説明

電気光学式に切換可能なシステム

本発明は、電気光学式に切換可能なシステムに関する。このシステムは、光学的に活性な素子(2)と入力装置(41)とを含んでいる。本発明はさらに、上述の電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器(3)並びに、容器を提供するための、上述の電気光学式に切換可能なシステムの使用に関する。これは、自身の内部への光の高い透過を、操作介入の持続時間の間だけ許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学式に切換可能なシステムに関する。このシステムは、光学的に活性な素子と入力装置を有している。さらに本発明は、このような電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器、並びに容器を提供するための当該電気光学式に切換可能なシステムの使用に関する。この容器は、操作者介入持続時間のみ、その内部への高い光透過を許容する。
【0002】
材料の機械的、化学的および/または美的特徴がしばしば、場合によっては、酸素および/または熱と組み合わされる光の継続的な影響で、不可逆的に劣化してしまうことが知られている。これは殊に、無生物有機材料に当てはまり、無生物有機材料はしばしば特に光の影響を受けやすい。オープンにアクセス可能な製品だけではなく、光を通すパッケージ内に包装された製品も光の影響を受ける。この光によって、包装されたこの製品の機械的な特徴、化学的な特徴、香りに関する特徴、味に関する特徴および/または美的な特徴が害されることがある。このようなネガティブな変化は、包装されている中身によって異なる。これは例えば、黄色化および変色等の外見上の変化、味および/または香りの変化、および/または中身の材料の分解である。食料品、香水、化粧品の場合には、日持ちが格段に短くなる。しばしば質が低下し、例えば、感覚的な質の変化、日持ちの低減および/またはビタミンの損失が生じる。付加的に、光の作用は空気酸素と相まって、ラジカルの形成、ひいては酸化反応を生じさせる。光に対する脆弱性は、製品の非常に特別な特性である。特に敏感な配合成分(例えば、薬草等のクロロフィルを含有した添加物)によって、光に対する脆弱性はより強まる。これは特に、このような材料のパッケージ時に考慮されなければならない。
【0003】
消費財、殊に食料品は商店の陳列棚において強い照明に曝され、これによって品質が著しく被害を被る。他方では、魅力的な陳列台照明の下に製品を陳列することによって購買意欲が刺激される。透明なパッケージによって客が商品を見て検査することが可能になり、これによって、品質および/または新鮮さの印象が後押しされる。エコロジカルな観点からも、透明な単一材料から成るパッケージが促進される。従って少なくとも部分的に透明な容器を、パッケージ材料として使用することを断念することはできない。
【0004】
販売分野から、多様なパッケージが知られている。一般に使用されているパッケージ材料は、金属またはガラス等の剛性の材料も、プラスチック、厚紙等の柔軟な材料も、これらの全ての可能な組み合わせも含む。パッケージは透明で、製品の状態(色、変色、表面状態、大きさ、塊状態、細やかさ等)ができるだけ良好に識別可能であるか、または、光に対して耐性の無い製品の場合には、光を通さないまたは暗く着色された材料から成る。光を通さないまたは暗く着色されたパッケージは、光の影響を受けやすい製品を光の影響から保護するが、開封前に製品を視角的に判断することができない、という欠点を有している。択一的に、光の影響を受けやすい消費財のパッケージシステムにおいて、プラスチックから成る部分的に透明なパッケージ材料も使用される。これは、従来のパッケージ材、例えばブリキ(光不透過性)またはガラス(透明)を使用する。このような場合には、光に対して耐性の無い製品への害は、完全に透明なパッケージに比べてより少なくなるが、それでもやはり、光の影響を受けやすい製品は光の影響から十分には保護されない。
【0005】
従って、一方ではパッケージされた品物を効果的に光の悪影響から保護するパッケージが必要とされており、他方では製品の視角による判断を可能にするパッケージが必要とされている。
【0006】
製品が光に敏感か否かに関わりなく、不透明なパッケージは、その中身への好奇心を駆り立てる。これは殊に、高級消費財および贅沢品に対する視覚的に高価にデザインされたパッケージに対して当てはまる。これは例えば、装飾品、高価な娯楽電子機器等である。ここでは、包装された商品へ視線を集めるために第一に消費者の操作干渉を必要とするパッケージが、製品の購入にとって決定的な論拠となり得る。従って、消費者の購買意欲を上昇させるパッケージも必要とされる。
【0007】
光学的に活性な素子は、ガラスないしは眼鏡および窓システムの領域から知られている。切り換え作用は既に、ガラスに組み込まれている。ここで以下の原理が区別される:
・熱変色性:温度変化による着色
・熱互変性:温度変化による濁り
・光互変性:光の影響による着色(暗色化)
・エレクトロクロミック性:電流による着色
・フォトエレクトロクロミック性:光の影響下で活性化されるエレクトロクローム切換。
【0008】
光互変性のガラスまたはプラスチックディスクは例えば、自身で変色するサングラスにおいて用いられている。太陽光入射の下でこのガラスは暗色化するが、可視性は保たれる(すなわち太陽光の照射時には、可視スペクトル領域における透過性が減退する)。このような作用は一般的に、UV光または短波の可視光によって生起され、例えば、ガラスの中に入れられている銀ハロゲン化物ないしはプラスチックディスク上に被着されている有機層の可逆的な移行が生じる。光互変性のガラスは、色素に敏感なソーラーセルの原理に従っても製造可能である。光互変性ガラスにはここで例えば、触媒白金層並びにナノ多孔性WO層およびTiO層から成る多層システムをベースとする。これらの層はガラス基板上に被着されている。これらの孔は、正のリチウムイオンおよび負のヨー化物イオンを備えた電界質を含んでいる。酸化チタン上に色素分子が存在している。これは入射光によって励起され、これによって、電子がTiOを介して酸化タングステン内に注入される。同時に、リチウムイオンがWOに堆積し、ヨー化物イオンが電子を、色素分子に出力する。このようなプロセスによって、酸化タングステンが青色に着色される。
【0009】
エレクトロクロミックガラスは、光の透過を、印加された直流電圧に応じて変える、というエレクトロクロミック材料の特性を利用する。エレクトロクロミック材料としては例えば、異なる酸化状態において異なる吸収特性を有する有機材料および無機材料が適している。これは、エレクトロクロミックに可逆的に切り換え可能である。従って例えばポリアニリン(PANI)は、還元状態で無色であり、酸化された状態では緑であり、ポリ(o−フェニレンジアミン)(PPD)は還元状態において無色であり、酸化された状態において赤褐色である。電荷が、ガラス表面上のエレクトロクロミック材料の極微に薄い層に放出されると、ガラスは自身の色を変化させる。アクティブ層の電気化学的な再充電のために、一般的には、一桁のボルト領域直流電圧で足りる。弱電流は、エレクトロクロミック層(例えば1マイクロメータの厚さ)をアクティブにする。これは色を変化させる。使用目的に応じて、電圧が手動でまたは自動で印加され、例えば輝度を測定するセンサによって制御される。ガラスが短絡されるまたは電圧の極性が変化すると、これは再び無色になる、または色変化が生じる。エレクトロクロミック材料では、切り換えのためのエネルギーが必要である。従ってこのエレクトロクロミックガラスは、着色フェーズの間のみ、および製造時にのみ、完全な透明性を形成するとき(ないしは変色フェーズの間)にのみ電流を必要とする。電圧が印加されていない場合には、ガラスは、新たな電流が供給されるまで、目下の着色状態を維持する。エレクトロクロミック材料の使用領域は、殊に、自動車内の自動的に遮光するバックミラーおよび建物のガラスである。
