説明

電極触媒層及びこの製造方法、膜電極接合体及びこの製造方法、固体高分子形燃料電池、並びに複合粒子及びこの製造方法

【課題】高分子電解質と、触媒物質と、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子とを備える電極触媒層であって、触媒物質に酸化物系非白金触媒を用いて高い発電特性を示す電極触媒層を提供する。
【解決手段】触媒物質と、触媒物質よりも比表面積が大きく、黒鉛化処理を行った第1の炭素粒子と、第1の高分子電解質とを第1の溶媒に分散させた第1の触媒インクを調整し、第1の触媒インクを乾燥させ、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子を形成し、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と、黒鉛化処理を行っていない第2の炭素粒子と、第2の高分子電解質とを第2の溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整し、基材上に、第2の触媒インクを塗布して電極触媒層を形成することを特徴とする燃料電池用電極触媒層の製造方法により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極触媒層及びこの製造方法、膜電極接合体及びこの製造方法、固体高分子形燃料電池、並びに複合粒子及びこの製造方法に関する技術である。さらに詳しくは、非白金触媒を用いて高い発電特性を示す電極触媒層及びこの製造方法、膜電極接合体及びこの製造方法、固体高分子形燃料電池、並びに複合粒子及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとを、触媒を含む電極で水の電気分解の逆反応を起こさせ、熱と同時に電気を生み出す発電システムである。この発電システムは、従来の発電方式と比較して高効率で低環境負荷、低騒音などの特徴を有し、将来のクリーンなエネルギー源として注目されている。用いるイオン伝導体の種類によってタイプがいくつかあり、プロトン伝導性高分子膜を用いたものは、固体高分子形燃料電池と呼ばれる。
【0003】
燃料電池の中でも固体高分子形燃料電池は、室温程度で使用可能なことから、車載用電源や家庭据置用電源などへの使用が有望視されており、近年、様々な研究開発が行われている。固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以下、MEAと称すことがある)を、一対のセパレータ板で挟持した電池である。前記膜電極接合体は、高分子電解質膜の両面に一対の電極を配置させた接合体であり、前記一対のセパレータ板の一方には、前記電極の一方に水素を含有する燃料ガスを供給するガス流路が形成されると共に、前記一対のセパレータ板の他方には、前記電極の他方に対し酸素を含む酸化剤ガスを供給するためのガス流路が形成されている。
【0004】
ここで、燃料ガスを供給する側の電極を燃料極、酸化剤を供給する側の電極を空気極と呼ぶ。これらの電極は、一般に、白金系の貴金属などの触媒物質を担持したカーボン粒子と高分子電解質を積層してなる電極触媒層と、ガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とからなる。
上述のような固体高分子形燃料電池の実用化に向けての課題は、出力密度や耐久性の向上などが挙げられるが、最大の課題は低コスト化である。
【0005】
現在の固体高分子形燃料電池には、高価な白金が電極触媒として用いられており、本格普及のためには、代替材料の開発が強く求められている。特に、空気極では、燃料極よりも多くの白金を使用しているため、空気極において高い酸素還元触媒能を示す白金代替材料(非白金触媒)の開発が盛んに行われている。
空気極における非白金触媒の例として、例えば特許文献1には、遷移金属である鉄の窒化物と貴金属の混合物が記載されている。また、特許文献2には、遷移金属であるモリブデンの窒化物が記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2で記載されているような触媒物質は、酸性電解質中での酸素還元能が不充分であり、且つ、触媒物質が溶解する場合がある。
【0006】
一方、非特許文献1には、部分酸化されたタンタルの炭窒化物が記載されており、優れた安定性と触媒能を持つことを示している。しかし、この酸化物系非白金触媒は、触媒単体として高い酸素還元触媒能を示しているが、MEAとして高い出力性能を引き出すには電極触媒層の作製手法を最適化する必要がある。
白金触媒で用いられる作製手法としては、特許文献3〜5に記載されているように、複数種類の導電性炭素を電極触媒層に添加して、電極触媒層の耐久性や撥水性を高め、MEAとして高い出力性能を引き出す工夫がなされている。しかし、これらの白金触媒で用いられる作製手法は、非白金触媒を使用する場合には適していないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−44659号公報
【特許文献2】特開2005−63677号公報
【特許文献3】特開2007−059253号公報
【特許文献4】特開2005−129457号公報
【特許文献5】特開2010−123571号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Journal of The Electrochemical Society, Vol.155, No.4」 pp.B400-B406 2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、触媒物質に酸化物系非白金触媒を用いて高い発電特性を示す電極触媒層及びこの製造方法、膜電極接合体及びこの製造方法、固体高分子形燃料電池、並びに複合粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、前記課題を解決することができ、本発明を完成するに至った。
