説明

電気二重層キャパシタ

【課題】活性炭を分極性電極として利用した電気二重層キャパシタにおいて、大規模な製造設備を必要とすることなく且つ製造コストを安く抑えることが可能な大容量の電気二重層キャパシタを提供することを課題としている。
【解決手段】活性炭を用いた分極性電極3と、集電極1と、セパレータ2と、水系の電解液6とを、収容体7内に収容した電気二重層キャパシタにおいて、前記分極性電極3である活性炭と、鉄製の前記集電極1と、前記電解液6となる水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液或いはこれらの混合物とを、収容体7内に密閉した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分極性電極に活性炭を用いた電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電解液に導体が接すると、電解液と導体の界面にプラス電荷の層とマイナス電荷の層とからなる電気二重層が形成される。この現象を利用して電気エネルギーを蓄えるものが電気二重層キャパシタである。電気二重層キャパシタは、急速充電が可能であるとともに、従前の二次電池と比較して充放電を繰返しても劣化することが殆どないという優れた特性を有する一方で、リチウム電池等の二次電池と比較して蓄えられるエネルギー容量が小さいという欠点を有している。
【0003】
これに対して、近年は電気二重層キャパシタでは、表面積の大きい活性炭を分極性電極として利用し、電極と電解液との接触面積を大きくすることにより、静電容量の大容量化を図るものが広く知られている。具体的には、活性炭をシート状に成形することにより、分極性電極として用い、該分極性電極、集電極及びセパレータを電解液に浸漬させて収容体に格納した電気二重層キャパシタが従来公知である。
【0004】
このような電気二重層キャパシタでは、有機系電解液(非水系電解液)を用いることが多いが、有機系電解液の場合、水分が混入すると品質が著しく劣化するため、湿度等が最適に管理された室内で製造を行う必要があり、大規模で高価な設備が必要になる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、水系の電解液を用い、大規模な製造設備を必要とすることなく、製造することができる特許文献1に記載の電気二重層キャパシタが開発され公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−299185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記文献の電気二重層キャパシタは、分極性電極に活性炭を用いるとともに、水系の電解液を選択することによって、電気二重層キャパシタのコストを下げているが、集電極の材料にステンレス鋼、ニッケル、チタン等の高価な部材を用いるため、結局全体のコストが高くなる。
【0008】
本発明は、活性炭を分極性電極として利用した電気二重層キャパシタにおいて、大規模な製造設備を必要とすることなく且つ製造コストを安く抑えることが可能な大容量の電気二重層キャパシタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、第1に、活性炭を用いた分極性電極3と、集電極1と、セパレータ2と、水系の電解液6とを、収容体7内に収容した電気二重層キャパシタにおいて、前記分極性電極3である活性炭と、鉄製の前記集電極1と、前記電解液6となる水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液或いはこれらの混合物とを、収容体7内に密閉したことを特徴としている。
【0010】
第2に、繊維物質を炭化して及び賦活することにより得られる活性炭を、分極性電極3として用いることを特徴としている。
【0011】
第3に、上記繊維物質が、セルロース繊維からなることを特徴としている。
【0012】
第4に、上記セルロース繊維が、木綿であることを特徴としている。
【0013】
第5に、上記繊維物質が、シート状の不織布又は織布か、或いは綿状物質であることを特徴としている。
【0014】
第6に、前記収容体7内の空気を排出することにより、収容体7内を低圧又は真空状態としたことを特徴としている。
【0015】
第7に、前記収容体7内が、不活性ガス雰囲気となることを特徴としている。
【0016】
第8に、前記収容体7を、フレキシブルな袋体で構成したことを特徴としている。
【0017】
第9に、集電極1と電気的に接続された端子22を収容体7の内外で挿通させる挿通口23を前記収容体7に形成したことを特徴としている。
【0018】
第10に、端子22が挿通された挿通口23の隙間をシールすることにより、収容体7を密閉したことを特徴としている。
【0019】
第11に、収容体7内を電解液で満たしたことを特徴としている。
【0020】
第12に、収容体7に満たした電解液の液面に、該電解液に溶けない耐アルカリ性の材料からなる密閉層10を形成することにより、収容体7を密閉したことを特徴としている。
【0021】
第13に、前記密閉層10を、パラフィン又は蝋によって構成したことを特徴としている。
【0022】
第14に、密閉層10と収容部7との間に接着剤を介在させて両者を接着したことを特徴としている。
【0023】
第15に、密閉層10の上面に前記接着剤の層を積層させてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
