説明

電気ポット

【課題】 蓋体に配置された手動ポンプでの給湯が可能な電気ポットにおいて、使用者の安全性を確保して、かつ、蒸気の放出を気にせずに配置場所を選ぶことができる電気ポットを得ること。
【解決手段】 液体を収容する内容器14および前記内容器14を加熱する加熱手段16を備えた容器本体1と、前記容器本体1の上部側開口部を開閉可能に覆う蓋体2とを備え、前記蓋体2内に、前記内容器14内の液体を給湯経路を介して外部に吐出する手動ポンプ4と、前記内容器14で発生する蒸気を導入して結露させ液体として前記内容器14に還流させる蒸気冷却部30とを有し、前記蒸気冷却部30の蒸気冷却路が、前記手動ポンプ4を少なくとも3方から取り囲むように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容器内の液体を加熱沸騰させる電気ポットに関し、特に、内容器で発生した蒸気を逃がすための蒸気排出口が蓋体の上面に配置されていない電気ポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容器内に入れられた水などの液体を、電気ヒータによって加熱沸騰させる電気ポットは、一般に、液体を入れる内容器とこの内容器内の液体を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、容器本体の上部の開口を開閉可能に覆う蓋体とから構成されている。蓋体の上面には、内容器の沸騰時に外部に蒸気を排出する蒸気排出口が設けられている。
【0003】
蒸気排出口は、例えば蓋体の上面に形成されたスリット状の開口であり、蓋体の内面側に形成された蒸気導入口と、転倒時に蒸気排出口からお湯がこぼれないようにするための止水弁を介して、蒸気排出通路によって接続されている。蒸気排出口を設けることで沸騰時の内容器内部の圧力を低下させることができ、内容器内の液体がスムーズな形で沸騰して、所定の時間沸騰が継続された後に必要に応じて保温状態に移行することができる。
【0004】
しかし、上記従来の電気ポットでは、沸騰時に蒸気排出口から高温の蒸気が放出されるため、使用者の手などが触れてしまうと危険である。また、電気ポットがキッチンボードなどの比較的狭い空間内に載置されている場合には、放出される高温の蒸気がキッチンボードの天板に当たり、水滴の付着や高温が原因となって変形・変質などが生じるおそれがある。このため、蓋体の上面に蒸気排出口を備えない構成の電気ポットへの要請は高い。
【0005】
また、電気ポットとして、給湯時に電動ポンプを用いる給湯方法のみではなく、蓋体に設けられた手動ポンプ(ベローズ)を用いることで、エアによる給湯方法を選択することができるタイプのものが提案されている(特許文献1参照)。このような、電動ポンプによる給湯と手動ポンプによる給湯とを選択できる電気ポットや、手動ポンプのみによって給湯を行う電気ポットにおいて、使用者が手動ポンプにより給湯を行う場合には、蓋体の上面に手を近づける必要があるために、蓋体上面に高温の蒸気が放出される蒸気放出口を備えない構成とすることへの要請は特に高いものがある。
【0006】
なお、電気炊飯器では、炊飯時に発生する蒸気を蓋体から容器本体側面に設けられた復水器に導くことで、外部に蒸気を放出しない構造のものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−333838号公報
【特許文献2】特開平8−140836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、手動ポンプでの給湯を可能とする電気ポットにおいて、沸騰時に蓋体の上面から蒸気が放出されない構成を実現することへの要請は特に強い。しかし、電気ポットは容器本体の周辺部に構造的な余裕がないため、容器本体に復水器を設けて蒸気を導入するという、炊飯器における蒸気冷却技術をそのまま適用することは実質的に不可能である。
【0009】
また、蒸気を放出しない炊飯器に実用化されている他の方法、例えば、蒸気経路を水タンクに通す方法を用いると、電気ポットの場合には、蒸気出口が塞がってしまって吐出口からお湯が勝手に吐出してしまうという、特有の危険な状態が発生する。さらに、沸騰終了後に内容器内が陰圧となった場合やお湯を給湯する給湯時に、水タンクの水を吸い上げてしまうおそれがあるなど、蒸気レス炊飯器で用いられている技術を転用することはできない。