説明

電極構造体の製造方法および太陽電池

【課題】スパッタリングを利用した場合でも、電極構造体に、微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することのできる電極構造体の製造方法、ならびに電極構造体に欠点のない微細な凹凸構造が正確に形成されてなる太陽電池を提供する。
【解決手段】表面に微細な凹凸構造を有するスタンパー1の表面上に、導電体層2を剥離可能に形成し、スタンパー1上の導電体層2と、硬化性材料4とを接触させ、その状態で硬化性材料4を硬化させて、微細な凹凸構造を有する凹凸基層5を形成するとともに、凹凸基層5と導電体層2とを接着し、スタンパー1と、凹凸基層5に接着された導電体層2とを分離し、もって凹凸基層5上に導電体層2を転写して形成し、このようにして、微細な凹凸構造を有する電極構造体10を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等のエネルギー変換素子などに用いることのできる電極構造体の製造方法、および太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池として、原料の低コスト化、柔軟性、形成の容易性、吸光係数の高さ等の観点から、光電変換活性層に有機化合物を用いた有機(薄膜)太陽電池が注目されている。有機太陽電池は、相分離を利用したバルクヘテロ構造体が第3世代の有機太陽電池として提案されている(特許文献1)。しかし、相分離を利用した素子は、無秩序のナノ構造体となっており、エキシトンの拡散距離に適した構造体ではない。
【0003】
上記問題を解決するために、有機半導体結晶を用いた秩序バルクヘテロ構造体(特許文献2)や、電極や半導体になり得るTiO、CdS、ZnO、IrO、ITO等の材料をナノ構造化表面にしたもの(特許文献3)、ワイヤーアレイ電極を利用した構造体(特許文献4)などが提案されている。しかしながら、いずれも製造方法が複雑で、安価に構造体を製造することが困難であった。
【0004】
一方、樹脂フィルム/凹凸を有するテクスチャ層/金属酸化物よりなる層の層構成を有する太陽電池用透明電極基板において、凹凸を有するテクスチャ層が光硬化性樹脂組成物を硬化してなる太陽電池用透明電極基板が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−286479号公報
【特許文献2】特開2004−281786号公報
【特許文献3】特開2006−148056号公報
【特許文献4】特開2007−142386号公報
【特許文献5】特開2008−177549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献5におけるテクスチャ層の凹凸をいわゆるナノピラー構造とした場合、先に光硬化性樹脂組成物を硬化させたナノピラーを形成し、その上に金属酸化物からなる電極を製膜するときに、蒸着によればナノピラー上への膜形成が可能であるが、スパッタリングにより製膜しようとすると、ターゲットに原子を衝突させるというスパッタリングの特性上、ナノピラーの形状が崩れてしまうという問題がある。しかし、透明導電膜として一般的に用いられているITO、IZO、ZnO、GZO、TiO、FTO等の金属酸化膜は、スパッタリングにより製膜されるのが通常である。ナノピラーの形状が崩れると、電極の面積、光電変換活性層の面積、ひいては各層の接合面積が小さくなり、エネルギー変換効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、スパッタリングを利用した場合でも、電極構造体に、微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することのできる電極構造体の製造方法、ならびに電極構造体に欠点のない微細な凹凸構造が正確に形成されてなる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、微細な凹凸構造を有する電極構造体を製造する方法であって、表面に微細な凹凸構造を有するスタンパーの前記表面上に、導電体層を剥離可能に形成し、前記スタンパー上の前記導電体層と、硬化性材料とを接触させ、その状態で前記硬化性材料を硬化させて、微細な凹凸構造を有する凹凸基層を形成するとともに、前記凹凸基層と前記導電体層とを接着し、前記スタンパーと、前記凹凸基層に接着された前記導電体層とを分離し、もって前記凹凸基層上に前記導電体層を転写して形成することを特徴とする電極構造体の製造方法を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)によれば、スパッタリングを利用した場合でも、当該スパッタリングは、一般的に堅牢な材質からなるスタンパーに対して行うこととなるため、硬化性材料に転写・形成された微細な凹凸構造(ナノピラー)が崩れたりすることなく、目的とする電極構造体に微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記スタンパー上の前記導電体層と、前記硬化性材料とを接触させるとき、前記硬化性材料はシート状になっており、前記スタンパーの前記導電体層側を、前記シート状の硬化性材料に圧着してもよい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明2)においては、前記シート状の硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率が、1×10〜1×10Paであることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記スタンパー上の前記導電体層と、前記硬化性材料との接触は、前記導電体層上に、前記硬化性材料の層を形成することにより行ってもよい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明4)においては、前記スタンパー上の前記導電体層に、液状の硬化性材料を塗布することにより、前記硬化性材料の層を形成することが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1〜5)においては、スパッタリングにより前記導電体層を前記スタンパーに形成することが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1〜6)においては、前記導電体層を前記スタンパーに形成する前に、前記スタンパーの前記表面に対して剥離処理を施すことが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1〜7)においては、前記凹凸基層上に転写した前記導電体層上に、さらに半導体からなる半導体層を形成することが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)においては、前記半導体が有機半導体であることが好ましい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明1〜9)において、前記硬化性材料は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する硬化型樹脂組成物であることが好ましい(発明10)。
