説明

電気・電子部品用銅合金及びSnめっき付き銅合金材

【課題】高い導電率及び強度を有し、応力緩和特性及び曲げ加工性に優れ、Snめっきの耐熱剥離性にも優れた電気・電子部品用銅合金を提供する。
【解決手段】Fe:0.01〜0.2質量%、P:0.02〜0.15質量%、Mg:0.05〜0.2質量%、Sn:0.001〜0.2質量%、及びZn:0.05〜1.0質量%を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなり、S:0.005質量%以下であり、Fe,Mg及びP含有量が下記式(1)、(2)を満たす。2.5≦([Fe]+[Mg])/[P]≦8.0・・・・(1)[Mg]/[Fe]≧0.85・・・・(2)[Fe]、[Mg]、[P]は、それぞれFe,Mg,P含有量を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品の素材として用いられる銅合金、及び前記銅合金を母材とするSnめっき付き銅合金材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅合金は、強度、導電性及び熱伝導性に優れることから、家電製品の部品、半導体装置用リードフレーム等の半導体部品、プリント配線板等の電気・電子部品材料、開閉器部品、バスバー、端子・コネクタ等の機構部品や産業用機器などの各種用途に用いられる。
これらの各種用途に用いられる銅合金には、強度、導電性及び熱伝導性以外に、その用途に応じて、各種の特性が求められる。例えば、車載用ジャンクションボックス(以下、「JB」と略す)のバスバーとして、図1に示す接点構造を有するものが知られており、このバスバー1では、圧接部2a,2bを有するメス端子部3と、リレーやヒューズなどのオス端子4との電気的な接触を維持するために、応力の集中するメス端子部3の圧接部2a,2bの下部5は、強度、応力緩和特性等の特性に優れることが求められる。特に、応力緩和特性は、電気的接触を良好に保つために重要な特性である。また、バスバー1の板厚は、通常0.64〜0.8mmと厚く、薄板に比べて曲げが困難であるため、種々の加工に耐え得る曲げ加工性も重要な特性となる。
【0003】
また、近年の車載電装用部品における低コスト化、小型化及び軽量化の傾向から、車載JB用バスバーの材料には、従来から要望されている機械的特性に加えて、一段と高い導電率[具体的には、60%IACS以上〔IACS:万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)〕]であることが望まれている。
さらに、従来、バスバーは、耐食性を高めるためにSnめっきを施した状態で使用されている。ここで、前記のとおり、JBにおける近年の小型化および軽量化の要求に適応するため、バスバーに直接、半導体を実装するタイプが増加しており、耐食性だけでなく加熱後のめっき耐熱剥離性などの特性も重要になってきている。
【0004】
そこで、これらの問題に対応するため、各種の銅合金が提案されている。例えば、特許文献1には、バスバー、自動車用コネクタ端子、電気・電子部品の端子等の通電部品用に適した銅合金として、質量%でFe:0.15〜0.7%、P:0.04〜0.5%、Mg:0.01〜0.5%、必要に応じてSn:0.5%以下を含み、Fe/P比、Mg/P比及びFe+Mg含有量を所定範囲に規制した銅合金が開示されている。特許文献2には、バスバー、端子、その他の電気・電子部品に用いる銅合金として、Fe:0.01〜3.0%、P:0.01〜0.4%、Mg:0.1〜1.0%、必要に応じてZn0.005〜3.0%、Sn:0.01〜5.0%を含む銅合金が開示されている。特許文献3には、同じく、Fe:0.02〜0.5%、P:0.01〜0.1%、Mg:0.1〜1.0%、Sn:0.1〜1.0%、Zn:0.3〜2.0%を含む銅合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−291518号公報(請求項1,3)
【特許文献2】特開2007−177274号公報(請求項1,4,5)
【特許文献3】特開平03−97816号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、導電性、強度、曲げ加工性及びプレス打ち抜き性を高いレベルでバランスよく兼ね備えた銅合金が得られたとされているが、応力緩和特性や高温長時間加熱後のめっき耐熱剥離性についての検討がなされていない。特許文献2では、高強度,高導電率及び優れた曲げ加工性が得られたとされているが、応力緩和特性や高温長時間加熱後のめっき耐熱剥離性についての検討がなされていない。特許文献3では、強度、応力緩和特性及び導電性に優れた銅合金が得られたとされているが、実施例をみると応力緩和特性については試験温度が低く現在の要求水準に達しているかどうか疑問がある。また、曲げ加工性についての検討がなされていない。
【0007】
