説明

電気かみそり

【課題】寝ている体毛の外刃に対する導入性能のさらなる向上を図ることのできる電気かみそりを得る。
【解決手段】電気かみそり1は、手で把持するグリップ部2と、桟37によって画成された刃穴40を有する外刃8と、当該外刃8の内方に配設されて外刃8に対して相対移動することで、当該外刃8と協働して刃穴40に挿入された体毛を切断する内刃17と、外刃8をグリップ部2に対して相対移動させる外刃駆動手段としてのモータ33、ピニオン34およびラック35,36と、を備えている。そして、外刃8のグリップ部2に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟38bに、外刃8が肌面上を移動する際に体毛に当接して肌面に対して体毛を起立させる起毛部45を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気かみそりとして、剃り方向と直交する方向に往復動する内刃をそれぞれ組み込んだ複数枚の外刃を剃り方向に並設し、各外刃を剃り方向と直交する方向に振動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、各外刃を剃り方向と直交する方向に振動させることで、剃り方向に対して直交する方向に寝ている体毛の外刃に対する導入性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−29123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、各外刃を剃り方向と直交する方向に振動させれば、剃り方向に対して直交する方向に寝ている体毛の外刃に対する導入性能を向上させることが可能となるが、寝ている体毛の外刃に対する導入性能のさらなる向上を図れるようにすれば、なお好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、寝ている体毛の外刃に対する導入性能のさらなる向上を図ることのできる電気かみそりを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、手で把持するグリップ部と、桟によって画成された刃穴を有する外刃と、当該外刃の内方に配設されて前記外刃に対して相対移動することで、当該外刃と協働して前記刃穴に挿入させた体毛を切断する内刃と、前記外刃を前記グリップ部に対して相対移動させる外刃駆動手段と、を備える電気かみそりであって、前記外刃の桟のうち外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟に、外刃が肌面上を移動する際に体毛に当接して肌面に対して体毛を起立させる起毛部が設けられていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟に起毛部を設けたため、外刃のグリップ部に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。その結果、寝ている体毛の外刃に対する導入性能のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる電気かみそりを示す斜視図である。
【図2】図2は、刃ヘッドを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、外刃の起毛部が設けられる桟を模式的に示す平面図である。
【図4】図4は、外刃を側方から見た概略図である。
【図5】図5は、外刃の一部を拡大した斜視図である。
【図6】図6は、(a)は図5のA−A線による断面図、(b)は短手方向端の拡大断面図である。
【図7】図7は、(a)は図5のB−B線による断面図、(b)は起毛部の拡大断面図である。
【図8】図8は、図7の長手方向桟周辺を拡大した斜視図である。
【図9】図9は、図8のC−C線による拡大断面図である。
【図10】図10は、外刃が剃り方向に往復動する場合に起毛部が設けられる桟を模式的に示す平面図である。
【図11】図11は、外刃が内刃の往復動方向に往復動する場合に起毛部が設けられる桟を模式的に示す平面図である。
【図12】図12は、外刃が内刃の往復動方向および剃り方向と略直交する方向に沿った軸を中心として旋回運動する場合に起毛部が設けられる桟を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は、外刃が内刃の往復動方向に沿った軸を中心として旋回運動する場合における外刃と肌面との接触圧の分布を模式的に示す側面図であって、(a)は頂部が上方に位置する状態を示す側面図、(b)は頂部以外が上方に位置する状態を示す側面図である。
