説明

電気二重層キャパシタ

【課題】 容器内での絶縁を確保でき、電極部の長さを短くすることができる電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】 本発明の電気二重層キャパシタ30は、複数の薄板状正電極板と薄板状負電極板の積層体15と、積層体15を収容する絶縁性の袋体31と、正電極板のリード端子を纏めた正のリードプレート11Aと、負電極板のリード端子を纏めた負のリードプレート12Aと、積層体が収容された袋体31を収容する容器28と、容器の開口を封止する封口体21と、封口体21に貫通固定された電極端子23、24と、封口体21の容器28に取り付けられた絶縁性フィルム26と、を有し、電極端子23、24と、リードプレートとを接続し、絶縁性フィルム26と袋体31とを液密・気密状態に接着し、袋体31を容器28内に収容し、封口体21で容器の開口を封止したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気二重層キャパシタに関し、容器内での絶縁を確保でき、特に、電極部の長さを短くすることができる電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気二重層キャパシタとしては、特許文献1(特開2001−110692)に記載されたものが知られている。この電気二重層キャパシタは、以下のようにして製造される。
【0003】
複数の正電極板と負電極板とを中間に絶縁用のセパレータを挟んで所定の枚数ずつ重ねて積層体とする。各電極板には、リード端子が形成されており、この積層体の正のリード端子を纏めて1つの正のリードプレートとし、負のリード端子を纏めて1つの負のリードプレートとする。
【0004】
こうして作られた積層体を袋状のインシュレーターに入れ、不純物除去を行い、インシュレーター内に電解液を注入し、インシュレーターごと金属ケース内に収納する。リードプレートは、多数のリード端子が1枚に重ねられ、導通状態で接続されている。そして、このリードプレートが、蛇行するように折り曲げられて、先端がほぼ水平な状態にされ、この水平部分にネジが垂直に立設されて、金属ケース内に収容される。
【0005】
電解液は、水分の混入を極力妨げる必要があるが、空気中に含まれる水分が浸入する可能性がある。そこで、金属ケースの開口部には、蓋体が載せられ、さらにその上から半溶融状の樹脂封止材が注入され、固化される。リードプレートは、上記のネジの部分が蓋体と樹脂封止材を貫通して外側に突出しており、このネジに電気端子を螺合する。
【0006】
この従来例では、インシュレータの開口部の封止をするために、上述したように、蓋体を載せ、さらに溶融した樹脂で封止している。
【0007】
しかし、封止材として使用される樹脂も、若干の通水性を有し、空気中の水分が浸入する可能性がある。そのため、樹脂の封止層の厚さを厚くすることで、必要とされる液密性を確保している。
【0008】
一般に、電気二重層キャパシタは、リード端子、リードプレート、電極といった電極部の長さが大きくなると、充電された電気を放出する場合の抵抗が大きくなり、効率が悪くなる。
【0009】
上記特許文献1では、リード端子を折り曲げて蛇行させているので、リード端子の長さが長くなり、抵抗による損失が大きくなる。リード端子を蛇行するように折り曲げるのは、ネジの取り付けなどの作業をやりやすくするためである。しかし、リード端子を折り曲げずに、真っ直ぐにしたとしても、封止層の厚さは、液密性を確保するためにかなりの厚さを必要とするので、リード端子の長さを短くできないという問題がある。
【0010】
また、別の従来例として特許文献2(特開2004−304010)がある。これは、扁平形アルミニウム電解コンデンサ素子に電解液を含浸させた後、柔軟な収納ケースに入れ、平たいアルミニウム板の外部引出し端子を引出して収納ケースの口を融着して密封したコンデンサ本体を作製する。このコンデンサ本体の外部引出し端子に封口材と一体にしたリード端子の一端をレーザ溶接等で接合する。そして、リード端子を接合したコンデンサ本体を平たい長方形断面の外装ケース内に挿入し、さらに外装ケースの口の部分で封口材を熱溶着して外装ケース付の扁平形アルミニウム電解コンデンサとしている。
【0011】
これは、電解液の封止という点では優れているが、電極部の長さは、引出し端子とリード端子の長さの和になり、短くすることができず、これらの電気抵抗による損失が大きくなるという問題がある。
【特許文献1】特開2001−110692
【特許文献2】特開2004−304010