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものであり、電気ポットの外表面に蒸気を排出する蒸気排出口が形成されていないため、蓋体に配置された手動ポンプでの給湯が可能な電気ポットにおいて、使用者の安全性を確保して、かつ、蒸気の放出を気にせずに配置場所を選ぶことができる電気ポットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の電気ポットは、液体を収容する内容器および前記内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、前記容器本体の上部側開口部を開閉可能に覆う蓋体とを備え、前記蓋体内に、前記内容器内の液体を給湯経路を介して外部に吐出する手動ポンプと、前記内容器で発生する蒸気を導入して結露させ液体として前記内容器に還流させる蒸気冷却部とを有し、前記蒸気冷却部の蒸気冷却路が、前記手動ポンプを少なくとも3方から取り囲むように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気ポットは、使用者が押圧操作することで給湯を可能とする手動ポンプと、内容器で生じた蒸気を結露させて液体として内容器内に還流させる蒸気冷却部とを蓋体内に有し、蒸気冷却部の蒸気冷却路が、手動ポンプを少なくとも3方から取り囲むように配置されている。このため、蒸気冷却路の長さを確保でき、蒸気を液体として内容器内に還流させるので、手動ポンプを操作するために手を近づける使用者の安全が確保された、載置場所の制約の少ない電気ポットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態にかかる電気ポットの外観構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる電気ポットの断面図である。
【図3】実施の形態にかかる電気ポットの蓋体の構成を示す断面図である。
【図4】蒸気冷却部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電気ポットは、液体を収容する内容器および前記内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、前記容器本体の上部側開口部を開閉可能に覆う蓋体とを備え、前記蓋体内に、前記内容器内の液体を給湯経路を介して外部に吐出する手動ポンプと、前記内容器で発生する蒸気を導入して結露させ液体として前記内容器に還流させる蒸気冷却部とを有し、前記蒸気冷却部の蒸気冷却路が、前記手動ポンプを少なくとも3方から取り囲むように配置されている。
【0015】
本発明の電気ポットは、上記構成を備えることで、蓋体の略中央部に配置される手動ポンプを備えた構成でありながら、所定の長さの蒸気冷却路を確保できるため、蒸気冷却部において蒸気を十分に冷却させることができ、液体として内容器内に還流させることができる。このため、蓋体の上面に蒸気放出口を設けない構成とすることができ、使用者が給湯のために蓋体の上面に手を近づけることが多い手動給湯が可能な電気ポットにおいて、使用者の安全を確保し得るとともに、電気ポットからの蒸気の放出が問題とならないために載置場所の制約をなくすことができる。
【0016】
上記構成において、前記蒸気冷却部の前記蒸気冷却路が、略U字状または略馬蹄形状に形成されていることが好ましい。このようにすることで、中央に配置された手動ポンプとの干渉を避けて、限りある蓋体の平面を有効に活かした蒸気冷却路を有する蒸気冷却部を配置することができる。
【0017】
また、前記蒸気冷却部は、前記蓋体を前記容器本体に回動可能に取り付けるヒンジ機構が配置されている側に、前記内容器内の蒸気が導入される導入口と、前記蒸気冷却路の途中に形成され蒸気を結露させた液体を前記内容器内に還流する還流口とを備え、前記還流口は、前記蓋体が前記容器本体の上部側開口部を覆っている場合には閉塞されていることが好ましい。このようにすることで、所定の長さの蒸気冷却部を確保できるとともに、蒸気が冷却されて生じた液体が、蒸気冷却部内に液溜まりとなって残らない構成とすることができる。
【0018】
さらに、前記蒸気冷却部の導出口が、前記給湯経路に接続されていることが好ましい。このようにすることで、内容器内部の液体が吐出される吐出口を、蒸気冷却部を通った空気の排出口として利用できるため、蒸気経路の出口を別途構成する必要がなくなる。
【0019】
また、使用者が給湯スイッチを操作した際に動作する電動ポンプをさらに備え、前記電動ポンプは、前記手動ポンプにより前記内容器内の液体を外部に吐出する前記給湯経路を介して前記内容器内の液体を外部に吐出させることが好ましい。このようにすることで、安全で、かつ、配置場所の制約が少ない、電動ポンプによる給湯と手動ポンプによる給湯とを選択できる電気ポットを実現することができる。
