説明

電気コネクタ

【課題】ハウジング係止部、カバー取付け部及びレバー装着部を一つの部材に纏めて、これらの係止部等の形成を簡単にすると共に組み立てを簡単にした電気コネクタを提供すること。
【解決手段】内部に端子が収容され前方に相手方コネクタとの結合部及び後方にホルダ装着部を有するコネクタハウジング3と、ホルダ装着部の外周囲に嵌入されるシール部材35と、前方にシール部材35の押し圧部を有しホルダ装着部に固定されるリアホルダ6と、リアホルダ6の後方を覆うリアカバー20及び相手方コネクタに係止される操作レバー30とを有し、リアホルダ6は、その対向する一対の外壁を間に隙間をあけて外壁板及び内壁板からなる2重壁で形成し、この2重壁にコネクタハウジング3と係合されるハウジング係止部と、リアカバー20が装着されるカバー取付け部及び操作レバー30が装着されるレバー装着部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気コネクタに係り、特に操作レバーの操作により相手コネクタとの結合を容易にした電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに結合される一対の第1、第2コネクタを有し、いずれか一方のコネクタハウジングに操作レバーを装着して、この操作レバーを他方のコネクタハウジングに係止させて回動することにより第1、第2コネクタの結合をスムーズに行えるようにした電気コネクタは多くの特許文献で紹介されている。その代表的なコネクタは、例えば下記特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
図18は従来技術の電気コネクタの斜視図である。下記特許文献1に開示された電気コネクタは、図18に示すように、互いに結合される一対の雌雄コネクタを有し、一方の雌型コネクタ40は、コネクタハウジング41と、このハウジング41に装着される係止レバー44とで構成されている。
【0004】
コネクタハウジング41は、前面側の外ハウジング41Aと、後部側の内ハウジング41Bとを有し、外側ハウジング41Aはその両側部の後端に後方に開口した収容溝42、42が設けられている。これらの収容溝42、42は対をなしているが、図18では一方の符号が省略されている。なお、以下においてはこのような対をなした箇所の符号の一方が省略されている。
【0005】
これらの収容溝42、42には、内ハウジング41Bに設けた係合部43、43が対峙している。それぞれの係合部43、43は、その先端部に可撓係合片43A、43Aが配設されて、これらの可撓係合片43A、43Aはフランジ付き突出部45、45の収容溝42、42への収容途中で突起部45C、45Cによって弾性変位されて、これらの突起部を通過させるようになっている。
【0006】
また、係止レバー44は、両側部を結ぶ所定の回動軸Pを中心に回動可能でしかも両側部内壁面の回動軸Pに対応する位置にフランジ付き突出部45、45が設けられている。フランジ付き突出部45、45は、柱状の支軸部45A、45Aと、その先端のフランジ45B、45Bと、フランジから突出する突起部45C、45Cと、を有している。また、この係止レバー44には、両側に摺接溝46、46が設けられている。
【0007】
コネクタハウジング41への係止レバー44の装着は、先ず、係止レバー44を外ハウジング41Aに沿って収容溝42に向かって移動させて、フランジ付き突出部45を収容溝42に挿入させる。この挿入により係止レバー44のフランジ付き突出部45の支軸部45Aが外ハウジング41A後部端のU字状の収容溝42に挿入される。
【0008】
次いで、係止レバー44を収容溝42に沿って摺動させると、この摺動により、突起部45Cは、内ハウジング41Bと一体的に設けられた係合部43の舌片状の可撓係合片43Aと摺接されて、可撓係合片43Aが起き上がる。すなわち、可撓係合片43Aが外方へ押し出される。さらに支軸部45Aが収容溝42の最深部に至る位置まで係止レバー44が押し込まれると、フランジ45Bから起き上がった突起部45Cは可撓係合片43Aの弾性に抗して通過し、その結果、外方へ押し出されていた可撓係合片43Aが元の位置に復帰して、可撓係合片43Aの先端が奥まで進んだフランジ付き突出部45の突起部45Cの後端と当接して突起部45Cに係止されて、係止レバー44が固定される。
【0009】
また、下記特許文献2に開示された電気コネクタは、複数本の端子と、これらの端子が収容されるコネクタハウジングと、複数本の端子が挿通される複数個の貫通孔を有しコネクタハウジングの後部に取付けられるリアホルダと、コネクタハウジングとリアホルダとの間に介在されるシール部材と、コネクタハウジングの後部に装着される操作レバー及びリアカバーとで構成されている。この電気コネクタは、リアカバーをスライド移動させることにより、リアホルダがコネクタハウジングに固定されると同時にシール部材が挟圧されて電線付き端子の電線部分の外面とシール部材との間が水密に保持されるようになっている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5647752号明細書
【特許文献2】特開2005−123102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に開示された電気コネクタによれば、係止レバーをコネクタハウジングへ押し込む作業で両部材の嵌合と係止とを簡単に行うことができる。すなわち、フランジ付き突出部45をU字状の収容溝42に挿入すると、突起部45Cが可撓係合片43Aを外方へ押し出し、更に係止レバー44が押し込まれると、突起部45Cが可撓係合片43Aの弾性に抗して通過され、その結果、外方へ押し出されていた可撓係合片43Aが元の位置に復帰して、可撓係合片43Aの先端部で突起部45Cが係止される。したがって、係止された後は、係止レバーの押し込み方向と逆方向の外力が働いても係止レバーが外れることがなくなる。
【0012】
しかしながら、フランジ付き突出部の突起部は、可撓係合片の先端部で係止されているだけでこの係止後にこの可撓係合片がロックされていない。そのため、係止レバーに強い外力、例えば何らかの衝撃力が加わると、可撓係合片が弾性変形して先端部と突起部との係止が外れる恐れがある。この係止が外れると、相手方コネクタとの接続不良を起し、これらのコネクタに接続された電気機器の作動を停止させてしまうことになる。また、このコネクタが防水型であると、相手方コネクタとの間で防水不良を起すことになる。
【0013】
また、上記特許文献2に開示された電気コネクタは、複数本の端子が収容されるコネクタハウジングに、リアホルダ、操作レバー及びリアカバーの装着・結合部が設けてられているので、ハウジングの構造が複雑になっている。
