説明

電気ヒンジコネクタ

航空機用電力分配システムユニット(1)のためのヒンジ(4)は、ユニットの第1のハウジング部分(3)に連結する第1のヒンジ部材(11)、およびユニットの第2のハウジング部分(2)に連結する第2のヒンジ部材(10)を備える。第1のヒンジ部材(11)および第2のヒンジ部材(10)は、導電性材料を含み、ヒンジ部材(10、11)間の電気接続を確立しヒンジ部材間の相対的回転を可能にするように互いに連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機用電力システムで使用するための、電気接続をもたらすヒンジに関する。本発明は、さらに、航空機用電力分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に取り付けられる最新の電力分配システムの設計を左右するファクタには、費用、重量および体積がある。全パッケージサイズを下げるには、あらゆる使用可能な面および空間を用いる設計手段がとられる。しかし、通常の操作およびメンテナンスのアクセスは部品の全寿命にわたって必要であり、したがって構成部品はしばしばユニット上のヒンジで取り付けられるドアに取り付けられる。
【0003】
主要な電力分配の場合、ドアに取り付けられる構成部品には、500Aまでの電流給電や500Aを上回る電流給電が必要となることがある。そうした大きな電流は、太くて重く本質的に曲がらないケーブルによって給電する必要がある。一例として、ケーブルの中には、必要な電流を運ぶために、15mmほどの太さの直径が必要なものもある。結果的に、過剰なケーブルの収容にはかなり大きな空間が必要であり、それとともに重量が追加され、ドアを動かす開閉力がより大きくなり、動くようには機械的に設計されていないやり方で動かされるケーブルストランドのほとんど予測不可能な摩耗および引き裂きが引き起こされる。
【0004】
必要な体積の大きさの問題を克服するために提案された1つの解決策は、過剰なケーブルを収容するためにユニット内にスペースを割り当てることである。しかし、これは、ケーブルが曲がりにくい状況を緩和しない。従来技術における他の解決策は、束になった多数のケーブルによってドアヒンジを通って電力を送るものである。これによって柔軟性が増大し、したがってドアの開閉に必要な力が低減するが、多数の「より細い」ケーブルを使用することで、絶縁材および束保持部の断面積が増大することにより重量が増大する。また、これは、1本のワイヤが壊れさらに他のワイヤが並列に接続されている場合、故障が検出されないという危険を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許第10101635号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、第1のハウジング部分および第2のハウジング部分を備えるハウジングを有する航空機用電力分配システムユニットのためのヒンジであって、
ユニットの第1のハウジング部分に連結する第1のヒンジ部材と、
ユニットの第2のハウジング部分に連結する第2のヒンジ部材と
を備え、
第1のヒンジ部材および第2のヒンジ部材が、導電性材料を含み、ヒンジ部材間の電気接続を確立しヒンジ部材間の相対的回転を可能にするように互いに連結可能である、
ヒンジを提供する。
【0007】
有利には、本発明は、ケーブル接続に関連する問題を克服する。というのも、ヒンジは、ユニットのドアの簡単な回転を可能にし、ユニットのドアを開けるおよび/または閉めるのに小さい力しか必要とせず、一方電力をユニット内のドアに取り付けられた構成部品に送る電気接続をもたらすからである。したがって、電流をユニットの本体からドアに取り付けられた構成部品に送るのにワイヤが必要なくなる。航空機用電力分配システムユニットの全体の体積および重量の低減が、本発明によって可能になる。
【0008】
第2のヒンジ部材は、第1のヒンジ部材のキャビティに脱着可能に係合することができ、それによって、電力ケーブルによるドアの動きの制限なしに、ユニットのドアが簡単にユニットに差し込まれかつそこから取り外され得るようになる。
【0009】
次に、添付の図面を参照して、単なる例として本発明の諸実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による航空機用電力分配システムのユニットの概略図である。
【図2】本発明による第1および第2のヒンジ部材の図である。
【図3】本発明によるヒンジの一部の斜視図である。
【図4】図3のヒンジ部分に接続可能な母線の斜視図である。
【図5】部分的に組み立てられたヒンジの斜視図である。
【図6】図4に示される母線を含む組み立て済みのヒンジの図である。
【図7】本発明によるヒンジを含む航空機用電力分配システムのユニットの斜視図である。