【0020】
以下、本発明の電気ポットの実施形態として、蓋体中央部の手動ポンプによる給湯と、給湯スイッチを操作することによる電動ポンプによる給湯とを選択可能な電気ポットについて、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の電気ポットの外観を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の電気ポット100は、容器本体1と、容器本体1の上部側開口部を開閉可能に覆う蓋体2とを備えている。蓋体2には、ロック機構を解除するとともに蓋体2を回動させて、容器本体1の上部側開口部を開口させる際の取手となる蓋開閉レバー3が配置されている。また、蓋体2の中央部には、押下することで手動による給湯が可能となる手動ポンプ4が配置されている。
【0023】
容器本体1の上端部の一端には、容器本体1の側面から突出して形成された張り出し部5が設けられ、張り出し部5の下面の中央部分には、容器本体1内の図1では図示しない内容器に溜められた湯等の液体を注ぐための吐出口6が形成されている。本実施形態の電気ポット100では、張り出し部5の中間部分に押下することでお湯等を注ぐことができる板状の給湯スイッチ10が配置されている。このように所定の面積を有する板状の給湯スイッチ10を備えることで、使用者が電気ポットに対して左右の両側から給湯操作を行うことができる。張り出し部5の上面には、電気ポット100の各種の操作を行う操作パネル7が配置されている。操作パネル7には、内容器内の液体の沸騰モードや保温モードなどを選択することができる各種の操作ボタン9が配され、お湯の温度や電気ポット100の動作状況を表示することができる液晶パネルなどにより構成される表示部8が配置されている。
【0024】
張り出し部5の下方に位置する容器本体1の側面には、内容器内のお湯の量を表示するための計量窓11が設けられていて、容器本体1内部の透明な計量管を通して計量管内部のお湯を視認することができ、使用者は、お湯の上端面の位置から内容器内の湯量を把握することができる。
【0025】
また、容器本体1の上部で、張り出し部5とは反対側である他端側には、電気ポット100を持ち運ぶための回動可能な把手12が配置されている。把手12は、電気ポット100使用時に使用者の邪魔にならないように、通常は容器本体1の張り出し部5に形成された吐出口6とは反対側の側面に沿って位置するように回動されている。なお、以下本明細書では、容器本体1の吐出口6が配置されている上記一端側の方向を前方、把手12が位置している上記他端側の方向を後方として称することとする。
【0026】
図1に示す、本実施形態の電気ポット100の容器本体1は、角部に面取り様の接続面が形成されている、水平断面が全体として略矩形となる四角柱状のものとして例示したが、容器本体1の形状はこれに限られず、例えば水平断面がほぼ円形の円筒形状とするなど、各種の形態を採用することができる。また、図1では容器本体1の全体構成に合わせて略矩形状とした張り出し部5の外縁形状、さらに、張り出し部5に配置された給湯スイッチ10や操作パネル7の形状、操作パネル7に配置された各種のスイッチ類9の形状および個数や配置場所、表示部8の配置位置や形状などは、使用者の操作性を向上させることができ、また、好ましい外観デザインとなるような各種の形態を採ることができる。また、給湯スイッチ10を、操作パネル7に配置して、電気ポット100の操作ボタンを一箇所に集中させることができる。
【0027】
図2は、本実施形態の電気ポット100の内部構造を説明する、主要構成を示した断面図である。なお図2は、電気ポット100の前方と後方とを結ぶ線、すなわち電気ポット100を前方側から見た場合に、蓋体2の上面を左右方向に二分する中心線に沿った断面形状を、吐出口6を手前側に配置した場合の右側の側方から見た状態を図示している。
【0028】
図2に示すように、容器本体1は、樹脂製などの外ケース13の内部にステンレスなどの金属製の内容器14が配置されていて、内容器14の内側空間15に水などの液体を収容することができる。容器本体1の下方、内容器14の底面に接して加熱手段である電気ヒータ16が配置されていて、内容器14内に収容された液体、例えば水を加熱、沸騰させることができる。また、電気ヒータ16の出力を調整することで、内容器14内の液体を保温することができる。なお、電気ポット100における保温機能を高めるために、内容器14を二重構造としてその内部を真空とする場合がある。電気ヒータ16としては、例えば、雲母板にワット数の異なる2組の発熱体を保持させたマイカヒータなどを使用することができる。