【図14】図14は、外刃が剃り方向に沿った軸を中心として旋回運動する場合における外刃と肌面との接触圧の分布を模式的に示す正面図であって、(a)は頂部が上方に位置する状態を示す正面図、(b)は頂部以外が上方に位置する状態を示す正面図である。
【図15】図15は、外刃が内刃の往復運動方向および剃り方向と略直交する方向に往復動する場合の外刃を模式的に示す側面図である。
【図16】図16は、(a)は粗剃り時における外刃と肌面との接触圧の分布を模式的に示す側面図、(b)は仕上げ剃り時における外刃と肌面との接触圧の分布を模式的に示す側面図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態の変形例にかかる長手方向桟を示す断面図であって、(a)は頂部における断面図、(b)は外側部における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、複数の外刃が並設される方向を前後方向(剃り方向)X、各外刃が延在する方向を左右方向(剃り方向と略直交する方向:内刃の往復動方向)Yとして説明する。また、外刃が上方を向くようにヘッド部を配置した状態における上下方向を上下方向(内刃の往復動方向および剃り方向と略直交する方向)Zとして説明する。
【0011】
本実施形態にかかる電気ひげそり1は、図1に示すように、手で把持するグリップ部2と、グリップ部2に対して前後方向及び左右方向に揺動自在に支持されたヘッド部5と、を備えている。
【0012】
グリップ部2は、合成樹脂製のグリップ本体3と、このグリップ本体3の上面より後方に突設された合成樹脂製のグリップ接続部4と、を備えている。そして、このグリップ接続部4の上面には、ヘッド部5を左右方向に揺動させる公知の左右揺動機構(図示せず)が設けられているとともに、この左右揺動機構とヘッド部5の下部との間には、ヘッド部5を前後方向に揺動させる公知の前後揺動機構(図示せず)が設けられている。なお、ヘッド部5を前後方向および左右方向に揺動させることなく、いずれか一方向に揺動させるようにしてもよいし、ヘッド部5が揺動しないようにグリップ部2に固定してもよい。
【0013】
ヘッド部5は、図示せぬリニアモータが内蔵され、グリップ接続部4に前後方向および左右方向に揺動可能に接続されるリニアヘッド部6と、当該リニアヘッド部6の取り付けられるひげ剃り刃ユニット7と、を備えている。そして、グリップ本体3には、図1に示すように、リニアモータの駆動をオン、オフさせるスイッチ部90およびグリップ本体3に内蔵される図示せぬ電池の充電状況を表示する表示部91が形成されている。なお、表示部91に電池の充電状況以外のものを表示させるようにしてもよいし、グリップ本体3に表示部を設けないようにしてもよい。
【0014】
ひげ剃り刃ユニット7は、ヘッド部5の上方に向けて露出する外刃8と、当該外刃8の内方(外刃8の下側)に配設されて外刃8に対して相対移動する内刃17と、を備えている。
【0015】
本実施形態では、4枚(複数)の外刃を備えており、第1のネット刃9、仕上げ用ネット刃10、スリット刃11、第2のネット刃12が前後方向Xに並設されている。
【0016】
ネット刃9,10,12はいずれも、図4に示すように、側面視(左右方向Yに外刃を視た状態)で上方が凸となるように前後方向(短手方向)Xに沿って逆U字状に湾曲して形成されている。さらに、ネット刃9,10,12は、正面視(前後方向Xに外刃を視た状態)で上方が凸となるように左右方向(長手方向)Yに沿って若干湾曲して形成されている。なお、本実施形態では、ネット刃9,10,12を、正面視で上方が凸となるように湾曲させているが、必ずしも湾曲させる必要はない。
【0017】
そして、このネット刃9,10,12には、多数の刃穴40が桟37によって画成されている。そして、本実施形態では、図1,2に示すように、仕上げ用ネット刃10の刃幅(前後方向Xの幅)が、第1及び第2のネット刃9,12の刃幅(前後方向Xの幅)よりも小さくなるようにしている。このように、仕上げ用ネット刃10の刃幅を他のネット刃9,12の刃幅に比して小さく、すなわち、仕上げ用ネット刃10の曲率半径を小さく設けることで、表面に押し付けた肌を刃穴40から大きく内側に突出させて体毛を短く剃ることができるようにしている。
【0018】
スリット刃11は、前後方向(短手方向)Xに沿ってコ字状に湾曲して形成されており、平坦な上壁から側壁に至る多数のスリットを穿設することで形成されている。
【0019】
そして、外刃8を成す各ネット刃9,10,12およびスリット刃11は、それぞれ専用の外刃枠13,14,16および15に取り付けられている。
【0020】
