説明

電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及び電気二重層キャパシタ

【課題】耐電圧及び耐久性に優れた電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】コロイダルシリカの重合体と、一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタ。コロイダルシリカの重合体を含有させることで、電解液自体がゲル状となるため、優れた耐電圧と耐久性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐電圧が高く、耐久性に優れる電気二重層キャパシタ用電解液及び電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、重金属等の環境負荷物質を含まず安全であり、パワー密度が大きく、優れた充放電サイクル寿命を有しているという特徴を持つため、近年、瞬低補償装置や電気自動車等様々な分野への利用が進められている。
【0003】
しかしながら、この電気二重層キャパシタの問題点として、分極性電極に活性炭を使用するため、電解液の分解電圧を越えるような高い電圧で使用すると、電気二重層キャパシタの内部抵抗増大や容量減少しまうことが挙げられる。
【0004】
したがって、電気二重層キャパシタに用いられる電解液は、高い電気伝導性を有するとともに、電気特性(静電容量、内部抵抗)の耐電圧及び耐久性に優れることが要求される。
【0005】
特許文献1に記載されているように、従来の一般的な電気二重層キャパシタ用電解液としては、有機溶媒であるプロピレンカーボネートに、電解質として第四級アンモニウム塩であるテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムを溶解させたものが使用されている。
【0006】
特許文献2には、コロイダルシリカを含有させた電気二重層キャパシタが開示されている。しかしながら、コロイダルシリカを電解液に分散されているだけであるので、静電容量が若干向上するが、耐電圧及び耐久性に劣る欠点がある。
【0007】
特許文献3には、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン等の重合体を含有させたゲル電解質を用いた電気二重層キャパシタが開示されている。しかしながら、上記重合体を用いた電気二重層キャパシタは、耐久性は向上するが耐電圧に劣る欠点があった。
【0008】
以上のように、耐電圧及び耐久性に優れた電気二重層キャパシタが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−114105号公報
【特許文献2】特開2008−270788号公報
【特許文献3】特開2009−067774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐電圧及び耐久性に優れた電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コロイダルシリカの重合体と、下記一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタである。
【0012】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0013】
第一の発明は、コロイダルシリカの重合体と、下記一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用ゲル電解液である。
【0014】
【化1】

