説明

電気二重層キャパシタ

【課題】 電気二重層キャパシタ1の厚さが薄い場合でも、内部圧力が上昇したら圧力調整弁が確実に開弁して、容器内の圧力を低下することができる電気二重キャパシタを提供する。
【解決手段】 本発明の電気二重層キャパシタは、複数の薄板状電極板と、各電極板間にの絶縁部材とを積層した積層体15と、シート状部材からなる容器19と、容器内に充填される電解液14と、蓋体200と、蓋体に穿設された挿通孔に挿通され、電極板に接続される正負極のリード端子18とを有する電気二重層キャパシタ30において、蓋体が、容器の一面とほぼ面一になる背面210と、背面と平行な前面220とを有し、背面と前面との間の距離が、容器の一面からこの一面に対向する対向面までの距離より小さく、蓋体の前面の背面と平行な部分に形成され、外側に膨出することで開弁する圧力調整弁130を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全弁としての圧力調整弁を備えた電気二重層キャパシタに関し、特に、電気二重層キャパシタの厚みが薄くても圧力調整弁が確実に作動する電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の電気二重層キャパシタの構成例を模式的に示す断面図で、図6は電極板の斜視図である。電気二重層キャパシタ10は、正電極板11と負電極板12と、これらの間を絶縁する絶縁部材13とを水平方向に積層して1つのユニットUとし、このユニットUを別の絶縁部材13で絶縁して複数ユニットUを水平方向に積層して積層体15とし、この積層体15を容器19内に収容したものである。容器19内には電解物質として電解液14を充填し、容器19の上部の開口端側を蓋体16で覆っている。蓋体16は断面形状が矩形をした容器19の対向する2辺に渡る山形をしており、その内側には、容器19の上方、すなわち、積層方向の側方に空間17が形成されるようになっている。
【0003】
正電極板11と負電極板12とは同じ構成で、厚さ20〜60μmのアルミ箔からなる集電体に、活性炭、導電剤、バインダー、溶剤等を混合してスラリー状にしたものを電極11a,12a以外の部分の片面或いは両面に塗布して乾燥したものである。正電極板11と負電極板12とをほぼ垂直方向に配置して、水平方向に複数枚積層している。絶縁部材13は、各電極板11,12及びユニットU同士が直接接触しないように絶縁するもので、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維などの絶縁性素材を使用した不織布や多孔性フィルムを使用している。ユニットUは、1枚の正電極板11と負電極板12とこれらの間にある絶縁部材13と、これらの間に充填される電解液14とからなり、1つのコンデンサ(キャパシタ)を構成している。容器19は、アルミラミネートフィルムなどの可撓性のシート状の素材で成型されたものである。
【0004】
リード端子18は、各ユニットUの正電極11aをまとめて接続したプラスのものと負電極12aをまとめて接続したマイナスのものの2つがある。蓋体16の上端となる山形の稜線には、2つのスリット状の挿通孔16aがあり、リード端子18を貫通させる。蓋体16および積層体15は、容器19で包んで封止される。
【0005】
電解液14としては、水系溶媒を用いることもあるが、高電圧を得られることから、通常は、非水系溶媒を用ている。ただし、非水系溶媒では、水分の混入を極力避ける必要がある。電気二重層キャパシタは、二次電池のように物質の化学変化を利用するものではないが、混入する不純物によってガスが発生して、容器19内部の圧力が高まることがある。内部の圧力が上昇すると、容器19が合成樹脂製であるから変形し易く、特に、リード端子の貫通している挿通孔16aは弱く、この挿通孔16aの部分に変形が集中する。
【0006】
挿通孔16aが変形すると、リード端子18との間に隙間ができ、封止が破れて容器内部が外部に曝されてしまい、電解液や電極の劣化が進んでキャパシタの性能が低下することにもなる。
【0007】
水分は容器19を取り巻く大気からも浸入するおそれがある。そのため、容器19の素材としてアルミラミネートフィルムを使用することが望ましい。アルミラミネートフィルムは、アルミ箔を軟質の合成樹脂層でサンドイッチ状に挟んだもので、アルミ箔が空中の水分を遮断できる。しかし、空中の水分の遮断が可能なものであれば、アルミラミネートフィルム以外のものを使用することができる。
【0008】