さらに、外刃枠14の第1のネット刃9側には、肌ガード部材14aが形成されており、仕上げ用ネット刃10を前後に挟むスリット刃11と肌ガード部材14aとによって、曲率半径の小さな仕上げ用ネット刃10に肌が強く押し付けられることを効果的に防止している。
【0021】
そして、第1のネット刃9が取り付けられた外刃枠13および仕上げ用ネット刃10が取り付けられた外刃枠14を、保持枠28にそれぞれ係合させるとともに、スリット刃11が取り付けられた外刃枠15および第1のネット刃12が取り付けられた外刃枠16を、保持枠29にそれぞれ係合させている。
【0022】
なお、外刃枠13,14は、保持枠28にそれぞれ独立して上下動可能に保持されており、外刃枠15,16は、保持枠29にそれぞれ独立して上下動可能に保持されている。
【0023】
そして、保持枠28,29は、それぞれ可動台26,27に取り付けられており、当該可動台26,27がリニアヘッド部6の上面に取り付けられている。
【0024】
内刃17は、外刃8を成す各ネット刃9,10,12およびスリット刃11に対して専用のものが設置されている。具体的には、図2に示すように、各ネット刃9,10,12の下方(内方)には、対応するネット刃9,10,12の湾曲に沿う逆U字状の内刃18,19,21が配設されている。また、スリット刃11の下方(内方)には、このスリット刃11の湾曲に沿うコ字状のスリット内刃20が配設されている。
【0025】
そして、これら内刃18,19,20,21は、専用の駆動桿22,22a,23a,23にそれぞれ装着されている。
【0026】
このとき、各内刃18,19,20,21を、上方に付勢されるように駆動桿22,22a,23a,23に装着させ、各外刃9,10,11,12の内面に押し付けるようにするのが好適である。
【0027】
駆動桿22,23は、それぞれスライダ24,25を介してリニアモータに形成された駆動ピン30,31に取り付けられている。なお、可動台26,27には、スライダ24,25の相対移動(左右方向Yへの往復動)を許容する略長方形状の開口部26a,27aが設けられており、スライダ24,25を可動台26,27に干渉することなく左右方向Yに往復動できるようにしている。
【0028】
そして、リニアモータを駆動させると、駆動ピン30,31が、それぞれ左右方向(長手方向)Yに逆位相で往復動し、この駆動ピン30,31の往復動に連動して内刃18,19,20,21が左右方向(長手方向)Yに往復動する。
【0029】
なお、本実施形態では、駆動桿22aが駆動桿22に、駆動桿23aが駆動桿23にそれぞれ固定されており、内刃18,19が一体に往復動するとともに、内刃20,21が内刃18,19とは逆位相で一体に往復動するようになっている。
【0030】
このように、各外刃9,10,11,12の下方(内方)に配設された各内刃18,19,20,21を、各外刃9,10,11,12に対してそれぞれ相対移動(左右方向Yへの往復動)させることで、各外刃9,10,12の刃穴40およびスリット刃11のスリット内に挿入された体毛を、外刃9,10,11,12と内刃18,19,20,21とで協働して切断するように構成している。
【0031】
さらに、本実施形態では、外刃8をグリップ部2に対して相対移動させる外刃駆動手段を備えている。
【0032】
具体的には、モータ33と、当該モータ33のモータ軸33aに取り付けられるピニオン34と、ピニオン34の側面の歯車に噛み合わされる歯車を有するラック35,36と、で駆動手段を構成している。
【0033】
また、可動台26,27には、上述した開口部26a,27aが設けられており、当該開口部26a,27aの左右方向Y両側には、リニアヘッド部6の上面に設けられたガイドピン32,32を挿入させる長孔26b,27bがそれぞれ設けられている。
【0034】
本実施形態では、長孔26b,27bは、それぞれ前後方向Xおよび左右方向Yと交差する方向(図3の矢印a方向)に延在している。
【0035】
そして、ラック35,36は、それぞれ可動台26,27に取り付けられており、モータ33が正転、反転を交互に繰り返すことで、可動台26,27が、それぞれ前後方向Xおよび左右方向Yと交差する方向(図3の矢印aの方向)に逆位相で往復動することとなる。そして、この可動台26,27が矢印a方向に往復動することで、可動台26,27に保持枠28,29および外刃枠13,14,15,16を介して取り付けられた各外刃9,10,11,12が矢印a方向に往復動する。すなわち、本実施形態では、外刃駆動手段としてのモータ33、ピニオン34、ラック35,36によって、外刃8が内刃の往復動方向Yと剃り方向Xとを含む平面内における往復動を行うようにしている。
