説明

電気めっき装置

【課題】めっき対象物が小さい場合にも、バラツキが少なく、効率のよいめっきを行うことが可能な電気めっき装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気めっき装置1は、ポンプ14によってめっき槽10aにめっき液90を供給するものであり、めっき槽10aには、めっき液90が噴出する噴出部20aが設けられている。そして、噴出部20aの噴流によってめっき対象物が上昇するめっき対象上昇部80と、めっき対象上昇部80とは仕切られるものであってめっき対象物91が下降するめっき対象下降部81とを有しており、めっき対象物91はめっき対象上昇部80とめっき対象下降部81との間を循環することができる。また、めっき対象下降部81に陰極である螺旋板41が配置され、螺旋板41の上側にめっき対象物91が接触してめっきが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品などのめっきのための電気めっき装置に関するものであり、特に、めっき対象物が精密部品などの小物部品などのめっきに好適な電気めっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、部品などにめっきを行う方法として様々な方法があるが、その方法の1つに電気めっきがある。
電気めっきを行う場合、通常、めっき液が通過可能であって内部に空間を有するバレルを用い、このバレルにめっき対象物を入れて、電極(陰極)をバレル内に差し込んで行う。そして、バレルを回転させながら、電気を流すと、めっき対象物の表面上でめっき液の金属イオンが金属となってめっきが行われる。また、多数のめっき対象物のめっきを行う場合であっても、バレルを回転させることにより電気の供給が均一に行われ、全体に均一にめっきを行うことができる。
【0003】
また、回転可能なバレルを用いる方法以外にも、例えば、特許文献1に開示されているめっき装置などを用いてめっきすることができる。
【特許文献1】実開平5−56961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バレルは、めっき液が通過可能であってめっき対象物を通過させないようにする必要がある。そのため、めっき対象が小さいものほど、めっき液を通過させるための孔を小さくする必要があるのでめっき液の循環が悪くなり、バレル内のめっき液中の金属イオンの消費に対して供給できないおそれがある。
【0005】
また、めっき対象に電気を流すためには、電極(陰極)に直接的又は導通物を介して間接的に接触させる必要がある。しかしながら、めっき対象物が小さいと表面積が小さくなるので、個々のめっき対象物の間で、電極などとの接触が不均一になりやすく、めっきの度合いに差が生じやすかった。
そして、特許文献1に記載された方法などのように、めっき液を攪拌して電極の接触が偏らないようにする方法が考えられるが、めっき液の攪拌によって、めっき対象物が浮遊する時間が長くなり、電極に接触する時間が短くなってしまい効率的なめっきを行うことができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、めっき対象物が小さい場合にも、バラツキの少ないめっきを行うことが可能な電気めっき装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、めっき液が噴出する噴出部が設けられ、前記噴出部の噴流によってめっき対象物が上昇するめっき対象上昇部と、めっき対象上昇部とは仕切られるものであってめっき対象物が下降するめっき対象下降部とを有し、めっき対象物はめっき対象上昇部とめっき対象下降部との間を循環することができ、さらに、めっき対象下降部に陰極が配置され、陰極の上側にめっき対象物が接触してめっきが行われることを特徴とする電気めっき装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、噴出部の噴流によってめっき対象物が上昇するめっき対象上昇部と、めっき対象上昇部とは仕切られるものであってめっき対象物が下降するめっき対象下降部とを有し、めっき対象物はめっき対象上昇部とめっき対象下降部との間を循環し、めっき対象下降部に配置される陰極の上側にめっき対象物が接触してめっきが行われるものであるので、めっき対象物をバラツキ無く陰極に接触させることができ、効率のよいめっきを行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、筒状部が設けられ、前記筒状部によってめっき対象上昇部とめっき対象下降部とを仕切るものであり、めっき対象下降部はめっき対象上昇部の周りに配置するものであることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、筒状部によってめっき対象上昇部とめっき対象下降部とを仕切るものであり、めっき対象下降部はめっき対象上昇部の周りに配置するものであるので、構造を複雑にすることなくめっき対象上昇部とめっき対象下降部とを仕切ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、噴出部は前記筒状部の内側に向