説明

電気ドメインにおける音響共振器の温度補償

【課題】補償をしない場合は音響共振器の有効性を阻害する、音響共振器を特徴づける温度ドリフトを補償する音響共振器回路及びフィルタの提供。
【解決手段】音響共振器回路100は、補償キャパシタ108と並列に接続された音響共振器104を含む構成で、補償キャパシタ108は、少なくとも部分的に音響共振器104の共鳴の温度ドリフトを補償する。又、音響共振器回路100は、帯域内では低い挿入損失で帯域外では高い挿入損失を示す伝達関数を提供するように構成された高周波フィルタに組み込まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は概して音響共振器の分野に関し、より具体的には電気ドメインにおける音響共振器の温度補償に関する。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波(surface acoustic wave;SAW)フィルタやバルク超音波(bulk acoustic wave;BAW)フィルタのような高周波(radio frequency;RF)フィルタに用いられる音響共振器は、典型的には、温度が上がったときに物質の剛性が減少することに起因する負の周波数の温度係数(temperature coefficient of frequency;TCF)を持っている。温度とともに音速が減少し、それゆえフィルタの伝達関数は低い周波数にシフトする。これにしたがわない振る舞いを示す物質は非常に少ない。ひとつの例としては、非晶質二酸化ケイ素(amorphous silicon oxide)である。SAWやBAWフィルタ内の音波の伝搬経路に非晶質二酸化ケイ素を導入すると、温度補償効果を持ち、これらの装置の全体としての温度ドリフトを減少させるであろう。しかしながら、非晶質二酸化ケイ素は、様々な課題も導入する。
【発明の概要】
【0003】
非晶質二酸化ケイ素は付加的な伝搬損失をもたらし、フィルタ中の低挿入損失を達成する目的を邪魔する。さらに、音波の伝搬経路内になんらかの追加的な物質を導入することは、共振器回路の結合係数を減少する。ここで共振器回路の結合係数は、共振器回路が音波の形態から電気的な形態にエネルギーを変換するときの効率に関連する。結果として、ある圧電物質が提供可能な最大のフィルタの相対帯域幅が急激に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
実施の形態は、添付の図面の図において、本願発明を限定するためではなく、一例として説明される。添付の図面の図において、同様の構成要素には同様の参照番号を付す。
【0005】
【図1】図1(a)−図1(d)は、いくつかの実施の形態に係る温度補償された共振器回路を示す図である。
【0006】
【図2】いくつかの実施の形態に係るはしご形フィルタを示す図である。
【0007】
【図3】いくつかの実施の形態に係るはしご形フィルタを示す図である。
【0008】
【図4】図4(a)および図4(b)は、いくつかの実施の形態に係る補償キャパシタのペアを示す図である。
【0009】
【図5】いくつかの実施の形態に係る無線通信装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施の形態の種々の態様が当業者が他の当業者に対して仕事の内容を伝えるために共通に使用する用語を用いて説明される。しかし、代替となる実施の形態が説明された態様のいくつかのみで実施されうることが当業者にとって明らかである。説明の目的のため、特定の装置および構成が例示的な実施の形態を十分に理解するために説明される。しかし、代替の実施の形態が特定の細部なしで実施されうることが当業者に理解される。他の例では、例示的な実施の形態を不明瞭にしないために、周知の特徴が省略または簡略化される。
【0011】
さらに、本発明の理解に最も役立つように、種々の実施例が複数の個別の実施例として順に説明される。しかし、説明の順番は、これらの実施例が必ずしも順序に依存しないことを意図していると解されるべきである。特に、これらの実施例は、説明の順番にしたがって実施される必要はない。
【0012】
「ある実施の形態」という用語は、繰り返し用いられる。この用語は、一般に、同じ実施の形態を意味しないが、同じ実施の形態を意味しうる。「含む」、「持つ」、「有する」という用語は、文脈が特に指示しない限り、同義である。
【0013】