本発明は、従来技術の上記問題点に鑑みてなされたもので、高い導電率及び強度を有し、かつ応力緩和特性及び曲げ加工性に優れ、さらにSnめっきした場合に高温長時間加熱後の耐熱剥離性にも優れた電気・電子部品用銅合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、Cu−Fe−Mg−P(−Sn−Zn)系銅合金について、強度や導電率の向上に有効なFe−P析出物及びMg−P析出物を形成するために必要なFe,Mg及びPの含有量について鋭意検討した。その結果、合金成分であるFe,Mg,P,Sn,Znの含有量が特定の範囲内にあり、不可避的不純物であるSの含有量が抑えられ、さらにFe,Mg,Pの含有量が特定の関係式を満たすとき、前記銅合金が高い強度及び導電率を有し、同時に応力緩和特性、曲げ加工性、及び高温長時間加熱後のSnめっき耐熱剥離性にも優れることを知見した。
【0009】
すなわち、本発明(請求項1)に係る電気・電子部品用銅合金は、Fe:0.01〜0.2質量%、P:0.02〜0.15質量%、Mg:0.05〜0.2質量%、Sn:0.001〜0.2質量%、及びZn:0.05〜1.0質量%を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなり、S:0.005質量%以下であり、Fe,Mg及びP含有量が下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする。
2.5≦([Fe]+[Mg])/[P]≦8.0・・・・(1)
[Mg]/[Fe]≧0.85・・・・(2)
ここで[Fe]、[Mg]、[P]は、それぞれFe,Mg,Pの含有量を表す。
【0010】
上記電気・電子部品用銅合金は、必要に応じて、Al:0.001〜0.030質量%とSi:0.001〜0.030質量%のいずれか1種又は2種を合計で0.001〜0.050質量%含み、又は/及び、(2)Mn,Ni,Co,Crの1種以上を総量で0.0005〜0.05質量%含む。
【0011】
本発明に係るSnめっき付き銅合金材(請求項7)は、前記電気・電子部品用銅合金からなる銅合金母材と、前記銅合金母材の表面に形成された厚さ1.0μm以下のCu−Sn合金層と、さらに前記Cu−Sn合金層の表面に形成された厚さ0.3〜1.0μmのSn又はSn合金層からなることを特徴とする。
また、本発明に係るSnめっき付き銅合金材(請求項8)は、電気・電子部品用銅合金からなる銅合金母材と、前記銅合金母材の表面に形成された厚さ1.0μm以下のCu−Sn合金層と、前記Cu−Sn合金層の表面に形成された厚さ0.3〜1.0μmのSn又はSn合金層からなり、前記Cu−Sn合金層及びSn又はSn合金層は、前記銅合金母材の表面に形成したSn又はSn合金めっき層をリフロー処理することにより形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電気・電子部品用銅合金は、高い導電率及び強度を有するとともに、応力緩和特性、曲げ加工性に優れ、さらにこの銅合金にSn又はSn合金めっきを行ったSnめっき付き銅合金材は、高温長時間加熱後のSn又はSn合金層の耐熱剥離性に優れている。具体的には、本発明に係る銅合金は、導電率が60%IACS以上、圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれも耐力が400N/mm以上、ビッカース硬さが130Hv以上、圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれも180℃×24時間加熱後の応力緩和率が30%以下、曲げ軸が圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれもR/t=0.5(R:曲げ半径、t:板厚)で割れ無しの曲げ加工性、150℃×1000時間加熱後の180°曲げ−曲げ戻しでSn層の剥離なし、という特性を達成できる。
【0013】
また、Snめっき付き銅合金材の場合、表面にSn又はSn合金層が存在するため、製作した端子をPbレスはんだや一般のはんだを用いて基板等にはんだ付けする際のはんだ広がり性が優れ、良好なはんだ接合強度が得られる。さらに、リフロー処理したものについては、Sn又はSn合金層に発生する応力が低減され、Snのウィスカーが発生せず、狭ピッチの端子に用いても短絡が発生せず、電子部品の信頼性が向上する。
本発明の銅合金及びSnめっき付き銅合金材は、家電、産業用機器、及び自動車用等の電気・電子部品用材料として、幅広く有効に活用できる。特に、車載用JBのバスバーを構成する素材として用いた場合には、バスバーの小型化及び軽量化を図ることができる。また、本発明に係る電気・電子部品用銅合金は、一般的な銅合金の製造方法によって製造することができるために、バスバーの低コスト化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】バスバーの構造例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電気・電子部品用銅合金(以下、「本発明の銅合金」という),及び本発明の銅合金を用いてなるSnめっき付き銅合金材について詳細に説明する。
本発明の銅合金は、Fe,P,Mg,Sn及びZnを特定の量含有し、残部がCu及び不可避的不純物で構成される成分組成を有するとともに、Fe,Mg及びPの含有量が特定の関係を有する。また、必要に応じて、Al,Si,Mn,Ni,Co,Crの1種又は2種以上を特定の量含有する。
