説明

電気二重層キャパシタおよびその製造方法

【課題】 セパレータと封止用絶縁部材との固定を確実に行い、小型化を実現した電気二重層キャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 セパレータ12の外周端部の少なくとも一部には、封止用絶縁ゴム13と固定される固定部12aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、分極性電極と、この分極性電極に接触する電解液との界面に生じる、厚さ数nm程度の電気二重層を利用したものである。分極性電極として、例えば活性炭のような表面積が数千m/gにも及ぶ材料を用いることで、大きな静電容量を得ることが可能である。
【0003】
近年、電気二重層キャパシタは、小型電子機器の補助電源等としての用途が検討されてきており、小型化への要求がより一層高くなっている。
【0004】
従来の電気二重層キャパシタは、セパレータを介して対向配置された一対の分極性電極と、この分極性電極の外表面に当接して配置された一対の集電体と、分極性電極の周囲を囲み、セパレータの外周端部を挟持し、集電体とともに電解液が含浸された分極性電極およびセパレータを封止する封止用絶縁ゴム等の封止用絶縁部材とを備えた基本セルを有している。さらに、この基本セルを、分極性電極の対向方向に単数または複数積層してキャパシタ素子を構成し、キャパシタ素子が外装材にて外装された構造となっている。
【0005】
図3は、従来の電気二重層キャパシタの基本セルを示す図で、図3(a)は、基本セルの断面図で、図3(b)は、図3(a)のC−C線断面図である。基本セル20は、一対の分極性電極21がセパレータ22を介して対向配置され、分極性電極21の外表面にそれぞれ集電体24が当接して配置されている。分極性電極21とセパレータ22には電解液が含浸されており、セパレータ22は、分極性電極21間のショートを防止し、電解液中のイオンを透過させる。また、電解液が含浸された分極性電極21およびセパレータ22の封止と、集電体24間の絶縁のために、分極性電極21の周囲を囲み、一対の集電体24に挟まれる枠状の封止用絶縁ゴム23(封止用絶縁部材)が配置されている。このとき、セパレータ22の外周端部は、封止用絶縁ゴム23の間に挟まれて支持されている。
【0006】
分極性電極21には、活性炭を主成分とした材料が用いられる。また、集電体24には、導電性を有するシート状のゴムなどが用いられる。
【0007】
セパレータ22は、上述したようにイオン透過性を有し、内部抵抗の増大を抑制したり信頼性を向上したりするために、電解液を十分に含浸させる必要があり、親水性を有するものが一般的に使用される。従来、疎水性膜の表面を親水性処理し、電解液を十分に含浸させる技術が用いられおり、例えば、特許文献1には、フッ素系高分子重合体多孔質膜の少なくとも細孔表面に、フッ素系界面活性剤を化学的に被覆させた、親水性を有するセパレータが開示されている。
【0008】
封止用絶縁ゴム23には、絶縁性を有するゴムが用いられ、未加硫状態の封止用絶縁ゴム23を所定の位置に配置した後、加硫接合することにより、集電体24と接合、成型、電解液が含浸された分極性電極21およびセパレータ22の封止が行なわれる。
【0009】
図4は、従来の電気二重層キャパシタのキャパシタ素子を示す図である。図3で示した基本セル20の耐電圧は、電解液の電気分解電圧で決まるため、使用する電圧に応じて、基本セル20を複数直列接続して耐電圧を調整することが可能である。図4に示すように、キャパシタ素子30は、基本セル20を複数積層して構成されている。上述したように、使用する電圧に応じて積層数を調整することができ、使用電圧によっては、単数とすることも可能である。
【0010】
図5は、従来の電気二重層キャパシタの一例を示す図である。図5に示すように、キャパシタ素子30は、その周囲と上面が金属ケースからなる外装材31にて覆われており、底面には外装材31が配置されず、外装材31が開口している構成となっている。キャパシタ素子30の最外層に位置する集電体のうち一方が、外装材31に当接している。外装材31の開口部分には、リード端子33が接続されている。また、キャパシタ素子30の最外層に位置する集電体のうち他方には、リード端子34が接続されている。さらに、外装材31の開口部分を封止し、リード端子33、34を取り出すための座板35が外装材31の開口部分を塞ぐように配置されている。外装材31および座板35の内部のキャパシタ素子30の周囲および底面には、絶縁ケース32が配置されており、リード端子33、34同士の絶縁、リード端子34と外装材31との絶縁、外装材31とキャパシタ素子30の側面との絶縁がなされている。
【0011】