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決することを目的としており、電極部の長さを短くすることができる電気二重層キャパシタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明の電気二重層キャパシタは、複数の薄板状正電極板と、該薄板状正電極と相対向する複数の薄板状負電極板とを各電極板間に薄板状の絶縁部材を介在させて積層した積層体と、該積層体を収容するための開口を一方に有する絶縁性の袋体と、前記正電極板のリード端子を纏めた正のリードプレートと、前記負電極板のリード端子を纏めた負のリードプレートと、前記積層体が収容された袋体を収容する容器と、該容器の開口を封止する封口体と、該封口体に液密状態に貫通固定された電極端子と、前記封口体の前記容器と対向する側に取り付けられた絶縁性のフィルムと、を有し、前記電極端子と、前記リードプレートとを導通状態に接続し、前記絶縁性のフィルムと前記柔軟な袋体とを液密状態に接着し、前記袋体を前記容器内に収容し、前記封口体で前記容器の開口を封止したことを特徴としている。
【0014】
前記封口体と容器とが共に金属製で、封口体が容器の開口に溶接されることで封止する構成としたり、柔軟な容器と、前記絶縁性のフィルムとが、熱融着可能な素材からなる構成としたり、前記封口体と電極端子とが、絶縁性のガスケットを介して接合され、前記ガスケットと前記絶縁性フィルムとが液密状態で接着している構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
正電極板と負電極板とを絶縁部材を介して積層し、正電極板のリード端子を纏めた正のリードプレートと、負電極板のリード端子を纏めた負のリードプレートとを有する積層体を一方に形成し、他方に、封口体に電極端子と絶縁性のフィルムを一体的に設けたものを用意する。積層体を絶縁性の袋体に入れ、積層体のリードプレートが袋体から露出した状態にし、ここに封口体の電極端子を近接させて両者を溶接等で接続する。接続が完了したら、袋体の縁部と絶縁性フィルムの縁部とを液密・気密に接着し、積層体と袋体とを容器に入れ、封口体で密閉する。
【0016】
したがって、容器内の袋体で電極積層体を密封するので、容器内部での絶縁を確保できる。また、電極端子とリードプレートの双方が露出した状態で接続できるので、作業が容易にできる。さらには、電極端子とリードプレートの長さを短くすることができ、電気抵抗を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は積層体15の分解斜視図で、図2は積層体15の斜視図である。これらの図1及び図2に示すように、本発明の電気二重層キャパシタは、正電極板11と負電極板12と、これらの間の絶縁をする絶縁部材13とを積層し、両側から別の絶縁シート14で挟んで、形成した積層体15を有している。この積層体15の正のリード端子11aは1つに纏められ、負のリード端子12aも1つに纏められる。
【0019】
正電極板11と負電極板12とは同じ構成で、厚さ15〜100mのアルミ箔からなる集電体に、活性炭、導電剤、バインダー、溶剤等を混合してスラリー状にしたものを電極となるリード端子11a,12a以外の部分の片面或いは両面に塗布して乾燥したものである。正電極板11と負電極板12とを交互に、かつ、ほぼ垂直方向に配置して、水平方向に複数枚積層している。絶縁部材13は、各電極板11,12が直接接触しないように絶縁するもので、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維などの絶縁性素材からなる不織布や多孔性フィルムを使用している。
なお、積層体15は、積層した正電極板11、負電極板12、絶縁部材13を両側から挟む絶縁シート14を省略してもよい。
【0020】
図3は、電気二重層キャパシタ30を構成する封口体アッセンブリー20の斜視図で、図4は、電気二重層キャパシタ30の分解状態を示す縦断面図である。
【0021】
図2に示す積層体15は、図4に示すように、複数の正のリード端子11aを纏めて正のリードプレート11Aとし、複数の負のリード端子12aを纏めて負のリードプレート12Aとする。こうしてできた積層体15を、袋体31に挿入する。袋体31を構成するフィルムとしては、電解液に対して液密で、電気的に絶縁性で、かつ、熱融着が可能なものであれば材質は問わない。たとえば、厚さ10〜200μm程度のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、あるいはこれらの積層フィルムを使用することができる。
【0022】