そして、本発明の請求項1に係る発明は、高分子電解質および触媒物質と、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子とを備える電極触媒層で使用される複合粒子の製造方法であって、
前記触媒物質と、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第1の炭素粒子と、第1の高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを調整する第1調整工程と、
前記第1の触媒インクを乾燥させて、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備えることを特徴とする複合粒子の製造方法。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、前記第1の炭素粒子の黒鉛化率が他の炭素粒子の黒鉛化率よりも高く、前記第1の炭素粒子のX線回折の格子面間隔Cが、6.60Å以上6.95Å以下であることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 前記複合粒子形成工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子における、触媒物質と第1の炭素粒子との質量比を、1:0.01〜1:1の範囲内にすることを特徴とする。
【0012】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、前記複合粒子形成工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子における、第1の炭素粒子と高分子電解質との質量比を、1:0.2〜1:50の範囲内にすることを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、前記複合粒子形成工程において、第1の触媒インクを乾燥させる熱処理温度範囲を、30℃以上140℃以下の範囲内にすることを特徴とする。
【0013】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、前記触媒物質は、固体高分子形燃料電池の正極として用いられる酸素還元電極用の電極活物質であって、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される少なくとも一つの遷移金属元素を含むことを特徴とする。
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した構成に対し、前記触媒物質は、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、もしくは前記遷移金属元素の酸化物であることを特徴とする。
【0014】
次に、請求項8に記載した発明は、前記請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法と、
前記複合粒子の製造方法で形成された第1の高分子電解質で包埋した複合粒子、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第2の炭素粒子、及び第2の高分子電解質を溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整する第2調整工程と、
ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜から選択される基材上に、前記第2の触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する電極触媒層形成工程と、
を備えることを特徴とする燃料電池用電極触媒層の製造方法を提供するものである。
【0015】
次に、請求項9に記載した発明は、請求項8に記載した構成に対し、前記第2調整工程は、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と前記第2の炭素粒子を無溶媒で混合させる混合工程を備えることを特徴とする。
次に、請求項10に記載した発明は、請求項9に記載した構成に対し、前記混合工程は、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と第2の炭素粒子を熱処理させる熱処理工程を備えることを特徴とする。
【0016】
次に、請求項11に記載した発明は、請求項10に記載した構成に対し、前記熱処理工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と第2の炭素粒子の熱処理温度範囲を、50℃以上180℃以下の範囲内にすることを特徴とする。
次に、請求項12に記載した発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法で製造されたことを特徴とする高分子電解質で包埋した複合粒子を提供するものである。
【0017】
次に、請求項13に記載した発明は、請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載された燃料電池用電極触媒層の製造方法で製造されたことを特徴とする燃料電池用電極触媒層を提供するものである。
次に、請求項14に記載した発明は、一対の電極触媒層で挟まれたプロトン伝導性高分子電解質膜を、一対のガス拡散層で挟持する燃料電池用膜電極接合体の製造方法において、少なくとも一方の電極触媒層が、請求項13に記載の電極触媒層からなることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供するものである。
