説明

電気および熱伝導性複合体

本発明は、物質の電気伝導性および/または熱伝導性を高めるための非伝導物質中の特定のクラスの炭素構造物の使用に関する。本発明は、カーボンコーンおよびカーボンディスクとして公知のマイクロドメインカーボン粒子のクラスが、約1重量%の臨界充填レベルを有してプラスチック中の優れた伝導性充填材であり、この充填材は、カーボンナノチューブの性能に匹敵するという発見に基づく。しかしながら、これらの炭素構造物は、カーボンブラックと同じコストで工業規模に製造され得る。したがって、充填材としてカーボンブラックの好ましいコストでの純粋なマトリックス材料とほぼ同じ密度および機械的性質を有する熱および電気伝導性複合材料を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気および/または熱伝導性を高めるためのポリマー中の特定クラスのカーボンナノ粒子の使用に関する。より具体的には、本発明は、ポリマー中のカーボンナノコーンおよびナノディスクの使用に関する。
【0002】
20世紀後半の1つの主要な技術躍進は、広範な構造適用において金属と置き換わるのに適切な特性を有する種々のプラスチックの開発であった。プラスチックの構造材料としての重要な利点は、多種の金属と比較して、実質的に低質量および低価格での適切な硬性または剛性である。
【0003】
プラスチックは、合成もしくは天然の非金属材料の巨大なクラスに関する共通の特徴であり、必須の成分として高分子量の有機物質、通常は半合成もしくは完全に合成の樹脂または有機ポリマーを含む。必須の高分子化合物は、しばしば、基礎プラスチックと表され、プラスチックは通常、基礎プラスチックがどの種類の化合物であるかによって分類される。通常の種類のプラスチックは:アクリル、アミノ、ビチュメン、カゼイン、セルロース、エポキシ、フルフラール、ハロカーボン、イソシアネート、改質ゴム、フェノール、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、シリコーン、スチレンおよびビニルである。本発明は、これら全ての種類のプラスチックに関する。
【0004】
基礎プラスチックは、他の化合物、例えば、可塑剤、充填剤、安定剤、潤滑剤、顔料、染料などと混合して、広範な物理的および化学的特性(例えば、耐食性、化学的不活性、外見、抗張力、弾性率、強度、耐熱性など)を有するプラスチックを提供し得る。全てのプラスチックに共通して、完成した状態で固体であるが、一部の製造もしくは加工段階では、流体状態で成形または形成され得る。したがって、プラスチックは広範な適用に対して調整される特性および物理的形状を有し得る非常に多用途の化合物クラスである。プラスチックは、今日、日常生活において包装材料、衣類、車両の構成部品、電子機器、建設材料などとして広範な用途を見出している。
【0005】
しかしながら、金属がプラスチックに勝って有する1つの重大な特性がある;優れた電気および熱の伝導性である。プラスチックは、1014〜1018Ω/sqの範囲にある典型的な表面抵抗率を有する驚くほど優れた電機絶縁体である。相対的に、金属は、10−5〜10−3Ω/sqの範囲にある表面抵抗率を有し、プラスチックの場合の1017〜1023分の1である。
【0006】
プラスチックのこの極度の絶縁特性は、それらが他の物質との滑り接触に曝され、強力な磁界などに曝される場合、静電気電荷の蓄積を受け易い。この現象は、静電気として知られており、約30.000〜40.000Vの局所電位差異を蓄積するのに適した条件を備え得る。この静電位は、プラスチック材料が別の物質と十分に低い表面電位にある別の物質と接触する場合に、火花を出して放出され得る。日常生活において、放電に脅かされ得る適用は多くある。例えば、火花は、可燃性の化合物または起爆物(例えば、車両中の燃料経路、エアバッグなど)を含む環境において危険である。また、マイクロエレクトロニックデバイス(例えば、コンピュータチップ、LED、回路ボード)は、わずか20Vの放電により修理できないほどの損害を受け得る。そのような適用はまた、温度感受性である。燃料および起爆剤は、明白な理由で、引火温度に近くへの意図せぬ加熱に曝されてはならず、コンピュータチップはそれらの温度許容度、近くのエネルギー密度および温度などで作動してはならない。