【0014】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、ハウジング係止部、カバー取付け部及びレバー装着部を一つの部材に纏めて、これらの係止部等の形成を簡単にすると共に組み立てを簡単にした電気コネクタを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、衝撃等の強い外力が加わっても操作レバーが外れないようにして相手方コネクタとの結合を堅固にした電気コネクタを提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、操作レバーの枢支軸でレバー固定できるようにして操作レバー固定手段を簡単にした電気コネクタを提供することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、リアカバーが誤った方向から装着できないようにして組み立てを容易にした電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の電気コネクタは、内部に端子が収容され、前方に相手方コネクタに差し込まれる差し込み部を有し、後方にホルダ装着部を有するコネクタハウジングと、
前記ホルダ装着部の外周囲に嵌入されるシール部材と、
前方端部を前記シール部材に当接する当接面となし、前方に前記ホルダ装着部に固定される嵌入孔を有し、後方にカバー取付け部を有し、前記コネクタハウジングにシール部材を介在して固定されるリアホルダと、
前記カバー取付け部にスライド移動により装着されるリアカバーと、
相手方コネクタに係止される操作レバーと、
を備えた電気コネクタにおいて、
前記リアホルダの対向する一対の外壁は、隙間をあけて設けられた外壁板及び内壁板からなる2重壁で形成され、該2重壁に前記コネクタハウジングと係合されるハウジング係止部と、前記リアカバーが装着されるカバー取付け部及び前記操作レバーが装着されるレバー装着部とが形成されていることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明において、前記ハウジング係止部は、前記内壁板に設けた弾性を有する係止アームと、前記係止アームの端部に設けた係止爪とで形成し、前記コネクタハウジングにはその壁面に係止溝を設けて、前記係止爪を前記係止溝に係合させることにより、前記リアホルダが前記コネクタハウジングに係止されることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明において、前記カバー取り付け部は、前記内壁板に設けた一対の支持突起と、前記リアカバー後方の後壁に設けた離脱防止突起とで形成し、更に前記リアカバーには凹状溝を設けて、前記リアカバーが前記支持突起及び前記離脱防止突起で固定されることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明において、前記レバー装着部は、前記操作レバーの一対のアームレバーの対向壁面に設けた枢支突起と、前記リアホルダの2重壁の隙間に連通した収容穴とで形成し、前記枢支突起を前記収容穴を通して前記隙間に差し込んで、該収容穴内で前記枢支突起が回転自在に支持されることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明において、前記枢支突起は、前記アームレバーから立設した支軸と、該支軸の頂部に設けたフランジとを有し、前記収容穴に挿入されたときに前記フランジが前記隙間に差し込まれ、前記操作レバーの対向面が前記2重壁の上壁板に当接されることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明において、前記アームレバーの対向壁面には前記枢支突起へ案内する第1カム溝を設け、前記枢支突起の支軸に回動規制部を設け、前記リアカバーにはその側壁面に係止突起を設けて、前記操作レバーは、相手方コネクタとの結合時に前記リアカバーの係止突起が前記操作レバーのカム溝と回動規制部との間に位置することにより前記枢支突起の回動が制限されることを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明において、前記操作レバーの第1カム溝内には前記回動規制部に隣接して係止溝を設け、前記相手方コネクタとの結合時に前記係止突起が前記係止溝内に嵌り込み、該係止溝に嵌り込んだ前記係止突起に前記回動規制部が当接して前記枢支突起の回動が制限されることを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明において、前記回動規制部は、前記支軸の外表面に設けた平坦面と円弧面とで形成し、前記平坦面が前記係止突起に当接されることを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明において、前記一対のアームレバーの対向壁面には前記リアカバーの装着を阻止する第2カム溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、本発明の一態様によれば、リアホルダにハウジング係止部、カバー取付け部及びレバー装着部を纏めて設けることにより、これらのハウジング係止部等の形成が簡単になると共にこれらの係止部を連係させることが可能になる。すなわち、コネクタハウジングは、通常、端子及びその付属品等が収容されるのでその構造が複雑になっており、このようなコネクタハウジングにハウジング係止部等を設けようとするとその構造が更に複雑になる。これに対して、リアホルダにはコネクタハウジングのように多くの部品が装着されることがないので係止部等の形成が簡単にできる。また、リアホルダにハウジング係止部、カバー取付け部及びレバー装着部を纏めて設けることにより、これらの連係が容易になり、例えば、先ず、ハウジング係止部でコネクタハウジングをリアホルダに係止させた後に、レバー装着部に操作レバーを装着し、その後、リアカバーをカバー取付け部に取付ける作業が続けて行うことが可能になり、電気コネクタの組み立てを連続して簡単に実行できる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、ハウジング係止部を内壁板に設けた弾性を有する係止アームとこの係止アームの端部に設けた係止爪とで形成し、コネクタハウジングにはその壁面に係止溝を設けて、ハウジング係止部の係止爪をハウジングの係止溝に係合させることにより、コネクタハウジングへリアホルダを簡単に且つ堅固に係止できる。