種々の実施の形態に関連して用いられる用語の趣旨を明確にするため、「A/B」および「Aおよび/またはB」という用語は「A」、「B」または「AおよびB」を意味し、「A、Bおよび/またはC」という用語は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、または「A、BおよびC」を意味する。
【0014】
「と接続した(coupled with)」という用語および派生する用語が使用される。「接続した(coupled)」は、以下の1以上を意味する。「接続した(coupled)」は、2以上の要素が直接的に物理的または電気的に接触していることを意味する。しかし、「接続した(coupled)」は、互いに協力または相互作用した状態で、2以上の要素が互いに間接的に接触すること、ならびに、互いに接続したというべき要素の間で1以上の他の要素が接続または接触していることを意味する。
【0015】
本発明の実施の形態は、補償をしない場合は音響共振器の有効性を阻害する、音響共振器を特徴づける温度ドリフトを補償する音響共振器回路を提供する。特に、温度補償された音響共振器回路はフィルタに組み込まれ、フィルタ性能が温度ドリフトの悪影響を受けることを防ぐ。
【0016】
多くの無線アプリケーションの中には、フィルタの伝達関数の低域または高域側のいずれか一方において重要な意味を持つフィルタの減衰特性(critical filter skirt)が存在する。ここで「重要な意味を持つフィルタの減衰特性」とは、温度ドリフトの存在によって最も邪魔されうる運用仕様(operational specification)として用いる。
【0017】
本明細書におけるいくつかの実施の形態は、「重要な意味を持つフィルタの減衰特性」に近接するフィルタの伝達関数の一部に影響を及ぼす要素のために的を絞った温度補償を提供する。フィルタ中のサブセットにのみ温度補償を制限することにより、温度補償による悪い影響は、フィルタ特性全体としての影響では少なくなる。
【0018】
図1(a)は、種々の実施の形態に係る温度補償された音響共振器回路100を示す図である。音響共振器回路100は、補償キャパシタ108と並列に接続された音響共振器104を含む。音響共振器回路100は、帯域内では低い挿入損失で帯域外では高い挿入損失を示す伝達関数を提供するように構成された高周波フィルタに組み込まれてもよい。
【0019】
音響共振器104は、音波の形態から電気的な形態にエネルギーを変換するように構成された電気機械変換器である。音響共振器104は、共振周波数と呼ばれる特定の周波数において他の周波数よりも大きな振幅で振動する。音響共振器104は、振動に応じて電気信号を生成し、また逆に電子信号に応じて振動を生成する。
【0020】
音響共振器104は、温度によって音響共振器104に関連する共振特性を変化させる負の周波数の温度係数が関連する。具体的には、負のTCFは温度が下がると音波の速度が減少すること、および音響共振器104がRFフィルタに組み込まれたとき、伝達関数を低い周波数側にシフトさせる結果となることを意味する。d
【0021】
補償キャパシタ(compensating capacitor;C)108は、少なくとも部分的に音響共振器104の共鳴の温度ドリフトを補償する。以下本明細書において、「C」は補償キャパシタ108自身または補償キャパシタ108と関連するキャパシタを意味し、用いられる文脈に依存する。温度補償は電気ドメインで実行され、音響共振器104において音波の伝搬を変更することはない。
【0022】
補償キャパシタ108は、負の電気容量の温度係数(temperature coefficient of capacitance;TCC)を示すように構成されている。例えば、温度が上がることに応じてキャパシタの電気容量が下がる。いくつかの実施の形態では、負のTCCは、大きな負の誘電率の温度係数(temperature coefficient of the dielectric constant;TCK)を持つ誘電体を持つキャパシタを用いることで実現できる。本明細書において、「大きな負のTCK」は、−1,000[ppm/C]よりもさらに小さな(すなわち、絶対値の大きな)TCKを意味する。いくつかの実施の形態では、補償キャパシタ108は、−4,000[ppm/C]のTCKを持つチタン酸カルシウム(CaTiO3)を含むセラミックから成る誘電材料を含む。チタン酸カルシウムの誘電率は160前後であり、誘電正接(tan-delta;タンデルタ)は0.0003である。
【0023】
