説明

電気めっき方法

【課題】めっき時における平均電流値をより高くした効率的なめっきによるめっき膜の埋込みを行ってめっき時間を短縮し、しかも理想的なめっき膜の埋込みを行うことができるようにする。
【解決手段】内部にスルーホールを形成した基板をめっき液中に浸漬させてめっき槽内に配置し、めっき槽内に配置される基板の表面及び裏面にそれぞれ対向する位置にアノードをめっき槽内のめっき液中に浸漬させて配置し、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、パルス電流を供給して基板の表裏両面に所定時間のめっきを行うめっき処理を複数回に亘って行い、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、めっき時とは逆方向の電流をそれぞれ供給する逆電解処理をめっき処理の間に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上下に貫通するスルーホールを内部に有する基板の表裏両面からめっきを同時に行って、スルーホールの内部に銅等の金属(めっき膜)を埋込むのに使用される電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等の基板を多層に積層させる際に各層間を導通させる手段として、基板の内部に上下に貫通する複数の金属からなる貫通電極(スルービア)を形成する技術が知られている。この貫通電極は、上下に貫通するスルーホールを内部に有する基板の表裏両面からめっきを同時に行って、スルーホール内にめっき膜を充填することで一般に形成される。
【0003】
貫通電極を形成する電気めっき装置としては、表裏両面の所定領域を外部に露出させつつ周縁部をシールして基板を保持する基板ホルダと、基板ホルダで保持した基板の表面及び裏面にそれぞれ対向する位置に配置されるアノードとを備え、基板ホルダで保持した基板及びアノードとをめっき液中に浸漬させた状態で、基板ホルダに保持した基板と各アノードとの間に電圧をそれぞれ印加して、上下に貫通するスルーホールを形成した基板の表裏両面からめっきを同時に行うことで、スルーホールの内部に銅等の金属を電気めっきで埋込むようにしたものが知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
例えば、図1(a)に示すように、上下に貫通するスルーホール100aを形成した基材100の該スルーホール100aの内周面を含む全表面を、Ti等からなるバリア層102及び給電層としてシード層104で順次覆った基板Wを用意する。そして、基板Wの表裏両面からめっきを同時に行って、図1(b)に示すように、スルーホール100aの深さ方向に沿った中央部で最も盛り上がった銅等の金属からなるめっき膜106を形成し、図1(c)に示すように、このめっき膜106を成長させて、スルーホール100aの深さ方向に沿った中央部でスルーホール100aの壁面から成長しためっき膜106の先端部を互いに接合させる。これによって、スルーホール100aの深さ方向に沿った中央部をめっき膜106で閉塞させ、閉塞部を挟んだ上下に凹部108を形成する。そして、めっきを継続することで、図1(d)に示すように、閉塞部を挟んで上下に形成された凹部108内にめっき膜106を更に成長させて凹部108内にめっき膜106を埋込む。これによって、基板Wの内部に、例えば銅等のめっき膜106からなる貫通電極(スルービア)を形成する(特許文献2参照)。
【0005】
基板のスルーホールの内部に金属(めっき膜)を充填する電気めっき方法として、基板とアノードと間に、基板をカソードとした順方向パルス電流と該順方向パルス電流と電流の流れる方向を逆とした逆方向パルス電流とを供給することで、スルーホールの中央部を完全またはほぼ完全に埋めるようにすることが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また、プリント配線基板等の銅めっきに際して、ウェスカーの発生を抑制するため、カソードとアノードとの間に印加する直流電源電圧の極性を正負反転可能とし、被めっき物をカソードとする通常の正電解と、被めっき物をアノードとする逆電解を交互に切り替えながらめっき処理を行うようにすることが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4138542号公報
【特許文献2】特許第4248353号公報
【特許文献3】特開2008−513985号公報
【特許文献4】特開2010−95775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内部にボイド等の欠陥のないめっき膜からなる貫通電極を基板の内部に形成するには、図1(b)〜(c)に示すように、スルーホールの深さ方向に沿った中央部に優先的にめっき膜を成長させ、スルーホールの深さ方向に沿った中央部をめっき膜で先ず閉塞させ、更にめっきを継続することが理想とされている。しかしながら、このように理想を追求しながら、効率的なめっきによるスルーホール内へのめっき膜の埋込みを行ってめっき時間を短縮することは一般にかなり困難であった。