上記構成によれば、電気二重層キャパシタを、分極性電極である活性炭と、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液等からなる電解液と、鉄製の集電極とを収容体に密閉して製造したものによれば、大規模な製造設備が不要になり、製造コストを低く抑え且つ高容量なキャパシタを得ることができるとともに、集電極に用いた鉄の錆びによる劣化を効率良く抑制できる。
【0025】
また、繊維物質、特に木綿等のセルロース繊維を炭化及び賦活することにより得られる活性炭を分極性電極として用いるものによれば、分極性電極の含浸性が良好になり、分極性電極に十分な電解液を含有させることが可能になるため、該分極性電極と、集電極と、電解液との組合せの効果がより高まり、より高性能なキャパシタを製造できる。
【0026】
さらに、収容体内を、空気を排出して低圧状態又は真空状態とするか、或いは、不活性ガス雰囲気とすることにより、より確実に集電極の錆びを防止できる。
【0027】
また、収容体に満たした電解液の液面にパラフィン又は蝋よりなる密閉層を形成することにより、収容体を密閉したことにより、該電解液を収容体内に封止する場合、水系の電解液の液面側に溶けた状態のパラフィン又は蝋を注入することにより容易に密閉層を形成できるので、電解液を収容体内に封止する作業の効率が向上する。
【0028】
さらに、密閉層と外装ケースとの間に接着剤を介在させて両者を接着し、また必要に応じて、密閉層の上面に前記接着剤の層を積層させれば、密閉層が収容体の内面から剥離することも効率的に防止され、電解液の密閉状態を安定的に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)は、電極部の構成を示す斜視図であり、(B)は、電気二重層キャパシタの構成を示す概念図である。
【図2】コンデンサを並列接続した例を示す電気二重層キャパシタの概念図である。
【図3】キャパシタユニットを直列接続した例を示す概念図である。
【図4】電気二重層キャパシタの密閉手段を示した要部概念図である。
【図5】電気二重層キャパシタの他の実施形態を示した側面図である。
【図6】電気二重層キャパシタの他の実施形態を示した正面図である。
【図7】電気二重層キャパシタの他の実施形態を示したA−A断面図である。
【図8】端子の取付態様を示した側面部分拡大図である。
【図9】他の実施形態の電気二重層キャパシタを直列接続した例を示した図である。
【図10】(A)は、電気分解時の電圧を測定するための測定系を示した模式図であり、(B)は、電気分解時の電流と電圧の関係を示した図である。
【図11】集電極と電解液の組合せにおける電気分解時の比較を示した図である。
【図12】電気二重層キャパシタの実施例を示した図である。
【図13】(A)は、電気二重層キャパシタの充放電特性の測定回路を示した回路図であり、(B)は、電気二重層キャパシタの充放電特性を示す波形図である。
【図14】集電極、電解液及び活性炭の組合せに係る電気二重層キャパシタをそれぞれ比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、分極性電極として用いる繊維状の活性炭として木綿の炭化処理によって得られた木綿活性炭を利用し、電解質として水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を選択するとともに集電極の材質として鉄を選ぶことによって、大規模な製造設備を必要とすることなく、大容量で高品質の電気二重層キャパシタを低コストで製造できること見出し、これを発明した。
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1(A)は、電極部の構成を示す斜視図であり、(B)は、電気二重層キャパシタの構成を示す概念図である。電気二重層キャパシタは、平行又は略平行状態で対向する一対の板状の集電極1,1と、該一対の集電極1間に配置されたシート状のセパレータ2と、セパレータ2と一対の集電極1との間にそれぞれ介挿された一対のシート状の分極性電極3,3と、ボックス状に形成された一端面が開放された外装ケース(収容体)7と、電解液6と、外装ケース7の開放端側を密閉状態で閉塞して電解液等の漏れを防止する閉塞蓋8とを備えている。ちなみに、集電極1とセパレータ2と分極性電極3は隣接するもの同士が互いに密着状態で接しており、電極部を形成している。なお、積層した電極部を丸めて円筒型としても良い。
【0032】
前記集電極1は、上述したように一対設けられ、その一方が負極、他方が正極になる。各集電極は、閉塞蓋8を貫通して一部が外装ケース7の外側に突出し、端子1aを構成している。この一対の端子1aを介して外部の電源やオルタネータから電力を供給するとともに、蓄積した電力を外部へ供給する。
【0033】
板状の集電極1についてさらに詳述すると、集電極用金属(本実施例では鉄)をそのまま板状にしたものを用いてもよいが、コスト等の面を考え、合成又は天然樹脂製板を被コーティング板として用い、メッキ等の表面処理加工によって、上記集電極用金属を、該被コーティング板の表裏面(表面)全体に数ミクロン以上の厚みで、コーティングしても良い。言換えると、板状の集電極1の少なくとも表層側を鉄によって構成している。
【0034】
上述の集電極には、比較的に安価な鉄(Fe)を用いているが、集電極として用いた鉄は、空気中で酸化し易いため、外装ケース7内を密閉することにより、集電極の酸化を抑制する。より詳しくは、密閉した外装ケース7内の隙間16に、上記のように不活性ガスを充填するか、空気が入らないように低圧若しくは真空状態とするか、或いは、密閉した外装ケース7内に隙間16が生じないように電解液6で満たすように構成することにより、集電極1に用いた鉄が錆びることを効率的に防止できる。具体的な構成については後述する。
【0035】
