説明

電極用触媒、及び、電極用触媒含有組成物

【課題】蓄電池等の技術分野に適用される電極用触媒、特に、空気電池や燃料電池における空気極(空気電極)等の蓄電池における電極を構成する電極用触媒として高活性であり、電極材料として好適である電極用触媒を提供する。
【解決手段】少なくとも2種の金属元素を含む金属酸化物を含有する電極用触媒であって、該金属酸化物は、第1の金属元素として、周期律表第3〜6族の元素の群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、第2の金属元素として、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auらなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことを特徴とする電極用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用触媒に関する。より詳しくは、蓄電池等の技術分野に適用される電極用触媒、特に、リチウム空気二次電池等の空気電池や燃料電池における空気極(空気電極)等の蓄電池における電極を構成する電極材料として好適である電極用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境問題への関心の高まりを背景に、様々な産業分野で石油等の化石燃料から電気へとエネルギー源の転換が進んでいる。それにともなって、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野をはじめ、様々な分野で電池やキャパシタ等の蓄電装置の使用が広がりをみせている。このような背景の下、これら蓄電装置に用いられる材料について、活発に研究開発が行われている。そのような材料の1つに、蓄電装置の性能を左右する重要なものとして、各種電池の正極、負極を構成する電極材料が挙げられる。電極材料は、通常では、電極、電極活物質、電極触媒等によって構成されることになる。
【0003】
従来の電極材料としては、FeCl溶液とケッチェンブラック分散液とを混合し、熱処理して製造したγ−Fe/ケッチェンブラック複合体を電極触媒として用い、対極、参照電極としてLi金属を用いたものが開示され、これらの電極材料を用いたリチウム−空気二次電池が開示されている(非特許文献1参照)。
電極活物質を酸素とし、それが正極となる空気極において還元されて電気エネルギーが生じる空気電池や燃料電池は、エネルギー問題が大きく取り上げられる現代において、各種分野における実用化が期待される電池の1つとなっている。これら空気電池等の二次電池の技術分野においては、電池需要の拡大、化石燃料代替による適用用途の拡大にともなって、電子機器から自動車等に至る実用用途で充分な性能が発揮されるように、電池性能の更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第36回固体イオニクス討論会 予稿集(P12−13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、蓄電池に関する様々な研究が行われているが、各種産業分野で求められている高い性能を満足する電池を広く提供できるには至っていないのが現状である。特に蓄電池の性能を左右する新規電極材料の開発が急務である。
そのような中、非特許文献1に記載された技術において、導電助剤に触媒が担持された複合材料が二次電池電極材料として機能し、電池性能を向上し得ることが見いだされた。当該複合材料は、電極触媒として好適に使用することができるものである。この技術においては、γ−Feの調製と同時に導電助剤としてケッチェンブラック(KB)を混合し、熱処理(焼成)してγ−Fe/KB複合体を調製されている。この複合体を電極材料とすると、ケッチェンブラックが電極において導電助剤として作用することになり、また、金属酸化物であるFeが電極における反応に対して触媒作用を発揮することになる。そして、この複合体を空気電池の電極触媒として用いると、カーボンブラックのみでは進行しなかった繰り返し充放電が可能となることが確認されている。
しかしながら、様々な電池用途において、充分な性能を発揮できる電池の実現に向け、各種材料の開発が求められており、電極用触媒にも更に活性を向上することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、蓄電池等の技術分野に適用される電極用触媒、特に、空気電池や燃料電池における空気極(空気電極)等の蓄電池における電極を構成する電極用触媒として高活性であり、電極材料として好適である電極用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、蓄電池における電極を構成する電極用触媒について種々検討したところ、第1の金属元素として、周期律表第3〜6族の元素の群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、更に第2の金属元素として、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物が、蓄電池等における電極反応、特に空気極等の正極における還元反応に高い活性を示すことを見いだし上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
空気電池や燃料電池は、正極活物質が酸素であることから、電池内に正極活物質を充填する必要がないため、電池内における負極活物質の量を増やすことができる。このため、放電容量の大きい電池の製造が可能となることから、近年研究が進められている電池の一つである。空気電池や燃料電池では、アルカリ電解液を使用した場合、正極において酸素が還元されて水酸化物イオンとなるが、この還元を効率的にすすめることが空気電池や燃料電池の性能を向上させるうえで不可欠であるため、このような特定の金属元素を構成元素とする金属化合物が高活性な酸素還元能を発揮することを見出したことの技術的意義は大きく、本発明の電極用触媒は、空気電池や燃料電池の更なる高性能化に寄与するものである。
【0008】
すなわち本発明は、少なくとも2種の金属元素を含む金属酸化物を含有する電極用触媒であって、前記金属酸化物は、第1の金属元素として、周期律表第3〜6族の元素の群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、第2の金属元素として、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む電極用触媒である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明の電極用触媒が含有する金属酸化物は、第1の金属元素として、周期律表第3〜6族の元素の群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、第2の金属元素として、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むものであるが、これらの元素をそれぞれ少なくとも1種含む限り、その他の元素を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、第1の金属元素、第2の金属元素をそれぞれ1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0010】
