】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る照明装置の一部切欠斜視図を図8に示す。本発明の第7の実施形態に係る照明装置700(以下、「照明装置700」という)は、エッジライト方式のバックライトユニットで、反射板701、ランプ200、ソケット(図示せず)、導光板702、拡散シート703およびプリズムシート704から構成されている。
【0080】
反射板701は、液晶パネル側(矢印Q)を除く導光板702の周囲を囲むように配置されており、底面を覆う底面部701aと、ランプ200の配置されている側を除く側面を覆う側面部701bと、ランプ200の周囲を覆う曲面状のランプ側面部701cとで構成されており、ランプ200から照射される光を導光板702から液晶パネル(図示せず)側(矢印Q)に反射させる。また、反射板701は、例えばフィルム状のPETに銀を蒸着したものやアルミ等の金属箔を積層したもの等からなる。
【0081】
ランプ200は、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200である。なお、ランプ200に限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。
【0082】
ソケットは、本発明の第6の実施形態に係る照明装置600に用いられるソケット602と実質的に同じ構成を有している。なお、図8において、図示の便宜上により、ランプ200の端部については省略している。
【0083】
導光板702は、反射板701により反射された光を液晶パネル側に導くためのものであって、例えば透光性プラスチックからなり、照明装置700の底面に設けられた反射板701aの上に積層されている。なお、導光板702の材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂やシクロオレフィン系樹脂(COP)を適用することができる。
【0084】
拡散シート703は、視野拡大のためのものであって、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエステル樹脂製の拡散透過機能を有するフィルムからなり、導光板702の上に積層されている。
【0085】
プリズムシート704は、輝度を向上させるためのものであって、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂とを貼り合せたシートからなり、拡散シート703の上に積層されている。なお、プリズムシート704の上にさらに拡散板(図示せず)が積層されていてもよい。
【0086】
なお、本実施形態の場合には、ランプ200の周方向における一部分(照明装置700に挿入した場合における導光板702側)を除き、ガラスバルブ201の外面に反射シート(図示せず)を設けたアパーチャ型のランプであってもよい。
【0087】
上記のとおり、本発明の第7の実施形態に係る照明装置700の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0088】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る照明装置の正面図を図9(a)に、図9(a)のA−A´線で切った断面図を図9(b)にそれぞれ示す。本発明の第8の実施形態に係る照明装置800(以下、「照明装置800」という)は、一般照明用の環状蛍光ランプを使用した照明器具である。
【0089】
照明装置800は、本体部801、盤状部802、ランプホルダ803、ソケット804およびランプ805から構成されている。
【0090】
本体部801は、その内部に点灯回路(図示せず)等を収納し、例えばその上部から電気接続部(図示せず)が導出しており、例えばその側面部からランプ805の口金806と電気的に接続するためのソケット804が導出している。
【0091】
盤状部802は、本体部801、ランプホルダ803を支持する部材であり、例えば円盤状の形状を有している。
【0092】
ランプホルダ803は、盤状部802の下面に取付けられており、その下端に設けられた例えばC字状の挟持片によりランプ805を保持し、ランプ805の落下を防止することができる。
【0093】
ランプ805は、環状の熱陰極蛍光ランプであり、形状が環状であることと口金806がランプ805の中間部に位置していることを除いては第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500、501と実質的に同じ構成を有している。
【0094】
上記のとおり、本発明の第8の実施形態に係る照明装置800の構成によれば、内部に備えるランプ805の電極構造体400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0095】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置の概要を図10に示す。図10に示すように画像表示装置900は、例えば32[inch]液晶テレビ(液晶表示装置)であり、液晶パネル等を含む液晶画面ユニット901と本発明の第6の実施形態に係る照明装置600と点灯回路902とを備える。
【0096】
液晶画面ユニット901は、公知のものであって、液晶パネル(カラーフィルター基板、液晶、TFT基板等)(図示せず)、駆動モジュール等(図示せず)を備え、外部からの画像信号に基づいてカラー画像を形成する。
【0097】
点灯回路902は、照明装置600内部のランプ200を点灯させる。そして、ランプ200は、点灯周波数40[kHz]〜100[kHz]、ランプ電流3.0[mA]〜25[mA]で動作される。
【0098】
なお、図10では、画像表示装置900の照明装置として本発明の第6の実施形態に係る照明装置600に第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200を挿入した場合について説明したが、これに限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。また、照明装置は照明装置600に限らず、照明装置700も用いることができる。
【0099】
上記のとおり、本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置900の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0100】
(変形例)
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を用いることができる。
1.電子放射性物質について
電極101の表面には、電子放射性物質層(図示せず)が形成されていてもよい。この場合、電子放射性物質層が設けられていないランプに比べてランプ電圧を下げることができる。具体的には、電子放射性物質層は、例えば電極101の内面に形成されている。電子放射性物質層は、例えば希土類元素を含む。冷陰極蛍光ランプにおいて、ランプ電圧を下げるのに効果的なためである。さらに、希土類元素は、ランタン(La)およびイットリウム(Y)のうちいずれか1種以上であることがより好ましい。
【0101】
電子放射性物質層は、さらに珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、硼素(B)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、リン(P)および錫(Sn)のうちいずれか1種以上を含むことが好ましい。この場合、ランプ電圧の低減効果をより持続させることができる。
【0102】
さらに、電子放射性物質層に、セシウム(Cs)化合物が含まれていてもよい。この場合、ランプの暗黒始動特性をさらに向上させることができる。また、電子放射性物質層とは別に、電極101の内面や外面にセシウム化合物を付着させてもよい。なお、セシウム化合物は、例えば、硫酸セシウム、アルミン酸セシウム、ニオブ酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムおよび塩化セシウムのうちいずれか1種以上を用いることが好ましい。また、セシウム化合物は、電極101の外側側面に付着されていることがより好ましい。この場合、冷陰極蛍光ランプの製造工程において、セシウム化合物を適度に活性化させやすくすることができる。さらには、電極101の外側側面におけるランプ中央部側の先端部に付着されていることがさらにより好ましい。
2.口金について
本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例の要部拡大正面図を図11(a)に、その管軸を含む要部拡大断面図を図11(b)にそれぞれ示す。本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例(以下、「ランプ203」という。)は、口金204を備える点を除いては、ランプ200と実質的に同じ構成を有する。よって、以下、口金204について詳細に説明し、その他の点については説明を省略する。
【0103】
口金204は、外部リード線104と電気的かつ機械的に接続されている。具体的には、口金204は、ガラスバルブ201の端部を覆う胴体部204aと、胴体部204aの一端より延出し、外部リード線104と電気的かつ機械的に接続される延出部204bとで構成されている。このようなランプ203は、照明装置に組み込む際、口金204をヒューズソケット(図示せず)等に挿入するだけで電気的かつ機械的に接続できる。
【0104】
胴体部204aの側面には、ガラスバルブ201を保持するための保持部204cが設けられている。保持部204cは、例えば、胴体部204aの側面の一部を切り抜き、ガラスバルブ201側に折り曲げて形成されている。また、保持部204cの先端部204dは、ガラスバルブ201を傷付けないようにガラスバルブ201とは反対側に折り曲げられている。なお、保持部204cは、胴体部204aの周方向に略等間隔に3[箇所]以上設けられていることが好ましい。この場合、ガラスバルブ201をより安定して保持できるためである。さらに、保持部204cとガラスバルブ201との接触部は、電極101の対向部にあることが好ましい。この場合、電極101付近で発生する熱の放熱を、保持部204cを介して促進させることができる。