【0019】
上記発明(発明1〜10)において、前記硬化性材料は、側鎖に重合性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する硬化型樹脂組成物であることが好ましい(発明11)。
【0020】
上記発明(発明1〜11)においては、前記微細な凹凸構造が、ナノピラー構造であることが好ましい(発明12)。
【0021】
上記発明(発明1〜12)においては、前記電極構造体が、エネルギー変換素子用の電極構造体であることが好ましい(発明13)。
【0022】
第2に本発明は、前記方法(発明1〜13)で得られた電極構造体を用いた太陽電池を提供する(発明14)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電極構造体の製造方法によれば、スパッタリングを利用した場合でも、電極構造体に微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することができる。また、本発明に係る太陽電池においては、当該電極構造体に欠点のない微細な凹凸構造が正確に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る電極構造体の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る電極構造体の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電極構造体の製造方法を示す図である。
【0026】
最初に、表面に微細な凹凸構造を有するスタンパー1を用意する。この微細な凹凸構造は、得られる電極構造体にナノピラー構造を形成できるような構造、すなわちナノピラー構造を反転させた構造であることが好ましい。ここで、ナノピラー構造とは、凹凸構造における凸部の形状が柱状となっており、高さ(凹凸基層における凸部の高さ)および凸部間ピッチ(隣り合う凸部と凸部との間の空隙の距離)がそれぞれ1000nm以下である柱状構造のことをいう。柱の形状は円柱状であってもよいし、角柱状であってもよい。凸部の直径(円柱状の場合)は、10〜500nmであることが好ましく、特に50〜300nmであることが好ましい。また、凸部間ピッチは、10〜1000nmであることが好ましく、特に50〜600nmであることが好ましい。
【0027】
微細な凹凸構造が上記のような数値範囲にあることにより、各層の接合面積が効果的に大きくなり、エネルギー変換効率を向上させることができる。
【0028】
また、逆に、スタンパー1の微細な凹凸構造が、上記のようなナノピラー構造であってもよい。この場合、得られる電極構造体にナノピラー構造を反転させた構造を形成することができる。
【0029】
スタンパー1の材質としては、好ましくは、ニッケル、タングステン、クロム、ステンレス鋼、シリコン等の金属や、石英等が用いられる。これらの堅牢な材質からなるスタンパー1においては、その表面の微細な凹凸構造に対してスパッタリングが施されたとしても、当該微細な凹凸構造が崩れることはない。
【0030】
上記のような表面に微細な凹凸構造を有するスタンパー1を用意したら、図1(a)に示すように、スタンパー1の表面上に、第1の導電体層2を剥離可能に形成する。第1の導電体層2を剥離可能に形成するには、第1の導電体層2をスタンパー1に形成する前に、スタンパー1の表面に対して剥離処理を施すことが好ましい。
【0031】
剥離処理は、シリコーン系剥離剤や、フッ素系剥離剤等の剥離剤を使用して行うことが好ましい。例えば、スタンパー1を剥離剤に浸漬した後、所望によりリンス剤に浸漬して、乾燥させることで、剥離処理を行うことができる。
【0032】
第1の導電体層2の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD(物理気相蒸着)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相蒸着)などのドライプロセス、またはディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレード等の各種コーティングや電気化学的ディポジションなどのウェットプロセスが挙げられ、第1の導電体層2の材料に応じて適宜選択される。
【0033】
ただし、本実施形態においては、特にスパッタリングにより第1の導電体層2を形成する場合に有効な効果が得られる。前述したように、スパッタリングを施す対象が、樹脂ではなく堅牢な材質からなるスタンパー1であると、微細な凹凸構造(ナノピラー構造)が崩れることを防止することができる。
【0034】
第1の導電体層2が正極電極(頂部電極)の場合、第1の導電体層2の材料としては、p型半導体のHOMOレベルに対してエネルギー障壁が小さく、仕事関数が比較的大きいものが好ましい。また、目的とする電極構造体10が、基材3側から光を透過させる場合には、第1の導電体層2の材料は透明である必要がある。この場合、第1の導電体層2の材料としては、透明な導電性金属酸化物を使用することが好ましい。
【0035】
好ましい透明導電性金属酸化物としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化チタン(TiO)等が挙げられる。これらの透明導電性金属酸化物は、スパッタリングにより好ましく製膜することができる。
【0036】
正極電極としての第1の導電体層2の厚さは、10〜300nmであることが好ましく、特に30〜150nmであることが好ましい。
【0037】