上記周期律表第3〜6族の元素としては、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W及びランタノイド、アクチノイドのいずれかが好ましい。これらの中でも、本発明における金属酸化物が後述する複酸化物である場合には、Ti、V、Nb、Mo、W、Laのいずれかが好ましい。より好ましくは、W、Moであり、更に好ましくは、Wである。すなわち、金属酸化物が、W元素を含む複酸化物であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
また、本発明の金属酸化物が後述するオキソ酸塩である場合には、5族又は6族の元素が好ましく、より好ましくは、W、Moであり、更に好ましくは、Wである。このように、金属酸化物が、W元素を含むオキソ酸塩であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0011】
上記第2の金属元素は、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auから選択される少なくとも1種の元素であるが、その中でも、Agが好ましい。金属酸化物がAgを含むものであると、触媒活性を特に高めることができ、還元電流開始電圧等の特性をより有利なものとすることができる。このように、本発明の電極用触媒が含む金属酸化物が、Agを含むことは本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の金属酸化物がAgを含むものである場合、Ag単体をカーボン等に混合して触媒として用いた場合に比べて、より少ないAg含有量で同等の触媒性能を発揮することができる点で有利である。
【0012】
上記第1の金属元素、第2の金属元素の種々の組み合わせの中でも、Ti、V、Nb、Mo、W、LaのいずれかとAgとの組み合わせが好ましい。金属酸化物がこのような組み合わせの金属元素を含むものであると、還元電流開始電圧等の特性をより有利なものとすることができ、金属酸化物がより電極触媒としての活性により優れたものとなる。特に好ましくは、WとAgとの組み合わせであり、金属酸化物がWとAgとを含むものであると、特に優れた電極触媒としての活性を発揮するものとなる。
【0013】
金属酸化物がWとAgとを含むものである場合、金属酸化物は、Agの周囲に八面体構造のWO単位構造が存在する構造のものが好ましい。このような構造を有する金属化合物は、酸素還元能に優れ、電極触媒として特に好ましい特性を発揮することができる。Agの周囲に八面体構造のWO単位構造が存在する場合としては、WO単位構造が複数組み合わせられて形成される構造部位とAgとが電気的に結合した状態が挙げられ、後述する複酸化物の形態やオキソ酸塩の形態が挙げられる。
このような構造を有する金属化合物としては、例えば、AgNa13、Ag13等の複酸化物やAgNa19、Ag19、AgNa1032、Ag1032等のオキソ酸塩が挙げられる。
【0014】
本発明における金属酸化物の形態としては、上記第1の金属元素と第2の金属元素とを含む複酸化物の形態、又は、オキソ酸塩の形態があり、これらいずれの形態であっても、電極用触媒として優れた触媒活性を発揮することができる。
このように、本発明における金属酸化物が第1の金属元素と第2の金属元素とを含む複酸化物であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また本発明における金属酸化物がオキソ酸塩であることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
以下においては、金属酸化物が複酸化物である形態を本発明の第1の形態、金属酸化物がオキソ酸塩である形態を本発明の第2の形態と記載する。
なお、金属酸化物がオキソ酸塩である形態とは、オキソ酸のアニオンと金属カチオンとから形成される塩形態であり、オキソ酸が縮合してできるアニオンであるポリオキソメタレートと金属カチオンとから形成される塩も含まれる。
金属酸化物が複酸化物である形態とは、独立した構造単位としてオキソ酸のイオンが存在しない金属酸化物の形態である。
【0015】
本発明の第1の形態、第2の形態のいずれの場合においても、本発明の電極用触媒は金属酸化物を含んでなる限り、金属酸化物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、金属酸化物以外のその他の成分を含んでいてもよいが、その他の成分の含有割合が低いことが好ましい。電極用触媒におけるその他の成分の割合は電極用触媒全体の5質量%以下であることが好ましい。その他の成分の含有量が5質量%以下であると、本発明の電極用触媒がより優れた性能を発揮することができる。その他の成分の含有量は、より好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以下である。
その他の成分には、複酸化物やオキソ酸塩を製造する過程で生じる副生成物や未反応の原料等は含まれるが、後述する導電性物質、有機化合物や集電体は含まない。
【0016】
本発明の第1の形態は、金属酸化物が複酸化物であるものであるが、複酸化物は、構成元素に第1の金属元素、第2の金属元素と酸素(O)とを含む限り、その他の元素を含むものであってもよい。その他の元素としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素やカルコゲン元素が挙げられる。
【0017】
本発明の第1の形態の複酸化物は、第1の金属元素を含む化合物と第2の金属元素を含む化合物とを含む原料混合物を焼成して製造されるものであってもよく、第1の金属元素を含む化合物を含む原料混合物を焼成してホスト化合物となる金属酸化物(以下、ホスト金属酸化物と記載)を調製した後、第2の金属元素をイオン交換によりホスト金属酸化物に導入して製造されるものであってもよい。
【0018】
上記ホスト金属酸化物は、層状構造又はトンネル構造を有するものであることが好ましい。ホスト金属酸化物がこのような構造であると、ホスト金属酸化物のカチオン金属種を第2の金属元素のイオンと交換することが容易となり、より多くのカチオン金属種を第2の金属元素のイオンと交換することが可能となる。
層状構造を有するホスト金属酸化物としては、例えば、層状ペロブスカイト構造を有するNaLaTi10やKLaTi10や、Na13、K13、NaMo13、Kがある。
またホスト金属酸化物をイオン交換して得られる本発明の第1の形態の複酸化物としては、AgNaLaTi10、AgLaTi10、AgNa19、Ag19、AgNa1032、Ag1032、AgNaMo13、AgMo13、AgNa、Ag等が挙げられる。なお、xはAgの数を、yはNa又はKの数を表す。
【0019】
本発明の第1の形態の複酸化物は、下記一般式(1)により表されるものであることが好ましい。
AaBbCcDdOe (1)
式中、Aは、上述した第2の金属元素を表し、Bは、上述した第1の金属元素を表す。C、Dは、A、Bとは異なる金属元素を表し、第1の金属元素、第2の金属元素、その他の金属元素のいずれかである。a〜eは、それぞれの元素の原子の数を表し、a、b、eは1以上の数であり、c、dは0以上の数である。eは、A〜Dの原子の価数及び数により決まることになる。
【0020】
上記一般式(1)のC、Dの元素としては、上述した第1の金属元素、第2の金属元素、又は、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素が好ましい。
aを1とすれば、bは1〜10であることが好ましい。より好ましくは、aが1〜5であり、更に好ましくは、aが1〜4である。c、dは、それぞれ0〜5であることが好ましい。より好ましくは、0〜3であり、更に好ましくは、0〜2である。
【0021】
本発明の第2の形態は、金属酸化物がオキソ酸塩であるものである。