かってめっき液を噴出するものであり、筒状部の下端付近は下方に向かって拡がっていることを特徴とする請求項2に記載の電気めっき装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、噴出部は前記筒状部の内側に向かってめっき液を噴出するものであり、筒状部の下端付近は下方に向かって拡がっているので、噴出部からめっき液を噴出する際にめっき液を巻き込むので、めっき対象物の循環をより確実に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、陰極は螺旋の板状であって回転させることができることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気めっき装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、陰極は螺旋の板状であって回転させることができるものであるので、めっき対象物が陰極に接触する時間をより長くすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、陰極の回転速度は、少なくとも2段階に変更することができるものであって、周期的に変更するように制御されていることを特徴とする請求項4に記載の電気めっき装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、陰極の回転速度は、少なくとも2段階に変更することができるものであって、周期的に変更するように制御されているので、めっき対象物を陰極上を移動させてめっきのバラツキを小さくしつつ、めっきを行うことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、筒状部及び陰極は一体となっており、筒状部と陰極とが回転するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気めっき装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、筒状部及び陰極は一体となっており、筒状部と陰極とが回転するものであるので、陰極の回転を容易に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、筒状部は、電気を導通することができる部材によって形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気めっき装置である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、筒状部は、電気を導通することができる部材によって形成されているので、陰極と筒状部とを導通させることにより、陰極に容易に電気を供給することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気めっき装置によれば、めっき対象物が小さい場合にも、バラツキが少なく、効率的のよいめっきを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における電気めっき装置を示した斜視図である。図2は、図1に示される電気めっき装置の模式図である。図3は、図1に示される電気めっき装置のめっき槽内を示す断面図である。図4は、回転体を示した斜視図である。
【0023】
本発明の第1の実施形態における電気めっき装置1は、図1に示されるように、めっき槽10aを有する本体部10と、めっきの制御などを行う制御部13と、ポンプ14と、本体部10の下側に配置されるタンク15とを有している。なお、本実施形態のめっき槽10aは透明樹脂板により形成されており、図1に示されるように、めっき槽10a内に配置される筒体30や有孔板31が見えている。
そして、電気めっき装置1によって、めっき対象物91のめっきを行うことができる。本実施形態の電気めっき装置1では、めっき対象物91は小物部品のめっきに向くものであるが、めっき対象物91の大きさや形状は限定されるものではない。
【0024】
そして、図2に示されるように、ポンプ14につながる供給管20によってめっき液90をタンク15からめっき槽10aに供給し、また、排出管21やオーバーフロー管22によってめっき槽10aからタンク15に流れ、めっき液90は循環するものである。
【0025】
そして、供給管20のめっき槽10a側の出口部分、すなわち、めっき液90のめっき槽10aの入口部分には、めっき液90が噴出する噴出部20aが設けられ、噴出方向にめっき液90の噴流が形成される。噴出部20aは、めっき槽10aの底に配置され、方向は上向きである。
【0026】
また、排出管21のめっき槽10a側の入口部分、すなわち、めっき槽10aのめっき液90の出口部分は排出部21aが設けられており、排出部21aはめっき槽10aの底付近に配置している。
オーバーフロー管22のめっき槽10a側の入口部分はオーバーフロー部22aが設けられており、オーバーフロー部22aはめっき槽10aの上側に配置している。そして、オーバーフロー管22によって、オーバーフロー部22aより水位が上昇するほどめっき液90が供給された場合に、オーバーフロー部22aからめっき液90が流れ込んで水位の上昇を防ぐ。