音響共振器は、バターワース−バン−ダイク(Butterworth-van-Dyke;BVD)等価回路を用いて具現化される。BVD等価回路において、互いに直列に接続された抵抗R、キャパシタC、およびインダクタLを含む直列セグメントと並列に接続されたキャパシタCで、共振器回路は表現される。BVD等価回路においては、直列(series)の共振器回路の温度ドリフトは共振周波数fで参照され、CおよびLの影響を受ける。一方、並列(parallel)の共振器回路の温度ドリフトは反共振周波数(anti-resonance frequency)fで参照され、C、C、およびLの影響を受ける。Rは共振器回路の損失をモデル化する。
【0024】
を追加しても音響共振器回路100の共振周波数は変化しないが、音響共振器回路100の反共振周波数を低くする。反共振周波数においてインピーダンスが極大となり、共振周波数においてインピーダンスが極小となる。反共振周波数は以下の式(1)で与えられる。
【数1】

【0025】
のCに関する微分係数は、以下の式(2)で与えられる。
【数2】

【0026】
式(2)はさらに、次式(3)で近似される相対変動を表現している。
【数3】

【0027】
実効的な結合係数がKeffである音響共振器は、周波数比は以下の式(4)と等しい。
【数4】

【0028】
補償キャパシタ自身の温度依存性は、以下の式(5)で与えられる。
【数5】

【0029】
ここで、CC0は、補償キャパシタ108の室温における初期の電気容量である。
【0030】
温度補償の効果を説明するために、音響共振器104が、初期の結合係数が6.5%であるBAW共振器の例を考える。最初、音響共振器104は温度ドリフトを持っていないと仮定する。この例ではCはCの1/4である。fのシフトは以下の式で表される。
【数6】

【数7】

【数8】

【0031】
式(8)は、fはこの場合およそ+16[ppm/C]シフトすることを示している。典型的なBAWフィルタは、TCFのおよそ−15〜−17[ppm/C]を示す。したがって、本実施の形態において音響共振器回路100の反共振周波数は温度安定(temperature stable)である。
【0032】
本実施の形態に係る補償キャパシタ108の挿入は、結合係数を、初期の結合係数である6.5%からおよそ5.3%まで減少させる。このような結像係数の損失は、他の温度補償を達成しようとする方法と比較して小さく、また許容できる損失の範囲内である。
【0033】
音響共振器104における直列の共振の温度ドリフトはCおよびCに支配される。したがって、上述の計算中のCの温度依存性は無視できる。
【0034】
図1(b)は、種々の実施の形態に係る温度補償された共振器回路112を示す図である。共振器回路112は、温度補償キャパシタ120と直列に接続された音響共振器116を含む。
【0035】
共振器回路112の温度補償は、反共振周波数の温度ドリフトではなく共振周波数の温度補償に作用することを除いて、音響共振器回路100の温度補償と同様である。
【0036】
音響共振器116が上述したBAW共振器と同様の性質を持つBAW共振器であると仮定すると、この実施の形態の補償キャパシタは、音響共振器116の静電容量Cのおよそ4倍の値を持つ。この実施の形態では、音響共振器116と直列に補償キャパシタを置くことによって、共振器回路112の共振周波数は温度安定となる。結合係数の低下は上述したものと同様である。
【0037】
図1(c)は、種々の実施の形態に係る温度補償された共振器回路124を示す図である。共振器回路124は、温度補償キャパシタ132と直列に接続された音響共振器128と、さらに温度補償キャパシタ132と並列に接続された音響共振器136とを含む。
【0038】
共振器回路124の温度補償は、共振周波数と反共振周波数との両方を補償する。しかしながら、共振器回路124は音響共振器回路100および/または共振器回路112の結合係数よりもさらに低下する。
【0039】
図1(d)は、種々の実施の形態に係る温度補償された共振器回路138を示す図である。共振器回路138は、可変キャパシタ142と直列に接続され、および/または可変キャパシタ144と並列に接続された音響共振器140を含む。可変キャパシタ142および/または144は、可変キャパシタ142および/または144のひとつまたは両方を、上述したTCCと同様に振る舞うように制御するアクティブ制御回路146と接続されている。アクティブ制御回路146によって提供されるアクティブ制御は、大きな負のTCKの誘電体を持つキャパシタに関して上述した温度補償と同様となるようにエミュレート(emulate;模倣する)。アクティブ制御回路146は、制御論理回路148と検出装置150とを含む。検出装置150は音響共振器140の温度を検出し、制御論理回路148は、可変キャパシタ142および/または144が上述した負のTCCのように振る舞うようにする制御の基礎となるように、検出した温度を用いる。