なお、アルミ箔は水分を完全に遮断するが、このアルミ箔を挟んでいる合成樹脂製のフィルム部分は微量ではあるが水分を透過する。したがって、大気と容器内部との間にアルミラミネートフィルムの合成樹脂層が介在していると、ここから大気中の水分が極く微量ではあるが浸入するおそれがある。容器19はシート状のアルミラミネートの合成樹脂部分同士を熱融着して任意の形をした袋状に成形するのであるが、この合成樹脂同士を熱融着させた部分は袋の内部と外部とが合成樹脂のみによって隔てられていることになり、ここから水が容器内部に進入し得るのである。構造的にこの合成樹脂層の介在を全く無くすことはできないため、このアルミラミネートフィルムの合成樹脂層内での水分の移動がなるべく長くなるように、容器19の封止の仕方には、熱融着幅を大きくとる工夫等がなされている。
【0009】
一方、内部の圧力が予め決められた圧力以上に上昇したときは、適当な方法で圧力を下げることになる。このとき電解液が気体として外部に放出されるので、電解液14の量が若干減少するが、電解液14の量が若干減少しても、残量が適当である限り、引き続き電気二重層キャパシタとして使用することが可能である。そのような観点から、容器19の上部(積層方向の側方)の蓋体16の内側に空間17を設け、電解液14を多めに充填しておくことができるようにしている。
【0010】
容器19の内部の圧力が上昇したとき、圧力を下げるための圧力調整弁を設けたものとして、特許文献1に記載のものが知られている。これは、合成樹脂フィルムのような可撓性の外装体を用いた電気二重層キャパシタにおいて、その外装体に容易に装着できる、小型の回復可能な圧力調整弁を備えたものである。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の小型の回復可能な圧力調整弁は、小さな薄い部品がポリオレフィンやゴムなどから形成されている。そのため、圧力調整弁をアルミラミネートフィルムといった可撓性の容器部材に融着したとき、圧力調整弁の部品自体が、電気二重層キャパシタの内外圧の差による力以外に、電気二重層キャパシタの内外圧の差による圧力調整弁周辺の容器部材の変形に追随して伸縮してしまい、設定した圧力以下で弁が誤作動するなど、作動自体が不安定になったりするおそれがあった。
【0012】
また、容器の上部にガスの溜まる空間を形成し、これに連通してコイルスプリングなどを使用した複雑で嵩高のガス抜きバルブを取り付けたものとして、特許文献2に記載のものもある。この特許文献2記載の嵩高なガス抜きバルブは、設定した圧力で正確に動作する。
【0013】
しかし、バルブ自体が両側にある端子よりもかなり厚みがあるので、バルブの取付部分となっている筒状の開口部を、周囲のラミネートフィルムに溶着する際に、バルブ付近のラミネートフィルムをほぼ直角に曲げてバルブに溶着することになり、ラミネートフィルムにピンホールができやすくなるという問題があった。また、バルブの構成が複雑であり、高価になるという問題もあった。
【0014】
特許文献3(特表2007−4467)には、圧力調整弁の作動回数が少なくて済むようになるべく高く設定した圧力まで、内部圧力が上昇しても蓋体等の変形の少ない構造を持った電気二重層キャパシタが提案されている。
【0015】
この電気二重層キャパシタは、容器の対向する2辺に渡る山形の蓋体で、山形の一方に傾斜した平面部を有し、この平面部に圧力調整弁を設けた構成としている。山形の他方は、外側に凸の曲面部となっている。容器内の圧力が上昇し、圧力調整弁が作動するとき、圧力調整弁は、外側に膨らみ、これによって開弁されて容器内のガスが抜け、容器内の圧力を低下させることができるものである。
【0016】
特許文献3の圧力調整弁は、設定した圧力で安定して動作可能で、ピンホールなどができにくく、しかも、構成を非常に簡単にすることができる。そして、この圧力調整弁は、電気二重層キャパシタの厚さが比較的厚い場合には、非常に有効なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−280272号公報
【特許文献2】特開2003−272968号公報
【特許文献3】特表2007−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一方、種々の事情から電気二重層キャパシタの厚さを薄くすることが要請されている。しかしながら、厚さを薄くすると、特許文献3に記載された圧力調整弁には、以下に説明するような問題が起こる。
【0019】