【0007】
したがって、プラスチックを電気および/または熱伝導性にするための良い解決策が見出されれば、プラスチックに対する適用は実質的に広くなる。伝導性プラスチックは、金属または被覆剤に勝る数多くの利点を有する。完成部品は、重量がより軽く、取り扱いがより容易であり、輸送がより低コストとなる。これらの成形加工は、通常より容易でかつより安価であり、凹み、欠け、および疵に曝されることが少ない。一部の化合物は、高価でかつ時間を浪費する二次的な彩色工程を排除して、同定または美観のために予め色づけされ得る。
【0008】
理想的には、プラスチックを伝導性にするための解決策は、材料伝導性のこれら4つの分類に従う完成したプラスチック成分の電気伝導性を調整する機会を提供すべきである:
10〜1012Ω/sqの範囲にある表面抵抗率を有する帯電防止化合物。これらの化合物は、初充電を抑制し、電荷蓄積を最小限にするが、中〜高度の漏洩電流を絶縁する。
【0009】
10〜10Ω/sqの範囲にある表面抵抗率を有する散逸性化合物。これらの化合物は、いずれの電荷蓄積も防ぎ、高漏洩電流を絶縁し、ヒト接触に対する/ヒト接触からの静電気放電を防ぐ化合物。
【0010】
10〜10Ω/sqの範囲にある表面抵抗率を有する伝導性化合物。これらの化合物は、いずれの電荷蓄積も防がず、高速運動から電荷蓄積を散逸し、電荷ブリードオフに対する接地パスを提供する。
【0011】
10〜10Ω/sqの範囲にある表面抵抗率を有する静電気遮蔽化合物。これらの化合物は、破損した電子成分からの高静電気放電電圧を遮断し、電磁干渉/無線周波干渉を遮蔽し、電荷ブリードオフに対する優れた接地パスを提供する。
【背景技術】
【0012】
(先行技術)
現在、適切な伝導特性を有する適切な基礎プラスチックがわずかに見られるが、それらにはなんらかの制限がある。しかしながら、基礎プラスチックを伝導性充填剤を充填することにより、プラスチックが適切な電気および熱伝導性を与え得るということは、数年前から知られていた。
【0013】
当該技術分野において、基礎プラスチックの伝導性は、充填剤を充填するに連れ、S字濃度曲線で上昇するということが十分に確立されている:つまり、プラスチックのバルク伝導性は、充填レベルを臨界充填レベルまで上昇させるとほとんど変化しない。この臨界充填レベルの辺りでわずかに充填剤を加えるとこの伝導性は非常に急速に上昇し、この臨界充填レベルの上では、この伝導性は、充填レベルの増加に対して徐々に非感受性を増す。この動きの理由は、高バルク伝導性が、バルクプラスチックにおける多くの長い伝導性経路の存在を必要とするためであると考えられる。そしてこれは、この充填がランダムに分配される場合に伝導性粒子が長鎖を形成するのに適当なほど十分に高くなるまで得られない。これは、臨界充填レベルが充填化合物のアスペクト比を拡大するに連れて低下する傾向がある理由の説明であると考えられる。
【0014】
何らかの形態の金属が、所望の電気および熱伝導性を与えるために、基礎プラスチック中の伝導性充填剤として広範に使用されてきた。しかしながら、多くの適用に対し、金属伝導性充填剤は、重量および製造費用の望ましくない増加をもたらす。
【0015】
金属伝導性充填剤と関連付けられる重量およびコストの問題は、元素状炭素をプラスチックへの伝導性添加物として使用することにより解決し得ることが公知である。最も一般的な炭素充填剤は、カーボンブラックであり、比較的安価であり、多くの用途に対し非常に役立つ。
【0016】
あいにく、カーボンブラックは、10〜50重量%の範囲における望ましくないほど高い臨界充填レベルで満たされる。そのような高い充填レベルにおいて、カーボンブラック粒子は、プラスチックの機械的特性を深刻に低下させる。しばしば、このようなプラスチックは全く使用に適さず、典型的には、しばしばプラスチック部品の最も重大な特性である成型をし得ない。したがって、カーボンブラックを充填したプラスチックは、限定的な用途のみを見出した。
【0017】
Carbon Nanotechnologies Inc.of Houston,USAは、充填の問題に対する解決策を提供する。それらのホームページ(http://www.cnanotech.com/を参照)によると、カーボンナノチューブは、1重量%以下の充填レベルにて十分な伝導性を提供する。そのように低い充填レベルにおいて、基礎プラスチックは、実質的にその機械的特性を維持する。伝導性充填剤としてのカーボンナノチューブのこの好都合な特性は、非常に高いアスペクト比、およびマトリックス材料中の長鎖に自己集合する傾向によると考えられている。