【0105】
なお、口金204を通じて電極101で発生する熱を放熱させやすくすることができるため、電極の表面に電子放射性物質層が設けられている場合においては、電極101周辺の温度の過度の上昇を抑制し、電極101周辺において水銀が少なくなることを抑制することで、電子放射性物質層のスパッタリングを抑制し、口金204が設けられていないランプに比べてランプ電圧の低減効果を持続させることができる。
3.ガラス部材およびガラスバルブについて
(1)紫外線吸収について
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201の材料であるガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0106】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0107】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0108】
また、酸化鉄(Fe2O3)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
(2)赤外線透過係数について
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201の材料であるガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、長尺の冷陰極放電ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
【0109】
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
【0110】
[数1]X=(log(a/b))/t
a:3840[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
(3)軟質ガラスについて
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いる熱膨張係数が90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内の軟質ガラスとしては、例えば以下のようなものを用いることができる。
【0111】
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、Li2Oが0[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜11[wt%]、Na2Oが3[wt%]〜12[wt%]、CaOが0[wt%]〜9[wt%]、MgOが0[wt%]〜9[wt%]、SrOが0[wt%]〜12[wt%]、BaOが0[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、鉛成分を含有せず、環境に優しい冷陰極放電ランプを提供することができる。さらには、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが0[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜11[wt%]、Na2Oが3[wt%]〜12[wt%]、CaOが0[wt%]〜9[wt%]、MgOが0[wt%]〜9[wt%]、SrOが0[wt%]〜12[wt%]、BaOが0[wt%]〜12[wt%]の組成を有していることがより好ましい。
【0112】
また、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、Li2Oが0.5[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜7[wt%]、Na2Oが5[wt%]〜12[wt%]、CaOが1[wt%]〜7[wt%]、MgOが1[wt%]〜7[wt%]、SrOが0[wt%]〜5[wt%]、BaOが7[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、ランプへの加工を行いやすく、かつ鉛成分を含有せず、環境に優しい冷陰極蛍光ランプを提供することができる。
【0113】
さらに、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が65[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが0.5[wt%]〜5[wt%]、 K2Oが3[wt%]〜7[wt%]、Na2Oが5[wt%]〜12[wt%]、 CaOが2[wt%]〜7[wt%]、MgOが2.1[wt%]〜7[wt%]、SrOが0[wt%]〜0.9[wt%]、BaOが7.1[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、鉛成分を含有せず、照明用途に適した電気絶縁性を有し、かつ、失透を起こりにくくすることができる。さらには、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が65[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜3[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが1[wt%]〜3[wt%]、K2Oが3[wt%]〜6[wt%]、Na2Oが7[wt%]〜10[wt%]、 CaOが3[wt%]〜6[wt%]、MgOが3[wt%]〜6[wt%]、SrOが0[wt%]〜0.9[wt%]、BaOが7.1〜10[wt%]の組成を有していることがより好ましい。
(4)ガラスバルブ201の形状について
ガラスバルブ201の形状は、直管形状のものに限られず、例えばL字形状、U字形状、コの字形状、渦巻き形状等であってもよい。また、その管軸に対して略垂直に切った断面は、略円形状のものに限られず、例えばトラック形状や角丸形状のような扁平形状や楕円形状等であってもよい。
4.蛍光体層の蛍光体について
(1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を利用すると良い。なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0114】
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl10O17]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であることが好ましい。
【0115】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0116】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl10O17]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0117】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0118】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
・マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313nmを吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラスバルブ外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層202に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0119】
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極放電ランプや外部電極放電ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0120】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0121】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.151、y=0.065
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0122】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.139、y=0.574
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.267、y=0.663
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0123】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.651、y=0.344
・YPV、色度座標:x=0.658、y=0.333
・MFG、色度座標:x=0.711、y=0.287
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0124】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.644、y=0.353)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,056)で構成されている。
【0125】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