【0029】
電気ヒータ16の下方には、電源ユニット17が配置されていて、図2では図示しない電源コードがコンセントに差し込まれることで商用電源からの交流電圧が電気ポット100に供給される。
【0030】
内容器14の底面に配置された吸水出口18は、電動ポンプ19に接続されていて、給湯スイッチ10が押下されると電動ポンプ19が動作して、内容器14内の湯などの液体を、下部給湯管20、計量窓11を介して外部から視認可能な透明な計量管21、張り出し部5内に設けられた上部給湯管22、転倒時止水バルブ23、吐出管24を経て吐出口6から外部へと吐出することができる。このように、内容器14と吐出口6とをつなぐ内容器14内の湯を給湯する際の経路が給湯経路であり、本実施形態の電気ポット100では、吸水出口18、電動ポンプ19、下部給湯管20、計量管21、上部給湯管22、転倒時止水バルブ23、吐出管24が給湯経路を構成している。
【0031】
容器本体1の上端部後方側には、蓋体2を図2に示した閉塞状態から図2中に矢印Aとして示した方向に回動させて、内容器14の上方を開放できるように回動可能に固定するヒンジ機構25が配置されている。ヒンジ機構25は、図示と詳細な説明を省略するヒンジピンおよびヒンジロックを備えていて、蓋体2を回動可能とするとともに、蓋体2を容器本体1に対して着脱自在に支持している。
【0032】
蓋体2の前方側には、蓋体2を容器本体1の上部側開口部を閉塞した状態で固定するためのロック機構とロック機構でのロックを解除するための蓋開閉レバー3が配置されている。図2に示す、蓋体2が容器本体1の上部側開口部を覆ってロックされている状態で、蓋開閉レバー3を図2中の矢印B方向に回動することで、蓋開閉レバー3の下面側に形成されている突起部3aがロック機構の押圧バネ26を後方側に押しやり、容器本体1に嵌合していたロックピン27が外れて蓋体2が開放可能となる。蓋開閉レバー3は、ロック機構の解除手段であるとともに、蓋体2を引き上げる際の取手としても機能する。
【0033】
蓋体2の下面側、すなわち、容器本体1内の内容器14に面する側には蒸気入口28が形成されていて、内容器14内の液体が沸騰した際に発生する蒸気は、蒸気入口28から蒸気入口28に隣接する蒸気入口空間29を経て蒸気冷却部30に導入される。蒸気冷却部30に導入された蒸気は、蒸気冷却部30を通過する間に冷却されて結露し液体となって、内容器14内に還流される。蒸気冷却部30は、図2に示すように、前方側に対して後方側が低くなるような傾斜した構成となっていて、蒸気が結露した液体が内容器14に還流しやすいようになっている。なお、蓋体2における蒸気冷却部30の下面側、すなわち内容器14側に断熱部材を配置することで、内容器14の温度が蒸気冷却部30に伝わりにくくすることができる。さらに、蒸気冷却部30の周囲に蓋体2の内部空間2aを設けることで蒸気冷却部30の冷却効果を高め、蒸気が結露しやすくなる。さらにまた、蒸気冷却部30自体を金属や高熱伝導性の樹脂で形成すること、また、蒸気冷却部30の周囲をアルミ箔や銅箔などの熱伝導性の高い部材で覆うことによって、蒸気冷却部30の放熱特性を向上することができる。
【0034】
蓋体2の中央部には、電気を用いずに手動で給湯を行うことができる手動ポンプ4が配置されている。使用者が手動ポンプ4を押下することによって、内部のベローズ31が圧縮されて内容器14内に空気を送り込み、内容器14内部の内側空間15の気圧を上昇させる。内容器14内部の内側空間15の気圧が上昇することで、湯などの液体を吸水出口18内に送り込み、給湯経路を介して吐出口6から給湯することができる。
【0035】
このように、本実施形態の電気ポット100は、電動ポンプ19を動作させることによる電動給湯と、手動ポンプ4を操作しての手動給湯とのいずれかの給湯方法を選択して、内容器14内の湯などの液体を吐出口6から給湯することかできる。このため、内容器14内のお湯が沸いた後に、電気ポット100を近くに電源がない場所に運んで使用することが可能となり、また、停電時においても内容器14内の液体を吐出口6から吐出させることができる。
【0036】
なお、手動ポンプ4での給湯を可能とするために、本実施形態の電気ポット100に用いられる電動ポンプ19は、例えば渦巻き状の羽根やスクリュなどを用いて液体を送り出すことができるポンプを用いて、電動ポンプ19が動作していないときに電動ポンプ19内部を湯などの液体が自由に移動できる液体の通路を備えた構成を用いることが必要となる。また、電動ポンプ19内部の液体の通路や、給湯経路を構成する各種の配管においては、内容器14側の径が吐出口6側の径よりも太くなるようにしていわゆる吐出負荷を下げ、内容器14内部の液体を吐出口に6に送り出すための圧力が小さくても足りるような構成とすることが好ましい。
