説明

電気光学素子およびその製造方法

第1および第2の電極(515、536)、少なくとも1つの機能層(532、534)を含み電極に電気的に結合される機能構造体(530)、電極のうちの少なくとも一方(515)に電気的に結合されるエッチングされた金属構造体(512)、を支持する基板(570)を含む電気光学素子(501)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学素子に関する。本発明は電気光学素子の製造方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学素子とは、電気信号に応答して光学的効果を提供する、または光学的刺激に応答して電気信号を生成する素子である。第1のものの例は、有機発光ダイオード類(organic light emitting diode、OLED)およびエレクトロクロミック素子類等の発光ダイオード類である。第2のものの例は太陽電池セル類である。
【0003】
フレキシブルプラスチック基板上の大面積OLED照明のためには、システムの駆動に大電流が必要とされる。陽極(例えばITO)および陰極(例えばBa/Al)のために用いられる現在の薄膜材料は大きな抵抗率を有しており、大電流は大幅な電圧降下を生じさせ、それは不均一な発光を決定づけてしまう。プラスチック基板上に大面積フレキシブルOLED素子を製作するには、プラスチック基板の追加のメタライゼーション構造が必要である。製造コストを低減するために、このような構造化されたメタライゼーションコーティングは、好ましくは、インラインロールツーロールウェブコーティングプロセスを用いてプラスチック箔のロール上に施されることになる。
【0004】
それ故、発光素子類およびエレクトロクロミック素子類等の電気光学素子類のために、ならびに同様に太陽電池製品類のために、一方では良好な導電性を有しつつ、他方では照射のための高透過率を有するメタライゼーション構造が必要である。国際公開第2007/036850号が、陽極層、陰極層および有機層を有する有機ダイオード構造体を含む有機ダイオード素子を記載している。陽極層および陰極層のうちの一方は、前記構造体の面上に配される一連の接触エリアを有する。遮蔽層が前記構造体を密閉するように覆い、前記一連の接触エリアと位置合わせされた一連の開口部を設けられる。前記遮蔽層上には金属導体が電気めっきされており、一連の開口部を介して一連の接触エリアに接触する。
【0005】
電気めっきされた金属導体は陽極および陰極を分路し、それにより大きな有機ダイオード素子のエリア上における一様な電圧分布を提供し、それにより一様な輝度を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良された電気光学素子を提供することである。本発明のさらなる目的は、電気光学素子の改良された製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、
−第1および第2の電極、
−少なくとも1つの機能層を含み電極に電気的に結合される機能構造体、
−電極のうちの少なくとも一方に電気的に結合されるエッチングされた金属構造体、
−を支持する基板
を含む電気光学素子が提供される。
【0008】
第2の態様によれば、電気光学素子の製造方法であって、連続するステップ、すなわち
−第1の金属基板を設けるステップと、
−第2の基板を設けるステップと、
−エッチングされた金属構造体を形成するために金属基板を選択的にエッチングするステップと、
−機能構造体を堆積するステップと、
を含む方法が提供される。
【0009】
「連続する(subsequent)」という表現は、特定されているステップは、それらが上述されている順序で遂行されることを意味するものとして理解される。しかし、2つの連続するステップの遂行の間に1つ以上の追加のステップが遂行されてもよい。
【0010】
エッチングされた金属構造体は電極の少なくとも一方のためのシャントの役割を果たす。このようにして、発光素子の場合に、一様な電圧分布が実現される。金属基板は、それが選択的にエッチングされる前に、電気光学素子の種々の層の堆積を可能にする担持体の役割を果たす。金属基板は高温処理ができ、そのことは、より多様な処理技術から処理速度および質に関して最も好都合な処理技術を選択することを可能にする。
【0011】
金属基板を選択的にエッチングすることによって、素子の陰極および/または陽極を分路するために用いられることができる補助的な導電性構造体が形成されることができる。金属構造体はエッチングされるので、その高さと幅との間の比較的高いアスペクト比を持つ要素を有するパターンを形成することが比較的容易にである。エッチングされた金属構造体は、例えば、このような比較的高いアスペクト比を持つ導電線のパターンを有すればよい。それ故、エッチングされた金属構造体は高導電性を有することができつつ、その一方、それは実質的に目に見えない。
【0012】