【0040】
音響共振器回路100、112、124、および138はそれぞれ、特定の利用分野に特に適するようにしてもよい。図2および図3は、いくつかのこれらの特定の分野の例を示す図である。
【0041】
図2は、いくつかの実施の形態に係るはしご型フィルタ200を示す図である。はしご型フィルタ200は、低い方のフィルタの減衰特性が「重要な意味を持つフィルタの減衰特性」である実施の形態で用いられる。これは例えば、はしご型フィルタ200がWCDMA(wireless code division multiple access)のバンド2または25のための受信フィルタで用いられる。上述したように、はしご型フィルタ200は、伝達関数の低い側の一部に関連する要素のための温度補償を考慮して設計されている。
【0042】
はしご型フィルタ200は、直列セグメント204_1−5等の多くの直列セグメントを含む。直列セグメント204_2−5はそれぞれ、はしご型フィルタ200の5つの直列共振器208_1−5のうちの少なくとも1つを持つ。直列共振器208_1および208_2は互いに接続して直列の組(cascaded pair)を構成する。直列共振器208はそれぞれ、共通の共振周波数を持つ。
【0043】
はしご型フィルタ200は、4つのシャントセグメント(shunt segment)212_1−4を含む。シャントセグメント212_1−4はそれぞれ、はしご型フィルタ200の4つのシャント共振器216_1−4のうちの少なくとも1つを持つ。シャント共振器216_1と216_4は共通の共振周波数f_s1を持ち、一方シャント共振器216_2および216_3は、共通の共振周波数f_s2を持つ。ここで、種々の実施の形態では、f_s2−f_s1=14[MHz]である。
【0044】
はしご型フィルタ200は、多数のインダクタ218を含む。インダクタ218は小さな値を持ち、積層モジュール上のボンドワイヤまはたプリント配線である。
【0045】
はしご型フィルタ200は、負のTCCを持つふたつの補償キャパシタC_c1(符号220−2)およびC_c2(符号220−2)を含む。補償キャパシタ220は例えばチタン酸カルシウムを含み、強い負のTCKを提供する。補償キャパシタ220の値は、対応するシャントセグメント中の共振器の静電容量に応じて固定の係数が設定される。例えば、C_c1はシャント共振器216_2の4倍の静電容量であり、C_c2はシャント共振器216_3の4倍の静電容量である。
【0046】
はしご型フィルタ200の適用が伝達関数の低い方の部分の温度ドリフトにのみ(または、少なくとも主に)関与しているため、いずれの直列共振器208に対する温度補償を提供する必要はない。さらに、伝達関数における低い、重要な意味を持つフィルタの減衰特性の付近部分に最も影響を与えるシャントセグメントのサブセットにのみ、温度補償は望ましい。本実施の形態では、シャントセグメント212_2−3が、伝達関数の関心部分に最大の影響を持つ。したがって、シャントセグメント212_2−3のみが温度補償共振器回路を持つ。これにより、温度補償に関連する接続係数の損失をさらに減少させる。
【0047】
図3は、種々の実施の形態に係るはしご型フィルタ300を示す図である。はしご型フィルタ300は、高い方のフィルタの減衰特性が「重要な意味を持つフィルタの減衰特性」である実施の形態で用いられる。これは例えば、はしご型フィルタ200がWCDMAのバンド2または25のための送信フィルタで用いられる。したがって、はしご型フィルタ300は、伝達関数の高い側の一部に関連する要素のための温度補償を考慮して設計されている。
【0048】
はしご型フィルタ300は、直列セグメント304_1−5等の多くの直列セグメントを含む。直列セグメント304_2−5はそれぞれ、はしご型フィルタ300の4つの直列共振器308_1−4のうちの少なくとも1つを持つ。
【0049】
はしご型フィルタ300は4つのシャントセグメント312_1−4を含み、それらははしご型フィルタ300の4つのシャント共振器316_1−4のうちの少なくとも1つを持つ。
【0050】
はしご型フィルタ300は多数のインダクタ318も含む。これらのインダクタ318は小さな値を持ち、積層モジュール上のボンドワイヤまはたプリント配線である。
【0051】
はしご型フィルタ300は、強い負のTCKを持つふたつの補償キャパシタC_c1(符号320_1)およびC_c2(符号)320_2)を含む。補償キャパシタ320は、例えばチタン酸カルシウムを含み、強い負のTCKを提供する。補償キャパシタ320の値は、対応する直列セグメント中の共振器の補償静電容量(compensation capacitance)に応じて固定の係数が設定される。例えば、C_c1は直列共振器308_3の補償静電容量の1/4倍であり、C_c2は直列共振器308_4の補償静電容量の1/4倍である。