【0010】
光互変性システムが、受動的にのみ、照明状態に反応する場合には、フォトエレクトロクロミックシステムは自身の透過性において切り換え可能である。変色のためのエネルギーは、光互変性システムの場合のように、太陽光が供給する。フォトエレクトロクロミック層においては、エレクトロクロミック層とエレクトロクロミックソーラーセルの作用メカニズムとが組み合わされている。電荷移動は、ガラス基板上の透明な、導電性層を介して行われる。外部の電流回路を介して層が切り換えられる:外部の電流回路が開放されている場合には、この層は照射のもとで着色する。電流回路が閉成されている場合には、この層は再び脱色する。このようなプロセスは、照明時にも、暗い中でも行われる。すなわち、透過率は、照明時にも、暗い場合にも、切り換えによって再び上昇する。
【0011】
JP051451852号は、医療用の冷蔵室を開示している。これは窓を有しており、この窓を通じて中を見ることができる。この窓は、液晶を備えた2つの基板プレートを有している。これらには、透明電極を介して電流が供給される。電気機械式の入力装置を操作することによって、電流回路が閉成される。これによって、無電流状態においては非透過性に乳白である窓が透明になる。このシステムにおける欠点は、窓の光透過特性を変えるために、常に必ず操作介入が必要である、ということである。自己調整システムとして構成すること、例えば外部の光状態に依存した光透過の制御は可能ではない。さらに常に、従来の電流源が必ず必要になる。これは殊に、システムの小型化、ひいてはパッケージ内での使用を困難にする。
【0012】
本発明の課題は、有利には容器、特にパッケージに適している装置を提供することであり、これは同時に、品物を効果的に、過度に強い光の影響から保護し、視覚による製品評価を可能する。本発明の別の課題は、消費者の購買意欲を刺激する、容器および特にパッケージに適した装置を提供することである。
【0013】
驚くべきことに、上述した課題を解決するために有利には、電気光学式に切換可能なシステムが適していることが判明した。このシステムは、光学的に活性な素子と組み合わされた、光起電性作用に基づく入力装置を含んでいる。ここでは特別に、光学的に活性な素子が使用される。これは照明状態において、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路のスイッチングによって、可視波長領域の光の透過を増大させる。この電気光学式に切換可能なシステムは、有利には、多数の異なるパッケージ材料と組み合わせられ、これよって新たな種類の容器を提供することができる。この容器はその内部の品物を効果的に、過度に強い光の影響から保護し、製品の視覚による評価を可能にする。しかも、容器の開放は必要ではない。さらにこの容器は、消費者の購買意欲を刺激する。特に、「自己切り換え式」システムとして構成することが可能である。ここでこの装置は当然ながら、自身に入射する光量が特定の限界値を超える場合には、暗くされた状態を有する。この場合には、例えば、パッケージの中身を保護するために、操作者側でのさらなる介入は必要ない。例えば、パッケージの中身を観察するための、装置内部における光透過を高める操作者介入の後でも、この装置は自身で、安全な状態に戻る。
【0014】
従って本発明の第1の構成要件は、電気光学式に切換可能なシステムである。これは光学的に活性な素子を有している。この素子は、照明された状態において、可視波長領域の光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路のスイッチングによって、可視波長領域における光の透過を高めることができる。このシステムはさらに、光起電性の作用に基づく入力装置を有している。これは、入力装置の操作の持続時間の間、光の透過を高める。ここで光の透過は入力装置の操作によって、実質的に、システムの外部の照明状態に依存せずに高められる。
【0015】
本発明の別の構成要件は、このような電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器である。
【0016】
本発明の別の構成要件は、容器の部品としての、このような電気光学式に切換可能なシステムの使用である。これは、入力装置の操作の持続時間の間は、自身の内部への高い光透過を許容する。
【0017】
本発明の別の構成要件は、光の影響から保護されて保管されるべき物質用の容器の部品としての、このような電気光学式に切換可能なシステムの使用である。
【0018】
本発明の別の構成要件は、中に包装されている製品を光の悪影響から保護するためのパッケージとしての、このような電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器の使用である。
【0019】
本発明の別の構成要件は、消費者の購買意欲を高めるパッケージとしての、このような電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器の使用である。
【0020】
光起電性の作用に基づく入力装置を、光学的に活性な素子と組み合わせて有している本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、少なくとも1つの以下の利点を有している:
・最適な製品保護。なぜなら、電気光学式に切換可能なシステムは、切り換え介入無く、光の透過が阻止されるように構成されているからである。
・「自己切り換え式」システムとして構成することが可能;自身に入射する光の量が特定の境界値を上回ると、この装置は自ら、暗くされた状態になる。
・入力装置としてソーラーセルが組み込まれている場合には、これは同時に、光学的に活性な素子の電圧源として用いられる;従って、従来の電気機械式の入力装置とは異なり、場合によって、外部の電圧源を省くことができる。
・入力装置としてソーラーセルが組み込まれている場合には、これは同時に、入射する光の量に対するセンサとして用いられ、例えば、装置の自動的な暗化が可能になる。
・フォトエレクトロクロニックシステムを使用する場合には、ソーラーセルと光学的に活性な素子との組み合わせと同じ機能が構成部分内で実現される。
・小さい容器にも適している
・湾曲した表面を有する容器にも適している
・例えば液晶をベースにした、適切な、光学的に活性な素子を使用する場合には、これは同時に、ディスプレイ(LCD)として用いられる;これによって、視覚的な情報の再現を可能にする。これは例えば製品情報または宣伝文のためのものである。
・効果的な購買意欲の刺激。
【0021】