本発明の第2の形態の金属酸化物は、上記第1の金属元素及び第2の金属元素を含むものである限り、オキソ酸のアニオン部位を構成する金属元素、カチオン種は特に制限されないが、好ましくは、オキソ酸のアニオン部位構成元素として上記第1の金属元素を含み、カチオン種の少なくとも一部が第2の金属元素のカチオンであることである。本発明の第2の形態の金属酸化物において、カチオン種全体における第2の金属元素のカチオンの割合は特に制限されず、0.1質量%以上であればよい。
【0022】
本発明の第2の形態の金属酸化物のアニオン部位が、基本単位であるWOが複数縮合してできるオキソ酸アニオンである場合、本オキソ酸アニオン部位を構成する基本単位の数は特に制限されないが、2から30であることが好ましい。より好ましくは、2から20であり、更に好ましくは、2から10である。
【0023】
上記オキソ酸アニオンは、ポリオキソメタレートアニオンでもよい。ポリオキソメタレートは、構造中に、あるべきポリ原子が欠けている欠損構造を有するものであってもよく、このような欠損構造を有さない無欠損のものであってもよい。ポリオキソメタレートが欠損構造有するものである場合、欠損部位に他の金属元素が導入されることなる。この場合、他の金属元素は、特に制限されず、上記第1の金属元素や第2の金属元素又はその他の金属元素のいずれのものであってもよいが、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auが好ましい。
欠損構造部位に他の金属元素が導入されるとは、他の金属元素が欠損構造部位に組み込まれる形態、すなわち、あるべきポリ原子が他の金属元素により置換された形態であってもよいし、特に他の金属元素のイオン半径が大きい場合には、欠損構造部位に他の金属元素が組み込まれることなく、配位した形態であってもよい。好ましくは、他の金属元素が欠損構造部位に組み込まれる形態である。
【0024】
上記欠損構造部位に他の金属元素を導入する方法としては、ポリオキソメタレートとカチオンとから形成される化合物(ポリオキソメタレート化合物)と他の金属元素の化合物を有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒中で混合することが挙げられる。更に酸を添加してもよい。
また、他の金属元素を添加して、1つのポリオキソメタレートに他の金属元素を導入した後、更にポリオキソメタレートを添加する方法も用いることができる。更に、1つのポリオキソメタレート化合物に他の金属元素を導入して得られた化合物を有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒に溶解した溶液に当該1つのポリオキソメタレート化合物に他の金属元素を導入して得られた化合物を更に添加し、そこに貧溶媒を添加する方法も用いることができる。
なお、上記有機溶媒を含む溶媒は有機溶媒を含んでいる限り、その他の成分を含んでいてもよいが、上記有機溶媒を含む溶媒の好ましい形態の1つとして、有機溶媒と水との混合溶媒の形態が挙げられる。
【0025】
上記欠損構造には、欠損部位の数によって、一欠損構造、二欠損構造、三欠損構造等がある。本発明の金属酸化物が欠損構造含有ポリオキソメタレートを有する場合、一欠損構造部位、二欠損構造部位及び三欠損構造部位からなる群より選択される少なくとも1つの欠損構造部位含有ポリオキソメタレートを有するものであることが好ましい。
本発明の金属酸化物が欠損構造部位含有ポリオキソメタレートを2つ以上有する場合、これら複数の欠損構造部位含有ポリオキソメタレートは、ポリ原子の欠損数が同じものであってもよく、異なるものであってもよいが、ポリ原子の欠損数が同じものであることが好ましい。
【0026】
本発明における金属酸化物において、オキソ酸塩が有するポリ原子の元素としては、周期律表第5及び6族の元素の群より選択される少なくとも1種の元素であることが好ましい。周期律表第5及び6族の元素としては、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wが挙げられる。これらの中でも、V、Mo、Wからなる群より選択される少なくとも1種の元素がより好ましい。特に好ましくは、Wである。
金属酸化物がオキソ酸塩である本発明の第2の形態の金属酸化物の具体例としては、AgNa19、Ag19、AgNa1032、Ag1032、Ag、NaMo、AgMo、AgNaMo19、AgMo19、AgNaMo26、AgMo26、AgNa1028、Ag1028等が挙げられる。
【0027】
本発明の第2の形態の金属酸化物として、オキソ酸塩がポリオキソメタレートと金属カチオンとから形成される塩であるものを製造する方法としては、そのような構造の塩が製造される限り特に制限されないが、ポリオキソメタレートと上記第2の金属元素以外の元素のカチオンとから形成される化合物(以下、ホストポリオキソメタレート化合物と記載)に、第2の金属元素をイオン交換により導入する方法が好ましい。
【0028】
上記ホストポリオキソメタレート化合物は、下記一般式(2);
[M (2)
(式中、Mは、ポリ原子を表す。Lは第2の金属元素以外の元素のカチオン種を表す。x、yは、ポリ原子、酸素の数を表し、1以上の数である。p、qは、それぞれカチオン種及びポリオキソメタレートの数を表し、カチオン種及びポリオキソメタレートの価数によって決まる数である。)で表すことができる。
一般式(2)中、x、yは、ホストポリオキソメタレート化合物の欠損構造の有無や欠損構造の数によって異なるが、xは、1〜15の数であることが好ましい。より好ましくは、2〜10の数である。また、y/xは、0.5〜25の数であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜16の数である。
【0029】
上記一般式(2)においてLで表されるカチオン種としては、例えば、プロトン;アルカリ金属カチオン;アルカリ土類カチオン;第2の金属元素以外の遷移金属カチオン;典型金属カチオン;第四級アンモニウム塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩)や第四級ホスホニウム塩(テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩)等の有機カチオンが挙げられる。これらの中でも、第四級アルキルアンモニウム塩の有機カチオンであることがより好ましい。第四級アルキルアンモニウム塩としては、アルキル基の炭素数が4〜48のものが好ましい。更に好ましくは、4〜40である。
上記カチオン種が第四級アルキルアンモニウム塩のカチオンであると、ホストポリオキソメタレート化合物が過酸化水素によっても分解しない安定な化合物となる。また、有機溶媒にも溶解することができるようになる。したがって、このようなホストポリオキソメタレート化合物のカチオン種の一部を第2の金属元素に置き換えた化合物は、電極用触媒としての特性を発揮する安定な化合物となる。
【0030】
上記第四級アルキルアンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩が好ましい。より好ましくは、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩である。特に好ましくは、テトラブチルアンモニウム塩である。
【0031】
上記ポリオキソメタレート化合物の構造は、特に限定はされない。
このようなポリオキソメタレート化合物の構造は、X線結晶構造解析、元素分析、UV、XRD、ラマン分光測定やFT−IR分光測定等から決定または推定される。
【0032】
本発明の第1の形態の複酸化物を製造する方法としては特に制限されないが、(I)第1の金属元素を含む化合物と第2の金属元素を含む化合物とを含む原料混合物を焼成して製造する方法、(II)第1の金属元素を含む化合物を含む原料混合物を焼成してホスト金属酸化物を調製した後、第2の金属元素をイオン交換によりホスト金属酸化物に導入して製造する方法のいずれかの方法が好ましい。