また、電気二重層キャパシタは、基本セル間、分極性電極と集電体間の電気的接続を確実に行うために、キャパシタ素子に一定の圧力を加えて外装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平06−151249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
キャパシタ素子に一定の圧力を加えて外装する際、キャパシタ素子は圧縮変形することがある。また、電気二重層キャパシタを表面実装する際には、リフロー工程での加熱により、セパレータが熱収縮することがある。
【0014】
セパレータは、親水性を有するため、封止用絶縁部材とセパレータの界面には、電解液が介在しており、セパレータは封止用絶縁部材に単に挟まれている状態である。すなわち、従来は、セパレータと封止用絶縁部材は十分に固定されていない構成である。
【0015】
このため、上記の圧縮変形や熱収縮が大きくなる条件下では、封止用絶縁部材からセパレータが脱落する可能性があるという課題がある。セパレータが脱落した場合、電気二重層キャパシタが使用不能となる可能性がある。したがって、従来は、セパレータの外径を大きくし、セパレータの外周端部に挟み代を設けるというような脱落防止策をとる必要があり、電気二重層キャパシタの小型化の妨げとなっていた。
【0016】
そこで、本発明は、セパレータと封止用絶縁部材との固定を確実に行い、小型化を実現した電気二重層キャパシタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、親水性を有し電解液を含浸させたシート状のセパレータと、前記セパレータを介して対向配置され、前記電解液を含浸させた一対の分極性電極と、シート状で、前記分極性電極の外表面に当接して配置された一対の集電体と、前記分極性電極の周囲を囲み、前記セパレータの外周端部を挟持し、前記集電体とともに前記電解液を封止する枠状の封止用絶縁部材と、を備えた基本セルを有し、前記基本セルが前記分極性電極の対向方向に単数または複数積層されてなるキャパシタ素子を構成し、前記キャパシタ素子が外装材にて外装された電気二重層キャパシタであって、前記セパレータの外周端部の少なくとも一部には、前記封止用絶縁部材と固定される固定部を有することを特徴とする電気二重層キャパシタが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記固定部は、親水性が除去されて形成されることを特徴とする上記の電気二重層キャパシタが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記固定部は、少なくとも一つの貫通孔であることを特徴とする上記の電気二重層キャパシタが得られる。
【0020】
また、本発明によれば、シート状の集電体と、枠状で未硬化の封止用絶縁部材を仮接着し、前記集電体と前記封止用絶縁部材とで形成された空間に分極性電極を充填し、前記分極性電極に電解液を含浸させ、一対の中間体を作製する第一の工程と、前記中間体の一方に、前記分極性電極および前記封止用絶縁部材に当接するように、セパレータを積層する第二の工程と、 一対の前記中間体を、前記セパレータを介して対向配置する第三の工程と、前記封止用絶縁部材を硬化し、前記セパレータおよび前記分極性電極を封止し、基本セルを製造する第四の工程と、前記基本セルを前記分極性電極の対向方向に単数または複数積層してキャパシタ素子を構成する第五の工程と、前記キャパシタ素子を外装材にて外装する第六の工程を有する電気二重層キャパシタの製造方法であって、前記第一の工程の前工程として、前記セパレータの、前記封止用絶縁部材と接する外周端部の少なくとも一部に前記封止用絶縁部材を固定するための、固定部形成工程を含むことを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、前記固定部形成工程は、前記セパレータの外周端部の少なくとも一部を熱処理し、親水性を除去する工程を含むことを特徴とする上記の電気二重層キャパシタの製造方法が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、前記固定部形成工程は、前記セパレータの外周端部に少なくとも一つの貫通孔を形成する工程を含むことを特徴とする上記の電気二重層キャパシタの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、セパレータと封止用絶縁部材との固定を確実に行い、小型化を実現した電気二重層キャパシタおよびその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電気二重層キャパシタの第一の実施の形態に係る基本セルを示す図。図1(a)は、断面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図。
【図2】本発明の電気二重層キャパシタの第2の実施の形態に係る基本セルを示す図。図2(a)は、断面図、図2(b)は、図2(a)のB−B線断面図。