つまり、従来例は、理想的なめっき膜のスルーホール内への埋込みと、めっき時における平均電流値をより高くした効率的なめっきによるめっき膜のスルーホール内への埋込みの双方を考慮したものではなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、めっき時における平均電流値をより高くした効率的なめっきによるめっき膜のスルーホール内への埋込みを行ってめっき時間を短縮し、しかも理想的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行うことができるようにした電気めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、内部にスルーホールを形成した基板をめっき液中に浸漬させてめっき槽内に配置し、めっき槽内に配置される基板の表面及び裏面にそれぞれ対向する位置にアノードをめっき槽内のめっき液中に浸漬させて配置し、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、パルス電流をそれぞれ供給して基板の表裏両面に所定時間のめっきを行うめっき処理を複数回に亘って行い、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、めっき時とは逆方向の電流をそれぞれ供給する逆電解処理を前記めっき処理の間に行うことを特徴とする電気めっき方法である。
【0011】
このように、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、パルス電流をそれぞれ供給して基板の表裏両面に所定時間のめっきを行うめっき処理を複数回に亘って行うことで、電流値の平均値をより高くした効率的なめっきによるめっき膜のスルーホール内への埋込みを行ってめっき時間を短縮することができる。しかも、めっき処理の間に逆電解処理を行って、スルーホールの角部に析出しためっき膜を溶解させることで、スルーホールの深さ方向に沿った中央部にめっき膜を優先的に成長させる理想的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記パルス電流は、順方向の電流の供給と逆方向の電流の供給を断続的に繰返すPRパルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法である。
このように、PRパルス電流を使用して、めっき処理中に逆電解処理を繰返して行うことで、めっき膜の微視的な表面に、めっき膜の異常析出によって微小な凹凸が生じ、この微小な凹凸がめっき膜中の微小ボイドの発生に繋がってしまうことを防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記パルス電流は、順方向の電流の供給と停止を断続的に繰返すオン・オフパルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法である。
このように、オン・オフパルス電流を使用して、めっき処理中に電流の供給を停止するめっき休止時間を設けることで、スルーホール内のめっき液中の金属イオン濃度をめっき休止時間中に回復させ、これによって、めっき膜中にボイド等の欠陥が生じることを防止することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記パルス電流は、電流値の異なる2つのパルス電流を組合せた複合パルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法である。
このように、複合パルス電流を使用して、めっき処理中にめっき膜を常に成長させることで、めっき膜がめっき処理中に溶解してしまうことを防止することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記めっき処理を、めっきの進行に伴って、前記逆電解処理を挟み、平均電流密度が増加するように行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気めっき方法である。
【0016】
めっきの進行に伴ってスルーホールが徐々にめっき膜で埋まってゆくに従って、スルーホールの実質的なアスペクト比が変化する。このようにアスペクト比が変化する場合に、平均電流密度が増加するようにめっき処理を行うことで、スルーホールの実質的なアスペクト比の変化に従った効率的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行って、めっき時間を更に短縮することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記逆電解処理を、順方向に電流の供給する正電解処理を挟んで、複数回繰返して行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気めっき方法である。
【0018】
逆電解処理は、例えば、カソード電流密度が−30〜−40ASDとなるようにして、例えば0.1ms〜10msのピッチで行われるが、例えば1msより長いピッチの逆電解処理を行うと、スルーホールのアスペクト比の大きさによっては、スルーホールの深さ方向に沿った中央部から優先的にめっき膜を埋込むことができないことがある。このようなアスペクト比を有するスルーホールに対しても、例えば1.0msよりピッチの短いパルスの逆電解処理を、正方向に電流を供給する正電解処理を挟んで数回繰返すことで、理想的なめっき膜の埋込みを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、パルス電流をそれぞれ供給して基板の表裏両面に所定時間のめっきを行うめっき処理を複数回に亘って行うことで、電流値の平均値をより高くした効率的なめっきによるめっき膜のスルーホール内への埋込みを行ってめっき時間を短縮することができる。しかも、めっき処理の間に逆電解処理を行って、スルーホールの角部に析出しためっき膜を溶解させることで、スルーホールの深さ方向に沿った中央部にめっき膜を優先的に成長させる理想的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基板のスルーホール内にめっき膜を埋込んで貫通電極(スルービア)を形成する工程を工程順に示す図である。