以下、本発明の銅合金を構成する各成分の含有量の数値範囲、及びその数値範囲の限定理由、さらにFe,Mg及びPの含有量の関係式について説明する。
【0016】
(Feの含有量:0.01〜0.2質量%)
Feは、Fe−P系の微細な析出物を形成して、析出硬化によって強度を向上させるとともに、Pと析出することによりFe及びP固溶量を減少させ導電率を向上させるために有効な元素である。Feの含有量が0.01質量%未満では、十分な析出による強度の向上効果を得ることができず、導電率も向上しない。また、0.2質量%を超えると、導電率の低下を招くとともに、析出物粗大化の原因となり応力緩和特性及び曲げ加工性の低下を引き起こす。従って、Feの含有量は0.01〜0.2質量%の範囲とする。Feの含有量は、0.02〜0.17質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.16質量%である。
【0017】
(Pの含有量:0.02〜0.15質量%)
Pは、FeやMgと析出物を形成して、析出硬化によって強度を向上させるとともに、P,Fe,Mg固溶量を減少させ導電率を向上させるために有効な元素である。Pの含有量が0.02質量%未満では、FeやMgとの析出物が十分に形成されないため強度の向上効果を得ることができず、またFeやMgの固溶量が増加して導電率の低下を招く。一方、Pの含有量が0.15質量%を越えると、Mg固溶量が減少して応力緩和特性が低下し、またPの固溶量が増加して導電率の低下を招く。従って、Pの含有量は0.02〜0.15質量%の範囲とする。Pの含有量は、0.03〜0.15質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.05〜0.12質量%である。
【0018】
(Mgの含有量:0.05〜0.2質量%)
Mgは、Mg−P系の微細な析出物を形成して、析出硬化によって強度を向上させるとともに、Pと析出することによりMg及びP固溶量を減少させ導電率を向上させるために有効な元素である。また、析出せず固溶したままのMgは、固溶による強度の向上と耐応力緩和特性の向上に有効である。Mgの含有量が0.05質量%未満では、Mg−P析出物の析出による強度の向上と、固溶Mgによる固溶強化及び耐応力緩和特性の向上を十分に得ることができない。一方、0.2質量%を超えると、析出物粗大化の原因となり曲げ加工性の低下を引き起こし、また固溶Mgが増加し導電率の低下を招く。従って、Mgの含有量は0.05〜0.2質量%の範囲とする。Mgの含有量は、0.08〜0.19質量%が好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.18質量%である。
なお、Mg含有量が多い場合、溶解炉の炉壁にMg酸化物であるノロが多く付着し、次の鋳造品質の低下を招く恐れがあり、炉洗い増加などによる生産効率低下という問題も生じる。
【0019】
(Fe、Mg及びPの含有量の関係)
本発明の銅合金において、Fe,Mg及びPの含有量は、前記関係式(1)のとおり、2.5≦(Fe+Mg)/P≦8.0の関係にあることが必須である。(Fe+Mg)/Pが2.5未満では、Fe,Mg固溶量が減少し応力緩和特性が低下する.一方,8.0を超えるとMg−P析出物及びFe−P析出物が粗大化して曲げ加工性が低下し、また、Fe,Mg固溶量が増え、導電率の低下を招く。応力緩和特性向上のため、3.0≦(Fe+Mg)/P≦5.0の範囲が望ましい。また、応力緩和特性を向上させるには、Fe及びMg量の含有量は,前記関係式(2)のとおり、Mg/Fe≧0.85の関係になくてはならない。
【0020】
(Snの含有量:0.01〜0.2質量%)
Snは、固溶による強度の向上と耐応力緩和特性の向上に有効な元素である。Snの含有量が0.001質量%未満では、固溶による強度の向上と耐応力緩和特性の向上が十分に得られず、また、0.2質量%を超えると、導電率が低下する。従って、Snの含有量は0.001〜0.2質量%の範囲とする。Snの含有量は、0.005〜0.15質量%が好ましい。
【0021】
(Znの含有量:0.05〜1.0質量%)
Znは、電子部品の接合に用いるSnめっきやはんだの耐熱剥離性を改善し、熱剥離を抑制するために有効な元素である。Znの含有量が0.05質量%未満では、Snめっきやはんだの耐熱剥離性の向上に十分な効果が得られない。また、1.0質量%を超えると、導電率が低下する。従って、Znの含有量は、0.05〜1.0質量%の範囲とする。このZnの含有量は、0.07〜0.40質量%が好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.30質量%である。
【0022】
(Sの含有量:0.005質量%以下)
原料に工場内の銅屑やスタンピング後の回収スクラップ屑を使用する場合、Sは不可避的不純物として銅合金中に含まれ、添加したMgなどの元素と結合し、固溶Mg量を低下させ耐応力緩和特性を劣化させる。また、その化合物は割れの起点となり曲げ加工性が低下する。Sを0.005質量%以下に制御することによって耐応力緩和特性と曲げ加工性が保持される。なお、Sを0.005%以下に低減するには、Mgを添加した後発生するノロ引きを行い、その後炉中Mg濃度が規定範囲になっていることを確認して鋳造すればよい。