【0126】
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層202を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んでできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0127】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95[%]となり、例1及び2に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0128】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである為、カラーフィルターとの組み合わせにより色再現範囲が上記値より前後する可能性がある。
5.封入ガスについて
希ガスにクリプトンが含まれていてもよい。この場合、放電管が冷陰極蛍光ランプである場合に赤外線放射を抑制することができる。さらには、希ガスにクリプトンが0.5[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内で含まれていることが好ましい。この場合、ランプ電圧を大きく変化させることなく、冷陰極蛍光ランプの赤外線放射を抑制することができる。例えばアルゴンが0[mol%]以上9.5[mol%]以下の範囲内、ネオンが90[mol%]以上95.5[mol%]以下の範囲内、クリプトンが0.5[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内である。さらには、希ガスにクリプトンが0.5[mol%]以上3[mol%]以下の範囲内で含まれていることがより好ましい。さらには、希ガスにクリプトンが1[mol%]以上3[mol%]以下の範囲内で含まれていることがさらにより好ましい。
6.ランプの種類について
上記の各実施形態においては、放電管として、冷陰極蛍光ランプ、内部外部電極蛍光ランプおよび熱陰極蛍光ランプを中心に説明したが、ガラスバルブの内面に蛍光体層の形成されていない紫外線ランプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、電極構造体、低圧放電ランプ、照明装置および画像表示装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
100、400、404 電極構造体
101、401、405 電極
102、402、406 封着線
103、403 ガラス部材
200、300、500、501 低圧放電ランプ
201 ガラスバルブ
600、700、800 照明装置
900 画像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造体、低圧放電ランプ、照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低圧放電ランプを図12に示す。従来の低圧放電ランプ(以下、「ランプ1」という。)は、硬質ガラスからなるガラスバルブ2より構成される冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ2はその内面に蛍光体層3が被着されており、ガラスバルブ2は、紫外光を放出する封入ガス成分、2つ以上のホロー電極4、2つ以上の封着線5および封着線5を真空に耐える気密性を持つシールでバルブに結合する2つ以上のガラスビード(ガラス部材)6を含んでおり、封着線5が少なくともガラスビード6の長さにわたりモリブデン又はモリブデン合金で作られており、ホロー電極4がモリブデン、モリブデン合金、ニオブ、ニオブ合金の群のうちの材料で少なくとも部分的に作られており、ガラスビード6が、4.0〜5.3×10-6[K-1]の熱膨張係数(20[℃]〜300[℃])および、SiO2を55〜75[重量%]、B2O3を13〜25[重量%] 、Al2O3を0〜10[重量%] 、アルカリ酸化物を5〜12[重量%] 、アルカリ土類酸化物を0〜3[重量%]、ZrO2を0〜5重量%、TiO2を0〜1 0[重量%]、および残余の酸化物が0〜5[重量%]であって、ガラスビード6における熱膨張係数α2と封着線の熱膨張係数α3が、1×10-7[K-1]≦(α3−α2)≦1.3×10-6[K-1]を満たす(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者らの検討により、ガラスバルブの封止に用いる電極構造体においては、ガラス部材に熱膨張係数が90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内の軟質ガラスを用いる場合、電極構造体の封着線とガラス部材との熱膨張係数を一致させたとしても、電極構造体のガラス部材には歪が残存してしまうことがわかった。電極構造体のガラス部材に歪が残存したままの状態で、電極構造体をガラスバルブに封着させると、その封着部において歪が残存し、封止等の熱衝撃を伴う工程において、封着部分が破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明に係る電極構造体は、電極構造体のガラス部材の歪を低減することで、電極構造体を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体の封着部が破損するのを防止することを目的とする。
【0006】
また、本発明に係る低圧放電ランプは、電極構造体の封着部が破損するのを防止することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、内部に備える低圧放電ランプが衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電極構造体は、電極と、一端部が前記電極に接続された封着線と、前記封着線の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材とを有する電極構造体であって、前記封着線の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電極構造体は、さらに、9×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7の関係が成り立つことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電極構造体は、前記封着線における少なくとも前記ガラス部材に覆われている部分の表面には、酸化膜が形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る電極構造体は、前記酸化膜には、FeOまたはFe3O4が含まれていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電極構造体は、前記封着線は、鉄とニッケルとの合金からなることが好ましい。
【0013】
本発明に係る低圧放電ランプは、ガラスバルブと、前記ガラスバルブの少なくとも一方の端部に設けられた前記電極構造体とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る照明装置は、前記低圧放電ランプを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る画像表示装置は、前記照明装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電極構造体は、電極構造体のガラス部材の歪を低減することで、電極構造体を用いてガラスバルブを封止した場合に、電極構造体の封着部が破損するのを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る低圧放電ランプは、電極構造体の封着部が破損するのを防止することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る照明装置および画像表示装置は、内部に備える低圧放電ランプが衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸を含む断面図
【図2】ガラス部材の熱膨張係数と封着線の熱膨張係数との差によるガラス部材の歪の変化を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【図5】(a)本発明の第4の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸を含む断面図、(b)同じく電極構造体の変形例の長手方向の中心軸を含む断面図
【図6】(a)本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図、(b)同じく低圧放電ランプの変形例の管軸を含む断面図
【図7】本発明の第6の実施形態に係る照明装置の分解斜視図
【図8】本発明の第7の実施形態に係る照明装置の一部切欠斜視図
【図9】(a)本発明の第8の実施形態に係る照明装置の正面図、(b)図9(a)のA−A´線で切った断面図
【図10】本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置の斜視図
【図11】(a)本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例の要部拡大正面図、(b)同じく低圧放電ランプの変形例の管軸を含む要部拡大断面図
【図12】従来の低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸X100を含む断面図を図1に示す。本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100(以下、「電極構造体100」という。)は、電極101と、一端部が電極101に接続された封着線102と、封着線102の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材103とを有する。