【0027】
本実施形態のポンプ14は、インバーターによって調節することができるものであり、めっき槽10aへのめっき液90の供給量を変えることができる。
【0028】
本体部10のめっき槽10aの内部には、図3に示されるように、筒体30、有孔板31、回転体32及び陽極吊り下げ部36が配置している。そして、めっき槽10aの外側であって回転体32の上側には、モータ33及び陰極側電源接続部35が配置している。
【0029】
筒体30は、図1に示されるように、開口30aを有する円筒状の部材であり、樹脂製のものが用いられている。そして、水流などにより、筒体30の内側に配置される有孔板31の変形を防ぐものである。
有孔板31は、めっき液90を通過可能にしつつ、部品などのめっき対象物91が外側に飛びだすことを防止するものであり、円筒形であって樹脂製のものが用いられている。具体的な材質としては、バレルめっきに用いられるバレルと同じものを採用することができる。
【0030】
有孔板31の下側は、すり鉢状のテーパー部38が形成されており、後述するように、めっき対象物91が落下する際に、テーパー部38の下側に配置される噴出部20a側に誘導する。
【0031】
回転体32は、図2、図3に示されるように、筒体30や有孔板31の内側に配置するものであり、図4に示されるように、筒状部40、螺旋板41及び連結部材44とを有している。
【0032】
筒状部40は筒状であって、内側と外側とを仕切っている。そして、内側が、めっきを行う際にめっき対象物91が上昇するめっき対象上昇部80となり、外側が、めっきを行う際にめっき対象物91が下降するめっき対象下降部81となる。
【0033】
筒状部40は、円筒部材42とエゼクター部材43とを有しており、エゼクター部材43は円筒部材42の下側に配置している。円筒部材42は金属製のパイプであり、上側に開口42aが形成されている。開口42aは4方向に4ヵ所形成されている。また、4ヵ所の開口42aの上下方向の位置は同じであり、螺旋板41の上側よりも、さらに上側に配置されている。そして、図2に示されるように、開口42aは、オーバーフロー管22のオーバーフロー部22aの位置付近であり、電気めっき装置1の使用時には、水位が開口42aの下端よりも上側となる。
【0034】
また、エゼクター部材43は、図3に示されるように、下側部43aが円筒部材42からはみ出すものであり、上側部43bが円筒部材42の内側に配置しており、上側部43bを挿入することにより円筒部材42と固定される。
【0035】
エゼクター部材43の内側の形状は、上端及び下端側が広く、中央付近が狭い形状であって狭窄部45が形成されている。そして、狭窄部45から離れるほど徐々に拡がっており、筒状部40の下側付近の形状は、下方に向かって拡がるような形状となっている。また、下側部43aの断面積は、円筒部材42の断面積より広くなっている。
【0036】
また、筒状部40の下側に、噴出部20aが配置しており、噴出部20aの向きが筒状部40の内部に向かっている。そのため、噴出部20aから噴出されためっき液90は筒状部40の内部を上昇する。
このめっき液90の上昇のとき、エゼクター部材43によって、周りのめっき液90を巻き込みながら上昇する。すなわち、噴出部20aからの噴流によって、筒状部40の下側付近のめっき液90も上昇するため、筒状部40の外側のめっき液90も上昇する。
【0037】
螺旋板41は、図4に示されるように、連続する螺旋状の板であり、筒状部40の外側の周りに配置されるものであり、めっき対象下降部81に配置されている。螺旋板41は金属製であり、電気を通じることができる材質であり、後述するように、螺旋板41は陰極側電源接続部35は電気的につながって陰極となるものであり、本実施形態の電気めっき装置1では、陰極がめっき対象下降部81に配置に配置される。
【0038】
また、螺旋板41の上下方向から見た形状は、内側、外側共に円形である。そして、螺旋板41の内側の大きさは筒状部40の外径とほぼ等しく、螺旋板41の内側は筒状部40に固定されている。また、螺旋板41の外側の大きさは、有孔板31の内径よりも小さく、螺旋板41の外側の縁部41aと有孔板31との間には、図3に示されるように、隙間46が形成されている。
【0039】
連結部材44は金属製であり、円筒部材42の上側に位置している。そして、円筒部材42と連結部材44、及び、円筒部材42と螺旋板41は、溶接によって固定されており、連結部材44と螺旋板41との間は電気を通じることができるようになっている。
【0040】
図3に示されるように、回転体32の連結部材44は、回転体32の上部に配置されるモータ33側に固定されており、回転体32は回転可能となっている。この回転体32の回転速度は変えることができ、制御部13によって、速度を少なくとも2段階に変えることができる。
また、連結部材44は陰極側電源接続部35と電気的に接続されており、螺旋板41と陰極側電源接続部35との間で電気を導通させることができる。また、回転体32が回転しても、陰極側電源接続部35が回転しないように、ロータリーコネクタ47を介して連結されている。
【0041】
