説明

電気エネルギーセルを有する車両用の構造部材

車両のフェンダ、床、トランク室の蓋、エンジン室の蓋、ドア、又は屋根などの、車両用の構造部材は、特にハニカム構造又はフォーム状構造などの中空セル構造を有する複合構造を備えており、前記複合構造は、少なくとも1つの空洞を形成し、前記1つの空洞又は複数の空洞内には、それぞれ1つ又は複数の電気エネルギーセルが受容されている。これによって、バッテリ等を省スペースに、当該構造にわたって均一に分配して車両内に収納することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーセルを有する構造部材と、電気エネルギーセルと、車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動部又は少なくとも補助的な電気駆動部を有する車両は、化石燃料の枯渇が予想され、環境及び気候への負荷の増大が懸念される中で、ますます関心を集めている。電気車両が受容される主な基準は、部分的にかさばる貯蔵バッテリ又は貯蔵蓄電池を適切かつ目立たないように収容することである(本願では、車両技術において一般的であるように、再充電可能な電気蓄電池をバッテリとも表記する)。
【0003】
下記特許文献1からは、車両のエネルギー供給システムの、エネルギー供給に能動的に資する部材を、車体の支持部材として形成すること、及び/又は、車両に力が作用する際のエネルギー吸収要素として、車体に適切に組み込むことが知られている。このとき、エネルギー供給に資する部材としては、例えば燃料セルシステムの燃料セル若しくはその他の部材、又はバッテリ、コンデンサ等が考えられる。このとき当該部材は、例えば横材又はドア枠として、車両の車体に機能上組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/021576号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、車両内での電気エネルギー貯蔵装置の利用を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の有利なさらなる構成は、従属請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によると、車両用の構造部材は、特にハニカム構造又はフォーム構造などの中空セル構造を有した複合構造を備えている。当該複合構造は、少なくとも1つの空洞を形成し、1つの空洞又は複数の空洞内には、それぞれ1つ又は複数の電気エネルギーセルが受容される。
【0008】
本発明によると、車両用の構造部材内には、複数の電気エネルギーセルが受容されている。当該電気エネルギーセルは互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニット(self-contained unit)を形成する。
【0009】
本発明によると、車両用の構造部材内には、複数の電気エネルギーセルが受容されている。所定の条件が生じた際に、構造部材の複数の電気エネルギーセルが個別に、グループごとに又は全体として、車両のエネルギー供給システムから電気的に分離するように設計かつ調整された制御機器が設けられている。
【0010】
本発明によると、車両の構造部材内には、複数の平型で構造的に自立した電気エネルギーセルが受容されている。当該電気エネルギーセルは、少なくとも2つの、側方において、構造部材の厚さ方向に対して略垂直に突出した電流導体を有している。
【0011】
本発明によると、上述の構成の構造部材内に取り付けるために設計かつ装備された電気エネルギーセルも設けられている。
【0012】
本発明によると、さらに複数のこのような電気エネルギーセルから構成された電気エネルギーモジュールが設けられている。当該電気エネルギーセルは、車両用の構造部材内に組み込まれており、互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニットを形成している。
【0013】
本発明によると、上述の構成の構成部材を少なくとも1つ、又は、上述の構成の電気エネルギーモジュールを少なくとも1つ備えた車両も設けられている。
【0014】
本発明によると、さらに、電気エネルギーセル、特に二次電池が設けられている。当該電気エネルギーセルは、電気エネルギーを放出するように設計かつ装備されていると共に平らな形状を有する活性部分と、当該活性部分を密に包囲する、好ましくは薄型のカバーと、当該電気エネルギーセルの電極を構成する少なくとも2つの電流導体とを有する。当該電気エネルギーセルは、少なくとも1つの空間方向において屈曲している。