一方、第1の導電体層2が負極電極の場合、第1の導電体層2の材料としては、n型半導体のLUMOレベルに対してエネルギー障壁が小さく、仕事関数が比較的小さいものが好ましい。
【0038】
上記のような材料としては、例えば、白金、金、アルミニウム、イリジウム、クロム、酸化亜鉛等の金属、金属酸化物もしくは合金の他、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブと上記金属、金属酸化物もしくは合金との複合体が挙げられる。
【0039】
負極電極としての第1の導電体層2の厚さは、20nm〜1μmであることが好ましく、特に30〜200nmであることが好ましい。
【0040】
一方、図1(a)に示すように、基材3上に、硬化性材料4を設ける。
基材3の材料としては、一般的には、ガラス(板)またはプラスチック(板またはフィルム)が使用される。目的とする電極構造体10が、基材3側から光を透過させる場合には、基材3の材料は透明である必要がある。また、電極構造体10をフレキシブルなものにする場合には、基材3の材料としては、プラスチックフィルムを使用する。
【0041】
プラスチックの種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テトラアセチルセルロース、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエステルスルホン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン等の機械的強度、耐久性等に優れたものが好ましい。
【0042】
基材3の厚さは、一般的には3μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜1mmであり、特に好ましくは10μm〜300μmである。
【0043】
基材3上に設ける硬化性材料4は、シート状であってもよいし、液状であってもよいが、液状の場合には、硬化性材料4に気泡が残ることがあり、その気泡に起因して微細な凹凸構造に欠点が生じることがあるため、シート状であることが好ましい。ただし、硬化性材料4が液状であっても、時間をかけて気泡を除去することは可能である。
【0044】
基材3上に硬化性材料4を設けるには、例えば、硬化性材料4の塗布剤(所望により溶剤を含有)を調製し、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機によって基材3上に塗布する。この段階で、硬化性材料4は液状となっている。硬化性材料4をシート状にするには、その液状の硬化性材料4を乾燥させればよい。硬化性材料4の乾燥は、例えば、60〜130℃で1〜10分間加熱することで行うことができる。
【0045】
硬化性材料4の厚さは、形成すべき凹凸の深さ/高さや要求される強度に応じて適宜決定されるが、通常は1〜100μmであり、好ましくは10〜50μmである。
【0046】
硬化性材料4がシート状である場合には、その硬化性材料4の硬化前の貯蔵弾性率は、1×10〜1×10Paであることが好ましい。ここで、「硬化前の貯蔵弾性率」の測定温度は、スタンパー1と硬化性材料4とを重ね合わせる(圧着する)作業環境と同じ温度であるものとする。すなわち、スタンパー1と硬化性材料4とを室温で重ね合わせる場合、貯蔵弾性率は、室温下で測定したものであり、スタンパー1と硬化性材料4とを加熱下で重ね合わせる場合、貯蔵弾性率は、加熱温度と同じ温度で測定したものである。
【0047】
硬化性材料4の硬化前の貯蔵弾性率は、25℃において1×10〜1×10Paの範囲にあることが好ましい。25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paの範囲にあると、加熱操作を行わずにスタンパー1の凹凸を容易に転写することができる。転写の容易性の点から、硬化前の貯蔵弾性率は、25℃において1×10〜1×10Paの範囲にあることがより好ましい。
【0048】
硬化性材料4の硬化前の貯蔵弾性率の測定は、以下のようにして行う。
<硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率の測定方法>
厚さ20μmの硬化性材料層を形成し、これを積層して厚さ3mm、直径8mmの円板状の試験片とする。そして、ねじり剪断法により、下記の装置および条件で25℃における貯蔵弾性率を測定する。
測定装置:レオメトリック社製,動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
周波数 :1Hz
昇温速度:3℃/分
【0049】
硬化性材料4の硬化前の貯蔵弾性率が上記のような範囲にあると、硬化性材料4は液状ではなく、固体または半固体となって形状保持性があるため、厚さを制御する特別な操作を要することなく、容易に均一な厚さのシート状の層が得られる。また、かかる硬化性材料4には気泡が発生し難いため、気泡を除去する手間がなく、硬化性材料4には気泡に起因する欠点のない凹凸構造が形成される。さらに、硬化性材料4の硬化前の貯蔵弾性率が上記のような範囲にあると、スタンパー1を硬化性材料4に圧着するだけで、スタンパー1の凹凸構造が硬化性材料4に精密に転写されるため、微細な凹凸構造を有する電極構造体10を簡便に製造することができる。
【0050】
一方、硬化性材料4の硬化後の貯蔵弾性率は、1×10Pa以上であるのが好ましく、特に1×10〜1×1010Paであるのが好ましい。ここで、「硬化後の貯蔵弾性率」の測定温度は、電極構造体10の保管環境と同じ温度、すなわち室温(25℃)であるものとする。
【0051】
ここで、硬化性材料4の硬化後の貯蔵弾性率の測定は、以下のようにして行う。
<硬化性材料の硬化後の貯蔵弾性率の測定方法>
厚さ20μmの硬化性材料層を形成し、これを積層して厚さ200μmとし、さらに窒素雰囲気下で紫外線(光量300mJ/cm)を照射して硬化させ、これを短冊状の試験片とする。そして、下記の装置および条件で室温(25℃)における貯蔵弾性率を測定する。
測定装置:TAインスツルメント社製,動的弾性率測定装置「DMAQ800」
周波数 :11Hz
昇温速度:3℃/分
【0052】
硬化性材料4の硬化後の貯蔵弾性率が上記のような範囲にあると、硬化性材料4に転写された凹凸構造が硬化によって確実に固定され、スタンパー1と、硬化性材料4を硬化してなる凹凸基層5とを分離する際に、凹凸構造が破壊されたり、変形したりするおそれがなくなる。
【0053】