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、カバー取り付け部を内壁板に設けた一対の支持突起と、リアカバー後方の後壁に設けた離脱防止突起とで形成し、リアカバーには凹状溝を設けて、リアカバーを支持突起及び離脱防止突起で固定することにより、リアホルダにリアカバーを簡単に且つ堅固に取付けることができる。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、前記レバー装着部は、操作レバーの一対のアームレバーの対向壁面に設けた枢支突起と、リアホルダの2重壁の隙間に連通した収容穴とで形成すれば、リアホルダへの操作レバーの装着が簡単に且つ堅固にできる。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、枢支突起をアームレバーから立設した支軸とこの支軸頂部に設けたフランジとで形成し、この枢支突起が収容穴に挿入されたときにこのフランジが隙間に差し込まれて、操作レバーの対向面が2重壁の上壁板に当接されるので、操作レバーに大きな外力が加わっても上壁板が操作レバーの対向面に当接しているので変形することがなく、枢支突起の離脱を防止できる。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、前記操作レバーの第1カム溝内に回動規制部に隣接して係止溝を設け、相手方コネクタとの結合時に係止突起が係止溝内に嵌り込んだ係止突起に回動突起部が当接して枢支突起の回動が制限されるので、操作レバーの固定が堅固になり、相手方コネクタとの結合が確実になる。また、相手方コネクタとの結合時に操作レバーの回動が制限されることにより、コネクタハウジングに装着されたシール部材が緩むことがなく、良好な防水効果が発揮される。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、一対のアームレバーの対向壁面に、リアカバーの装着を阻止する第2カム溝が設けたので、誤った方向からのリアカバーの取付けができなくなり、組み立てが簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。先ず、図1〜図6を参照して本発明の実施の形態に係る電気コネクタの全体及びこのコネクタを構成する個々の部品について説明する。なお、図1、図2はこの電気コネクタの全体及び個々の部品を示し、図3〜図6は個々の部品を示している。また、図1B及び図2Bの各部品間の矢印は組み立て方向を示している。
【0035】
この電気コネクタ(以下、コネクタという)1は、図1及び図2に示すように、雌型コネクタからなり、複数本の雌型端子2と、これらの端子2が収容される雌型コネクタハウジング(以下、コネクタハウジングという)3と、このコネクタハウジング3の後部に装着されるリアホルダ6と、このリアホルダ6の外壁に装着されて相手方コネクタとの結合を容易にする操作レバー30と、このリアホルダ6の後部に装着されて端子2の後端部を覆うリアカバー20とを有し、コネクタハウジング3はその外周壁面にリング状のシール部材35が装着され、また、このコネクタハウジング3の一側壁面に端子の装着状態を検知する端子検知部材(以下、TPAという)38が装着される構成を有している。以下、このコネクタを構成する個々の部品を詳述する。
【0036】
雌型の端子2は、図1及び図2に示すように、サイズの異なる2種類の雌型端子、すなわち比較的サイズの大きい大型の雌型端子(以下、大型端子という)2と、小サイズの小型雌型端子(以下、小型端子という)2とからなり、それぞれの雌型端子は、先方に接触部及び後方にリード線固定部を有し、この固定部にリード線が接続されている。大型端子2は、リード線の外周囲にリング状のシール部材2が装着されている。また、小型端子2は、複数本、例えば20本の端子が束ねられて、この端子束の外周囲にリング状のシール部材2が装着されている。
【0037】
コネクタハウジング3は、図3に示すように、前後が略矩形状の前後壁3、3及び外周囲が対向する一対の上下壁3、3及び左右側壁3、3で囲まれ、前方に相手方コネクタへ差込まれる差込み部3及び後方にリアホルダ6へ嵌合される結合部3を有する略長方体の部材からなり、この部材は絶縁性合成樹脂の成型体で形成されている。
このコネクタハウジング3は、後壁3面から前壁3面へ向かって、内部に2種類の雌型端子2、2が挿通される貫通孔4、4が形成されている(図3B参照)。一方の貫通孔4には大型端子2が挿通され、他方の貫通孔4には小型端子2の端子束が挿通される。前壁3面には、後壁3の各貫通孔4、4から挿通された各端子2、2と接続される相手方コネクタ40(図15参照)の雄型端子が差し込まれる差込穴が形成されている(図3A参照)。また、前壁3面のコネクタハウジング3は細溝で分離されている。この細溝で前壁3が分離されることにより、相手方コネクタへの差込み時に細溝の隙間が縮小されてこのコネクタとの結合がスムーズになる。
【0038】
差込み部3には、一方の側壁3面にTPA38が装着される装着穴5が形成されている。また、結合部3には、後方端の上下壁3、3面に後述するリアホルダ6の係止爪11(図9等参照)が係止される凹状の係止溝5が形成されている。この凹状の係止溝5と後壁3との間には、凹状係止溝5の側壁となる側壁部5A'が存在している。なお、この側壁部5A'は上壁3の一部で形成されている。なお、下壁3にも同じ係止溝5及び側壁部5A'が形成されている。さらに、このコネクタハウジング3は、差込み部3とホルダ結合部3との境界の外周囲にシール部材35の移動を規制するリブ3が形成されている。
【0039】
リアホルダ6は、図4に示すように、前方及び後方に略矩形状の前後壁6、6を有し外周囲が対向する一対の外壁、すなわち上下壁6、6及び左右の側壁6、6で囲まれた部材からなり、この部材は絶縁性合成樹脂の成型体で形成されている。このリアホルダ6は、前方の前壁6面にコネクタハウジング3の結合部3が差し込まれる嵌合穴6が形成されている。この嵌合穴6の内部は、仕切り壁6で仕切られ、この仕切り壁6Dに2種類の端子2、2が挿通される貫通孔が形成されている。
【0040】
上下壁6、6には、それぞれリアカバー20及び操作レバー30が装着されるカバー装着部RC及びレバー装着部LB並びにコネクタハウジング3と係合されるハウジング係止部LAが設けられる。これらのカバー及びレバー装着部RC、LB並びにハウジング係止部LAは上下にそれぞれ同じ構造で形成されており、いずれも上下壁6、6を所定の構造に成型することによって形成されている。なお、下壁6も上壁6と同じ構造となっている。そこで、重複する説明を避ける為、一方の上壁6の構造について説明する。
【0041】