【0036】
なお、スライダ24,25の下面側には、長孔26b,27bの延在方向と略平行に延在する長孔(図示せず)が設けられている。そして、この長孔(図示せず)に駆動ピン30,31をスライド自在に差し込むことで、スライダ24,25が、左右方向(長手方向)Yに往復動しつつ可動台26,27の矢印a方向への往復動に追従して矢印a方向にも往復動できるようにしている。
【0037】
なお、上述したように、本実施形態では、左右揺動機構が、外刃8の剃り方向Xに沿った軸を中心とした旋回運動(外刃8のグリップ部2に対する相対移動)を行い、前後揺動機構が、外刃8の内刃の往復動方向Yに沿った軸を中心とした旋回運動(外刃8のグリップ部2に対する相対移動)を行っている。すなわち、図示せぬ左右揺動機構および前後揺動機構も外刃駆動手段に相当するものである。
【0038】
次に、本実施形態にかかるネット刃9,10,12について詳細に説明する。
【0039】
本実施形態では、ネット刃9,10,12は、桟37によって多数の刃穴40が画成されている。具体的には、桟37は、図5に示すように、短手方向(前後方向)Xに沿って波状に延在する短手方向桟39と、長手方向(左右方向)Yに沿って延在する長手方向桟38a,38bと、を備えている。そして、これらの桟39,38a,38bによって平面視略六角状の刃穴40が画成されている。この刃穴40は、体毛が挿入可能な大きさに形成されている。
【0040】
また、ネット刃9,10,12は、上述したように、側方から見ると逆U字状に湾曲して形成されており、最も高い部位に位置する頂部9a,10a,12aが、肌面との接触圧が大きくなる部位である。そして、頂部9a,10a,12aの短手方向両側の外側に位置する外側部9b,10b,12bが、頂部9a,10a,12aよりも肌面との接触圧が小さくなる部位である。
【0041】
また、頂部9a,10a,12aには、図6に示す断面形状の長手方向桟38aが配置されており、外側部9b,10b,12bには、図7に示す長手方向桟38bが配置されている。なお、図5における一点鎖線は頂部9a,10a,12aの短手方向の中心を通る中心線である。
【0042】
長手方向桟38aは、図6(a)、(b)に示すように、断面略平板状に形成されており、長手方向桟38aの短手方向端(起毛部)41は、曲率半径R1の断面半円状に形成されている。このR1は、例えば10μmが好ましい。ここで、短手方向桟39の表面43は長手方向桟38aの表面42よりも肌側に近づけており、長手方向桟38aの表面42と短手方向桟39の表面43との上下距離はL1に設定されている。
【0043】
一方、長手方向桟38bは、図7(a)に示すように、断面略U字状に形成されている。具体的には、短手方向中央46は平面に形成され、この短手方向中央46から短手方向の両端に向かうにつれて上方に屈曲して延びる屈曲部45が設けられ、この短手方向端が先細り形状の起毛部45aになっている。これら起毛部41,45aは、肌面とのなす角度が小さい体毛を起こす作用を有するものである。
【0044】
また、屈曲部45のうち上側の面は傾斜上面47であり、下側の面は傾斜下面48になっている。すなわち、長手方向桟38bは、短手方向中央46、傾斜上面47、傾斜下面48、底面49によって画成されている。また、屈曲部45の短手方向端44と短手方向桟39の表面43との上下距離はL2に設定されており、L2<L1の大小関係でオフセット配置されている。このL1とL2との差は、例えば10μmが好ましい。
【0045】
さらに、図7(b)に示すように、屈曲部45の短手方向端44は、曲率半径R2の断面半円状に形成されており、R2<R1の大小関係に設定されている。このR2は、例えば3μmが好ましい。ここで、二点鎖線で示す短手方向の基準線50と傾斜上面47とのなす逃げ角度αは、前述した図6(a)のように長手方向桟38aの表面42と短手方向の基準線50とのなす逃げ角度(0°)よりも大きく設定されている。すなわち、本実施形態にかかる長手方向桟38a,38bでは、頂部9a,10a,12aに配置された長手方向桟38aには逃げ角度を設けず、外側部9b,10b,12bに配置された長手方向桟38bには逃げ角度を設けている。
【0046】
長手方向桟38bの長手方向端部52は、図8,9に示すように、短手方向桟39の側壁面51から長手方向に向けて断面略直線状に延びており、長手方向端部52と長手方向中央部53とは、境界部54を介してなだらかに湾曲して連結されている。この境界部54の曲率半径は例えば10μmが好ましい。
【0047】
このように、本実施形態では、図3に示すように、ネット刃9,10,12のグリップ部2に対する相対移動方向(図3の矢印a方向)と交差する方向に延在する桟である長手方向桟38に起毛部41,45aを設けている。