【0015】
本発明によると、さらに、電気エネルギーセル、特に二次電池が設けられている。当該電気エネルギーセルは、電気エネルギーを放出するように設計かつ装備され、平らな形状を有する活性部分と、当該活性部分を密に包囲する、好ましくは薄型のカバーと、当該電気エネルギーセルの電極を構成する少なくとも2つの電流導体とを有する。当該電気エネルギーセルは曲げやすい。
【0016】
本発明において構造部材とは、車両の車体を支持又は被覆するあらゆるユニットであると理解される。すなわち、例えばフレーム部材又は車体部材、また、自立型車体の支持的車体部材なども該当する。特に好ましくは、当該構成部材は、平らな、特に皿状の構造を有しており、特に車両のフェンダ、床、トランク室の蓋若しくはエンジン室の蓋、ドア、又は屋根を構成する。しかしながら、構造部材が複数の電気エネルギーセルを受容できるのであれば、当該構造部材がフレーム、ドア枠等であることも考えられる。
【0017】
本発明において電気エネルギーセルとは、電気エネルギーを放出するようにも設計かつ装備された、あらゆる装置であると理解される。すなわち、特に一次若しくは二次電気化学的貯蔵セル(バッテリもしくは蓄電池セル)などのガルバニセル、燃料セル、又はコンデンサセルが該当する。
【0018】
特に好ましくは、電気エネルギーセルは平型で構造的に自立しており、向かい合う面の側方において、構造部材の厚さ方向に対して略垂直に突出した少なくとも2つの電流導体を有している。本発明において構造的に自立した電気エネルギーセルとは、ガルバニセルのような自立型のユニットであり、内部で電気エネルギーの充電、放電、及び場合によっては変換プロセスが行われる活性部分も有するユニットであると理解される。当該活性部分は、電気化学的に活性な材料、伝導性材料、及び絶縁性材料から成るスタック又はホイル層を有していても良い。本発明において自立とは、セルが電気エネルギー貯蔵装置として動作できるための全ての特徴を有しており、当該セルの活性部分は、ハウジング又はカバーによって気密及び液密に覆われており、当該カバーは好ましくはホイル、場合に応じて安定化フレームを有するホイル、又はその他の壁構造物を有していることであると理解される。このとき、いわゆる電流導体は、電流導体が電極領域と伝導的に接続されている活性部分の内部から、カバーを通って、セルの外側に向かって突出しており、セルの活性部分相互間の接続、又はセルの活性部分と電力使用装置との接続を可能にする。本発明において平型とは、1つの空間方向において(一般的に厚さ方向として定義される)、他の2つの空間方向においてよりも大幅に小さい伸びを有する物体であると理解される。板状の物体の他に、特に皿状、鞍状、又は他の方法で屈曲した物体も当該定義に含まれるが、これに限定されることはない。
【0019】
特に好ましくは、電気エネルギーセルは、その厚さにおいて、構造部材の厚さに適応しているので、構造部材の厚さ特性は最適に利用され得る。当該セルは屈曲し、構造部材のジオメトリに従うことも可能である。
【0020】
電気エネルギーセルは、発生するガスを受容するために、伸縮性のある多層ホイルを外側カバーとして有していても良い。
【0021】
電気エネルギーセルは、構造部材によって少なくとも部分的に支持されるので、部分的に柔軟又は曲げやすくもあり、その結果、構造部材のジオメトリにより良好に適応できる。
【0022】
本発明によると、特にバッテリ等を省スペースに、当該構造にわたって均一に分配して車両内に収納することが可能であるが、これに限定されることはない。
【0023】
特に好ましくは、又は、本発明のさらなる態様によると、当該電気エネルギーセルは互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニットを形成する。電気エネルギーセルは(電気エネルギー)モジュールを形成する。当該モジュールは、明確に配設された電力使用装置、好ましくは電気モータ、特に車輪のホイールハブモータ(電力使用装置の需要特徴に鑑みて)の供給のために設計かつ調整されている。このようなモジュールは、損傷を受けた際に、車両のエネルギー供給システムから電気的に分離可能なので、エネルギー供給は、損傷を受けたモジュールによって妨げられることなく保証される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、電気駆動部と、電気駆動部のための電気エネルギー貯蔵装置として複数のバッテリセルとを有する電気自動車が設けられている。当該電気駆動部は単独の電気モータであり、その駆動トルクは駆動車輪に分配される。当該駆動部は複数の電気モータを有していても良く、当該電気モータはそれぞれ駆動車輪に、特にホイールハブモータの形態で配設されている。当該電気駆動部は排他的な駆動部であっても良いし、又は、内燃機関と協働としても良い。