【0018】
次に、請求項15に記載した発明は、請求項14に記載された燃料電池用膜電極接合体の製造方法によって製造されたことを特徴とする燃料電池用膜電極接合体を提供するものである。
次に、請求項16に記載した発明は、請求項15に記載の膜電極接合体を一対のガス拡散層で狭持し、その一対のガス拡散層で狭持された膜電極接合体を、更に一対のセパレータで狭持したことを特徴とする固体高分子形燃料電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高分子電解質と、触媒物質と、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子とを備える電極触媒層について、炭素粒子よりも小さい比表面積の触媒物質と、例えば黒鉛化処理を行った第1の炭素粒子に対して高分子電解質を包埋し、触媒表面のプロトン伝導性を高めるだけでなく、触媒物質と炭素粒子との接触性を高め、さらには第1の炭素粒子に比べて黒鉛化率が低い第2の炭素粒子を備えることで、電極触媒層のガス拡散性を高めることで反応活性点を増加させ、出力性能を向上させた電極触媒層及びこの製造方法、膜電極接合体及びこの製造方法、固体高分子形燃料電池、並びに複合粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る膜電極接合体の断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固体高分子形燃料電池の分解模式図である。
【図3】実施例における膜電極接合体の発電特性評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態に係る膜電極接合体について説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に記載する実施形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の実施形態の範囲に含まれうるものである。
(膜電極接合体)
図1は、本発明の実施形態に係る膜電極接合体12を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る膜電極接合体12は、高分子電解質膜1と、その高分子電解質膜1の一方の面に配置される空気極側の電極触媒層2aと、高分子電解質膜1のもう一方の面に配置される燃料極側の電極触媒層2bを備えている。
【0022】
(固体高分子形燃料電池)
図2は、本発明の実施形態に係る固体高分子形燃料電池の分解模式図である。本発明の固体高分子形燃料電池にあっては、図2に示すように、膜電極接合体12の電極触媒層2aおよび電極触媒層2bと対向させて、それぞれ空気極側のガス拡散層3および燃料極側のガス拡散層4が配置される。これによりそれぞれ空気極(カソード)5及び燃料極(アノード)6が構成される。更に、ガス拡散層3、膜電極接合体12、ガス拡散層4を間に挟んで一対のセパレータ9が配置される。一対のセパレータ9は、ガス流通用のガス流路7を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路8を備えた導電性でかつ不透過性の材料からなる。そして、燃料極6側のセパレータ9のガス流路7からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極5側のセパレータ9のガス流路7からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。そして、燃料ガスの水素と酸素ガスとを触媒の存在下で電極反応させることにより、燃料極と空気極の間に起電力を生じさせることができる。
【0023】
図2に示した固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜1、電極触媒層2a、2b、ガス拡散層3、4が一組のセパレータに狭持された、いわゆる単セル構造の固体高分子形燃料電池であるが、本発明の適用にあっては、セパレータ9を介して複数のセルを積層して構成した燃料電池でもよい。
本実施形態の少なくとも一方の電極触媒層は、高分子電解質と、触媒物質と、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子とを備える電極触媒層であって、炭素粒子よりも小さい比表面積の触媒物質と、黒鉛化処理を行った第1の炭素粒子に対して高分子電解質を包埋している。この構成によって、触媒表面のプロトン伝導性を高めるだけでなく、触媒物質と炭素粒子との接触性を高めることができる。前記電極触媒層は、さらには黒鉛化処理を行っていない若しくは第1の炭素粒子よりも黒鉛化率が低い第2の炭素粒子を備えることで、電極触媒層のガス拡散性を高めることで反応活性点を増加させ、出力性能を向上させることができる。
【0024】
ここで、高分子電解質で複合粒子の包埋を行わない従来の電極触媒層の製造方法では、電極触媒層の形成時に、比表面積の大きい炭素粒子に高分子電解質が優先的に包埋されるため、触媒表面のプロトン伝導性が低く、反応活性点を増加させることはできない。従来の製造方法でも、電極触媒層の高分子電解質を高濃度にすることで触媒表面のプロトン伝導性を高めることもできるが、電極触媒層のガス流路が減少することとなり、出力性能を向上させることは困難である。
本発明の実施形態に係る黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子としては、黒鉛化処理されている第1の炭素粒子と黒鉛化処理されていない第2の炭素粒子とが使用できる。