【0037】
蓋体2の下面側、すなわち容器本体1の上部側開口に対向する部分には、金属製の内カバー部材32が形成されている。内カバー部材32の外縁周には全周に渡って、蓋体2が容器本体1に対してロック状態にあるときに、容器本体1の上部側開口部の開口端部に圧接される耐熱ラバー性のシールパッキン33が配設されている。内カバー部材32には、蒸気入口28にほぼ対向する部分と、手動ポンプ4のベローズ31の下側に位置する部分とを含む開口32aが形成されていて、内容器14と蒸気入口28、さらには、ベローズ31と内容器14の内側空間15とが空間的に繋がっている。
【0038】
なお、本実施形態の電気ポット100では、給湯経路内の上部給湯管22と吐出管24との間に、電気ポット100が転倒した場合に内容器14内の液体が不所望に吐出口6から漏れ出すことを防止する、転倒時止水バルブ23が配置されている。転倒時止水バルブ23は、例えば図2に示すように円錐台を逆さまにして配置した形状のバルブ内に、金属製のボール状、また、円錐台状の止水弁が配置されていて、電気ポット100が転倒した状態で加わる重力と漏れ出そうとする湯などの液体による圧力とのバランスを利用して、給湯経路を塞ぐものである。なお、転倒時止水バルブは必要に応じて設けられるもので、必須のものではない。また、転倒時止水バルブの具体的な配置位置、形状等に限定はなく、電気ポット100が転倒した場合に吐出口6からの湯などの漏れ出しを防止することができる構成であれば、従来周知の構成を含めて各種の構成を採用することができる。
【0039】
図3は、本実施形態の電気ポット100の、蓋体2の内部構成を示す断面図である。図3では、図2で示した断面と同じ断面を拡大して示している。また、図4は、本実施形態の電気ポット100が蓋体2内に備える蒸気冷却部30の内部の構成を示した図である。図4は、蒸気冷却部30の内部構成を示すために、蓋体2の上側の筐体と蒸気冷却部30の上面部とを取り除いた状態を示す平面図である。
【0040】
以下、図3,図4を用いて、蓋体2の内部に形成された蒸気経路における蒸気の流れを説明する。
【0041】
図3に示すように、蓋体2の下面側に、容器本体1の上部側開口と対向するように形成された蒸気入口28が配置され、蒸気入口28に隣接する蒸気入口空間29には、蒸気センサ34が配置されている。蒸気センサ34は、容器本体1の上端部分に配置されていて、蓋体2が容器本体1の上部側開口を閉塞してロックされた状態で、その先端の温度感知部が、蓋体2に形成された開口を介して蒸気入口空間29内に到達するようになっている。蒸気センサ34の先端部の温度感知部が蒸気入口空間29内の温度から、内容器14内の液体が沸騰して蒸気が発生していることを検知すると、電気ポット100の図示しない制御部が電気ヒータ16の出力を下げて、制御状態を沸騰モードから保温モードに切り替える。このように制御することで、内容器14内の液体が沸騰して発生する蒸気の量を抑制することができるとともに、過剰な電力が投入され続けることを防止して省エネルギーにも貢献できる。
【0042】
蒸気入口空間29は、蒸気冷却部30の導入口30aに接続されている。一方、蒸気冷却部30の導出口30bには、蒸気配管35の一方の端部が接続されている。蒸気配管35の他方の端部は、容器本体1の張り出し部5の下面側でかつ、吐出口6よりも後部側の容器本体1の側面に近い部分に形成された図示しない蒸気口と接続されている。なお、後述するように、本実施の形態の電気ポット100では、内容器14で発生した蒸気は、蒸気冷却部30で冷却されて結露し、液体として内容器14に還流するため、蒸気冷却部30の導出口30bから蒸気配管35を経て蒸気口から電気ポット100の外部に放出される気体は、高温でかつ湿った蒸気ではなく乾いた気体となっている。しかし、本明細書においては、蒸気入口28から蒸気入口空間29、蒸気冷却部30、蒸気配管35を経て電気ポット100の外部に面する蒸気口を一つの連続した経路として、便宜上蒸気経路と称することとする。したがって、上記のように、蒸気冷却部30を経た気体が通過する通路を蒸気配管35、気体の出口を蒸気口と称しているが、これらの呼称は、蒸気配管35内を高温の蒸気が移動することを意味しているのではなく、また、蒸気口から、従来の電気ポットの蒸気排出口から外部に排出されていたような高温多湿の蒸気が放出されることを意味しているのではない。
【0043】
