説明

電気二重層コンデンサ

【課題】陽極体や陰極体、セパレータに大きなストレスをかけることなく、内部抵抗を低減できる電気二重層コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明の電気二重層コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子1をケースに収容したものである。コンデンサ素子1は、陽極体5、セパレータ61,62および陽極体7を積層して巻回したものである。陽極体5は、陽極集電体51,52に固定された陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bを有している。陽極体7は、陰極集電体71,72に固定された陰極集電タブを有している。対をなす陽極集電タブ55A,55B(56A,56B)どうし、対をなす陰極タブどうしは、陽極体5および陽極体7の非巻回状態において互いに位置ずれしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に利用される電気二重層コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサは、固体電極と電解質溶液のように2つの異なる相が接触する界面に、正、負の電荷が非常に短い距離で配列した層(電気二重層)が形成される現象を蓄電に利用した蓄電デバイスである。この電気二重層コンデンサは、数十ミリファラッドから数千ファラッド以上の非常に大きな静電容量を有し、充放電サイクル特性(寿命)や急速充放電にすぐれた特徴をもっている。そのため、電気二重層コンデンサは、機器の電源OFF時のリアルタイムクロックやメモリICの動作を保持するための電力供給源としてのバックアップ電源、あるいは機器のアクチュエータ・モーター等の起動・運転時の電力のアシスト・供給用電源として使用されている。
【0003】
図9および図10に示したように、電気二重層コンデンサYは、電解液を含浸させたコンデンサ素子8をケース90に収容し、ケース90の上部開口91を絶縁部材92で封止した構造を有している。
【0004】
図11および図12(a)からわかるように、コンデンサ素子8は、陽極体80、セパレータ81、陰極体82およびセパレータ83をこの順序で積層した状態で円筒状に巻回された構造を有している。陽極体80は、分極性電極層86A,87Aが形成された2枚の陽極集電体84A,85Aを、これらの陽極集電体84A,85Aにおける分極性電極層86A,87Aが形成されていない面どうしを接触させた構成を有している。陰極体82は、陽極体80と同様に、分極性電極層86B,87Bが形成された2枚の陰極集電体84B,85Bを互いに接触させた構成を有している。
【0005】
図10および図12(b)に示したように、陽極体80は、絶縁部材92に固定された外部端子93Aと、陽極集電体84A,85Aとの間の導通を図るための陽極タブ88A,89Aをさらに有している。陽極タブ88A,89Aは、陽極集電体84A,85Aにおける分極性電極層86A,87Aが形成されていない面に取り付けられている。
【0006】
図10および図12(c)に示したように、陰極体82は、陽極体80と同様に、絶縁部材92に固定された外部端子93Bと、陰極集電体84B,85Bとの間の導通を図るための陰極タブ88B,89Bをさらに有している。陰極タブ88B,89Bは、陰極集電体84B,85Bにおける分極性電極層86B,87Bが形成されていない面に取り付けられている。
【0007】
図12(b)、図12(c)および図13に示したように、陽極タブ88A,89Aあるいは陰極タブ88B,89Bどうしは、位置ずれすることなく対応した位置関係において、互いに接触して対をなしている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
コンデンサ素子8においては、タブ88A,88B,89A,89Bの枚数が多いほど集電ポイントが増加して内部抵抗が低減されるため、タブ88A,88B,89A,89Bの枚数は多いほうが好ましい。そのため、図9、図10、図12(b)および図12(c)に示したように、陽極体80および陰極体82のそれぞれにおいて、複数のタブ88A,88B,89A,89Bを備えたコンデンサ素子8もある(例えば特許文献2参照)。その一方で、タブ88A,88B,89A,89Bどうしが位置ずれすることなく接触する構成では、タブ88A,88B,89A,89Bの枚数が多くなると、図13から理解できるようにタブ88A,88B,89A,89Bの厚みの影響でコンデンサ素子8が真円で無くなってしまうため、取り付けられるタブ88A,88B,89A,89Bの枚数には制限があった。たとえば、集電体として厚みが20〜50μm程度の金属箔、タブとして100〜200μm程度のものを用いたコンデンサ素子8では、タブ88A,88B,89A,89Bのペア数は、小型のデバイス(φ35)で片極2つ(片極合計4本のタブ)程度、φ51以上のデバイスになると、片極4つ(片極合計8本のタブ)程度となる。
【0009】
