説明

電気コネクタ

【課題】高速伝送を行う端子を限定し、高速信号端子は特性インピーダンスを満足させるような端子形状及び端子間距離の寸法として他の通常端子と区別することにより高速伝送特性を出し、また、装置の小型化を図った電気コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】水平方向に並列配置された複数の端子を備える。これら複数の端子は各々、電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有する。複数の端子のうち一部の端子は、第一接続部における端子間距離が第二接続部における端子間距離と等しく設定されている。また、複数の端子のうち一部以外の一部の端子は、第一接続部における端子間距離が第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ、特に、端子間距離の変換を行った電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器等に使用される電気コネクタでは、特殊な使用態様として、複数端子のうちの特に幾つかの端子に関してのみ、高速伝送が必要とされることがある。しかしながら、従来の電気コネクタでは、例えば、特開2002−214538号公報等に開示されているように、同一寸法、同一形状で製造され、また、端子配列も全て同一距離(ピッチ)に設定されているため、高速伝送に対応する端子(高速伝送用端子)とした場合でも、高速伝送特性として満足する特性を維持することができないか、或いは、全てが高速伝送端子とされていたために装置が大型化してしまう等の問題が生じていた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−214538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、高速伝送を行う端子を限定し、高速信号端子については特性インピーダンスを満足させるような端子形状及びピッチ寸法として、他の通常端子と区別することにより、高速伝送特性を出し、また、装置の小型化を図った電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの観点によれば、電気コネクタにおいて、
水平方向に並列配置された複数の端子を備え、前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、前記複数の端子のうち一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、前記複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されていることを特徴としている。
【0006】
上記コネクタにおいて、水平方向に並列配置された複数の端子を垂直方向において上下二段に有し、上段及び下段の前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、前記上段の複数の端子のうち一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、前記上段の複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されており、前記下段の複数の端子は全て、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されていてもよい。
【0007】
また、上記コネクタにおいて、前記一部の端子は、前記第一接続部と前記第二接続部の間で前記水平方向において直線状に延び、前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部と前記第二接続部の間で前記水平方向において曲げ部を有していてもよい。
【0008】
更に、上記コネクタにおいて、前記複数の端子は各々、垂直方向において、前記第一接続部と前記第二接続部の間に鈍角の傾斜部を有しているのが好ましい。
【0009】
また、上記コネクタにおいて、前記一部の端子は、前記複数の端子の中央部に配され、前記一部以外の一部の端子は、前記中央部の両サイドに配されていてもよい。
【0010】
また、上記コネクタにおいて、前記一部の端子の前記水平方向における幅は、前記一部以外の一部の端子の前記水平方向における幅より大きくてもよい。
【0011】
上記コネクタにおいて、前記一部の端子は高速伝送端子であってもよい。
【0012】
上記コネクタにおいて、前記一部の端子のうち差動伝送に用いる端子は、互いに等しい路長を有しているのが好ましい。
また、上記コネクタにおいて、前記第一接続部は結線部として使用され、前記第二接続部は端子接触部として使用され、前記結線部と前記端子接触部を除く部分を成形樹脂で覆って気密構造としてもよい。
更に、本発明は、電気コネクタにおいて、水平方向に並列配置された複数の端子を備え、前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、前記複数の端子のうちの一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、前記複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されており、前記一方の部材は、基板と該基板に取り付けられる外部シェルを有し、前記電気コネクタに前記一方の部材が取付けられたとき、前記複数の端子は、前記第一接続部において、前記一方の部材の前記基板と接触し、前記電気コネクタのグランド板は、前記複数の端子の前記第一接続部の近傍において、前記外部シェルと接触してグランドに接続されることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な一つの実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本発明による電気コネクタ10の斜視図を、図2、図3に、この電気コネクタ10の上面図、底面図を、それぞれ示す。本電気コネクタ10は、ハウジング12と、このハウジング12と一体成形される複数の上段端子30及び下段端子50と、更に、グランド板70を備える。但し、理解容易のため、図2においては下段端子50を、図3においては上段端子30を、それぞれ省略して示している。
【0015】