【0018】
カーボンナノチューブの主要な欠点は、現在までのところ、大規模な生産プロセスは、見出されていない。したがって、カーボンナノチューブは、世界市場において、非常に供給が不足しており、したがって、全ての用途に対して受容し得ないほど高価であり、この生成物の価格が製品の価格が消費者にとっての課題である。
【0019】
したがって、マトリックス材料の機械的特性に有害な充填レベルを使用せずに適切な電気および熱伝導性を有するプラスチックならびに任意の他の本質的に電気または熱絶縁性材料を提供し得る、直ちに利用可能でかつ安価な伝導性充填剤に対する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
(発明の目的)
本発明の主要な目的は、マトリックス材料の固有の機械的特性および成形能力に実質的に有害ではない充填レベルにおいて、電気および/もしくは熱伝導性を有するポリマーならびに/または任意の他の本質的に電気もしくは熱絶縁性材料を提供する方法を提供することである。
【0021】
別の目的は、ポリマーおよび任意の他の電気および熱絶縁性材料中の使用のために新規の伝導性充填剤を提供して、それらに優れた熱および/または電気伝導性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要旨)
本発明の目的は、本発明の特許請求の範囲および/または以下の記載において規定されるような特徴によって得られ得る。
【0023】
本発明は、カーボンコーンおよびディスクとして公知のマイクロドメインカーボン粒子のクラスが、プラスチック中の約1重量%の臨界充填レベルを有する優れた伝導性充填剤であるという発見に基づいており、カーボンナノチューブの性能と匹敵する。しかしながら、これらの炭素構造物は、カーボンブラックを充填したプラスチックの好ましいコストで、純粋な基礎プラスチック材料とほぼ同じ密度および機械的特性を有する熱および電気伝導性プラスチック材料を提供し得るように、カーボンブラックとほぼ同質かつ同コストで工業的に生産され得る。
【0024】
上記の発見はまた、他の本質的に絶縁性の材料を電気および/または熱伝導性するためにも適用される。したがって、本発明は、本質的に電気および/または熱絶縁性である任意の考え得るマトリックス材料に伝導性充填剤としてこの特定クラスのマイクロドメインカーボン粒子の使用に関する。例として、これらに限定されないが、一般に、プラスチック、ゴム、ウッドポリマー、紙、厚紙、ガラス、セラミック、エラストマーおよびポリマーなどが挙げられる。
【0025】
用語カーボンコーンは、マイクロドメインもしくはそれ未満(ナノドメイン)における、特定クラスの炭素構造物を表すために使用される。これらの構造は、1〜5個の五角形を、黒鉛シートに挿入することによって、したがって、シートを折り曲げてコーンを形成することによって形成される。黒鉛の六角形の構造中の五角形の数が、折り曲げ角度を決定する。図1において、これらのカーボンコーンのいくつかの透過電子影像を示している。対称を考慮すると、60度、120度、180度、240度および300度の合計回位(屈曲)に対応する5個より多くの円錐構造で有り得ないことを示し得る。全てのコーンが、頂点で閉じられている。これらのコーンに加えて、本発明において使用される炭素材はまた、0℃の合計回位(純粋な六角形の黒鉛構造)に対応する平らな円形黒鉛シートを含む。これらの平らな黒鉛円形シートは、本適用においてカーボンディスクと呼ばれる。コーンおよびディスクの投影角度を図2に示している。これらの炭素構造物の直径は、典型的には5マイクロメートル未満、および厚さ100ナノメートル未満であり、典型的なアスペクト比は1〜50の範囲にある。
【0026】