また、タブ88A,88B,89A,89Bどうしが位置ずれすることなく接触する構成では、2枚分のタブ88A,88B,89A,89Bの厚みが一箇所に集中するため、陽極体80や陰極体82、セパレータ81,83にも大きなストレスがかかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−093859号公報
【特許文献2】特開2008−091585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、陽極体や陰極体、セパレータに大きなストレスをかけることなく、内部抵抗を低減できる電気二重層コンデンサを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の形態に係る電気二重層コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記コンデンサ素子に導通する外部陽極端子および外部陰極端子と、を備えた電気二重層コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、陽極体、セパレータおよび陰極体を積層して巻回したものであり、前記陽極体は、第1陽極集電体と、前記第1陽極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陽極集電体と、前記外部陽極端子に導通する複数の陽極集電タブ対と、を含んでおり、前記各陽極集電タブ対は、前記第1陽極集電体の前記一面に固定された第1陽極集電タブと、前記陽極体の非巻回状態において前記第1陽極集電タブとは位置ずれし、前記第2陽極集電体の前記一面に固定された第2陽極集電タブと、を有しており、前記陰極体は、第1陰極集電体と、前記第1陰極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陰極集電体と、前記外部陰極端子に導通する複数の陰極集電タブ対と、を含んでおり、前記各陰極集電タブ対は、前記第1陰極集電体の前記一面に固定された第1陰極集電タブと、前記陰極体の非巻回状態において前記第1陰極集電タブとは位置ずれし、前記第2陰極集電体の前記一面に固定される第2陰極集電タブと、を有していることを特徴としている。
【0013】
本発明の第1の形態では、陽極体および陰極体の非巻回状態において、第1陽極集電タブと第2陽極集電タブとが位置ずれし、第1陰極集電タブと第2陰極集電タブとが位置ずれしている。そのため、陽極体および陰極体の巻回状態において、対をなす第1陽極集電タブと第2陽極集電タブとの集電ポイントが一箇所に集中することなく分散し、また対をなす第1陰極集電タブと第2陰極集電タブとの集電ポイントも一箇所に集中することなく分散させることができる。したがって、本発明の第1の形態では、集電ポイントを分散させることによって、充放電時における集電体による内部抵抗を低減することができる。また、陽極体および陰極体の非巻回状態において、対をなす陽極集電タブどうし、対をなす陰極集電タブどうしが位置ずれしているため、陽極体および陰極体の巻回状態において、集電タブにおける陽極体および陰極体に対する固定部分が、互いに接触した状態で重なり合うことはない。したがって、本発明の第1の形態では、集電タブにおける陽極体および陰極体に対する固定部分において、一箇所にかかるストレスがタブ一枚分の厚みになるため、従来のように対をなす第1陽極集電タブと第2陽極集電タブとが同一箇所において接触した状態で重なり合い、あるいは対をなす第1陰極集電タブと第2陰極集電タブとが同一箇所において接触した状態で重なり合う場合に比べて、陽極体や陰極体、セパレータにかかるストレスを軽減することができる。
【0014】
本発明の第2の形態に係る電気二重層コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記コンデンサ素子に導通する外部陽極端子および外部陰極端子と、を備えた電気二重層コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、陽極体、セパレータおよび陰極体を積層して巻回したものであり、前記陽極体は、第1陽極集電体と、前記第1陽極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陽極集電体と、前記外部陽極端子に導通する複数の陽極集電タブ対と、を含んでおり、前記各陽極集電タブ対は、前記第1陽極集電体の前記一面に固定された第1陽極集電タブと、前記第2陽極集電体の前記一面に固定された第2陽極集電タブと、を有しており、前記第1陽極集電タブと前記第2陽極集電タブとは、前記第2陽極集電体、前記セパレータ、前記第1陰極集電体、前記第2陰極集電体および前記第1陽極集電体を介した状態で離間しており、前記陰極体は、第1陰極集電体と、前記第1陰極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陰極集電体と、前記外部陰極端子に導通する複数の陰極集電タブ対と、を含んでおり、前記各陰極集電タブ対は、前記第1陰極集電体の前記一面に固定された第1陰極集電タブと、前記第2陰極集電体の前記一面に固定された第2陰極集電タブと、を有しており、前記第1陰極集電タブと前記第2陰極集電タブとは、前記第2陰極集電体、前記セパレータ、前記第1陽極集電体、前記第2陽極集電体および前記第1陰極集電体を介した状態で離間していることを特徴としている。