この電気コネクタ10には、図1の図示矢印「ア」方向から、一方の部材である基板26及び外部シェル27が、図示矢印「イ」方向から、他方の部材である相手コネクタ(図示せず)が、それぞれ接続される。電気コネクタ10に接続された、これらの部材は、端子30、50を介して、互いに電気的に接続され得る。特に「ア」方向から接続される一方の部材を、電気コネクタ10とともに図4に示し、更に、この図4のA−A線における簡略断面図を図5に示す。
【0016】
「ア」方向から接続される一方の部材は、基板26と該基板26にビスによって取り付けられる外部シェル27とを有する。電気コネクタ10と接続されたとき、基板26は、端子30、50の結線部、つまり、第一接続部32と52の間に所定の接圧をもって挟み込まれ、外部シェル27(図4にのみ示し図5では省略してある。)は、端子30、50の近傍、即ち、端子30、50の露出部を、外側から取り囲むように端子30、50と同方向に突出させて設けたグランド板70の下段露出部74と複数の舌片25にて接触し、基板26とともにグランドに接続される。外部シェル27を設けたことにより、基板26を遮蔽するとともに、組立体として高速伝送を維持できる。基板26において、電気コネクタ10の向い側には、電線(図示せず)が接続されており、該電線は、他の機器と接続されている。
【0017】
「イ」方向から接続される他方の部材は特に図示していないが、この他方の部材の対応端子の働きは、図4、図5に示した一方の部材のそれと同様と考えてよい。即ち、この他方の部材は、端子30、50の端子接触部、つまり、第二接続部34、54において、端子30の外部露出部46、48と接触するとともに、端子50の外部露出部66と接触し、更に、その外部シェル(図示されていない)は、グランド板70の上段露出部72と接触し、グランドに接続される。尚、グランド板70の上段露出部72と下段露出部74は、ハウジング12の内部で互いに連続しているため、電気的には一体と考えてよい。
【0018】
図6乃至図9を参照して、上段端子30と下段端子50の配列状態を詳細に説明する。図6は、便宜上、ハウジング12を取り払って電気コネクタ10の内部における上段端子30と下段端子50の配列状態を斜視図で示したもの、図7は、図6の図示矢印「ウ」方向から見た上段端子30と下段端子50の正面図(参考のため基板26も示している)、図8は、上段端子30のみの上面図、更に、図9は、下段端子50のみの上面図である。
【0019】
これらの図によく示されるように、上段端子30及び下段端子50は、ともに、水平方向に複数並列配置された端子を備え、また、電気コネクタ10を介して互いに電気的に接続される一方及び他方の部材のためにそれぞれ、第一接続部32、52と第二接続部34、54を有する。更に、上段端子30及び下段端子50は、ともに、第一接続部32、52と第二接続部34、54の間に段部を有する。これらの段部を補間するため、上段端子30及び下段端子50の各端子は、垂直方向において、第一接続部32、52と第二接続部34、54の間に鈍角の傾斜部40、60を有している。通常の90°のクランク曲げは、特性が悪く影響するのに対して、これらの傾斜部40、60は、滑らかな傾斜面とされているため、高速伝送特性を妨げることはない。
【0020】
上段端子30については、下段端子50と異なり、高速伝送に用いる高速伝送端子36とそれ以外の通常端子38の2種類の端子を含む点に注意していただきたい。これに対して、下段端子50は、上段端子30の通常端子38に相当する端子のみを含んでいる。
【0021】
上段端子30に含まれる高速伝送端子36は、高速伝送特性を維持するため、全長寸法と板厚が全て同じ値とされている。また、水平方向における幅寸法「a」は、通常端子38の水平方向における幅「b」よりも大きく設定されている。尚、幅寸法「a」の値は、材料の持つ電気特性から導き出された最適な寸法の1つである。
【0022】
上の事項に加え、上段端子30に含まれる高速伝送端子36では、更に、高速伝送特性を維持するために、第一接続部32における端子間距離、即ち、相隣り合う端子の中心部から中心部までの距離「c」が、第二接続部34における端子間距離「c」と等しく設定されている。換言すれば、これらの高速伝送端子36では、端子接触部(嵌合部)と結線部の端子間距離の変換が行われていない。更に、これらの各高速伝送端子36は、第一接続部32と第二接続部34の間で水平方向において直線状37に延びている。このように直線状とすることにより、高速伝送を妨げることが防止される。尚、これら高速伝送端子36を、特に差動伝送に用いる場合は、路長を等しくする必要があるが、このような場合であっても、高速伝送端子36は直線状とされていることから設計は容易である。
【0023】
このような高速伝送端子36に対して、高速伝送端子36とともに上段端子30に含まれる通常端子38は、第一接続部32における端子間距離「d」が第二接続部34における端子間距離「d’」よりも狭く設定してある。通常端子38では、このように、端子間距離が第一接続部32と第二接続部34とで異なることから、このような端子間距離の差を補間するため、各通常端子38には、第一接続部32と第二接続部34の間に水平方向にて曲げ部39が設けられている。これらの曲げ部39の曲がり具合は、中央部付近において小さく、その両サイドにおいて大きい。
【0024】
上に説明したように、上段端子30では、高速伝送端子36とその他の通常端子38とを区別したことにより、必要とする特性インピーダンスを満足させることを可能としている。更に、この上段端子30では、全てを高速伝送端子とするのではなく、通常端子と間隔を変えることにより高速伝送端子と通常端子を混合しているため、コネクタの小型化が図られており、従来の限られた端子配置領域(50ピン領域)に、より多くの端子を配置させることを可能としている。更に、高速伝送端子36については、差動信号等を考慮して、等長配線となるようコネクタの中心にストレートで高速信号端子、グランド端子が対に配置され、通常端子38については、その両端側に配置することで基板側の距離を圧縮して配置されているため、高速伝送特性を損わずに従来プラグの大きさを維持しながら接点数を増すことが可能となっている。尚、結線部では従来の下段端子50ピンと同じ大きさの基板を使用するため、高速伝送端子はストレートにし、他の信号端子は端子間距離の変換を行い対応することとしてある。
【0025】
高速伝送端子36と通常端子38の2種類の端子を含む上段端子30に対し、全てを通常端子で形成した下段端子50では、上段端子30に含まれる通常端子38と同様に、第一接続部52における端子間距離「e」が第二接続部54における端子間距離「e’」よりも狭く設定されている。このように、下段端子50では、端子間距離が第一接続部52と第二接続部54とで異なることから、上段端子30の通常端子38と同様に、端子間距離の差を補間するため、中心に設けた端子を除いて、各下段端子50に、第一接続部52と第二接続部54の間で水平方向において曲げ部59が設けられている。明らかなように、これらの曲げ部59の曲がり具合は、中央部付近において小さく、その両サイドにおいて大きい。