硬化性材料4は、硬化型樹脂組成物、特にエネルギー線硬化性の硬化型樹脂組成物からなることが好ましい。この硬化型樹脂組成物は、側鎖に重合性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するもの、あるいは、エネルギー線硬化性を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有するものであることが好ましい。かかる材料は透明度が高いため、特に得られる電極構造体10を太陽電池に使用する場合に好適である。
【0054】
先に、硬化型樹脂組成物が、側鎖に重合性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する場合について説明する。
【0055】
側鎖にエネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、側鎖にエネルギー線硬化性基を有することで、得られる凹凸基層5が耐熱性に優れ、熱変形し難いものとなる。したがって、熱によって微細な凹凸構造が変形し難く、各層相互の接触面積が減少することを防止することができる。
【0056】
側鎖にエネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化型共重合体(A)であることが好ましい。
【0057】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマーは、重合性の炭素−炭素二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
【0059】
このような官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0061】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%、特に好ましくは70〜90質量%の割合で含有してなる。
【0062】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0063】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型共重合体(A)が得られる。
【0064】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアナート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアナート基、アジリジニル基、エポキシ基またはオキサゾリン基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。このような置換基は、不飽和基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
【0065】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アリルイソシアナート;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0066】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常20〜100当量、好ましくは40〜95当量、特に好ましくは60〜90当量の割合で用いられる。
【0067】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応は、通常は常圧、不活性ガス雰囲気下、室温〜70℃にて、酢酸エチル等の有機溶媒中で12〜48時間程度行われる。反応に際しては、触媒や重合禁止剤等を適宜使用することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基であるアクリル系共重合体と、置換基がイソシアナート基である不飽和基含有化合物との反応の場合は、ジブチルスズラウレート等の有機スズ系の触媒を用いるのが好ましい。また、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中の側鎖に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型共重合体(A)が得られる。この反応における官能基と置換基との反応率は、通常70%以上、好ましくは80%以上であり、未反応の官能基がエネルギー線硬化型共重合体(A)中に残留していてもよい。
【0068】
このようにして得られるエネルギー線硬化型共重合体(A)の質量平均分子量は、100,000以上であることが好ましく、150,000〜1,500,000であることがより好ましく、200,000〜1,000,000であることが特に好ましい。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0069】
ここで、エネルギー線として紫外線を用いる場合には、上記エネルギー線硬化型共重合体(A)に光重合開始剤(B)を添加することにより、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0070】
このような光重合開始剤(B)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメートなどが挙げられる。光重合開始剤(B)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜5質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0071】
上記硬化型樹脂組成物は、上記エネルギー線硬化型共重合体(A)および光重合開始剤(B)以外に、適宜他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分および/またはオリゴマー成分(C)、エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)、その他の添加剤(F)が挙げられる。
【0072】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分および/またはオリゴマー成分(C)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、質量平均分子量が3,000〜250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