【0025】
当該バッテリセルは、好ましくは二次電池(実際には蓄電池セルであるが、車両技術的にはやはりバッテリと表記される)、特にリチウムイオンセル、リチウムポリマーセル等である。
【0026】
当該車両は軽量構造の構造部材を有している。本発明において構造部材とは、支持構造部材、非支持被覆部材、及び自立型車体部材であると理解される。構造部材は特に、ドア、エンジン室の蓋及びトランク室の蓋、フロアパン、屋根、フェンダ、内壁、フレーム部材、ドア枠等であり得る。軽量構造は、特にハニカム構造又は類似の中空セル構造によって実現しており、当該構造は、外板によって決定される容積に安定性を与えている。
【0027】
バッテリセルは少なくとも部分的に、好ましくは完全に、軽量構造内部の空洞に受容されている。空洞として用いられ得るのは、例えばハニカムセル等、又は、中空セルがバッテリセルの大きさよりも微細である場合に、中空セル構造内に特別に設けられ、形成された凹部である。このようにして、構造部材の容積の相当の部分が、バッテリの受容に用いられる。当該容積は、車両、例えばエンジン室、トランク室、又は客室において、他の目的のために空けられている。特に、車両内又は屋根の上又はトレーラ内にバッテリのために設けられている空間は、最小化されるか、又は完全に省略される。構造部材内にいずれにせよ存在する、以前は空いていた空間は、有意義な目的のために用いられる。バッテリの重さは、有利な方法で、車両構造上で分配される。
【0028】
バッテリセルは一般的に、複数のホイル層から構成されている。つまり、電気的又は電気化学的に活性な電極材料、セパレータ材料、及び伝導性材料を備えたホイル層が、適切な順序で配置されている。このホイルのまとまりは、ハウジングによって気密かつ液密に覆われている。当該ハウジングは一般的に、好ましくは多層の溶接されたホイルによって形成されている。少なくとも2つの電流導体は、それぞれの種類の電極の伝導性材料に接続されており、ハウジングを通って、セルの内側から外側へと突出し、外側において接触のために用いられる。
【0029】
当該バッテリセルは、例えばフレーム平型セル、パウチセル、若しくはコーヒーバッグセル等の角柱状のセルとして、又は比較的大きいプレートセルとして形成されている。構造部材内部の電流導体及び接触装置は、バッテリセルに接して横に、又はバッテリセルの横に配置されている。したがって、この接続部分は厚さを増すものではなく、構造部材の厚さは、バッテリセルの電気的又は電気化学的に活性な部分の受容に最適に利用され得る。当該セルはクランプ装置又は張力装置において締め付けられる。この締め付けは、同時に接触でもあり得る。すなわち、電流導体のための電気接触にも用いられる。当該接触は、構造要素及びバッテリセル自体の強化にも用いられる。
【0030】
大きさ及び形状において、特に面の広がり及び厚さ又は横断面において、当該セルは、それぞれの構造部材内で利用可能な空間に適合している。特に、当該セルは、凸状又は凹状に屈曲した形状を有している。
【0031】
バッテリセルは、構造部材内で互いに接続され、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的に有効なユニットを形成する。特に、このようなユニットは、電圧及び電荷受容性容量などの、所定の電気的特性を有している。それゆえ、バッテリセルを有する構造部材は、本質的に有効かつ交換可能なモジュールを形成する。したがって、例えば事故の後でも、損傷を受けたモジュールを交換することが可能であり、その他のモジュールは電気的な面でその影響を受けることはない。
【0032】