【0033】
上記(I)の製造方法において、本発明の第1の形態の複酸化物を製造する方法としては、原料となる金属元素含有化合物を混合する工程、混合した原料を焼成する工程、不純物を除去する工程、不純物を除去した生成物を乾燥する工程を含む方法が好ましい。なお、この製造方法は、これらの工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0034】
上記原料となる金属元素含有化合物は、上記第1の金属元素や第2の金属元素を含む化合物等であるが、これらの化合物は、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、塩化物、水酸化物等のいずれの形態のものであってもよい。好ましくは、酸化物と炭酸塩である。第1の金属元素含む化合物や第2の金属元素を含む化合物は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
上記原料混合物中の第1の金属元素含む化合物と第2の金属元素を含む化合物との配合割合としては、第1の金属元素含む化合物中の第1の金属元素1モルに対して、第2の金属元素含む化合物中の第2の金属元素が1〜20モルとなるように混合することが好ましい。より好ましくは、2〜15モルとなるように混合することであり、更に好ましくは、2〜10モルとなるように混合することである。
【0036】
上記原料混合物は、第1の金属元素含む化合物と第2の金属元素を含む化合物とを含むものである限り、第1の金属元素、第2の金属元素のいずれも含まないその他の化合物を含んでいてもよい。その他の化合物としては、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を有する化合物が挙げられ、化合物の形態としては、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、塩化物、水酸化物等のいずれの形態であってもよい。その他の化合物は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
上記原料となる複数の金属元素含有化合物を混合する方法としては、原料が混合されることになる限り特に制限されないが、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、ボールミル等を使用することができる。また、アルコール等の溶剤中で混合する湿式混合を用いることもできる。
混合時間等の混合条件は、原料となる金属元素含有化合物の種類や質量割合等によって適宜調整すればよい。
【0038】
上記原料となる複数の金属元素含有化合物を混合した後、乾燥することが好ましい。乾燥条件としては、例えば50〜100℃とすることが好適である。雰囲気としては、空気中で行うことができるが、エバポレータ等を用いて減圧条件下で乾燥することが好ましい。
【0039】
上記焼成は、空気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
焼成は、400℃以上の温度で行うことが好ましい。
このような、本発明の電極用触媒の製造方法であって、該製造方法は、複数の原料化合物を混合し、400℃以上で焼成する工程を含む電極用触媒の製造方法もまた、本発明の1つである。
焼成の温度は、より好ましくは、400〜1600℃であり、更に好ましくは、500〜1100℃である。
また、焼成する時間は、0.5〜24時間が好ましい。より好ましくは1〜12時間である。焼成温度や時間が適切でない場合、原料化合物の複合化が充分にすすまないおそれがある。
焼成は、1回行ってもよく、2回以上行ってもよい。2回以上行う場合、焼成の温度や時間は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
上記焼成して得られた化合物から不純物を除去する工程において、不純物を除去する方法は特に制限されないが、水洗、濾過、遠心分離、デカンテーション等が好ましい。
また、上記不純物を除去した後の化合物を乾燥させる工程において、乾燥する温度は、20〜150℃が好ましい。より好ましくは、50〜120℃である。また、乾燥時間は、0.5〜24時間が好ましい。より好ましくは1〜15時間である。
【0041】
上記(II)の製造方法において、第1の金属元素を含む化合物を含む原料混合物を焼成してホスト金属酸化物を調製する方法には、上記(I)の複酸化物を製造する方法と同様の方法、条件を用いることができる。
ホスト金属酸化物を調製する際の原料として用いる第1の金属元素を含む化合物、及び、その他の化合物は、上記(I)の場合と同様に、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、塩化物、水酸化物等のいずれの形態のものであってもよい。好ましくは、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アルカリ金属塩である。
【0042】
ホスト金属酸化物を調製する際の原料混合物は、第1の金属元素を含む化合物を含む限り、その他の化合物として、上述したアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を有する化合物等を含んでいてもよい。また、第1の金属元素を含む化合物、その他の化合物は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
その他の化合物を含む場合、第1の金属元素含む化合物中の第1の金属元素1モルに対して、その他の化合物中の金属元素が0.1〜2モルとなるように混合することが好ましい。より好ましくは、0.2〜1モルとなるように混合することであり、更に好ましくは、0.3〜0.7モルとなるように混合することである。
【0043】
上記(II)の製造方法において、ホスト金属酸化物を調製した後、第2の金属元素をイオン交換によりホスト金属酸化物に導入する方法としては、ホスト金属酸化物と銀化合物とを混合し、加熱する方法等を用いることができる。
ホスト金属酸化物と銀化合物とを混合し、加熱する方法を用いる場合、加熱した後の金属化合物を水洗、濾過等により精製することが好ましい。
【0044】
上記ホスト金属酸化物と銀化合物とを混合し、加熱する方法に用いる銀化合物としては、硝酸銀、塩化銀、酢酸銀、銀アセチルアセトナート錯体等が好ましい。より好ましくは、硝酸銀である。
【0045】
上記ホスト金属酸化物と銀化合物とを混合し、加熱する方法における加熱温度は、100〜500℃が好ましい。より好ましくは、200〜300℃である。
また、加熱時間は、1〜100時間が好ましい。より好ましくは、10〜50時間である。
【0046】
上記イオン交換によって、ホスト金属酸化物の構成元素の少なくとも一部が第2の金属元素のイオンと交換されることになればよいが、好ましくは、ホスト金属酸化物のカチオンの50%以上が第2の金属元素のイオンと交換されることである。より好ましくは、60%以上が交換されることであり、更に好ましくは、70%以上が交換されることであり、特に好ましくは、90%以上が交換されることである。
イオン交換率は、XRF測定により算出することができる。
【0047】
本発明の第2の形態のオキソ酸塩である金属酸化物の製造方法は、得られる金属酸化物が、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するものとなる限り特に制限されないが、(III)第1の金属元素を含む化合物と第2の金属元素を含む化合物とを含む原料混合物より製造する方法、(IV)第1の金属元素を含む化合物を含む原料混合物よりホストオキソ酸塩を調製した後、第2の金属元素をイオン交換によりホストオキソ酸塩に導入して製造する方法のいずれかの方法が好ましい。また、金属酸化物の製造方法は焼成する工程を含んでいてもよい。