【0073】
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0075】
その他の添加剤(F)としては、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、カップリング剤等が挙げられる。
【0076】
これらの他の成分を硬化型樹脂組成物に配合することにより、硬化前における凹凸構造の転写の容易性、硬化後の強度、他の層との接着性および剥離性、保存安定性などを改善することが可能になる。
【0077】
上記他の成分の配合量としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して、他の成分の合計で0〜50質量部であることが好ましく、特に0〜20質量部であることが好ましい。
【0078】
次に、上記硬化型樹脂組成物が、エネルギー線硬化性を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する場合について説明する。
【0079】
エネルギー線硬化性を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。また、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、前述の成分(D)と同様の成分が使用できる。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体とエネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であることが好ましく、特に25〜100質量部であることが好ましい。なお、この場合も、前述した架橋剤(E)やその他の添加剤(F)を配合することができる。
【0081】
次に、図1(b)に示すように、上記スタンパー1上の導電体層2と、硬化性材料4とを接触させる。硬化性材料4がシート状の場合には、上記スタンパー1の導電体層2側を、シート状の硬化性材料4に圧着する。この圧着により、スタンパー1の微細な凹凸構造が硬化性材料4に精密に転写される。
【0082】
そして、上記の状態で硬化性材料4を硬化させて、微細な凹凸構造を有する凹凸基層5を形成するとともに、その凹凸基層5と導電体層2とを接着する。例えば、硬化性材料4がエネルギー線硬化性の場合には、エネルギー線照射装置を使用して、スタンパー1側または基材3側から硬化性材料4に対してエネルギー線を照射し、硬化性材料4を硬化させて凹凸基層5とする。
【0083】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0084】
硬化性材料4が硬化して凹凸基層5が形成されたら、図1(c)に示すように、スタンパー1を分離する。ここで、第1の導電体層2は、スタンパー1の表面に剥離可能に形成されており、かつ、硬化性材料4の硬化により凹凸基層5と接着していることから、凹凸基層5側に残り、したがって、基材3、凹凸基層5および第1の導電体層2からなる積層体からスタンパー1だけが分離される。これにより、第1の導電体層2は、スタンパー1から凹凸基層5に転写されるようにして形成されることとなる。
【0085】
上記のように第1の導電体層2が凹凸基層5に転写・形成されることで、第1の導電体層2の形成にスパッタリングを利用した場合でも、微細な凹凸構造(ナノピラー)が崩れたりすることなく、目的とする電極構造体10に微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することができる。
【0086】
スタンパー1を分離したら、図1(d)に示すように、第1の導電体層2上に光電変換活性層6を形成し、そして光電変換活性層6上に第2の導電体層7を形成し、目的とする電極構造体10を得る。凹凸基層5および第1の導電体層2の凹凸構造には、スパッタリングに起因する欠点がないため、光電変換活性層6および第2の導電体層7も同じく、欠点のないものとなる。
【0087】
光電変換活性層6は、光電変換を行う層であり、一般的には半導体から形成される。半導体は、無機半導体であってもよいし、有機半導体であってもよいが、原料の低コスト化、柔軟性、形成の容易性、吸光係数の高さ、軽量化、耐衝撃性等の観点からは、有機半導体であることが好ましい。
【0088】
光電変換活性層6は、単層からなってもよいし、複数層からなってもよい。単層の場合には、光電変換活性層6は、通常、真性半導体(i型半導体)から形成される。また、複数層の場合であって、第1の導電体層2が正極電極の場合には、光電変換活性層6は、例えば、第1の導電体層2(正極電極)側から順にp型半導体層およびn型半導体層、またはp型半導体層、真性半導体層およびn型半導体層から構成され、第1の導電体層2が負極電極の場合には、光電変換活性層6は、例えば、第1の導電体層2(負極電極)側から順にn型半導体層およびp型半導体層、またはn型半導体層、真性半導体層およびp型半導体層から構成される。また、光電変換活性層6が単層の場合であって、第1の導電体層2が正極電極の場合には、光電変換活性層6は、例えば、第1の導電体層2(正極電極)側から順に導電性高分子層および真性半導体層から構成される。導電性高分子層を正極電極と真性半導体層との間に設けることで、光電変換効率を向上させることができる。
【0089】
真性半導体、p型半導体およびn型半導体は、無機半導体でも有機半導体でもよいが、ウェットプロセスにより簡便な方法で光電変換活性層6を形成できることから、有機半導体が好ましい。
【0090】
真性の有機半導体としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、半導体性を有するカーボンナノチューブ(CNT)およびCNT化合物の少なくとも1種類からなる第1の材料と、ポリフェニレンビニレン(PPV)の誘導体またはポリチオフェン系高分子材料からなる第2の材料とを、得られる半導体が真性半導体となるように混合した混合物を使用することができる。
【0091】
フラーレン誘導体としては、例えば、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチル(PCBM)等を用いることができ、また、フラーレンの二量体、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属等を導入したフラーレン化合物なども用いることができる。また、CNTとしては、フラーレンまたは金属内包フラーレンを内包したカーボンナノチューブ等を用いることができる。さらに、CNTの側壁や先端に、種々の分子を付加したCNT化合物等も用いることができる。