【図2】本発明の電気めっき方法に使用される電気めっき装置の概要を示す縦断正面図である。
【図3】図2に示す電気めっき装置の基板ホルダを示す正面図である。
【図4】図2に示す電気めっき装置の基板ホルダを示す平面図である。
【図5】図2に示す電気めっき装置の基板ホルダを示す底面図である。
【図6】図3のK−K断面矢視図である。
【図7】図6のA矢視図である。
【図8】図6のB矢視図である。
【図9】図6のC矢視図である。
【図10】図7のD−D断面矢視図である。
【図11】図7のE−E断面矢視図である。
【図12】図3のF−F断面矢視図である。
【図13】図7のG−G断面矢視図である。
【図14】図6のH−H断面矢視図である。
【図15】図2に示す電気めっき装置の不溶性アノードを保持したアノードホルダを示す正面図である。
【図16】図2に示す電気めっき装置の不溶性アノードを保持したアノードホルダを示す断面図である。
【図17】他の基板ホルダの要部拡大断面図である。
【図18】他の基板ホルダの要部拡大断面図である。
【図19】他の基板ホルダの要部拡大断面図である。
【図20】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の一例におけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図21】逆電解処理をめっき処理の後に行うことで、スルーホールの深さ向に沿った中央部に優先的にめっき膜を成長させることの説明に付する図である。
【図22】めっき処理において、めっき膜のより微視的な表面に、異常析出によって微小な凹凸が生じた状態を模式的に示す図である。
【図23】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図24】スルーホールの内部に向かってめっき膜の溶解が過度に進行し、これによって、最終的にスルーホールに埋込まれためっき膜の内部にボイドが生じる状態を模式的に示す図である。
【図25】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図26】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図27】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図28】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図29】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図30】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図31】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【図32】基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例おけるカソード電流密度と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図2は、本発明の電気めっき方法に使用される電気めっき装置の概要を示す縦断正面図である。図2に示すように、電気めっき装置50は、めっき槽51を具備し、このめっき槽51内のめっき液Q中には、半導体基板等の基板Wを保持した基板ホルダ10が吊下げて配置されている。このように基板ホルダ10をめっき液Qに浸漬した状態でめっき液Qの液面レベルLは、図2のLレベルとなる。基板ホルダ10に保持された基板Wの両露出面(表裏両面)に対向するように、不溶性アノード52,52がアノードホルダ58,58に保持されて配置している。不溶性アノード52,52は、下記の基板ホルダ10の第1保持部材11の穴11a及び第2保持部材12の穴12aに対応した形状の円形で且つ略同じ大きさに設定されている。
【0022】
基板Wと各不溶性アノード52との間には、絶縁材からなる調節板60がそれぞれ配置されている。各調節板60の中央部には、下記の基板ホルダ10の第1保持部材11の穴11a及び第2保持部材12の穴12aと相似形の円形状の穴が形成されている。各不溶性アノード52には、電流の流れる方向及び電流値を変更可能なめっき電源53の一端から延びる導線61aが接続され、めっき電源53の他端から延びる導線61bは、下記の基板ホルダ10の端子板27,28に接続されている。めっき電源53,53は、該めっき電源53,53を個別に制御する制御部59にそれぞれ接続されている。
【0023】
基板ホルダ10で保持されてめっき槽51内に配置される基板Wと各調整板60との間には、基板Wを平行に往復動してめっき液Qを攪拌パドル62が配置されている。めっき槽51の外側には、めっき槽51から溢れ出ためっき液Qを収容するための外槽57が設けられている。めっき槽51から溢れ外槽57に流れ込んだめっき液Qは、めっき液循環ポンプ54により、恒温ユニット55及びフィルタ56を通してめっき槽51の下部から該めっき槽51内に供給されて循環する。
【0024】