上壁6は、図4に示すように、所定の肉厚を有し、その外壁面と内壁面との間に所定の隙間6が形成されて、この隙間6を介して2重壁、すなわち外壁板6と内壁板6とで構成されている。この隙間6は、後述する操作レバー30のフランジ33が差し込まれて回動できる間隔となっている。外壁板6は、前方から後方、すなわち前壁6から後壁6方向に向けて途中で切断されて短尺となっている。すなわち、この外壁板6は、左右側壁6、6面の幅長に比べて短尺になっている。また、この外壁板6を短尺にしたことによって、後壁6も前壁面に比べて短尺になっている。この短尺の外壁板6と後壁6との間には、カバー及びレバー装着部RC、LB並びにハウジング係止部LAが形成されている。
【0042】
外壁板6は、後端から前壁6の直前まで延びた複数本のスリット8、8によって3つのエリア、すなわち第1〜第3エリア6A1〜6A3にそれぞれ区画されて一部で分離されている。第1〜第3エリア6A1〜6A3のうち、第1、第3エリア6A1、6A3は同じ大きさに形成され、第2エリア6A2は第1、第3エリア6A1、6A3より大きく形成されている。この大きい第2エリア6A2には、その略中央部に所定幅長及び深さを有し、後壁6から前壁6に向かって設けられた凹状の切欠き溝9が形成されている。第2エリア6A2は、この切欠き溝9の両端が更に小エリア6A21、6A21に区分されている。この切欠き溝9は、溝底9が平坦に形成されている。溝底9を平坦にすることにより、この平坦面に後述する枢支突起33のフランジ33の切断部33B'を位置合わせすることにより、隙間6から枢支突起33を簡単に取外すことができる。
【0043】
第1、第3エリア6A1、6A3は、その後方が段差部6を経て後壁6へ向けて延設されて、この延設部が所定肉厚及び所定幅長の支持突起7、7となっている。これらの支持突起7、7の肉厚は、リアカバー20の凹状溝22に挿入可能な厚さとなっている。
【0044】
内壁板6は、5つのエリア、すなわち第1エリア6B1〜第5エリア6B5に区画されて一部で分離されている。これらの第1エリア6B1〜第5エリア6B5のうち、両側の第1、第5エリア6B1、6B5は同じ大きさであり、第2、第4エリア6B2、6B4も同じ大きさになっている。また、第1、第5エリア6B1、6B5は支持突起7、7を形成している。第3エリア6B3は、他のエリアより面積が大きくその端部が後方へ延設されている。この第3エリア6B3には、操作レバー30の枢支突起33が装着される収容穴10が形成されている。この収容穴10は外壁板6の切欠き溝9の略真下に形成されている。また、この収容穴10は隙間6に連通している。この第3エリア6B3端部の延設部には傾斜面からなるガイド面10が形成されている。また、この第3エリア6B3の下方は、嵌合穴6の周囲の内壁面6B'を形成しており、この肉厚はリアカバー20の凹状溝22に挿入される厚さとなっている。
すなわち、各支持突起7、7及び第3エリア6B3の内壁板6は、同じ肉厚に形成されて、後述するリアカバー20の凹状溝22へ挿入される。後壁6の左右側壁6、6面には、リアカバー20が差込まれる装着部12、12が形成されている。
【0045】
また、後壁6には、両装着部12、12間にあって、その上下端部を所定高さで突出させたレール突起62Aが形成されている。このレール突起62Aは後壁6の下方にも形成されている。このレール突起62Aを設けることにより、例えば一方の装着部12から差し込まれたリアカバー20は、このレール突起62Aでガイドされることでリアホルダ6に保持されリアホルダ6から離脱しなくなる。このレール突起62Aは、リアカバー20の離脱を防止することから離脱防止突起となっている。
【0046】
第2、第4エリア6B2、6B4には、コネクタハウジング3と係合される係止部11、11が形成されている。これらの係止部11、11は外壁板6の小エリア6A21、6A21の略真下に形成されて、それぞれ同じ構造を有している。
【0047】
この係止部11は、図9Cに示すように、内壁板6に結合された基部11と、この基部から延設されて所定の長さを有する係止アーム11と、この係止アーム11の先端部にあって端部から上方へ突出した上突起、すなわちブロック突起11及び下方へ突出した下突起、すなわち係止爪11とを有し、係止アーム11は内壁板6から切り溝により一部が分離されて弾性を有する弾性アーム片となっている。係止爪11は、コネクタハウジング3の凹状の係止溝5に係合される。このブロック突起11は係止爪11と係止溝5との係合が不完全のときにはリアカバー20のリアホルダ6への装着を阻止する働きをする。また、係止爪11と係止溝5との係合が完全になされたときは、ブロック突起11の頂部がリアカバー20の側壁22に当接して、係止アーム11の移動が制限されて係止爪11と係止溝5との係合が堅固になる。その結果、コネクタハウジング3とリアホルダ6との結合が確実に行われるようになる。
【0048】
カバー及びレバー装着部RC、LB並びにハウジング係止部LAは、図4に示すように、外壁板6及び内壁板6と後壁6との間に形成されている。このうち、カバー装着部RCは、主に各支持突起7、7と、これら支持突起7、7間の第2エリア6B2の内壁板6と、レール突起62Aとで構成され、また、レバー装着部LBは、主に外内壁板6、6間の隙間6と、内壁板6に設けられた収容穴10とで構成されている。更に、ハウジング係止部LAは、内壁板6の第2、第4エリア6B2、6B4に設けられた各係止部11、11からなり、この係止部11は、内壁板6に結合された基部11と、この基部から延設されて所定の長さを有する係止アーム11と、この係止アームの先端部にあって端部から上方へ突出したブロック突起11及び下方へ突出した係止爪11とで構成されている(図9C参照)。したがって、この構成によると、リアホルダ6にハウジング係止部LA、カバー装着部RC及びレバー装着部LBが纏められているので、これらの形成が簡単になると共にカバー装着部RC、レバー装着部LB及びハウジング係止部LAを連係させることが可能になる。すなわち、コネクタハウジング3は、通常、端子及びその付属品等が収容されるのでその構造が複雑になっており、このようなコネクタハウジング3に上記係止部等を設けようとすると、その構造が更に複雑になる。これに対して、リアホルダ6には多くの部品が装着されることがないので、上記ハウジング係止部LA等の形成が簡単にできる。また、リアホルダにハウジング係止部LA、カバー装着部RC及びレバー装着部LBを纏めることにより、これらの連係が容易になり、例えば、先ず、ハウジング係止部LAでコネクタハウジング3にリアホルダ6を係止させた後に、レバー装着部LBで操作レバー30を装着し、その後、リアカバー20をカバー装着部RCで取付けることが可能になり、コネクタの組み立てを連続して簡単に実行できる。
【0049】