図7は、特許文献3の圧力調整弁を有する電気二重層キャパシタにおいて、厚さを薄くした場合を示す図で、(a)は平常時、(b)は圧力調整弁の作動時を示す図である。
【0020】
電気二重層キャパシタ1は、容器19の上部の開口端側を蓋体100で覆い、蓋体100は容器19内に収容された状態となる。蓋体100は、容器19の矩形断面の対向する2つの長辺に渡るような構成で、山形をしており、山形の一方が平面部110で他方は曲面部120となっている。平面部110の中央には、圧力調整弁130が設けられている。
【0021】
電気二重層キャパシタ1は、単独で使用されることは殆どなく、通常は、同じ形状のものを多数並べて使用する。そして、並べる方法としては、2つの電気二重層キャパシタ1を1組みとして、平面部110と平面部110とが向かい合うように配置する。そして、このような組を複数組並べることになる。このように配置するのは、圧力調整弁130の前方に空間を確保することができるからである。
【0022】
上記の配置によれば、電気二重層キャパシタ1、1’の厚さを薄くしても、図7(a)に示すように、平常時には問題がない。しかし、容器19内の圧力が上昇すると問題が起こる。すなわち、容器19内の圧力が上昇し、図7(b)に示すように圧力調整弁130が動作するようになると、圧力調整弁130が外側に膨出して弁を開こうとする。このとき、電気二重層キャパシタ1の厚さWが小さい(薄い)ので、両側の圧力調整弁130が膨らみ始めると、直に、中間で接触し、十分膨らむことができず、開弁できなくなってしまうのである。
【0023】
本発明は、このような問題の解決を図るもので、電気二重層キャパシタ1の厚さWが小さい場合でも、内部圧力が上昇したら圧力調整弁130が確実に開弁して、容器19内の圧力を低下することができる電気二重キャパシタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために本発明の電気二重層キャパシタは、複数の薄板状電極板と、各電極板間に挿入されて電極板間を絶縁する薄板状の絶縁部材とを積層した積層体と、シート状部材からなり前記積層体を収容する容器と、該容器内に充填される電解液と、前記容器の開口を覆う蓋体と、該蓋体に穿設された挿通孔に挿通され、前記電極板に接続される正負極のリード端子とを有する電気二重層キャパシタにおいて、前記蓋体が、前記容器の一面側の背面と、該背面と平行な前面とを有し、前記背面と前面との間の距離が、容器の前記一面からこの一面に対向する対向面までの距離より小さく、かつ、蓋体の中心と容器の前記一面とこの一面に対向する対向面との中心とがずれており、前記蓋体の前記前面の背面と平行な部分に形成され、外側に膨出することで開弁する圧力調整弁を有することを特徴としている。
【0025】
前記蓋体の背面が、前記容器の一面とほぼ面一になる構成としたり、前記前面が前記背面より短く、前記前面の終端(図の下端)から前記容器の前記対向面に達する傾斜面を前記前面に延設した構成としたり、前記蓋体は、前記容器のシート状部材により覆われ、前記圧力調整弁が前記蓋体に穿設された貫通孔と、前記シート状部材に穿設された孔と、該孔に設けられたガス抜き弁とを有する構成としたり、前記蓋体の前記リード端子が挿通される前記挿通孔の縁部に、リード端子の補強部を設けた構成としたり、前記圧力調整弁が、前記正負極のリード端子の間に形成された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電気二重層キャパシタは、圧力調整弁が垂直な前面内にあるので、対向する電気二重層キャパシタの圧力調整弁との間の距離を十分にとることができる。したがって、電気二重層キャパシタ内の圧力が規定の値まで上昇し、圧力調整弁が外側に膨出しても、互いに干渉することがなく、開弁して内部の圧力を下げる。
【0027】
本発明の電気二重層キャパシタによれば、厚さの薄い電気二重層キャパシタであっても、圧力調整弁が確実に動作できるという優れた効果を奏する。
【0028】