【図8】本発明によるヒンジを含む航空機用電力分配システムのユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、第1のハウジング部分3および第2のハウジング部分2を備える航空機用電力分配システムのユニット1が示されている。第2のハウジング部分2は、ヒンジ4によって第1のハウジング部分3に回転可能に連結されるドアを備える。第1のハウジング部分は、ユニット1の本体を備える。電流は、電力入力8を介してユニット1に入る。電力入力8は、ユニット内に設けられる電気負荷12に電流を分配する電気バス7に電力を供給する。電力はまた、入力8からユニットのドア2に取り付けられる電気バス6にも送られる。図示の実施形態では、ドア2上のバス6は、ユニット内のバス7を介して電力入力8に接続される。ドア2をユニット1の本体3に連結するヒンジ4は、導電性材料を含み、それによって電流が電気バス6に流され得るようになる。さらに、1つまたは複数の電気装置5が、ドア2の上、好ましくはドアの内側に取り付けられ、バス6から電力を引き出す。この電気装置は、対応する電力出力9に接続される。電力出力9にケーブルが使用される場合、電力出力は電力入力に必要とされるものより細く曲がりやすいワイヤを使用することで実現され得る。あるいは、電力出力は図1に示されていない第2のヒンジを通って送られてもよい。
【0012】
図2には、ヒンジ4の2つの構成部品が示されている。ヒンジ4は、レセプタクル11およびレセプタクルに回転可能係合する突出部17をそれぞれ備える第1のヒンジ部材11および第2のヒンジ部材10を備える。レセプタクル11は、断面が円形であり突出部17を受ける円筒形キャビティ13を含む双曲面のソケット11を含む。レセプタクル11の端部14は、より太くなっており、したがってレセプタクルの中央部分15に比べて強度が高い。第2のヒンジ部材10は、押込み嵌め機構でレセプタクルに連結され得る。この点に関連して、双曲面のソケット11の内部構造(図示せず)は、端部14間に円筒形キャビティ13の表面に沿って延在する一連のワイヤを含み、端部部分がソケットの長手方向軸まわりに互いにねじられ、それによってワイヤがソケットの中央に向かって締め付けを形成する。第2のヒンジ部材の突出部17は、円筒形であり、レセプタクルの円筒形キャビティ13への対合する挿入に適合する。突出部17の長手方向軸は、ヒンジの回転軸と一致する。突出部17の円筒形表面およびキャビティ13の内部構造は、第1のヒンジ部材と第2のヒンジ部材の間に広い面積にわたる確かな表面接触をもたらし、それによってヒンジ部材間に優れた電気接続が実現し、航空機用電力分配システムに必要とされる大電流が運ばれ得るようになる。さらに、ソケットの内部構造によって、ソケット内への突出部分の取り付けが容易になる。第2のヒンジ部材10は、その突出部とは反対の端部に、図4に示される母線18との接続のためのルート部分16を備え、ドアに取り付けられる電気装置5に電力を供給する。第1のヒンジ部材10も第2のヒンジ部材11も、金属などの導電性材料から作られる。
【0013】
図3を参照すると、ヒンジのレセプタクル11は、マウント19によってハウジングに連結される。コンダクタ21は、電流をバス7からレセプタクル11に供給する。コンダクタバー21とレセプタクルの間の電気接続は、マウント19を通って延在することができる(図面には示されない)補助コネクタによってもたらされ得る。マウント19自体は、有利には電流からユニットのハウジングを絶縁する電気絶縁材料を含むのが好ましい。
【0014】
図4には、ユニットのドア2に取り付け可能な母線18が示されている。母線18は、それと一体的に形成される第2のヒンジ部材10を有する。代替実施形態では、第2のヒンジ部材は、母線18と別個に製造され、導電性ジョイントによってそれに連結される。図6に示されるように、母線18は、電力を電気装置5に供給し、電気装置5が確実にドアの内側の所定位置でしっかり保持されようにする。
【0015】
図5には、ヒンジ4が、部分的に組み立てられたすなわち分解組み立て図で示されている。ヒンジの組み立ては、ユニット1の本体上にマウント19を配置することを含む。レセプタクル11は、マウント19内の溝22に挿入され、第2のヒンジ部材10の突出部17は、レセプタクル11の円筒形キャビティ13に挿入される。これらのステップを実行する順序は変更可能である。
【0016】
図6には、母線18の下に取り付けられている複数の電気装置5を含む、組み立て済みのヒンジが示されている。例えば、電気装置5のうちの1つまたは複数が回路遮断器を備えてもよい。母線18が入力電流を回路遮断器5に供給しても、回路遮断器5からの出力電流が著しく低くなる。したがって、出力電流は、ユニット内に収容可能でありドア2の開閉に必要以上の抵抗を与えない細く曲がりやすいワイヤによって運ばれ得る。
【0017】
図7および8には、航空機用電力分配システムの組み立て済みユニット1が示されている。第1および第2の母線18は、ドアの内側に設けられ、第1および第2のヒンジ4にそれぞれ接続される。第1および第2のコンダクタ21は、電流を第1および第2のヒンジ4にそれぞれ流す。図7では、ユニットは閉位置で示されており、一方図8では、ユニットのドアは開けられその中の構成部品にアクセス可能になっている。ヒンジ4によって、メンテナンスアクセスに一般的に必要とされるドアの120度の回転が可能になる。図示の例では、各ヒンジは、200Aの電流を運ぶことができ、したがって400Aが一対のヒンジを通って流されることが可能になる。図示の例はDCシステムであるが、ヒンジは、やはりまたAC電力で作動するシステムにも使用可能である。電力出力は、図7および8に示されていないが、ここでもワイヤまたは出力ヒンジを備えることができる。ヒンジの寸法および数は、当面の個別の機械的および電気的な設計考慮事項に応じて可変であってよい。