可視波長における光とは、本発明の枠内では、400〜800nmの波長領域である。当然ながら、本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、所望の場合には、付加的に、別の波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止することができる。このために、従来の安定剤または安定剤組成と組み合わせることも可能である。これには有利には無機顔料、有利には白色顔料、特にチタン二酸化物が挙げられる。本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、付加的に少なくとも1つの別の成分を有している。これは、酸化防止剤、光安定剤、金属失活剤等およびこれらの組み合わせから選択される。適切な酸化防止剤、光安定剤、金属失活性剤は例えば:4,4−ジアリールブタジエン、桂皮酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、ジフェニルシアンアクリレート、オキサミド(シュウ酸ジアミド)、2−フェニル−1,3,5−トリアジン、酸化防止剤、ニッケル化合物、立体障害アミン(HALS)、金属失活性剤、ホスフィットおよびホスホニット、ヒドロキシルアミン、ニトロン、酸化アミン、ベンゾフラノン、インドリノン、チオ相乗剤、ペルオキシド分解性化合物およびこれらの混合物から選択される。適切な安定剤および安定剤組成物は市販されている。例えば、BASF SEのUvinul(R)の名称で市販されている。
【0022】
「電気光学式に切換可能」とは、本発明の枠内では、切り換え過程を用いて、可視波長領域における光に関する透過性が変えられることである。このような切り換え過程はここで電気(電子)的な効果と光学的な効果とを結びつける。これは例えば、光を電気エネルギーに変換することによる結び付けである。
【0023】
光学的に活性な素子とは、本発明の枠内では、面状の素子である。これは、少なくとも2つの状態を有している:1つの状態は高い光透過性を有する状態であり、1つの状態は低い光透過性を有する状態である。適しているのは、少なくとも1つの光学的に活性な材料を有する素子である。用語「光学的に活性な材料」とは、可逆的に、高い光透過性を有する状態から、低い光透過性を有する状態への移行を可能にする材料をあらわしている。
【0024】
1つの適切な実施形態では、光学的に活性な素子は層状の構造を有している。ここでこれらの層のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの光学的に活性な材料を有している。この素子は、2つまたは2つよりも多い、相違する光学的に活性な材料を1つの層内に有すること、同じ光学的に活性な材料を2つまたは2つより多くの、相互に別個に配置されている層内に有すること、2つまたは2つよりも多くの、相違する光学的に活性な材料を、2つまたは2つよりも相互に別個に配置されている層のそれぞれ1つ内に有することができる。
【0025】
本発明による光学的に活性な素子は、その光透過性において変化可能である。用語「光透過性」とは本発明の枠内では、「透光性」に制限されているのではなく、かつ「透明性(透けて見える性質の意味で=画像透過性または視線透過性)」に対する制限として考えられるものではない。これに相応して、光透過性の変化は本発明では、着色/脱色または濁り/濁りをなくすことによって実現される。
【0026】
入力装置の操作/非操作によって、光学的に活性な素子の光透過性が高められる/低減される。すなわち、必ずしも、光学的に活性な素子が、入力装置の操作時に、完全な光透過性を有していなければならないのではなく、同じように、混濁または着色が、可視光の一部の透過を阻止する状態を含む。同じように、光学的に活性な素子によって、入力装置の非操作時には、必ずしも、可視光の透過は完全に阻止されない。入力装置の非操作時には単に、混濁または着色によって、入力装置の操作時よりも、より多くの可視光部分の透過が阻止される。
【0027】
電気光学式に切換可能なシステムの第1の有利な形態では、光学的に活性な素子は、電圧が印加されている場合に、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路の中断によって、可視波長領域における光の透過を増大させる。
【0028】
電気光学式に切換可能なシステムの第2の有利な形態では、光学的に活性な素子は、電圧が印加されていない場合には、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路を閉成することによって、可視波長領域における光の透過を増大させる。
【0029】
照明されている状態とは、本発明では、可視波長領域の光が光学的に活性な素子に入射していることである。
【0030】
光の透過の増大とは、可視波長領域における透過される光の透過の増大である。有利には、入力装置の操作によって、透過率は少なくとも5%、特に有利には少なくとも10%、殊に少なくとも15%、特別に少なくとも20%、より特別には少なくとも25%上昇する。
【0031】
光学的に活性な素子は、照明されている状態において、入力装置が操作されていない場合には、有利には最大で50%の透過率、特に有利には最大で40%の透過率および殊に最大で20%の透過率を、外部から光学的に活性な素子に入射する、可視波長領域全体の光に関して有している。
【0032】
光学的に活性な素子は、照明されている状態において、入力装置が操作される場合には有利には少なくとも60%の透過率、特に有利には少なくとも70%の透過率および殊に少なくとも80%の透過率を、外部から光学的に活性な素子に入射する、可視波長領域全体の光に関して有している。
【0033】
電流回路のスイッチングとは、例えば、電流回路の閉成または中断のことである。
【0034】
入力装置とは、押圧または接近によって操作され、その後、初期状態に戻る操作素子のことである。その時々の位置に留まるスイッチとは異なり、操作が行われた否かは、入力装置自体において識別することができない;これは、作用が開始されてようやく識別される。入力装置はここで、2つの可能な切り換え状態「オン」および「オフ」のみを有する。
【0035】
光起電性作用に基づくスイッチとは、その切り換え状態が、自身によって収容されている光強度に依存するスイッチである。ここでは、収容されている光強度に対する境界値が設けられている。この境界値は閾値とも称され、この閾値の下では、切り換え状態は「オフ」であり、この閾値に達すると、またはこの閾値の上では、切り換え状態は「オン」である。
【0036】
「実質的に、外部の照明状態に依存しない」とは、次のことを意味する。すなわち、外部から光学的に活性な素子に入射する光の強度が通常は役割を果たさない、ということを意味する。外部から光学的に活性な素子に入射する光の強度が、入力装置の閾値を下回っている場合にのみ、光学的に活性な素子の透過率が、操作者の介入無く、切換られる。しかしこれは一般的には危機的なものではない。なぜなら、この場合には、光学的な素子を通る光の量が非常に少ないからである。従って、例えば、この電気光学式に切換可能なシステムを、光の影響から保護されるべき材料のパッケージ内で使用する時には、損傷が一般的に排除される。
【0037】
本発明の電気光学式に切換可能なシステムの有利な実施形態では、入力装置はソーラーセルを含んでいる、またはソーラーセルから成る。
【0038】
ソーラーセルまたは光起電式の電池とは、光の中に含まれているスイッチングエネルギーを直接的に電気エネルギーに変換する電気素子である。
【0039】