リアカバー20は、図5に示すように、リアホルダ6の後壁6面から引き出される複数本のリード線を所定の方向へ導出するための部材であって、所定間隔の隙間25をあけて対向する一対の側壁21、21と、これらの側壁21、21に繋がれた天井壁24とを有し、絶縁性合成樹脂の成型体で形成されている。天井壁24は、それぞれの側壁21、21間及び各側壁21、21間の端部が結合されて一端部に開口26が形成された湾曲した天井面となっている。この開口26の奥部、すなわち各側壁21、21の端部は閉鎖壁24で略閉鎖されている。この天井壁24には、操作レバー30の係止部32が係止される突起24が設けられている。開口26は、リード線を外部へ導出する導出穴となっている。
【0050】
一対の側壁21、21の隙間25は、リアホルダ6の後壁6に差込まれる差込み口となっている。各側壁21、21は、同一構造となっているので、以下には一方の側壁について具体的に説明する。
側壁21は、その端部が肉厚に形成されて、この肉厚部には対向する第1、第2側壁部22、22で囲まれた凹状溝22が形成されている。すなわち、この凹状溝22は、対向する第1、第2側壁部22、22を有し、一方の第1側壁部22は側壁21の外壁の一部となっており、他方の第2側壁部22は内壁の一部となっている。第1側壁部22の外壁面には長手方向の略中央部に上方へ突出した係止突起22が形成されている。この係止突起22は、略四角形状をなした背低の突起で形成されている。この係止突起22は、操作レバー30がリアホルダ6に装着された後に、この操作レバー30との関係でリアカバー20が間違った方向から装着されるのを防止する誤挿入防止機能を有している。また、この係止突起22は、操作レバー30の係止溝36に嵌り込んでこの操作レバー30を所定の位置に固定する固定機能も兼ねている。第1、第2側壁部22、22間の間隔、すなわち凹状溝22の隙間は、リアホルダ6の支持突起7、7の厚さとほぼ同じかわずかに幅広に形成されている。この凹状溝22はリアカバー20をリアホルダ6へ装着する際のガイド溝となり、リアカバー20の取付け溝となっている。また、第2側壁部22にはガイドレール23が設けられている。
【0051】
操作レバー30は、図6に示すように、対向する一対のアームレバー31、31と、これらのアームレバー31、31を連結する連結部32とを有し、全体が絶縁性合成樹脂の成型体で形成されている。各アームレバー31、31は、それぞれ平板状の板体からなり、同じ構成になっている。すなわち、各アームレバー31、31は、外壁面31と内壁面31とを有し、各内壁面31にレバーを支持する枢支突起33及びカム孔34並びに一対の第1、第2カム溝36、37が形成されている。枢支突起33は、支軸33の基部がアームレバー31の内壁面31から立設され、この支軸33の頂部にはフランジ33が一体に形成されている。カム孔34は内外壁面31、31を貫通している。連結部32には、係止部32が設けられている。この係止部32は、相手方コネクタ40と結合されたときに、リアカバー20の突起29に係止させることにより操作レバー30を所定位置に固定させるためのものである。
【0052】
この操作レバー30は、リアホルダ6に回動自在に装着されるが、支軸33にその回動を規制する回動規制部33A'が設けられている。この回動規制部33A'は、図6Cに示すように、アームレバー31から立設された支軸33をこの立設方向と直交する面で切断したときの切断面が平坦面33A1と円弧面33A2とを有する涙粒形状(teardrop shape)となっている。
【0053】
フランジ33は、端部に切断部33B'を有する円盤状をなし、その大きさは収容穴10に挿入可能な大きさになっている。切断部33B'を設けることにより、収容穴10への取付けが容易になる。
【0054】
一対の第1、第2カム溝36、37は、枢支突起33が差し込まれる方向と反対の側縁部に形成されている。これらのカム溝36、37は段差部31を経てアームレバー31の肉厚を薄くすることによって形成されている。すなわち、第1カム溝36は、リアカバー20の係止突起22がスライド移動されるガイド面36と、係止突起22が当接される第1ストッパー36と、この係止突起22が係止される係止溝36と有し、これらの第1ストッパー36及び係止溝36は段差部31の一部で形成されている。ガイド面36は連結部32からアームレバー31の端部に向かって所定幅長及び所定長さで形成されている。また、第1ストッパー36に近接した箇所には枢支突起33が形成されている。
【0055】
第2カム溝37は、アームレバー31の連結部32が設けられた側とは反対の端部に設けられている。この第2カム溝37は、内壁面31から段差部31C'を経て薄肉にされたガイド面37で形成されている。この段差部31C'を経て形成された第2カム溝37のガイド面37も係止突起22がスライド移動する面となっているが、このガイド面37の大きさは、第1カム溝のガイド面36より小さく形成されている。また、この段差部31C'は第2ストッパーとなっている。
【0056】
カム孔34は、アームレバー31の内外壁面31、31を貫通している。このカム孔34は、後述する相手方コネクタ40の係合突起42(図15参照)をガイドする案内孔34を有し、この案内孔34の周囲に段差部34が形成されている。この段差部34には、相手方コネクタ40の係合突起42のフランジ42が係止される。
【0057】
シール部材35は、図1、図2に示すように、内部に中空穴を有するリング部材からなり、弾性を有するゴム材料で形成されている。また、このリング部材の外周面は、凹凸形状にするのが好ましい。外周面を凹凸形状にすることにより、相手方コネクタ40との防水が良好になる。
【0058】
次に、図1〜図14を参照して、コネクタ1の組み立て工程を説明する。なお、図7、図8はリアホルダへの操作レバーの装着を説明する説明図である。図7、図8では、内部構造の理解を容易にするためにリアホルダ及び操作レバー部材の一部が切除されている。また、図8〜図12はコネクタハウジングへのリアホルダの結合を説明する説明図であり、図13、図14はリアホルダへのリアカバーの取付けを説明する説明図である。
【0059】
このコネクタ1は、(I)シール部材装着工程、(II)ホルダ結合工程、(III)端子装着工程、(IV)TPA装着工程、(V)レバー装着工程、(VI)リアカバー装着工程の各工程を経て組立てられる。
【0060】