【0048】
また、本実施形態では、長手方向桟38aの短手方向端(起毛部)41を、曲率半径R1の断面半円状に形成するとともに、長手方向桟38aの表面42と短手方向桟39の表面43との上下距離がL1となるようにしている。一方、長手方向桟38bの起毛部45aを、曲率半径R1よりも小さい曲率半径R2の断面半円状に形成するとともに、屈曲部45の短手方向端44と短手方向桟39の表面43との上下距離がL1よりも短いL2となるようにしている。
【0049】
このように、本実施形態では、R2<R1、L2<L1とすることで、ネット刃9,10,12の領域のうち肌面との接触圧が高い部位(頂部9a,10a,12a)に設けられた起毛部41の体毛を起立させる起毛力が、接触圧が低い部位(外側部9b,10b,12b)に設けられた起毛部45aの起毛力よりも小さくなるようにしている。
【0050】
また、起毛部41,45aは長手方向桟38a,38bの延在方向Yと直交する方向(短手方向)Xの両端に設けられている。そして、外側部9b,10b,12bの起毛部(起毛部41,45aのうち少なくとも外刃の接触圧が低い部位に設けられた起毛部)45aは、長手方向桟38bの底面(内刃側の面)49を下方にした状態で、当該底面(内刃側の面)49が短手方向Xの両端に向かうにつれて上方に傾斜した先細り状となっている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、ネット刃(外刃)9,10,12のグリップ部2に対する相対移動方向(図3の矢印a方向)と交差する方向に延在する桟である長手方向桟38に起毛部41,45aを設けている。したがって、ネット刃(外刃)9,10,12のグリップ部2に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。その結果、寝ている体毛のネット刃(外刃)9,10,12の刃穴40への導入性能のさらなる向上を図ることができる。
【0052】
なお、起毛部を設ける桟については、外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在していればよいが、相対移動方向との交差角度が大きい(相対移動方向と桟の延在方向とのなす鋭角が大きい)方がより好ましい。したがって、本実施形態のように、外刃8が矢印a方向に往復動する場合、図3に示すように、短手方向桟39のうち、矢印a方向との交差角度が大きい部位39aに設ければ、外刃がグリップ部に対して相対移動する際に、寝ている体毛をより効率的に起毛させることができるようになる。
【0053】
なお、長手方向桟38の延在方向(長手方向)Yは、外刃のグリップ部に対する相対移動方向(図3の矢印a方向)と交差するとともに、電気かみそり1の剃り方向(短手方向)Xとも交差している。
【0054】
したがって、本実施形態のように、長手方向桟38に起毛部41,45aを設ければ、外刃のグリップ部に対する相対移動による起毛に加えて、体毛を剃る際に、電気かみそり1を剃り方向に動かした際にも、起毛部41,45aによって、寝ている体毛を起毛させることができるようになる。
【0055】
また、本実施形態によれば、ネット刃(外刃)9,10,12の領域のうち、ネット刃(外刃)9,10,12と肌面との接触圧が高い部位における体毛を起立させる起毛力を、接触圧が低い部位における起毛力よりも小さく設定している。
【0056】
このように、肌面との接触圧が高い部位の起毛力を、接触圧が低い部位の起毛力よりも小さくすることにより、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0057】
また、肌面との接触圧が低い部位については、肌面に与える影響がもともと低いため、起毛力を高めて効率的な起毛を行うことができる。
【0058】
さらに、押付け力の比較的低い粗剃り時には、起毛力の高い起毛部45aの肌との接触圧が低いため、肌のすべり性が低下してしまうのを抑制することができ、仕上げ剃り時のような比較的高い押付力の時には、起毛力の高い起毛部45aが作用することによって、寝ている体毛を起毛させ、外刃8の刃穴40への導入性能の向上を図ることができるという利点もある(図16参照)。
【0059】
また、本実施形態によれば、桟は、ネット刃(外刃)9,10,12の長手方向に沿って延設される長手方向桟38a,38bと、長手方向に交差する短手方向に沿って延設される短手方向桟39とからなり、ネット刃(外刃)9,10,12が網目状になっている。そのため、体毛を刃穴40に挿入しやすくなって、体毛を剃りやすくすることができるという効果がある。