ソーラーセルが、閾値を下回って暗くされると、電流形成が中断される。すなわちソーラーセルは、入力装置の機能を担う。なぜなら、切換は、光強度に依存して所望されるからである。この場合には、ソーラーセルは次のように切換えられる。すなわち、これが入射光量または入射強度に対する所定の境界値ないしは閾値を下回ると、電流が出力されなくなるように切換えられる。このような閾値は、次のように選択される。すなわち、入射する光量または光強度の僅かな低減、例えば、ソーラーセルに入射する影では、電流が中断されないように選択される。例えば親指、手または対象物によって電池を所期のように暗くすることによってはじめて、電流が中断される。このようにして、光学的に活性な素子の光透過性が故意の介入によって制御される。
【0040】
本発明の電気光学式に切換可能なシステムの上述した第1の形態に従って、光学的に活性な素子は、電圧が印加されている場合に、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路を中断することによって、可視波長領域における光の透過を高くすることができる。
【0041】
このような切換時に、光入射時に電流回路が閉成されると、光学的に活性な素子の光透過性が低減される。これによって、光学的に活性な素子が着色する。入力装置の操作(例えば、ソーラーセルを閾値を下回るまで暗くする)ことによって、電流回路が中断され、光学的に活性な素子の光透過性が、実質的に、外部の照明状態に依存せずに高くなる。
【0042】
このような第1の実施形態に従った切換状態を以下のようにまとめる:
【表1】

【0043】
第1の実施形態の特別な構成では、入力装置はソーラーセルを含んでいるまたはソーラーセルから成る。このような構成によって、本発明による電気光学式に切換可能なシステムを提供することができる。これは、ソーラーセルに対して付加的に、さらなる電流源を有していない。従って、従来のシステムとは異なり、電気機械式の入力装置に基づいて、少なくとも1つの部品を省くことができる。さらに、ソーラーセルの使用によって、「自己切換式」システムとしての構成が可能になる。すなわちこの装置は、自身に入力する光量が特定の閾値を上回ると、暗くされた状態に自らなる。設定された閾値を下回る、完全に暗い環境では、電流回路が中断され、光学的に活性な素子の光透過性が高められる。
【0044】
ソーラーセルを使用した場合の、第1の実施形態に従った切換状態を以下のようにまとめる:
【表2】

【0045】
本発明の電気光学式に切換可能なシステムの有利な実施形態では、光学的に活性な素子は、液晶を含んでいる。有利にはこの光学的に活性な素子は、少なくとも2つの液晶層を含んでいる。これらの層は、同じキラリティを有しており、同様の波長領域において吸収する。特に有利には光学的に活性な素子は少なくとも2つのキラルネマチック層を含んでいる。これらは同じキラリティを有しており、同様の波長領域において吸収する。
【0046】
基本的には、既知のLCD(液晶ディスプレイ)において使用されているような液晶および回路が適している。これには、例えばSchadt−Helfrich電池の原理に従った、簡単な液晶セルをベースにした装置が挙げられる。これは、その間に液晶が存在している2つの導電性の透明な基板を有するネマチックセル(ねじれネマチック、TN)である。ここで、2つの基板プレートの優先方向は90°、相互に回転されている。さらに、STN(スーパーねじれネマチック)セルをベースにした装置が適している。ここでねじれ角度は180〜270°の領域内にある。さらに、コレステリックLCDに基づいた装置が適している。
【0047】
本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、柔軟ではない基板をベースにした従来のLCDと同様に製造される。このようなシステムは特に、少なくとも1つの平面を有している容器内での使用に適している。本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、さらに、柔軟な基板をベースにしたLCDと同様に製造される。これは、本発明の有利な実施形態である。柔軟な基板上の液晶に基づく電気光学式システムは、多数の異なる容器内での使用に適しており、特に、ボール紙、びん、缶、袋、小袋等のパッケージ等に適している。
【0048】
有機ソーラーセルに適している物質は、例えば、酸化材料(ガラス、セラミック、SiO、石英等)、ポリマー(例えばポリエチレンテレフタラート、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエステル、フッ化ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリラート、ポリスチロール、ポリ塩化ビニルおよびこれらの混合物および混成物)およびこれらの組み合わせである。
【0049】
有利には、観察者の方を向いている基板に対する電極材料として、入射光に対して少なくとも部分的に透明な材料が使用される。これには、特別なガラスおよび透明なポリマー、例えばポリエチレンテレフタレートが挙げられる。電気的な接触接続は、通常は金属層および/または透明導電ガラス(TCOs)によって行われる。これには有利にはITO、ドーピングされたITO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化スズ)、ZnO、TiO、Ag、Au、Ptが挙げられる。
【0050】
光学的に活性な素子が液晶を含んでいる電気光学式に切換可能なシステムの製造に関しては、以下の文献の開示内容を広範囲に参照されたい:
You−Jin Lee等は、「Mol.Cryst.Liq.Cryst.(第480巻,第278〜第283頁(2008年))」において、機械的に安定している柔軟なLCDをポリマーLC混合物から、相分離によって製造することを記載している。ここではいわゆる画素孤立液晶(PIXEL−isolierte LCs:PILC)が生じる(Se−Jin等著「im Jpn.J.Appl.Phys.(第44巻、Nr9A(2005年)、第6670頁−第6673頁)」も参照されたい)。
【0051】
Y.−T.Kim等は、「Appl.Phys.Lett.(88,263501(2006年))」において、自己配向式LCsに対する、多機能エラストマー基板をベースにした、ピクセル封入された柔軟なディスプレイを記載している。
【0052】
「Mol.Cryst.Liq.Cryst.(第470巻、第190頁〜第197頁(2007年))」は、マイクロ構造体を使用した安定した柔軟なLCDsを開示している。マイクロ構造体は、基板の間のスペーサとして用いられる。
【0053】
Se−jin Jang等は、「SID International Symposium 2007 Digest of Technical Papers(XXXVIII巻、Book I 第653頁〜第656頁)」において、柔軟なLCDを製造するために2つのプラスチック基板の間を固定的に結合することを記載している。
【0054】
Y.Watanabe等は、「SID International Symposium 2007 Digest of Technical Papers(XXXVII巻、Book I 第418頁〜第419頁)」において、柔軟なLCDに対する優れた光学特性を備えた透明なプラスチックフィルムを開示している。
【0055】