【0025】
本発明の実施形態に係る第1の炭素粒子としては、特に限定されないが、カーボンブラックや活性炭等を原料として不活性雰囲気下で1000℃以上の高温で熱処理し、黒鉛化処理したものを使用できる。
本発明の実施形態に係る第2の炭素粒子としては、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであればどのようなものでも構わない。例えば、前記第2の炭素粒子としてカーボンブラックや活性炭などが使用できる。カーボン粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると電極触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下したりするので、10nm以上1000nm以下が好ましい。より好ましくは、10nm以上100nm以下が良い。
【0026】
一般に黒鉛化率の高い炭素粒子は、その製造工程での熱処理のため、黒鉛化率の低い炭素粒子よりも疎水性になることが多く、スルホン酸基を持つ高分子電解質との親和性が低下する。また、黒鉛化率の高い炭素粒子は、黒鉛化率の低い炭素粒子よりも導電性が高いが、比表面積が小さい傾向にある。
【0027】
本実施形態の電極触媒層は、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子を備え、第1の炭素粒子の黒鉛化率が第2の炭素粒子の黒鉛化率よりも高く、X線回折の格子面間隔Cが6.60〜6.95Åである第1の炭素粒子を備えた電極触媒層である。この構成によって、触媒物質とともに高分子電解質で包埋される第1の炭素粒子の高分子電解質との親和性を低減させ、触媒物質を十分な高分子電解質で被覆することができる。また、第2の炭素粒子の黒鉛化率が、第1の炭素粒子の黒鉛化率よりも低い電極触媒層とすることで、十分なガス拡散性を確保し、出力性能を向上させることができる。
ここで、格子面間隔Cとは、黒鉛化率の目安となる指標であり、炭素粒子の黒鉛構造に基づいた炭素六員環平面の面間隔であり、X回折パターンから算出される炭素六員環平面のC軸方向の格子定数Cの1/2層間の距離を表すものである。
【0028】
複合粒子に含まれる第1の炭素粒子のX線回折の格子面間隔Cが6.60Åに満たない場合には、黒鉛化率が高すぎて高分子電解質への親和性が過度に低くなり、炭素粒子のみで凝集し、反応活性点を十分に増加させることは困難である。また、複合粒子に含まれる第1の炭素粒子のX線回折の格子面間隔Cが6.95Åを超える場合には黒鉛化率が低すぎて高分子電解質への親和性が高くなり、触媒表面を包埋する高分子電解質が不足し、反応活性点を十分に増加させることは困難である。
また、第2の炭素粒子の黒鉛化率が第1の炭素粒子よりも高い場合には、炭素粒子の比表面積が小さく電極触媒層が密になり、電極触媒層のガス拡散性が低下し、出力性能を十分に向上させることは困難である。
【0029】
(製造方法)
第1の高分子電解質で包埋した複合粒子は、次の第1調整工程及び複合粒子形成工程を含む工程によって製造すれば良い。
第1調整工程では、前記触媒物質と、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第1の炭素粒子と、第1の高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを調整する。
複合粒子形成工程では、前記第1の触媒インクを乾燥させて、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子を形成する。
【0030】
更に、燃料電池用電極触媒層の製造は、次の工程を備えた工程で製造すれば良い。
すなわち、第2調整工程では、前記複合粒子の製造方法で形成された第1の高分子電解質で包埋した複合粒子、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第2の炭素粒子、及び第2の高分子電解質を溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整する。
また、電極触媒層形成工程では、ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜から選択される基材上に、前記第2の触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する。
【0031】
本実施形態の電極触媒層の製造方法において、触媒物質と第1の炭素粒子と高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを調整する第1の工程にあっては、乾燥によって形成させる複合粒子において触媒物質と第1の炭素粒子と高分子電解質との質量比を、インク組成の設定で制御することができる。
高分子電解質で包埋した複合粒子における触媒物質と第1の炭素粒子との質量比は、1:0.01以上1:1以下の範囲内であることが好ましい。触媒物質に対して、第1の炭素粒子の質量比が0.01に満たない場合にあっては、触媒物質と第1の炭素粒子との接触性が低く、反応活性点を増加せることが困難であることから、出力性能が向上しない場合がある。また、触媒物質に対して、第1の炭素粒子の質量比が1を超える場合にあっては、触媒表面のプロトン伝導性が変化せず、反応活性点を増加せることが困難であることから、出力性能が向上しない場合がある。
【0032】
また、高分子電解質で包埋した複合粒子における第1の炭素粒子と高分子電解質との質量比が、1:0.2以上1:50以下の範囲内であることが好ましい。第1の炭素粒子に対して、高分子電解質の質量比が0.2に満たない場合にあっては、第1の炭素粒子を包埋し、かつ触媒表面のプロトン伝導性が向上させることが困難であり、反応活性点を増加せることが困難であることから、出力性能が向上しない場合がある。また、第1の炭素粒子に対して、高分子電解質の質量比が50を超える場合にあっては、反応活性点へのガス拡散性が阻害され、出力性能が向上しない場合がある。