【0026】
本発明で使用する電気コネクタを、例えば医療機器等に使用する場合、電気コネクタに水や血液がかかったり、洗浄が必要になる場合もあるため、防止性を向上させることが望ましい。そこで、第一接続部における結線部32、52と第二接続部における端子接触部34、54を除く略全ての部分を成形樹脂12で覆うことによって気密構造としてもよい。また、気密性を維持するため、端子については、端子同士の接触部と基板(又は電線)との結線部とを除く略全体を成形接触で覆った一体成形構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による電気コネクタの斜視図である。
【図2】図1の電気コネクタの上面図である。
【図3】図1の電気コネクタの底面図である。
【図4】図1の電気コネクタをこれに接続される部材とともに示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】上段端子と下段端子の配列状態を示す斜視図である。
【図7】上段端子と下段端子の正面図である。
【図8】上段端子のみの上面図である。
【図9】下段端子のみの上面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 電気コネクタ
12 ハウジング
26 相手基板
27 外部シェル
30 上段端子
32 第一接続部
34 第二接続部
36 高速伝送端子
38 通常端子
39 曲げ部
40 傾斜部
46 外部露出部
47 先端露出部
48 外部露出部
49 先端露出部
50 下段端子
52 第一接続部
54 第二接続部
59 曲げ部
60 傾斜部
66 外部露出部
67 先端露出部
70 グランド板
72 上段露出部
74 下段露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタにおいて、
水平方向に並列配置された複数の端子を備え、前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、
前記複数の端子のうち一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、
前記複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
水平方向に並列配置された複数の端子を垂直方向において上下二段に有し、上段及び下段の前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、
前記上段の複数の端子のうち一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、
前記上段の複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されており、
前記下段の複数の端子は全て、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されている請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記一部の端子は、前記第一接続部と前記第二接続部の間で前記水平方向において直線状に延び、前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部と前記第二接続部の間で前記水平方向において曲げ部を有する請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記複数の端子は各々、垂直方向において、前記第一接続部と前記第二接続部の間に鈍角の傾斜部を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記一部の端子は、前記複数の端子の中央部に配され、前記一部以外の一部の端子は、前記中央部の両サイドに配される請求項3又は4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記一部の端子の前記水平方向における幅は、前記一部以外の一部の端子の前記水平方向における幅より大きい請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記一部の端子は高速伝送端子である請求項1乃至6のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記一部の端子のうち差動伝送に用いる端子は、互いに等しい路長を有する請求項7に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記第一接続部は結線部として使用され、前記第二接続部は端子接触部として使用され、前記結線部と前記端子接触部を除く部分を成形樹脂で覆って気密構造としてある請求項1乃至8のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項10】
電気コネクタにおいて、
水平方向に並列配置された複数の端子を備え、前記複数の端子は各々、前記電気コネクタを介して互いに電気的に接続され得る部材のうちの一方と接続される第一接続部と他方と接続される第二接続部を有し、
前記複数の端子のうちの一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離と等しく設定されており、
前記複数の端子のうち前記一部以外の一部の端子は、前記第一接続部における端子間距離が前記第二接続部における端子間距離よりも狭く設定されており、
前記一方の部材は、基板と該基板に取り付けられる外部シェルを有し、前記電気コネクタに前記一方の部材が取付けられたとき、前記複数の端子は、前記第一接続部において、前記一方の部材の前記基板と接触し、前記電気コネクタのグランド板は、前記複数の端子の前記第一接続部の近傍において、前記外部シェルと接触してグランドに接続されることを特徴とする電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−40197(P2010−40197A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198413(P2008−198413)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】