【0052】
はしご型フィルタ300の適用が伝達関数の高い方の部分の温度ドリフトにのみ(または、少なくとも主に)関与しているため、いずれのシャント共振器316に対する温度補償を提供する必要はない。さらに、伝達関数における高い、重要な意味を持つフィルタの減衰特性の付近部分に最も影響を与える直列セグメントのサブセットにのみ、温度補償は望ましい。本実施の形態では、直列セグメント304_3−4が、伝達関数の関心部分に最大の影響を持つ。したがって、直列セグメント304_3−4のみが温度補償共振器回路を持つ。これにより、温度補償に関連する接続係数の損失をさらに減少させる。
【0053】
本明細書における実施の形態で用いられる補償キャパシタは、フィルタ処理したチップ上の薄膜キャパシタ、回路基板またはパッケージ上に実装された圧膜キャパシタ、または個別部品である。補償キャパシタをフィルタに接続するためにはふたつの配線のみが必要なので、いろいろな実装のバリエーションがある。さらに、上述したようにおよそ160というチタン酸カルシウムの高い相対誘電率のおかげで、補償キャパシタは比較的小型である。これにより、これらが様々なフィルタ設計に容易に組み込むことが促進される。
【0054】
強い負のTCKを持つ物質は、通常は本来的に強誘電体であり、誘電率は小さな電場依存性を持つ傾向がある。このため、電圧の変化が起こる結果として、静電容量の変化をもたらす。このような振る舞いの結果もたらされる非線形な歪みを避けるために、補償キャパシタはペアで用いられ、ふたつの静電容量の電場が逆となるようにする。例えば、図4(a)は、実施の形態に係るカスケード構成に配置された補償キャパシタのペア404_1−2を示す図である。ふたつの補償キャパシタ404は、互いに極性が逆向きとなるように直列に接続される。具体的には、補償キャパシタ404_1の底面端子408_1と補償キャパシタ404_2の底面端子408_2とが接続される。
【0055】
他の例として、図4(b)は、実施の形態に係る逆並列(anti-parallel)構成に配置された補償キャパシタのペア412_1−2を示す図である。具体的には、補償キャパシタ412_1の上面端子416_1と補償キャパシタ412_2の底面端子420_2とが同じノード424に接続される。
【0056】
温度補償された共振器を持つフィルタは、例えば図5に示す本発明の種々の実施の形態に係る無線通信装置500を含む多数の実施の形態で用いられる。種々の実施の形態では、限定はしないが、無線通信装置500は携帯電話、ページング装置(paging device)、PDA(personal digital assistant)、テキストメッセージ装置、ポータブルコンピュータ、基地局、レーダー、衛星通信装置、またはRF信号を無線送信および/または無線受信可能な任意の他の装置である。
【0057】
無線通信装置500は、アンテナ構造504、デュプレクサ508、送受信機512、メインプロセッサ516、およびメモリ520を含み、これらは少なくとも図に示すもの同士接続されている。
【0058】
メインプロセッサ516は、メモリ520に格納されている基本オペレーティングシステムプログラムを実行し、無線通信装置500を統括的に制御する。例えば、メインプロセッサ516は、送受信機512による信号の受信および信号の送信を制御する。メインプロセッサ516は、メモリ520に常駐する他の処理およびプログラムを実行可能であり、実行中の処理の要求によってメモリ520内にデータを移動したり、メモリ520の外にデータを移動したりすることができる。
【0059】
送受信機512は、デュプレクサ503とアンテナ構造504とを介してRF信号を送信して発信データを通信するための送信機524を含む。送受信機512は、加えて/代えて、デュプレクサ503とアンテナ構造504とを介してRF信号を受信して受信データを通信するための受信機528を含む。送信機524と受信機528とは、それぞれフィルタ532と536とを含む。フィルタ532と536とは、それぞれのフィルタが採用された効用を享受するための温度補償された共振器回路を選択している。例えば、種々の実施の形態では、フィルタ532ははしご型フィルタ200と同様であり、フィルタ536ははしご型フィルタ300と同様である。
【0060】