【0033】
本実施形態の電極触媒層の製造方法において、触媒物質と第1の炭素粒子、高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを乾燥する複合粒子形成工程にあっては、乾燥のための熱処理の温度が30℃以上140℃以下であることが好ましい。乾燥させる温度が30℃に満たない場合にあっては、第2の触媒インクを調整する第2調整工程で、複合粒子における高分子電解質の多くが溶媒に溶解し、出力性能が向上しない場合がある。また、乾燥させる温度が140℃を超える場合にあっても、複合粒子における高分子電解質のプロトン伝導性が阻害され、出力性能が向上しない場合がある。
【0034】
本実施形態の電極触媒層の製造方法において、高分子電解質で包埋した複合粒子と第2の炭素粒子と高分子電解質とを溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整する第2調整工程にあっては、溶媒に分散させる前に、複合粒子と、第2の炭素粒子とを無溶媒で混合させる混合工程を備えることが好ましい。この混合工程を実施しない場合には、複合粒子と第2の炭素粒子との接触性が低く、反応活性点を増加せることが困難であることから、出力性能が向上しない場合がある。
【0035】
また、無溶媒で混合させる混合工程の後に熱処理工程を備えることが好ましい。この熱処理工程を実施しない場合にあっては、第2の触媒インクを調整する工程で、反応活性点が減少する場合がある。この熱処理工程にあっては、熱処理の温度が50℃以上180℃以下であることが好ましい。乾燥させる温度が50℃に満たない場合にあっては、第2の触媒インクを調整する工程で、複合粒子における高分子電解質の多くが溶媒に溶解し、また、形成した反応活性点の減少によって出力性能が向上しない場合がある。また、乾燥させる温度が180℃を超える場合にあっても、複合粒子における高分子電解質のプロトン伝導性が阻害され、出力性能が向上しない場合がある。
【0036】
複合粒子および第2の炭素粒子と高分子電解質を溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整する工程において、高分子電解質を添加せず、複合粒子に溶媒を添加して高分子電解質を一部溶出させても構わない。
本実施形態の実施形態に係る触媒物質は、一般的に用いられているものを使用してもよい。本実施形態において好ましくは、空気極における白金代替材料として固体高分子形燃料電池の正極として用いられる、Ta、Nb、Ti、またはZrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素を含む物質を使用してもよい。また、より好ましくは、これらの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、もしくは酸化物であることが好ましい。
さらに詳細に本発明の実施形態に係る膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池について説明する。
【0037】
本発明の実施形態に係る高分子電解質膜としては、プロトン伝導性を有するものであればよく、フッ素系高分子電解質、例えば、Dupont社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、Gore社製Gore Select(登録商標)などを用いてもよい。また、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホンなどの炭化水素系高分子電解質膜を用いてもよい。前記電解質膜の中でも、高分子電解質膜としてDupont社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いてもよい。
【0038】
本発明の実施形態に係る触媒インクに含まれる高分子電解質としては、プロトン伝導性を有するものであれば良く、高分子電解質膜と同様のフッ素系高分子電解質、炭化水系高分子電解質を用いてもよい。中でも、高分子電解質膜としてDupont社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いてもよい。なお、電極触媒層と高分子電解質膜の密着性を考慮すると、高分子電解質膜と同一の材料を用いることが好ましい。
【0039】
触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒粒子や高分子電解質を浸食することがなく、高分子電解質を流動性の高い状態で溶解または微細ゲルとして分散できるものあれば特に制限はない。しかし、揮発性の有機溶媒が少なくとも含まれることが望ましく、特に限定されるものではないが、アルコール類、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどの極性溶剤などを使用してもよい。また、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものを使用してもよい。
【0040】
また、溶媒として低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高く、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。高分子電解質となじみがよい水が含まれていてもよい。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