【0021】
電極101は、例えば有底筒状であって、内径が2.4[mm]、外径が2.7[mm]、底部の肉厚が0.2[mm]、全長が10[mm]であって、ニッケル(Ni)製である。電極101の材料は、ニッケルに限らず、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)のいずれか一種またはいずれか一種以上の合金を用いることができる。電極101は、その外側底面の略中央部において封着線102の一端面と接続されている。なお、電極101と封着線102とは、直接接続されていてもよいし、例えばニッケル箔やコバール箔からなるろう材等を介して接続されていてもよい。また、電極101と封着線102との接続方法としては、レーザー溶接や抵抗溶接等を用いることができる。
【0022】
封着線102は、例えば、電極101の外側底面と一端面が接続され、側面の一部においてガラス部材103に覆われている。封着線102は、例えば線径が0.8[mm]であって、鉄とニッケルとの合金製である。なお、封着線102において、ガラス部材103に覆われている部分の表面には、酸化膜(図示せず)が形成されていることが好ましい。この場合、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度を向上させることができる。さらに、酸化膜には、FeOおよびFe3O4のうちいずれか1種以上を含まれていることが好ましい。この場合、封着線102に鉄が含まれている場合に、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度を向上させることができる。さらには、酸化膜には、Fe3O4が含まれていることがより好ましい。この場合、封着線102に鉄が含まれている場合に、封着線102とガラス部材103との間の引っ張り強度をさらに向上させることができる。
【0023】
封着線102は、例えば鉄とニッケルとの合金の場合、鉄とニッケルとの比率を調節することで、その熱膨張係数Kl[K-1]を調節することができる。例えば、封着線102が49[wt%]の鉄と51[wt%]のニッケルとの合金である場合、封着線102の熱膨張係数Kl[K-1]は、100×10-7[K-1]となる。封着線102に用いる鉄とニッケルとの合金の具体例を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
封着線102の熱膨張係数Klは、封着線102を溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。なお、封着線102の大きさが小さい場合等、封着線102を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、封着線102の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することで封着線102の熱膨張係数を求めることができる。
【0026】
なお、図1に示すように、封着線102の他端部には、外部リード線104が接続されていてもよい。この場合、この場合、電極構造体100を低圧放電ランプに用いた場合に、外部リード線104にかかる応力が封着線102と外部リード線104の接続部で吸収されるため、ガラス部材103へ伝わる応力を緩和することができる。外部リード線104は、例えば線径が0.6[mm]であって、ニッケル製である。外部リード線104は、ニッケルに限られず、ニッケルとマンガンとの合金またはジュメット線であってもよい。なお、外部リード線104の表面は、外部リード線104の酸化防止のために、半田で覆われていてもよい。
【0027】
ガラス部材103は、略球形状であって、その略中心軸に沿って封着線102を封着している。ガラス部材103の熱膨張係数は、例えば、材料となるガラスの組成を調整することにより調整することができる。ガラス部材103に用いるガラス組成の具体例を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、例えばガラスAの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、92.5×10-7[K-1]となり、ガラスBの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、93.6×10-7[K-1]となり、ガラスCの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、94.5×10-7[K-1]となり、ガラスDの場合、その熱膨張係数Kg[K-1]は、100×10-7[K-1]となる。
【0030】
ガラス部材103の熱膨張係数Kgは、ガラス部材103を溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。なお、ガラス部材103の大きさが小さい場合等、ガラス部材103を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、ガラス部材103の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することでガラス部材103の熱膨張係数を求めることができる。
【0031】
封着線102の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つ。この場合、電極構造体に封着させたときに、封着部分に残る歪を低減することができる。
【0032】
(実験)
発明者らは、電極構造体100が電極構造体に封着させたときに、封着部分に残る歪を低減することができるかどうかを確認するために、封着部の歪を測定する実験を行った。実験は、封着線とガラス部材の材料をそれぞれ調節し、Kl−Kgが変化したときのガラス部材の歪を残留応力測定装置(神港精機株式会社製ポーラリメーターSFII−C型)により測定する方法を用いた。
【0033】
実験結果を図2に示す。なお、図2に示す歪とは、封着線102を径方向にしめつける方向を正とする歪である。図2に示すように、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内である場合、ガラス部材の歪を0以上60[kgf/cm2]以下にすることができる。
【0034】
一方、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]より小さい場合、ガラス部材の歪が60[kgf/cm2]よりも大きくなり、ランプ作成時にガラス部材をガラスバルブに封着させる際、その封着部分に発生する歪を取り除きにくくなる。
【0035】
また、Kl−Kgが12×10-7[K-1]より大きい場合、ガラス部材の歪が負の方向に発生するため、ガラス部材の封着性が低下してしまう。
【0036】
すなわち、Kl−Kgが7.5×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内である場合、ガラス部材の歪を低減し、封着線とガラス部材との封着性を向上させることができる。
【0037】
さらに、Kl−Kgが9×10-7[K-1]以上12×10-7[K-1]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、ガラス部材の歪を0以上40[kgf/cm2]以下にすることができる。
【0038】
さらにまた、ガラス部材の製造時のばらつきを考慮すると、Kl−Kgは、11×10-7[K-1]以下であることが好ましい。この場合、ガラス部材の歪が負の方向に発生することを着実に防止することができる。
【0039】
上記のとおり、本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100の構成によれば、電極構造体100のガラス部材103の歪を低減することで、電極構造体100を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X200を含む断面図を図3に示す。本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200(以下、「ランプ200」)は、冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ201と、ガラスバルブ201の少なくとも一方の端部に設けられた電極構造体100とを有する。
【0041】
ガラスバルブ201は、直管状であり、その管軸に対して略垂直に切った断面が略円環形状である。このガラスバルブ201は、例えば外径が4[mm]、内径が3[mm]、全長が1000[mm]であって、その材料は例えば鉛フリーガラスやソーダガラス等の軟質ガラスである。以下に示すランプ200の寸法は、外径が4[mm]、内径が3[mm]のガラスバルブ201の寸法に対応する値である。ガラスバルブ201の内部には、水銀と希ガスが封入されている。水銀は、例えば3[mg]の水銀が封入されている。希ガスは、例えばネオンとアルゴンがAr:10[mol%]、Ne:90[mol%]のモル比の混合ガスが40[Torr]の圧力で封入されている。
【0042】
また、ガラスバルブ201の内面には蛍光体層202が形成されている。蛍光体層202に用いる蛍光体粒子は、例えば、赤色蛍光体粒子(Y2O3:Eu3+)、緑色蛍光体粒子(LaPO4:Ce3+,Tb3+)および青色蛍光体粒子(BaMg2Al16O27:Eu2+)からなる蛍光体で形成されている。
【0043】
また、ガラスバルブ201の内面と蛍光体層202との間には例えば酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物の保護膜(図示せず)を設けてもよい。これにより、ガラスバルブのナトリウム成分と水銀との反応を抑制することで、輝度維持率を向上させることができる。
【0044】
電極構造体100は、本発明の第1の実施形態に係る電極構造体100と実質的に同じものであり、ガラスバルブ201の両端部に設けられている。
【0045】