金属構造体内の残りの金属の粒状構造から、それは、実質的に連続した層の残りであることが認められることができる。金属箔が金属粒子から圧延されるとこの粒状構造を有する。さらに、残りの金属構造体は、堆積法からは生じえなかったであろう、用いられたエッチングの種類の特質である形態特徴を有することを見ることができる。
【0013】
国際公開第2007/002376号が太陽電池セルの製造方法を記載していることに留意されたい。当該方法は、第1の層を備えるダイに接触し、該第1の層は金属層を支持し、それにより、該金属層の少なくとも一部分は第2の層に転写され、複数の開口領域を備えるメッシュの形の太陽電池セル電極を形成することを含む。
【0014】
国際公開第2007/002376号によれば、以下の方法によって層上にメッシュ電極が打ち抜き加工されることができる。その表面内に機械加工されたパターン(例えばメッシュパターン)を有するダイ(例えばホットスタンピングダイ)を第1の層(例えばフレキシブル基板)の後面に接触させることができる。第1の層の前面は、連続した金属層でコーティングされることができる。すると、第1の層の前面を、受像層の役割を果たす第2の層に接触させることができる。ダイに圧力が印加されると、第1の層の前面上の金属層は第2の層に転写し付着する。ダイに印加される圧力は少なくとも約100psi(0.6895MPa)(例えば、少なくとも約1,000psi(6.895MPa)または少なくとも約5,000psi(34.48MPa))とすることができる。実施形態によっては、ダイが第1の層の後面に接触する前に第1の層の前面を第2の層に接触させることができる。
【0015】
別の方法によれば、メッシュは化学エッチングによって用意されることができる。しかし、国際公開第2007/002376号は、金属基板をエッチングするステップは、第2の基板を設けるステップの後に続くことを開示していない。エッチングのステップが行われる前にまず第2の基板を設けることによって、第1の金属基板は、製造プロセスの間に、第2の基板および透明導電性酸化物の層等の、電気光学素子の種々の層を堆積させることができる担持体の役割を果たすことができる。
【0016】
電気光学素子の一実施形態では、電極のうちの少なくとも一方は層として形成され、エッチングされた金属構造体の表面が該層に直接、接触する。本実施形態では、電極のうちの前記少なくとも一方と、エッチングされた金属構造体との間に非常に信頼性の高い電気接触が実現される。
【0017】
電気光学素子の別の実施形態では、エッチングされた金属構造体は電極のうちの少なくとも一方に電気的に結合され、エッチングされた金属構造体の一部分は電極のうちの少なくとも一方を形成する。同様に、本実施形態では、電極が、エッチングされた金属構造体との結合体を形成するので、非常に信頼性の高い電気接触が実現される。
【0018】
方法の一実施形態では、金属基板を選択的にエッチングするステップは、金属基板の厚みを一様に減じるステップによってプリシードされる。処理の最初の段階では、金属基板は、その上に形成される構造体を支持するように機能する。(一時的な)第2の基板が施されれば、金属基板はもはや支持機能を持たなくなる。補助的な導電性構造体のための厚みは大幅により小さくすることができる。それ故、一様に減じる本ステップでは、金属基板の厚みは、形成される導電性構造体の厚みにまで減じられることができる。
【0019】
方法の別の実施形態では、金属基板を選択的にエッチングするステップは、金属基板の厚みを一様に減じるステップの後に行われる。このようにして、異なるパターンを有するエッチングされた金属構造体が得られる。一般的に、エッチングされた金属構造体の外形は今やさらに丸みがついている。これは、エッチングされた金属構造体上へのさらなる層のコンフォーマルな堆積がさらなる処理ステップとして所望される場合に、処理を容易にする
【0020】
金属基板を一様な減じるこのようなステップは、好ましくは、層の厚みの少なくとも2分の1の減少を生じさせる。実際には、金属基板は例えば50〜200μmの厚みを有していればよく、一方、導電性構造体は例えば1〜50μmのレンジ内の厚みを有する。
【0021】
方法の一実施形態では、機能構造体は、エッチングされた金属構造体上に全面的に堆積される。機能構造体のこの堆積方法は、例えば印刷およびスロットダイ技術を用いて実現されることができ、魅力的である。機能構造体の全面的な堆積は金属基板の比較的強いエッチングの後に可能になる。なぜなら、その場合には、結果として生じるエッチングされた金属構造体は、滑らかに曲がった細部を有するからである。こうなるのは、例えば、金属基板の厚みを一様に減じるステップが選択的エッチングのステップの後に続く場合である。
【0022】
本発明による方法の一実施形態では、第2の基板は、エッチングされた金属構造体が第3の基板内に埋め込まれた後に除去され、機能構造体は第2の基板の場所において施される。導電性構造体の厚みに関わりなく機能層が全面的に施されることができることは本実施形態の利点である。