(式(1)〜(7)中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接R同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO、C(CSOからなる群より選ばれる1種を示す。)
【0015】
第二の発明は、コロイダルシリカの重合体が、酸性コロイダルシリカ又はアンモニア安定型コロイダルシリカを用いて重合させた重合体であることを特徴とする第一の発明に記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液である。
【0016】
第三の発明は、コロイダルシリカの平均粒径が、1〜50nmであることを特徴とする第一又は第二の発明に記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液である。
【0017】
第四の発明は、電気二重層キャパシタ用ゲル電解液中におけるコロイダルシリカの重合体の含有量が、1.0〜50質量%であることを特徴とする第一から第三の発明のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液である。
【0018】
第一から第四の発明のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液を用いて作製されてなることを特徴とする電気二重層キャパシタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐電圧及び耐久性に優れた電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液について説明する。
【0021】
本発明者らは鋭意検討した結果、コロイダルシリカの重合体と、一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用ゲル電解液及びそれを用いた電気二重層キャパシタが上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0022】
<コロイダルシリカ>
コロイダルシリカとは、SiO又はその水和物のコロイドで、粒径が1〜300nmで一定の構造をもたないものである。ケイ酸塩に希塩酸を作用させた後に、透析で得ることができる。
【0023】
コロイダルシリカは、水又は有機溶媒にほとんど溶解せず、一般に適当な分散溶媒中に分散させたコロイド溶液として保存することができる。
【0024】
コロイダルシリカの具体例としては、ナトリウム安定型コロイダルシリカ、酸性コロイダルシリカ、アンモニア安定型コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0025】
ナトリウム安定型コロイダルシリカは、コロイダルシリカの表面がONa基となっている。酸性コロイダルシリカは、コロイダルシリカの表面が、Naを除去してOH基となっているコロイダルシリカである。アンモニア安定型コロイダルシリカは、Naを除去してOH基にした後、アンモニア処理して表面をアンモニアイオンで安定化したコロイダルシリカである。
【0026】
これらの中でも、より高い耐久性が得られる点より、酸性コロイダルシリカ又はアンモニア安定型コロイダルシリカが好ましく挙げられる。
【0027】
本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液は、コロイダルシリカを重合させた重合体を含有することを特徴としている。
上記コロイダルシリカのシラノール基同士が重合した重合体を含有しているため電解液自体がゲル状となっている。
【0028】
電気二重層キャパシタ用ゲル電解液の製造方法は、コロイダルシリカを含有させた電解液を加熱して重合させてゲル電解液とする。
また、コロイダルシリカを含有させた電解液は、通常、水を留去させるため、80℃程度で加熱するが、80℃ではコロイダルシリカはゲル化しない。電解液を120〜200℃で加熱させることでコロイダルシリカのシラノール基同士が重合しゲル化する。
【0029】
コロイダルシリカの重合体を電解液中に含有させることで、電解液がゲル状となるため、耐電圧及び耐久性を大幅に向上させることができる。
【0030】
電気二重層キャパシタ用ゲル電解液中におけるコロイダルシリカの重合体の含有量は、0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%が挙げられ、特に好ましくは1.0〜30質量%が挙げられる。0.1質量%未満の場合、電気二重層キャパシタの電気特性向上効果が小さく、50質量%超では、粘度が大きすぎるため扱い辛い欠点がある。
【0031】
コロイダルシリカの平均粒径は、いずれのものでもよく、好ましくは1〜50nmであり、より好ましくは1〜30nmである。前記平均粒径にすることで、溶媒における分散性に優れ、重合させたときに、電解質塩を均一に分散させた電気二重層キャパシタ用ゲル電解液を得ることができる。
【0032】
コロイダルシリカの形状は、球状タイプ、鎖状タイプ、コロイダルシリカが環状に凝集して溶媒に分散した環状タイプのいずれであってもよい。
【0033】
酸性コロイダルシリカのpHは、pH2〜4程度であり、ナトリウム安定型コロイダルシリカ及びアンモニア安定型コロイダルシリカのpHは、pH9〜11程度である。
【0034】
市販品のナトリウム安定型コロイダルシリカとしては、スノーテックス(商標登録)XS(日産化学工業(株)社製)、スノーテックス(登録商標)20(日産化学工業(株)社製)、アデライト(登録商標)AT−20等が挙げられる。
【0035】
市販品のアンモニア安定型コロイダルシリカとしては、スノーテックス(登録商標)N(日産化学工業(株)社製)、ルドックス(登録商標)AS(ダブリュ.アール.グレース・アンド・カンパニー−コネティカット社製)、ナルコ(登録商標)2326(ナルコケミカル カンパニー社製)、アデライト(登録商標)AT−20N(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0036】
市販品の酸性コロイダルシリカとしては、スノーテックス(登録商標)O(日産化学工業(株)社製)、ナルコ(登録商標)1034A(ナルコケミカル カンパニー社製)、カタロイド(登録商標)SN(触媒化学工業(株)社製)、アデライト(登録商標)AT−20Q(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0037】
<電解質塩>
本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液に用いる電解質塩は、下記一般式(1)〜(7)のいずれかより表されるオニウム塩である。
【0038】
【化2】