Y.−K.Kim等は、「2006 IEEE Leos Annual Meeting Conference Proceedings(Montreal、QC、Kananda、第424頁〜第425頁)」において、モバイル用途のためのプラスチック基板を備えた高い柔軟性を有するLCDを記載している。
【0056】
T.Schneider等は、「Proc.of SPIE(第6487巻、64870J、(2007年))」において、柔軟なコレステリックLCDを記載している。
【0057】
本発明による電気光学式に切換可能なシステムの別の有利な実施形態では、光学的に活性な素子は、高分子分散型液晶(Polymer dispersed liquid crystal:PDLC)を有している。高分子分散型液晶は、切換時に、一般的に、約10〜20Vの範囲の電圧を必要とする。有利には、これは容易に製造可能であることを特徴とする。これは殊に、固定組み込み装置内での使用に適しており、例えば、販売棚および陳列ケースでの使用に適している。PDLCの製造は、例えば、T.Kajiyama等がAnnual Report of the Faculty of Engineering、Kyush(2003年)内「Development of Flexible and Large−area Liquid Crystal Display Device(第19頁〜第28頁)」内に記載している。
【0058】
高分子分散型液晶エレメント(PDLCエレメント)では、電圧の印加によって、エレメントの透過性が変えられる。PDLCエレメントのこの機能原理は、光学的に活性な材料に基づいている。この材料は、非常に小さい液晶滴から成る。この滴は、固形ポリマー物質内に分散して存在している。LCフィルムとも称されるこの材料は、2つの導電性プラスチックフィルムの間に存在している。これらは、ディスク結合体またはフィルム結合体内に存在しており、電流の流れに寄与する。電圧が印加されていない場合には、ポリマー内に含まれている液晶は無作為に配向され、入射光が散乱される。液晶はここで、乳白色に濁った、半透明の面を形成する。この面は、入射光からの有効な保護層として、または保護部としても用いられる。電圧が印加されると、液晶は統一して配向され、この層はクリアーになる。しかし非常に高い透明性は、層に対して垂直に観察する場合にしか得られない。斜めから光が入射する場合または斜めの観察角度の場合には、電圧によっても、光の僅かな散乱が観察される。
【0059】
上述した状態は、「通常黒モード」である。しかしフィルムまたは複数のLCフィルムの相応する配置構成によって、「通常白モード」も調整される。ここで光は、スイッチオフ状態において通過する。電圧を印加することによってはじめて、PDLCエレメントが濁る、ないしは光保護が形成される。択一的に、「通常黒モード」におけるエレメントは、適切な電気的な切換によって、「通常白モード」に相応するモードにされる。
【0060】
電気光学式に切換可能なシステムの上述した第2の実施形態では、光学的に活性な素子は、電圧が印加されていない場合に、可視波長領域の光の通過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路の閉成によって、可視波長領域における光の高い透過を許容する。
【0061】
この実施形態では、光学的に活性な素子は、有利にはフォトエレクトロクロミック素子であり、これは、スイッチングされていない状態において、照明下で、暗く着色され、電流回路を閉成することによって、システムの外部照明状態に依存しないで、実質的に透明になる。フォトエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック層の作用メカニズムと電気化学式ソーラーセルの作用メカニズムとを組み合わせる。電荷搬送は、ガラス基板上の透明な、導電層を介して行われる。外部電流回路を介して、層が接続される:この外部電流回路が照射下で開放されている場合には、層は着色される。電流回路が閉成されている場合には、照射下でも層が着色される。スイッチが開放されたままである場合、着色されたままである。
【0062】
この第2の実施形態の有利な構成では、入力装置はフォトダイオードを含んでいる、またはフォトダイオードから成る。入力装置がソーラーセルを含んでいるまたはソーラーセルから成ることも、この実施形態において可能である。しかしソーラーセルの使用は、第1の実施形態の場合のように、全てのコンセプトで有利なのではない。なぜならスイッチング(スイッチオン)時に電流回路は閉成され、光の透過が少なくとも阻止されるからである。スイッチング時にソーラーセルが暗くされると、これは電流源として使用可能ではない。従って、第2の実施形態では、入力装置としてのソーラーセルの使用時にも、通常は、従来の電流源が必要である。
【0063】
フォトダイオードは半導体ダイオードである。これは、可視光を電流に変換する。これは、ライトバリア、赤外ビームによる遠隔制御(遠隔操作)および光測定において使用される。これは、光学式伝送システムおよびソーラーセルにおいて使用される。本発明ではフォトダイオードが使用され、これによって光が電圧信号に変換される。
【0064】
フォトダイオードを使用した第2の実施形態による切換状態を、以下のようにまとまめる:
【表3】

【0065】
これは次のことを意味する:
・光入射時ないしは周囲が明るい場合には、光学的に活性な素子は暗く着色される
・周囲が暗い場合には、光学的に活性な素子の色が無くなり、透明になる
・フォトダイオード(または択一的にソーラーセル)(入力装置、スイッチオン)が完全に陰にされている場合には、光学的に活性な素子は外部の照明状態に依存せずに透明になる。
【0066】
本発明の構成要件は同様に、本発明の電気光学式に切換可能なシステムを含んでいるパッケージである。
【0067】
パッケージとは、所期のように取り付けられており、取り外しが可能な、製品の包みのことである。特定の製品、例えばばら荷、液体または気体は容器内に梱包される。適切なパッケージは例えば、小袋、びん、チューブ、おけ、箱、ボール箱、厚紙箱および缶である。パッケージのための適切な材料は、例えば紙、プラスチック、木、金属、ブリキ、ガラス、紙等である。
【0068】
適切な実施形態ではまずは、入力装置のために光源が提供される。
【0069】
光源とは、本発明の枠内では、光の源となる箇所であり、殊に、可視波長領域にある光の源となる箇所である。ここではこれは殊に、人工の光源のことである。光源は一次元でも二次元であってもよい。一次元の光源は、自身で発光する光源である。これには例えばランプが属する。第2の次元の光源としては、光を反射するだけであり、自身で発光しないボディが挙げられる。これには例えば、車両および衣服に着けられた反射体および、光を反射する全ての他のボディが挙げられる。光源とは、点光源、拡散光源またはこれらの組み合わせである。
【0070】
入力装置に対する光源の提供によって、入力装置の外部の照明状態が常に同じであることが保証される。これによって、電流は、周囲の照明状態に完全に依存せずに切換られる。
【0071】
有利な実施形態では、本発明のパッケージは、光の影響から保護されるべき販売商品に対して使用される。
【0072】