蓋体の背面を電気二重層キャパシタの一面と面一にすることで、圧力調整弁の前の空間を最大にすることができる。前面の下に傾斜面を設けることで、積層体の上の空間を大きくすることができ、電解液を余分に入れたり、内圧の上昇を抑えることができる。圧力調整弁が前記蓋体に穿設された貫通孔と、前記シート状部材に穿設された孔と、該孔に設けられたガス抜き弁とを有する構成とすることで、設定の圧になると確実の圧力調整弁を動作させることができる。挿通孔の縁部に、リード端子の補強部を形成することで、電気二重層キャパシタの内圧の上昇に対し、蓋体の変形を小さくすることができる。圧力調整弁が、前記正負極のリード端子の間に形成された構成にすることで、蓋体の厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の電気二重層キャパシタの蓋体の周辺部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の圧力調整弁の構成と作用を説明する図で、図1のA−A線断面図であり、(a)は容器内外の圧力が等しい状態、(b)は容器内の圧力が圧力調整弁の設定値以上に上昇した状態、(c)は電気二重層キャパシタの容器内の圧力が外部よりも正圧だが、圧力調整弁の設定値未満の状態である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明の電気二重層キャパシタを2つ圧力調整弁が向き合うようにして並べた状態を示す図である。
【図5】従来の電気二重層キャパシタの構成例を模式的に示す断面図である。
【図6】電極板の斜視図である。
【図7】従来の電気二重層キャパシタの厚さが薄い場合を示す図で、(a)は平常時、(b)は圧力調整弁の作動時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜3において、従来例と同じ構成については、同じ符号を付しているので、説明は省略し、相違する点を中心に説明する。
【0031】
まず、正電極板11と負電極板12は、従来例で説明したのと同じ構成である。正電極板11と負電極板12の配置順序であるが、積層体15全体として正負の電極板が絶縁部材13を挟んで1枚ずつ交互に配置され、通常、積層体15の両端部の電極板を負電極板にしている。
【0032】
蓋体200は、プラスチック製で、射抜き成型、射出成型などにより成型され、あるいはそのようにして得られた成型部品を立体形状になるように組み立てたものである。蓋体200は、容器19の上端に開いた長方形の開口部から容器19内に挿入され、容器19内に収容された積層体15の上方で、矩形断面の対向する2つの長辺に渡るように収容される。蓋体200は、おおよそ山形で、頂部240の上面は平面で、山形の一方が容器19の1面とほぼ面一になった背面210で、他方は上側は背面210と平行かつ垂直な前面220となっている。前面220は、背面210より垂直方向で短く、前面の末端と容器19の対向面とを接続する傾斜面230が延設され、傾斜面230の先端(図1の下端)は背面210の末端とほぼ同じ高さになっている。
【0033】
この傾斜面230を設けることによって、蓋体200の内部にできる空間17の体積を大きくすることができる。このことは、電気二重層キャパシタ30の重量当たりのキャパシティを向上するために重要である。空間17を大きくすることで、電解液14の余剰量を増加でき、かつ、発生するガスを一時的に溜める緩衝機能を強化することができるからである。
【0034】
図3に示すように、蓋体200には頂部240に挿通孔201が穿設されており、この挿通孔201にはリード端子18が挿通され、挿通孔201の両側には、リード端子18を挟むように、補強部204が立設されている。蓋体200の前面220には、両側のリード端子18、18の丁度真中となる位置に圧力調整弁130が設けられている。このような配置にすることで、圧力調整弁130とリード端子18とが重ならなくなるので、蓋体200の厚さを薄くすることができる。
【0035】
蓋体200と積層体15を中に収めるための容器19は、アルミ箔19aの両面を軟質の合成樹脂層19b、19cで挟んだアルミラミネートフィルム(図2参照)を適宜の容積になるように袋状に形成したものである。たとえばシートを2つ折りにし、その折目に接し対向する2つの辺を熱圧着すればよい。この袋状の容器に積層体15と電解液14とを入れたのち、蓋体200を入れ、蓋体200の挿通孔201にリード端子18を貫通させリード端子18を容器19の外に突出させる。蓋体200とリード端子18の左右両面から袋状の容器19の開口部を熱融着することで、容器19と蓋体200及びリード端子18の間を気密に密閉する。
【0036】
以上の構成において、背面210を容器19の一方の面と面一にしているが、本発明は、この構成に限定されない。背面210を容器19の一方の面より内側にしても、蓋体200の厚さを薄くすれば、圧力調整弁130の前に膨出のための空間(後述する)を確保することができるからである。その場合、蓋体200の中心と容器19の中心とは一致せずにずれることになる。