前記実施形態のさらなる構成において、ユニットを形成するように互いに接続される構造部材のバッテリセルは、特定の電力使用装置に配設されている。例えば、右前方のフェンダ、助手席側のドア、及び前方のトランク室の蓋又はエンジン室の蓋は、右側前輪のホイールハブモータに配設された3つのバッテリモジュールを構成する。同様に、左前方のフェンダ、ドライバ側のドア、及びフロアパンは、左側前輪のホイールハブモータに配設された3つのバッテリモジュールを構成する。同じく、右後方のフェンダ、右の乗客側のドア、及び後方のトランク室の蓋又はエンジン室の蓋は、右側後輪のホイールハブモータに配設された3つのバッテリモジュールを構成する。さらに、左後方のフェンダ、左の乗客側のドア、及び車両の屋根は、左側後輪のホイールハブモータに配設された3つのバッテリモジュールを構成する。最後に、トランク室又はエンジン室間の壁、フレーム部材、緩衝器等は、照明、暖房/冷房、制御装置、ステアリングサーボ、ナビゲーション、オーディオ/ビデオ等の、その他の電力使用装置に配設されたバッテリモジュールを構成する。それによって、これらのモジュール等が故障又は一部故障した場合に、動作の確実性を高めることも可能である。
【0033】
好ましい実施形態においては、中央制御ユニット又はローカル制御ユニットが設けられ、装備され、かつプログラミングされている。それによって、モジュールは所定の条件下において、オフにされるか、又は回避される。所定の条件とは、例えば外側の損傷及び/又は電気的不全等であり得る。したがって、例えば事故の後に、損傷したモジュールを電気的接続から取り出すことが可能であり、それによって他のモジュールが影響を受けることはない。これら他のモジュールは、必要な場合には、故障したモジュールのタスクを引き継ぐことができる。所定の条件が存在しているか否かを決定するために、好ましくは、温度センサ、電圧測定器、張力計等の対応するセンサが設けられている。
【0034】
さらなる好ましい実施形態においては、中央制御ユニットが設けられ、装備され、かつプログラミングされている。それによって、必要に応じて、及び、所定の基準又は予め設定可能な基準に基づいて、バッテリモジュール間で電荷補償が行われる。したがって、例えば暗闇において、特に夜間に、照明、特にフルビーム及び/又はフォグランプを点灯して比較的長い距離を走行する際には、照明に配設されたバッテリモジュールの充電状態が所定の閾値を下回る場合、照明に配設されたバッテリモジュールに、他のバッテリモジュールから電荷が供給される。同様に、寒い気候の中を走行する際には、暖房に配設されたバッテリモジュールの充電状態が所定の閾値を下回る場合、暖房に配設されたバッテリモジュールに、他のバッテリモジュールから電荷が供給される。同様の基準を他のバッテリモジュールのために作成することができる。
【0035】
モジュールの電圧は制限することが可能であるか、又は、制限されている。好ましくは、モジュールの電圧は48V〜150Vの間であり、軽量電気自動車の場合は7.2V〜36Vの間である。このとき、モジュールの電圧は個別セルの電圧の合計であり、個別セルの電圧は、リチウム系の場合、例えば2.7V又は3.6Vか、5Vまでであり得る。特に好ましくは、モジュールの電圧は、重要な電力使用装置、特にホイールハブモータの需要に合わせて設計されている。
【0036】
好ましい実施形態において、バッテリセルはバイナリセルとして形成されている。バイナリセルとして表記されるのは、少なくとも2つの電極スタックを1つの共通のハウジング内に有するバッテリセルである。これら2つの電極スタックは、好ましくは異なるように、特に異なる電気的特性を有するように構成されている。バイナリセルによって、所望の電気的特性が、特にコンパクトな形態で実現する。特に、個別セルの場合よりも高いセル電圧を得ることが可能である。バイナリセルの場合、約12Vまでのセル電圧に達することができる。
【0037】
さらなる好ましい実施形態において、バッテリセルは、構造部材の形状に適合するように構成されている。特に、バッテリセルは曲げやすく形成されており、ハウジングは構造部材に広範囲にわたって接している。それによって構造部材はバッテリセルを支持しており、少なくとも部分的にセルを覆っている。
【0038】
さらなる好ましい実施形態において、バッテリセルのハウジングは、伸縮性のあるホイルから形成されている。したがって、セル内部におけるガスの放出によって引き起こされるセルの容積の変化を受け止めることができる。構造部材内に膨張のための空間が追加的に設けられている場合、損傷を回避することができる。それによって、動作の確実性はさらに向上する。このとき、ホイルの柔軟性はセクションごとに与えられても良い。ホイルの柔軟性は、特に薄いホイルを伴っていても良い。なぜなら、セルは構造部材によって支持されるので、ホイルは、従来のコーヒーバッグセル等の場合よりも薄いものであっても良いからである。脱ガス室が形成されるが、当該脱ガス室は、他のセルのカスケード効果をもたらし得るものではない。このことは、特にバイナリセルを用いる場合に該当する。衝突の際、複合材料において、火花の形成と、材料又は高温ガスが破損したバッテリから制御不能に流出することとが防止される。なぜなら、一種のエアバッグ等のような吸収が行われるからである。