(III)の方法で本発明の第2の形態のオキソ酸塩を製造する方法、及び、(IV)の方法においてホストオキソ酸塩を製造する方法は、上記複酸化物の製造方法と同様に、原料となる金属元素含有化合物を混合する工程、混合した原料を焼成する工程、不純物を除去する工程、不純物を除去した生成物を乾燥する工程を含む方法を含む方法により行うことができる。また、オキソ酸塩やホストオキソ酸塩がポリオキソメタレート化合物である場合、ポリオキソメタレート化合物の製造は、Walter G.Klemperer、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第270巻、p71等に記載の公知の方法により行うこともできる。
ホストポリオキソメタレート化合物に第2の金属元素をイオン交換により導入する方法は、上記第1の形態において、ホスト金属酸化物を調製した後、第2の金属元素をイオン交換によりホスト金属酸化物に導入する方法と同様の方法を用いることができる。
【0048】
本発明の電極用触媒は、導電性物質とともに用いられることが好ましく、本発明の電極用触媒と導電性物質とを含む電極用触媒含有組成物もまた、本発明の1つである。
電極用触媒を導電性物質とともに用いる形態とは、(1)それらがそれぞれ単体で混在している混合状態、(2)分子間力等により近接又は接触した状態、(3)共有結合等により結合した状態のいずれかの状態を意味する。該(2)及び(3)の状態においては、2種以上の物質どうしが吸着又は結合して複合体を形成しているともいえる。少なくとも、2種以上の物質が近接及び/又は接触して分散した状態にあること、例えば、nmのオーダーで近接及び/又は接触して存在し、分散した状態にあること、また、共有結合等により結合した状態にあることが好ましい。電極用触媒が担体としての導電性物質に担持した状態も、電極用触媒を導電性物質とともに用いる形態に含まれ、本発明の好ましい形態の1つである。
【0049】
上記電極用触媒含有組成物は、電極用触媒と導電性物質との合計を100質量%とすると、(導電性物質の質量%)/(電極用触媒の質量%)=50〜99.9/0.01〜50であることが好ましい。このような範囲内で設定することにより、例えば、導電性物質の導電助剤としての作用、導電性物質と電極用触媒との相互作用、電極用触媒の触媒活性が適切にバランスされ、電極用触媒としての性能を充分に高めることができる。より好ましくは、(導電性物質の質量%)/(電極用触媒の質量%)=70〜99/1〜30であり、更に好ましくは、80〜90/10〜20である。
【0050】
本発明の電極用触媒は、蓄電池等の電極材料、特に、空気電池や燃料電池における正極としての空気極(空気電極)等を構成する電極材料として好適である。電極材料とは、電極活物質、電極触媒、導電助剤、電極そのものを構成する材料を総称したものである。
中でも、上記電極用触媒は、空気電極用触媒として用いられることが好適である。この場合、例えば、上記導電性物質とともに用いる形態では、実質的には、電極用触媒及び/又は導電助剤として用いられることになる。また、上記空気極において用いられる場合は、空気電極用触媒として、また、空気電極用導電助剤として用いることが好適である。
【0051】
本発明の電極用触媒が適用される電極としては、正極であることが好適である。この場合、上記電極材料としては、電池の正極を形成する材料である正極合剤となる。
上記電極材料、好ましくは正極合剤としては、本発明の電極用触媒を必須成分とし、導電助剤、有機化合物を含んで構成されることが好ましく、その他の成分を必要に応じて含んでいてもよい。
なお、上記空気極においては、酸素が正極活物質となるが、本発明の電極用触媒を必須成分とすれば、酸素の還元や水の酸化が可能として知られている、ぺロブスカイト化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、白金含有化合物等の本発明の金属化合物により構成される空気極とすることが好適である。
上記電極材料、好ましくは正極合剤を粒子状の形態とする場合、平均粒子径が1000μm以下である粒子とすることが好ましい。
【0052】
上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布測定装置等により測定することができる。粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。ここで平均粒子径とは、粒子群が径の不均一な多くの粒子から構成される場合に、その粒子群を代表させる粒子径を考えるとき、その粒子径を平均粒子径とする。粒子径は一般的な決められたルールに従って測定した粒子の長さをそのまま粒子径とするが、例えば、(i)顕微鏡観察法の場合には、1個の粒子について長軸径、短軸径、定方向径等二つ以上の長さを測定し、その平均値を粒子径とする。少なくとも100個の粒子に対して測定を行うことが好ましい。(ii)画像解析法、遮光法、コールター法の場合には、粒子の大きさとして直接に測定された量(投影面積、体積)を幾何学公式により、規則的な形状(例:円、球や立方体)の粒子に換算してその粒子径(相当径)とする。(iii)沈降法、レーザー回折散乱法の場合には、特定の粒子形状と特定の物理的な条件を仮定したとき導かれる物理学的法則(例:Mie理論)を用いて測定量を粒子径(有効径)として算出する。(iv)動的光散乱法の場合には、液体中の粒子がブラウン運動により拡散する速度(拡散係数)を計測することで粒子径を算出する。
【0053】
上記電極材料から電極を形成する工程としては、次のように実施することが好ましい。
先ず、電極材料を必要により水及び/又は有機溶媒と、本発明の電極用触媒、バインダーや有機化合物と共に混練し、ペースト状とする。次に、得られたペースト混合物をアルミ箔等の金属箔上に、できる限り膜厚が一定になるように塗工する。塗工後、0〜250℃で乾燥する。乾燥温度としてより好ましくは、15〜200℃である。乾燥は真空乾燥で行ってもよい。また、乾燥後に0.01〜20tの圧力で、ロールプレス機等によりプレスを行うことが好ましい。プレスする圧力としてより好ましくは、0.1〜15tの圧力である。
上記電極、好ましくは正極電極の膜厚は、例えば、1nm〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは、10nm〜1500μmであり、更に好ましくは、100nm〜1000μmである。
【0054】
上記電極材料の調製や電極の調製における混合、混練には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を加えてもよい。混合した後、粒子を所望の粒子径に揃えるために、混合、混練操作の前後で上記したようにふるいにかける等の操作を行ってもよい。
【0055】
上記電極材料、好ましくは正極合剤を用いて構成される蓄電池もまた、本発明の一つである。上記蓄電池としては、正極電極、負極電極及び電解液(又は固体電解質)、好ましくは、セパレータ(イオン伝導性膜)を構成要素とするものである。なお、蓄電池は本発明の一つであって、一次電池、充放電が可能な二次電池(蓄電池)、メカニカルチャージの利用、正極及び負極とは別の第3極の利用等、いずれの形態であってもよい。
【0056】
以下では、上記電極材料において用いることができる、導電助剤、有機化合物、蓄電池において用いることができる、電解液、セパレータ等について説明する。