【0023】
本実施形態では、第2の基板は、例えば、一時的な接着剤によって一時的に取り付けられる。一時的な接着剤は、一方では、金属層が処理され第3の基板内に埋め込まれる、製造プロセスの第1の段階の間に十分な支持を提供する弱い接着剤であればよく、同時に他方では、接着剤は、第3の基板を備えるスタックからそれが剥がされるのを許すのに十分弱い。
【0024】
本発明による方法の結果、
−第1および第2の電極、
−少なくとも1つの機能層を含み電極に電気的に結合される機能構造体、
−電極のうちの少なくとも一方に電気的に結合されるエッチングされた金属構造体、
−を支持する基板
を含む電気光学素子ができる。
【0025】
電気光学素子の特定の実施形態では、電極のうちの少なくとも一方は層として形成され、エッチングされた金属構造体の表面が該層に直接、接触する。本実施形態では、電極のうちの前記少なくとも一方と、エッチングされた金属構造体との間に非常に信頼性の高い電気接触が実現される。この場合、電極と、エッチングされた金属構造体との間の接触面はリブの幅と長さの積に比例する。実際には、リブは10ないし100μmのオーダーの幅を有していればよい。
【0026】
国際公開第2007/002376号において開示されているように、エッチングされた金属構造体によって形成される開口部内に、すなわちリブ同士の間に、堆積される電極、接触面は電極の高さとリブの長さの積に比例するのみである。前記電極が透明導電性電極である場合には、その高さは例えば100nmないし1μmに制限されなければならない。
【0027】
それ故、本発明の特定の実施形態では、透明導電性電極は、エッチングされた金属構造体の表面において層として施され、その開口部内にあるのではないので、透明導電性電極と、エッチングされた金属構造体との間に大幅により良好な電気接触が得られる。
【0028】
電気光学素子の別の実施形態では、エッチングされた金属構造体は電極のうちの少なくとも一方に電気的に結合され、エッチングされた金属構造体の一部分は電極のうちの少なくとも一方を形成する。同様に、本実施形態では、電極が、エッチングされた金属構造体との結合体を形成するので、非常に信頼性の高い電気接触が実現される。
【0029】
これらおよび他の態様が、図面を参照しながらより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】電気光学素子を概略的に示す図である。
【図1B】本発明による素子の種々の実施形態のエッチングされた金属構造体の上面図である。
【図1C】本発明による素子の種々の実施形態のエッチングされた金属構造体の上面図である。
【図1D】本発明による素子の種々の実施形態のエッチングされた金属構造体の上面図である。
【図1E】本発明による素子の種々の実施形態のエッチングされた金属構造体の上面図である。
【図1F】本発明による素子の種々の実施形態のエッチングされた金属構造体の上面図である。
【図2A】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2B】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2C】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2D】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2E】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2F】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2G】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2H】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。
【図2I】本発明による方法の一実施形態のステップを示す図である。 図2Iは、本発明による方法を用いて得られる本発明による素子を示す図である。
【図2J】代替的な方法を用いて得られる本発明による代替的な素子を示す図である。
【図3】本発明による素子の別の実施形態を示す図である。
【図3A】図3の素子の製造方法における中間製品を示す図である。
【図4A】代替的な方法のステップを示す図である。
【図4B】代替的な方法のステップを示す図である。
【図4C】代替的な方法のステップを示す図である。
【図4D】代替的な方法のステップを示す図である。
【図5A】別の代替的な方法を示す図である。
【図5B】別の代替的な方法を示す図である。 図5Bは、該別の代替的な方法を用いて得られる素子を示す図である。
【図6A】さらに別の代替的な方法を示す図である。
【図6B】さらに別の代替的な方法を示す図である。
【図6C】さらに別の代替的な方法を示す図である。
【図6D】さらに別の代替的な方法を示す図である。