種々の実施の形態において、アンテナ構造504は、例えばダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストリップアンテナ、およびRF信号のOTA送信/受信に適した他の任意のアンテナを含む、1以上の指向性および/または無指向性のアンテナである。
【0061】
ここでは特定の実施の形態を示して説明してきた。当業者であれば、本願発明の範囲を逸脱しない範囲で、同じ目的を達成すると予想された様々な代替的および/または同等な実施の形態または実装が、ここに示されて説明された実施の形態に置き換えられてもよいことを理解するであろう。当業者であれば、実施の形態が様々方法によって実装されてもよいことを容易に理解するであろう。本出願では、本明細書中で説明した実施の形態のあらゆる改変または変形をカバーすることが意図されている。したがって、実施の形態は特許請求の範囲およびこれと同等なものによってのみ限定されることがはっきりと意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波の形態と電気的な形態との間のエネルギーを変換する音響共振器と、
負の電気容量の温度係数(negative temperature coefficient of capacitance)を示すキャパシタとを備え、
前記キャパシタは、前記音響共振器と接続されており、前記音響共振器の共振周波数または反共振周波数(anti-resonance frequency)の温度ドリフトを少なくとも部分的に補償することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記キャパシタは前記音響共振器と並列に接続され、前記音響共振器の反共振周波数の温度ドリフトを少なくとも部分的に補償することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
他のキャパシタが前記音響共振器と直列に接続され、前記音響共振器の共振周波数の温度ドリフトを少なくとも部分的に補償することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記キャパシタは前記音響共振器と直列に接続され、前記音響共振器の共振周波数の温度ドリフトを少なくとも部分的に補償することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記キャパシタは、高い負の誘電率の温度係数を持つ誘電体を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記誘電体はチタン酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記高い負の誘電率の温度係数は、−1000[ppm/C]よりもさらに小さいことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記高い負の誘電率の温度係数は、およそ−4000[ppm/C]であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記キャパシタは可変キャパシタであり、本装置はさらに、
前記音響共振器の温度を検出する検出装置と、
検出した温度に基づいて、前記可変キャパシタが前記負の電気容量の温度係数を示すように制御する制御回路とを持つアクティブ制御回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
カスケード構成で前記キャパシタと直列に接続し、前記共振周波数または前記反共振周波数の温度ドリフトをさらに補償する他のキャパシタをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
逆並列構成で前記キャパシタと接続し、前記共振周波数または前記反共振周波数の温度ドリフトをさらに補償する他のキャパシタをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
複数の直列セグメントと、
複数のシャントセグメントとを含み、
前記複数の直列セグメントの個々の直列セグメントは温度補償されていない直列共振器を持っており、
前記複数のシャントセグメントの個々のシャントセグメントはシャント共振器を持っており、
前記複数のシャントセグメントは、温度補償されている1以上のシャント共振器を含むことを特徴とするフィルタ。
【請求項13】
前記複数のシャントセグメントは、
温度補償されていない第1のシャント共振器のサブセットと、
温度補償されている1以上のシャント共振器を含む第2のシャント共振器のサブセットとを含むことを特徴とする請求項12に記載のフィルタ。