【図3】従来の電気二重層キャパシタの基本セルを示す図。図3(a)は、基本セルの断面図、図3(b)は、図3(a)のC−C線断面図。
【図4】従来の電気二重層キャパシタのキャパシタ素子を示す図。
【図5】従来の電気二重層キャパシタの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
(第一の実施の形態)
図1は、本発明の電気二重層キャパシタの第一の実施の形態に係る基本セルを示す図で、図1(a)は、断面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。本実施の形態における電気二重層キャパシタの基本構成は、従来と同様である。
【0027】
図1に示すように、基本セル10は、一対の分極性電極11がセパレータ12を介して対向配置され、分極性電極11の外表面にそれぞれ集電体14が当接して配置されている。分極性電極11とセパレータ12には電解液が含浸されており、セパレータ12は、分極性電極11間のショートを防止し、電解液中のイオンを透過させる。また、電解液の封止と、集電体14間の絶縁のために、分極性電極11の周囲を囲み、一対の集電体14に挟まれる枠状の封止用絶縁ゴム13(封止用絶縁部材)が配置されている。このとき、セパレータ12の外周端部は、封止用絶縁ゴム13の間に挟まれて支持されている。なお、本実施の形態では、封止用絶縁部材として、絶縁性のゴムを例として説明するが、本実施の形態と同様の効果が得られるものであればこれに限定されない。
【0028】
本実施の形態では、セパレータ12の外周端部に、封止用絶縁ゴム13と強固に固定するための固定部12aを設けている。この固定部12aは、セパレータ12の外周端部の親水性を除去して形成した。このセパレータ12を使用することにより、固定部12aの親水性を除去した部分には、電解液が染み込み難くなり、セパレータ12と封止用絶縁ゴム13の界面に電解液が介在せず、封止用絶縁ゴム13との密着性を向上させ、強固に固定することが可能となる。また、親水性を除去することにより、封止用絶縁ゴム13と化学結合し易くなり、密着性を向上させることが可能となる。セパレータ12の外周端部において、親水性を除去する部分は、セパレータ12の片面でも両面でもよく、さらに、外周端部に連続的に設けても、断続的に設けても良い。ただし、セパレータ12を強固に固定するという目的から、外周端部において偏りなく全体的に親水性を除去するのが好ましい。
【0029】
分極性電極11には、活性炭粉末を主成分とした材料が用いられる。また、集電体14には、導電性を有するシート状のゴムなどが用いられる。セパレータ12には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリアミド等からなる微多孔性の疎水性膜に、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等を用いて、疎水性膜の表面に親水処理を施したものが使用できる。封止用絶縁ゴム13には、ブチルゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム等を用いることが出来るが、電解液の透過性が小さく、耐熱性にも優れているため、ブチルゴムを使用するのが好ましい。電解液には、水系水溶液を用いることができ、硫酸系水溶液が好適に用いられる。
【0030】
ここで、本実施の形態の基本セルの製造方法について説明する。セパレータの外周端部は、熱処理を施して、親水性を除去し、固定部を形成する。熱処理温度は、親水処理が施されたセパレータの親水官能基が破壊される温度で、約130℃〜200℃程度である。なお、親水性を除去する方法は、熱処理に限定されず、化学的な方法により、セパレータの疎水性膜を親水性にすることも可能である。
【0031】
つぎに、封止用絶縁ゴムを枠状に成型し、片面に集電体を仮接着する。封止用絶縁ゴムと集電体は、未加硫状態のゴムが用いられる。なお、この方法は、基本セルを単数製造する場合であり、量産時には、多数個取りが出来る大きさを有する封止用絶縁ゴムのシートに、円形状の穴を多数形成し、封止用絶縁ゴムのシートと同様の大きさのシート状の集電体を仮接着し、後述する各工程を経た後、個々に打ち抜き基本セルを作製するということも可能である。集電体を底面、封止用絶縁ゴムを側面として、集電体と封止用絶縁ゴムで形成された空間に、分極性電極ペーストと電解液との混合物を充填し、乾燥させて分極性電極を形成し、基本セルの中間体とする。同様の構成の中間体を2つ作製し、一対となるようにする。
【0032】
その後、一方の中間体にのみ、分極性電極の露出面側にセパレータを積層する。このとき、セパレータは、分極性電極の外形よりも大きくし、その外周端部が封止用絶縁ゴムと接するように配置する。他方の中間体を反転させ、他方の中間体の分極性電極の露出面側と、セパレータを形成した中間体のセパレータ側とを重ね合わせる。