販売商品とは、個人的な使用のために製造され、販売されている消費財である。これは日持ちする耐久消費財である。これは元来の意味で消費されるのではなく、繰り返しの使用によって、消耗される(利用し尽くされる)。これは殊に消費財であり、例えば、食品、薬、ボディケア用品等である。販売商品は日常的に必要な商品(コンビニエンス商品)、すなわち、通常、比較的低い価格を有する商品、または捜索購入および比較購入の商品(shopping goods)、すなわち日常的な必需品よりも高い価格を有する商品、または特別な製品および特産品(speciality goods)、すなわち非常に高い価格を有する贅沢品である。
【0073】
これらの商品ないしは販売商品を購入する際には、できるだけ最良の選択肢を選択するために、購入判断中に比較が行われる。このような販売商品は、しばしば、光の影響から保護されて保管されるべきである。これによって、できるだけ長い期間にわたって質が保たれる。
【0074】
パッケージは、販売時に、保護機能、貯蔵機能、積載機能および搬送機能、調量機能および取り出し機能を担うだけでない。これは、販売パッケージとして、販売過程の合理化のための補助手段として、または場合によっては、付加的な利用を伴う販売パッケージとして用いられる。さらに、パッケージは、自身の幾何学的なデザインまたは色のデザインによって、および/または情報を提供する文字および画像の担体として、販売機能および/または広告機能を担う。販売パッケージによって、購入者は製品を識別することができる。これは、名前、ロゴ、パッケージの色または形状で行われる。さらに販売パッケージは、情報提供機能を有する。パッケージは製品を、量、重さおよび価格の様式で示し、危険物表示、賞味期限および使用目的に関する情報を示し、さらに暗号化されたデータ(バーコード)の担体でもある。例えば、プリントされているEANコードは、スキャナーレジでの迅速な読み込みを可能にする。
【0075】
魅力的な販売パッケージは販売を促進し、これによって売行きを増やし、新たな客を獲得する。この販売パッケージはしばしば、第1印象および購入を決定する印象を伝える。
【0076】
本発明の別の構成要件は、光の影響から保護されて保管されるべき物質に対する容器における、本発明の電気光学式に切換可能なシステムの使用である。
【0077】
特に本発明の電気光学式に切換可能なシステムは、光の影響から保護されて保管されるべき販売商品に対するパッケージにおいて使用される。
【0078】
殊に、電気光学式に切換可能なシステムの本発明に相応する使用の枠内では、販売商品は、光の影響を受けやすい食料品、医薬品、化粧品またはたばこないしはたばこ製品である。
【0079】
食料品とはここでは、人間によって、栄養摂取および/または嗜好のために、口から摂取される物質または製品である。これらは場合によっては、事前に調理される。食料品は殊に食物、嗜好品および栄養補助剤並びに食品添加物である。食料品とは、植物由来の製品であってもよく、これは例えば、野菜、果実、豆、ナッツ類、キノコ類、(乾燥)穀物製品、植物性食用油および食用脂、菓子、コーヒー、お茶、カカオ、薬草および薬味、または動物由来の製品、例えば、乳製品であり得る。また、水、塩、飲料またはさらに処理される製品、例えばコンビニエンス製品であり得る。
【0080】
製品の多くは、販売において光の影響を受けやすい。すなわち、この製品ないしはその中身の物質に対して高い光化学的な危険が生じる。製品、殊に食料品の光による被害に対する重要な影響量となり得るのは:
・食料品に入射する光の強度(総エネルギー)
・入射する光の色(スペクトルエネルギー分布)
・光内に食品が留まっている時間
・光と酸素の同時の存在
・温度
・製品の組成:
−製品の光吸収特性
−危険にさらされている中身の物質
−構成部分の可能な反応タイプ
−増感剤および抑制剤の存在
光によって誘導される反応の場合には、主に、食料品に照射される光が重要なのではなく、吸収される光成分が重要である。すなわち、受容されたエネルギーが重要である。光によって食料品に被害を与える以下の過程は、個々に、平行に、相互に補強して、競合してまたは連鎖反応として行われる:
・光によって誘導された未飽和脂肪の自動酸化
・脂肪および卵白の光感作酸化(光酸化)
・色素の光感作酸化
・光の影響による色素の分解。
【0081】
例えば、酸素との光誘導反応に対して食用脂が影響を受けやすいことが知られている(光酸化)。牛乳および乳製品における光分解過程は、光によって誘起される香気損失、例えば、油焼けのする味、いわゆる「光による味の変化(Lichtgeschmacks)」の形成、および光誘起のビタミン崩壊(アスコルビン酸の損失)を生じさせる。カカオバターは、光の影響を受けて酸化しやすい。殊に、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、およびナッツ等が入ったチョコレートは、従って、特に光の影響を受けやすい。クロロフィルを含有した植物性の構成成分の場合は、光の作用によって、油脂の酸化が開始される。肉または魚の場合には、ヘマチン化合物が存在することによって、自動酸化が助長される。筋肉の場合には、メトミオグロビン形成(赤からグレーへの色への変化)が光によって促進される。粉末パプリカは、例えば、光の影響で退色する。しかしパプリカ薬味は、消費者によって、強烈な色によってのみ、高い価値を有する製品として認識される。冷凍品自体、光の影響を受ける:冷凍されている牛肉の赤色は照明時には、約3日しか保たれず、これに対して、暗い状態では、三ヶ月保たれる。
【0082】
従って、通常、このような光の影響を受ける製品は、光を通さないパッケージ、例えば小袋、箱等で提供される。しかし光を通さないこのようなパッケージの場合には、パッケージの中身、ひいては製品を見ることができない。これは殊に、購入に興味を示している者が、製品の質を、その外見自体に基づいて判断する場合には欠点となる。殊に高価な食料品の質の判断基準としてはしばしば、製品の外側状態、例えば碾かれている製品における粒子性ないしは細かさ、例えば薬味における色等がある。購入の可能性のある者が、品物の外見を判断することができるようにするために、パッケージは、製品の視覚的な調査を可能にしなければならない。
【0083】
購入判断は主に無意識に、感情的に行われる。無意識の刺激によって、通常は迅速かつ直接的に購入判断がなされる。ここで製品の特別な特徴(新製品、改良品、新鮮、高級等)は、重要な役割を担う。なぜならこれは、製品に対する好奇心および興味を呼び覚ますからである。期待感を伴うゲーム、ファンタジーに富んだものへの憧れ、すなわち遊びの本能を呼び起こすパッケージも流行している。デザインは、消費業界の全ての領域における重要な要素になっており、付加的な製品利点と見なされている。殊に、デザインは、製品差別化のための鍵として用いられる。最終的に、製品を簡易的にパッケージするだけでは不十分である。パッケージは、製品の利点および値を表さなくてはならない。
【0084】
この新たなパッケージによって、購入の興味を有している者が、品物の質を主観的に判断することができるだけでなく、品物を妨害する光の影響から保護することが可能である。この新たなパッケージの相応するデザインはさらに、所期のように、客の購買意欲を呼び起こすことができる。
【0085】
本発明に相応する、電気光学式に切換可能なシステムおよび特に本発明のパッケージは、実質的に2つの構成部分から成る:すなわち光学的に活性な素子と光起電性効果に基づく入力装置から成る。ここでこの入力装置は有利には、ソーラーセルを有している、またはソーラーセルから成る。電流形成は有利には、ソーラーセル上への光入射によって行われる。これは例えば柔軟なまたは剛性の(多)結晶または色素ベースであり得る。本発明による装置を技術的に実現するために、市販されている部品を用いることができる。