【0018】
第1および第2のヒンジ部材は、図面に示されるのとは逆に取り付けられてもよい。言い換えれば、レセプタクル11がドア2に取り付けられ、突出部17がユニット1の本体3に取り付けられてもよい。その場合、マウント19は、レセプタクル11を受けるようにドア2上に設けられる。第1および第2のヒンジ部材は、プラスチック材料からの成形によって製造されてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 ユニット
2 第2のハウジング部分、ドア
3 第1のハウジング部分、本体
4 ヒンジ、第1のヒンジ、第2のヒンジ
5 電気装置、回路遮断器
6 電気バス
7 電気バス
8 電力入力
9 電力出力
10 第2のヒンジ部材
11 第1のヒンジ部材、レセプタクル、ソケット
12 電気負荷
13 キャビティ
14 端部
15 中央部分
16 ルート部分
17 突出部
18 母線、第1の母線、第2の母線
19 マウント
21 コンダクタ、コンダクタバー、第1のコンダクタ、第2のコンダクタ
22 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジング部分および第2のハウジング部分を備えるハウジングを有する航空機用電力分配システムユニットのためのヒンジであって、
前記ユニットの前記第1のハウジング部分に連結する第1のヒンジ部材と、
前記ユニットの前記第2のハウジング部分に連結する第2のヒンジ部材と
を備え、
前記第1のヒンジ部材および前記第2のヒンジ部材が、導電性材料を含み、前記ヒンジ部材間の電気接続を確立し前記ヒンジ部材間の相対的回転を可能にするように互いに連結可能である、
ヒンジ。
【請求項2】
前記第2のヒンジ部材が、前記第1のヒンジ部材のキャビティ内に脱着可能に係合可能である、請求項1記載のヒンジ。
【請求項3】
前記第1のヒンジ部材が、レセプタクルを備え、前記第2のヒンジ部材が、前記レセプタクル内に係合する突出部を備える、請求項1または2記載のヒンジ。
【請求項4】
前記突出部の長手方向軸が、前記ヒンジの回転軸と一致する、請求項3記載のヒンジ。
【請求項5】
前記レセプタクルが、双曲面のソケットを備える、請求項3または4記載のヒンジ。
【請求項6】
前記突出部が円筒形である、請求項3乃至5のいずれか記載のヒンジ。
【請求項7】
前記第1のヒンジ部材および/または前記第2のヒンジ部材が、電力を1つまたは複数の電気部品に分配する母線に接続される、前記請求項のいずれか記載のヒンジ。
【請求項8】
前記第1のヒンジ部材および/または前記第2のヒンジ部材が、前記母線と一体的に形成される、請求項7記載のヒンジ。
【請求項9】
前記第1のヒンジ部材および前記第2のヒンジ部材が、前記ユニットの外部から電気的に絶縁される、前記請求項のいずれか記載のヒンジ。
【請求項10】
請求項1によるヒンジによって互いに回転可能に連結される第1のハウジング部分と第2のハウジング部分を備えるハウジングを有する航空機用の電力分配システムユニット。
【請求項11】
前記ヒンジが前記ハウジング部分内に配置される、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のヒンジ部材および前記第2のヒンジ部材が、前記第1のハウジング部分および前記第2のハウジング部分にそれぞれ連結される、請求項10または11記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のハウジング部分が、前記ユニットの本体を備える、請求項10乃至12のいずれか記載のシステム。
【請求項14】
前記第2のハウジング部分が、前記ユニットのドアを備える、請求項10乃至13のいずれか記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のヒンジ部材が、マウントによって前記第1のハウジング部分に連結されるレセプタクルを備える、請求項10乃至14のいずれか記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−502032(P2013−502032A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524289(P2012−524289)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051304
【国際公開番号】WO2011/018650
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(509133300)ジーイー・アビエイション・システムズ・リミテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】GE AVIATION SYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】