【0015】
本発明の第2の形態では、対をなす陽極集電タブどうし、および対をなす陰極集電タブどうしが互いに接触することなく離間している。そのため、各陽極集電タブと陽極集電体との陽極集電ポイントを分散させ、また各陰極集電タブと陰極集電体との集電ポイントを分散させることができる。したがって、本発明の第2の形態では、本発明の第1の形態と同様に、充放電時における集電体による内部抵抗を低減することができる。また、本発明の第2の形態では、対をなす陰極集電タブどうしが互いに接触することなく離間しているため、一箇所にかかるストレスがタブ一枚分の厚みになる。その結果、従来のように対をなす集電タブどうしが同一箇所において接触した状態で重なり合う場合に比べて、陽極体や陰極体、セパレータにかかるストレスを軽減することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態においては、前記複数の陽極集電タブ対は、第1陽極集電タブ対および第2陽極集電タブ対を含んでおり、前記陽極体の非巻回状態において、前記第1陽極集電タブ対の第1陽極集電タブと第2陽極集電タブ対の第1陽極集電タブとの間に、前記第1陽極集電タブ対または前記第2陽極集電タブ対の第2陽極集電タブが位置しており、前記複数の陰極集電タブ対は、第1陰極集電タブ対および第2陰極集電タブ対を含んでおり、前記陰極体の非巻回状態において、前記第1陰極集電タブ対の第1陰極集電タブと第2陰極集電タブ対の第1陰極集電タブとの間に、前記第1陰極集電タブ対または前記第2陰極集電タブ対の第2陰極集電タブが位置している。
【0017】
このような構成によれば、全てのタブが適度な間隔を保って配置されるため、隣接するタブ間における集電体での周方向の距離を適切化することができる。そのため、隣接するタブ間における集電体による内部抵抗を適切に小さくすることが可能となる。
【0018】
本発明の他の好ましい形態においては、前記第1陽極集電タブは、前記第1陽極集電体に固定されている一方で前記第2陽極集電体に接触し、前記第2陽極集電タブは、前記第2陽極集電体に固定されている一方で前記第1陽極集電体に接触しており、前記第1陰極集電タブは、前記第1陰極集電体に固定されている一方で前記第2陰極集電体に接触し、前記第2陰極集電タブは、前記第2陰極集電体に固定されている一方で前記第1陰極集電体に接触している。
【0019】
このような構成では、各陽極集電タブが第1および第2陽極集電体の双方に導通し、各陰極集電タブが第1および第2陰極集電体の双方に導通している。そのため、各集電タブは、2つの集電体に対して導電経路を確保することができるため、内部抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、電気二重層コンデンサにおいて、陽極体や陰極体、セパレータに大きなストレスをかけることなく、内部抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電気二重層コンデンサを、一部を破断して示した斜視図である。
【図2】図1に示した電気二重層コンデンサの分解斜視図である。
【図3】図1に示した電気二重層コンデンサの断面図である。
【図4】図1に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子の要部を拡大して示した断面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は図4に示したコンデンサ素子の他の要部を拡大して示した断面図である。
【図6】図1に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子において、陽極体、陰極体およびセパレータの一部を引き出した状態での斜視図である。
【図7】図1に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子の陽極体(陰極体)の要部を示す正面図である。
【図8】図1に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子の陽極体(陰極体)の要部を示す断面図である。
【図9】従来の電気二重層コンデンサの一例を示す分解斜視図である。
【図10】図9に示した電気二重層コンデンサの断面図である。
【図11】図9に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子において、陽極体、陰極体およびセパレータの一部を引き出した状態での斜視図である。
【図12】図12(a)ないし図12(c)は図9に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子の要部を示す断面図である。