(I)シール部材の装着工程では、例えば図1、及び図2に示すコネクタ部品のうち、先ず、コネクタハウジング3の結合部3の外周囲にシール部材35がリブ3に当接するまで挿入される。シール部材35がリブ3に当接する位置まで挿入されると、シール部材35の内周壁面がコネクタハウジング3の外周囲に密着されてリアホルダ6が装着可能な状態となる。なお、このシール部材35の装着により、後述するコネクタハウジング3とリアホルダ6との間が水密にシールされる。(II)ホルダ結合工程では、シール部材35に続いてコネクタハウジング3の結合部3をリアホルダ6に差し込む。この差し込みにより、係止部11の係止爪11が係止溝5に没入して嵌入穴6に係合される。これにより、リアホルダ6がコネクタハウジング3に係止固定される。(III)端子装着工程では、大型端子2及び小型端子2の端子束をリアホルダ6の後方からコネクタハウジング3のそれぞれの貫通孔4、4に挿通することによってリアホルダ6が装着されたコネクタハウジング3内にそれぞれの端子が収容固定される。(IV)TPA装着工程では、TPA38がコネクタハウジング3の装着穴5に挿入されて、コネクタハウジング3内の雌型端子2が固定される。
【0061】
その後、(V)レバー装着工程では、上記工程(I)〜(IV)で組立てられた組立体に操作レバー30を取付ける作業が行われる。この取付け作業は、先ず、図7Aに示すように、操作レバー30をリアホルダ6の後方にセットして、各アームレバー31、31に設けられた枢支突起33、33が各収容穴10、10へ向けて押し込まれる。この押し込みにより、それぞれの枢支突起33、33の各フランジ33、33がガイド面10、10上を摺動すると同時に各アームレバー31、31が外方、すなわち、図7Bの矢印Y、Yに示す上下方向へ押し広げられて、各アームレバー31、31の内壁面31、31とリアホルダの外壁板6、6との間にそれぞれ隙間G、Gが形成される。更に、これらのアームレバー31、31が押し込まれると、図8に示すように、各フランジ33、33がそれぞれの収容穴10、10を通して隙間6、6に挿入される。この挿入と同時に、各アームレバー31、31はその弾性復元力により元の位置に復帰されて、上記の隙間G、Gがなくなり、各アームレバーの内壁面31、31が外壁板6、6に当接される。この状態で操作レバー30を回動させると、各フランジ33、33の端部が各外内壁板6、6間の隙間6、6に入り込んで抜けなくなり、操作レバー30がリアホルダ6に対して回転自在に取付けられる。したがって、操作レバー30を押し込んだ時と逆の外力が働いても、各フランジ33、33が抜け出ることがなく、その結果、リアホルダ6に操作レバー30を装着した後は、操作レバー30に衝撃等の強い外力が加わってもこの操作レバー30がリアホルダ6から抜脱することがなくなる。
【0062】
リアホルダ6に操作レバー30が装着されると、操作レバー30のアームレバー31、31とリアホルダ6の内壁板6、6との間にリアカバー20の第1側壁部が押し込まれる隙間G(図13B参照)が形成される。この隙間Gは、操作レバー30のガイド面36と対向する第1隙間Gと、内壁面31と対向する第2隙間Gとからなり、第1隙間Gが第2隙間Gより広くなっている。
【0063】
最後に、リアカバー20がリアホルダ6に取付けられる。(VI)リアカバー装着工程は、先ず、リアカバー20をコネクタハウジング3の図13Aの矢印Aで示す方向、すなわち、操作レバー30の連結部32がある側にセットして、リアホルダ6と操作レバー30間の第1隙間G方向からリアカバー20が差し込まれる。この差し込みはリアカバー20の凹状溝22、22に一方の支持突起7が挿入されるように、一方の装着部12方向から挿入される。このときリアカバー20のガイドレール23、23は各レール突起62A、62Aに沿って挿入される。これにより、一方の装着部12から差し込まれたリアカバー20は、各支持突起7、7、第3エリア6B3の内壁板6及びレール突起62Aで支持されるのでリアホルダ6から離脱することがなくなる。
【0064】
上記(I)〜(VI)の工程により、コネクタ1の組み立てが終了する。ところが、上記(II)ホルダ結合工程において、コネクタハウジング3にリアホルダ6が完全に結合されない場合がある。このようなケースが発生すると、コネクタハウジング3とリアホルダ6とが不完全結合になると共に、シール部材35の装着も不十分となり所期の防水効果が得られなくなる。この状態ではコネクタ1の組み立て不良となる。そこで、このコネクタ1では、リアホルダ6の各係止部11、11を利用して、このような組み立て不良を検知できるようになっている。
【0065】
以下に、この組み立て不良検知を図11、図12を参照して説明する。なお、図11、図12は、組み立て不良を説明する説明図である。これらの図はそれぞれ図9、図10に対応したものである。
【0066】
先ず、コネクタハウジング3の後方の結合部3にシール部材35を装着しておき、この結合部3にリアホルダ6の前方の嵌合穴6を嵌合させて押し込む。このリアホルダ6の押し込みにより、リアホルダ6の前壁6面がシール部材35の一端に当接される。このとき、リアホルダ6の押し込みが不十分であると、係止部11の係止爪11が係止アーム11の弾性により係止溝5の側壁部5A'の頂部に乗上げ、ブロック突起11が上方へ持ち上げられる(図11C参照)。この状態でリアカバー20をリアホルダ6に装着しようとすると、図12Cに示すように、リアホルダ6をスライド移動させようとしても、リアカバー20の第1側壁部22がブロック突起11に衝突してしまいこのスライド移動ができなくなる。したがって、このリアカバー20が装着できなくなることにより、コネクタハウジング3にシール部材35が適切に押圧されず、しかもコネクタハウジング3とリアホルダ6とが非結合状態にあることが検知できる。
【0067】
一方、図9、図10に示すように、リアホルダ6の押し込みが十分になされ、係止部11の係止爪11が凹状の係止溝5内に没入して係合されると、ブロック突起11が既に下方へ引っ込んでいるので、リアカバー20のスライド移動が阻止されることがなくなる。リアカバー20がリアホルダ6に装着されると、シール部材35は正規の位置に装着されてコネクタハウジング3とリアホルダ6間の防水が確実になされると同時にコネクタハウジング3とリアホルダ6とが完全に結合されていることが補償される。この状態では、ブロック突起11の頂部がリアカバー20の第1側壁部22に接触して、その可動が制限されるので、コネクタハウジング3とリアホルダ6との係合も堅固になる。
【0068】
また、リアカバー20は、図5に示すように、対向する一対の側壁21、21が同一構造となっているので、図14Aの矢印A方向から装着される場合がある。この方向からの差し込みが可能としてしまうと、操作レバー30の操作ができなくなるので、このコネクタ1では矢印A方向からのリアカバー20の装着はできないようになっている。すなわち、リアカバー20が図12の矢印方向Aからリアホルダ6へ差込まれると、リアカバー20の第1側壁部22が第2隙間G内へ入り込む。ところが、この第2隙間Gの差込み口には、操作レバー30の第2カム溝37が存在するのでその開口が大きくなっているが、この第2カム溝37の長さが第1カム溝36より狭くなっているので、リアカバー20がさらに押し込まれると、側壁22表面の係止突起22が第2ストッパーである段差部31C'に衝突して、リアカバー20の押し込みがブロックされる。これにより、矢印A方向からのリアカバー20の装着ができなくなっている。