陽極吊り下げ部36は、陽極棒92を吊り下げる部分である。そして、図1に示されるように、陽極吊り下げ部36は、めっき槽10aの内部に配置されるものであるが、一部分が外部に露出して、陽極側電源接続部36aが形成される。
陽極吊り下げ部36は銅板によって形成されており、めっき槽10aの上側に配置され、筒体30を取り巻くように配置している。
【0042】
陽極吊り下げ部36の上下方向の位置は、図2に示されるように、オーバーフロー管22のオーバーフロー部22aの位置よりも上側であり、電気めっき装置1の使用時には、めっき液90が接触せず、陽極吊り下げ部36に吊り下げられた陽極棒92がめっき液90に接触するようになっている。
めっきを行う際に用いられる陽極棒92は、一般に行われるものと同様なものを用いることができ、めっきによる金属イオンを補給することができる溶解性ものを用いても良く、また、不溶性のものを用いても良い。
【0043】
次に、電気めっき装置1を用いて、めっき対象物91のめっきを行う方法について、図2などを用いて説明する。
まず、有孔板31の内側に、めっき対象物91を入れる。めっき対象物91を入れる場合には、回転体32やモータ33を外すことにより容易に行うことができる。そして、めっき液90が供給されない状態では、めっき対象物91は上昇することがなく、めっき対象物91は噴出部20a付近に集まっている。なお、噴出部20aには、フィルター20bが設けられているので、めっき対象物91が落ちることはない。
【0044】
そして、ポンプ14を作動し、噴出部20aからめっき液90を供給する。供給されるめっき液90の一部は、有孔板31から外に出て、排出管21から排出されるが、排出される量よりも供給される量が多いので、めっき槽10aのめっき液90の水位が徐々に上がる。
水位が上昇して、オーバーフロー管22のオーバーフロー部22aまで到達すると、オーバーフロー部22aからもめっき液90が排出されるので、オーバーフロー部22aの高さで水位が維持される。
【0045】
また、噴出部20aからのめっき液90の噴流は、筒状部40内に流れ込み、筒状部40内では、めっき液90が上昇する流れが発生する。そして、このめっき液90が上昇する流れに乗ってめっき対象物91が上昇し、筒状部40内がめっき対象上昇部80となる。
【0046】
そして、筒状部40内のめっき対象上昇部80を上昇した、めっき液90及びめっき対象物91は、筒状部40の上部に形成された開口42aから排出される。開口42aから排出されためっき対象物91は、陰極である螺旋板41の上に載って、螺旋板41の上側で接触する。
ポンプ14を作動させながら、陰極側電源接続部35と陽極側電源接続部36aとの間で電圧をかけると、螺旋板41の上に載っためっき対象物91の表面上で、めっき液90中の金属イオンが金属となって、めっき対象物91のめっきが行われる。
【0047】
また、めっきを行う際には、モータ33によって回転体32を回転させる。そうすると、めっき対象物91が螺旋板41上で動くので、バラツキの少ないめっきを行うことができる。特に、本実施形態の電気めっき装置1では、回転体32の回転速度は変えることができるので、さらにバラツキを少なくすることができる。
【0048】
本実施形態の電気めっき装置1では、回転体32の回転速度には、低速回転状態と高速回転状態とがあり、低速回転状態は、高速回転状態よりも遅い回転である。これらの状態の回転速度やそれぞれの状態での運転時間は特に限定されるものでなく、めっき対象物91の形状や大きさ、その他の条件により変更可能であるが、例えば、低速回転状態での回転速度を5〜10rpm、高速回転状態での回転速度を15〜30rpmとすることができる。
【0049】
そして、ポンプ14を作動させ、陰極側電源接続部35と陽極側電源接続部36aとの間で電圧をかけながら、低速回転状態と高速回転状態とを所定の周期で交互に繰り返す。低速回転状態では、めっき対象物91が螺旋板41上で動きは小さく、主に、めっき対象物91のめっきが行われる。また、高速回転状態では、めっき液90と螺旋板41との相対速度に差ができ、めっき対象物91が螺旋板41上で動くことになり、めっきされる部分が偏ることを防止することができる。
【0050】
なお、回転体32の回転方向は、特に限定されるものではないが、回転によってめっき対象物91が螺旋板41上で動くようにして、円筒部材42の開口42a付近にめっき対象物91が滞留しないように、螺旋板41を下るようにするため、図4に示す矢印の方向に回転させることができる。
【0051】
めっき対象物91はめっきされながら、めっき対象下降部81に配置された螺旋板41を徐々に下って、筒状部40の下側に移動する。そして、筒状部40の下側に移動しためっき対象物91は、噴流による巻き込まれる流れや、テーパー部38による中心側への誘導によって、再びめっき対象上昇部80を上昇して循環する。
【0052】
このように、めっき対象物91は、めっき対象上昇部80とめっき対象下降部81との間を繰り返して循環して、めっき対象下降部81で下降する際にめっきが行われる。そして、めっき対象上昇部80でのめっき対象物91の上昇は、噴流によって行われるので時間は短く、また、めっき対象下降部81でのめっき対象物91の下降は、螺旋板41上を徐々に下るので時間が長い。したがって、めっき対象物91の螺旋板(陰極)41でめっきされる時間をより長くすることができ、効率よいめっきを行うことができる。