ガラスバルブ201に封着された状態での電極構造体100のガラス部材103の熱膨張係数Kg[K-1]は、ガラス部材103の管軸方向中央部側(図3中鎖線矢印より管軸方向端部側)において、ガラスバルブを切断し、ガラス部材103をガラスバルブ201ごと溶融して試料を作製し、熱機械分析装置により30[℃]〜300[℃]の試料の伸び量を測定することで求めることができる。この場合、ガラスバルブ201の一部がガラス部材に混じってしまうこととなるが、その量がガラス部材103の量と比較して少ないため、影響は小さいものと考えられる。
【0046】
なお、ガラス部材103の大きさが小さい場合等、ガラス部材103を溶融して熱機械分析装置により測定することが難しい場合には、ガラス部材103の組成を分析し、組成が実質的に同一な試料を作製したうえで、熱機械分析装置により測定することでガラス部材103の熱膨張係数Kgを求めることができる。
【0047】
上記のとおり、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200の構成によれば、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0048】
なお、ガラスバルブ201の熱膨張係数Kbは、90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、電極構造体100との封着性を向上することができる。
【0049】
さらに、電極101の内面には、セシウム化合物が付着していてもよい。この場合、ランプ200のランプ電圧を低下させることができるとともに、暗黒始動特性を向上させることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X300を含む断面図を図4に示す。本発明の第3の実施形態に係る放電管(以下、「ランプ300」という)は、内部外部電極蛍光ランプである。
【0051】
ランプ300は、その一端部の外表面に外部電極301を有し、それに伴う構成を除いては本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200と実質的に同じ構成を有している。よって、外部電極301とそれに伴う構成については詳細に説明し、それ以外の点については省略する。
【0052】
外部電極301は、例えば、半田からなり、ガラスバルブ201の一端部の外表面を覆うように形成されている。
【0053】
また、外部電極301は、銀ペーストをガラスバルブ201の電極形成部分の全周に塗布することによって形成してもよいし、金属製のキャップをガラスバルブ201の一端部に被せてもよい。さらに、アルミニウムの金属箔を、シリコーン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤(図示せず)によってガラスバルブ201の一端部全体の外周面を覆うように貼着したものであってもよい。なお、導電性粘着剤において、シリコーン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いてもよい。
【0054】
また、ガラスバルブ201の内面であって、外部電極301が形成された領域に例えば酸化イットリウム(Y2O3)の保護膜を設けてもよい。保護膜(図示せず)を設けることにより、ガラスバルブ201のその部分に水銀イオンが衝撃することによって起こるガラス削れやピンホールを防止することができる。
【0055】
なお、保護膜は、酸化イットリウムに代えて、例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、チタニア(TiO2)等の金属酸化物を用いてもよい。特に、保護膜が酸化イットリウムやシリカで形成されている場合には、保護膜に水銀が付着し難く、水銀消費が少ない。
【0056】
なお、ガラスバルブ201の他端部は、ガラス部材103を用いずに、ガラスバルブ201の一端部を加熱して溶融させることにより封着されていてもよい。
【0057】
上記のとおり、本発明の第3の実施形態に係る低圧放電ランプ300に係る構成によれば、電極構造体100の封着部が破損するのを防止することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る電極構造体の長手方向の中心軸X400を含む断面図を図5(a)に示す。本発明の第4の実施形態に係る電極構造体(以下、「電極構造体400」という)は、電極401と、一端部が電極401に接続された封着線402と、封着線402の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材403とを有する。
【0059】
電極401は、例えばタングステン製のフィラメントコイルである。電極401には、その巻線部にエミッタ(図示せず)が付着している。エミッタには、例えば(Ba,Sr,Ca)O等を用いることができる。なお、電極401は、タングステン製のフィラメントコイルに限らず、レニウムタングステン製のフィラメントコイルであってもよい。この場合、電極401がランプの点灯等により加熱されたときの強度を向上させることができる。
【0060】
電極401は、その両端部を一対の封着線402に担持されている。封着線402は、例えば、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金製である。具体的には、50[wt%]以上52[wt%]以下の範囲内のニッケルと、残部の鉄との合金製であることが好ましい。
【0061】
一対の封着線402は、少なくとも一部がガラス部材403により覆われている。ガラス部材403は、略玉子形状であって、封着線402の線軸に対して垂直に切った断面が略楕円形状となり、一対の封着線402の中点がガラス部材403のほぼ中点を通るように封着線402を封着している点を除いては、ガラス部材103と実質的に同じ構成のものである。
【0062】
なお、ガラス部材403は1[個]に限らず、封着線402の長手方向に複数個設けられていてもよい。ガラス部材403が封着線402の長手方向に2[個]設けられている場合、一方のガラス部材をランプの製造工程における仮封止に使用することができ、ランプを製造しやすくすることができる。
【0063】
上記のとおり、本発明の第4の実施形態に係る電極構造体400の構成によれば、電極構造体400のガラス部材403の歪を低減することで、電極構造体400を用いて低圧放電ランプを封止した場合に、電極構造体400の封着部が破損するのを防止することができる。
【0064】
なお、図5(b)に示す電極構造体(以下、「電極構造体404」という)であってもよい。電極構造体404は、電極405が電極構造体404の長手方向の中心軸X404を旋回軸とした二重螺旋構造をしている。この場合、電極構造体400に比べてランプを細径化しやすくすることができる。封着線406は、直線形状であって、形状を除いては封着線402と実質的に同じ構成を有する。
【0065】
なお、図5(b)に示すように、電極405と封着線406とは、接続部材407を介して接続されていることが好ましい。この場合、電極405と封着線406との接続をより確実に行うことができる。接続部材407は、例えばニッケル製である。
【0066】
さらに、電極405の周囲をスリーブ408で覆うことが好ましい。この場合、電極405からエミッタが飛散するのを抑制することができる。スリーブ408は、例えばニッケル製であって、一方の接続部材に溶接により接続されている。なお、スリーブ408の材料は、ニッケルに限らず、例えばモリブデン、タンタル、ニオブ、タングステン等を用いることができる。
【0067】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの長手方向の中心軸X500を含む断面図を図6(a)に示す。本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ(以下、「ランプ500」という)は、熱陰極蛍光ランプであって、本発明の第4の実施形態に係る電極構造体400を備えている点を除いては、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200と実質的に同じ構成を有する。
【0068】
上記のとおり、本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500の構成によれば、電極構造体400の封着部が破損するのを防止することができる。
【0069】
なお、図6(b)に示すように、電極構造体404を備えた低圧放電ランプ(以下、「ランプ501」)であってもよい。この場合、電極構造体404の封着部が破損するのを防止することができることに加えて、ガラスバルブ201を細径化することができる。
【0070】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る照明装置の分解斜視図を図7に示す。本発明の第6の実施形態に係る照明装置(以下、「照明装置600」という)は直下方式のバックライトユニットであり、一つの面が開口した直方体状の筐体601と、この筐体601の内部に収納された複数のランプ200と、ランプ200を点灯回路(図示せず)に電気的に接続するための一対のソケット602と、筐体601の開口部を覆う光学シート類603とを備えている。なお、ランプ200は、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200である。なお、ランプ200に限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。
【0071】
筐体601は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製であって、その内面に銀などの金属が蒸着されて反射面604が形成されている。なお、筐体601の材料としては、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウムや冷間圧延材(例えばSPCC)等の金属材料により構成してもよい。また、内面の反射面604として金属蒸着膜以外、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に炭酸カルシウム、二酸化チタン等を添加することにより反射率を高めた反射シートを筐体601に貼付したものを用いてもよい。