【図13】図9に示した電気二重層コンデンサにおけるコンデンサ素子において、要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1ないし図3に示した電気二重層コンデンサXは、ダブル巻マルチタブ構造を有するものであり、コンデンサ素子1と、コンデンサ素子1を収容するケース2と、外部端子3と、絶縁部材4とを備えている。
【0024】
コンデンサ素子1は、陽極体5、セパレータ61、陰極体7およびセパレータ62をこの順序で積層した状態で(図4参照)、円筒状に巻回された構造を有している。このコンデンサ素子1は、外周面に貼着されたテープ10によって巻回状態が維持されており、電解液を含浸させた状態でケース2に収容されている。
【0025】
図1、図4および図5(a)に示すように、陽極体5は、第1および第2陽極集電体51,52と、分極性電極層53,54と、複数の陽極集電タブ対55,56と、を含んでいる。
【0026】
第1および第2陽極集電体51,52は、分極性電極層53,54が形成されていない片面において、陽極集電タブ対55,56が介在する部分を除いた大部分が互いに接触しており、ダブル巻とされている。各陽極集電体51,52は、アルミニウム箔等の金属箔からなり、その厚みは20〜50μm程度とされている。
【0027】
各分極性電極層53,54は、活性炭粉末を有する組成物で構成されており、第1および第2陽極集電体51,52の片面に形成されている。これらの分極性電極層53,54は、例えば第1および第2陽極集電体51,52の片面に、活性炭スラリーを一定の厚さで塗布した後に乾燥させることによって形成される。活性炭スラリーとしては、例えば活性炭粉末、カーボンブラック、およびフッ素系樹脂バインダーを含むものが使用される。
【0028】
図1、図3および図5(a)に示すように、各陽極集電タブ対55,56は、第1陽極集電タブ55A,56Aおよび第2陽極集電タブ55B,56Bを含んでいる。
【0029】
第1陽極集電タブ55A,56Aは、第1陽極集電体51の他の片面(分極性電極層53が形成されていない片面)に固定され、巻回されることで第2陽極集電体52の他の片面(分極性電極層54が形成されていない片面)に圧接されており、一端部側が第1および第2陽極集電体51,52から突出している。第1陽極集電タブ55A,56Aにおける集電体51,52から突出した端部は、屈曲されて外部端子3における陽極端子31と接続されている(図3参照)。これに対して、第2陽極集電タブ55B,56Bは、第2陽極集電体52の他の片面(分極性電極層54が形成されていない片面)に固定され、巻回されることで第1陽極集電体51の他の片面(分極性電極層53が形成されていない片面)に圧接されており、一端部側が第1および第2陽極集電体51,52から突出している。第2陽極集電タブ55B,56Bにおける集電体51,52から突出した端部は、屈曲されて外部端子3における陽極端子31と接続されている(図3参照)。すなわち、第1陽極集電タブ55A,56Aおよび第2陽極集電タブ55B,56Bは、第1陽極集電体51および第2陽極集電体52の双方に導通しているとともに、外部端子3(陽極端子31)に接続されている。これらの陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bは、例えばアルミニウムなどの金属によって厚さが100〜200μm程度に形成されており、コールド加締、針穴加締、超音波溶接、レーザー溶接あるいは抵抗溶接等の手法によって、第1または第2陽極集電体51,52の他の片面(分極性電極層53,54が形成されていない片面)に固定されている。
【0030】
図6および図7に示したように、各陽極集電タブ対55,56では、第1陽極集電タブ55A,56Aと第2陽極集電タブ55B,56Bとは、陽極体5の非巻回状態において互いに位置ずれしている。好ましくは、陽極集電タブ対55の第1陽極集電タブ55Aと陽極集電タブ対56の第1陽極集電タブ56Aとの間に、陽極集電タブ対55の第2陽極集電タブ55Bまたは陽極集電タブ対56の第2陽極集電タブ56Bが位置している。その一方で、図2、図5(a)および図8に示したように、各陽極集電タブ対55(56)における第1陽極集電タブ55A(56A)と第2陽極集電タブ55B(56B)は、陽極体5を陰極体7やセパレータ61,62等とともに巻回したコンデンサ素子1の状態では、少なくとも第2陽極集電体52、セパレータ61、陰極体7および第1陽極集電体51を介した状態で離間しているとともに、互いに対向した位置関係となっている。なお、第1陽極集電タブ55A,56Aと第2陽極集電タブ55B,56Bとは、非巻回状態におけるこれらの集電タブ55A(56A),55B(56B)の位置関係を適宜設定することにより互いに離間した状態で対向させることができ、その離間距離L1も同様に、非巻回状態における第1陽極集電タブ55A(56A)と第2陽極集電タブ55B(56B)との距離を調整することにより調節することができる。
【0031】
図1、図4および図5(b)に示すように、陰極体7は、陽極体5と同様な構成であり、第1および第2陰極集電体71,72と、分極性電極層73,74と、複数の陰極集電タブ対75,76と、を含んでいる。
【0032】