封口体21は、金属製の長方形の板で、中央の両側に細長い貫通孔があって、これらに電極端子23、24が貫通しており、ガスケット25によって周囲を液密・気密に接続している。ガスケット25は、電気的に絶縁性の素材からなり、インサート成形して液密・気密構造にしている。封口体21の図の下面には、袋体31と同じ素材の絶縁性フィルム26が取り付けられている。封口体21の中央部に貫通した開口21aに当接する絶縁性フィルム26の部位には孔が開けられ、絶縁性フィルム26は、開口21aの内周全体に貼着した袋体31と同じ素材と一体化されている。絶縁性フィルム26は、電極端子23、24を貫通させた状態で、電極端子23の周囲で封口体21と液密に接着している。接着方法としては、接着剤を使用する他に、熱融着する方法もある。開口21aには、圧力調整弁27が取り付けられる。
封口体21に使用することができる金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、SUSなどが挙げられる。中でも良好な成形性、溶接のしやすさの点を考慮すると、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。
【0023】
ガスケット25をインサート成形する場合に用いる素材は、絶縁性の樹脂組成物からなるものであれば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでもよい。熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、硬化性シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾールなどが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エチレン/α−オレフィン共重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも良好な成形性、耐熱性、耐薬品性を考慮すると、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
【0024】
なお、封口体21に電極端子23、24を接続するにあたり、上記のガスケット25をインサート成形する方法以外の方法を用いてもよい。そのような方法としては、封口体21の貫通孔周縁部に、リブを貫通孔の方向に立て、このリブを電極端子に電気的に導通しないように電極端子に固着したガスケット25にかしめる方法、あるいは電極端子にリブを設け、このリブを封口体21に電気的に導通しないように封口体の貫通孔内周に固着したガスケット25にかしめる方法などを挙げることができる。
【0025】
上記のようなかしめ加工をする場合にガスケット25に用いることができる絶縁性の樹脂組成物としては、前記熱可塑性樹脂の他にパーフルオロアルコキシアルカン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂が挙げられる。これらの中でも良好な成形性、耐熱性、耐薬品性を考慮するとパーフルオロアルコキシアルカン樹脂が好ましい。
【0026】
図5は、封口体21と袋体31に収容された積層体15とを接続した状態を示す縦断面図である。図4に示すように、封口体21、電極端子23、24及び絶縁性フィルム26が一体となったものを封口体アッセンブリー20とし、予め作製しておく。そして、封口体アッセンブリー20を袋体31に収容された積層体15に近接させ、封口体21の電極端子23とリードプレート11Aを超音波溶接やレーザ溶接などによって接続し、電極端子24とリードプレート12Aを同様に接続する。このとき、袋体31の入口縁部31aを拡げるなどによって、リードプレート11A、12Aを袋体31から外部に突出させておくことで、リードプレート11A、12Aが短くても、この接続作業を容易に行うことができる。
【0027】
図5に示すように、電極端子23、24とリードプレート11A、12Aを接続したら、この後、袋体31の入口縁部31aと、絶縁性フィルム26の縁部26aを加熱溶融させて融着させる。これによって、積層体15は、絶縁性の袋体31と、絶縁性フィルム26とで外部から液密・気密に遮断された状態となる。
【0028】
図6は、本発明の電気二重層キャパシタの縦断面図である。袋体31の入口縁部31aと絶縁性フィルム26の縁部26aとの融着部を折りたたみ、全体を金属製の容器28内に挿入し、封口体21の周囲と金属製の容器28とをレーザ溶接等によって封止している。そして、開口21aには圧力調整弁27を取り付けない状態で、袋体31内に電解物質として電解液を充填し、不純物除去を行い、開口21aに圧力調整弁27を取り付ける。これによって、積層体15は、一体化した袋体31と絶縁性フィルム26とで液密・気密に遮断されているので、容器28の内部において絶縁された状態となる。この電解液の充?と不純物除去、及び弁の取り付けは、前述の、袋体31と絶縁性フィルム26とを融着した直後に行ってもよい。