この板状の集電極1における分極性電極3と接する側の表面には、該分極性電極3として用いる活性炭に形成された無数の細孔のサイズに応じた(細孔のサイズに近い)図示しない凹凸が形成されている。具体的には、該集電極の前記表面に0.1mm〜数mm程度の細孔を複数形成する。
【0036】
なお、繊維状の樹脂シートを被コーティング板として用いた場合、この表面に集電極用金属をコーティングすることにより表面に自然に上記大きさの凹凸が形成される。この他、集電極用金属からなる金属線又は集電極用金属をメッキした金属線を編みこんで網状シートを形成し、この網状シートを板状の集電極1として用いれば、該集電極1の表面にも上述の凹凸が形成される。
【0037】
前記電解液6としては、水系の電解液であって濃度が10〜40重量%の水酸化カリウム水溶液か、或いは濃度が10〜30重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる。ちなみに、強アルカリとなる電解液6は、塩酸等によって容易に中和処理できるため、使用後も安全に廃棄することができ、環境負荷も少ない。
【0038】
前記分極性電極3に説明すると、セルロース繊維を主成分とするシート状部材として、シート状の木綿(さらに具体的には、木綿製織物や木綿製不織布等)を用い、該シート状の木綿を、炭化処理することにより得られる木綿炭に対して、ガス賦活又はアルカリ賦活処理を行うことによりシート状の木綿活性炭(以下、単に活性炭)を得る。このシート状の活性炭を、そのまま、或いは適当な大きさに裁断して上述した分極性電極3に用いる。なお、分極性電極3には、上記繊維状の活性炭の他、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、石炭タール、石油ピッチからつくるピッチ系炭素繊維、レーヨンやフェノール等からなる炭素繊維等を用いることができる。以下、ガス賦活の場合と、アルカリ賦活の場合に分けて、分極性電極3に用いる活性炭の製造方法を詳述する。
【0039】
まず、ガス賦活処理による製造方法について詳述すると、シート状の木綿を設置した乾留炉において、300〜800℃(好ましくは400〜800℃)まで昇温させ、その状態で25分〜8時間保持した後に、常温まで降温させることによりシート状木綿炭を得る。続いて、上記木綿炭を設置した管状炉に、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下において、水蒸気、炭酸ガス又はこれらの混合気体を注入しながら、450〜950℃まで昇温し、この状態を25分〜8時間保持するガス賦活を行い、シート状の活性炭を得る。
【0040】
一方、アルカリ賦活処理による製造方法について詳述すると、シート状の木綿を設置した乾留炉において、400℃〜1200℃まで昇温させ、その状態で5分〜20時間保持した後に、常温まで降温させることによりシート状木綿炭を得る。ちなみに、950℃以上の温度で炭化処理を行うと後述の賦活速度が遅くなり、処理に時間がかかる。続いて、上記木綿炭をアルカリ賦活処理するには、窒素ガス、アルゴンガス又はこれらの混合物等の不活性ガスと、電解液に使用するものと同一種類の水溶液(具体的には、水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0041】
詳しくは、電解液に用いるものと同一種類の水溶液を、上記のシート状木綿炭の重量に対して1.5〜4倍程度用意し、これを、シート状木綿炭に加えて十分吸着させる。その後、不活性ガス雰囲気下において、加熱処理を行うことによってアルカリ賦活処理を行い、シート状の活性炭を得る。この加熱処理は、木綿炭に吸着させた水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液が急激に蒸発することを防ぐため、室温から150℃までは、毎分2℃で昇温させる。そして、150℃から所定の賦活温度までは、毎分5℃で昇温させる。このときの賦活温度は、500〜1000℃程度とする。加熱処理は10分〜6時間程度行う。
【0042】
なお、このように、電解液6に用いるものと同一のものを用いてアルカリ賦活処理を行うことにより、賦活処理によって得られた活性炭を、そのまま電解液6に浸すことが可能になるため、酸洗浄による中和処理や、イオン交換水による繰返しの洗浄処理や、乾燥処理が不要になる。
【0043】
このようにして得られた分極性電極用のシート状の活性炭は、活性炭粉末又はニッケル粉末を混合して得られた導電性を有する導電接着剤によって、上述した集電極1に接着させるか、或いは、集電極1と分極性電極3とを任意の手段によって圧着させて両者を密着させることにより、良好な特性を得ることが可能になる。
【0044】
ちなみに、上記導電接着剤は、スチレンブタジエンゴム(43%)をジクロヘキサン、アセトン又はこれらの混合物等の有機溶剤(57%)で溶かした接着剤(商品名:コニシ株式会社製、GPクリアー)に、分極性電極3で用いる木綿から作成した活性炭を粉砕したものを重量比で1:9となるように混練することにより、導電性を付加した導電接着剤を作成する。
【0045】
そして、この導電接着剤を集電極1に塗布した後、シート状の活性炭を集電極1側へ圧着し、100℃程度の温度で2時間程かけて乾燥させることによって、導電接着剤中の有機溶剤を揮発させることにより、集電極1と活性炭からなる分極性電極3とを容易に一体化させることが可能になる。
【0046】
前記外装ケース7及び閉塞蓋8は、水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液等を電解液6に用いることから、耐アルカリ性の高いポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ゴム、パラフィン又はこれらを組合せたもので形成されたケースや袋等を用いる。