【0072】
筐体601の内部には、ソケット602、絶縁体605およびカバー606が配置されている。具体的に、ソケット602は、ランプ200の配置に対応して筐体601の短手方向(縦方向)に各々所定間隔を空けて設けられている。ソケット602は、例えばステンレスやりん青銅からなる板材を加工したものであって、外部リード線104が嵌め込まれる嵌込部602aを有している。そして、外部リード線104を嵌込部602aを押し拡げるように弾性変形させて嵌め込む。その結果、嵌込部602aに嵌め込まれた外部リード線104は、嵌込部602aの復元力によって押圧され、外れにくくなる。これにより、外部リード線104を嵌込部602aへ容易に嵌め込むことができつつ、外れにくくすることができる。
【0073】
ソケット602は、互いに隣り合うソケット602同士で短絡しないように絶縁体605で覆われている。絶縁体605は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で構成されている。なお、絶縁体605は、上記の構成に限定されない。ソケット602はランプ200の動作中に比較的高温となる電極の近傍にあることから絶縁体605は耐熱性のある材料で構成することが好ましい。耐熱性のある絶縁体605の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂やシリコンゴム等を適用することができる。
【0074】
筐体601の内部には、必要に応じた場所にランプホルダ607を設けてもよい。筐体601内側でのランプ200の位置を固定するランプホルダ607は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂であり、ランプ200の外面形状に沿うような形状を有している。「必要に応じた場所」とは、ランプ200の長手方向の中央部付近のように、ランプ200が例えば全長600[mm]を越えるような長尺のものである場合に、ランプ200のたわみを解消するために必要な場所である。
【0075】
カバー606は、ソケット602と筐体601の内側の空間とを仕切るものであり、例えばポリカーボネート(PC)樹脂で構成し、ソケット602の周辺を保温するとともに、少なくとも筐体601側の表面を高反射性とすることにより、ランプ200の端部の輝度低下を軽減することができる。
【0076】
筐体601の開口部は、透光性の光学シート類603で覆われており、内部にちりや埃などの異物が入り込まないように密閉されている。光学シート類603は、拡散板608、拡散シート609およびレンズシート610を積層してなる。
【0077】
拡散板608は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂製の板状体であって、筐体601の開口部を塞ぐように配置されている。拡散シート609は、例えばポリエステル樹脂製である。レンズシート610は、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂の貼り合せである。これらの光学シート類603は、それぞれ拡散板608に順次重ね合わせるようにして配置されている。
【0078】
上記のとおり、本発明の第6の実施形態に係る照明装置600の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0079】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る照明装置の一部切欠斜視図を図8に示す。本発明の第7の実施形態に係る照明装置700(以下、「照明装置700」という)は、エッジライト方式のバックライトユニットで、反射板701、ランプ200、ソケット(図示せず)、導光板702、拡散シート703およびプリズムシート704から構成されている。
【0080】
反射板701は、液晶パネル側(矢印Q)を除く導光板702の周囲を囲むように配置されており、底面を覆う底面部701aと、ランプ200の配置されている側を除く側面を覆う側面部701bと、ランプ200の周囲を覆う曲面状のランプ側面部701cとで構成されており、ランプ200から照射される光を導光板702から液晶パネル(図示せず)側(矢印Q)に反射させる。また、反射板701は、例えばフィルム状のPETに銀を蒸着したものやアルミ等の金属箔を積層したもの等からなる。
【0081】
ランプ200は、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200である。なお、ランプ200に限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。
【0082】
ソケットは、本発明の第6の実施形態に係る照明装置600に用いられるソケット602と実質的に同じ構成を有している。なお、図8において、図示の便宜上により、ランプ200の端部については省略している。
【0083】
導光板702は、反射板701により反射された光を液晶パネル側に導くためのものであって、例えば透光性プラスチックからなり、照明装置700の底面に設けられた反射板701aの上に積層されている。なお、導光板702の材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂やシクロオレフィン系樹脂(COP)を適用することができる。
【0084】
拡散シート703は、視野拡大のためのものであって、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエステル樹脂製の拡散透過機能を有するフィルムからなり、導光板702の上に積層されている。
【0085】
プリズムシート704は、輝度を向上させるためのものであって、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂とを貼り合せたシートからなり、拡散シート703の上に積層されている。なお、プリズムシート704の上にさらに拡散板(図示せず)が積層されていてもよい。
【0086】
なお、本実施形態の場合には、ランプ200の周方向における一部分(照明装置700に挿入した場合における導光板702側)を除き、ガラスバルブ201の外面に反射シート(図示せず)を設けたアパーチャ型のランプであってもよい。
【0087】
上記のとおり、本発明の第7の実施形態に係る照明装置700の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0088】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る照明装置の正面図を図9(a)に、図9(a)のA−A´線で切った断面図を図9(b)にそれぞれ示す。本発明の第8の実施形態に係る照明装置800(以下、「照明装置800」という)は、一般照明用の環状蛍光ランプを使用した照明器具である。
【0089】
照明装置800は、本体部801、盤状部802、ランプホルダ803、ソケット804およびランプ805から構成されている。
【0090】
本体部801は、その内部に点灯回路(図示せず)等を収納し、例えばその上部から電気接続部(図示せず)が導出しており、例えばその側面部からランプ805の口金806と電気的に接続するためのソケット804が導出している。
【0091】
盤状部802は、本体部801、ランプホルダ803を支持する部材であり、例えば円盤状の形状を有している。
【0092】
ランプホルダ803は、盤状部802の下面に取付けられており、その下端に設けられた例えばC字状の挟持片によりランプ805を保持し、ランプ805の落下を防止することができる。
【0093】
ランプ805は、環状の熱陰極蛍光ランプであり、形状が環状であることと口金806がランプ805の中間部に位置していることを除いては第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500、501と実質的に同じ構成を有している。
【0094】
上記のとおり、本発明の第8の実施形態に係る照明装置800の構成によれば、内部に備えるランプ805の電極構造体400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0095】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置の概要を図10に示す。図10に示すように画像表示装置900は、例えば32[inch]液晶テレビ(液晶表示装置)であり、液晶パネル等を含む液晶画面ユニット901と本発明の第6の実施形態に係る照明装置600と点灯回路902とを備える。
【0096】
液晶画面ユニット901は、公知のものであって、液晶パネル(カラーフィルター基板、液晶、TFT基板等)(図示せず)、駆動モジュール等(図示せず)を備え、外部からの画像信号に基づいてカラー画像を形成する。
【0097】
点灯回路902は、照明装置600内部のランプ200を点灯させる。そして、ランプ200は、点灯周波数40[kHz]〜100[kHz]、ランプ電流3.0[mA]〜25[mA]で動作される。
【0098】
なお、図10では、画像表示装置900の照明装置として本発明の第6の実施形態に係る照明装置600に第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200を挿入した場合について説明したが、これに限らず、ランプ300、ランプ500またはランプ501も用いることができる。また、照明装置は照明装置600に限らず、照明装置700も用いることができる。
【0099】
上記のとおり、本発明の第9の実施形態に係る画像表示装置900の構成によれば、内部に備える低圧放電ランプ200、300、500、501の電極構造体100、400、404の封着部が、衝撃等に伴う応力により破損するのを防止することができる。
【0100】
(変形例)