【0069】
このようにして組立てられたコネクタ1は、相手方コネクタ40と結合される。以下、この相手方コネクタとしての雄型コネクタを説明する。なお、図15は雄型コネクタを示し、図15Aは雄型コネクタの全体の斜視図、図15Bは図15Aの分解斜視図である。
相手方コネクタ40は雄型コネクタからなり、図15に示すように、複数本の雄型端子43と、これらの端子が収容される雄型コネクタハウジング41とで構成されている。
【0070】
雄型端子43は、コネクタ1の雌型の大型端子2及び小型端子2にそれぞれ接続される雌型の比較的サイズの大きい大型端子43とサイズの小さい小型端子43からなる。また、雄型コネクタハウジング42は、前後が略矩形状の前後壁41、41及び外周囲が対向する一対の外壁、すなわち上下壁41、41及び左右側壁41、41で囲まれ、前壁41にコネクタ1が差込まれる差込み口を有する空洞穴が形成されており、この空洞穴の奥壁は後壁41に近接しており、全体が絶縁性合成樹脂の成型体で形成されている。
【0071】
この雄型コネクタハウジング41の後壁41には、雄型端子43が装着される装着孔41、41が形成されている。コネクタハウジングの上下壁41、41には、差込み口に近接した箇所に外方に突出した係合突起42、42が形成されている。これらの係合突起42、42は、壁面から立設された支軸42と、この支軸42の頂部に設けたフランジ42とからなり、これらは雄型コネクタハウジング41と一体に形成されている。フランジ42は略円盤状をなしている。この係合突起42はコネクタ1の操作レバー30のカム孔34と係合される大きさとなっている。そして、この相手方コネクタ40の組み立ては、雄型コネクタハウジング41の装着孔41、41にそれぞれ大型端子43及び小型端子43を差込み固定することにより行われる。
【0072】
次にコネクタ1と相手方コネクタ40との結合を説明する。なお、図16、図17は両コネクタの結合を説明する説明図で、図16は結合前、図17は結合後の状態をそれぞれ示している。なお、図16B、図16C及び図17B、図17Cでは相手方コネクタ40が省略されている。
コネクタ1と相手方コネクタ40との結合は、コネクタ1を相手方コネクタ40に接近させて、コネクタ1前方に位置するコネクタハウジング3の差込み部3を相手方コネクタ40のコネクタハウジング41前面の装着孔41に挿入することで行う(図16A参照)。この両コネクタ1、40が結合される前は、図16A〜図16Cに示すように、操作レバー30の各カム孔34、34は相手方コネクタ40の各係合突起42、42に係合されずにリアホルダ6と平行な位置に保持されている。この位置は、図16Dに示すように、リアカバー20の係止突起22の外周面が第1カム溝36内の第1ストッパー36及び回動規制部33A'の円弧面33A2に接触して保持されている。この保持により、操作レバー30は矢印B方向(図16A及び図16C参照)へ揺動することがなくなる。
【0073】
次いで、図17に示すように、操作レバー30の各カム孔34、34の開口部分に相手方コネクタ40の各係合突起42、42を差し込んだ後に、操作レバー30の連結部32を手で摘んでこの操作レバー30をリアカバー20の後方へ回転させる。この操作レバー30の回転により、相手方コネクタ40の各係合突起42、42が各カム孔34、34の案内部分に案内されて両コネクタ1、40が互いに近接する方向に引き寄せられる。さらに操作レバー30が回転されると、連結部32がリアカバー20の後方へ移動して両コネクタ1、40の結合が完了し、両コネクタ1、40の端子2、43間で電気的接続がなされる。この両コネクタ1、40の結合完了により、操作レバー30はその連結部32がリアカバー20の後方へ移動した位置で固定される。この位置での操作レバー30の固定は、図17Dに示すように、リアカバー20の係止突起22が係止溝36内に入り込み、この入り込んだ状態で係止突起22の外周の一面に回動規制部材33A'の平坦面33A1が当接されて枢支突起33の回動、すなわち操作レバー30の回動が制限されて固定される。この保持・固定により、操作レバー30は矢印C方向へ揺動することがなくなる。また、連結部32に設けられた係止部32がリアカバー20の天井壁24の突起24に係止されて操作レバー30の係止がより確実になる。
加えて、両コネクタ1、40の結合がなされると、シール部材35の外周面が相手方コネクタの装着孔41の内壁に液密に当接することにより、両コネクタ1、40間の防水も確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る電気コネクタを示し、図1Aはこのコネクタの全体斜視図、図1Bは図1Aのコネクタの分解斜視図である。
【図2】図2は図1の電気コネクタを180度回転させて示したもので、図2Aは全体斜視図、図2Bは図2Aの分解斜視図である。
【図3】図3は図1及び図2のコネクタハウジングを示し、図3Aは図1Bのコネクタハウジングの拡大斜視図、図3Bは図2Bのコネクタハウジングの拡大斜視図である。
【図4】図4は図1及び図2のリアホルダを示し、図4Aは図1Bのリアホルダの拡大斜視図、図4Bは図2Bのリアホルダの拡大斜視図である。
【図5】図5は図1及び図2のリアカバーを示し、図5Aは図1Bのリアカバーの拡大斜視図、図5Bは図2Bのリアカバーの拡大斜視図である。
【図6】図6は図1及び図2の操作レバーを示し、図6Aは図1Bの操作レバーの拡大斜視図、図6Bは図2Bの操作レバーの拡大斜視図である。
【図7】図7はリアホルダへの操作レバーの装着途中の状態を示し、図7Aは要部を切断して示す斜視図、図7Bは図7Aの側面図である。
【図8】図8はリアホルダへの操作レバーの装着後を示し、図8Aは要部を切断して示す斜視図、図8Bは図8Aの側面図である。
【図9】図9はコネクタハウジングとリアホルダとの結合過程を示し、図9Aは結合前の斜視図、図9Bは結合後の斜視図、図9Cは図9BのIXC部分の拡大一部断面図である。
【図10】図10は図9に示すコネクタハウジングにリアホルダを結合した組立体へのリアカバーの装着過程を示し、図10Aは装着前の斜視図、図10Bは装着後の斜視図、図10Cは図10BのXC部分の拡大一部断面図である。
