説明

電極活物質及びリチウム二次電池

【課題】電気容量を大きくし、性能を向上させたリチウム二次電池を実現する。
【解決手段】電極活物質を、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、エネルギ密度が大きいことから、携帯端末やノートパソコンなどの様々な電子機器のエネルギ貯蔵デバイスとして採用されている。
リチウム二次電池は、正極と負極と電解質の3要素からなっており、放電時は電解質から正極を構成する正極活物質へカチオンが移動し、負極を構成する負極活物質から電解質へカチオンが移動する。逆に、充電時は正極を構成する正極活物質中から電解質へカチオンが放出され、電解質から負極を構成する負極活物質へ移動する。
【0003】
このため、正極活物質には、カチオンの挿入脱離ができる格子欠陥を有する構造が必要である。ここで、カチオンとしては、イオン化傾向が大きく、酸化還元電位が全元素中で最も低い−3.040Vであるリチウムイオンがふさわしい。
一般的なリチウム二次電池では、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO)が用いられている。また、オリゴリン酸塩をベースとした電極活物質(例えばLiFeP)を用いることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−523930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のLiCoOやLiFePなどを電極活物質として用いたリチウム二次電池では、電気容量が小さく、性能的には十分とは言えない。
そこで、電気容量を大きくし、性能を向上させたリチウム二次電池を実現したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本電極活物質は、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表されることを要件とする。
本リチウム二次電池は、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される電極活物質を含む正極又は負極と、電解質とを備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本電極活物質及びリチウム二次電池によれば、電気容量を大きくし、性能を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態並びに各実施例及び各比較例のリチウム二次電池の構成を示す模式的断面図である。
【図2】各実施例及び比較例の正極活物質を得るための出発原料を示す図である。
【図3】各実施例及び比較例の製造方法によって得られた正極活物質の誘導結合プラズマ発光分光分析の結果を示す図である。
【図4】各実施例及び比較例の正極活物質を備えるコインセルの放電試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる電極活物質及びリチウム二次電池について、図1を参照しながら説明する。
本実施形態にかかるリチウム二次電池は、図1に示すように、正極活物質を含む正極3と、電解質を含むセパレータ4と、負極(負極活物質)5とを含む。なお、図1中、符号1は電池ケースとしての正極缶、符号2は正極側集電体、符号6はガスケット、符号7は電池ケースとしての負極缶を示している。
【0010】
なお、リチウム二次電池には、リチウムイオン二次電池及び金属リチウム二次電池が含まれる。また、リチウムイオン二次電池をリチウムイオン電池ともいう。また、正極活物質及び負極活物質を、電極活物質ともいう。
ここでは、正極3は、正極活物質と、導電助剤と、結着材とを含む。
ここで、正極活物質には、モリブデン酸塩をベースとした正極活物質を用いる。つまり、正極活物質は、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される材料(化合物)を用いる。
【0011】
なお、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuは、レドックス活性元素である。このため、Mは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれる少なくとも1つのレドックス活性元素である。また、LiMMoを、ピロモリブデン酸化合物、あるいは、モリブデンのポリアニオンともいう。
このような正極活物質を用いているため、従来の正極活物質を用いる場合と比較して、電気容量、イオン伝導性、電気伝導性、サイクル容量、可逆性の向上及びコスト低減のうち1以上の効果がある。
【0012】
特に、電気容量を大きくし、性能を向上させることができる。
また、安全で、かつ、高エネルギ密度の正極活物質を実現することができる。つまり、正極活物質として一般的に用いられているコバルト酸リチウムは、層状岩塩構造と呼ばれるシート状の結晶構造を有し、充放電の繰り返しによるリチウムイオンの挿入脱離によって結晶構造が崩れ易く、内部短絡等が起きるおそれがある。これに対し、上述の正極活物質を用いれば、このようなおそれがなく、また、リチウムを多く含むため、安全で、かつ、高エネルギ密度の正極活物質を実現することができる。
【0013】
また、上述の正極活物質のうち、コバルトを用いないもの、即ち、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される材料(化合物)を含む正極活物質であれば、安価な正極活物質を実現することができる。つまり、正極活物質として一般的に用いられているコバルト酸リチウムは、レアメタルであるコバルトを使用しているため、コバルトが投機対象になり、価格が高騰し、あるいは、価格が安定しないなどの影響を受けている。これに対し、上述の正極活物質のうち、コバルトを用いないものであれば、このようなことがなく、安価が正極活物質を実現することができる。
【0014】
導電助剤には、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子、カーボンナノファイバー等のカーボン粉末(炭素粉末)などを用いれば良い。
結着材には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBRなどの合成ゴム系バインダなどを用いれば良い。
【0015】
また、負極(負極活物質)5には、例えば、リチウム(金属リチウム)、炭素、グラファイト、スズ、シリコン、シリコンスズ、アルミニウム、シリコンスズアルミニウム、アンチモンスズ、シリコン炭素、シリコンコバルト炭素、窒化シリコンチタン、硼化シリコンチタン、マグネシウムシリコン、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、酸化リチウムニッケルマンガン、酸化リチウムニッケルコバルトマンガン、酸化リチウムニッケルコバルト、酸化バナジウムリチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸リチウムバナジウム、酸化リチウムコバルトバナジウム、酸化リチウムチタン、酸窒化リチウムシリコンスズ、酸化バナジウム、チタン硫酸塩などを用いれば良い。なお、負極5に用いられる負極活物質によっては、導電助剤及び結着材を用いる場合もある。この場合、負極5は、負極活物質と、導電助剤と、結着材とを含むものとなる。つまり、負極5は、負極活物質によって構成される場合もあるし、負極活物質と、導電助剤と、結着材とを含むものとして構成される場合もある。
【0016】
また、電解質には、例えば、六フッ化リン酸リチウム(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビスオキサレートボラート、リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド)などを用いれば良い。