【0023】
(Alの含有量:0.001〜0.030質量%)
(Siの含有量:0.001〜0.030質量%)
Al,Siは、炉中の脱硫に効果的であり、さらに銅中に固溶し、強度及び応力緩和特性を向上させるのに有効な元素であり、必要に応じて1種又は2種が添加される。
Alを単独で添加する場合、Alの含有量が0.001質量%未満では、所望の効果が得られず、0.030質量%を超えると導電率の低下を引き起こす。このAlの含有量は、0.001〜0.020質量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.015質量%である。また、Siを単独で添加する場合、Siの含有量が0.001質量%未満では所望の効果が得られず、0.030質量%を超えると導電率の低下を招く恐れがあり、さらに晶出物を形成し、曲げ性低下を引き起こす可能性がある。このSiの含有量は、0.001〜0.015質量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.010質量%である。
AlとSiを同時に添加する場合、Al:0.001〜0.030質量%、Si:0.001〜0.030質量%の範囲内で、合計の含有量は0.001〜0.050質量%とする。この場合のAl、Siの好ましい含有量は上記範囲と同じである。
【0024】
(Mn,Ni,Co,Cr)
Mn,Ni,Co,Crは、Mgと同様に銅合金中にPと微細な化合物を形成し、強度や導電率を増加させるため、必要に応じて1種又は2種以上が添加される。これらの効果を有効に発揮させるには、1種又は2種以上の合計の含有量で0.0005質量%以上必要である。しかし、1種又は2種以上の合計の含有量が0.05質量%を超えると、Mg,Fe固溶量が増加し導電率を低下させる恐れがある。また、析出粒子の粗大化を招き,曲げ加工性の低下の原因となる。このため、これらの元素の含有量は1種又は2種以上の合計で0.0005〜0.05質量%とする。
【0025】
(その他の不可避的不純物)
前記S,Al,Si,Mn,Ni,Co,Crのほか、本発明の銅合金には不可避不純物としてAs,Sb,B,Pb,Ti,V,Zr,Mo,Hf,Ta,B,Bi,C,Ag,In等が含まれる。これらの不可避不純物元素は導電率60%IACS以上が得られる範囲で含有されるのであれば、本発明の銅合金の他の特性が大きく阻害されることはない。また、Cu−Fe−Mg−P系銅合金において、これらの成分は特に添加しない限り通常下記許容量の範囲内にある。
【0026】
As,Sb,B,Pb,Ti,V,Zr,Mo,Hf,Ta,B,Bi,Cは、銅に対して著しく固容量が少ないので、総量0.1質量%を超えて含有すると、粒界偏析又は晶出物を形成し強度特性や曲げ加工性を劣化させる。従って、許容量は総量で0.1質量%である。
Ag,Inは、銅に対して固溶することがよく知られており、導電率低下の要因となる。このため、許容量は総量で0.1質量%以下である。
【0027】
(Snめっき付き銅合金材)
本発明の銅合金は、その用途に応じて、各種の形態、形状に成形される。例えば、本発明の銅合金からなる板材、板材を幅方向にスリットしてなる条や、条をコイル化した形態、線材等の各種の形態、形状に成形される。そして、本発明の銅合金からなる板材、条等からなる母材(銅合金母材)を電気・電子部品用素材として用いる場合は、その銅合金母材の表面に、Cu−Sn合金層とSn又はSn合金層とが形成されたSnめっき付き銅合金材とすることが好ましい。
【0028】
Cu−Sn合金層は、銅合金母材の表面にSn又はSn合金めっき層を形成することによって、銅合金母材とSn又はSn合金めっき層の界面に、CuとSnの合金化によって形成される層である。Cu−Sn合金層は、銅合金母材のCuがSn又はSn合金層表面に拡散、酸化するのを防止し(バリアー効果)、これによりめっき付き銅合金材の接触信頼性が低下するのを防止する。この作用のためには、Cu−Sn合金層の厚さは0.1μm以上であることが望ましい。一方、Cu−Sn合金層は脆く、Snめっき付き銅合金材の曲げ加工性を低下させるため、厚さは1.0μm以下とする必要がある。従って、Cu−Sn合金層の厚さは1.0μm以下とし、望ましくは0.1〜1.0μmとする。より望ましくは、接触信頼性確保のために0.2μm以上、曲げ加工性のために0.8μm以下、さらに0.5μm以下が望ましい。
【0029】
Sn又はSn合金層は、はんだ付け性の向上、耐腐食性等の向上を目的として、銅合金母材の表面に形成されるもので、Cu−Sn合金層の形成に消費されなかったSn又はSn合金めっき層であり、結果的に、銅合金母材の表面に形成されるCu−Sn合金層上に形成されることとなる。Sn又はSn合金層の厚さは、0.3〜1.0μmであることが好ましい。Sn又はSn合金層の厚さが0.3μm未満であると、はんだ付け時のはんだ濡れ性が低下し、はんだ接合強度が低下する。また、1.0μmより厚いと、端子挿入時に、表面に堆積するSn又はSn合金の削れカスが酸化し、めっき最表面の応力分布が不均一となりウィスカーの発生を促進する。さらに、堆積する削れカスが多いと、振動などを生じた場合、回路中に落下し通電不良を引き起こす可能性がある。望ましくは0.8μm以下、より望ましくは0.7μm以下である。