【0039】
好ましい実施形態において、好ましくは構造要素内にラミネート加工されたセル構成要素は、構造要素をヒートシンクとして利用する。
【0040】
以上、本発明を具体的な好ましい実施例及びさらなる構成に基づき、その重要な特徴について説明したが、自明のことながら、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲において規定された規模及び範囲において、例えば以下に示唆するように、しかしながらそれに限定されることなく、変更及び拡大され得る。
【0041】
車体部材は、軽量構造の代わりに、従来の方法でも製造可能である。例えば、車体部材は、外板、内装材、及びリブ又は水平材などの形態で複数の補剛材を有していても良い。このような場合、バッテリセルは、補剛材間の隙間に収容され、取り付けられる。
【0042】
電流導体又は極が、セルの片方又は両方の平坦面に接して配置されているバッテリセルも利用可能である。このような場合、電流導体は、フラットケーブル又は接触テープによって接触され得る。それゆえ、厚さの増大は接触によって制限され得る。
【0043】
上述の説明によると、バッテリセルは、構造部材においてホルダ内に締め付けられる。この締め付けは解除可能なので、セルを再び取り出すことができる。別の選択肢としては、セルは取り外しできないように、構造部材内に埋め込まれ、特にラミネート加工されている。このとき、当該接触手段を共にラミネート加工しても良い。このようなデザインによって、特に統合度が高まり、メンテナンスも容易になる。
【0044】
自明のことながら、前記実施形態の全ての言及されたさらなる構成及び変型例は、技術的に相容れないことがない限り、互いに組み合わせても良い。
【0045】
本発明は、あらゆる種類の車両に適用可能である。例えば、特に、自動車、オートバイ、船舶、航空機等に適用可能であるが、それに限定されるものではない。
【0046】
さらに、上記の論述は、電気駆動車両に限定されるものではなく、いくらかの空間を必要とする電気エネルギー貯蔵装置が存在し、上述したように構成された構造要素が利用可能である所であればどこにでも適用可能である。この例としては、発電設備、分配設備、及び供給設備が挙げられる。当該設備においては、例えば貯蔵バッテリ及びバックアップバッテリが、対応して形成された壁、床、天井、台等に収容され得る。
【0047】
バッテリ又は蓄電池の他に、コンデンサ、スーパーキャップ(Supercaps)、燃料セル等も電気エネルギーセルとして考えられる。
【0048】
バッテリはモジュールとして、例えば尾部で良好に重心をとるために、蓋の下に配置された受容装置にわたって分散して、又は、均一に分散して車輪に配設して差し込まれても良い。ここで考えられるのは、バッテリは車両構造の負荷要求に応じて、基本的に自由に配置変更可能であるということである。しかしながら、故障した場合に備えて、又は予備として、1つ又は2つの予備パックがつねに存在している。自由に配置変更できるという目標に近づくために、車体は、バッテリのための複数の受容装置、及び/又は、外部からアクセス可能かつ被覆可能な複数の区画を利用できる。これらの受容装置及び/又は区画には、好ましくは車両の重心の所望される位置に応じて、バッテリが装備される。
【0049】
車両上、車両の際、又は車両内のソーラーホイル又はソーラーモジュールは、当該車両が日光に照らされていたとしても、又は、寒い気候の際に予熱を行うために、バッテリモジュールの換気のために用いられる電気を独立して供給することができる。走行負荷に際しては、冷却媒体又は走行空気を、追加的に最適に利用することができる。
【0050】
いくつかの車両モデルにおいては、テールランプと組み合わせた、又はテールランプの後方での、右及び左への挿入が考えられる。なぜならここでは、状況によっては空間が、フェンダ沿いに、又はトランク室に向かって斜め若しくは下方に、従来の排気マフラ若しくは排気設備の領域にまで存在するからである。これは、航続距離を延長するために、追加的に内燃機関を有する電気自動車の場合(例えば、メルセデスのレンジエクステンダー(Range Extender)を備えた、いわゆるE‐Cellプラスコンセプト)、前方でヘッドライトの領域においても同様に可能である。ここでは、モジュールは優先的に、上に向かって、又は真っ直ぐに挿入されるからである。