【図6E】さらに別の代替的な方法を示す図である。 図6Eは、別の代替的な方法を用いて得られる素子を示す図である。
【図7A】本発明による素子の別の実施形態を示す図である。
【図7B】本発明による素子の別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態の態様を示す図である。
【図8A】図8におけるA−Aによる図8の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の詳細な記載では、本発明の完全な理解を提供するために特定の詳細が数多く説明される。しかし、本発明はこれらの特定の詳細を備えることなく実施されてよいことは当業者によって理解されよう。他の例では、本発明の態様を分かりにくくしないようにするために、周知の方法、手順および部品は詳細に記載されていない。
【0032】
本願明細書において用いられる術語は特定の実施形態を記載する目的のためのみのものであり、本発明の限定として意図されるものではない。文脈が別に明確に示さない限り、本願明細書において用いられるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は複数形も含むように意図される。「〜を含む(comprises)」および/または「〜を含む(comprising)」という用語は、本明細書において用いられる場合、提示された特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または部品の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、部品および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことはさらに理解されよう。
【0033】
さらに、特に明示的に断らない限り、「または(or)」は包括的なまたはに言及しており、排他的なまたはに言及するものではない。例えば、条件AまたはBは次のうちのいずれか1つによって満足される:Aは真であり(または存在し)且つBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在せず)且つBは真である(または存在する)、ならびにAもBも真である(または存在する)。
【0034】
以下に、本発明の実施形態が示される添付の図面を参照しながら、本発明がさらに十分に記載される。ただし、本発明は多くの異なる形態で具体化されてよく、本願明細書において説明されている実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。むしろ、これらの実施形態は、この開示を完全且つ徹底的なものとなるようにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるようにするために提供される。図面では、分かりやすくするために、層および領域のサイズおよび相対的サイズは誇張されている場合がある。
【0035】
要素または層が別の要素または層「の上にある(on)」、「に接続される(connected to)」または「に結合される(coupled to)」と言及されるとき、それは、他方の要素または層の直接、上にある、それに直接、接続または結合されることもできるし、あるいは介在要素または層が存在してもよいことは理解されよう。対照的に、要素が別の要素または層「の直接、上にある(directly on)」、「に直接、接続される(directly connected to)」または「直接、結合される(directly coupled to)」と言及されるときは、介在要素または層は存在しない。方法の特定のステップが、別のステップの後に続く(subsequent to)と言及されるとき、それは前記他のステップに直接続くこともできるし、または特定のステップを実行する前に1つ以上の中間ステップが実行されてもよいことはさらに理解されよう。全体を通じて、同様の符号は同様の要素を指す。本願明細書において用いられているように、「および/または(and/or)」という用語は、列挙されている関連項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0036】
本願明細書において、種々の要素、部品、領域、層および/または区画を記述するために第1(first)、第2(second)、第3(third)等の用語が用いられる場合があるが、これらの要素、部品、領域、層および/または区画はこれらの用語によって限定されてはならないことは理解されよう。これらの用語は、1つの要素、部品、領域、層または区画を別の領域、層または区画と区別するためにのみ用いられる。従って、後述される第1の要素、部品、領域、層または区画が、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、部品、領域、層または区画と呼ばれることができよう。
【0037】
