説明

電気インピーダンストモグラフィ装置および電気インピーダンストモグラフィのための方法

【課題】従来様式の装置を、データ検出時に電極帯で発生するノイズレベルに関して改善すること、および電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定値を求める方法を提供すること
【解決手段】異なる2つのグループの2つの隣接する電極の少なくとも1つの電極が付加的な電極リード線を有しており、当該付加的な電極リード線が、前記隣接するグループの前記リード線ケーブルを介して案内されている電気インピーダンストモグラフィ装置および異なるグループに属する少なくとも2つの隣接する電極のうちの少なくとも1つの電極を、付加的な電極リード線とコンタクトさせるステップを有しており、当該付加的な電極リード線は、当該電極に隣接する電極グループのリード線ケーブルを介して延在する、電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気インピーダンストモグラフィ装置および、電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気インピーダンストモグラフィ(EIT)の使用は、医療分野において拡大してきている。典型的なEIT機器は、8個、16個または32個の電極をデータ検出のために使用する。ここで、2つの電極によって電流が供給され、残りの電極の間で、結果として生じる電圧が測定される。種々の供給および測定の組み合わせによって、信号ベクトルが形成され、この信号ベクトルから、適切なアルゴリズムを用いて、インピーダンス分布ないしは、機能EIT(fEIT)の場合には、電極レベルにおける基準値に対するインピーダンス分布の相対的な変化が特定される。後者は、胸部の状態依存の機能電気インピーダンス時に使用される。ここではN個の電極が、環状に、胸部の周りに取り付けられ、種々の肺状態(例えば吸気終末状態および呼気終末状態において)、信号ベクトルの比較から、ベンチレーションによって生じる相対的なインピーダンス変化の断面図が再構築される。これは、肺のベンチレーションの局所的分布に対する尺度となる。胸部fEITは、殊に病院内の集中治療室での、局部的に解明される、ベンチレーションの肺モニタリングに良好に適している。
【0003】
電気インピーダンストモグラフィ装置は、例えばUS5919142A号に開示されている。
【0004】
頻繁に使用されるデータ検出ストラテジーは、いわゆる、隣接データ検出である。ここでは、隣接している2つの電極によって電流が供給され、残りの電極間の電圧が隣接して測定される。ここで電流を案内する複数の電極には、電流を案内する電極を介した未知の電圧降下のために、空間が設けられている。従って電流供給ポジションのために、13の電圧値が設けられる。後続の電極対を介した電流供給のために、新たに、13の電圧が設定される。従って、全体で1613=208の電圧値が存在する。これらの電圧値から、データ検出のこの形態に有利である再構築ステップによって、インピーダンス分布、ないしは、208の基準電圧の使用時にインピーダンス分布の相対的な変化が特定される。
【0005】
被験者の体に電極を固定するために、通常は、保護構造体から成る電極帯が使用される。この電極帯には電極が固定され、ポジションに保持される。このような電極帯は、上位概念を形成する文献EP1649805B1号から既知である。電極は、被験者の体と面状に接触し、コンタクト手段を有する。このコンタクト手段にはそれぞれ1つの電極リード線が、多芯リード線ケーブルの心線として接続されている。ノイズの影響は、各電極リード線を遮蔽することによって低減される。
【0006】
電極帯は、それぞれ8つの電極から成る2つのグループに分けられている。このグループはそれぞれ、別個の、多芯リード線ケーブルとコンタクトされる。多芯リード線ケーブルは2つの束を有しており、これらの束と、それぞれ4つの電極が接触接続されている。
【0007】
隣接する電極への電流供給によって、磁界が生じ、この磁界は電圧測定を妨害する。該当する複数の電極リード線が、唯一の多芯リード線ケーブル内に延在している限りは、このような磁気的なクロストークは僅かである。多芯リード線ケーブルがそれぞれ、電極帯の右側および左側に位置している場合には、磁気的なクロストークは僅かである。これは、電流供給および電圧測定のための電極リード線が主に、右側または左側のリード線ケーブル内のみ延在している限りである。最大クロストークは次のような場合に生じる。すなわち、電流供給および電圧測定電極対のための電極対用の複数の電極リード線が、異なる複数のリード線ケーブル内に延在する場合に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5919142号明細書
【特許文献2】欧州特許第1649805号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述した様式の装置を、データ検出時に電極帯で発生するノイズレベルに関して改善すること、および電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定値を求める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
装置に対する課題は、異なる2つのグループの2つの隣接する電極の少なくとも1つの電極が付加的な電極リード線を有しており、当該付加的な電極リード線が、前記隣接するグループの前記リード線ケーブルを介して案内されていることを特徴とする電気インピーダンストモグラフィ装置によって解決される。
【0011】
方法に対する課題は、電極帯は、隣接する電極から成る少なくとも2つのグループを有しており、当該隣接する電極はそれぞれ多芯のリードケーブル線を介してコンタクトされており、異なるグループに属する少なくとも2つの隣接する電極のうちの少なくとも1つの電極を、付加的な電極リード線とコンタクトさせるステップを有しており、当該付加的な電極リード線は、当該電極に隣接する電極グループのリード線ケーブルを介して延在することを特徴とする、電極帯を用いて電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】評価機器と電極帯とを備えた電気インピーダンストモグラフィ装置
【図2】図1に対して択一的な動作状態
【図3】本発明のコンタクト
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による装置の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0014】