【0053】
そして、所定の時間運転させた後に、電源を停止してめっきを終了させる。めっき液90の供給を止めれば、排出管21からめっき液90が排出されるので、めっき対象物91を取り出す。このとき、めっき対象物91の一部が、螺旋板41の上に載っているので、めっき対象物91の回収作業が行いにくい。そこで、以下に示すめっき対象回収工程を行うことにより、めっき対象物91の回収作業を容易にすることができる。
【0054】
めっき対象回収工程では、めっき液90の水位が維持できる程度に噴出部20aからのめっき液90の供給を小さくし、さらに、回転体32を高速回転状態で継続して回転させる。この状態では、噴出部20aからの噴流が小さくなり、めっき対象物91が上昇しなくなる。また、回転体32は高速回転状態であるので、めっき対象物91は螺旋板41上を移動して、さらに、遠心力により螺旋板41と有孔板31との間の隙間46からめっき対象物91が落ちる。
【0055】
めっき対象回収工程によって、螺旋板41上のめっき対象物91が噴出部20a付近に移動し、最終的には全てのめっき対象物91が、噴出部20a付近に移動する。そうして、回転体32を取り外すことにより、めっき対象物91を容易に回収することができる。
なお、めっき対象回収工程の高速回転状態の回転速度は、めっきの際の回転速度とは同じであってもよく、異なる速度であってもよい。
【0056】
上記した実施形態では、めっき対象下降部81に配置される陰極は、連続する螺旋状の板である螺旋板41を用いたが、めっき対象物91が上側に接触でき、めっき対象物91が下降することができれば、他の形状のものを用いることができる。例えば、一部が不連続な螺旋状の板や、螺旋でなく周方向に傾かないものであって、部分的に欠落する板状のものを層状に配置したものを用いることができる。
【0057】
さらに、めっき対象物91の螺旋板41上の移動を確実にさせるため、振動発生装置(バイブレータ)を設けることもできる。そして、この振動発生装置によって、回転体32を上下方向(軸方向)に振動させ、螺旋板41上のめっき対象物91が移動しやすい状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態における電気めっき装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示される電気めっき装置の模式図である。
【図3】図1に示される電気めっき装置のめっき槽内を示す断面図である。
【図4】回転体を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 電気めっき装置
10 本体部
10a めっき槽
20a 噴出部
32 回転体
40 筒状部
41 螺旋板(陰極)
42 円筒部材
43 エゼクター部材
80 めっき対象上昇部
81 めっき対象下降部
90 めっき液
91 めっき対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液が噴出する噴出部が設けられ、前記噴出部の噴流によってめっき対象物が上昇するめっき対象上昇部と、めっき対象上昇部とは仕切られるものであってめっき対象物が下降するめっき対象下降部とを有し、めっき対象物はめっき対象上昇部とめっき対象下降部との間を循環することができ、さらに、めっき対象下降部に陰極が配置され、陰極の上側にめっき対象物が接触してめっきが行われることを特徴とする電気めっき装置。
【請求項2】
筒状部が設けられ、前記筒状部によってめっき対象上昇部とめっき対象下降部とを仕切るものであり、めっき対象下降部はめっき対象上昇部の周りに配置するものであることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項3】
噴出部は前記筒状部の内側に向かってめっき液を噴出するものであり、筒状部の下端付近は下方に向かって拡がっていることを特徴とする請求項2に記載の電気めっき装置。
【請求項4】
陰極は螺旋の板状であって回転させることができることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気めっき装置。
【請求項5】
陰極の回転速度は、少なくとも2段階に変更することができるものであって、周期的に変更するように制御されていることを特徴とする請求項4に記載の電気めっき装置。
【請求項6】
筒状部及び陰極は一体となっており、筒状部と陰極とが回転するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気めっき装置。
【請求項7】
筒状部は、電気を導通することができる部材によって形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−191726(P2007−191726A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8147(P2006−8147)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(395020689)株式会社島谷技研 (3)