Sn合金層の場合、Sn以外の構成成分としては、Cu、Ag、Biなどが挙げられる。これらはいずれも10質量%未満が望ましい。
【0030】
銅合金母材の表面にSn又はSn合金めっき層を形成したSnめっき銅合金材に、リフロー処理を施すことが好ましい。これにより、銅合金母材の表面に、Cu−Sn合金層と、Sn又はSn合金めっき層が溶融したSn又はSn合金層とが形成されたSnめっき銅合金材が得られる。
リフロー処理後のSnめっき銅合金材においても、Cu−Sn合金層の厚さは、同じく1.0μm以下であることが好ましい。一方、バリアー効果(銅合金素材からSn又はSn合金層へのCuの拡散あるいはその逆)を出すには、Cu−Sn合金層の厚さは0.1μm以上であることが望ましい。Cu−Sn合金層の厚さは、リフロー処理で0.1〜1.0μmに調整するのが望ましい。また、Sn層についても、はんだ付け性を確保するため、厚さが0.3〜1.0μmであることが好ましい。
【0031】
(銅合金の製造方法)
本発明の銅合金の製造方法は、特に制限されるものではないが、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、仕上げ圧延及び低温焼鈍の各工程を順に行う通常の方法で製造することができる。
鋳造は、Cuと、Fe,P,Mg,Sn,Zn及びSを、前記成分組成に調製した銅合金溶湯を鋳造して行うことができる。溶湯の成分組成分析にてSが多い場合は、Mgで脱硫し、その後再度Fe,P,Mg,Sn,Zn及びSが規定範囲になっているか確認し、規定内であれば鋳造するという手順をとることができる。
【0032】
熱間圧延は、鋳造によって得られた鋳塊を850〜950℃で30分〜3時間均熱処理した後、引き続き所定の厚さまで圧延し、さらに700℃以上で焼き入れ処理することによって行うことができる。この熱間圧延において、圧延温度が低過ぎると、再結晶が不完全となり不均一な組織となる虞がある。圧延温度が高過ぎると、表面酸化が激しく起こり、面削量の増加を引き起こし歩留まりが低下する。そして、熱間圧延後は水冷する。
【0033】
次に、冷間圧延は、次工程の焼鈍及び仕上げ圧延前に、熱間圧延された圧延板を通常圧下率70%以上で圧延する工程である。この冷間圧延によって、続く焼鈍後の結晶粒径及びそのばらつきを調整することができる。
焼鈍は、再結晶及びP化合物(Fe−P析出物、Mg−P析出物)の析出処理を行って微細な析出物を形成させ、銅合金板の強度と導電率を向上(回復)させるための工程である。この焼鈍は、450〜600℃で15分〜10時間加熱して行うことができる。
【0034】
仕上げ圧延は、所期の厚さに圧延する工程である。この仕上げ圧延では、本発明の銅合金又はSnめっき付き銅合金材が、特に曲げ加工性を必要とする場合は加工率50%以下とすることが好ましい。
また、低温焼鈍は、仕上げ圧延による歪を除去し、応力緩和特性及びばね限界値を増加させることを目的として行う。この低温焼鈍は、通常、250〜500℃で5秒〜10時間加熱処理することによって行うことができる。
なお、最終的な平均結晶粒サイズは、JISH0501に記載されている切断法により測定した場合、2〜10μm程度となるように調整することが望ましい。
【0035】
本発明の銅合金を母材(銅合金母材)とするSnめっき付き銅合金材は、前記の低温焼鈍に続いて、Sn又はSn合金めっきを行うことによって製造することができる。これによって、銅合金母材と、銅合金母材とSn又はSn合金めっきとの合金からなるCu−Sn合金層と、Sn又はSn合金層(Cu−Sn合金層上に残存するSn又はSn合金めっき層)とを有するSnめっき銅合金材を得ることができる。
リフロー処理を行わない場合、光沢Snめっきを行うことが望ましく、例えば、硫酸第1錫を40g/l、硫酸を100g/l、クレゾールスルフォン酸を30g/l、分散剤を20g/l、光沢剤を10ml/l、ホルマリンを5ml/l等を含むめっき浴中で、浴温度:20℃、対極としてSn板を用い、電流密度:2.5A/dm2のめっき条件で行うことができる。Sn合金めっきとしては、Sn−Cuめっき、Sn−Agめっき、Sn−Biめっきなどが挙げられる。Cu,Ag,Biの含有量は10質量%以下程度が望ましい。
【0036】
また、リフロー処理を行う場合は、Snめっきとして、例えば、硫酸第1錫を50g/l、硫酸を80g/l、クレゾールスルフォン酸を30g/l、光沢剤を10g/l等を含むめっき浴中で、浴温度:30℃、対極としてSn板を用い、電流密度:3A/dm2のめっき条件で行うことができる。続いて、Snめっきした銅合金材をリフロー処理する。このリフロー処理により、Cu−Sn合金層を介して、銅合金母材とSn層とがより緊密に接合された構造とすることができる。リフロー処理は、Snめっきを施した後、通常、240〜600℃で3〜30秒加熱することによって行うことができる。Sn合金めっきとしては、光沢Snめっき等同様、Sn−Cuめっき、Sn−Agめっき、Sn−Biめっきなどが挙げられる。Cu,Ag,Biの含有量は同じく10質量%以下程度が望ましい。