上記したように、蒸気入口28から蒸気口までの蒸気経路が形成されているため、内容器14内で発生した蒸気は、図3に矢印aとして示すように、内カバー部材32の開口32aを介して蓋体2内部に進入する。さらに蒸気は、図中矢印b、矢印cとして示す経路を経て蒸気入口28から蒸気経路内に入り、蒸気入口空間29に到達する。蒸気入口空間29に到達した蒸気を蒸気センサ34が感知して、以後は電気ヒータ16に投入される電力が低減されるが、蒸気の発生は直ちに止まるわけではないため、発生した蒸気は、矢印eとして示すように蒸気冷却部30の導入口30aから蒸気冷却部30内に進入する。
【0044】
図4に示すように、蓋体2の内部に配置された蒸気冷却部26は、蓋体2の後部側、すなわち、図2で示した容器本体1と蓋体2とを接続するヒンジ機構25が配置された側を下側とする、略U字状となっている。
【0045】
本実施形態の電気ポット100は、蓋体2に手動ポンプ4を備えている。手動ポンプ4は、使用者が押圧することで内部のベローズ31が収縮し空気吐出口37から加圧空気を内容器14内に送り込むことで、内容器14内の液体を給湯経路に送り込む。このような原理で給湯を行うために、手動ポンプ4は、給湯効率を考えると、内容器14の中心もしくは中心に近い場所の上部に配置されている必要がある。このため、蓋体2における手動ポンプ4の配置位置は、蓋体2の略中央部となる。一方、蓋体2に配置される蒸気冷却部30は、導入された蒸気を十分に自然冷却させて結露させ、水分を液体として内容器14内に環流させるために、蒸気が通り抜ける蒸気冷却路の長さをなるべく長くすることが好ましい。蓋体2の中央部を避けて、平面内でなるべく長い蒸気冷却路を確保し、さらに後述するように蒸気冷却路内で液溜まりが生じることを回避するために、本実施形態の電気ポット100では、図4に示すような略U字状の蒸気冷却部30としている。このように、蓋体2の中央の手動ポンプの配置位置を避けて、手動ポンプを、その後方と左右両方の少なくとも3方から取り囲むように蒸気冷却路を配置することで、導入された蒸気を十分に結露させて、内容器14内に還流することができる。
【0046】
手動ポンプ4のベローズ31の構成は、従来からのべローズの構成をそのまま用いることができるため、詳細な説明は省略する。ベローズ31には、図3では図示しない復元バネが配置されていて、押圧されてベローズ31内部の加圧空気を空気吐出口37から吐出した後、ベローズ31を元の状態に戻すことができる。このとき、吸気口36が開かれて、ベローズ31内部に空気が吸入される。なお、手動ポンプ4が操作されて内容器14内の液体が吐出される際には、内容器14の内側空間15が気密に保たれる必要がある。このため、従来の電気ポットの手動ポンプにおいては、ベローズが押し下げられたときに蒸気を蓋体の上部から放出する蒸気通路を閉じていたが、本実施形態の電気ポット100では、蒸気通路の代わりに、蒸気冷却部30を経て外部と接続されている蒸気経路を閉じる構成となっている。
【0047】
図4に戻って、蒸気入り口空間29につながる導入口30aから蒸気冷却部30に導入された蒸気は、図4中の矢印eのように蒸気冷却部30の第1の蒸気冷却路30c内へと向かう。その後矢印f、矢印g、矢印hを経て、折り返し部30dで矢印iのように折り返される。さらに、第1の蒸気冷却路30cに隣接して、間を隔壁で隔てられた第2の蒸気冷却路30e内を、矢印j、矢印kのように進み、矢印lのように、導入口30aとは隔壁で隔てられた空間30fに到達する。
【0048】
蒸気冷却部30には、空間30fに隣接して環流口30hが形成されている。この環流口30hは、蓋体2が容器本体1の上部側空間を覆っている状態では、図3に示すように容器本体1の後部側、すなわちヒンジ機構25に隣り合う部分の壁面に当接して、閉じられた状態となっている。
【0049】
このため、蒸気が発生しこれを蒸気冷却部30で冷却する蓋体2が閉じられた状態では、蒸気は空間30fから、第3の蒸気冷却路30gの側に進む。そして、矢印m、矢印n、矢印oのように第3の蒸気冷却路30g内を進んで導出口30bから蒸気冷却部30に接続された蒸気配管35内へと導出される。
【0050】
本実施形態の電気ポット100の蒸気冷却部30は、第1の蒸気冷却路30cと第2の蒸気冷却路30eとの間に折り返し部30dを設けることで、略U字状という制限のある全体形状において蒸気冷却路の長さをなるべく長くしている。その結果、導入された蒸気が蒸気冷却部30内になるべく長い時間留まるようにすることができ、蒸気の結露を促している。
【0051】
図2および図3に示したように、蒸気冷却部30は、蓋体2内で後方側すなわち導入口30a側が下がるような形状としている。このようにすることで、蓋体2が閉じている状態で、蒸気冷却部30内で蒸気が結露して生じた液体は、点線矢印qのように導入口30aに、また、点線矢印pのように環流口30hに向かって集まることとなる。