【0047】
前記セパレータ2は、ろ紙又は市販のセパレータ(さらに具体的には、セルロースとポリビニルアルコールの繊維で構成された、ニッポン高度紙工業株式会社製のセパレータ)を用いた。なお、セパレータは、耐アルカリ性であって且つ電解液が透過するシート状の部材であれば、何を用いても良い。
【0048】
次に、図2に基づき、本発明を適用した電気二重層キャパシタの他の実施形態について、上述の例と異なる点を説明する。
図2は、コンデンサを並列接続した例を示す電気二重層キャパシタの概念図である。同図に示す電気二重層キャパシタでは、外装ケース7内において、3枚以上(図示する例では5枚)の集電極1を、所定間隔を介して、互いが平行に対向するように重ね合せ方向に並べて収容し、隣接する集電極1,1間にセパレータ2を配置し、隣接するセパレータ2と集電極1との間に分極性電極3を充填状態で介在させ、該セパレータ2と集電極1とを、上述の手段により接着又は圧着させるとともに、外装ケース7内の電解液6に浸漬させている。
【0049】
端子1a同士を接続する接続回路5は、直接的に隣接せずに1つの集電極1を介して隣合う集電極1の端子1a同士を順次電気的に接続して第1取出端子とするとともに、第1接続端子セットでない残りの集電極1の端子1a同士を電気的に接続して第2取出端子とし、接続回路5の2つの取出端子の一方を負極、他方の正極として用いる。
【0050】
このように構成される電気二重層キャパシタによれば、集電極1及び分極性電極3から構成される電極の間に構成されるコンデンサCが並列接続された状態になり、集電極1及び分極性電極3の数をコンデンサCの数の2倍分設けることなく、少ない数で、全体の静電容量を増加させることが可能になる。具体的には、集電極1の数から1を減算した数(図示する例では5−1=4つ)分のコンデンサCを設けることが可能になる。
【0051】
次に、図3に基づき、本発明を適用した電気二重層キャパシタの他の実施形態について、上述の例と異なる点を説明する。
図3は、キャパシタユニットを直列接続した例を示す概念図である。同図に示す電気二重層キャパシタでは、図2に示す電気二重層キャパシタをキャパシタユニット4とし、このキャパシタユニット4を複数備え、該複数のキャパシタユニット4同士を隣接するもの同士で互いに連結して締着固定する連結具13と、複数のキャパシタユニットを直列的に接続する直列回路とを設けている。
【0052】
この構成によって、各コンデンサに印加する電圧値を、電解液6で電気分解が起こらない低い値に設定しても、電気二重層キャパシタ全体に印加する電圧を大きく設定することが可能になる。
【0053】
次に、図4に基づき、本発明を適用した電気二重層キャパシタの他の実施形態について、上述の例と異なる点を説明する。
図4は、電気二重層キャパシタの密閉手段を示した要部概念図である。同図に示す外装ケース7内に電極部及び電解液6を密閉する密閉手段として、パラフィン又はワックスエステル、具体的にはパラフィンを原料とする蝋燭の蝋(以下、単に蝋)を用いた。なお、該密閉手段に用いる材料は、耐アルカリ性を有し、所定の条件で流動性を有するとともに常温で固化し、電解液6と混ざらない材料であれば良い。
【0054】
すなわち、加熱溶融されて液化した蝋を、外装ケース7内の電解液6に滴下等によって混入すると、蝋が冷却されて凝固されつつ電解液6と分離されて液面側に浮上し、この電解液6の液面上に蝋(パラフィン)からなる密閉層10が形成される。
【0055】
このとき、ポリエチレン等で形成れた外装ケース7と前記液面上に形成した密閉層10とは接着しないため、図に示すように、密閉層10の上面側から接着剤15を塗布し、密閉層10の周面側と外装ケース7側との間を接着させることにより、電解液6等を外装ケース7内に密封することができる。なお、外装ケース7側に接着された密閉層10及び接着剤15の上面側に、熱や外力から密閉層10を保護するための保護部材として閉塞蓋8を設けることにより、より確実に密閉することができる。
【0056】
前記接着剤15には、スチレンブタジエンゴム(43%)をジクロヘキサン、アセトン又はこれらの混合物等の有機溶剤(57%)で溶かした接着剤(コニシ株式会社製、商品名:PGクリアー)を用いたが、耐アルカリ性に優れたエポキシ系接着剤等を使用しても良い。
【0057】
上記構成によって、外装ケース7の開口部分の形状、大きさ及び電解液6から取出す電極(端子)の形状を問わず、液面に蝋を滴下することにより耐アルカリ性の高い密閉層10を形成することができるため、容易に外装ケース7を密閉できるとともに、あらゆる形状の電気二重層キャパシタに利用することができて汎用性及び利便性が高い。さらに、材料費も安価な蝋を用いるため製造コストも低く抑えることができる。
【0058】
なお、該構成によれば、密閉された外装ケース7内が電解液6で満たされるため、集電極の鉄が錆び付くことを効率的に防止することができる。
【0059】
次に、図5乃至9に基づき、上述の実施形態と異なる実施形態として、外装ケースとしてフレキシブルなポリエチレン袋を用いて、外装ケース内を低圧又は真空状態に構成した電気二重層キャパシタを説明する。図5乃至7は、電気二重層キャパシタの他の実施形態を示した側面図、正面図、A−A断面図であり、図8は、端子の取付態様を示す部分測断面図である。
【0060】
外装ケースとして用いたポリエチレン袋(袋体)21の表面と裏面には、それぞれスリット(挿通口)23,23が形成されており、該スリット23には、導電性を有する部材を板状に形成した端子22,22(本実施例では鉄板)を中途部まで差込んだ状態で固定できるように構成されている。