図3は基板ホルダ10の正面図、図4は基板ホルダ10の平面図、図5は基板ホルダ10の底面図、図6は図3のK−K断面矢視図、図7は図6のA矢視図、図8は図6のB矢視図、図9は図6のC矢視図、図10は図7のD−D断面矢視図、図11は図7のE−E断面矢視図、図12は図3のF−F断面矢視図、図13は図7のG−G断面矢視図、図14は図8のH−H断面矢視図である。
【0025】
基板ホルダ10は、板状の第1保持部材11と第2保持部材12を具備し、両保持部材11,12は、下端をヒンジ機構13で開閉自在に連結されている。ヒンジ機構13は、第2保持部材12に固定された樹脂材(例えば、HTPVC)からなる2本のフック13−1,13−1を具備し、フック13−1,13−1は、ステンレス鋼(例えば、SUS303)からなるフックピン13−2で第1保持部材11の下端部に回動自在に枢支されている。第1保持部材11は、樹脂材(例えば、HTPVC)からなり略5角形状で中央部に開口として穴11aが設けられ、その上部にはT字状の樹脂材(例えば、HTPVC)からなるハンガー14が一体的に取付けられている。第2保持部材12は、樹脂材(例えば、HTPVC)からなり略5角形状で中央部に開口として穴12aが設けられている。
【0026】
第1保持部材11と第2保持部材12は、ヒンジ機構13を介して閉じた状態(重ね合わせた状態)で、左右のクランプ15,16で保持されるようになっている。左右のクランプ15,16は、それぞれ樹脂材(例えば、HTPVC)からなり、第1保持部材11と第2保持部材12を重ね合わせた状態でその両側辺が嵌挿される溝15a,16aを有し、その下端が第1保持部材11の両側下端にピン17,18で回動自在に枢支されている。
【0027】
第1保持部材11の第2保持部材12に対向する面の穴11aの外周側には、図7に示すようにシールリング19が取付けられ、第2保持部材12の第1保持部材11に対向する面の穴12aの外周側には、図9に示すようにシールリング20が取付けられている。シールリング19,20はゴム材(例えば、シリコンゴム)からなる。また、第2保持部材12の第1保持部材11に対向する面のシールリング20の外側にはOリング29が取付けられている。
【0028】
シールリング19,20は、それぞれ断面が矩形状で、その内周側に突起部19a,20aを具備し、第1保持部材11と第2保持部材12との間に基板Wを介在させて重ね合わせた状態で突起部19aと突起部20aが基板Wの表面を押圧して密接し、穴11a,12aの外周側に位置する突起部19a,20a及びOリング29で囲まれた領域をめっき液の浸水しない水密状態の領域とする。第1保持部材11の第2保持部材12に対向する面には、図7及び図10に示すように、シールリング19を突出して、半導体ウエハ等の基板Wを位置決めするための計8本の基板ガイドピン21が穴11aの外周側に位置して立設されている。
【0029】
第1保持部材11の第2保持部材12に対向する面の穴11aの外周側には、図7、図11及び図12に示すように、導電プレート22が計6個設けられている。この6個の導電プレート22内の3個は、導電ピン23を介して、図11に示すように、基板Wの一方面(例えば表面)のシード層104(図1参照)に導通する。導電プレート22内の他の残り3個は、導電ピン23を介して、図12に示すように、基板Wの一方面(例えば裏面)のシード層104(図1参照)に導通する。
【0030】
上記6個の導電プレート22の内、基板Wの一方面(例えば表面)のシード層に導通する導電プレート22は、配線溝25内を通る絶縁被覆線26を介して、ハンガー14の一方の端子板27に設けられた電極端子27a,27b,27c(図4参照)に接続され、基板Wの他方面(例えば裏面)の導電部に導通する導電プレート22は、配線溝25内の絶縁被覆線26を介して、ハンガー14の他方の端子板28に設けられた電極端子28a,28b,28c(図4参照)に接続される。図7及び図13において、30は樹脂材(例えば、PVC)からなる配線押えである。
【0031】
上記構成の基板ホルダにおいて、第1保持部材11と第2保持部材12とを開いた状態で、第1保持部材11に立設している8本の基板ガイドピン21に囲まれた領域に基板Wを載置することにより、基板Wは、第1保持部材11の所定位置に位置決めされる。そして第1保持部材11と第2保持部材12とをヒンジ機構13を介して閉じ、更に左右クランプ15,16をそれぞれ回動させて、第1保持部材11と第2保持部材12の両辺を左右クランプ15,16の溝15a,16aに嵌挿する。これにより、基板Wは、第1保持部材11の所定位置に位置決めされた状態で保持される。
【0032】
また、これにより、シールリング19,20の突起部19a,20aとOリング29で囲まれた領域をめっき液の浸水しない水密状態に密閉すると同時に、基板Wの該突起部19a,20aより外側がこの密閉空間内に位置し、更に基板Wの両面の第1保持部材11の穴11aと第2保持部材12の穴12aに対応する部分が該穴11a,12aに露出する。また、6個の導電プレート22の内、基板Wの一方面の導電部に導通する導電プレート22は、ハンガー14の一方の端子板27の電極端子27a,27b,27cに接続され、基板Wの他方面の導電部に導通する導電プレート22は、ハンガー14の他方の端子板28に設けられた電極端子28a,28b,28cに接続される。
【0033】
図15は、図2に示す電気めっき装置50の不溶性アノード52を内部に保持したアノードホルダ58を示す正面図で、図16は、同じく断面図である。この例では、めっき液中の添加剤の影響でアノードの溶解が進んでしまうことを防止するため、例えばチタン素材上にイリジウム酸化物を被覆コートした不溶性アノード52を使用している。