【0052】
導入口30aは、蒸気入口空間29の上部に位置しているため、導入口30aに集まった結露により生じた液体は、蒸気入口空間29を経て蒸気入口28から内容器14内に戻る。一方、環流口30hに集まった液体は、蓋体2が容器本体1の上部側空間を覆っている際には環流口30hが容器本体1の上端の内壁によって塞がれているために、そのままとどまっている。その後、使用者が内容器14内に液体を供給したり、内容器14内の液体を排出したりするために蓋体1を開けた時、蓋体2は前方が上側に後方のヒンジ機構25側が下側に来るように略鉛直となるように回動するため、蒸気冷却部30の環流口30hが内容器14の上部で開放され、このときに結露により生じて溜まっていた液体が内容器14内に戻る。
【0053】
本実施形態の電気ポット100における蒸気冷却部30は、図4に示すように第1の蒸気冷却路30c、第2の蒸気冷却路30e、第3の蒸気冷却路30gのいずれの部分で結露して生じた液体も導入口30aもしくは環流口30hに向かって流れ、蒸気冷却部30内で結露溜まりが生じることがないように、後方側に向かって流れる液体の流れを遮るものが無いような形状としている。このため、蒸気冷却部30内で結露により生じた液体は、少なくとも蓋体2が回動して容器本体1の上部側開口が開放された状態で内容器14内に戻って蒸気冷却部30内には留まらない。この結果、使用者は、使用の都度蒸気冷却部30内を掃除することなく、快適かつ衛生的に電気ポット100を使用することができる。
【0054】
なお、図4で示した蒸気冷却部の構成は一例に過ぎず、内容器で発生した蒸気がその内部を通過する間に効率よく冷却されて結露し、液体となって内容器に還流することができる構成であれば、蒸気冷却部の蒸気冷却路の形状は適宜好ましい形状に形成することができる。例えば、蒸気冷却部30の全体の形状を馬蹄形状、もしくは、一部が開放された円環状とすることで、状冷却路が蓋体2の中央に配置された手動ポンプを少なくとも3方から取り囲む構成として、手動ポンプの配置位置と干渉しあうこと無く長い蒸気冷却路を備えた蒸気冷却部とすることができる。
【0055】
また、蒸気冷却部内の蒸気冷却路に、衝立や分岐部を設けて蒸気がたまる空間を形成することによって、導入口から導出口までの蒸気冷却部内の蒸気の流れを滞らせることができ、蒸気に対する冷却効果を向上させて結露化を促進することができる。なお、蒸気冷却路内に衝立などを形成する場合には、結露して生じる液体が、蓋体2が容器本体1の上部側空間を覆っている際に、図4で示した本実施形態に示す蒸気冷却部30における導入口や環流口のような、内容器14へと連結される部分に自然と集まるように配慮すること、すなわち、結露が溜まる結露溜まりが生じないように工夫することが、メンテナンスフリーの蒸気冷却部を構成する上で好ましい。このため、例えば、蒸気冷却路の壁面に蒸気冷却路を遮るように衝立を形成する場合には、衝立が導入口もしくは環流口の方向に向かって伸びるように配置することが好ましい。また、蒸気が入り込む空間部分を蒸気冷却部に形成する場合には、その空間部分の開口を、導入口または還流口側に形成することとなる。
【0056】
なお、上記実施形態では、蒸気冷却部30の導出口30bに接続された蒸気配管35の先端が、張り出し部5の下面側に形成された蒸気口に接続されている構成を説明したが、蒸気冷却部30の導出口30bと接続された蒸気配管35を給湯経路に接続することで、蒸気口を設けない構成とすることができる。
【0057】
本実施形態の電気ポット100では、上記したように蒸気入口空間29内に配置された蒸気センサ34によって、内容器14内の液体が沸騰して蒸気が発生していることを検出すると、保温モードに切り替わって更なる蒸気の発生を抑制することができ、内容器14内の液体が沸騰している時に発生する蒸気の量を低減することができる。このため、発生した蒸気のほとんど全てを蓋体2内部に配置された蒸気冷却部30で冷却して結露させ、液体として内容器14内に還流させることができる。したがって、蒸気冷却部30を通過し、蒸気口から外部に放出される気体は、その温度も低くまた、含有する水分量が低くなっている。さらに、本実施形態の電気ポット100では、蒸気経路内に蒸気を導入させるために必要な蒸気口を、張り出し部5の下面でしかも容器本体1の側面部に近い側に配置したため、蒸気口から放出される乾いた空気が、従来の電気ポットの蒸気排出口から排出されていた蒸気のように、温度や含まれる水分量が安全性や電気ポットの配置場所の制約として問題となることはほとんど無い。