【0061】
具体的には、図8に示すように、ポリエチレン袋21の表側と裏側に両面テープ24を貼付して、ポリエチレン袋21から露出した板状の端子22とポリエチレン袋21外面側とを接着し、ポリエチレン袋21内に挿通された板状の端子22とポリエチレン袋21内面側とを接着させることにより、端子22をポリエチレン袋21側に固定している。さらに、ポリエチレン袋21に形成したスリット23よりも一回り大きいポリプロピレンテープ等の撥水性を有する接着テープ(シール)26を、スリット23を覆うようにポリエチレン袋21の外側と内側とから貼付けている。
【0062】
これにより、前記両面テープ24及び接着テープ26は、スリット23からポリエチレン袋21内の電解液が流出しないように封止しており、端子22の上部側は、ポリエチレン袋21の外側に露出するとともに、端子22の下部側は、ポリエチレン袋21の内側に挿通された状態となる。
【0063】
前記ポリエチレン袋21の上端側には内部と連通する開口部が形成されており、一対の端子22を取付固定したポリエチレン袋21内に、上述の電気二重層キャパシタと同様、鉄板(集電極)1,シート状の活性炭(分極性電極)3,シート状のセルロース(セパレータ)2,シート状の活性炭3,鉄板1の順に積層して板状に形成したものを挿入する。このとき、ポリエチレン袋21内に挿通された前記端子22の内側の面と、集電極1の外側の面とが当接するように構成している。
【0064】
また、ポリエチレン袋21内のセパレータ2と、該セパレータ2を挟む一対の活性炭3とには、内部の無数の孔によって形成された空隙に、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液(電解液)を十分に含漬させた。すなわち、集電極1は、分極性電極3と接触する側の面のみ電解液6と接触する構成となっている。
【0065】
次に、集電極1、分極性電極3、セパレータ2及び電解液6を格納したポリエチレン袋21の開口部全体を、熱圧着させて上端圧着部27を形成することにより、ポリエチレン袋を密封する。なお、開口部を熱圧着する際には、真空ポンプを用いてポリエチレン袋21内の空気を抜いた状態で密封させることにより、外装ケース7内に空気が入らないように構成した電気二重層キャパシタを組立てることができる。
【0066】
なお、前記構成の電気二重層キャパシタを、板状の集電極1よりも一回り大きい一対の圧縮板(図示しない)で挟むとともに、Cクランプ等を用いてこの一対の圧縮板を介して電気二重層キャパシタを加圧することにより、鉄板とシート状の活性炭との間(集電極と分極性電極の間)の接触抵抗を低減させることができる。
【0067】
ここで、電気二重層キャパシタ内の内部抵抗を軽減させるために、一対の集電極1間を押圧することによって、シート状の活性炭3及びセパレータ2からポリエチレン袋21内に染み出た水酸化ナトリウム水溶液等の電解液6は、ポリエチレン袋の上端圧着部27側と反対側の端部(以下、排出部)の一部を切断することにより、ポリエチレン袋21外へ排出できる。その後、真空ポンプによりポリエチレン袋21内を低圧又は真空状態にしつつ、ポリエチレン袋21内と連通する排出部全体を加熱圧着させて下端圧着部28を形成することにより、再びポリエチレン袋内を密封する。
【0068】
なお、真空ポンプでポリエチレン袋21内を低圧又は真空状態にするのではなく、内部が窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換されたグローブボックス(図示しない)内で上述の電気二重層キャパシタの作成を行い、ポリエチレン袋21内の隙間を不活性ガスで置換した電気二重層キャパシタとしても良い。
【0069】
上記構成により、電気二重層キャパシタの充放電は、一部が集電極と当接している端子22から行うことができる。また、ポリエチレン袋21内を低圧又は真空状態、或いは不活性ガスを充填したことにより、ポリエチレン袋21内の端子22は、鉄板(集電極)の酸化による劣化が抑制されるとともに、ポリエチレン袋21を極力薄くして電気二重層キャパシタ全体をよりコンパクトにすることができる。
【0070】
図9は、他の実施形態の電気二重層キャパシタを直列接続した例を示した図である。図9の電気二重層キャパシタは、図5乃至8に示す電気二重層キャパシタをキャパシタユニット29とし、このキャパシタユニット29を複数個と、板状のキャパシタユニット29を重ねた状態でボルト等によって締付固定する連結具13とを備え、隣合うキャパシタユニット29から突出する端子22同士を当接させた状態で固定することにより、複数の電気二重層キャパシタを容易に直列接続することができる。
【0071】
なお、上述の例では、ポリエチレン袋21内の集電極1と、端子22とを別体で構成したものを示したが、該端子22は、集電極である鉄板と一体形成される構成であっても良い。
【0072】
次に、図10及び図11に基づいて上述の電解液の特性を調べる実験について説明する。
【0073】
図10(A)は、電気分解時の電圧を測定するための測定系を示した模式図であり、図10(B)は、電気分解時の電流と電圧の関係を示した図である。
【0074】
図10(A)より、実験用の電気二重層キャパシタは、セパレータ2の両側に集電極1を配置して分極性電極3を省略した電極を形成し、該電極の外側からアクリル板9(厚さ2mm×幅30mm×長さ40mm)で挟んだ状態で加圧し、ポリカーボネートのボルトナット11で固定した。この電極は、2枚の集電極1がそれぞれ正極と負極の電極となっており、集電極1の上部側を3枚のポリプロピレンの板12の間に挟むことによって、電解液6を満たした容器7(外装ケース)内に電極を保持するように構成されている。また、回路図には、可変定電圧電源と、電流計と、電圧計と、スイッチとを備えている。