【0034】
図15及び図16に示すように、アノーホルダ58は、中央孔70aを有するホルダ本体70と、ホルダ本体70の裏面側に配置されて中央孔70aを閉塞する塞板72と、ホルダ本体71の中央孔70aの内部を配置され、表面に不溶性アノード52を装着して該不溶性アノード52を中央孔70a内に位置させる円板状の支持板74と、ホルダ本体70の表面側に位置して、中央孔70aを包囲する位置に配置されるリング状のアノードマスク76を有している。支持板74の内部には、前記めっき電源53から延びる導線61aに電気的に接続されて支持板74の中央部に達し、この支持板74の中央部で不溶性アノード58に電気的に接続される導電板78を挿通させる通路74aが設けられている。
【0035】
ホルダ本体70の中央孔70a内に位置する不溶性アノード58の表面を覆う位置に中性隔膜からなる隔膜80が配置され、この隔膜80は、その周縁部をホルダ本体70とアノードマスク76で挟持されて固定されている。アノードマスク76は、ねじ82によってホルダ本体70に固定され、塞板72も同様に、ねじによってホルダ本体70に固定されている。
なお、上記のようなアノードホルダ58をめっき液中に浸漬させると、めっき液が、ホルダ本体71の中央孔70aの内部の不溶性アノード52及び支持板74との隙間に入り込む。
【0036】
不溶性アノード52および隔膜80を用いるのは以下の理由による。すなわち、めっき液に添加する添加剤の中に1価銅の生成を促進する成分が入っており、1価銅は、他の添加剤を酸化分解するため添加剤の機能は損なわれてしまう。このため、可溶性アノードは使用できない。また、不溶性アノードを使うと、アノード近傍に酸素ガスが発生し、酸素ガスの一部はめっき液中に溶解して溶存酸素濃度が上昇する。すると、これによっても、添加剤の酸化分解が生じやすい。このため、アノード近傍において添加剤の成分が酸化分解したとしても、基板近傍の添加剤の成分には影響が及ばないように、不溶性アノード58の表面を覆う位置に中性隔膜からなる隔膜80を配置することが望ましい。
さらに、アノード側の溶存酸素濃度が過度に上昇しないように、例えば散気管(図示せず)を用いてアノード近傍を空気または窒素などでバブリング(エアレーション)を行うことがさらに望ましい。
このように、アノードホルダ58で保持された不溶性アノード52の表面を隔膜80で覆い、隔膜80が基板ホルダ10で保持されてめっき槽51内に配置される基板Wと対面するように不溶性アノード52を配置することで、例えばめっき液をバブリング(エアレーション)する時にアノード近傍に酸素ガスが発生し、この酸素ガスがめっき液に溶解してめっき液中の溶在酸素濃度が上昇してしまうことを防止することができる。
【0037】
上記のようなめっき装置50を用い、表裏両面をそれぞれ露出させて基板Wを保持した基板ホルダ10を、基板Wの一方の面(表面)が一方の不溶性アノード52と、基板Wの他方の面(裏面)が他方の不溶性アノード52とそれぞれ対向するように配置し、基板Wの表面と該表面と対向する位置に配置される不溶性アノード52との間、及び基板Wの裏面と該裏面と対向する位置に配置される不溶性アノード52との間に、めっき電源53から制御部59で制御されためっき電流をそれぞれ供給することで、基板Wの表裏両面を同時にめっきする。このめっき時に、必要に応じて、攪拌パドル62を基板Wと平行に往復動させることで、めっき液Qを攪拌する。これによって、図1に示すように、基板Wの内部に形成したスルーホール100a内にめっき膜106を成長させる。
【0038】
図17乃至図19は、他の基板ホルダの異なる位置における要部拡大断面図を示す。この例の前述の基板ホルダと異なる点は、以下の通りである。すなわち、前述の例の基板ホルダに備えられている導電ピン22,23の代わりに、基端を固定した、弾性を有する板ばねからなる導電板90,92を使用し、両保持部材11,12で基板Wを保持した時に、この導電板90,92の自由端部を基板Wの表面及び裏面に弾性的に接触させて、基板Wの表面及び裏面のシード層104(図1参照)に導通させるようにしている。
【0039】
更に、図18及び図19に示すように、シールリング19,20をそれぞれ固定するシールリング押え94、96を備え、このシールリング押え94,96の円周方向に沿った所定位置に、基板Wを位置決するためのガイド用突起97,98を互い違いに形成し、このガイド用突起97,98を、前述の例の基板ホルダの基板ガイドピン21の代わりに使用している。つまり、ガイド用突起97,98の自由端側の内周面にはテーパ面97a,98aがそれぞれ設けられ、両保持部材11,12で基板Wを保持した時に、基板Wの外周端面がテーパ面97a,98aに接触してガイドされ、これによって、基板Wの位置決めが行われるようになっている。
【0040】
図20は、基板Wの表面と該表面と対向する位置に配置される不溶性アノード52との間に供給されるめっき電流の一例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。なお、基板Wの裏面と該裏面と対向する位置に配置される不溶性アノード52との間に供給されるめっき電流は、基板Wの表面と該表面と対向する位置に配置される不溶性アノード52との間に供給されるめっき電流と同期している。ただし、必ずしも同期させる必要はなく、基板Wの表面側と裏面側に供給されるめっき電流を同期させるか否かにおいて、これに制限されるものではない。以下、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流におけるカソード電流密度と時間との関係として説明する。