第1および第2陽極集電体71,72は、分極性電極層73,74が形成されていない片面において、陰極集電タブ対75,76が介在する部分を除いた大部分が互いに接触しており、ダブル巻とされている。各陰極集電体71,72は、陽極集電体51,52と同様にアルミニウム箔などの金属箔で形成されている。また、各分極性電極層73,74は、陽極体5の分極性電極層53,54と同様な構成を有するとともに同様な手法により形成されている。
【0033】
図1、図3および図5(b)に示すように、各陰極集電タブ対75,76は、第1陰極集電タブ75A,76Aおよび第2陰極集電タブ75B,76Bを含んでいる。第1陰極集電タブ75A,76Aは、第1陰極集電体71の片面(分極性電極層73が形成されていない片面)に固定され、巻回されることで第2陰極集電体72の片面(分極性電極層74が形成されていない片面)に圧接されており、一端部側が第1および第2陰極集電体71,72から突出している。第1陰極集電タブ75A,76Aにおける集電体71,72から突出した端部は、クランク状に屈曲されて外部端子3における陰極端子32と接続されている。これに対して、第2陰極集電タブ75B,76Bは、第2陰極集電体72の片面(分極性電極層74が形成されていない片面)に固定され、巻回されることで第1陰極集電体71の片面(分極性電極層73が形成されていない片面)に圧接されており、一端部側が第1および第2陰極集電体71,72から突出している。第2陰極集電タブ75B,76Bにおける集電体71,72から突出した端部は、クランク状に屈曲されて外部端子3における陰極端子32と接続されている。すなわち、第1陰極集電タブ75A,76Aおよび第2陰極集電タブ75B,76Bは、第1陰極集電体71および第2陰極集電体72の双方に導通しているとともに、外部端子3(陰極32)に接続されている。これらの陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bは、例えばアルミニウムなどの金属によって厚さが100〜200μm程度に形成されており、コールド加締、針穴加締、超音波溶接あるいは抵抗溶接等の手法によって、第1または第2陰極集電体71,72の他の片面(分極性電極層73,74が形成されていない片面)に固定されている。
【0034】
図6および図7に示したように、各陰極集電タブ対75,76では、第1陰極集電タブ75A,76Aと第2陰極集電タブ75B,76Bとは、陰極体7の非巻回状態において互いに位置ずれしている。好ましくは、陰極集電タブ対75の第1陰極集電タブ75Aと陰極集電タブ対76の第1陰極集電タブ76Aとの間に、陰極集電タブ対75の第2陰極集電タブ75Bまたは陰極集電タブ対76の第2陰極集電タブ76Bが位置している。その一方で、図2、図5(b)および図8に示したように、各陰極集電タブ対75(76)における第1陰極集電タブ75A(76A)と第2陰極集電タブ75B(76B)は、陽極体5を陰極体7やセパレータ61,62等とともに巻回したコンデンサ素子1の状態では、少なくとも第2陰極集電体72、セパレータ62、陽極体5および第1陰極集電体71を介した状態で離間しているとともに、互いに対向した位置関係となっている。なお、第1陰極集電タブ75A,76Aと第2陰極集電タブ75B,76Bとは、非巻回状態におけるこれらの集電タブ75A(76A),75B(76B)の位置関係を適宜設定することにより互いに離間した状態で対向させることができ、その離間距離L2も同様に、非巻回状態における第1陰極集電タブ75A(76A)と第2陰極集電タブ75B(76B)との距離を調整することにより調節することができる。
【0035】
図1および図4に示したように、セパレータ61,62は、陽極体5と陽極体7とが短絡するのを防止するためのものであり、多孔質体に電解液を含浸させたものである。多孔質体としては、例えばセルロース繊維紙が使用される。電解液としては、例えば1mol/Lのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解したプロピレンカーボネート溶液が使用される。
【0036】
図1ないし図3に示したケース2は、アルミニウム等の軽金属を素材として作製されたものであり、有底円筒形状をなしている。
【0037】
外部端子3は、陽極端子31および陰極端子32を含んでいる。これらの端子31,32は、端部31a,31b,32a,32bが露出するように絶縁部材4に固定されている。陽極端子31および陰極端子32は、例えばねじ形の端子であり、この場合には絶縁部材4に対して螺合されて固定される。陽極端子31の端部31bは、コンデンサ素子1の陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bに接続され、または接触させられ、陰極端子42の端部32bは、コンデンサ素子1の陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bに接続され、または接触させられている。なお、図面においては、端部31b,32bは、陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bまたは陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bに直接接続され、または接触させられているが、導体板などを介して、陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bまたは陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bに関節的に接続または接触させてもよい。また、陽極端子31および陰極端子32は、ねじ形の端子に限らず、他の形態のものであってもよい。