上記導電助剤としては、例えば、導電性カーボンの1種又は2種以上を用いることができる。導電性カーボンとしては、黒鉛、アモルファス炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、金属亜鉛が好ましい。より好ましくは、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維である。
このような導電助剤の具体例としては、Vulcan XC72(Cabot社製)等を挙げることができる。
上記導電助剤は、正極における導電性を向上させる作用を有するものである。
【0057】
上記導電助剤の配合量としては、電極材料、好ましくは正極合剤(導電助剤を含む、以下同様)を100質量%とすると、0.001〜90質量%であることが好ましい。導電助剤の配合量がこのような範囲であると、本発明の電極用触媒を含む電極材料から形成される電極がより良好な電池性能を発揮することとなる。より好ましくは、0.01〜70質量%であり、更に好ましくは、0.05〜50質量%である。
【0058】
上記有機化合物としては、有機化合物の他、有機化合物塩を例示することができ、1種又は2種以上用いることができる。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、ポリアクリロニトリル含有ポリマー、ポリアクリルアミド含有ポリマー、ポリ塩化ビニル含有ポリマー、ポリビニルアルコール含有ポリマー、ポリエチレンオキシド含有ポリマー、ポリプロピレンオキシド含有ポリマー、ポリブテンオキシド含有ポリマー、ポリエチレン含有ポリマー、ポリプロピレン含有ポリマー、ポリブテン含有ポリマー、ポリヘキセン含有ポリマー、ポリオクテン含有ポリマー、ポリブタジエン含有ポリマー、ポリイソプレン含有ポリマー、アナルゲン、ベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、トルエン、ピペロンアルデヒド、カーボワックス、カルバゾール、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアセチレン含有ポリマー、ポリエチレンイミン含有ポリマー、ポリアミド含有ポリマー、ポリスチレン含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマー、ポリ(無水)マレイン酸含有ポリマー、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリ(無水)イタコン酸含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体、環化重合体、スルホン酸塩、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩、第四級ホスホニウム塩アンモニウムポリマー等が挙げられる。
【0059】
なお、上記有機化合物、有機化合物塩がポリマーの場合には、ポリマーの構成単位に該当するモノマーより、ラジカル重合、ラジカル(交互)共重合、アニオン重合、アニオン(交互)共重合、カチオン重合、カチオン(交互)共重合等により得ることができる。
上記有機化合物、有機化合物塩は、粒子同士や粒子と集電体とを結着させる結着剤として働くこともできる。上記有機化合物、有機化合物塩として好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマー、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、イオン交換膜性重合体、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマーである。
【0060】
上記有機化合物、有機化合物塩の配合量、好ましくはポリマーの配合量としては、電極材料、好ましくは正極合剤を100質量%とすると、0.01〜50質量%であることが好ましい。これら有機化合物、有機化合物塩、好ましくはポリマーの配合量がこのような範囲であると、本発明の電極用触媒を含む電極材料から形成される電極が、より良好な電池性能を発揮することとなる。より好ましくは、0.01〜45質量%であり、更に好ましくは、0.1〜40質量%である。上記有機化合物は、上記電極材料は、結着剤として働くことも可能である。結着剤を含むことで電極材料を構成する本発明の電極用触媒、導電助剤等を固定化することができ、電池のサイクル特性を向上させることができる。決着剤としては、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有樹脂や、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を用いることが好ましい。
【0061】
上記電極材料は、本発明の電極用触媒、導電助剤、有機化合物以外の成分を含む場合、その配合量は、電極材料、好ましくは正極合剤を100質量%とすると、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜7質量%であり、更に好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0062】
上記電解液としては、蓄電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、有機溶剤系電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、フッ素基含有カーボネート、フッ素基含有エーテル、イオン性液体、ゲル化合物含有電解液、ポリマー含有電解液等が好ましく、水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ性水溶液や硫酸水溶液等の酸性水溶液が挙げられる。電解液は、上記1種又は2種以上使用してもよい。無機固体電解質や、ナフィオン、ハイドロタルサイト、第四級アンモニウム塩含有ポリマーに代表される陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性化合物を使用しても良い。
【0063】
上記電解液の濃度は、電解質の濃度が0.01〜15mol/Lであることが好ましい。このような濃度の電解液を用いることで、良好な電池性能を発揮することができる。より好ましくは、0.1〜12mol/Lである。電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SO、Li(BC)、LiF、LiB(CN)、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、フッ化カリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。また、電解液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば正極や負極の保護皮膜を形成する材料や、プロピレンカーボネートを電解液に使用した場合に、プロピレンカーボネートの黒鉛への挿入を抑制する材料等が挙げられ、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、臭化エチレンカーボネート、エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、クラウンエーテル類、ホウ素含有アニオンレセプター類、アルミニウム含有アニオンレセプター等が挙げられる。添加剤は、上記1種又は2種以上使用してもよい。
【0064】