【0075】
図10(B)より、電解液6として水系の電解液を用いた場合、上記回路に段階的に高い電圧を印加していくと、所定の電圧(Vs)になった時に電解液6が電気分解する。このとき、電圧の上昇が止まるとともに、回路内に電流が流れるようになる。以下、本実験において比較した電解液について電気分解の起こらない非水系の電解液と電気分解の起こる水系の電解液とに分けて説明する。
【0076】
まず、非水系の電解液として、過塩素酸リチウム(LiClO)をプロピレンカーボネート溶媒に溶かした1mol/Lの非水系電解液を用いた。また、集電極1には、電解液6と集電極1のイオン化傾向を考慮して、集電極1の正負側をともに銅(Cu)を用いた。このとき、前記容器内の相対湿度を測定し、作業中に容器内の相対湿度が常に10%RH以下になるよう調節した。
【0077】
該実験では、電解液に電極を浸漬した直後に電圧1Vで充電すると、電気二重層キャパシタの動作が観測されるが、浸漬後に数分経過すると、電気二重層キャパシタの内部抵抗が大きくなって充電時に電流が流れなくなり、これに伴って充電後の自己放電が大きくなる。詳しくは、電極部を電解液に浸漬した数秒後には、自己放電の電圧が0.4V以上になり、電解液浸漬直後に3F程度あった静電容量は、数十分後には1F以下となった。また、放電時には急激な電圧低下が起こり、静電容量がほとんど測定できなかった。
【0078】
上記結果より、過塩素酸リチウム中での測定結果から、水分によって電解液の特性が変化していると考えられる。そのため、電気二重層キャパシタの電解液として非水系の有機溶媒を使用するためには、湿気等の水分を完全に遮断しながら作業できる環境を整えなければ、安定した電気二重層キャパシタを製造することは困難である。次に水系電解液について検討する。
【0079】
次に、水系の電解液として、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、水酸化カリウム(KOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)を比較実験する。なお、電解液6の濃度については、電気二重層キャパシタに用いることを考慮して、伝導率が最も高くなる濃度にして実験を行った。なお、印加する電圧は、0.1V刻みで印加し、水の電気分解電圧(1.23V)よりも若干低い1.1Vまで測定を行った。
【0080】
前記集電極1には、正極及び負極側に銅(Cu)、ニッケル(Ni)を用いたケースと、正極側にニッケル(Ni)を用い、負極側にコバルト(Co)若しくは鉄(Fe)を用いたケースとで実験を行った。
【0081】
図11は、集電極と電解液の組合せにおける電気分解時の比較を示した図である。図より、電解液として塩酸を用いた場合には、0.5Vを印加した時点で電極から気泡が発生し、硫酸を用いた場合には、0.8Vを印加した時点で電極から気泡が発生したことが確認された。このため、水が電気分解される電圧(約1.23V)よりも小さな(5〜6割程度の)電圧で電気分解が生じていることが確認できる。また、水酸化カリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には、1.1Vの電圧が印加されても電極に気泡の発生が観測されず、電気分解は起こらなかった。
【0082】
すなわち、電解液6として塩酸、硫酸を用いると、電気分解を起こさずに印加できる電圧の最大値が低くなるため、電気二重層キャパシタの電解液としては好ましくないことが確認された。上記実験結果より、本実施例では電解液として、作業環境中の湿度を調節する必要のない水系の電解液であって、極力電気分解し難い水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を使用した。
【0083】
なお、前記セパレータ2は、ろ紙を用いても、市販のセパレータ(ニッポン高度紙工業株式会社製)を用いても結果に大きな差は生じなかった。
【0084】
次に、図12乃至14に基づいて実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0085】
図12は、電気二重層キャパシタの実施例を示した図である。図より、本実施例の電気二重層キャパシタは、セパレータ2の両側に分極性電極を配置するとともに、該分極性電極の両外側に集電極を配置することにより電極部を形成し、該電極部の外側からアクリル板9(厚さ2mm×幅30mm×長さ40mm)で挟んだ状態で加圧し、ポリカーボネートのボルトナット11で固定した。この電極部は、集電極2枚がそれぞれ正極側と負極側の電極となっており、集電極の上部側を3枚のポリプロピレンの板12の間に挟むことによって、電解液を満たした容器7(外装ケース)内に電極部を保持するように構成されている。
【0086】
前記集電極1には、陽極側の集電極にニッケル(Ni)を用い、陰極側の集電極にニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ステンレス(SUS304)、鉄(Fe)を用いた組合せを比較する他、イオン化傾向が小さな金属として、貴金属である金(Au)、銀(Ag)を集電極として使用した場合についても検討した。
【0087】
前記電解液6には、水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を用いるとともに、それぞれ濃度を変更した電気二重層キャパシタを作成し、電解液の使用に適した濃度について検討した。
【0088】
前記分極性電極3には、ガス賦活又はアルカリ賦活により得られたシート状の活性炭を粉砕等することなく、そのまま、或いは適当な大きさに裁断して使用した。以下、本実施例で用いた分極性電極の製造方法を、ガス賦活処理の場合と、アルカリ賦活処理の場合に分けて説明する。