【0033】
最後に、封止用絶縁ゴムおよび集電体に用いられている未加硫ゴムを積層方向に加圧しながら加熱し、加硫接合を施し、封止用絶縁ゴムと集電体、封止用絶縁ゴムとセパレータを強固に密着、固定させ、基本セルを製造する。なお、本実施の形態では、封止用絶縁部材として封止用絶縁ゴムを用いた場合の、加硫接合による方法を説明したが、その他の封止用絶縁部材を使用した場合でも、本実施の形態と同様の効果が得られるような硬化方法であればこれに限定されない。
【0034】
(第二の実施の形態)
図2は、本発明の電気二重層キャパシタの第一の実施の形態に係る基本セルを示す図で、図2(a)は、断面図、図2(b)は、図1(a)のB−B線断面図である。本実施の形態における電気二重層キャパシタの基本構成は、従来と同様である。
【0035】
第一の実施の形態と同様に、基本セル10は、一対の分極性電極11がセパレータ12を介して対向配置され、分極性電極11の外表面にそれぞれ集電体14が当接して配置されている。分極性電極11とセパレータ12には電解液が含浸されており、セパレータ12は、分極性電極11間のショートを防止し、電解液中のイオンを透過させる。また、電解液の封止と、集電体14間の絶縁のために、分極性電極11の周囲を囲み、一対の集電体14に挟まれる枠状の封止用絶縁ゴム13が配置されている。このとき、セパレータ12の外周端部は、封止用絶縁ゴム13の間に挟まれて支持されている。
【0036】
本実施の形態では、セパレータ12の外周端部に、封止用絶縁ゴム13と強固に固定するための固定部12bとして、貫通孔を形成した。このセパレータ12を使用することにより、封止用絶縁ゴムの加硫接合の際に、貫通孔の内部に封止用絶縁ゴム13が流れ込み、封止用絶縁ゴム13との密着性を向上させ、強固に固定することが可能となる。セパレータ12の外周端部において、貫通孔を形成する場所は、セパレータ12を強固に固定するという目的から、外周端部において偏りなく全体的に形成するのが好ましい。なお、第一の実施の形態による、セパレータ12の外周端部の一部の親水性を除去した構造に、本実施の形態の貫通孔を組み合わせることも可能である。
【0037】
ここで、本実施の形態の基本セルの製造方法について説明する。セパレータの外周端部には、貫通孔を形成する。貫通孔の大きさは、封止用絶縁ゴムの加硫の際に、貫通孔内部に封止用絶縁ゴムの流れ込みが可能となる大きさとすればよい。それ以外の製造方法は、第一の実施の形態と同様である。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
セパレータとして、ポリテトラフルオロエチレンからなる微多孔膜に、ポリビニルアルコールで親水処理を施したものを用い、直径6.5mmの円形状に成形した。封止用絶縁ゴムとして、未加硫状態の非導電性ブチルゴムを用い、内径5.5mm、外径8.0mmのリング状に成形した。集電体として、未加硫状態の導電性ブチルゴムを用い、直径8.0mmの円形状に成形した。
【0039】
外径7.0mm、内径5.7mmのリング状の加熱用コテを使用し、セパレータの外周端部の、内径5.7mm、外径6.5mmの範囲を熱処理し、セパレータの親水性を除去した。熱処理は200℃で行った。
【0040】
集電体と封止用絶縁ゴムを仮接着し、集電体と封止用絶縁ゴムで形成された空間に、活性炭からなる分極性電極ペーストと希硫酸からなる電解液の混合物を充填し、乾燥させて分極性電極を形成し、中間体を作製した。同様の構成のものを一対となるように2つ作製した。
【0041】
この中間体の一方に、セパレータを積層した。セパレータは中間体の分極性電極側に配置し、さらにセパレータの外周端部が、封止用絶縁ゴムに接するようにした。他方の中間体を反転させ、この中間体の分極性電極側と、セパレータを積層した中間体のセパレータ側を重ね合わせた。
【0042】
その後、積層方向に約6.5kg/cmの圧力で加圧しながら加熱し、封止用絶縁ゴムおよび集電体に用いた未加硫状態のブチルゴムを加硫接合した。これにより、セパレータおよび分極性電極、電解液を封止し、基本セルを作製した。
【0043】
この基本セルを6枚積層してキャパシタ素子を作製し、金属ケースからなる外装材にて外装し、電気二重層キャパシタを作製した。
【0044】
(実施例2)
実施例2は、セパレータの外周端部構成以外は実施例1と同様なので、実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例2では、セパレータの外周端部に、直径0.2mmの貫通孔を4つ形成した。貫通孔の形成位置は、セパレータの中心から、6.0mmの同心円上にて4等分した箇所とした。
【0045】
(比較例1)
比較例1では、従来構造のセパレータを使用し、セパレータの外周端部に、親水性の除去や貫通孔形成等の固定部を形成しなかった。それ以外の構成や製造方法は実施例1と同様である。