【0038】
絶縁部材4は、外部端子3とケース2との間の絶縁性を維持しつつ、外部端子3が陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bおよび陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bに導通した状態を維持するものである。この絶縁部材4は、絶縁性を有する合成樹脂等により形成されている。
【0039】
電気二重層コンデンサXでは、図6および図7に示したように陽極体5および陰極体7の非巻回状態において、第1陽極集電タブ55A,56Aと第2陽極集電タブ55B,56Bとが位置ずれし、第1陰極集電タブ75A,76Aと第2陰極集電タブ75B,76Bとが位置ずれしている。そのため、陽極体5および陰極体7の巻回状態では、陽極集電体55,56と陽極集電タブ55A,55B,56A,56Bとの間の集電ポイントを分散させ、また陰極集電体75,76と陰極集電タブ75A,75B,76A,76Bとの間の集電ポイントを分散させることができる。したがって、電気二重層コンデンサXでは、集電ポイントを分散させることによって、充放電時における集電体55,56,75,76による内部抵抗を低減することができる。
【0040】
電気二重層コンデンサXではさらに、全ての集電タブ55,56,75,76が適度な間隔を保って配置されるため、隣接する集電タブ55,56,75,76間における集電体51,52,71,72での周方向の距離を適切化することができる。そのため、隣接する集電タブ55,56,75,76間における集電体51,52,71,72による内部抵抗を適切に小さくすることが可能となる。また、電気二重層コンデンサXでは、陽極集電タブ55A,55B,56A,56Aが第1および第2陽極集電体51,52の双方に導通している一方で、陰極集電タブ75A,75B,76A,76Aが第1および第2陰極集電体71,72の双方に導通している。そのため、電気二重層コンデンサXは、各集電タブ55,56,75,76のそれぞれにおいて、2つの集電体51,52,71,72との間で導電経路を確保することができるため、この点においても内部抵抗を低減することができる
【0041】
また、図2、図5(a)、図5(b)および図8に示したように、電気二重層コンデンサXでは、第1陽極集電タブ55A,56Aと第2陽極集電タブ55B,56Bとが、また第1陰極集電タブ75A,76Aと第2陰極集電タブ75B,76Bとが接触することなく互いに離間している。そのため、集電タブ55,56,75,76相互は、陽極体5および陰極体7との固定部分が互いに接触した状態で重なり合うことはない。したがって、対をなす陽極集電タブまたは陰極集電ダブどうしが同一箇所において接触した状態で重なり合う従来の電気二重層コンデンサY(図9および図13参照)に比べて、集電タブ55,56,75,76に起因する集電体51,52,71,72等へのストレスを、タブ一枚分の厚みとすることができるため、陽極体5や陽極体7、セパレータ61,62に作用するストレスを軽減することができる。
【0042】
本発明は、以上に説明した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば、上述の例では、陽極集電タブ対および陰極集電タブ対はそれぞれ2組ずつであったが、タブ対は3組以上であってもよく、また1組であってもよく、コンデンサ素子のサイズ等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
また、上述の例では、分極性電極層は、第1および第2陽極集電体の片面に、活性炭スラリーを一定の厚さで塗布した後に乾燥させることによって形成したが、電極として、他に、活性炭、カーボンブラックおよびバインダーを混練し、シート状に成型した分極性電極層を集電体に貼り付けたシート電極や、活性炭素繊維を布状に成型したものを集電体に貼り付けた電極を使用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
X 電気二重層コンデンサ
1 コンデンサ素子
2 ケース
3 外部端子
4 絶縁部材
10 テープ
31 陽極端子
32 陰極端子
5 陽極体
51 第1陽極集電体
52 第2陽極集電体
55,56 陽極集電タブ対
55A,56A 第1陽極集電タブ
55B,56B 第2陽極集電タブ
61,62 セパレータ
7 陰極体
71 第1陰極集電体
72 第2陰極集電体
75,76 陰極集電タブ対