本願明細書において、図に示されるとおりの1つの要素または特徴の、別の要素(単数または複数)あるいは特徴(単数または複数)に対する関係を記述するための記載を容易にするために、「〜の下(beneath)」、「〜の下方(below)」、「下部の(lower)」、「〜の上方(above)」、「上部の(upper)」および同様のもの等の空間的相対語が用いられる場合がある。
【0038】
空間的相対語は、図において示される配向に加えて、使用または作動中のデバイスの異なる配向を包含するように意図されることは理解されよう。例えば、図におけるデバイスがひっくり返されれば、他の要素または特徴「の下方にある(below)」または「の下にある(beneath)」と記述されている要素が、今度は、該他の要素または特徴「の上方に(above)」方向付けられることになろう。従って、「〜の下方(below)」という例示的な用語は、〜の上方(above)および〜の下方(below)の両方の配向を包含することができる。デバイスは他の方向に(90度回転させて、または他の配向に)方向付けられてもよく、本願明細書において用いられる空間的相対記述子はそれに合うように解釈されればよい。
【0039】
本願明細書においては、本発明の理想的な実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照しながら、本発明の実施形態が記載される。それ故、例えば製造技法および/または許容範囲の結果としての、図の形状からの相違が予想されるべきである。従って、本発明の実施形態は、本願明細書において示されている領域の特定の形状に限定されるものと解釈されてはならず、例えば製造に起因する、形状における逸脱を含むべきものである。
【0040】
別に定義されない限り、本願明細書において用いられる用語(技術的および科学的用語を含む)は全て、本発明が属する技術における当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。一般に用いられている辞書において定義されているもの等の用語は、関連技術に照らしてそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本願明細書において明示的にそう定義されない限り、理想的なまたは過度に字義通りの意味で解釈されることはないことはさらに理解されよう。本願明細書において挙げられる刊行物、特許出願、特許および他の参照文献はすべてそれらの全体が参照により援用されている。不一致の場合は、定義を含む本明細書を優先させるものとする。加えて、材料、方法および例は例示のみを目的としており、限定的なものとして意図されてはいない。
【0041】
図1Aは電気光学素子1を概略的に示す。素子は基板20を含み、該基板20は、第1および第2の電極15、36と、少なくとも1つの機能層32、34を含み電極に電気的に結合される機能構造体30とを支持する。実際にはより多くの複数の機能層、例えば10層、が用いられるが、明快にするために複数は2層と仮定される。素子は、電極のうちの少なくとも一方15に電気的に結合されるエッチングされた金属構造体12をさらに含む。
【0042】
図1Bは、エッチングされた金属構造体の一例を、図1AのAによる素子の上面図で示す。同様に、図1Cないし図1Fは種々の代替的なトポロジーを示す。分かりやすくするために、これらの図では、エッチングされた金属構造体によって形成される導電性構造体のみが示される。
【0043】
図1Bのエッチングされた金属構造体12は比較的細い金属分路線12aおよび比較的広幅の金属母線12bを含む。分路線は、例えば10ないし100μmのレンジ内、例えば50μm、の幅を有し、電極のうちの少なくとも一方、ここでは陽極15、のためのシャントの役割を果たす。母線12bは1ないし5mmのレンジ内、例えば1mm、の幅を有し、素子1との電気接触を容易にする。
【0044】
図1Cないし図1Fはエッチングされた金属構造体12のための種々の他のトポロジーを示す。
【0045】
図1Cでは、少なくとも1つの導電性構造体12cは櫛形構造体である。
【0046】
図1Dでは、各々櫛形構造体であり互いにかみ合っている一対の導電性構造体12d、12eが示されている。
【0047】
図1Eは迷路様の導電性構造体12fの別の例を示す。同様に、他の構造体、例えばハニカムの形態のもの、も可能である。
【0048】
図1Fは、複数の蛇行した導電性構造体12g、12hが配置される例を示す。本例では、例えば電源の極性を各々伝えればよい一対の導体が示されている。しかし、例えば制御信号を伝えるために、追加の導電性構造体が存在してもよい。
【0049】
以下、図1Cの実施形態を参照しながら本発明がより詳細に記載される。
【0050】