【0041】
図20に示す例では、基板表面とアノードとの間にパルス電流を供給して基板表面に所定時間のめっきを行うめっき処理Aと、基板表面とアノードとの間にめっき時とは逆方向の電流を供給する逆電解処理Bを交互に繰返すようにしている。このめっき処理Aの時間は、例えば50〜100msで、逆電解処理Bの時間は、例えば0.1〜10ms、好ましくは0.5〜1msである。
【0042】
なお、図20に仮想線で示すように、逆電解処理Bの後、めっき処理Aを始める前に、基板表面とアノードとの間に電流を流さない、例えば0.05msの休止期間Cを設けるようにしてもよい。このように、休止期間Cを設けることで、スルーホール内に位置するめっき液の金属イオン分布をより均一化して、より効率的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行うことができる。このことは、以下の各例においても同様である。
【0043】
この例においては、めっき電流が順方向(めっきを行う方向)に流れてカソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASD(A/dm)となる正電解(パルスピッチP)と、めっき電流が逆方向に流れてカソード電流密度が負の電流密度D、例えば−0.05〜−4ASDとなる逆電解(パルスピッチP)を繰返すようにしたPRパルス電流を使用してめっき処理Aを行っている。このPRパルス電流における逆電解時のパルスピッチPは、例えば0.5msである。また、カソード電流密度が負の電流密度D、例えば−30〜−40ASDとなるようにして、パルスピッチPを、例えば0.1〜10ms、好ましくは0.5〜1msとした1回のパルスより逆電解処理Bを行っている。
【0044】
このように、例えばカソード電流密度Dが−30〜−40ASDとなるようにした逆電解処理Bをめっき処理Aの後に行うことで、図21に仮想線で示すように、スルーホール100aの角部に析出し易いめっき膜106aを溶解させて、図21に実線で示すように、スルーホール100aの深さ方向に沿った中央部に優先的にめっき膜106を成長させることができる。
【0045】
めっき処理にあっては、図22に模式的に示すように、めっき膜106のより微視的な表面において、異常析出によって微小な凹凸106bが生じることがあるが、この例のように、カソード電流密度Dが、例えば−0.05〜−4ASDとなる比較的小さな逆電解をかけることにより、このような異常析出によって微小な凹凸の発生を防止することができる。このような異常析出による微小な凹凸は、互いに繋がってめっき膜の内部に微小ボイドが発生する要因となる。
【0046】
図23は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図20に示す例と異なる点は、順方向に電流を供給する正電解処理を挟んで、パルスピッチPを、例えば0.1〜10ms、好ましくは0.5〜1msとしたパルスを2回印加して逆電解処理Bを行っている点にある。
【0047】
図20に示す、カソード電流密度Dが−30〜−40ASDとなるようにした逆電解処理Bは、例えば0.1ms〜10msのパルスピッチPで行われるが、このパルスピッチPが1msより大きい場合、図24(a)に模式的に示すように、スルーホール100aの内部に向かってめっき膜106の溶解が過度に進行して過溶解部112が形成され、図24(b)に示すように、過溶解部112の開口端が閉塞して、最終的にスルーホールに埋込まれためっき膜106の内に幅狭の猫目状のボイド114が生じることがある。このため、パルスピッチPは、0.1〜1.0msであることが好ましく、0.5〜1.0msであることが更に好ましい。
【0048】
しかし、基板Wに設けられたスルーホールにあっては、そのアスペクト比の違いによって、パルスピッチが1.0msより短い1回のパルスによる逆電解処理ではスルーホールの深さ方向に沿った中央部から優先的にめっき膜を埋込む理想的な埋込みができないことがある。このようなアスペクト比のスルーホールに対して、図23に示す例のように、パルスピッチPが1.0msより短い2回のパルスによる逆電解処理Bを行うことで、理想的な埋込みを行うことができる。
【0049】
図25は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係の一例を示す。この例では、例えば図1(a)〜(c)に示す、スルーホール100a内のめっき膜106がスルーホール100aの深さ方向に沿ったほぼ中央で接合するまでの第1区間のめっき処理A(第1めっき処理)と、図1(c)〜(d)に示す、スルーホール100a内に形成された凹部108内にめっき膜106を所定厚さとなるまで埋込む第2区間のめっき処理(第2めき処理)Aと、図1(d)以降のピンチオフの危険性が減った第3区間のめっき処理(第3めっき処理)Aの異なる3種類のめっき処理を行うようにしている。
【0050】
図25は、第1めっき処理A、第2めっき処理A及び第3めっき処理Aを、逆電解処理B(図20参照)を挟んで、それぞれ各1回行うように省略して図示しているが、第1めっき処理A、第2めっき処理A及び第3めっき処理Aは、逆電解処理Bを挟んで所定の回数に亘って行われる。このことは、以下の各例においても同様である。
【0051】