なお、図1、図3の実施例のように、背面210と容器19の一面とを面一にすると、圧力調整弁130の前の空間を最大にすることができる。
【0037】
容器19を構成するシート状部材は、電気二重層キャパシタ30を封止する目的で使用されるので、原則的には、蓋体200の前面220および背面210の外側表面と容器19のシート状部材とは接着材あるいは熱融着などによって密着している。しかし、図1に示すように、凹部221,222の周囲に長円135で示される範囲の内側は、前面220と容器19のシート状部材とは接着されてなく、接離可能になっている。
【0038】
図2に示すように、容器19を構成するシート状部材は、アルミ箔19aの両側を合成樹脂層19b、19cでサンドイッチ状に挟んだ構造となっている。内側の合成樹脂層19cとしては、電解液14と不活性な材料であれば、特に制限はない。ただし、蓋体200と接する内側の合成樹脂層19cを熱可塑性樹脂にすると、接着剤を使用せずに容器19のシート状部材を蓋体200に熱融着することができる。さらに、蓋体200と合成樹脂層19cとを同じ素材にすることで、融着し易くなる。このような素材としては、たとえば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられ、中でもポリプロピレン、ポリエチレンが好ましい。容器の最外層となる合成樹脂層19bとしては、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を使用すると、容器の耐薬品性や耐熱性を向上させ、アルミ箔19aの層が線状に折れることを防止し、ピンホールの発生を防止することができる。
【0039】
本発明の蓋体200は、頂部240を厚肉にすることで、内部圧力の上昇による変形を防止している。しかし、状況によっては、次に説明する補強部204を更に設けることが望ましい。
【0040】
補強部204は、薄板状で、リード端子18に熱融着などによって接着固定される。補強部204そのものでも補強となるが、リード端子18と接着固定されることで、より強く補強することができる。補強部204により、容器19内の圧力が上昇しても挿通孔201の変形を防止することができる。補強部204には、容器19としてのシート状部材を被せてもよく、密閉状態が良好な場合等は、被せなくてもよい。
【0041】
この構成によって、容器19と蓋体200とは外部と気密に封止され、容器19内の圧力が上昇しても、挿通孔201の部分で変形することを防止できることとなる。この部分の変形を防止し、容器内のそれ以上の正圧は次に説明する圧力調整弁130により適宜外部へ開放し、容器の変形を防止することができる。なお、頂部240を厚肉にしたり、補強部204を形成することで挿通孔201の変形を防止できるため、圧力調整弁130が動作する圧力を高く設定することができ、高く設定することで、圧力調整弁130の作動回数を減少することができるようになる。
【0042】
図2は、本発明の圧力調整弁130の構成と作用を説明する図である。蓋体200の前面220の外側表面には少なくとも1つの円形の凹部と、その凹部の中央に前面220を貫通する孔が形成される。例えば図2に示す実施例では、2つの円形の凹部221,222を設けている。そして、一方の凹部221には、中央に前面220を貫通する孔223が穿設され、孔223を経由して空間17と前面220の凹部221,222側とが連通している。凹部221にはガス透過膜131を固定して閉塞し、凹部222にはガス抜き弁132を挿抜自在に収容する。凹部221に貫通する孔223を閉塞するガス透過膜131は、気体は通過できるが、液体は通過できない性質を備えたものである。
【0043】
なお、凹部221,222は、いずれか1つでもよい。その場合は、当該凹部にガス抜き弁132のみを嵌装して閉塞するか、ガス透過膜131とガス抜き弁132を重ねたものを嵌装して閉塞する。
【0044】
ガス抜き弁132は、容器19のシート状部材に接着され、シート状部材が前面220に密着した状態のとき、ガス抜き弁132は凹部222内に収容される。ガス抜き弁132は、柔軟性のある素材、たとえば、ゴムや合成樹脂で、中央にスリット132aを有する。シート状部材のスリット132aと対向する位置には孔19dが貫通している。スリット132aに代えて小孔としてもよい。スリット132aや小孔は、通常は素材の有する弾性により閉じた状態で、一方の圧力が上昇すると、ガス抜き弁132のスリット132aが開くようになっている。したがって、このスリット132aの大きさや使用する素材の弾性、ガス抜き弁としての厚み等でガス抜きする圧力を調整することができる。