図2Iは本発明による電気光学素子の第1の例示的な実施形態を示す。素子は、図1CにおけるII−IIによる断面図で示される。図示の実施形態では、素子1は有機発光ダイオードである。素子は、陽極層15と陰極層36との間に埋め込まれる機能構造体30を含む。放射を放つ目的を有する種々の材料が用いられてよい。機能構造体は通例、小分子有機蛍光性化合物類、蛍光性およびリン光性金属錯体類、共役ポリマー類、ならびにそれらの組み合わせまたは混合物を含む、ただしそれらに限定されるものではない、任意の有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescent、「EL」)材料を含んでいればよい。
【0051】
蛍光性化合物類の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、dcm、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられる。ただし、それらに限定されるものではない。金属錯体類の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)等の、金属キレートオキシノイド化合物類;ペトロフ(Petrov)他、米国特許第6,670,645号ならびに国際公開第03/063555号および国際公開第2004/016710号において開示されているようなフェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジン配位子とのイリジウムの錯体類等の、シクロメタレート型イリジウムエレクトロルミネッセンス化合物類およびシクロメタレート型白金エレクトロルミネッセンス化合物類、ならびに例えば国際公開第03/008424号、国際公開第03/091688号および国際公開第03/040257号において記載されている有機金属錯体類、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ただし、それらに限定されるものではない。電荷を運ぶ母材と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン(Thompson)他によって米国特許第6,303,238号において、ならびにバロウズ(Burrows)およびトンプソンによって国際公開第00/70655号および国際公開第01/41512号において記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらの共重合体が挙げられる。ただし、それらに限定されるものではない。それらの組み合わせまたは混合物がさらに挙げられてよい。
【0052】
特定の材料の選定は、具体的な用途、動作中に用いられる電位または他の因子に依存すればよい。図示の実施形態では、機能構造体30は、約70nmの厚みを有するPEDOTの第1の層32と、50ないし100nm、ここでは80nm、の厚みを有する、上述されたように選択される材料のうちの1つの材料製の発光ポリマーLEP(light emitting polymer)の第2の層34とを含む。
【0053】
陽極層15はSnO2:Fによって形成される。この材料の代わりに、同様に、他の透明導電材料、例えば、アルミニウム、フッ素、ガリウムまたはホウ素をドープされた酸化カドミウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化亜鉛、酸化亜鉛のような透明導電性酸化物、が用いられてもよい。陰極層36は、LEP層34と接触する5nmの厚みを有するバリウムの第1の層、および該Ba層上の100nmの厚みを有するAlの第2の層を含む、Ba/Alの二重層によって形成される。他の適当な材料は例えばLiFまたはAgである。
【0054】
エッチングされた金属構造体12、ここではアルミニウム構造体、は1ないし50μmの高さおよび10ないし100μmの幅を有するリブを含む。典型的な例では、リブは10μmの高さおよび50μmの幅を有する。他の適当な金属は例えばクロム、銅、ニッケル、モリブデン、銀、亜鉛である。同様に、合金も可能である。実際には、コストの理由のために、カッパーまたはアルミニウムのような材料が最も適することになる。透明導電性電極15は、エッチングされた金属構造体12のリブに直接取り付けられる。
【0055】
エッチングされた金属構造体12は遮蔽構造体40内に埋め込まれる。第1および第2の無機層の間に挟まれた少なくとも1つの有機層を含む交互の有機および無機層のスタックによって、適当な遮蔽構造体が形成される。有機層は、架橋(熱硬化性)材料、エラストマー、線状ポリマー、または分岐もしくは多分岐ポリマー系あるいは前述のものの任意の組み合わせを含めばよく、任意に、光の透過をなお保証するのに足りるほど小さいサイズの無機粒子で充填される。
【0056】