【0039】
一般式(1)〜(7)で表される化合物中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接するR同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。
【0040】
一般式(1)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシエチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウム、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムが特に好ましく挙げられる。
【0041】
一般式(2)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメトキシアミン、ジメチルメトキシアミン、ジメチルエトキシアミン、ジエチルエトキシアミン、メチルエチルメトキシアミン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−イソプロピルピロリジン、N−ブチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−イソプロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、N−メチルピロリジンが特に好ましく挙げられる。
【0042】
一般式(3)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン、ピロリジン等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ピロリジンが特に好ましく挙げられる。
【0043】
一般式(4)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,3−ジプロピルイミダゾリウム、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウム、1,3−ジブチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムが特に好ましく挙げられる。
【0044】
一般式(5)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムが特に好ましく挙げられる。
【0045】
一般式(6)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウム、1,2−ジプロピルピラゾリウム、1,2−ジブチルピラゾリウム、1−メチル−2−プロピルピラゾリウム、1−メチル−2−ブチルピラゾリウム、1−メチル−2−ヘキシルピラゾリウム、1−メチル−2−オクチルピラゾリウム、1−メチル−2−ドデシルピラゾリウム、1,2,3,5−テトラメチルピラゾリウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−エチル−3−メトキシ−2,5−ジメチルピラゾリウム、3−フェニル−1,2,5−トリメチルピラゾリウム、3−メトキシ−5−フェニル−1−エチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3,5−ジメチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3−フェニル−5−メチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3−メトキシ−5−メチルピラゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウムが特に好ましく挙げられる。
【0046】
一般式(7)で表されるオニウム塩のカチオン部の具体例としては、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム、N−イソプロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウム、N−オクチルピリジニウム、N−ドデシルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−3−メチルピリジニウム、N−プロピル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−エチルピリジニウム等が挙げられる。
これらの中でも、高い電導度を有し、さらに耐電圧が向上する点より、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−3−メチルピリジニウムが特に好ましく挙げられる。
【0047】
一般式(1)〜(7)で表されるオニウム塩のカチオン部の中でも、特に一般式(1)〜(3)で表されるオニウム塩のカチオン部が、長期にわたり安定しているため優れた耐久性を得ることができるため特に好ましく挙げられる。
【0048】
一般式(1)〜(7)中、Xは、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO、C(CSOからなる群より選ばれる1種を示す。これらの中でも、BF、PF、N(CFSOが電気特性の長期安定性に優れ、電解液としたときに高い電気伝導度が得られるため特に好ましい。なお、これらのアニオンは2種類以上が混合されていてもよい。
【0049】
電解質塩の添加量は、1.0〜60質量%が好ましく、5.0〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましく挙げられる。
1.0質量%未満の場合、十分な電気特性が得られない欠点があり、60質量%超の場合、比抵抗が上昇する欠点がある。
【0050】
<有機溶媒>
電気二重層キャパシタ用ゲル電解液に用いる有機溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のような環状カーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルフォキシド、ジエチルスルフォキシド等のスルフォキシド類、ジメチルフォルムアミド、ジエチルフォルムアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンやジオキソラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホラン、スルホラン、エチルイソプロピルスルホン、エチルブチルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン等の鎖状スルホン類等が好ましく挙げられる。これらの中でも、プロピレンカーボネート、スルホラン、エチルイソプロピルスルホンが好ましく挙げられる。これらの有機溶媒は、一種又は二種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0051】
電気二重層キャパシタ用ゲル電解液に含有する水分量は、特に限定されないが、0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下が特に好ましく挙げられる。
【0052】
<添加剤>
本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液には、含浸性向上や難燃性を付与するような添加剤を含有させても良い。このような添加剤としては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン化合物や、ホスファゼン化合物が挙げられる。
【0053】
添加量は0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく挙げられる。0.1質量%未満の場合、十分な耐久性が得られない欠点があり、30質量%超の場合、電導度が低下する可能性がある。
【0054】
本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液は、以下の製造方法により得ることができる。
【0055】
すなわち、有機溶媒に、コロイダルシリカの水もしくは有機溶媒分散液と、一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩とを加え、脱水した後、120〜200℃で加熱して、コロイダルシリカを重合させて、重合体を形成させることで、本発明の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液を得ることができる。
【0056】
このようにして調製された電気二重層キャパシタ用ゲル電解液を使用して電気二重層キャパシタを作製することができる。電気二重層キャパシタの作製は、一般的なキャパシタの製造方法によることができる。すなわち、セパレータを挟み込んだ分極性電極に、駆動用電解液となる本発明の電気二重層キャパシタ用電解液を含浸させ、これを容器に密封しても作製できるし、本発明の電解液は、ゲル状となっているため、セパレータを用いなくても電気二重層キャパシタを作製することもできる。
【0057】
キャパシタ電極に用いられる分極性電極としては、活性炭粉末、活性炭繊維等の多孔性炭素材料や、金属酸化物材料、あるいは導電性高分子材料等が用いられるが、多孔性炭素材料が安価で好ましい。また、セパレータとしては、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン系不織布等の素材からなるセパレータを用いることができる。
【0058】
本発明の電気二重層キャパシタの形状としては、特に限定されず、フィルム型、コイン型、円筒型、箱型等の形状に作製することができる。
【実施例】
【0059】
以下、発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明は、実施例により、なんら限定されるものではない。実施例中の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0060】
(電解液1の製造方法)
プロピレンカーボネートに、コロイダルシリカA(スノーテックス−N(日産化学工業(株)製)60.5部、濃度1.5mol/lとなるように、テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムを加え、80℃で脱水した後、120℃5時間加熱して電気二重層キャパシタ用ゲル電解液(「電解液1」と略記する。)を得た。
【0061】
(電解液2〜12、16、17)
表1に対応するゲル化剤、電解質塩、有機溶媒に代えた以外は電解液1の製造と同様にして電解液2〜12、16、17を作製した。
【0062】
(電解液13)
プロピレンカーボネートに、コロイダルシリカA(スノーテックス−N(日産化学工業(株)製)60.5部、濃度1.5mol/lとなるように、テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムを加え、80℃で脱水して、電気二重層キャパシタ用電解液を得た。
【0063】
(電解液14、15)
表1に対応するゲル化剤を用い、電解液13と同様にして電解液14、15を作製した。
【0064】
作製した電解液1〜17の組成を表1に示す。なお、ゲル化したものを○、ゲル化しなかったものを×とした。
【0065】
【表1】