【0029】
電解液としては、水系溶媒を用いることもあるが、非水系溶媒を用いた方が高電圧を得られるという特徴がある。ただし、非水系溶媒では、水分の混入を極力妨げる必要がある。電気二重層キャパシタは、二次電池のように物質の化学変化を利用するものではないが、混入する不純物によってガスが発生して、袋体31内部の圧力が高まることがある。内部の圧力が上昇すると、袋体31及び容器28が変形し、電解液が漏れることがある。そこで、圧力調整弁27を設け、所定の圧以上に上がったら、この圧力調整弁27を開いて大気との差圧を逃がすようにしている。
【0030】
金属製の容器28としては、実施例では、アルミニウムの厚さ0.5mmの板材を深絞り加工したものを使用したが、特に、この素材や加工方法に限定されるものではない。ただし、金属製の容器28を深絞り加工により製造することによって、つなぎ目のない容器28を得ることができ、高い気密性を得ることができる。
【0031】
本発明の電気二重層キャパシタは、上記の構成なので、リードプレート11A、12Aと電極端子23、24の接続作業が容易にできる。作業が容易なことから、リードプレート11A、12Aや電極端子23、24の長さを短くすることができ、電極部の長さを短くし、電気抵抗による損失を小さくすることができる。また、封口体21に電極端子23、24がガスケット25を介して固定されているので、絶縁構造を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】積層体の分解斜視図である。
【図2】積層体の斜視図である。
【図3】電気二重層キャパシタを構成する封口体アッセンブリーの斜視図である。
【図4】電気二重層キャパシタの分解状態を示す縦断面図である。
【図5】封口体と袋体に収容された積層体とを接続した状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の電気二重層キャパシタの縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
11 正電極板
11A リードプレート
11a リード端子
12 負電極板
12A リードプレート
12a リード端子
13 絶縁部材
15 積層体
20 封口体アッセンブリー
21 封口体
21a 開口
23 電極端子
24 電極端子
25 ガスケット
26 絶縁性フィルム
26a 縁部
27 圧力調整弁
28 容器
30 電気二重層キャパシタ
31 袋体
31a 入口縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄板状正電極板と、該薄板状正電極と相対向する複数の薄板状負電極板とを各電極板間に薄板状の絶縁部材を介在させて積層した積層体と、該積層体を収容するための開口を一方に有する絶縁性の袋体と、前記正電極板のリード端子を纏めた正のリードプレートと、前記負電極板のリード端子を纏めた負のリードプレートと、前記積層体が収容された袋体を収容する容器と、該容器の開口を封止する封口体と、該封口体に液密・気密状態に貫通固定された電極端子と、前記封口体の前記容器と対向する側に取り付けられた絶縁性のフィルムと、を有し、前記電極端子と、前記リードプレートとを導通状態に接続し、前記絶縁性のフィルムと前記柔軟な袋体とを液密・気密状態に接着し、前記袋体を前記容器内に収容し、前記封口体で前記容器の開口を封止したことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記封口体と容器とが共に金属製で、封口体が容器の開口に溶接されることで封止することを特徴とする請求項1記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
柔軟な容器と、前記絶縁性のフィルムとが、熱融着可能な素材からなることを特徴とする請求項1又は2記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記封口体に電極端子が、絶縁性のガスケットを介して貫通固定され、前記ガスケットと前記絶縁性フィルムとが液密・気密状態で接着していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−26999(P2009−26999A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189358(P2007−189358)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】