触媒物質や炭素粒子を分散させるために、触媒インクに分散剤が含まれていても良い。分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを挙げることができる。中でもアルキルベンゼンスルホン酸、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのスルホン酸型のアニオン界面活性剤は、カーボンの分散効果、分散剤の残存による触媒性能の変化などを考慮すると、好適である。
【0041】
触媒インクは必要に応じて分散処理が行われる。触媒インクの粘度、粒子のサイズは、触媒インクの分散処理の条件によって制御することができる。分散処理は、様々な装置を用いて行うことができる。例えば、分散処理としては、ボールミルやロールミルによる処理、超音波分散処理などが挙げられる。
触媒インク中の固形分含有量は、多すぎると触媒インクの粘度が高くなるため電極触媒層表面にクラックが入りやすくなり、また逆に少なすぎると成膜レートが非常に遅く、生産性が低下してしまうため、150質量%以上50質量%以下であることが好ましい。固形分は触媒物質および炭素粒子と高分子電解質からなるが、炭素粒子を多くすると同じ固形分含有量でも粘度は高くなり、少なくすると粘度は低くなる。そのため、固形分に占める炭素粒子の割合は10質量%以上80質量%以下が好ましい。また、このときの触媒インクの粘度は、0.1cP以上500cP以下程度が好ましく、さらに好ましくは5cP以上100cP以下が良い。また触媒インクの分散時に分散剤を添加することで、粘度の制御をしてもよい。
【0042】
また、触媒インクに造孔剤が含まれても良い。造孔剤によれば、電極触媒層の形成後に除去することで、細孔を形成することができる。酸やアルカリ、水に溶ける物質や、ショウノウなどの昇華する物質、熱分解する物質などを用いても良い。温水で溶ける物質であれば、発電時に発生する水で取り除いても良い。
本実施形態の電極触媒層の製造方法において、高分子電解質で包埋した複合粒子は、触媒物質と炭素粒子、高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを転写シートに塗布し、乾燥させることで得てもよい。または、乾燥雰囲気中にスプレーすることでも複合粒子を直接得てもよい。
【0043】
本実施形態の電極触媒層の製造方法において、高分子電解質で包埋した複合粒子および第2の炭素粒子と高分子電解質を溶媒に分散させた第2の触媒インクから電極触媒層を作製する電極触媒層形成工程にあっては、触媒インクは基材上に塗布され、乾燥工程を経て電極触媒層が形成される。基材として、ガス拡散層もしくは転写シートを用いた場合には、接合工程によって高分子電解質膜の両面に電極触媒層は接合される。また、本実施形態の膜電極接合体にあっては、基材として高分子電解質膜を用い、高分子電解質膜の両面に直接触媒インクを塗布し、高分子電解質膜両面に直接電極触媒層を形成してもよい。
このとき、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などを用いてもよい。
【0044】
本実施形態の電極触媒層の製造方法における基材としては、ガス拡散層、転写シートもしくは高分子電解質膜を用いてもよい。ガス拡散層としては、ガス拡散性と導電性とを有する材質のものを用いてもよい。また転写シートとしては、転写性がよい材質であればよく、例えばフッ素樹脂製のフィルムを用いてもよい。
基材として転写シートを用いた場合には、高分子電解質膜に電極触媒層を接合後に転写シートを剥離し、高分子電解質膜の両面に触媒層を備える膜電極接合体としてもよい。基材としてガス拡散層を接合工程後にガス拡散層である基材を剥離する必要は無い。
【0045】
ガス拡散層およびセパレータとしては、通常の燃料電池に用いられているものを用いてもよい。具体的にはガス拡散層としてはカーボンクロス、カーボンペーパー、不織布などのポーラスカーボン材を用いてもよい。セパレータとしては、カーボンタイプあるいは金属タイプのものなどを用いてもよい。燃料電池としては、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより製造される。
【実施例1】
【0046】
本発明に係る燃料電池用電極触媒層の製造方法について、以下に具体的な実施例および比較例を挙げて説明する。ただし、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
〔第1の触媒インクの調整〕
触媒物質(TaCNO、比表面積 約10m/g)と、カーボンブラックに対して熱処理を行い、黒鉛化率を高めた第1の炭素粒子(C=6.87Å)と、20質量%高分子電解質溶液(ナフィオン:Nafion(登録商標)、Dupont社製)を溶媒中で混合し、遊星型ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ・ジャパン社製)で分散処理を行った。触媒インクの組成比は、触媒物質と炭素粒子の質量比で1:0.1とし、炭素粒子と高分子電解質の質量比で1:0.8とした。溶媒は超純水、1−プロパノールを体積比で1:1とした。PTFEシートを第1の触媒インクの乾燥用の基材として使用した。
【0047】
〔高分子電解質で包埋した触媒物質の形成方法〕
ドクターブレードにより、第1の触媒インクを基材上に塗布し、そして大気雰囲気中80℃で5分間乾燥させた。その後、高分子電解質で包埋した複合粒子を基材上から回収した。
〔複合粒子と、炭素粒子との混合および熱処理〕
複合粒子と第2の炭素粒子(Ketjen Black(登録商標)、商品名:EC−300J、ライオン社製)を遊星型ボールミルにて無溶媒で混合した。その後、複合粒子および炭素粒子の混合物を、100℃にて熱処理を行った。混合物の組成比は、触媒物質と複合粒子中に含まれない炭素粒子の質量比で1:0.4とした。