【0058】
しかし、たとえ張り出し部の下側の面であるとしても、電気ポット100の表面に開口としての蒸気口を設ける必要があり、また、電気ポットが転倒した場合には、蒸気経路が内容器内の液体の流出経路となってしまう場合があることを考えると、蒸気経路と給湯経路とを一体化して、電気ポットと外部との接続部分を吐出口一カ所のみとすることがより好ましいといえる。
【0059】
なお、給湯経路と蒸気経路とを一体化する場合には、給湯時に吐出されようとする湯などの液体が、接続部分から蒸気経路内に逆流しないように、蒸気経路と給湯経路との接続部分に蒸気経路を遮蔽可能な開閉機構を設けて、給湯時にはこの開閉気孔を閉じるように制御することが好ましい。また、転倒時に止水機能を果たすことができる点や、元々給湯経路内に配置された構成物であるため蒸気経路と接続するための部材を接続しやすい点を考慮すると、図2で示した転倒時止水弁22に隣接して蒸気経路との接続部を配置し、蒸気経路を転倒時止水弁で給湯経路に接続することが好ましい。
【0060】
上記のように本実施形態の電気ポット100では、蓋体2に、手動給湯を可能とする手動ポンプ4と、内容器14内で発生した蒸気を冷却させて結露させ、液体として内容器14内に還流させることができる蒸気冷却部30とを備え、蒸気冷却部30の蒸気冷却路が手動ポンプを少なくとも3方から取り囲むように配置されている。
【0061】
このようにすることで、電気を必要としない手動給湯が可能な電気ポットにおいて、使用者が操作のために手を近づけることの多い蓋体の上面に、高温の蒸気が放出される蒸気放出口を配置する必要が無くなり、安全、かつ、載置場所の制約の少ない電気ポットを提供することができる。
【0062】
なお、本実施形態の電気ポット100として、電動給湯と手動給湯との両方の給湯方法を選択できるものを例示して説明したが、本発明にかかる電気ポットとして、電動給湯の機構を備えずに給湯方法が手動給湯方法のみである電気ポットとすることができる。
【0063】
また、上記実施形態において、内容器内での蒸気の発生を検出する蒸気センサとして、温度センサを例示したが、圧力センサによって測定空間内部の圧力を測定することで蒸気の発生を検出することができる。また、蒸気センサの配置場所や、配置個数は、上記の例に示したものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の電気ポットによれば、手動による給湯を可能とする構成を備え、表面に高温の蒸気が放出され蒸気放出口が形成されていないため、安全性が高く配置場所の制約が少ない電気ポットとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 容器本体
2 蓋体
14 内容器
16 電気ヒータ(加熱手段)
30 蒸気冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する内容器および前記内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、
前記容器本体の上部側開口部を開閉可能に覆う蓋体とを備え、
前記蓋体内に、前記内容器内の液体を給湯経路を介して外部に吐出する手動ポンプと、前記内容器で発生する蒸気を導入して結露させ液体として前記内容器に還流させる蒸気冷却部とを有し、
前記蒸気冷却部の蒸気冷却路が、前記手動ポンプを少なくとも3方から取り囲むように配置されていることを特徴とする電気ポット。
【請求項2】
前記蒸気冷却部の前記蒸気冷却路が、略U字状または略馬蹄形状に形成されている請求項1に記載の電気ポット。
【請求項3】
前記蒸気冷却部は、前記蓋体を前記容器本体に回動可能に取り付けるヒンジ機構が配置されている側に、前記内容器内の蒸気が導入される導入口と、前記蒸気冷却路の途中に形成され蒸気を結露させた液体を前記内容器内に還流する還流口とを備え、
前記還流口は、前記蓋体が前記容器本体の上部側開口部を覆っている場合には閉塞されている請求項1または2に記載の電気ポット。
【請求項4】
前記蒸気冷却部の導出口が、前記給湯経路に接続されている請求項1から3に記載の電気ポット。
【請求項5】
使用者が給湯スイッチを操作した際に動作する電動ポンプをさらに備え、前記電動ポンプは、前記手動ポンプにより前記内容器内の液体を外部に吐出する前記給湯経路を介して前記内容器内の液体を外部に吐出させる請求項1〜4に記載の電気ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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