これらの炭素構造物の一部の物理的存在および大規模にそれらを生成する方法を、Kvaerner Technology and Research Limitedがパイロットプラントで炭化水素からカーボブラックを生成するためのプラズマベースの熱分解方法を開発しているときに偶然に発見した。すなわち、本生産方法は、2段階熱分解プロセスとして記載され得、ここで、炭化水素の供給材料をまずプラズマゾーンに導き、それにより第一の緩やかな熱分解工程を施し、ここで炭化水素は、部分的にのみ熱分解または分解されて多環式芳香族炭化水素(PAH)を形成し得、その後に第二の十分に集約したプラズマゾーンにあるPAHに入り、炭化水素の元素状炭素と水素とへの分解を完了する。この2段階熱分解アプローチにより、これらのカーボンコーンおよびディスク構造物および少量の他のマイクロドメイン構造物(例えば、ナノチューブおよびフラーレン)によって強く影響されるカーボンマイクロ構造物の90%より大きな収率で得られる。この残り、つまり約10重量%は、通常のカーボンブラックである。対照的に、従来の熱分解方法において、炭化水素は完全に1つの熱分解工程中で分解される。この場合、主要な生成物はカーボンブラックであるが、マイクロドメイン構造物は、微量にのみ存在する。カーボンブラックを形成するための熱分解による炭化水素の分解がカーボンブラックを生産するための確立された工業的な方法であるため、これらのマイクロドメインカーボンコーンおよびディスク構造物は、通常のカーボンブラックとおよそ同じ規模および生産コストで工業規模で生産され得るということが明らかであるということを留意すべきである。
【0027】
Kvaernerプロセスは、通常、少なくとも90重量%のマイクロドメイン炭素構造物を含み、残りが従来のカーボンブラックである混合物を与える。この混合物のマイクロドメインフラクションは、通常、約80%のディスクおよび20%のコーンを含む。ナノチューブおよびフラーレンは、微量で存在するのみである。したがって、コーンおよびディスクは、機能的構造物であり、本発明は、伝導性充填剤としてのそれらの使用に関する。これらの炭素構造物は、純粋なコーンから純粋なディスクまでの範囲にある任意の可能な混合物中の伝導性充填剤として機能すると考えられる。以下に提示される検証実験は、熱分解反応物からのものである物質、すなわち、約90%のコーンおよびディスクと、微量のナノチューブおよびフラーレンと、約10%のカーボンブラックとの混合物である物質を使用した。したがって、物質が精製されてカーボンブラックフラクションを除去/強力に低減する場合は、本発明が、より好ましくはより低い充填レベルで機能することが期待される。
【0028】
この特定の生産方法(Kvaernerプロセス)と5つのうちの2つの可能なカーボンコーン構造物は、一連の特許で世界的に保護されている。本出願人はこれらの特許権およびこの技術を開発する権利を獲得した。このシリーズのヨーロッパ特許は、EP1017622であり、本出願にその全体が参考として援用される。本生産方法およびこれらの炭素構造物の性質が、この参考文献に、全体的に提示されている。
【0029】
これらの炭素構造物のアスペクト比は約50までであるため、カーボンコーンおよびディスク構造物は、約1のアスペクト比を有するカーボンブラック粒子よりも著しく有効であることが期待される。しかしながら、カーボンナノチューブは、ポリマーマトリックス中の非常に長い鎖への付加形態で、100〜1000の範囲のアスペクト比を有し、従来の教示の観点から、カーボンナノチューブとしてのこれらの炭素構造物が、プラスチック中の伝導性充填剤としても同等にうまく機能するということは、非常に意外である。それにもかかわらず、この意外な際立つ性能は、1重量%未満の充填レベルを有する新規の電気および熱伝導性プラスチックの生産を可能とする。
【0030】
カーボンコアおよびディスクは、本発明にしたがって、これらに限定されないが:アクリル、アミノ、ビチュメン、カゼイン、セルロース、エポキシ、フルフラール、ハロカーボン、イソシアネート、改質ゴム、フェノール、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、シリコーン、スチレンおよびビニルをベースにしたプラスチックを含むあらゆる公知の種類のプラスチック中に使用され得る。プラスチックに加え、これらの炭素構造物は、本質的に絶縁性であるいかなるマトリックス材料中においても伝導性充填剤として有効であり得る。このカーボン材料の充填レベルは、微小レベルからマトリックス材料と混合し得るあらゆるレベルまでの考え得るあらゆるレベルであり得、実際には、約0.001重量%〜約80重量%以上であり得る。