【0048】
〔第2の触媒インクの調整〕
複合粒子と炭素粒子の混合物に熱処理を加えたものと、20質量%高分子電解質溶液を溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。触媒インクの組成比は、触媒物質と、炭素粒子と、高分子電解質との質量比が1:0.5:0.5としたものを第2の触媒インクとした。溶媒は超純水と、1−プロパノールとを体積比で1:1とした。PTFEシートを転写シートとして使用した。
〔電極触媒層の形成方法〕
ドクターブレードにより、第2の触媒インクを転写シートに塗布し、そして大気雰囲気中80℃で5分間乾燥させた。電極触媒層の厚さは、触媒物質担持量が0.5mg/cmになるように調節し、空気極側の電極触媒層2を形成した。
【0049】
(実施例2)
〔電極触媒層の作製方法〕
第2の触媒インクを調整する工程において、カーボンブラックに対して熱処理を行い、黒鉛化率を高めた第2の炭素粒子(C=6.89Å)を使用したこと以外は実施例1と同様に作製し、空気極側の電極触媒層2を形成した。
(比較例)
〔触媒インクの調整〕
触媒物質と炭素粒子、および20質量%高分子電解質溶液を溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行った。触媒インクの組成比は、触媒物質と炭素粒子および高分子電解質の質量比が1:0.5:0.5としたものを触媒インクとした。溶媒は超純水、1−プロパノールを体積比で1:1とした。また、基材には、実施例と同じ転写シートを使用した。
【0050】
〔電極触媒層の作製方法〕
実施例と同様の手法で、転写シートに触媒インクを塗布し、乾燥させた。電極触媒層の厚さは触媒物質担持量が0.5mg/cmになるように調節し、空気極側の電極触媒層2aを形成した。
〔燃料極用電極触媒層の作製〕
実施例および比較例について、白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液を溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行ったものを触媒インクとした。触媒インクの組成比は、白金担持カーボン中のカーボンと、高分子電解質の質量比で1:1とし、溶媒は超純水、1−プロパノールを体積比で1:1とした。電極触媒層2aと同様の手法で、基材に触媒インクを塗布し、乾燥させた。実施例および比較例ともに、電極触媒層の厚さは触媒物質担持量が0.3mg/cmになるように調節し、燃料極側の電極触媒層2bを形成した。
【0051】
(膜電極接合体の作製)
実施例および比較例において作製した空気極側電極触媒層2aが形成された基材と、燃料極側電極触媒層2bを形成された基材を、各々5cmの正方形に打ち抜き、高分子電解質膜(ナフィオン(登録商標)212、Dupont社製)の両面に対面するように転写シートを配置し、130℃でホットプレスを行い、膜電極接合体12を得た。得られた膜電極接合体12の両面に、ガス拡散層として目止め層が形成されたカーボンクロス3,4を配置し、更に、一対のセパレータ9で挟持し、単セルの固体高分子形燃料電池を作製した。
【0052】
〔発電特性〕
(評価条件)
エヌエフ回路設計ブロック社製KIT−50156の燃料電池測定装置を用いて、セル温度80℃で、アノードおよびカソードともに100%RHの条件で発電特性評価を行った。燃料ガスとして純水素、酸化剤ガスとして純酸素を用い、流量一定による流量制御を行った。
【0053】
(測定結果)
図3に実施例1と実施例2、および比較例で作製した膜電極接合体の発電特性評価結果を示す。この図3では、0.3A/cm、1.0A/cmにおけるセル電圧を示した。
図3から分かるように、実施例1および実施例2で作製した膜電極接合体は、比較例で作製した膜電極接合体よりも優れた発電評価を示した。また、実施例1は実施例2よりも優れた発電性能を示した。これは、実施例1および2では、触媒物質および炭素粒子の一部に対して高分子電解質を包埋することで触媒表面のプロトン伝導性が高められ、反応活性点が増加したためと推察される。これに対して、比較例では、触媒物質と炭素粒子および高分子電解質を一段階で溶媒中に分散させるため、触媒物質よりも比表面積の大きい炭素粒子に対して高分子電解質が優先的に吸着したことで、触媒表面では十分なプロトン伝導性が確保されなかったためと推察される。また、実施例2では第2の炭素粒子の黒鉛化率が高すぎて、実施例1よりもガス拡散性が低下したためと推察される。以上より、本発明によれば、高い発電特性を示す膜電極接合体を有する固体高分子形燃料電池が提供されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の電極触媒層の製造方法によれば、触媒物質に酸化物系非白金触媒を使用した電極触媒層において、従来の製造方法よりも触媒物質の潜在能力を引き出し、出力性能の向上した固体高分子形燃料電池を提供することができるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。したがって、本発明は高分子形燃料電池、特に家庭用燃料電池システムや燃料電池自動車などにおける、燃料電池単セルやスタックに好適に活用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 固体高分子電解質膜
2a 電極触媒層
2b 電極触媒層
12 膜電極接合体
3 ガス拡散層
4 ガス拡散層
5 空気極(カソード)
6 燃料極(アノード)
7 ガス流路
8 冷却水流路
9 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質および触媒物質と、黒鉛化率の異なる少なくとも2種類の炭素粒子とを備える電極触媒層で使用される複合粒子の製造方法であって、