【0017】
ここでは、このような電解質を溶媒に溶解させた電解液をセパレータ4に浸み込ませて用いている。
ここで、溶媒には、例えば、ポリカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビス(2−メトキシフェニル)カーボネート、ジメチルスルフォキシド、ジメチルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジ(o−メトキシフェニル)カーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、アリルメチルカーボネート、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、イオン液体などを用いれば良い。
【0018】
セパレータ4には、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド(PVdF))の多孔質フィルム、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等)製不織布、ガラス繊維製不織布などを用いれば良い。
また、正極側集電体2には、例えば、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、カーボン等を用いれば良く、その形状は、例えば、箔状、板状、メッシュ、パンチングメタル等とすれば良い。なお、負極側集電体を設けても良く、この場合も同様の材料、形状とすれば良い。
【0019】
したがって、本電極活物質及びリチウム二次電池によれば、電気容量を大きくし、性能を向上させることができるという利点がある。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上述の実施形態では、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される材料を、正極活物質に用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
【0020】
例えば、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される材料を、負極活物質に用いることもできる。この場合、正極活物質には、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、酸化リチウムニッケルマンガン、酸化リチウムニッケルコバルトマンガン、酸化リチウムニッケルコバルト、酸化リチウムバナジウム、リン酸鉄リチウム、ピロリン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、酸化リチウムコバルトバナジウム、酸化リチウムチタン、および酸窒化リチウムシリコンスズ、硫化コバルトリチウム、硫化マンガンリチウム、硫化ニッケルリチウム、硫化ニッケルマンガンリチウム、硫化ニッケルコバルトマンガンリチウム、硫化ニッケルコバルトリチウム、硫化バナジウムリチウムなどを用いれば良い。なお、正極に用いられる正極活物質によっては、導電助剤及び結着材を用いなくても良い場合もある。この場合、正極は、正極活物質によって構成されることになる。つまり、正極は、正極活物質と、導電助剤と、結着材とを含むものとして構成される場合もあるし、正極活物質によって構成される場合もある。
【0021】
要するに、化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される材料は、電極活物質に用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
[正極活物質の製造方法]
実施例1では、正極活物質としてのLiFeMoを、以下のようにして製造した。
【0023】
出発原料(出発物質)として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、シュウ酸鉄(II)二水和物(化学式FeC・2HO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、1.799g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0024】
次に、ペレット化した混合物を、アルゴン雰囲気下で、約300℃、約6時間、電気炉で加熱した後、自然放冷し、室温に戻した。
次に、ペレットを粉砕した後、再度、ペレットを作製し、アルゴン雰囲気下で、約600℃、約12時間、再加熱した後、自然放冷し、室温に戻して、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
【0025】
上述のようにして得られた正極活物質0.05gを、塩酸5mL及び硝酸1mLからなる混酸により溶解させた。なお、不溶成分がある場合は、サンドバスにて加熱し溶解させた。
溶解後、超純水(18.3MΩ・cm)にて25mLに定容した。
定容後の溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES SPS1700HVR、セイコーインスツル株式会社製)によって、LiとMとMoの元素比を測定した。
【0026】
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例2]
[正極活物質の製造方法]
実施例2では、正極活物質としてのLi1.5FeMoを、以下のようにして製造した。
【0027】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、シュウ酸鉄(II)二水和物(化学式FeC・2HO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれの重量を、0.554g、1.799g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0028】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例3]
[正極活物質の製造方法]
実施例3では、正極活物質としてのLi2.5FeMoを、以下のようにして製造した。
【0029】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、シュウ酸鉄(II)二水和物(化学式FeC・2HO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.924g、1.799g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0030】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例4]
[正極活物質の製造方法]
実施例4では、正極活物質としてのLiVMoを、以下のようにして製造した。
【0031】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化バナジウム(V)(化学式V、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、0.909g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0032】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例5]
[正極活物質の製造方法]
実施例5では、正極活物質としてのLiCrMoを、以下のようにして製造した。
【0033】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化クロム(VI)(化学式CrO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、1.000g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0034】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例6]