【0045】
電気二重層キャパシタ30が製造された直後は、図2(a)に示すように、ガス抜き弁132は凹部222内に収容されている。リード端子18をまたぐように袋状の容器19の開口部を熱融着して容器19を密閉するが、その際に、容器19の内部を減圧にすると、ガス抜き弁132は凹部222内に押しつけられてガス抜き弁132の凹部222内への収容を確実にできる。
【0046】
なお、圧力調整弁130のシート状部材と接着されない範囲の形状を図1では、長円135で示したが、この形状は長円に限定されるものではない。凹部221,222よりやや大きい円をつなぐ形状であれば、どのような形状でもよい。ただし、図1に示すような、長円の場合は最も製造が容易である。一方、たとえば、凹部221,222よりやや大きい2つの円を細いくびれた部分でつなぐひょうたん形状とすれば、圧力調整弁130が動作する際の膨出高さを小さくすることができる。
【0047】
次に、圧力調整弁130の作用について、説明する。
使用前の電気二重層キャパシタの保管時、および使用し始めてまだ容器19内の圧力が高くならない状態では、図2(a)のようにガス抜き弁132は閉じている。電気二重層キャパシタ30を使用し始めて容器19内の圧力が外部に対して正圧になり、圧力調整弁130の設定値を越えると、図2(b)に示すように、容器内に発生したガスは孔223を通り、ガス透過膜131を通過して容器19のシート状部材と前面220との間に入り、シート状部材を前面220から離反させ、大きく膨出させる。そして、容器内に発生したガスは、ガス抜き弁132のスリット132aを広げて孔にしてシート状部材に穿設された孔19dから外部に抜け出る。これによって、容器19内の圧力を低下させることができる。
【0048】
容器19内の圧力が低下し、ガス抜き弁132の設定値未満になると、容器内の正圧により容器19のシート状部材は図2(c)に示すように前面220から少し浮いた状態に保たれ、スリット132aは閉じられ、ガスの漏洩はなくなる。このとき、容器内はガス抜き弁132の設定値未満の正圧に保たれているので、孔19dを通じて外部からの水分の侵入を抑制することができる。
【0049】
図2(a)のように容器19内圧が外圧より高くない状態では、ガス抜き弁132は閉じているが、シート状部材に穿設された孔19dからシート状部材の合成樹脂層19cを通って、容器19内に大気中の水分が微量ではあるが侵入するおそれがある。そこで、孔19dから容器19内部に向かって浸透可能な前面220の部分までの距離を長くすることにより、大気中の水分が侵入し難くなるようにしているのである。
【0050】
本発明の圧力調整弁130は、上記の構成なので、動作が安定している。すなわち、設定された圧力になると圧力調整弁130がガス抜きをし、設定圧未満では容器内外を遮断するシールとして働く。
【0051】
また、ガス抜き弁132の容器側にガス透過膜131を設けたので、ガス抜き弁132から電解液14が漏出するのを抑制することができる。ガス抜き弁132とガス透過膜131とは重なった位置にあってもよいが、図2に示すように、ガス抜き弁132とガス透過膜131との位置を全く重ならないように離れた位置にずらし、ガス抜き弁132をガス透過膜131とは異なる凹部222に嵌装することによって、ガス抜き弁132の閉止を確実にできる。また、ガス抜き弁132の構成、延いては、圧力調整弁130の構成を非常に簡単にすることができる。
【0052】
図4は、本発明の電気二重層キャパシタを2つ圧力調整弁130同士が向き合うようにして並べた状態を示す図である。実線は電気二重層キャパシタ30の保管時、および使用し始めてまだ容器19内外の圧力が等しい状態である。仮想線は、図2(b)に対応する状態を示すもので、容器19内の圧力が外部よりも高くなり、圧力調整弁130の設定値以上に上昇したときの膨出した最外側の位置を示す。
【0053】
本発明の実施例では、蓋体200の構成に特徴がある。本発明の蓋体200は、電気二重層キャパシタ30をリード端子18を上にして垂直に立てたとき、背面210と前面220が互いに平行で、垂直になるようにしている。背面210と前面220との間の距離L1は、電気二重層キャパシタ30の幅Wより小さく(薄く)なっている。距離L1は、リード端子18を挿通できる隙間を確保できればよいので、十分に狭くすることができる。
【0054】