【0092】
ポリフェニレンビニレンの誘導体としては、ポリ[2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−p−フェニレン−ビニレン](MEH−PPV)等を用いることができ、ポリチオフェン系高分子材料としては、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリ(3−アルキルチオフェン)、ジオクチルフルオレンエン−ビチオフェン共重合体(F8T2)、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を用いることができる。
【0093】
特に好ましい真性の有機半導体としては、PCBMとP3HTとを質量比で1:0.3〜1:4で混合した混合物が挙げられる。
【0094】
p型の有機半導体としては、例えば、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマー等が挙げられるが、中でもポリアルキルチオフェンおよびその誘導体が好ましい。また、それら有機材料の混合物であってもよい。
【0095】
n型の有機半導体としては、特にフラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、例えば、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチル(PCBM)等を用いることができる。
【0096】
導電性高分子層を構成する導電性高分子としては、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)を好ましく使用することができる。
【0097】
光電変換活性層6の厚さは、単層または複数層の場合で異なるが、一般的には、30nm〜2μmであることが好ましく、特に40nm〜300nmであることが好ましい。
【0098】
光電変換活性層6は、上記有機半導体を含有させたジクロロベンゼン等の有機溶媒を、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート(スピンキャスト)法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等のウェットプロセスによって所望の工程数塗工することにより、第1の導電体層2の表面に被膜される。
【0099】
第2の導電体層7は、上記第1の導電体層2が正極電極の場合には負極電極、上記第1の導電体層2が負極電極の場合には正極電極とする。第2の導電体層7は、第1の導電体層2にて説明した方法により形成することができる。
【0100】
以上の製造方法によれば、電極構造体10に、微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することができる。すなわち、得られる電極構造体10においては、欠点のない微細な凹凸構造が高度に制御されて形成されてなる。これにより、光電変換活性層6と第1の導電体層2または第2の導電体層7との間の接触面積が増加し、電極構造体10は、光電変換効率の高いものとなる。この電極構造体10は、太陽電池を製造するために使用することができる。
【0101】
また、上記と同様の方法により、基材と、凹凸基層と、正極電極層と、p型半導体層と、真性半導体層とからなる第1の電極構造体を製造するとともに、基材と、凹凸基層と、負極電極層と、n型半導体層とからなる第2の電極構造体とを製造し、その第1の電極構造体と第2の電極構造体とを接合して、一つの電極構造体とすることもできる。
【0102】
第1の電極構造体と第2の電極構造体との接合は、例えば、第1の電極構造体の真性半導体層と第2の電極構造体のn型半導体層とを接触させ、80〜170℃程度で1〜15分間アニーリングしながら圧着することにより行うことができる。
【0103】
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電極構造体の製造方法を示す図である。なお、本実施形態で使用する材料は、前述した第1の実施形態で使用した材料と同じである。
【0104】
最初に、図2(a)に示すように、第1の実施形態と同様にして、スタンパー1の表面上に、第1の導電体層2を剥離可能に形成する。
【0105】
次いで、図2(b)に示すように、スタンパー1上の第1の導電体層2に、液状の硬化性材料4を塗布することにより、硬化性材料4の層を形成する。塗布方法としては、滴下の他、キスロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター等の塗工機を使用することができる。塗布後は、硬化性材料4を乾燥させるのが好ましい。
【0106】
硬化性材料4の層が形成されたら、図2(c)に示すように、硬化性材料4の層に基材3を積層し、その状態で硬化性材料4を硬化させて、凹凸基層5を形成するとともに、その凹凸基層5と導電体層2、凹凸基層5と基材3とを接着する。
【0107】
硬化性材料4が硬化したら、図2(d)に示すように、スタンパー1を分離する。ここで、第1の導電体層2は、スタンパー1の表面に剥離可能に形成されており、かつ、硬化性材料4の硬化により凹凸基層5と接着していることから、凹凸基層5側に残り、また、硬化性材料4の硬化により凹凸基層5と基材3とは接着しているため、基材3、凹凸基層5および第1の導電体層2からなる積層体からスタンパー1だけが分離される。
【0108】
スタンパー1を分離したら、図2(e)に示すように、第1の実施形態と同様にして、第1の導電体層2上に光電変換活性層6を形成し、そして光電変換活性層6上に第2の導電体層7を形成し、目的とする電極構造体10を得る。
【0109】
以上の製造方法によれば、電極構造体10に、微細な凹凸構造を欠点なく正確に、かつ簡便に形成することができる。すなわち、得られる電極構造体10においては、欠点のない微細な凹凸構造が高度に制御されて形成されてなる。
【0110】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0111】
例えば、電極構造体10の第2の導電体層7上には、カバー層等が積層されてもよい。また、第1の実施形態では、硬化性材料4は、基材3上に直接形成したが、これに限定されることなく、例えば、剥離シート上に一旦形成してから、基材3上に転写するようにしてもよい。