上記蓄電池におけるセパレータとは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。セパレータとして特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、セロファン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ビニロン、ポリ(メタ)アクリル酸等のマイクロポアを有する高分子量体やそれら共重合体、ゲル化合物、イオン交換膜性重合体やそれら共重合体、環化重合体やそれら共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、スルホン酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級アンモニウム塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級ホスホニウム塩ポリマーやそれら共重合体等が挙げられる。
【0065】
本発明の電極用触媒を含む電極材料から正極を形成する場合、上記蓄電池における負極としては、黒鉛;アモルファス炭素;カーボンナノフォーム;活性炭、グラフェン;ナノグラフェン;グラフェンナノリボン;フラーレン;カーボンブラック;ファイバー状カーボン;カーボンナノチューブ;カーボンナノホーン;ケッチェンブラック;アセチレンブラック;炭素繊維;気相成長炭素繊維等の炭素材料、酸化等の表面処理を施した炭素材料、ホウ素等の元素を導入した炭素材料、リチウム金属、Na;Mg;Ca;Fe;Ti;Al;Si;Ge;Sn;Pb;As;Sb;Bi;Ag;Au;Zn;Cd;Hg等の金属単体やこれらの金属とリチウムとの合金化合物等の合金化合物、SiO;CoO;Li4/3Ti5/3等のこれらの金属を含む酸化物、MoS;MnS等のこれらの金属を含む硫化物、Li2.6Co0.4等のこれらの金属を含む窒化物、NiP等のこれらの金属を含むリン化合物、これらの金属を含む珪素含有化合物等が挙げられる。
【0066】
本発明の電極用触媒は、上記のように蓄電池における電極材料の1つとして好適なものであり、導伝性物質を用いる蓄電池等の技術分野に適用される複合体、特に、空気電池や燃料電池における空気極等の蓄電池における電極を構成する電極材料として優れた性能を発揮させることができるものである。
【発明の効果】
【0067】
本発明の電極用触媒は、上述の構成よりなり、蓄電池の電極用触媒として優れた活性を発揮するものである。特に、Agを構成元素として含むものとすると、Agそのものを用いた場合に比べて少ないAgの含有量で高い触媒活性を発揮することができ、空気電池や燃料電池における空気極等の電極材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】原料合成例1で合成したNaLaTi10の結晶構造を示した図である。図中、白い球は、La原子を、色を付けた球は、Na原子を表す。
【図2】原料合成例2で合成したKLaTi10の結晶構造を示した図である。図中の球のうち、白い球は、La原子を、色を付けた球は、K原子を表す。
【図3】原料合成例3で合成したNa13の結晶構造を示した図である。図中、球は、Na原子を表す。
【図4】原料合成例4で合成したK13の結晶構造を示した図である。図中、球は、K原子を表す。
【図5】NaLaTi10にAgの導入をする前及び導入後の化合物のXRD測定結果を示した図である。
【図6】KLaTi10にAgの導入をする前及び導入後の化合物のXRD測定結果を示した図である。
【図7】Na13にAgの導入をする前及び導入後の化合物のXRD測定結果を示した図である。
【図8】K13にAgの導入をする前及び導入後の化合物のXRD測定結果を示した図である。
【図9】AgNaLaTi10、AgLaTi10とカーボンのみのものについて酸素還元電流の測定結果を示した図である。
【図10】AgNa13、Ag13とカーボンのみのものについて酸素還元電流の測定結果を示した図である。
【図11】NaLaTi10、KLaTi10、Na13、K13及びカーボンのみのものについて酸素還元電流の測定結果を示した図である。
【図12】AgNa13、30%Ag/XC72とカーボンのみのものについて酸素還元電流の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0070】
実施例・比較例における各種測定は以下の機器、条件で行った。
<XRD測定>
TTRIIIシステム(リガク社製)を用いて定法に従い、以下の条件で測定した。
走査範囲:10°−70°
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:5.000°min−1
<XRF測定>
ZSX PRIMUS IIシステム(リガク社製)を用いて測定を行った。
【0071】
原料合成例1(NaLaTi10の合成)
炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)17.97g、炭酸ランタン(ワコーケミカル社製)46.87g、酸化チタン(IV)(アナターゼ型、和光純薬工業社製)23.96g、水533gをボールミル中に添加し、ボールミル混合を行った。その後、エバポレーターにて減圧下150℃で2時間乾燥した。得られた乾燥固体を空気雰囲気下で550℃、12時間焼成を行った後、更に、空気雰囲気下で1100℃、6時間焼成を行った。焼成後の固体を粉砕してから、水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下80℃で一晩乾燥して、NaLaTi10を得た。
得られたNaLaTi10のXRD測定結果から、図1に示す層状ペロブスカイト構造を有する化合物であると推定された。
【0072】
原料合成例2(KLaTi10の合成)
炭酸カリウム(和光純薬工業社製)8.98g、酸化ランタン(−30μm、99.9%、和光純薬工業社製)16.29g、酸化チタン(IV)(アナターゼ型、和光純薬工業社製)11.97g、水223gをボールミル中に添加し、ボールミル混合を行った。その後、エバポレーターにて減圧下150℃で2時間乾燥した。得られた乾燥固体を空気雰囲気下で550℃、12時間焼成を行った後、更に、空気雰囲気下で1100℃、6時間焼成を行った。焼成後の固体を粉砕してから、水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下80℃で一晩乾燥して、KLaTi10を得た。得られたKLaTi10のXRD測定結果から、図2に示す層状ペロブスカイト構造を有する化合物であると推定された。
【0073】
原料合成例3(Na13の合成)
タングステン酸ナトリウム二水和物(ナカライテスク社製)10.28g、酸化タングステン(VI)(ナカライテスク社製)24.34g、水173gをボールミル中に添加し、ボールミル混合を行った。その後、エバポレーターにて減圧下150℃で2時間乾燥した。得られた乾燥固体を空気雰囲気下で670℃、30時間焼成を行った後、毎分1℃の冷却速度で、670℃から室温まで冷却した。冷却後の固体を粉砕してから、水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下80℃で一晩乾燥して、Na13を得た。得られたNa13のXRD測定結果から、図3に示す層状構造を有する化合物であると推定された。
【0074】
原料合成例4(K13の合成)
炭酸カリウム(和光純薬工業社製)4.15g、酸化タングステン(VI)(ナカライテスク社製)27.82g、水160gをボールミル中に添加し、ボールミル混合を行った。その後、エバポレーターにて減圧下100℃で2時間乾燥した。得られた乾燥固体を空気雰囲気下で750℃、60時間焼成を行った。焼成後の固体を粉砕してから、水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、100℃で一晩乾燥して、K13を得た。得られたK13のXRD測定結果から、図4に示すトンネル構造を有する化合物であると推定された。