【0060】
また、本実施形態によれば、ネット刃(外刃)9,10,12は側方から見ると逆U字状に湾曲して形成されており、起毛部41,45aを、ネット刃(外刃)9,10,12の長手方向桟38a,38bにおける短手方向の両端に形成している。このため、電気かみそり1を、短手方向の一方方向および他方方向のいずれの方向に移動させても、体毛を起立させることができるため、使用者の使い勝手が良好となるという効果がある。
【0061】
また、本実施形態によれば、外側部9b,10b,12bの起毛部(起毛部41,45aのうち少なくとも外刃の接触圧が低い部位に設けられた起毛部)45aを、長手方向桟38bの内刃側の面を下方にした状態で、当該内刃側の面が短手方向Xの両端に向かうにつれて上方に傾斜した先細り状としている。このように、短手方向端を断面テーパ状(先細り形状)にして起毛部45aとすることで、簡素な形状で起毛部45aを形成することができる。また、起毛部45aを内刃側の面が短手方向Xの両端に向かうにつれて上方に傾斜した先細り状とすることで、起毛角(体毛の延びている方向と肌面とのなす角度)の小さい体毛が、起毛部45aと肌との間に潜り込んでしまうのを抑制することができ、寝ている体毛をより確実に起立させることができる。
【0062】
そして、長手方向桟(外刃と肌面との接触圧が高い部位における長手方向桟)38aの短手方向端(起毛部)41の曲率半径R1を、長手方向桟(外刃と肌面との接触圧が低い部位における長手方向桟)38bの短手方向端の曲率半径R2よりも大きく設定している。このように、肌面との接触圧が高い部位の短手方向端の曲率半径R1を、接触圧が低い部位の短手方向端の曲率半径R2よりも大きくすることにより、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)をより確実に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、長手方向桟(外刃と肌面との接触圧が高い部位における長手方向桟)38aの短手方向端41の表面と短手方向桟39の表面43との距離L1を、長手方向桟(外刃と肌面との接触圧が低い部位における長手方向桟)38bの短手方向端44の表面と短手方向桟39の表面43との距離L2よりも大きく設定している。こうすれば、肌面との接触圧が高い部位における長手方向桟38aが肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、長手方向桟38bの全体の断面形状を略U字状に形成し、屈曲部45の表面に短手方向50に対する逃げ角αを設け、肌面との接触圧が高い部位における逃げ角を、肌面との接触圧が低い部位における逃げ角αよりも小さく設定している。このため、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、長手方向桟38bにおける長手方向端部52は断面略直線状に形成し、長手方向中央部53に屈曲部45を設け、これらの長手方向端部52と長手方向中央部53との境界部54をなだらかに湾曲させて連結させている。このように、長手方向桟38bにおける長手方向端部52と長手方向中央部53との境界部54をなだらかに湾曲させて連結させることにより、ネット刃(外刃)9,10,12を肌面上に沿って移動させたときに、境界部54が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、外刃8のグリップ部2に対する矢印a方向への相対移動について例示したが、外刃のグリップ部に対する相対移動は、これに限るものではない。
【0067】
以下では、矢印a方向以外の相対移動について説明する。
【0068】
まず、図10に示すように、外刃8Aがグリップ部2に対して剃り方向Xに往復動する場合、上記実施形態と同様に、長手方向桟(外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟)38に起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Aのグリップ部2に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。
【0069】
また、図11に示すように、外刃8Bがグリップ部2に対して内刃の往復動方向Yに往復動する場合、短手方向桟(外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟)39に起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Bのグリップ部2に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。