[正極活物質の製造方法]
実施例6では、正極活物質としてのLiMnMoを、以下のようにして製造した。
【0035】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化マンガン(IV)(化学式MnO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、0.869g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0036】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例7]
[正極活物質の製造方法]
実施例7では、正極活物質としてのLiCoMoを、以下のようにして製造した。
【0037】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化コバルト(II,III)(化学式Co、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、0.803g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0038】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例8]
[正極活物質の製造方法]
実施例8では、正極活物質としてのLiNiMoを、以下のようにして製造した。
【0039】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化ニッケル(II)(化学式NiO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、0.747g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0040】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[実施例9]
[正極活物質の製造方法]
実施例9では、正極活物質としてのLiCuMoを、以下のようにして製造した。
【0041】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、酸化銅(I)(化学式CuO、関東化学)及び七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(化学式(NH)6Mo24・4HO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、1.431g、3.531gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0042】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[比較例1]
[正極活物質の製造方法]
比較例1では、正極活物質としてのLiFePを、以下のようにして製造した。
【0043】
出発原料として、図2に示すように、炭酸リチウム(化学式LiCO、関東化学)、シュウ酸鉄(II)二水和物(化学式FeC・2HO、関東化学)及びリン酸水素二アンモニウム(化学式(NHHPO、関東化学)を用いた。そして、これらを秤量して、それぞれ、0.739g、1.799g、2.641gとし、これらを遊星ボールミルで混合した後、ペレット化した。
【0044】
その後、上述の実施例1と同様にして、目的物としての正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
上述のようにして得られた正極活物質の元素組成の確認を行なうために、上述の実施例1と同様に、誘導結合プラズマ発光分光分析を行なった。
この結果、図3に示すように、所望の元素比率であることが確認できた。
[比較例2]
比較例2では、正極活物質として、コバルト酸リチウム(化学式LiCoO、高純度化学)を用いた。
[リチウム二次電池の作製方法]
上述の実施例1〜9、比較例1、2の正極活物質を用いて、以下のようにして、リチウム二次電池を作製した。
【0045】
まず、上述の実施例1〜9、比較例1、2の各正極活物質と、導電助剤としての炭素粉末(ECP600、ケッチェンブラック社)と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製)とを、重量比で80:15:5になるようにし、溶媒として例えばN−メチル−2−ピロリドン(関東化学社製)を適量加え、メノウ乳鉢で混練し、上述の実施例1〜9、比較例1、2の各正極活物質を含むペーストをそれぞれ作製した。
【0046】
次に、各ペーストを、正極側集電体としての膜厚約0.3mmのアルミ箔2の上に、約0.1mmの厚さになるように、ブレードによって塗布し、約60℃で約12時間乾燥させた後、直径約16mmに打ち抜いて、アルミ箔2上に上述の実施例1〜9、比較例1、2の各正極活物質を含む正極3をそれぞれ作製した。
セパレータ4には、直径約18mm、厚さ約0.03mmのポリプロピレンセパレータを用い、電解液には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(キシダ化学社)をプロピレンカーボネートに溶解させたもの(例えば濃度約1mol/L)を用い、この電解液をセパレータに浸み込ませた。
【0047】
負極5(負極活物質)には、直径約16mm、厚み約0.6mmの金属リチウムを用いた。
そして、図1に示すように、直径約20mmのステンレス製のコイン型電池ケースとしての正極缶1及び負極缶7に、上述のようにして各アルミ箔2上に作製した各正極3、電解質を含む電解液を浸み込ませたセパレータ4、負極5の順に設置し、ポリプロピレンをガスケット6として用いてかしめて、上述の実施例1〜9、比較例1、2の各正極活物質を含む各正極3を備えるコイン型リチウム二次電池(コインセル)をそれぞれ作製した。
[リチウム二次電池の評価]
上述のようにして作製された各コインセルに対して、約5mAhの定電流放電を行なって、電池特性を評価した。放電試験には、東洋システム社製のTOSCATを用いた。
【0048】
この結果、図4に示すように、比較例1、2の正極活物質を含む正極を備えるコインセルと比較して、実施例1〜9の正極活物質を含む正極を備えるコインセルでは、優れた放電特性が得られた。ここで、放電容量(mAh/g)は、正極活物質の重さあたりの放電容量(電気用用)を示している。
【符号の説明】
【0049】
1 正極缶(電池ケース)
2 アルミ箔(正極側集電体)
3 正極活物質を含む正極
4 セパレータ(電解液含浸;電解質を含む)
5 負極(負極活物質)
6 ガスケット(電池ケース)
7 負極缶(電池ケース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表されることを特徴とする電極活物質。
【請求項2】
化学式LiMMo(ここで、xは1.5以上2.5以下であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれるいずれか一種の材料である)で表される電極活物質を含む正極又は負極と、
電解質とを備えることを特徴とするリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109900(P2013−109900A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252777(P2011−252777)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】