【0037】
このようにして製造された銅合金は、60%IACS以上の高い導電率と、圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれも耐力が400N/mm以上、ビッカース硬度130Hv以上の高い強度を有し、さらに、応力緩和特性(圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれも180℃×24時間加熱後の応力緩和率が30%以下)、曲げ加工性(曲げ軸が圧延方向に対し平行方向及び直角方向のいずれもR/t=0.5で割れ無し)、及びSnめっき耐熱剥離特性(150℃で1000時間加熱後、180°曲げ−曲げ戻しによりSnめっきが剥離しない)に優れたものとなる。
本発明において導電率は65%IACS以上、さらに70%IACS以上が望ましい。このような高い導電率を得るには、析出に関係するFe、Mg、Pの含有量を(Fe+Mg)/P:2.5〜3.5、Mg/Fe:1.0〜1.5とし、その組成に対し、冷間圧延の加工率、その後の焼鈍条件(温度と時間)、低温焼鈍条件を前述の製造条件の範囲で試作し、その中から適正化可能熱処理条件を決めてやればよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について、その比較例と比較して具体的に説明する。
表1,2のNo.1〜42に示す成分組成の銅合金を溶製した後、ブックモールドに鋳造して、厚さ45mmの鋳塊を得た。鋳塊を900℃で1時間均熱処理後、熱間圧延して厚さ15mmとし、700℃以上で焼き入れを行った。次に、焼き入れ後の熱間圧延板の両面を厚さ1mm程度研磨して、表面の酸化スケール及び傷を除去した。その後、厚さ1.07〜1.28mmに冷間圧延した。このとき、次の仕上げ圧延における加工率に応じて目標板厚を変更した。次に、500〜550℃で2時間再結晶及び析出焼鈍を行った後、仕上げ圧延して厚さ0.64mmとした。そして、350℃で20秒間低温焼鈍して、銅合金板の試料を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
なお、表1のNo.1〜42のすべてにおいて残部組成はCuであり、表1に含有量が記載されていない元素は検出限界以下であり、As,Sb,B,Pb,Ti,V,Zr,Mo,Hf,Ta,B,Bi,Cの総量、及びAg,In,Alの総量もそれぞれ0.01質量%以下であった。
【0042】
No.1〜42の各試料について、下記の試験方法に従って、結晶粒径、導電率、ビッカース硬度、機械的特性(0.2%耐力)、及び応力緩和率測定、並びに曲げ加工性の評価を行った。その結果を表3,4に示す。
(結晶粒径の測定)
試料表面を研磨後、エッチングして光学顕微鏡による組織写真を撮影し、その組織写真から、JIS−H0501に規定されている切断法により、線分の向きを板幅方向、板幅方向に直角方向、及び板幅方向に45°傾斜した方向の3方向として測定し、それぞれ3箇所の平均値を結晶粒径とした。No.1〜42はいずれも平均結晶粒径が2〜10μmの範囲内であった。
【0043】
(導電率の測定)
JIS−H0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジを用いた四端子法で体積抵抗率を測定した。測定された体積抵抗率を、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の体積抵抗率1.7241×10−8Ωmで除し、百分率で表し、導電率(%IACS)を求めた。
(ビッカース硬さの測定)
JIS−Z2248に規定されている微小硬さ試験方法に準拠し、試験加重4.90N(=0.5kgf)でビッカース硬さを測定した。
【0044】
(機械的特性の測定)
長手方向が圧延方向(L.D.:Longitudinal Direction)および垂直方向(T.D.:Transverse Direction)となるJIS5号引張り試験片を、機械加工にて作製した。2つの試験片(L.D.、T.D.)のそれぞれについて、JIS−Z2241に準拠して引張り試験を実施した。永久伸び0.2%に相当する引張強さを耐力として求めた。
【0045】
(応力緩和率の測定)
応力緩和率は、片持ち梁方式によって測定した。すなわち、長さ方向が板材の圧延方向に対して平行方向(L.D.)及び直角方向(T.D.)になる幅10mmの短冊状試験片を切り出し、その一端を剛体試験台に固定する。固定端から一定距離の位置で試験片に10mmのたわみを与えたとき、固定端において、試験片の採取方向にあわせ、それぞれの方向における材料の0.2%耐力の80%に相当する表面応力を負荷する。たわみを与える位置の固定端からの距離は、日本伸銅協会技術標準(JCBA−T309:2004)の「銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法」により算出した。剛体試験台に固定し、たわみを与えた試験片を一定温度に加熱したオーブン中に保持した後に取り出し、たわみ量d(10mm)を取り去ったときの永久歪みδを測定し、応力緩和率RS=(δ/d)×100を計算する。加熱条件は、(社)自動車技術会のJASOで150℃で1000時間の加熱が規格されているが、本試験では加速試験を行うため温度と時間により換算可能なラーソンミラー換算法(L.M.P.=T(20+logt))を使い、150℃で1000時間に相当する180℃で24時間の加熱条件にて加速試験を実施した。なお、表1のNo.1及びNo.5を使用し、150℃で1000時間加熱した場合と180℃で24時間加熱した場合の値が同等になるのは確認済みである。
