説明

電気コンタクト

金属支持体(2)を有し、その上にコンタクト層(3)が勾配層の形で設けられている電気コンタクト、特に差込接続の電気コンタクトが提案されている。この勾配層(3)は、少なくとも2種の元素から形成されていて、その一方は銀であり、かつ第2の元素のためのマトリックスを形成するかもしくは第2の元素と合金されているか、又はその一方はニッケルであり、かつその他方はリンであるか、又はその一方はインジウムであり、かつその他方はスズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、請求項1の上位概念に詳細に定義された種類の電気コンタクト、特に差込接続の電気コンタクトに関する。
【0002】
この種の電気コンタクトは、US 5,892, 424から公知であり、かつ、電気接続のカプセル化されたコンタクト箇所である。この公知の電気コンタクトは、支持体と、その上に設けられたコンタクト層とからなり、前記コンタクト層は電気コンタクトの耐摩耗性の改善のために利用される。このコンタクト層は、第1の元素から形成されるマトリックスを有し、前記マトリックスは第2の元素でドープされている。このマトリックスは、Mo、Zr、Nb、Hf、Ta及びWを有するグループから選択される1つの元素から形成されていていることができる。添加元素はZn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiを有するグループから選択される1つの元素から形成されていることができる。この添加元素は、電気的な接続過程の間の電気コンタクトの接触抵抗を安定化させる。更に、この添加元素は、電気コンタクトの耐摩耗性及び酸化安定性を改善する。コンタクト層中の添加元素の割合は、0.5原子%〜50原子%であることができる。
【0003】
このコンタクト層は、公知の電気コンタクトの場合に、スパッタ法、イオンアシスト気相堆積法、イオンプレーティング法又はプラズマCVD法により作成されている。しかしながら、これらの方法は、超高真空が必要なためにコストがかかり、多くの個数を製造するためには適していない。
【0004】
更に、公知の電気コンタクトのコンタクト層を製造する金属は高価であり、従って同様に多くの個数が必要となるコンタクトのためには適していない。これは、特に、自動車1台当たり1000〜3000個の個数を必要とする自動車における電気コンタクトに通用する。
【0005】
自動車分野において、電気コンタクトは実際に頻繁にスズからなるコンタクト層を有する。この層は、数マイクロメートルの厚さの溶融メッキ又は電気メッキされた層であることができる。スズは、その延性並びにその良好な導電性を特徴とする。スズコンタクト層を使用する場合には、通常では銅ベースの合金、例えばCuSnブロンズ、CuNiSi等からなる支持体との界面に、拡散により、金属間化合物、例えばCuSn、CuSnからなる中間層が形成される。この中間層はコンタクト層よりも硬質であり、かつ温度に依存して成長することがある。
【0006】
しかしながら、スズ合金もしくはスズ合金層は、硬度が低くかつ従って耐摩耗性が低いため、頻繁な差込過程の場合に又は車両もしくはエンジンに基づく振動によりすり減る傾向があり、これはより強い酸化、いわゆるフレッチング腐食が生じるという欠点を有する。すり減り及び/又はフレッチング腐食は、該当するコンタクトに属する、自動車の電機部品、例えばセンサ、制御装置などの故障を引き起こしかねない。
【0007】
この種のスズ層の場合には、このコンタクト層の高い付着傾向及び可塑変形に基づき、多くの適用状況に対して差込力が高すぎることも欠点である。
【0008】
更に、実地から、スズベースで製造された、Thermozinnとも言われる、電気コンタクトのコンタクト層は公知であり、これは100%まで金属間相からなり、かつ熱照射により製造される。摩耗試験により、この種のコンタクト層に対しても単に限定的な使用可能性が明らかになっている。
【0009】
更に、今まで、電気コンタクトの場合に、コンタクト層として頻繁にニッケル下層を有するAuCo合金、銅下層又はニッケル下層を有する銀層又は金層も使用される。
【0010】
特に、銀をベースとする、同様にスズをベースとする表面もしくはコンタクト層は付着性に基づき冷間圧接する傾向があり、かつ自己同士の組み合わせの場合に高い摩耗値を特徴とする。
【0011】
今まで電気コンタクトの場合に使用された銀層又は金層の場合にも、層のすり減りの際に又は層の剥離に基づき、支持体又は付着層として利用する、頻繁に銅又はニッケルからなる中間層の酸化性の摩耗現象が生じる。
【0012】
本発明の利点
金属支持体を有し、その上に勾配層の形でコンタクト層が設けられ、前記コンタクト層は少なくとも2種の元素から形成されており、その一方は銀であり、かつ第2の元素のためのマトリックスを形成するかもしくは第2の元素と合金されているか、又はその一方はニッケルであり、かつ他方はリンであるか、又はその一方はインジウムであり、かつ他方はスズである、本発明による前記電気コンタクトは、コンタクト層のために使用された成分、その入手性及びその比較的低い調達コストに基づき、大量の個数を必要とする電気コンタクトのためにも適したコンタクト層であるという利点を有する。
【0013】