【0086】
多結晶ソーラーセルは標準的品物であり、例えばConrad Electronicsから購入することができる。これには、名称「SOLARZELLE5V/81MA」を有するソーラーセルが挙げられる(http://www.conrad.de/ce/de/product/191321/SOLARZELLE-5-V81MA.2010年4月)。これは5Vの定格電圧を有している。これは、5Vの定格電圧を有している。
【0087】
色素ソーラーセルは、例えば、G21i社、Cadiff,Wales(www.g24i.com,2010年4月)から購入することができる。特別な実施形態では、これらは柔軟であり、従って、湾曲した表面上での使用に適している。
【0088】
自己暗化に適しているLCDユニットは、例えばNemoptic社(1.rue Guynemer, 78114 Magny les Hameaux, France,www.nemoptic.com, 2010年4月)、またはDensitron社(www.densitron,com, 2010年4月;商品LMR37338)で購入可能である。これは柔軟な、透過性のLCDユニットであり、電圧状態に応じて、透明と黒とで切換可能である。使用されるべき切換電圧はここで、LCDタイプに応じて、3Vと5Vの間である。いわゆるドットから成るラスターがこの場合には十分である。従って、別の制御エレクトロニクスを使用する必要はない。ここからは当然、(例えば広告目的で)画像出力が望まれているアプリケーションは除外される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1a】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの可能な実施形態
【図1b】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの可能な実施形態
【図2a】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの可能な実施形態
【図2b】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの可能な実施形態
【図3】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの、容器、特にパッケージ内での使用例
【図4】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの、容器、特にパッケージ内での使用例
【図5】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの、容器、特にパッケージ内での使用例
【図6】本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの、容器、特にパッケージ内での使用例
【実施例】
【0090】
図1aおよび1b並びに2aおよび2bは、それぞれ、本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの可能な実施形態を示している。図3〜6には、本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの、容器、特にパッケージ内での使用例が示されている。これらの図面は本発明を説明するものであり、本発明はこれらの図面に制限されない。
【0091】
図1a〜2bおよび3〜6では、以下の参照番号が使用されている:
1=透明フィルムないしは壁部
2=光学的に活性な素子
3=光不透過性フィルムないしは壁部
4=ソーラーセル
図1aおよび1bには、本発明による電気光学式に切換可能なシステムの簡単な実施形態が示されている。光学的に活性な素子2およびソーラーセル4は、担体として用いられる透明フィルムまたは壁部1上に存在している。これらはこの担体上で、光不透過性フィルムまたは壁部3内に埋め込まれている。従って、可視光は、光学的に活性な素子の領域においてのみ、このシステムを通過する。
【0092】
図1aでは、ソーラーセル4は上から覆われており(暗くされており)、(上方から入射する、図示されてない)光に曝されていない。ここで、光学的に活性な素子2は透明である。すなわち光は、入射方向において(上方から下方へ、図示されてない)、光学的に活性な素子2を通過する。
【0093】
ソーラーセルが上方から覆われていない場合には、(上方から入射する、図示されていない)光に曝される。これは図1bに示されている。従って、光学的に活性な素子は、実質的に光を通さない。
【0094】
図2aおよび2bには、本発明による、電気光学式に切換可能なシステムの第2の実施形態が示されている。光学的に活性な素子2は、担体として用いられる透明フィルムまたは壁部1上に存在している。これは担体上で、光不透過フィルムまたは壁部3内に埋め込まれている。ソーラーセル4は、別の透明フィルムまたは壁部1内に埋め込まれている。この第2の透明フィルムまたは壁部1は、光不透過性フィルムまたは壁部3および光学的に活性な素子2を完全に覆っている。この配置構成においても、可視光は、光学的に活性な素子の領域においてのみ、システムを通過する。
【0095】
図2aでは、ソーラーセル4は左側から覆われている。すなわち(左側から入射する、図示されていない)光に曝されない。この場合には光学的に活性な素子2は、可視の波長領域の光を通す。すなわち光は入射方向(左側から右側へ、図示されていない)において、光学的に活性な素子2を通過する。
【0096】
すなわちソーラーセルが左側から覆われていない場合には、(左側から入射する、図示されていない)光に曝される。これは図2bに示されている。従って、光学的に活性な素子は実質的に光を透過させない。
【0097】
図1a〜2bに示されている実施形態は、硬いまたは柔軟な光学的に活性な素子に適している。この構造は、硬いまたは柔軟なかつ平らなまたは湾曲した表面上に生じる。このように形成された覗き窓は異なる大きさで設計され、帯封まで、またはむしろ完全な外被まで設計可能である。その後方ないしは容器内に存在している物質が、このようにして効果的に光の影響から保護される。
【0098】
図2aないしは2bに示された実施形態は、特に、「TetraPak(C)」多層パッケージ内での使用に適している。ここでも覗き窓が異なる大きさで設計され、帯封まで、またはむしろ完全な外被まで設計可能である。
【0099】
図3〜6においてそれぞれ、パッケージのデザイン例が示されている。これらは、その内部に組み込まれた新たな電気光学式に切換可能なシステムを有している。
【0100】
図3は、切り換え可能な覗き窓を備えた、平行六面体状の容器を示している。この覗き窓は、実質的に光学的に活性な素子2から成り、ソーラーセル4によって、透明と光不透過との間で切り換え可能である。容器自体は、光不透過性の壁部3から成る。光学的に活性な素子とソーラーセルは、平行六面体の1つの面上に、小さい空間的な間隔で配置されている。
【0101】
図3における配置構成は、容器内に存在する製品を上から見ることを可能にする。
【0102】