【0046】
(曲げ加工性の評価)
曲げ加工性は、日本伸銅協会標準JBMA−T307に規定されるW曲げ試験方法に従って評価した。すなわち、銅合金板から幅10mm、長さ30mmの試験片を切り出し、Good Way(曲げ軸が圧延方向に垂直、以下、「G.W.」という)及びBad Way(曲げ軸が圧延方向に平行、以下、「B.W.」という)の曲げ試験を、R/t=0.5(R:曲げ半径、t:板厚)で行った。曲げ部における割れの有無を100倍の光学顕微鏡により目視観察し、下記の基準で評価した。本技術分野では、下記評価にて割れがないA〜C評価であればよい。
A:しわ無し、B:しわ小、C:しわ中〜大、D:割れ小、E:割れ大。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
次に、No.1,10,34,35の銅合金を母材とし、母材表面に下記条件で光沢Snめっき及びリフローSnめっきを行って、Snめっき付き銅合金材の試料を得た。
(光沢Snめっき条件)
先に示した条件で、母材表面に光沢Snめっきを行った。
(リフローSnめっき条件)
先に示した条件で、母材表面にSnめっきを行った後、380℃で13秒間加熱するリフロー処理を行った。
【0050】
得られたSnめっき付き銅合金材の各試料について、下記方法に従ってSn層の厚さとCu−Sn合金層の厚さを測定し、下記試験方法に従ってSnめっきの耐熱剥離性試験、はんだ濡れ性試験を行った。その結果を表5に示す。
(Sn層の厚さ及びCu−Sn合金層の厚さの測定)
蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社:SFT3200)を用いてSn層の厚さを測定した。その後Sn層のみを剥離しCu−Sn合金層の厚さを測定した。
(Snめっきの耐熱剥離性試験)
長さ30mm×幅10mmの寸法に切り出した試験片を、オーブン中、150℃で1000時間加熱した後、マンドレル180度曲げ治具にて、直径2mmで180度の曲げ戻し試験を行い、曲げ部内側にてテープの貼り付け・除去を行うことによりSn層の外観を観察して剥離の有無を調べた。
【0051】
(はんだ濡れ性性試験)
市販のSn−3質量%Ag−0.5質量%Cuはんだを260±5℃に保持し溶融させ、各試験片を浸漬速度25mm/sec、浸漬深さ12mm、浸漬時間5secにて溶融はんだ中に浸漬させた。はんだ付け装置として、ソルダーチェッカー((株)レスカ製;SAT5100型)を用い、フラックスには非活性フラックス((株)日本アルファメタルズ;α100)を使用した。はんだ濡れ性は、濡れ時間2sec未満を○(良)、2sec以上を×(不良)を評価した。
【0052】
【表5】

【0053】
表3に示すように、Mg,Fe,P,Sn,Zn及びSの含有量が本発明の範囲にあり、Fe,Mg,Pの含有量が前記関係式(1)、(2)を満たすNo.1〜25の銅合金は、導電率、硬度、耐力(L.D./T.D.)、応力緩和特性(L.D./T.D.)、及び曲げ加工性(G.W./B.W.)がいずれも優れている。
また、表5に示すように、No.1,10の銅合金を母材とし、Sn層厚さ及びCu−Sn合金相厚さが本発明の範囲内にあるNo.43〜48は、光沢Snめっき材及びリフローSnめっき材とも、耐加熱後剥離性、はんだ濡れ性がいずれも優れている。
【0054】
これに対し、表4に示すように、No.26〜42の銅合金は、下記に述べるように、上記の特性のいずれかが劣っている。
No.26は、Feの含有量が過剰なため、Fe−P化合物の形成によりPが減少するが析出しないFe及びMgの固容量が多く、応力緩和特性が劣る。
No.27は、Feの含有量が不足するため、Fe−P化合物の形成が不足し強度が低い。
No.28は、Pの含有量が過剰なため、Mg固溶量が減少し、L.D./T.D.ともに応力緩和率が大きい。
No.29は、Pの含有量が不足するため、P化物の形成が不十分で強度が低く、Mg含有量が不足するため、応力緩和率が大きい。
【0055】
No.30は、Mgの含有量が過剰で、析出物が粗大化したため曲げ加工性が低下している。
No.31は、Mgの含有量が不足するためMg−P析出物及びMg固容量が少なく、強度が低く、L.D./T.D.ともに応力緩和率が大きい。
No.32は、Snの含有量が過剰なため、Sn固容量が多くなり、導電率が低い。
No.33は、Snの含有量が不足するため、応力緩和率が大きい。
No.34は、Znの含有量が過剰なため、Zn固溶量が多くなり、導電率が低い。