本発明の範囲内で、勾配層とは、2つの元素の割合が支持体表面の法線方向に向かって変化しているコンタクト層であると解釈される。例えば、銀マトリックスもしくは銀/スズ合金中のスズの割合は支持体とは反対の方向に向かって減少することができる。コンタクト層の元素割合の変化は線形であることができる。この場合に、線形の濃度勾配である。これとは別に、階段機能に基づき段階的な濃度勾配であることもできる。基本的に、接触層中の一方の元素の割合は、勾配方向に向かって0%〜100%の範囲で推移する。
【0014】
この支持体は、例えば通常、自動車分野で差込接続の場合に使用される支持体であり、例えば、銅ベースの合金、例えばCuSnブロンズ、CuNiSi等である。これとは別に、ニッケルベースの合金からなる支持体を使用することもできる。
【0015】
本発明による電気コンタクトにおいて、2種の元素の一方が銀から形成され、この銀は第2の元素のためのマトリックスであるかもしくは第2の元素と合金されている場合には、この第2の元素もしくは添加元素はスズ、金又はインジウムであることができる。
【0016】
勾配層は、有利に約1μm〜3μmの厚さを有するが、この勾配層の厚さは更に厚く構成されていてもよい。
【0017】
電気コンタクトと、前記電気コンタクトに対応するコンタクトとの間の接触を改善するために、この勾配層は少なくとも部分的に貴金属カバー層を有することができる。この貴金属カバー層は、有利に約0.1μm〜0.3μmの厚さを有し、従って「フラッシュ」層といわれる。この「フラッシュ」層のための貴金属は、特にAu、Ru、Pt及び/又はPdが適している。
【0018】
コンタクト層の製造は、有利に電気メッキ法により行うか又はPVD(物理気相堆積)法により行う。
【0019】
本発明による対象の更なる利点及び有利な実施態様は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかである。
【0020】
図面
本発明による電気コンタクトの実施例は、図面において略示的に示されており、次の記載において詳細に説明される。
【0021】
この唯一の図面は、本発明による電気コンタクトの断面図である。
【0022】
実施例の記載
図中には電気コンタクト1が示されており、この電気コンタクト1は自動車において使用される差込結合のコンタクトである。
【0023】
この電気コンタクト1は、支持体2を有し、前記支持体2は銅ベースの合金、例えばCuSn、CuNiSi等から製造されている。この支持体2は、0.1mm〜0.5mmの厚さを有する。
【0024】
電気コンタクト1の支持体2上に、コンタクト層3が配置されており、このコンタクト層3は電気メッキ法により設けられている。このコンタクト層3は、銀/スズ−材料系であり、この場合、銀及びスズは相互に合金されている。コンタクト層3中のスズの割合は、支持体2とは反対の方向に向かって著しく線形に低下し、例えば約100%から約20%に低下している。このコンタクト層3は、従って勾配層を形成している。
【0025】
コンタクト層3の厚さは、約1μm〜3μmの間の範囲内にある。
【0026】
コンタクト層3の上側には、カバー層4として形成された、約0.2μmの厚さを有する、いわゆる薄い金層もしくは「フラッシュ」金層が配置されている。
【0027】
電気コンタクトの別の実施態様の場合には、勾配が反対方向を示すため、コンタクト層中のスズの割合は支持体の方向に向かって増加し、従ってコンタクト層もしくは勾配層の表面では最も高い銀濃度が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による電気コンタクトの断面図。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持体(2)を有し、その上にコンタクト層(3)が勾配層の形で設けられている電気コンタクト、特に差込接続の電気コンタクトにおいて、前記勾配層(3)が少なくとも2種の元素から形成されていて、その一方が銀であり、かつ第2の元素と合金されているか、又はその一方はニッケルであり、かつその他方はリンであるか、又はその一方がインジウムであり、かつその他方がスズであることを特徴とする、電気コンタクト。
【請求項2】
勾配層(3)は約1μm〜3μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1記載の電気コンタクト。
【請求項3】
勾配層(3)は、少なくとも部分的に貴金属カバー層(4)を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の電気コンタクト。
【請求項4】
貴金属カバー層(4)は約0.1μm〜3μmの厚さを有することを特徴とする、請求項3記載の電気コンタクト。
【請求項5】
貴金属カバー層(4)がAu、Ru、Pt及び/又はPdから形成されていることを特徴とする、請求項3又は4記載の電気コンタクト。
【請求項6】
勾配層(3)は、電気メッキ法によるか又はPVD法により支持体(2)上に設けられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気コンタクト。

【公表番号】特表2006−501615(P2006−501615A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540534(P2004−540534)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003296
【国際公開番号】WO2004/032284
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】