図4は、同じように、平行六面体形状の容器を示している。しかしこれは2つの、対向する切り換え可能な覗き窓を有している。覗き窓は実質的に、それぞれ1つの光学的に活性な素子2から成り、ソーラーセル4によって同時に、透明と光不透過との間で切り換え可能である。この容器自体は、光不透過性の壁部3から成る。ソーラーセルと光学的に活性な素子は、平行六面体の1つの面上に、小さい空間的な間隔で配置されている。
【0103】
図4の配置構成は、容器内を見通すことを可能にし、これによって、この中に存在する製品を包括的に観察することができる。
【0104】
図3および4に示されたデザインは殊に、硬いないしは僅かに変形可能なパッケージに適している。これは例えば、タブレットの缶である。冷蔵庫の扉に使用することも可能である。
【0105】
図5は、切り換え可能な覗き窓を備えた、円筒状の容器を示している。覗き窓は実質的に、光学的に活性な素子2から成り、ソーラーセル4によって、透明と光不透過との間で切り換え可能である。この容器自体は、光不透過性の壁部3から成る。覗き窓ないしは光学的に活性な素子は、帯封の形状で完全に、円筒状外被を取り巻く。
【0106】
図5の配置構成によって、容器を見通すことが可能になり、これによって、その中に存在している製品をぐるりと観察することができる。
【0107】
図6は、同じように、切り換え可能な覗き窓を備えた円筒状の容器を示している。これは図5に示されている。しかし覗き窓ないしは、光学的に活性な素子は、円筒状材料の一部分のみを専有している。
【0108】
図6の配置構成によって、容器内に存在している製品を見ることが可能になる。
【0109】
図5および図6に示されたデザインは、殊に、缶またはびんに対して適している。
【0110】
さらに、完全に柔軟なフィルムソリューションが可能である。図3および4に示されたのと同様に、しかし、周囲方向における非常に僅かな伸張を伴って、柔軟なフィルムの使用時には紙袋または袋が得られる。この光学的に活性な素子はこの場合には、挿入ライトカバー(slip-in Light-cover)として構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・照明されている状態において可視波長領域の光の透過を少なくとも部分的に阻止し、電流回路の切り換えによって可視波長領域における光の透過を高める光学的に活性な素子と、
・光起電性作用に基づく入力装置であって、該入力装置の操作持続時間の間、前記光の透過を高める入力装置と、
を備え、
前記光の透過を前記入力装置の操作によって、システムの外部の照明状態に実質的に依存せずに高めることができる、
ことを特徴とする、電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項2】
前記入力装置は、ソーラーセルを含んでいるまたはソーラーセルから成る、請求項1記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項3】
前記光学的に活性な素子は、電圧が印加されると、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、前記電流回路の中断によって、可視波長領域における光の透過を高める、請求項1または2記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項4】
前記光学的に活性な素子は、液晶を含んでいる、請求項3記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項5】
前記光学的に活性な素子は、少なくとも2つの液晶層を含んでおり、当該層は、等しいキラリティを有し、同様の波長領域において吸収する、請求項4記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項6】
前記光学的に活性な素子は、少なくとも2つのキラルネマチック層を含んでおり、当該層は、等しいキラリティを有しており、同様の波長領域において吸収する、請求項5記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項7】
前記光学的に活性な素子は、高分子分散型液晶を含んでいる、請求項4記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項8】
前記光学的に活性な素子は、電圧が印加されていない場合には、可視波長領域における光の透過を少なくとも部分的に阻止し、前記電流回路の閉成によって、可視波長領域における光の透過を高める、請求項1または2記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項9】
前記光学的に活性な素子は、フォトエレクトロクロミック素子であり、当該フォトエレクトロクロミック素子は照明下では暗く変色し、前記電流回路を閉成することによって、前記システムの外部照明状態に依存せずに、実質的に透明になる、請求項8記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項10】
前記入力装置は、フォトダイオードを含んでいるまたはフォトダイオードから成る、請求項9記載の電気光学式に切換可能なシステム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器。
【請求項12】
付加的に、光源が入力装置に対して備えられている、請求項11記載の容器。
【請求項13】
光の影響から保護されるべき販売商品のための、請求項11または12記載の容器。
【請求項14】
前記入力装置の操作持続時間の間、自身の内部への高い光透過を許可する容器の部品としての、請求項1から10までのいずれか1項に記載された電気光学式に切換可能なシステムの使用。
【請求項15】
光の影響から保護されて保管されるべき物質のための容器の部品としての、請求項1から10までのいずれか1項に記載された電気光学式に切換可能なシステムの使用。
【請求項16】
光の影響から保護されて保管されるべき販売商品のためのパッケージ内での、請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記販売商品は食料品、栄養補助剤、医薬品および/または化粧品である、請求項15記載の使用。
【請求項18】
内部の包装された製品を光の悪影響から保護するためのパッケージとしての、請求項1から10までのいずれか1項に記載された電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器の使用。
【請求項19】
消費者の購買意欲を高めるためのパッケージとしての、請求項1から9までのいずれか1項に記載された電気光学式に切換可能なシステムを含んでいる容器の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533086(P2012−533086A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518971(P2012−518971)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059659
【国際公開番号】WO2011/003915
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】