No.35は、導電率、強度、応力緩和特性及び曲げ加工性は優れるが、Znの含有量が不足し、後述するように、光沢Snめっき材及びリフローSnめっき材の両方でSnめっきの剥離が生じた。
【0056】
No.36は、Sの含有量が許容値を越え、親和力の強いMgと結合し、Mg固容量が減少して、T.D.の応力緩和率が大きい。曲げ加工性も低下している。
No.37は、AlとSiの合計含有量が過剰で、Al、Siの固溶量が増加し、導電率が低い。
No.38は、(Fe+Mg)/Pの値が過大なため、化合物が粗大化し曲げ加工性が低下している。
No.39は、(Fe+Mg)/Pの値が過少のため、Fe及びMg固容量が減少し、L.D./T.D.ともに応力緩和率が大きい。
No.40は、(Fe+Mg)/Pの値が過大でかつSnとZnの含有量が過剰であり、曲げ加工性が低下し、SnとZnの固溶量が増加して導電率も低い。
No.41は、(Fe+Mg)/Pの値が過大でかつAlとSiの合計含有量が過剰であり、曲げ加工性が低下し、AlとSiの固溶量が増加して導電率もかなり低い。
No.42は、Mg/Feの値が過少のため、Mg固容量が減少し、L.D./T.D.ともに応力緩和率が大きい。
【0057】
また、表5に示すように、Sn層厚さ及びCu−Sn合金層厚さが本発明の範囲内にあるNo.43〜52は、光沢Snめっき材及びリフローSnめっき材とも、はんだ濡れ性が優れている。しかし、Zn含有量が不足する銅合金(合金No.35)を母材とするNo.50,52はSnめっきの剥離が生じた。
Sn層厚さ及びCu−Sn合金相厚さが本発明の範囲外のNo.53〜58は、合金組成が本発明の規定を満たすか否かに関わらず、はんだ濡れ性が劣る。さらに、Zn含有量が不足する銅合金(合金No.35)を母材とするNo.57,58はSnめっきの剥離も生じた。
【符号の説明】
【0058】
1 バスバー
2a,2b 圧接部
3 メス端子部
4 オス端子
5 下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe:0.01〜0.2質量%、P:0.02〜0.15質量%、Mg:0.05〜0.2質量%、Sn:0.001〜0.2質量%、及びZn:0.05〜1.0質量%を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなり、S:0.005質量%以下であり、Fe,Mg及びP含有量が下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする電気・電子部品用銅合金。
2.5≦([Fe]+[Mg])/[P]≦8.0・・・・(1)
[Mg]/[Fe]≧0.85・・・・(2)
ここで[Fe]、[Mg]、[P]は、それぞれFe,Mg,P含有量を表す。
【請求項2】
さらに、Al:0.001〜0.030質量%、Si:0.001〜0.030質量%の1種又は2種を合計で0.001〜0.050質量%含むことを特徴とする請求項1に記載された電気・電子部品用銅合金。
【請求項3】
Mn,Ni,Co及びCrのうち1種又は2種以上の合計で0.0005〜0.05質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載された電気・電子部品用銅合金。
【請求項4】
導電率60%IACS以上、180℃で24時間加熱後の応力緩和率が30%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合金。
【請求項5】
導電率65%IACS以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合金。
【請求項6】
導電率70%IACS以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合金。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合金からなる銅合金母材と、前記銅合金母材の表面に形成された厚さ1.0μm以下のCu−Sn合金層と、前記Cu−Sn合金層の表面に形成された厚さ0.3〜1.0μmのSn又はSn合金層からなることを特徴とするSnめっき付き銅合金材。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合金からなる銅合金母材と、前記銅合金母材の表面に形成された厚さ1.0μm以下のCu−Sn合金層と、前記Cu−Sn合金層の表面に形成された厚さ0.3〜1.0μmのSn又はSn合金層からなり、前記Cu−Sn合金層及びSn又はSn合金層は、前記銅合金母材の表面に形成したSn又はSn合金めっき層をリフロー処理することにより形成されたものであることを特徴とするSnめっき付き銅合金材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−167310(P2012−167310A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27953(P2011−27953)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】