前記触媒物質と、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第1の炭素粒子と、第1の高分子電解質を溶媒に分散させた第1の触媒インクを調整する第1調整工程と、
前記第1の触媒インクを乾燥させて、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備えることを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の炭素粒子の黒鉛化率が他の炭素粒子の黒鉛化率よりも高く、前記第1の炭素粒子のX線回折の格子面間隔Cが、6.60Å以上6.95Å以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
前記複合粒子形成工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子における、触媒物質と第1の炭素粒子との質量比を、1:0.01〜1:1の範囲内にすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記複合粒子形成工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子における、第1の炭素粒子と高分子電解質との質量比を、1:0.2〜1:50の範囲内にすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記複合粒子形成工程において、第1の触媒インクを乾燥させる熱処理温度範囲を、30℃以上140℃以下の範囲内にすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法。
【請求項6】
前記触媒物質は、固体高分子形燃料電池の正極として用いられる酸素還元電極用の電極活物質であって、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される少なくとも一つの遷移金属元素を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法。
【請求項7】
前記触媒物質は、Ta、Nb、Ti、Zrから選択される、少なくとも一つの遷移金属元素の炭窒化物の部分酸化物、もしくは前記遷移金属元素の酸化物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法と、
前記複合粒子の製造方法で形成された第1の高分子電解質で包埋した複合粒子、前記触媒物質よりも比表面積が大きい第2の炭素粒子、及び第2の高分子電解質を溶媒に分散させた第2の触媒インクを調整する第2調整工程と、
ガス拡散層、転写シートおよび高分子電解質膜から選択される基材上に、前記第2の触媒インクを塗布して電極触媒層を形成する電極触媒層形成工程と、
を備えることを特徴とする燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項9】
前記第2調整工程は、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と前記第2の炭素粒子を無溶媒で混合させる混合工程を備えることを特徴とする請求項8に記載した燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項10】
前記混合工程は、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と第2の炭素粒子を熱処理させる熱処理工程を備えることを特徴とする請求項9に記載した燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理工程において、第1の高分子電解質で包埋した複合粒子と第2の炭素粒子の熱処理温度範囲を、50℃以上180℃以下の範囲内にすることを特徴とする請求項10に記載した燃料電池用電極触媒層の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した複合粒子の製造方法で製造されたことを特徴とする高分子電解質で包埋した複合粒子。
【請求項13】
請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載された燃料電池用電極触媒層の製造方法で製造されたことを特徴とする燃料電池用電極触媒層。
【請求項14】
一対の電極触媒層で挟まれたプロトン伝導性高分子電解質膜を、一対のガス拡散層で挟持する燃料電池用膜電極接合体の製造方法において、
少なくとも一方の電極触媒層が、請求項13に記載の電極触媒層からなることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載された燃料電池用膜電極接合体の製造方法によって製造されたことを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
【請求項16】
請求項15に記載の膜電極接合体を一対のガス拡散層で狭持し、その一対のガス拡散層で狭持された膜電極接合体を、更に一対のセパレータで狭持したことを特徴とする固体高分子形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−199016(P2012−199016A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61207(P2011−61207)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/酸化物系非貴金属触媒」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】