【0075】
合成例1(AgNaLaTi10の合成)
硝酸銀(和光純薬工業社製)と原料合成例1で得られた粉末(NaLaTi10)を、10:1の質量比で乳鉢を用いて混合した。得られた混合物をアルミナ製の坩堝に入れ、大気雰囲気下、250℃で72時間の加熱処理を行った。加熱処理後の固体を水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下、80℃で一晩乾燥して、AgNaLaTi10を得た。
XRF測定により算出したAg交換率は、92%であった。
イオン効果によるAgの導入をする前及び導入後の化合物について、XRD測定を行った。結果を図5に示す。Agの導入をする前後でXRD測定結果に変化がみられ、Ag導入により化合物の構造が変化したことが確認された。
【0076】
合成例2(AgLaTi10の合成)
硝酸銀(和光純薬工業社製)と原料合成例2で得られた粉末(KLaTi10)を、3:1の質量比で乳鉢を用いて混合した。得られた混合物をアルミナ製の坩堝に入れ、大気雰囲気下、250℃で48時間の加熱処理を行った。加熱処理後の固体を水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下、80℃で一晩乾燥して、AgLaTi10を得た。
XRF測定により算出したAg交換率は、99%であった。
イオン効果によるAgの導入をする前及び導入後の化合物について、XRD測定を行った。結果を図6に示す。Agの導入をする前後でXRD測定結果に変化がみられ、Ag導入により化合物の構造が変化したことが確認された。
【0077】
合成例3(AgNa13の合成)
硝酸銀(和光純薬工業社製)と原料合成例3で得られた粉末(Na13)を、2:1の質量比で乳鉢を用いて混合した。得られた混合物をアルミナ製の坩堝に入れ、大気雰囲気下、230℃で24時間の加熱処理を行った。加熱処理後の固体を水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下、80℃で一晩乾燥して、AgNa13を得た。
XRF測定により算出したAg交換率は、58%であった。
イオン効果によるAgの導入をする前及び導入後の化合物について、XRD測定を行った。結果を図7に示す。Agの導入をする前後でXRD測定結果に変化がみられ、Ag導入により化合物の構造が変化したことが確認された。
【0078】
合成例4(Ag13の合成)
硝酸銀(和光純薬工業社製)と原料合成例4で得られた粉末(K13)を、2:1の質量比で乳鉢を用いて混合した。得られた混合物をアルミナ製の坩堝に入れ、大気雰囲気下、230℃で24時間の加熱処理を行った。加熱処理後の固体を水中に投入して攪拌洗浄した後、濾過を行った。得られた濾物は、減圧下、80℃で一晩乾燥して、Ag13を得た。
XRF測定により算出したAg交換率は、64%であった。
イオン効果によるAgの導入をする前及び導入後の化合物について、XRD測定を行った。結果を図8に示す。Agの導入をする前後でXRD測定結果に変化がみられ、Ag導入により化合物の構造が変化したことが確認された。
【0079】
<酸素還元能評価>
実施例1〜4、比較例1
合成例1で合成したAgNaLaTi10を7mg及びVulcan XC72(Cabot社製)13mgをN−メチルピロリドン(NMP)(2.0mL)中に分散させた分散液を、回転電極装置(北斗電工社製、HR−201)に付属の回転ディスク電極のGC(グラッシーカーボン)ディスク上に、マイクロピペットを用いて5.0μL滴下、乾燥し、電極触媒を均一に堆積した。該回転ディスク電極を0.1M水酸化カリウム水溶液中にセットし、酸素を吹き込むことで酸素飽和水溶液とした。参照電極としてHg/HgO電極を用い、0Vから−0.6Vに向けて0.0050V/secの掃引速度で掃引して酸素還元電流を測定した。
AgNaLaTi10の代わりに合成例2〜4の化合物を用いて同様の手順により酸素還元電流を測定した。また、合成例の化合物を用いずにVulcan XC72のみ(比較例1)を用いた場合についても同様の手順により酸素還元電流を測定した。これらの結果を図9、10に示す。
【0080】
比較例2〜5
上記原料合成例1〜4の化合物を用いて上記と同様の手順により酸素還元電流を測定した。結果を図11に示す。図11には、比較のため、Vulcan XC72のみのもの(比較例1)の測定結果も示した。
【0081】
比較例6、7
E−TEK社製30%Ag/XC72(型番:C8−30)と、Vulcan XC72のみのものとについて、酸素還元電流を測定した結果の比較を図12に示す。図12には比較のため、合成例3のAgNa13(実施例3)の測定結果も示した。
【0082】
図9の結果から、AgNaLaTi10、AgLaTi10を用いると、カーボンのみの場合に比べて、電流値が0からマイナス方向へ立ち上がる印加電圧の絶対値はやや増大したものの、印加電圧−0.6Vとしたときの電流値の絶対値が大きかった。また、図11のAg交換前の金属化合物の結果との比較から、これがAg交換による効果であることが確認された。
図10の結果から、AgNa13、Ag13を用いると、カーボンのみの場合に比べて、電流値が0からマイナス方向へ立ち上がる印加電圧の絶対値が小さく、また、印加電圧−0.6Vとしたときの電流値の絶対値も大きかった。また、図11のAg交換前の金属化合物の結果との比較から、これがAg交換による効果であることが確認された。
図12の結果から、AgNa13は、カーボンに30%のAgを添加したものに比べて、電流値が0からマイナス方向へ立ち上がる印加電圧の絶対値は同じであり、印加電圧−0.6Vとしたときの電流値の絶対値は大きかった。AgNa13は触媒成分に約4%のAgしか含んでいないにもかかわらず、カーボンに30%のAgを添加したものよりも優れた性能を発現することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の金属元素を含む金属酸化物を含有する電極用触媒であって、
該金属酸化物は、第1の金属元素として、周期律表第3〜6族の元素の群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、
第2の金属元素として、Ag、Co、Mn、Cu、Re、Fe、Ru、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことを特徴とする電極用触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物は、Agを含むことを特徴とする請求項1に記載の電極用触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物は、W元素を含む複酸化物又はオキソ酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電極用触媒と導電性物質とを含むことを特徴とする電極用触媒含有組成物。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109867(P2013−109867A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252061(P2011−252061)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラム「高性能蓄電デバイス創製に向けた革新的基盤研究」助成研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】