【0051】
同様に、バッテリセルをリヤピラーに取り付ける、又は差し込むことができる。
【0052】
1つ又は複数のモジュールを高出力バージョンで取り付けることもやはり可能である。それによって、例えば、レンジエクステンダーが動作し、又は、ブースター効果(短時間での大きな加速)が強化される。任意的には、それによって回復(Rekuperieren)も行われ得る。
【0053】
低電圧の車載ネットワークアプリケーションは、高電圧バッテリアセンブリによって作動及び供給される。すなわち、モジュール又はサブアセンブリの一部は、メインバッテリアセンブリよりも低い電圧レベルで動作する。このために、少数のセルが直列に接続され、サブバッテリを形成する。それによって、例えば約14Vの車上電圧が利用可能になるが、これは強制ではない。このような直列接続を複数、並列に接続し、変わらず約14Vで動作させることも可能である。このようなサブバッテリは、例えば純粋に電気的には、2つのグループに区分することができる。すなわち、2個から4個のセルの、場合によっては両極セルも含めた、車上電圧のためのグループと、多くの、例えば10個から35個のセル又は両極セルの、駆動モータの供給のための「高電圧」のためのグループと、である。
【0054】
したがって、2個又は4個、別の選択肢としては10個〜35個のモジュールから、14Vの車上ネットワークレベル又は例えば300Vの高電圧レベルが形成され得る。それによって、場合によっては車載オルタネータが非常に効率的に設計され、車両の全体効率が向上する。車載オルタネータは、内燃機関が欠けている場合に、自転車のダイナモのように、車上電圧を供給する。上述の説明に従って、サブバッテリを区分することによって、車載オルタネータはより小さく寸法決定され得るか、又は完全に省略可能である。
【0055】
また、さらなる電圧レベルを組み込むこと、又は、出力モジュール及びエネルギーモジュールを組み合わせることも可能である。それによって、車両の負荷条件等が調整される。
【0056】
太陽によって動作するファンを通じて、配置変更された区画内のバッテリモジュールには空気が供給され得る。上側が開放された区画に水が浸入した場合、当該構造は、水が保護されたバッテリ接触部を迂回するように構成されている。
【0057】
さらなる変型例においては、サブバッテリを外側から、必要に応じては機械を用いて交換することが可能である。このために、サブバッテリは、外側からアクセス可能かつ被覆可能な区画によって受容されている。当該サブバッテリの壁は、同時に当該区画の蓋をも形成し得る。このような解決法は、セル又はモジュールバッテリが空気力学的に最適化されて形成かつ配置されており、それによって、場合によっては小さな流れ抵抗も加えられ得るという特徴を有する。このために、蓋の形状は、空気渦を避けるために、隣接する車体部材又は外板部材に適合することができる。当該蓋は、冷却リブを有していても良い。
【0058】
蓄電池のこのような形状は、手動又は機械装置/ロボットを用いた迅速な交換又は取り出しを確実にするが、それは、エネルギーマネジメント及びBMSが、この確実化を放出モードによって可能にするゆえに高電圧又はアークによって何ら問題が生じ得ない場合である。その限りにおいては、BMSは、バッテリが高温すぎる等の安全上の理由から、取り出し装置をブロックすることができる。
【0059】
当該モジュール/セルはさらに、取り出された状態において、高電圧にならないように構成され得る。
【0060】
セル又はモジュールは、RFID等を用いて、電気的に確実化かつ監視され得る。RFIDは、モジュールのイベントを記憶し、予めバッテリマネジメントシステム(BMS)に伝達する。それゆえ、モジュールが開放又は操作された後、BMSはこれを安全性のチェックにおいて確実化できる。
【0061】
プリンタのカートリッジにおいて構造上保証されているように、適切なバッテリのみが正しく差し込まれ得る。それゆえ、BMSは交換テストモードにおいて、新規モジュール又は交換モジュールの適性を使用前に検査し、それらを車両内で動作するために有効にするか、又はエネルギーマネジメントを通じて、例えば正常状態モニタ及び操作者に可視化することができる。平衡充電又は均等充電も行われ得る。それによって、可能な限り均質なバッテリが車両バッテリアセンブリ内で統合される。
【0062】