75A,76A 第1陰極集電タブ
75B,76B 第2陰極集電タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を含浸させたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記コンデンサ素子に導通する外部陽極端子および外部陰極端子と、を備えた電気二重層コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、陽極体、セパレータおよび陰極体を積層して巻回したものであり、
前記陽極体は、第1陽極集電体と、前記第1陽極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陽極集電体と、前記外部陽極端子に導通する複数の陽極集電タブ対と、を含んでおり、
前記各陽極集電タブ対は、前記第1陽極集電体の前記一面に固定された第1陽極集電タブと、前記陽極体の非巻回状態において前記第1陽極集電タブとは位置ずれし、前記第2陽極集電体の前記一面に固定された第2陽極集電タブと、を有しており、
前記陰極体は、第1陰極集電体と、前記第1陰極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陰極集電体と、前記外部陰極端子に導通する複数の陰極集電タブ対と、を含んでおり、
前記各陰極集電タブ対は、前記第1陰極集電体の前記一面に固定された第1陰極集電タブと、前記陰極体の非巻回状態において前記第1陰極集電タブとは位置ずれし、前記第2陰極集電体の前記一面に固定される第2陰極集電タブと、を有していることを特徴とする、電気二重層コンデンサ。
【請求項2】
電解液を含浸させたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記コンデンサ素子に導通する外部陽極端子および外部陰極端子と、を備えた電気二重層コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、陽極体、セパレータおよび陰極体を積層して巻回したものであり、
前記陽極体は、第1陽極集電体と、前記第1陽極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陽極集電体と、前記外部陽極端子に導通する複数の陽極集電タブ対と、を含んでおり、
前記各陽極集電タブ対は、前記第1陽極集電体の前記一面に固定された第1陽極集電タブと、前記第2陽極集電体の前記一面に固定された第2陽極集電タブと、を有しており、
前記第1陽極集電タブと前記第2陽極集電タブとは、前記第2陽極集電体、前記セパレータ、前記第1陰極集電体、前記第2陰極集電体および前記第1陽極集電体を介した状態で離間しており、
前記陰極体は、第1陰極集電体と、前記第1陰極集電体の一面に対して一面側が接触する第2陰極集電体と、前記外部陰極端子に導通する複数の陰極集電タブ対と、を含んでおり、
前記各陰極集電タブ対は、前記第1陰極集電体の前記一面に固定された第1陰極集電タブと、前記第2陰極集電体の前記一面に固定された第2陰極集電タブと、を有しており、
前記第1陰極集電タブと前記第2陰極集電タブとは、前記第2陰極集電体、前記セパレータ、前記第1陽極集電体、前記第2陽極集電体および前記第1陰極集電体を介した状態で離間していることを特徴とする、電気二重層コンデンサ。
【請求項3】
前記複数の陽極集電タブ対は、第1陽極集電タブ対および第2陽極集電タブ対を含んでおり、前記陽極体の非巻回状態において、前記第1陽極集電タブ対の第1陽極集電タブと第2陽極集電タブ対の第1陽極集電タブとの間に、前記第1陽極集電タブ対または前記第2陽極集電タブ対の第2陽極集電タブが位置しており、
前記複数の陰極集電タブ対は、第1陰極集電タブ対および第2陰極集電タブ対を含んでおり、前記陰極体の非巻回状態において、前記第1陰極集電タブ対の第1陰極集電タブと第2陰極集電タブ対の第1陰極集電タブとの間に、前記第1陰極集電タブ対または前記第2陰極集電タブ対の第2陰極集電タブが位置している、請求項1または請求項2に記載の電気二重層コンデンサ。
【請求項4】
前記第1陽極集電タブは、前記第1陽極集電体に固定されている一方で前記第2陽極集電体に接触し、
前記第2陽極集電タブは、前記第2陽極集電体に固定されている一方で前記第1陽極集電体に接触しており、
前記第1陰極集電タブは、前記第1陰極集電体に固定されている一方で前記第2陰極集電体に接触し、
前記第2陰極集電タブは、前記第2陰極集電体に固定されている一方で前記第1陰極集電体に接触している、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電気二重層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−26373(P2013−26373A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158786(P2011−158786)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】