マトリックス材料の機械的性質が可能な限り維持されるべき装置、ならびに、低から中程度の電気伝導性が要求される場合には、充填レベルが低いほど好ましい。低い充填とは、0.001〜約5重量%、好ましくは、0.01〜2重量%、より好ましくは、0.02〜1重量%の範囲を意味する。熱伝導性を高めるには、中から高充填レベルを使用するのが好ましい。中から高充填レベルとは、約5〜80重量%を意味する。最大伝導性が望まれ、マトリックス材料のもともとの機械的性質が、不可欠ではない装置に対しては、それより高い充填レベルが好ましい。
【0031】
約1重量%の充填レベルは、ほとんどのプラスチックおよびエラストマー材料を、表面抵抗率が10〜10Ω/sqの範囲である伝導性成分として分類されるのに十分に伝導性にする。充填レベルを調節することにより、当然ながら、複合材料の電気および/または熱伝導性を調整することが可能である。全ての従来的かつ結果として生ずる新規の補助化合物(例えば、可塑剤、充填剤、安定剤、潤滑剤、顔料、染料、接着剤などは、本発明に従う伝導性充填剤に関連して使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本発明の好ましい実施形態の形で、より詳細に説明され、証明される。しかしながら、この実施形態は、本発明の限定として見なされるべきではない。上記のように、全ての従来的なプラスチックが使用され、所与の伝導性特性が、静電気遮蔽材料に対する典型的な帯電防止材料中に見出された。
【0033】
(本発明の証明)
本発明を証明するために、1重量%および10重量%のマイクロドメイン炭素材と、それぞれ混合したポリエステルをベースにした2種の調合物を製造した。
【0034】
この混合を手で攪拌することにより実施した。両混合物に対し、このポリエステルは、Polylite440−800(Reichold GmbH製)であった。1重量%の炭素材を含むサンプルを、約5分間かけて手で攪拌して、均質な混合物を得、室温にて約24時間かけて、ポリマーマトリックスを厚さ4.5mmの完成したポリエステルラミネートへと硬化させた。10重量%の炭素材を含むサンプルは、均質化するのがより困難であった。ポリマーを段階的に充填する必要があり、この攪拌は、合計で約15分かかった。この硬化プロセスはまた、72時間(48時間は室温にて、そして24時間は50℃にて)かかったので、少し面倒であった。完成したポリエステルラミネートは、厚さが3.5mmであった。
【0035】
Polylite440−800ポリエステルラミネートの機械的性質を、充填条件および非充填条件について表1に記載した。
【0036】
サンプルの体積抵抗率を、1重量%および10重量%の充填材を含むサンプルについて、それぞれ769Ωcmおよび73Ωcmと決定した。これらの抵抗率を、1016Ωcmの純粋なPolylite440−800の抵抗率と比較する場合、1重量%のサンプルは、遮蔽複合体と分類される材料順の抵抗率を有することが明らかである。これは、充填材としてカーボンナノチューブをベースにした複合体に匹敵し得る結果である。
【0037】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
(図のリスト)
【図1】図1は、本発明において使用されるカーボンコーンのいくつかの透過電子顕微鏡影像である。
【図2】図2は、それぞれ300度、240度、180度、120度、および60度の合計回位を有するカーボンコーンの可能な構成を示している略図である。この図はまた、0度の合計回位を有する黒鉛シートを含む。
【図3】図3は、本発明に従う、1%のカーボンコーン材料を充填したポリエステルマトリックスの透過電子顕微鏡影像である。
【図4】図4は、本発明に従う、10%のカーボンコーン材料を充填したポリエステルマトリックスの透過電子顕微鏡影像である。