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を用いることができる。
1.電子放射性物質について
電極101の表面には、電子放射性物質層(図示せず)が形成されていてもよい。この場合、電子放射性物質層が設けられていないランプに比べてランプ電圧を下げることができる。具体的には、電子放射性物質層は、例えば電極101の内面に形成されている。電子放射性物質層は、例えば希土類元素を含む。冷陰極蛍光ランプにおいて、ランプ電圧を下げるのに効果的なためである。さらに、希土類元素は、ランタン(La)およびイットリウム(Y)のうちいずれか1種以上であることがより好ましい。
【0101】
電子放射性物質層は、さらに珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、硼素(B)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、リン(P)および錫(Sn)のうちいずれか1種以上を含むことが好ましい。この場合、ランプ電圧の低減効果をより持続させることができる。
【0102】
さらに、電子放射性物質層に、セシウム(Cs)化合物が含まれていてもよい。この場合、ランプの暗黒始動特性をさらに向上させることができる。また、電子放射性物質層とは別に、電極101の内面や外面にセシウム化合物を付着させてもよい。なお、セシウム化合物は、例えば、硫酸セシウム、アルミン酸セシウム、ニオブ酸セシウム、タングステン酸セシウム、モリブデン酸セシウムおよび塩化セシウムのうちいずれか1種以上を用いることが好ましい。また、セシウム化合物は、電極101の外側側面に付着されていることがより好ましい。この場合、冷陰極蛍光ランプの製造工程において、セシウム化合物を適度に活性化させやすくすることができる。さらには、電極101の外側側面におけるランプ中央部側の先端部に付着されていることがさらにより好ましい。
2.口金について
本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例の要部拡大正面図を図11(a)に、その管軸を含む要部拡大断面図を図11(b)にそれぞれ示す。本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの変形例(以下、「ランプ203」という。)は、口金204を備える点を除いては、ランプ200と実質的に同じ構成を有する。よって、以下、口金204について詳細に説明し、その他の点については説明を省略する。
【0103】
口金204は、外部リード線104と電気的かつ機械的に接続されている。具体的には、口金204は、ガラスバルブ201の端部を覆う胴体部204aと、胴体部204aの一端より延出し、外部リード線104と電気的かつ機械的に接続される延出部204bとで構成されている。このようなランプ203は、照明装置に組み込む際、口金204をヒューズソケット(図示せず)等に挿入するだけで電気的かつ機械的に接続できる。
【0104】
胴体部204aの側面には、ガラスバルブ201を保持するための保持部204cが設けられている。保持部204cは、例えば、胴体部204aの側面の一部を切り抜き、ガラスバルブ201側に折り曲げて形成されている。また、保持部204cの先端部204dは、ガラスバルブ201を傷付けないようにガラスバルブ201とは反対側に折り曲げられている。なお、保持部204cは、胴体部204aの周方向に略等間隔に3[箇所]以上設けられていることが好ましい。この場合、ガラスバルブ201をより安定して保持できるためである。さらに、保持部204cとガラスバルブ201との接触部は、電極101の対向部にあることが好ましい。この場合、電極101付近で発生する熱の放熱を、保持部204cを介して促進させることができる。
【0105】
なお、口金204を通じて電極101で発生する熱を放熱させやすくすることができるため、電極の表面に電子放射性物質層が設けられている場合においては、電極101周辺の温度の過度の上昇を抑制し、電極101周辺において水銀が少なくなることを抑制することで、電子放射性物質層のスパッタリングを抑制し、口金204が設けられていないランプに比べてランプ電圧の低減効果を持続させることができる。
3.ガラス部材およびガラスバルブについて
(1)紫外線吸収について
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201の材料であるガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0106】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0107】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0108】
また、酸化鉄(Fe2O3)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
(2)赤外線透過係数について
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201の材料であるガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、長尺の冷陰極放電ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
【0109】
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
【0110】
[数1]X=(log(a/b))/t
a:3840[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
(3)軟質ガラスについて
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いる熱膨張係数が90×10-7[K-1]以上100×10-7[K-1]以下の範囲内の軟質ガラスとしては、例えば以下のようなものを用いることができる。
【0111】
ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、Li2Oが0[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜11[wt%]、Na2Oが3[wt%]〜12[wt%]、CaOが0[wt%]〜9[wt%]、MgOが0[wt%]〜9[wt%]、SrOが0[wt%]〜12[wt%]、BaOが0[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、鉛成分を含有せず、環境に優しい冷陰極放電ランプを提供することができる。さらには、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが0[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜11[wt%]、Na2Oが3[wt%]〜12[wt%]、CaOが0[wt%]〜9[wt%]、MgOが0[wt%]〜9[wt%]、SrOが0[wt%]〜12[wt%]、BaOが0[wt%]〜12[wt%]の組成を有していることがより好ましい。
【0112】
また、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が60[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、Li2Oが0.5[wt%]〜5[wt%]、K2Oが3[wt%]〜7[wt%]、Na2Oが5[wt%]〜12[wt%]、CaOが1[wt%]〜7[wt%]、MgOが1[wt%]〜7[wt%]、SrOが0[wt%]〜5[wt%]、BaOが7[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、ランプへの加工を行いやすく、かつ鉛成分を含有せず、環境に優しい冷陰極蛍光ランプを提供することができる。
【0113】
さらに、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が65[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜5[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが0.5[wt%]〜5[wt%]、 K2Oが3[wt%]〜7[wt%]、Na2Oが5[wt%]〜12[wt%]、 CaOが2[wt%]〜7[wt%]、MgOが2.1[wt%]〜7[wt%]、SrOが0[wt%]〜0.9[wt%]、BaOが7.1[wt%]〜12[wt%]の組成を有していてもよい。この場合、鉛成分を含有せず、照明用途に適した電気絶縁性を有し、かつ、失透を起こりにくくすることができる。さらには、ガラス部材103、403およびガラスバルブ201に用いるガラスは、酸化物換算で、SiO2が65[wt%]〜75[wt]%、Al2O3が1[wt%]〜3[wt%]、B2O3が0[wt%]〜3[wt%]、Li2Oが1[wt%]〜3[wt%]、K2Oが3[wt%]〜6[wt%]、Na2Oが7[wt%]〜10[wt%]、 CaOが3[wt%]〜6[wt%]、MgOが3[wt%]〜6[wt%]、SrOが0[wt%]〜0.9[wt%]、BaOが7.1〜10[wt%]の組成を有していることがより好ましい。
(4)ガラスバルブ201の形状について
ガラスバルブ201の形状は、直管形状のものに限られず、例えばL字形状、U字形状、コの字形状、渦巻き形状等であってもよい。また、その管軸に対して略垂直に切った断面は、略円形状のものに限られず、例えばトラック形状や角丸形状のような扁平形状や楕円形状等であってもよい。
4.蛍光体層の蛍光体について
(1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を利用すると良い。なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0114】