【0089】
まず、ガス賦活処理による製造方法について詳述すると、シート状の木綿を設置した乾留炉において、毎分5℃の割合で450℃まで昇温し、その状態で60分保持した後に、常温まで降温させることにより炭化収率25.1%の木綿炭を得る。
【0090】
続いて、3gの上記木綿炭を設置した管状炉に窒素ガスを250ml/分で注入しながら、毎分5℃の割合で500℃まで昇温し、その状態で10分保持する。その後、炭酸ガスを300ml/分で注入しながら、毎分5℃の割合で850℃まで昇温し、その状態で90分間保持する。賦活終了後、降温しながら、500℃で炭酸ガスの注入を止め、窒素ガスのみで常温まで降温することにより、シート状の活性炭を得る。
【0091】
次に、アルカリ賦活処理による製造方法について詳述すると、シート状の木綿を設置した乾留炉において、450℃〜950℃まで昇温させ、その状態で25分〜8時間保持した後に、常温まで降温させることにより、電気二重層キャパシタ用電極に適した炭化収率7〜18%のシート状木綿炭を得る。
【0092】
続いて、アルカリ賦活処理は、濃度が40%の水酸化カリウム水溶液を用いて不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスには、窒素ガスやアルゴンガスを用いた。該アルカリ賦活処理は、シート状の木綿炭の重量に対して水酸化カリウム水溶液の重量が1.5〜4倍程度用意し、該水酸化カリウム水溶液を、シート状木綿炭に加えて十分吸着させ、その後に加熱処理することにより行われる。なお、上記電解液6において、水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合には、アルカリ賦活処理にも水酸化ナトリウム水溶液を用いる。
【0093】
該加熱処理は、木綿炭に吸着させた水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液が急激に蒸発することを防ぐため、室温から150℃までは、毎分2℃で昇温させる。そして、150℃から所定の賦活温度までは、毎分5℃の割合で昇温させる。このときの賦活温度は、500〜1000℃程度とするが、処理装置への負荷や賦活処理の過程で生じる還元カリウムの飛散等を考慮すると、賦活温度を特に、600〜800℃程度にすることが望ましい。加熱処理は6分〜6時間程度行う。これにより、シート状の活性炭を得る。
【0094】
図13より、上記により構成された電気二重層キャパシタの静電容量を計測する回路について説明する。まず、集電極として銅を用いた電気二重層キャパシタを該測定回路に適用して電気二重層キャパシタの放電特性を計測した。
【0095】
図13(A)は、電気二重層キャパシタの充放電特性の測定回路を示した回路図である。図より、該測定回路は、電流制限の設定が可能な定電圧電源と、電流測定のための抵抗であって0.1Ωの低抵抗オーム(R、R)と、放電のための抵抗であって10Ωの放電抵抗(R)と、スイッチ1(SW1)と、スイッチ2(SW2)とを含む配線とで構成されており、上記実験対象の電気二重層キャパシタを、該測定回路に設置する。
【0096】
図13(B)は、電気二重層キャパシタの充放電特性を示す波形図である。図13より、スイッチ1をONにすると、電気二重層キャパシタに電源が接続されるので、充電電流Icが流れ、電気二重層キャパシタが充電される。充電されると、電気二重層キャパシタの両端の電圧(V)は電源電圧と同じ1Vまで上昇する。このとき、充電電流は、1Aに制限されているため、1Aが上限となり、電気二重層キャパシタの両端の電圧が1Vに近づくに従って減少する。充電完了後にスイッチ1をOFFにすると、電気二重層キャパシタの両端の電圧が時間経過とともに徐々に減少する(ΔVSD)。この現象は、電解液内の不純物等によって起こると考えられている。
【0097】
次に、スイッチ2をONにすると、電気二重層キャパシタは、放電抵抗Rに接続され、電気二重層キャパシタに蓄えられた電荷を放電する。これにより、スイッチ2をONした直後に、電圧降下(ΔV)が測定される。このとき、電気二重層キャパシタ両端の電圧V(t)は、放電電圧Vと、充電電圧Vと、負荷抵抗Rと、時間tと、静電容量Cとの間に以下の関係が成り立つ。
【0098】
【数1】

【0099】
これにより、τ/R=Cとなり、電気二重層キャパシタの静電容量Cを求めることができる。また、r=ΔV/I−0.1となり、電気二重層キャパシタの内部抵抗rも測定できる。該算定式で0.1を減ずるのは、充電時の電流測定用の低抵抗オーム(R)の分を減じている。上記測定回路を用いて、本実施例の電気二重層キャパシタにおける、集電極と、電解液と、分極性電極との組合せについて静電容量等の比較を行う。
【0100】
図14は、集電極、電解液及び活性炭の組合せに係る電気二重層キャパシタをそれぞれ比較した図である。図より、No1乃至8、及びNo13では、炭化処理の後に上記ガス賦活を行ったものであり、No9は、電解液として水酸化ナトリウム水溶液を用いるとともに、同じ水酸化ナトリウム水溶液を用いて上記アルカリ賦活を行ったものであり、No10乃至12は、電解液として水酸化カリウム水溶液を用いるとともに、同じ水酸化カリウム水溶液を用いて上記アルカリ賦活を行ったものである。
【0101】
図より、No4の集電極に銅を用いるとともに、電解液として水酸化カリウム水溶液を用いた場合には、陽極側の電極において水酸化銅が発生するとともに、電解液の界面に酸化銅が発生した。これによって電解液内の不純物が増大するため、電気二重層キャパシタ内の内部抵抗が大きくなり、静電容量も低下した。
【0102】