この例では、めっき電流が順方向(めっきを行う方向)に流れてカソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるようにめっき電流を供給するめっき電流の供給と該めっき電流の供給停止を繰返すようにしたオン・オフパルス電流を使用してめっき処理A,A,Aを行っている。そして、めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPの方がめっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPより短く(P<P)、めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPの方がめっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPより短く(P<P)設定され、めっき処理A,A,Aにオン・オフパルス電流の停止ピッチP、P,P10は全て等しく(P、P,P10)設定されている。これによって、平均カソード電流密度が段階的に増加するようになっている。なお、平均カソード電流密度が直線状に徐々に増加するようにしてもよい。
【0052】
このように、オン・オフパルス電流を使用して、めっき処理中に電流の供給を停止するめっき休止時間を設けることで、スルーホール内のめっき液中の金属イオン濃度をめっき休止時間中に回復させてめっき膜中にボイド等の欠陥が生じることを防止することができる。また、めっきの進行に伴ってスルーホールが徐々にめっき膜で埋まってゆくに従って、スルーホールの実質的なアスペクト比が変化するが、このようにアスペクト比が変化する場合に、平均アノード電流密度が増加するようにめっき処理を行うことで、スルーホールのアスペクト比の実質的な変化に従った効率的なめっき膜のスルーホール内への埋込みを行って、めっき時間を更に短縮することができる。
【0053】
更に、めっきの進行に伴ってめっき電流密度を段階的に増加させることは一般によく知られているが、低い電流密度から高い電流密度に渡って一価銅の生成を抑制することは難しく、この例のように、カソード電流密度のピーク値を一定とすることで、一価銅の生成を抑制してめっき液が劣化するのを防止することができる。
【0054】
図26は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図25に示す例と異なる点は、パルスピッチPを、例えば0.1〜10ms、好ましくは0.5〜1msとした1回のパルスを印加する逆電解処理Bの代わりに、パルスピッチPを、例えば0.1〜10ms、好ましくは0.5〜1msとしたパルスを2回印加するようにした、図23に示す逆電解処理Bを行っている点にある。
【0055】
図27は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図25に示す例と異なる点は、めっき処理A,A,Aの処理時間を等しく設定し、第1めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPの方が第2めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPより短く(P<P)、第2めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPの方が第3めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流のパルスピッチPより短く(P<P)なり、かつ、第1めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流の停止ピッチPの方が第2めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流の停止ピッチPより長く(P>P)、第2めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流の停止ピッチPの方が第3めっき処理A時におけるオン・オフパルス電流の停止ピッチP10より長く(P>P10)なるように設定されている点にある。これによって、平均カソード電流密度が段階的に増加するようになっている。
【0056】
図28は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図25に示す例と異なる点は、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるようにめっき電流を供給するめっき電流の供給と該めっき電流の供給停止を繰返すようにしたオン・オフパルス電流の代わりに、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるような第1めっき電流と、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば0.1〜0.5ASDとなるような第2めっき電流を供給する複合パルス電源を使用した点にある。
【0057】
このように、複合パルス電流を使用し、めっき電流の供給を停止する代わりに、例えば0.1〜0.5ASDの微弱な電流を流して、めっき処理中にめっき膜を常に成長させることで、めっき膜がめっき処理中に溶解してしまうことを防止することができる。
【0058】
図29は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図25に示す例と異なる点は、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるようにめっき電流を供給するめっき電流の供給と該めっき電流の供給停止を繰返すようにしたオン・オフパルス電流の代わりに、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなる正電解と、めっき電流が逆方向に流れてカソード電流密度が負の電流密度D、例えば−0.05〜−4ASDとなる逆電解を繰返すようにしたPRパルス電流を使用した点にある。