【実施例】
【0112】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0113】
なお、下記の貯蔵弾性率の測定に用いた試験片は、実施例1の塗布剤を、剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET3801)の剥離処理面に塗布し、100℃で1分間乾燥して得られた厚さ20μmの硬化型樹脂組成物層を積層して作製した。貯蔵弾性率の測定方法は、前述した通りである。
【0114】
〔実施例1〕
ブチルアクリレート62質量部と、メチルメタクリレート10質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量部とを酢酸エチル中で反応させて、官能基にヒドロキシル基を有するアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液(固形分濃度40質量%)を得た。
【0115】
さらに、そのアクリル系共重合体の酢酸エチル溶液250質量部に、酢酸エチル100質量部と、置換基にイソシアナート基を有する不飽和基含有化合物としてのメタクリロイルオキシエチルイソシアナート30質量部(アクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対し80.5当量)と、触媒としてのジブチルスズジラウレート0.12質量部とを添加し、窒素置換を行いながら、室温で24時間反応させて、エネルギー線硬化型共重合体を得た。このエネルギー線硬化型共重合体の質量平均分子量(Mw)は、600,000であった。
【0116】
得られたエネルギー線硬化型共重合体の固形分100質量部に、光重合開始剤である1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製,イルガキュア184)3.7質量部を溶解させた後、酢酸エチルを加えて固形分濃度を35質量%に調整し、これを硬化型樹脂組成物の塗布剤とした。
【0117】
得られた硬化型樹脂組成物の塗布剤を、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,A4100,厚さ:100μm)上に、ナイフコーターにより塗布し、110℃で1分間乾燥して厚さ20μmの硬化型樹脂組成物からなる硬化性材料層を形成した。硬化性材料層の硬化前の貯蔵弾性率は、1.4×10Paであった。
【0118】
一方、表面にナノピラー構造(ネガ,ピラー直径:200nm,ピラー高さ:300nm,ピラー間ピッチ:400nmの凹凸を形成することができる)を有する石英からなるスタンパー(NTT−ATナノファブリケーション社製)を、フッ素系剥離剤(ダイキン化成社製,オプツールHD−100)中に15分間浸漬し、引き上げた後、室温にて24時間放置した。次いで、当該スタンパーをリンス剤(ダイキン化成社製,オプツールHD)に浸漬し、15分後に引き上げて乾燥させた。
【0119】
上記のようにして剥離処理を行ったスタンパーの表面に、第1の導電体層(正極電極)として、厚さ100nmのスズドープ酸化インジウム(ITO)層をスパッタリングにより形成した。
【0120】
上記基材上に形成した硬化性材料層の表面に、上記スタンパーの導電体層側を圧着し、その状態で、基材側から紫外線(光量:300mJ/cm)を照射して、硬化型樹脂組成物を硬化させて凹凸基層を形成した。その後、スタンパーを剥離して、凹凸基層上に第1の導電体層(正極電極)が転写・形成された積層体(基材/凹凸基層/第1の導電体層)を得た。
【0121】
続いて、上記第1の導電体層(正極電極)上に、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)水分散液(H.C.Starck社製,Clevios P VP Al4083)をスピンコートし、140℃で10分間乾燥させ、膜厚40nmの導電性高分子層を形成した。
【0122】
また、上記導電性高分子層上に、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)と[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチル(PCBM)とを質量比1:0.8で混合した混合物のクロロベンゼン溶液(濃度:2質量%)を、スピンキャスト法により塗布し、150℃で10分間乾燥して、厚さ100nmの真性半導体層を形成した。
【0123】
最後に、上記真性半導体層上に、第2の導電体層(負極電極)として、厚さ100nmのアルミニウム層を蒸着により形成し、これを電極構造体とした。
【0124】
〔実施例2〕
イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピルアクリレートとを反応させて得られた2官能ウレタンアクリレート40質量部、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学社製,DCP)30質量部、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製,A−TMMT)30質量部からなる液状の硬化型樹脂組成物を調製した。
【0125】
上記硬化型樹脂組成物を、実施例1で用いたスタンパー(剥離処理済)の表面に滴下し、100℃で1分間加熱して、厚さ約20μmの硬化性材料層を形成した。次いで、その硬化性材料層上にポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,A4100,厚さ:100μm)を積層した後、ポリエチレンテレフタレートフィルム側から紫外線(光量:300mJ/cm)を照射して、硬化型樹脂組成物を硬化させて凹凸基層を形成した。
【0126】
その後、スタンパーを剥離して、基材、凹凸基層および第1の導電体層(正極電極)からなる積層体を得た。この積層体上に、実施例1と同様にして、導電性高分子層、真性半導体層および第2の導電体層(負極電極)を形成し、これを電極構造体とした。
【0127】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして、基材上に硬化型樹脂組成物の塗布剤を塗布・乾燥して、硬化性材料層を形成した。この硬化性材料層の表面に、実施例1で用いたスタンパー(剥離処理済)を圧着し、その状態で、基材側から紫外線(光量:300mJ/cm)を照射して、硬化型樹脂組成物を硬化させて凹凸基層を形成した。その後、スタンパーを剥離して、スタンパーの凹凸構造が転写された凹凸基層と、基材とからなる積層体を得た。