図2で説明したように、圧力調整弁130は、容器19内部の圧力を逃がす場合、図2(b)に示すように外側に大きく膨出する。この状態を図4では仮想線で示しているが、このときの膨出量Sを、圧力調整弁130の前に確保できることが重要である。図7で説明したように、特許文献3のものでは、傾斜した平面部110に圧力調整弁を形成しており、電気二重層キャパシタ30の厚さWが小さくなると、向かい合った圧力調整弁130、130間の距離も当然小さくなる。通常、隣接した電気二重層キャパシタ30の内圧は、同じように上昇するので、隣接した圧力調整弁130は、同時に開弁しようとする。しかし、下端で圧力調整弁130間の距離が小さいので、圧力調整弁130が開弁しようとしても互いに干渉し合って膨出できず、開弁できなくなっていた。
【0055】
これに対し、本発明の電気二重層キャパシタ30では、図4に示す電気二重層キャパシタ30の厚さWを小さくした場合でも、背面210と前面220との間の距離L1を小さくすることが可能となり、圧力調整弁130、130の間の距離L2を2S以上確保することができる。したがって、両側の圧力調整弁130が同時に膨出して開弁動作をすることができる。
【0056】
なお、この膨出量Sは、圧力調整弁130が動作する設定圧力を低くすれば、膨出量Sも小さくすることができる。したがって、圧力調整弁130の前の空間を小さくすることが可能となる。しかし、設定圧力を低くすると、圧力調整弁130の動作回数が増加することになる。圧力調整弁130が開弁すると、電解液14も少しずつ蒸発して圧力調整弁130から外に出てしまい、電気二重層キャパシタとしての寿命が短くなってしまう。このような理由から、設定圧力はなるべく高くすることが望ましく、膨出量Sも大きい値が可能なようにすることが要請されている。
【符号の説明】
【0057】
11 正電極板(薄板状電極板)
12 負電極板(薄板状電極板)
13 絶縁部材
14 電解液
16 蓋体
18 リード端子
19 容器
30 電気二重層キャパシタ
100 蓋体
110 平面部
130 圧力調整弁
131 ガス透過膜
132 ガス抜き弁
135 長円
200 蓋体
210 背面
220 前面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄板状電極板と、各電極板間に挿入されて電極板間を絶縁する薄板状の絶縁部材とを積層した積層体と、シート状部材からなり前記積層体を収容する容器と、該容器内に充填される電解液と、前記容器の開口を覆う蓋体と、該蓋体に穿設された挿通孔に挿通され、前記電極板に接続される正負極のリード端子とを有する電気二重層キャパシタにおいて、前記蓋体が、前記容器の一面側の背面と、該背面と平行な前面とを有し、前記背面と前面との間の距離が、容器の前記一面からこの一面に対向する対向面までの距離より小さく、かつ、蓋体の中心と容器の前記一面とこの一面に対向する対向面との中心とがずれており、前記蓋体の前記前面の背面と平行な部分に形成され、外側に膨出することで開弁する圧力調整弁を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記蓋体の背面が、前記容器の一面とほぼ面一になることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記前面が前記背面より短く、前記前面の終端から前記容器の前記対向面に達する傾斜面を前記前面に延設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記蓋体は、前記容器のシート状部材により覆われ、前記圧力調整弁が前記蓋体に穿設された貫通孔と、前記シート状部材に穿設された孔と、該孔に設けられたガス抜き弁とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記蓋体の前記リード端子が挿通される前記挿通孔の縁部に、リード端子の補強部を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記圧力調整弁が、前記正負極のリード端子の間に形成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−35049(P2011−35049A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177766(P2009−177766)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】