【0059】
図30は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図25に示す例と異なる点は、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるような直流めっき電流を流し、第1めっき処理Aの処理時間より第2めっき処理Aの処理時間の方が、第2めっき処理Aの処理時間より第3めっき処理Aの処理時間の方が順に長くなるように行うようにして、めっき処理A,A,Aを行うようにした点にある。
【0060】
例えばスルーホールのアスペクト比やめっき下地の構成、めっき液の性質等によっては、逆電解処理の間に休止時間等を設ける必要がない場合がある。このような場合には、図30に示す、カソード電流密度と時間との関係が得られるように、基板表面とアノードとの間にめっき電流を供給することで、めっき時間を短縮し、効率的なめき膜の埋込みを行うことができる。
【0061】
図31は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図20に示す例と異なる点は、例えば、図1(d)に示す、スルーホール100a内に形成された凹部108内にめっき膜106を所定厚さとなるまで埋込まれ、ピンチオフの危険性が減った段階で、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるようにした直流めっき電流によるめっき処理A4に移行するようにした点である。このピンチオフの危険性が減った段階は、例えば、図1(d)に示すように、基板のスルーホール100a内に相当する部分の埋込みがほぼ完了し、基板表面に残った窪み(ディンプル)を最後に埋込む段階である。この時、カソード電流密度が、その前のパルスピーク電流密度と同じくなるように直流めっき電流を流す必要はなく、その前のパルスピーク電流密度よりも高くなるように直流めっき電流を流すよういにしても良い。更に、カソード電流密度が段階的に高くなるように直流めっき電流を流すようにしても良い。それにより、めっき時間を短縮することができる。
【0062】
図32は、基板表面とアノードとの間に供給されるめっき電流の更に他の例におけるカソード電流密度と時間との関係を示す。この例の図27に示す例と異なる点は、第3めっき処理Aを、カソード電流密度が正の電流密度D、例えば1〜3ASDとなるようにした直流めっき電流によって行うようにした点である。これによって、めっき時間を短縮することができる。
【0063】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0064】
10 基板ホルダ
11,12 保持部材
19,20 シールリング
50 電気めっき装置
51 めっき槽
52 不溶性アノード
53 めっき電源
58 アノードホルダ
59 制御部
62 攪拌パドル
76 アノードマスク
80 隔膜
100a スルーホール
106 めっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスルーホールを形成した基板をめっき液中に浸漬させてめっき槽内に配置し、
めっき槽内に配置される基板の表面及び裏面にそれぞれ対向する位置にアノードをめっき槽内のめっき液中に浸漬させて配置し、
基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、パルス電流をそれぞれ供給して基板の表裏両面に所定時間のめっきを行うめっき処理を複数回に亘って行い、
基板の表面と該表面と対向する位置に配置されるアノードとの間、及び基板の裏面と該裏面と対向する位置に配置されるアノードとの間に、めっき時とは逆方向の電流をそれぞれ供給する逆電解処理を前記めっき処理の間に行うことを特徴とする電気めっき方法。
【請求項2】
前記パルス電流は、順方向の電流の供給と逆方向の電流の供給を断続的に繰返すPRパルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法。
【請求項3】
前記パルス電流は、順方向の電流の供給と停止を断続的に繰返すオン・オフパルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法。
【請求項4】
前記パルス電流は、電流値の異なる2つのパルス電流を組合せた複合パルス電流であることを特徴とする請求項1記載の電気めっき方法。
【請求項5】
前記めっき処理を、めっきの進行に伴って、前記逆電解処理を挟み、平均電流密度が徐々に増加するように行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気めっき方法。
【請求項6】
前記逆電解処理を、順方向に電流を供給する正電解処理を挟んで、複数回繰返して行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−136765(P2012−136765A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291656(P2010−291656)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】