【0128】
上記凹凸基層上に、第1の導電体層(正極電極)として、厚さ100nmのスズドープ酸化インジウム(ITO)層をスパッタリングにより形成した。そして、この第1の導電体層(正極電極)上に、実施例1と同様にして、導電性高分子層、真性半導体層および第2の導電体層(負極電極)を形成し、これを電極構造体とした。
【0129】
〔試験例1:ナノピラー構造の観察〕
実施例および比較例で得られた電極構造体の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて6万倍で観察した。それにより、欠点がなく、均一な高さ(300nm)と直径(200nm)を有するナノピラー構造の数が、電極構造体表面2×2μmの面積におけるナノピラー構造の総数に占める割合(%)を導き出した。結果を表1に示す。
【0130】
〔試験例2:光電変換効率の測定〕
実施例および比較例で得られた電極構造体に対し、AM1.5G、擬似太陽光(100mw/cm)を照射光源として照射し、ソースメジャーユニット(ワコム電創社製)を用いて電流電圧特性を測定することにより、光電変換効率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
表1から分かるように、実施例で得られた電極構造体においては、均一なナノピラー構造の割合が高く、光電変換効率が高かった。一方、比較例1の電極構造体においては、均一なナノピラー構造の割合が実施例よりも低く、光電変換効率は実施例よりも劣った。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によって得られる電極構造体は、太陽電池などのエネルギー変換素子用の電極構造体として好適である。
【符号の説明】
【0134】
1…スタンパー
2…第1の導電体層
3…基材
4…硬化性材料
5…凹凸基層
6…光電変換活性層(半導体層)
7…第2の導電体層
10…電極構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸構造を有する電極構造体を製造する方法であって、
表面に微細な凹凸構造を有するスタンパーの前記表面上に、導電体層を剥離可能に形成し、
前記スタンパー上の前記導電体層と、硬化性材料とを接触させ、
その状態で前記硬化性材料を硬化させて、微細な凹凸構造を有する凹凸基層を形成するとともに、前記凹凸基層と前記導電体層とを接着し、
前記スタンパーと、前記凹凸基層に接着された前記導電体層とを分離し、もって前記凹凸基層上に前記導電体層を転写して形成する
ことを特徴とする電極構造体の製造方法。
【請求項2】
前記スタンパー上の前記導電体層と、前記硬化性材料とを接触させるとき、前記硬化性材料はシート状になっており、前記スタンパーの前記導電体層側を、前記シート状の硬化性材料に圧着することを特徴とする請求項1に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項3】
前記シート状の硬化性材料の硬化前の貯蔵弾性率が、1×10〜1×10Paであることを特徴とする請求項2に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項4】
前記スタンパー上の前記導電体層と、前記硬化性材料との接触は、前記導電体層上に、前記硬化性材料の層を形成することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項5】
前記スタンパー上の前記導電体層に、液状の硬化性材料を塗布することにより、前記硬化性材料の層を形成することを特徴とする請求項4に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項6】
スパッタリングにより前記導電体層を前記スタンパーに形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項7】
前記導電体層を前記スタンパーに形成する前に、前記スタンパーの前記表面に対して剥離処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項8】
前記凹凸基層上に転写した前記導電体層上に、さらに半導体からなる半導体層を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項9】
前記半導体が有機半導体であることを特徴とする請求項8に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性材料は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、エネルギー線硬化型のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する硬化型樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項11】
前記硬化性材料は、側鎖に重合性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する硬化型樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項12】
前記微細な凹凸構造が、ナノピラー構造であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項13】
前記電極構造体が、エネルギー変換素子用の電極構造体であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電極構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法で得られた電極構造体を用いた太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−166091(P2011−166091A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30697(P2010−30697)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】