【図11】図11はコネクタハウジングとリアホルダとの結合過程を示し、図11Aは結合前の斜視図、図11Bは結合後の斜視図、図11Cは図11BのXIC部分の拡大図である。
【図12】図12は図11に示すコネクタハウジングにリアホルダを結合した組立体へのリアカバーの装着過程を示し、図12Aは装着前の斜視図、図12Bは装着途中の斜視図、図12Cは図12BのXIIC部分の拡大図である。
【図13】図13はリアホルダへのリアカバーの装着を示し、図13Aは平面図、図13B〜図13Dはリアカバー装着状態を段階的に説明するもので、図13AのXIIIB−XIIIB線の断面図である。
【図14】図14はリアホルダへのリアカバーの装着を示し、図14Aは平面図、図14B及び図14Cはリアカバー装着状態を段階的に説明するもので、図14AのXIVB−XIVB線の断面図である。
【図15】図15は雄型コネクタを示し、図15Aはコネクタ全体の斜視図、図15Bは図15Aの分解斜視図である。
【図16】図16は両コネクタの結合前の状態を示し、図16Aは全体の斜視図、図16Bは図16AのX方向から見た背面図、図16Cは図16BのXVIC−XVIC線で切断したハウジング側の断面図、図16Dは図16BのXVIC−XVIC線で切断した操作レバー側の断面図である。
【図17】図17は両コネクタの結合後の状態を示し、図17Aは全体の斜視図、図17Bは図17AのX方向から見た背面図、図17Cは図17BのXVIIC−XVIIC線で切断したハウジング側の断面図、図17Dは図17BのXVIIC−XVIIC線で切断した操作レバー側の断面図である。
【図18】図18は従来技術の電気コネクタの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 コネクタ
2 端子
3 コネクタハウジング
差込み部
結合部
6 リアホルダ
外壁板
内壁板
支持突起
9 切欠き溝
10 収容穴
11 係止部
11 係止アーム
11 係止爪
11 ブロック突起
20 リアカバー
22 係止突起
30 操作レバー
31 アームレバー
33 枢支突起
33 支軸
33A' 回動規制部
33 フランジ
35 シール部材
36 第1カム溝
36 係止溝
37 第2カム溝
40 相手方コネクタ
41 雄型コネクタハウジング
42 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に端子が収容され、前方に相手方コネクタに差し込まれる差し込み部を有し、後方にホルダ装着部を有するコネクタハウジングと、
前記ホルダ装着部の外周囲に嵌入されるシール部材と、
前方端部を前記シール部材に当接する当接面となし、前方に前記ホルダ装着部に固定される嵌入孔を有し、後方にカバー取付け部を有し、前記コネクタハウジングにシール部材を介在して固定されるリアホルダと、
前記カバー取付け部にスライド移動により装着されるリアカバーと、
相手方コネクタに係止される操作レバーと、
を備えた電気コネクタにおいて、
前記リアホルダの対向する一対の外壁は、隙間をあけて設けられた外壁板及び内壁板からなる2重壁で形成され、該2重壁に前記コネクタハウジングと係合されるハウジング係止部と、前記リアカバーが装着されるカバー取付け部及び前記操作レバーが装着されるレバー装着部とが形成されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング係止部は、前記内壁板に設けた弾性を有する係止アームと、前記係止アームの端部に設けた係止爪とで形成し、前記コネクタハウジングにはその壁面に係止溝を設けて、前記係止爪を前記係止溝に係合させることにより、前記リアホルダが前記コネクタハウジングに係止されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記カバー取り付け部は、前記内壁板に設けた一対の支持突起と、前記リアカバー後方の後壁に設けた離脱防止突起とで形成し、更に前記リアカバーには凹状溝を設けて、前記リアカバーが前記支持突起及び前記離脱防止突起で固定されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記レバー装着部は、前記操作レバーの一対のアームレバーの対向壁面に設けた枢支突起と、前記リアホルダの2重壁の隙間に連通した収容穴とで形成し、前記枢支突起を前記収容穴を通して前記隙間に差し込んで、該収容穴内で前記枢支突起が回転自在に支持されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記枢支突起は、前記アームレバーから立設した支軸と、該支軸の頂部に設けたフランジとを有し、前記収容穴に挿入されたときに前記フランジが前記隙間に差し込まれ、前記操作レバーの対向面が前記2重壁の上壁板に当接されることを特徴とする請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記アームレバーの対向壁面には前記枢支突起へ案内する第1カム溝を設け、前記枢支突起の支軸に回動規制部を設け、前記リアカバーにはその側壁面に係止突起を設けて、前記操作レバーは、相手方コネクタとの結合時に前記リアカバーの係止突起が前記操作レバーのカム溝と回動規制部との間に位置することにより前記枢支突起の回動が制限されることを特徴とする請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記操作レバーの第1カム溝内には前記回動規制部に隣接して係止溝を設け、前記相手方コネクタとの結合時に前記係止突起が前記係止溝内に嵌り込み、該係止溝に嵌り込んだ前記係止突起に前記回動規制部が当接して前記枢支突起の回動が制限されることを特徴とする請求項6に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記回動規制部は、前記支軸の外表面に設けた平坦面と円弧面とで形成し、前記平坦面が前記係止突起に当接されることを特徴とする請求項6に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記一対のアームレバーの対向壁面には前記リアカバーの装着を阻止する第2カム溝が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−226827(P2008−226827A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22749(P2008−22749)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【出願人】(506110586)エムイーエィ テクノロジーズ プライベート リミテッド (19)
【Fターム(参考)】