【図5】図5は、通常のカーボンブラックの3種の性質と比較したカーボンコーンの充填の関数としてポリエステルマトリックスの体積抵抗率を示しているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気および熱伝導性複合材料であって、該複合体のマトリックス材料は、本質的に非伝導物質であり、そして該マトリックス材料は、それを熱および電気伝導性充填材で充填することにより伝導性になり、該充填材は、カーボンコーンおよび/またはディスクを含む、マイクロドメイン炭素材であることを特徴とする、電気および熱伝導性複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料であって、
前記マイクロドメイン炭素構造物が、以下60度、120度、180度、240度および300度のうちの1種または数種の合計回位(屈曲)を有するコーンを形成するように折り重なる多少の円形黒鉛炭素シートを含むことを特徴とする、複合材料。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料であって、前記マイクロドメイン炭素構造物が、合計回位0度の多少の平らな円形黒鉛シートを含むことを特徴とする、複合材料。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料であって、前記マイクロドメイン炭素構造物が、以下60度、120度、180度、240度および300度のうちの1種または数種の合計回位(屈曲)のコーンを形成するように折り重なる多少の円形黒鉛炭素シートと、合計回位0度の多少の平らな円形黒鉛シートとの混合物を含むことを特徴とする、複合材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料であって、前記マイクロドメイン炭素構造物が、直径が5マイクロメートル未満および厚さが100ナノメートル未満であることを特徴とする、複合材料。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料であって、前記マイクロドメイン炭素構造物が、混合物を与える基礎プラスチックを充填かつ混合し、充填レベルが、0.001〜80重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜2%であることを特徴とする、複合材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料であって、前記マトリックス材料が、本質的に熱および/または電気絶縁性の任意の固形材料であることを特徴とする、複合材料。
【請求項8】
請求項7に記載の複合材料であって、前記マトリックス材料が、ポリマー化合物、エラストマー化合物またはこれらのうちの1つ以上の混合物であることを特徴とする、複合材料。
【請求項9】
請求項7に記載の複合材料であって、前記マトリックス材料が、ウッドポリマー化合物であることを特徴とする、複合材料。
【請求項10】
請求項7に記載の複合材料であって、前記マトリックス材料が、セラミックまたはガラスであることを特徴とする、複合材料。
【請求項11】
請求項7に記載の複合材料であって、前記マトリックス材料が、以下の種類:アクリルベースプラスチック、アミノベースプラスチック、ビチュメンベースプラスチック、カゼインベースプラスチック、セルロースベースプラスチック、エポキシベースプラスチック、フルフラールベースプラスチック、ハロカーボンベースプラスチック、イソシアネートベースプラスチック、改質ゴムベースプラスチック、フェノールベースプラスチック、ポリアミドベースプラスチック、ポリエステルベースプラスチック、ポリエチレンベースプラスチック、シリコーンベースプラスチック、スチレンベースプラスチック、およびビニルベースプラスチックのうちの1つの基礎プラスチックポリマーを硬化させることによって形成されるプラスチックであることを特徴とする、複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−519091(P2008−519091A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538848(P2007−538848)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000415
【国際公開番号】WO2006/052142
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507143945)
【Fターム(参考)】