この交換されるべきバッテリモジュールの使用前におけるBMSとの通信は、RFIDを用いて行われ得るので、明確に識別されたバッテリアセンブリモジュールのみが、システムによって許可又は拒否される。操作を回避するために、挿入は最適には電気的又は機械的方法等によって不可能になっている。
【0063】
換気は、サンドイッチフロア(二重の車両床面)においても、開口部を通じて行われ得る。当該開口部にはファンが取り付けられており、空気が下から又は横から、好ましくは前方から吹き付けられる。このために蓄電池のエネルギーが用いられるのは非常事態において、例えば危険な状態においてのみである。
【0064】
事故が生じた場合、バッテリは、耐熱性カバー、泡、又はエア‐バッテリバッグ内に受け止められる。それらの中ではガスが吸収されるか、又はそれらは熱をさらに伝達することはない。したがって、モジュールは危険を伴わずに収容され得るので、汚染は生じない。
【0065】
車両内では、蓄電池は書架配置において積層されているか、又は立位/臥位に配置され得るので、蓋/ボンネット、又は靴箱に類似したアセンブリ、若しくは回転棚(機械、電気化学的方法、又はその他の方法によってロックされている)を開ける際に、モジュールに容易に到達することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の構造部材において、
前記構造部材は、特にハニカム構造又はフォーム状構造などの中空セル構造を有した複合構造を備えており、前記複合構造は、少なくとも1つの空洞を形成し、前記1つの空洞又は複数の空洞内には、それぞれ1つ又は複数の電気エネルギーセルが受容されていることを特徴とする構造部材。
【請求項2】
前記電気エネルギーセルは互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニットを形成していることを特徴とする請求項1に記載の構造部材。
【請求項3】
車両用の構造部材において、
前記構造部材内には複数の電気エネルギーセルが受容されており、前記電気エネルギーセルは互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニットを形成していることを特徴とする構造部材。
【請求項4】
ユニットを形成するように連結された電気エネルギーセルはモジュールを形成し、前記モジュールは、明確に配設された電力使用装置の供給のために設計かつ調整されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の構造部材。
【請求項5】
制御機器が設けられており、前記制御機器は、所定の条件が生じた際に、前記モジュールを前記車両のエネルギー供給システムから電気的に分離するように設計かつ調整されていることを特徴とする請求項4に記載の構造部材。
【請求項6】
車両用の構造部材において、
前記構造部材内に複数の電気エネルギーセルが受容されており、
所定の条件が生じた際に、前記構造部材の複数の電気エネルギーセルが個別に、グループごとに、又は全体として、前記車両の電気供給システムから電気的に分離するように設計かつ調整された制御装置が設けられていることを特徴とする構造部材。
【請求項7】
前記制御装置は、前記電気エネルギーセルの動作状態及び/又は前記構造部材の構造状態を把握するために設計かつ調整されており、前記所定の条件とは、1つの電気エネルギーセル若しくは電気エネルギーセルのグループの所定の動作状態であるか、又は、前記構造部材の所定の構造状態であることを特徴とする請求項5又は6に記載の構造部材。
【請求項8】
前記電気エネルギーセルは、平型であると共に構造的に自立しており、少なくとも2つの電流導体を有しており、該電流導体は、側方において、前記構造部材の厚さ方向に対して略垂直に突出していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項9】
車両用の構造部材において、
前記構造部材内には、複数の平型であると共に構造的に自立した電気エネルギーセルが受容されており、前記電気エネルギーセルは、少なくとも2つの電流導体を有しており、該電流導体は、側方において、前記構造部材の厚さ方向に対して略垂直に突出していることを特徴とする構造部材。
【請求項10】
前記電気エネルギーセルは、クランプ装置内に締め付けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載の構造部材。
【請求項11】