【請求項14】
前記温度補償されているシャント共振器は、前記フィルタの伝達関数のフィルタの減衰特性のうち低い方のフィルタの減衰特性と近接する部分の温度ドリフトを補償することを特徴とする請求項12に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記複数のシャントセグメントのうちの第1のシャントセグメントは共振器回路を含み、当該共振器回路は、前記1以上のシャント共振器のうちのひとつのシャント共振器と、当該シャント共振器と直列に接続するキャパシタとを含むことを特徴とする請求項12に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記キャパシタは、およそ−1000[ppm/C]よりもさらに小さな負の誘電率の温度係数を持つ誘電体を含むことを特徴とする請求項15に記載のフィルタ。
【請求項17】
複数のシャントセグメントと、
複数の直列セグメントとを含み、
前記複数のシャントセグメントの個々のシャントセグメントは温度補償されていないシャント共振器を持っており、
前記複数の直列セグメントの個々の直列セグメントは直列共振器を持っており、
前記複数の直列セグメントは、温度補償されている1以上の直列共振器を含むことを特徴とするフィルタ。
【請求項18】
前記複数の直列セグメントはさらに、
温度補償されていない第1の直列共振器のサブセットと、温度補償されている1以上の直列共振器を含む第2の直列共振器のサブセットとを含むことを特徴とする請求項17に記載のフィルタ。
【請求項19】
前記温度補償されている1以上の直列共振器は、前記フィルタの伝達関数のフィルタの減衰特性のうち高い方のフィルタの減衰特性と近接する部分の温度ドリフトを補償することを特徴とする請求項17に記載のフィルタ。
【請求項20】
前記複数の直列セグメントのうちの第1の直列セグメントは共振器回路を含み、当該共振器回路は、
前記1以上の直列共振器のうちのひとつの直列共振器と、
前記直列共振器と並列に接続するキャパシタとを含むことを特徴とする請求項17に記載のフィルタ。
【請求項21】
前記キャパシタは、およそ−1000[ppm/C]よりもさらに小さな負の誘電率の温度係数を持つ誘電体を含むことを特徴とする請求項20に記載のフィルタ。
【請求項22】
アンテナ構造と、
前記アンテナ構造と接続し、高周波信号(radio frequency signal)を受信または送信する送受信機とを備え、
前記送受信機は、音波の形態と電気的な形態との間のエネルギーを変換する音響共振器を持つ温度補償されている共振器回路を持つフィルタを含み、
負の電気容量の温度係数を示すキャパシタをさらに備え、
前記キャパシタは、前記音響共振器と接続されており、前記音響共振器の共振周波数または反共振周波数の温度ドリフトを少なくとも部分的に補償し、
前記送受信機と接続し、前記送受信機によって送信または受信される高周波信号を通してデータを送信または受信するプロセッサをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記送受信機は前記フィルタを持つ送信機を含み、前記温度補償されている共振器回路は前記音響共振器を持つシャントセグメントと前記キャパシタとをさらに備え、
前記音響共振器は前記キャパシタと直列に接続されていることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記送受信機は前記フィルタを持つ受信機を含み、前記温度補償された共振器回路は前記音響共振器を持つ直列セグメントと前記キャパシタとをさらに備え、
前記音響共振器は前記キャパシタと並列に接続されていることを特徴とする請求項22に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98991(P2013−98991A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−240588(P2012−240588)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(599034594)トライクイント・セミコンダクター・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】TriQuint Semiconductor,Inc.
【住所又は居所原語表記】2300 NE Brookwood Parkway,Hillsboro,Oregon 94124,U.S.A.
【Fターム(参考)】