また、No5より、陰極側の集電極としてステンレスを用いた場合、電気二重層キャパシタ内の内部抵抗が増大した。なお、No6より、陽極側・陰極側ともにステンレスを用いた場合、電極が褐色に変化するとともに静電容量が劣化し、自己放電が増大した。さらに、No13より、陽極側・陰極側ともに鉄を用いた場合、集電極が電解液から空気中に出た部分で酸化が確認された。しかし、これについては外装ケース内を電解液で満たした状態で密閉等することにより回避できる。したがって、集電極には、製造コストの削減とキャパシタの高容量化とが両立可能な鉄を用いた。
【0103】
上記結果より、水酸化カリウム水溶液の濃度を変更した場合においては、10〜40%において良好な結果が得られ、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を変更した場合においては、10〜30%で良好な結果が得られた。また、集電極においては、銅やステンレスでは高性能な電気二重層キャパシタは得られず、集電極の正極側及び負極側にニッケルを用いるか、或いは正極側にニッケルを用い、負極側にコバルトを用いることが好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0104】
1 集電極
2 セパレータ
3 分極性電極
6 電解液
7 外装ケース(収容体)
10 密閉層
21 ポリエチレン袋(袋体)
22 端子
23 スリット(挿通口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を用いた分極性電極(3)と、集電極(1)と、セパレータ(2)と、水系の電解液(6)とを、収容体(7)内に収容した電気二重層キャパシタにおいて、前記分極性電極(3)である活性炭と、鉄製の前記集電極(1)と、前記電解液(6)となる水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液或いはこれらの混合物とを、収容体(7)内に密閉した電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
繊維物質を炭化及び賦活することにより得られる活性炭を、分極性電極(3)として用いる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
上記繊維物質が、セルロース繊維からなる請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
上記セルロース繊維が、木綿である請求項3に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
上記繊維物質が、シート状の不織布又は織布か、或いは綿状物質である請求項4に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記収容体(7)内の空気を排出することにより、収容体(7)内を低圧又は真空状態とした請求項1乃至5の何れかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
前記収容体(7)内が、不活性ガス雰囲気となる請求項1乃至5の何れかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
前記収容体(7)を、フレキシブルな袋体(21)で構成した請求項1乃至7の何れかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項9】
集電極(1)と電気的に接続された端子(22)を収容体(7)の内外で挿通させる挿通口(23)を前記収容体(7)に形成した請求項8に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項10】
端子(22)が挿通された挿通口(23)の隙間をシールすることにより、収容体(7)を密閉した請求項9に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項11】
収容体(7)内を電解液で満たした請求項1乃至5の何れかに記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項12】
収容体(7)に満たした電解液の液面に、該電解液に溶けない耐アルカリ性の材料からなる密閉層(10)を形成することにより、収容体(7)を密閉した請求項11に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項13】
前記密閉層(10)を、パラフィン又は蝋によって構成した請求項12に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項14】
密閉層(10)と収容体(7)との間に接着剤を介在させて両者を接着した請求項13に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項15】
密閉層(10)の上面に前記接着剤の層を積層させてなる請求項14に記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−48213(P2013−48213A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131996(P2012−131996)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【出願人】(506410051)株式会社佐藤工務所 (3)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【Fターム(参考)】