【0046】
(比較例2)
比較例2でも、従来構造の固定部を形成しないセパレータを使用した。また、セパレータの寸法を直径7.0mmとし、実施例1より0.5mm大きくした。封止用絶縁ゴムの寸法を、内径5.5mm、外径8.5mmとし、実施例1より、外径を0.5mm大きくした。すなわち、セパレータが封止用絶縁ゴムに挟まれている部分(挟み代)の寸法を実施例1よりも大きくした。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0047】
(評価)
実施例1、2、比較例の電気二重層キャパシタに表面実装を想定し、リフローを施した。リフロー温度は、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、これらの温度での加熱時間は60秒とした。各水準について、電気二重層キャパシタを100個投入し、セパレータの脱落発生数を比較した。この比較結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、本発明の電気二重層キャパシタは、セパレータの脱落も発生せず、良好な結果が得られた。すなわち、セパレータと封止用絶縁部材との固定を確実に行い、小型化を実現した電気二重層キャパシタおよびその製造方法を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0050】
10、20 基本セル
11、21 分極性電極
12、22 セパレータ
12a、12b 固定部
13、23 封止用絶縁ゴム(封止用絶縁部材)
14、24 集電体
30 キャパシタ素子
31 外装材
32 絶縁ケース
33、34 リード端子
35 座板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性を有し電解液を含浸させたシート状のセパレータと、
前記セパレータを介して対向配置され、前記電解液を含浸させた一対の分極性電極と、
シート状で、前記分極性電極の外表面に当接して配置された一対の集電体と、
前記分極性電極の周囲を囲み、前記セパレータの外周端部を挟持し、前記集電体とともに前記電解液を封止する枠状の封止用絶縁部材と、
を備えた基本セルを有し、
前記基本セルが前記分極性電極の対向方向に単数または複数積層されてなるキャパシタ素子を構成し、前記キャパシタ素子が外装材にて外装された電気二重層キャパシタであって、
前記セパレータの外周端部の少なくとも一部には、前記封止用絶縁部材と固定される固定部を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記固定部は、親水性が除去されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記固定部は、少なくとも一つの貫通孔であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
シート状の集電体と、枠状で未硬化の封止用絶縁部材を仮接着し、前記集電体と前記封止用絶縁部材とで形成された空間に分極性電極を充填し、前記分極性電極に電解液を含浸させ、一対の中間体を作製する第一の工程と、
前記中間体の一方に、前記分極性電極および前記封止用絶縁部材に当接するように、セパレータを積層する第二の工程と、
一対の前記中間体を、前記セパレータを介して対向配置する第三の工程と、
前記封止用絶縁部材を硬化し、前記セパレータおよび前記分極性電極を封止し、基本セルを製造する第四の工程と、
前記基本セルを前記分極性電極の対向方向に単数または複数積層してキャパシタ素子を構成する第五の工程と、
前記キャパシタ素子を外装材にて外装する第六の工程を有する電気二重層キャパシタの製造方法であって、
前記第一の工程の前工程として、
前記セパレータの、前記封止用絶縁部材と接する外周端部の少なくとも一部に前記封止用絶縁部材を固定するための、固定部形成工程を含むことを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項5】
前記固定部形成工程は、前記セパレータの外周端部の少なくとも一部を熱処理し、親水性を除去する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項6】
前記固定部形成工程は、前記セパレータの外周端部に少なくとも一つの貫通孔を形成する工程を含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105757(P2013−105757A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246225(P2011−246225)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】