電極を備えた電極帯を有している電気インピーダンストモグラフィ装置では、隣接している電極から成るグループが形成される。1つのグループに属する電極は、少なくとも1つの多芯リード線ケーブルとコンタクトされる。これらのグループはここで、同じ数の電極または異なる数の電極を有している。本発明では、2つの異なるグループに属する、隣接する2つの電極のうちの少なくとも1つの電極が、隣接するグループのリード線ケーブルを介しても接触される。
【0015】
驚くべきことに、電極のこのような二重コンタクトによって、2つの別個のリード線ケーブルを介して、データ検出時の磁気的なクロストーク、ひいてはノイズ信号が格段に低減される。二重コンタクトは有利には、隣接する電極グループの境界領域に位置する電極に関し、2つの隣接する電極の間に、異なる多芯リード線ケーブルが存在する。概念「隣接する電極」とは、外皮表面と接触している2つの隣接する電極である。外皮接触が存在しない故障した電極が存在し、ひいては電流供給または電圧測定が不可能である場合には、隣接する電極は、この故障電極に続く、外皮接触を伴う電極である。
【0016】
電極帯を用いて電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法は、異なるグループに属する隣接する2つの電極のうちの少なくとも1つの電極を、付加的な電極リード線と接触させることである。ここでこの電極帯は、それぞれ多芯リード線ケーブルを介して接触されている隣接する複数の電極から成る少なくとも2つのグループを有している。付加的な電極リード線は、上記の電極に対して隣接している電極グループのリード線ケーブルを介して延在している。本発明の範囲内において、2つの隣接する電極を、隣接する各電極グループのリード線ケーブルを介してコンタクトさせることもある。
【実施例】
【0017】
本発明による装置の実施例を図示し、以下で、より詳細に説明する。
【0018】
図1は、電極帯2と、電極帯2に接続されている評価機器3とを備えた電気インピーダンストモグラフィのための測定装置1を示している。電極帯2は帯留め具4を有しており、この留め具で電極帯2が開放される。電極帯2はさらに、16個の電極E1〜E16を有しており、これらは等間隔で、電極帯2に配置されている。電極は第1のグループ5と第2のグループ6とに分けられている。第1のグループは、隣接している8個の電極E1〜E8を有しており、第2のグループは同じように、隣接している8個の電極E9〜E16を有している。電極E1〜E8から成る第1のグループ5は第1の多芯リード線ケーブル7とコンタクトされており、電極E9〜E16から成る第2のグループ6は第2の多芯リード線ケーブル8と接続されている。図1は例として、電極リード線9、10と電極E1、E2を介した電流供給と、電極リード線11、12と電極E7、E8を介した電圧測定とを示している。図示の例では、電流供給のためおよび電圧測定のための全ての電極リード線(9、10、11、12)が、第1のリード線ケーブル7内に延在する。従って、僅かなクロストーク、ひいては僅かなノイズ信号しか存在しない。
【0019】
図2は、図1に対する択一的な動作状態を示している。ここでは、電流供給が電極リード線9、14および電極E1、E16を介して行われ、電圧測定が電極リード線12、13および電極E8、E9を介して行われる。ここでは、電流供給のための電極リード線9、14も、電圧測定のための電極リード線12、13も、異なるリード線ケーブル7、8内に延在しているので、高いノイズ信号を有する最大のクロストークが存在する。
【0020】
図3は、電極E9の本発明によるコンタクトを示している。ここでは、第2のリード線ケーブル8を通って延在している電極リード線13の他に付加的に、コンタクトが、第1のリード線ケーブル7を通って延在している電極リード線15を介して存在する。このダブルコンタクトは、電極E1〜E8およびE9〜E16の2つの異なるグループ5、6の、隣接している2つの電極E8およびE9のうちの1つまたは、E16およびE1のうちの1つに関する。電極E9に対して択一的に、ダブルコンタクトを、電極E8を介して、または電極E1またはE16を介して行うことができる。またはダブルコンタクトは各隣接する電極対E1、E16;E8、E9で存在する。これは図3には、より分かり易くするために、図示されていない。
【符号の説明】
【0021】
1 測定装置、 2 電極帯、 3 評価機器、 4 帯留め具、 5 第1の電極グループ、 6 第2の電極グループ、 7 第1のリード線ケーブル、 8 第2のリード線ケーブル、 9−15 電極リード線、 E1−E16 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極(E1−E16)を備えている電極帯(2)を有しており、
当該電極帯では、隣接する複数の電極から成る少なくとも2つのグループ(6、7)が形成されており、1つのグループ(5、6)の前記複数の電極は少なくとも1つの多芯のリード線ケーブル(7、8)とコンタクトされている電気インピーダンストモグラフィ装置において、
異なる2つのグループ(5、6)の2つの隣接する電極(E8、E9)の少なくとも1つの電極(E9)が、付加的な電極リード線(15)を有しており、
当該付加的な電極リード線は、前記隣接するグループ(5)の前記リード線ケーブル(7)を介して案内されている、
ことを特徴とする、電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記電極帯(2)の帯留め具(4)を通じて、当該帯留め具(4)に対して両側に配置されている2つのグループ(5、6)が設けられており、隣接している電極(E1、E16;E8、E9)は、前記帯留め具(4)の両側で、それぞれグループ開始箇所またはグループ終端箇所に位置している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
電極帯(2)を用いて電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法であって、
当該電極帯は、隣接する複数の電極から成る少なくとも2つのグループ(5、6)を有しており、当該隣接する複数の電極はそれぞれ多芯のリードケーブル線(7、8)を介してコンタクトされており、
異なるグループ(5、6)に属する2つの隣接する電極(E8、E9)のうちの少なくとも1つの電極(E9)を、付加的な電極リード線(15)とコンタクトさせるステップを有しており、当該付加的な電極リード線は、該電極(E9)に隣接する電極グループ(5)のリード線ケーブル(7)を介して延在する、
ことを特徴とする、電極帯(2)を用いて電気インピーダンストモグラフィ装置によって測定信号を求める方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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