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl10O17]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であることが好ましい。
【0115】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0116】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl10O17]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0117】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0118】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
・マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313nmを吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラスバルブ外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層202に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0119】
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極放電ランプや外部電極放電ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0120】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0121】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.151、y=0.065
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0122】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.139、y=0.574
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.267、y=0.663
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0123】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.651、y=0.344
・YPV、色度座標:x=0.658、y=0.333
・MFG、色度座標:x=0.711、y=0.287
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0124】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.644、y=0.353)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,056)で構成されている。
【0125】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
【0126】
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層202を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んでできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0127】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95[%]となり、例1及び2に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0128】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである為、カラーフィルターとの組み合わせにより色再現範囲が上記値より前後する可能性がある。
5.封入ガスについて
希ガスにクリプトンが含まれていてもよい。この場合、放電管が冷陰極蛍光ランプである場合に赤外線放射を抑制することができる。さらには、希ガスにクリプトンが0.5[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内で含まれていることが好ましい。この場合、ランプ電圧を大きく変化させることなく、冷陰極蛍光ランプの赤外線放射を抑制することができる。例えばアルゴンが0[mol%]以上9.5[mol%]以下の範囲内、ネオンが90[mol%]以上95.5[mol%]以下の範囲内、クリプトンが0.5[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内である。さらには、希ガスにクリプトンが0.5[mol%]以上3[mol%]以下の範囲内で含まれていることがより好ましい。さらには、希ガスにクリプトンが1[mol%]以上3[mol%]以下の範囲内で含まれていることがさらにより好ましい。
6.ランプの種類について
上記の各実施形態においては、放電管として、冷陰極蛍光ランプ、内部外部電極蛍光ランプおよび熱陰極蛍光ランプを中心に説明したが、ガラスバルブの内面に蛍光体層の形成されていない紫外線ランプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、電極構造体、低圧放電ランプ、照明装置および画像表示装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
100、400、404 電極構造体
101、401、405 電極
102、402、406 封着線
103、403 ガラス部材
200、300、500、501 低圧放電ランプ
201 ガラスバルブ
600、700、800 照明装置
900 画像表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、一端部が前記電極に接続された封着線と、前記封着線の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材とを有する電極構造体であって、
前記封着線の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つことを特徴とする電極構造体。
【請求項2】
さらに、9×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7の関係が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記封着線における少なくとも前記ガラス部材に覆われている部分の表面には、酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記酸化膜には、FeOまたはFe3O4が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記封着線は、鉄とニッケルとの合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項6】
ガラスバルブと、前記ガラスバルブの少なくとも一方の端部に設けられた請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極構造体とを有することを特徴とする低圧放電ランプ。
【請求項7】
請求項6に記載の低圧放電ランプを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
電極と、一端部が前記電極に接続された封着線と、前記封着線の少なくとも一部を覆うように形成されたガラス部材とを有する電極構造体であって、
前記封着線の熱膨張係数をKl[K-1]とし、前記ガラス部材の熱膨張係数をKg[K-1]としたときに、7.5×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7かつ90×10-7≦Kg≦100×10-7の関係が成り立つことを特徴とする電極構造体。
【請求項2】
さらに、9×10-7≦Kl−Kg≦12×10-7の関係が成り立つことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記封着線における少なくとも前記ガラス部材に覆われている部分の表面には、酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記酸化膜には、FeOまたはFe3O4が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記封着線は、鉄とニッケルとの合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項6】
ガラスバルブと、前記ガラスバルブの少なくとも一方の端部に設けられた請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極構造体とを有することを特徴とする低圧放電ランプ。
【請求項7】
請求項6に記載の低圧放電ランプを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図12】
【公開番号】特開2010−287363(P2010−287363A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138891(P2009−138891)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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