【0066】
表中の略号は以下のとおりである。
SBP−BF:テトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム
DEDMA−BF:テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム
TEMA−BF:テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム
TEA−BF:テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム
PC:プロピレンカーボネート
SL:スルホラン
EMS:エチルメチルスルホン
コロイダルシリカA:酸性コロイダルシリカ(日産化学工業(株)社、スノーテックス−O、固形分20%、pH3.8、平均粒径10〜20nm、形状:球状)
コロイダルシリカB:アンモニア安定型コロイダルシリカ(日産化学工業(株)社、スノーテック−N、固形分20%、pH9.0〜10、平均粒径10〜20nm、形状:粒状)
コロイダルシリカC:ナトリウム安定型コロイダルシリカ(日産化学工業(株)社、スノーテック−20、固形分20%、pH9.5〜10、平均粒径10〜20nm、形状:粒径)
【0067】
<電気二重層キャパシタの作製及び評価>
(実施例1)
正極及び負極電極は活物質(活性炭:日本エンバイロケミカル株式会社、白鷺KA)、導電剤(ケッチェンブラック:ライオン株式会社、ECP−600JD)、バインダー(PTFE:三井・デュポンフロロケミカル株式会社、30−J)を混合した。その質量組成比は活物質:導電剤:バインダー=80:10:10とした。これらの混合物にエタノールを加えながら充分に混練し、圧延することで平均して厚み0.85mmの活性炭シート電極を得た。この活性炭シート電極をφ15のポンチで打ち抜いたものを、集電体(φ17のSUS316製プレート)が溶接されたケース、キャップ(何れもSUS316製)に導電性接着剤にて接着し、それぞれ正極部、負極部を得た。それらの電極に電解液1をそれぞれ注液し、0.060MPaで10分減圧含浸した後、カシメ機にて嵌合して2032サイズのコイン型電気二重層キャパシタを作製した。
【0068】
(実施例2〜12、比較例1〜5)
実施例2〜12及び比較例1〜5は、表2に対応するように電解液1の代わりに電解液2〜17を用いた以外は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。
【0069】
実施例1〜12及び比較例1〜5より得られた電気二重層キャパシタの初期特性を、測定温度下に30分以上放置し、キャパシタが所定温度に達した後、定格電圧として2.5Vを30分印加後、放電電流2mAにて低電流放電し、キャパシタ端子間電圧が2Vから1Vになるまでの時間より静電容量を算出した。また、放電の下限値を0.0Vとした。内部抵抗は静電容量測定時と同様に定格電圧として2.5Vを30分印加後、放電電流100mAにて定電流放電したときのIRドロップより算出した。
電気二重層キャパシタに3.5Vを1000時間連続印加した後の静電容量と内部抵抗を測定し、初期に対するそれぞれの変化率を求めた。雰囲気温度は60℃とした。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表2より、比較例1〜5と比較して、実施例1〜12は、静電容量の減少率と内部抵抗の増加率が小さいため、耐電圧及び耐久性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、優れた電気特性を有するため、小型電子機器から大型自動車用途まで種々の産業分野において使用される電気二重層キャパシタ用電解液として極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカの重合体と、下記一般式(1)〜(7)より表されるいずれかのオニウム塩からなる電解質塩と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用ゲル電解液。
【化1】

(式(1)〜(7)中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接R同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO、C(CSOからなる群より選ばれる1種を示す。)
【請求項2】
コロイダルシリカの重合体が、酸性コロイダルシリカ又はアンモニア安定型コロイダルシリカを用いて重合させた重合体であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液。
【請求項3】
コロイダルシリカの平均粒径が、1〜50nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液。
【請求項4】
電気二重層キャパシタ用ゲル電解液中におけるコロイダルシリカの重合体の含有量が、1.0〜50質量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用ゲル電解液を用いて作製されてなることを特徴とする電気二重層キャパシタ。

【公開番号】特開2013−105861(P2013−105861A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248158(P2011−248158)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】