【0070】
また、図12に示すように、外刃8Cがグリップ部2に対して内刃の往復動方向Yおよび剃り方向Xと略直交する方向Zに沿った軸C1を中心として旋回運動する場合、長手方向桟38および短手方向桟39(軸C1を中心とした円周と交差する方向に延在する桟)に起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Cがグリップ部2に対して軸C1を中心として旋回運動した際に、寝ている方向に関わらず体毛を起毛させることができるようになる。
【0071】
また、図13に示すように、外刃8Dが内刃17の往復動方向Yに沿った軸C2を中心として旋回運動する場合、上記実施形態と同様に、長手方向桟(外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟)38に起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Dのグリップ部2に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。
【0072】
また、上記実施形態のように、肌面との接触圧が高い部位の起毛力を、接触圧が低い部位の起毛力よりも小さくすれば、外刃8Dが内刃17の往復動方向Yに沿った軸C2を中心として旋回運動する場合にあっても、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。さらに、外刃8Dの軸C2を中心とする旋回運動によって、接触圧が低い部位に設けられた起毛力の高い起毛部を、効果的に肌に作用させることができる。
【0073】
また、図14に示すように、外刃8Eがグリップ部2に対して剃り方向Xに沿った軸C3を中心として旋回運動する場合、短手方向桟(外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟)39に起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Eのグリップ部2に対する相対移動の際に、寝ている体毛を効率的に起毛させることができるようになる。
【0074】
また、正面視で逆U字状に湾曲形成された外刃8Eを用いる場合、肌面との接触圧が高い部位である頂部8Eaに設けた起毛部の起毛力を、接触圧が低い部位である外側部(左右方向Y両端部)8Ebに設けた起毛部の起毛力よりも小さくしてもよい。こうすれば、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0075】
また、図15に示すように、外刃8Fがグリップ部2に対して内刃の往復運動方向Yおよび剃り方向Xと略直交する方向(上下方向)Zへ往復動する場合、逆U字状に湾曲形成された外刃8Fの外側部の長手方向桟(上下方向Zと交差する方向に延在する桟)38bに起毛部を設けるようにすればよい。こうすれば、外刃8Fの上方への移動に伴って起毛部が作用し、寝ている体毛を起毛させることができる。このとき、肌面との接触圧が低い部位に、肌面との接触圧が高い部位よりも起毛力が高い起毛部を設けるようにすれば、肌面との接触圧が高い部位(頂部)が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態において、長手方向桟38として、長手方向桟38a,38bを例示したが、図17に示す形状とすることも可能であるし、これら以外にも種々の形状とすることができる。以下図17の形状について説明する。
【0078】
頂部に配設される長手方向桟71は、図17(a)に示すように、上面73が平坦に形成され、短手方向端に起毛部77が形成されている。また、上面73と傾斜面75とのテーパの開き角度がβ1に設定されている。一方、外側部に配設される長手方向桟79は、図17(b)に示すように、上面81が平坦に形成され、短手方向端に起毛部85が形成されている。また、上面81と傾斜面83とのテーパの開き角度がβ2に設定されている。なお、テーパの開き角度は、β2<β1の大小関係に設定されており、β1は例えば70°が好ましく、β2は例えば20°が好ましい。
【0079】