前記構成部材は、平らな、又は皿状の構造を有しているとともに、特に車両のフェンダ、床板若しくはフロアパン、トランク室の蓋若しくはエンジン室の蓋、ドア、又は屋根を構成することを特徴する請求項1から10のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項12】
前記電気エネルギーセルは、前記構造部材の構造内にラミネート加工されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項13】
前記電気エネルギーセルは、角柱状、皿状、又は平らなフレーム構造を有していることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項14】
前記電気エネルギーセルは、その厚さにおいて、前記構造部材の厚さに適合していることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項15】
制御装置は、前記電気エネルギーセルの制御のために、前記構造部材内に受容されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項16】
前記電気エネルギーセルは、外側カバーとして、伸縮性を有する多層ホイルを有していることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項17】
前記電気エネルギーセルは、部分的に柔軟であるか、又は曲げやすく構成されていることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項18】
前記電気エネルギーセルは、空間的に屈曲していることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の構造部材。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の構造部材内に挿入されるように設計かつ装備されている電気エネルギーセル。
【請求項20】
複数の請求項19に記載の電気エネルギーセルから構成されている電気エネルギーモジュールにおいて、
前記電気エネルギーセルは、車両用の構造部材内に組み込まれており、互いに電気的に接続されているので、電気技術的、電子技術的、及び制御技術的な観点において、自立型ユニットを形成していることを特徴とする電気エネルギーモジュール。
【請求項21】
前記電気エネルギーモジュールは、けん引用バッテリとして、又はけん引用バッテリの一部として、前記車両の駆動に用いられる少なくとも1つの電気モータの供給のために設計かつ装備されていることを特徴とする請求項20に記載の電気エネルギーモジュール。
【請求項22】
前記電気エネルギーモジュールは電力使用装置に配設されており、前記電力使用装置の需要特徴に鑑みて設計されていることを特徴とする請求項20又は21に記載の電気エネルギーモジュール。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載の構造部材を少なくとも1つ、及び/又は、請求項20から22のいずれか一項に記載の電気エネルギーモジュールを少なくとも1つ有する車両。
【請求項24】
電気エネルギーを放出するように設計かつ装備されており、平らな形状を有する活性部分と、前記活性部分を密に包囲するカバーと、電気エネルギーセルの電極を構成する少なくとも2つの電流導体と、を有する電気エネルギーセル、特に二次電池において、
前記電気エネルギーセルは、少なくとも1つの空間方向において屈曲していることを特徴とする電気エネルギーセル。
【請求項25】
電気エネルギーを放出するように設計かつ装備されており、平らな形状を有する活性部分と、前記活性部分を密に包囲するカバーと、電気エネルギーセルの電極を構成する少なくとも2つの電流導体と、を有する電気エネルギーセル、特に二次電池において、
前記電気エネルギーセルは曲げやすいことを特徴とする電気エネルギーセル。

【公表番号】特表2013−505871(P2013−505871A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531268(P2012−531268)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005805
【国際公開番号】WO2011/038855
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511173550)リ−テック・バッテリー・ゲーエムベーハー (85)
【Fターム(参考)】