このように、肌面との接触圧が高い部位における長手方向桟71の短手方向端のテーパの開き角度β1を、接触圧が低い部位における長手方向桟79の短手方向端のテーパの開き角度β2よりも大きく設定することでも、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)を抑制することができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、左右方向Y両端部を含めた頂部に、起毛力が略同一の起毛部を設けたものを例示したが、頂部の左右方向Y中央部、頂部の左右方向Y両端部、外側部と徐々に起毛力が高くなるように、外刃の桟に起毛部を設けるようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、頂部の長手方向桟の形状を断面略平板状としたものを例示したが、これに限らず、頂部の長手方向桟の断面形状を上に凸の逆U字状にしてもよい。すなわち、肌面との接触圧が高い部位である頂部には、起毛部を設けないようにしてもよい。こうすれば、肌面との接触圧が高い部位が肌面に与える影響(ダメージ)をより一層抑制することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、外刃を4枚並列したものを例示したが、外刃の数は、1〜3枚であっても、5枚以上であってもよい。
【0083】
また、上述した外刃のグリップ部に対する複数種類の相対移動は、それぞれ単独で行わせることもできるし、複数種類の相対移動を組み合わせることも可能である。このとき、外刃の桟のうち起毛部を設ける部位ならびに起毛力の大きさを適宜に設定することで、上述した作用、効果を奏するようにすればよい。
【0084】
また、外刃や内刃、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 電気かみそり
2 グリップ部
8 外刃
9a,10a,12a 頂部
9b,10b,12b 外側部
17 内刃
33 モータ(外刃駆動手段)
34 ピニオン(外刃駆動手段)
35,36 ラック(外刃駆動手段)
37 桟
40 刃穴
41,45a,77,85 起毛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で把持するグリップ部と、桟によって画成された刃穴を有する外刃と、当該外刃の内方に配設されて前記外刃に対して相対移動することで、当該外刃と協働して前記刃穴に挿入された体毛を切断する内刃と、前記外刃を前記グリップ部に対して相対移動させる外刃駆動手段と、を備える電気かみそりであって、
前記外刃の桟のうち外刃のグリップ部に対する相対移動方向と交差する方向に延在する桟に、外刃が肌面上を移動する際に体毛に当接して肌面に対して体毛を起立させる起毛部が設けられていることを特徴とする電気かみそり。
【請求項2】
前記内刃は、剃り方向と略直交する方向に往復動することで前記外刃に対して相対移動しており、
前記外刃駆動手段による前記外刃の前記グリップ部に対する相対移動が、前記内刃の往復動方向と前記剃り方向とを含む平面内における往復動、前記内刃の往復動方向および剃り方向と略直交する方向に沿った軸を中心とした旋回運動,前記内刃の往復運動方向および剃り方向と略直交する方向への往復動、前記内刃の往復動方向に沿った軸を中心とした旋回運動、および、前記剃り方向に沿った軸を中心とした旋回運動、のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の電気かみそり。
【請求項3】
前記外刃の領域のうち外刃と肌面との接触圧が高い部位に設けられた起毛部の前記体毛を起立させる起毛力が、接触圧が低い部位に設けられた起毛部の起毛力よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気かみそり。
【請求項4】
前記外刃は側面視逆U字状に湾曲して形成されており、頂部が前記外刃と肌面との接触圧が高い部位であり、外側部が前記外刃と肌面との接触圧が低い部位であることを特徴とする請求項3に記載の電気かみそり。
【請求項5】
前記起毛部は前記外刃の桟の延在方向と直交する方向の両端に設けられており、当該起毛部のうち少なくとも外刃の接触圧が低い部位に設けられた起毛部は、桟の内刃側の面を下方にした状態で、当該内刃側の面が桟の延在方向と直交する方向の両端に向かうにつれて上方に傾斜した先細り状となっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電気かみそり。
【請求項6】
複数の前記外刃が剃り方向に並設されているとともに、当該複数の外刃の内方に前記内刃がそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−147646(P2011−147646A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12174(P2010−12174)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】