有機層の材料は好ましくは、低い固有水蒸気透過速度および高い疎水性を有する。適当な架橋(熱硬化)系類の例は、脂肪族または芳香族エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、ポリエーテルアクリレート類、飽和炭化水素アクリレート類、エポキシド類、エポキシド−アミン系類、エポキシド−カルボン酸の組み合わせ類、オキセタン類、ビニルエーテル類、ビニル誘導体類、チオール−エン系類のうちの任意の単独の1つまたは任意の組み合わせである。エラストマー材料の適当な例はポリシロキサン類である。適当な分岐または線状ポリマー系類の例は、ポリアクリレート類、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリブタジエン類、ポリノルボルネン、環状オレフィン共重合体類、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルクロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンのうちの任意の単独の1つあるいは任意の共重合体または物理的組み合わせである。
【0057】
無機層(単数または複数)は、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、インジウムスズ酸化物(indium tin oxide、ITO)等の金属酸化物、窒化アルミニウム(AIN)、窒化ケイ素(SiN)等の金属窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、金属酸窒化物、例えばシリコンオキシナイトライド、または金属酸炭化物類、金属炭窒化物類、金属酸炭窒化物類等の任意の他の組み合わせを含む、ただしそれらに限定されるものではない、任意のセラミックであればよい。電子素子が光学的機能を有する場合には、少なくとも一方の側(基礎またはカバー)は実質的に透明なセラミックであるのが妥当である。従って、適当な材料は、例えば酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、インジウムスズ酸化物(ITO、In203+SnO2)、(SiC)、酸窒化ケイ素(SiON)およびそれらの組み合わせである。
【0058】
無機層(単数または複数)は実際には有機層よりも大幅に薄い。無機層は10ないし1000nmのレンジ内、好ましくは100ないし300nmのレンジ内の厚みを有していなければならないのに対して、有機層は0.1〜100μmの間、好ましくは5ないし50μmの厚みを有してよい。
【0059】
遮蔽構造体20の総厚みは好ましくは少なくとも50μmである。50μmよりも大幅に小さい厚み、例えば20μm、では、結果として生じる密閉された電子素子は速くまで損傷を受ける傾向がある。好ましくは、総厚みは500μm未満である。厚みが大幅により大きければ、例えば1mmであれば、製品の可撓性が損なわれる。
【0060】
図2A〜図2Iは本発明による方法の第1の例示的な実施形態を示す。
【0061】
本実施形態によれば、図2Aにおいて示されるステップS1では、上記指定されたように金属の50ないし500μmのレンジ内の厚みを有する、金属基板10が提供される。金属は数十cmの幅および数百メートルないし数キロメートルの長さを有する薄板であればよく、それにより、それは連続プロセス、例えばロールツーロールプロセス、で処理されることができる。
【0062】
図2Bにおいて示されるように、金属層10に透明導電層15が設けられる。透明導電層を施すために種々の方法が利用可能であるが、最も好ましいのは大気圧化学蒸着(atmospheric pressure chemical vapor deposition、APCVD)によってこの層を施すことである。なぜなら、これは高速且つ比較的安価な方法であるからである。本発明による方法では、これは、APCVDに必要な高い処理温度に金属基板が耐えるおかげで可能となる。
【0063】
図2Cにおいて示される次のステップS2では、この透明導電層15の自由表面において遮蔽構造体20が施される。
【0064】
遮蔽構造体20の無機層は、熱蒸着、e−ビーム蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、反応スパッタリング、反応蒸着など等のあらゆる種類の物理蒸着法、および熱化学蒸着(chemical vapour deposition、CVD)、光アシスト化学蒸着(photo assisted chemical vapour deposition、PACVD)、プラズマ促進化学蒸着(plasma enhanced chemical vapour deposition、PECVD)など等のあらゆる種類の化学蒸着法によって施されればよい。
【0065】
遮蔽構造体20の1つ以上の有機層は、あらゆる種類のコーティング技法、このようなスピンコート、スロットダイコート、キスコート、ホットメルトコート、スプレーコートなど、およびインクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷など等のあらゆる種類の印刷技法によって施されればよい。
【0066】
遮蔽構造体20は、金属基板10の存在を必要とせずともそれ自体で十分な安定性を提供する第2の基板の役割を果たせばよい。必要な場合は、遮蔽構造体20の自由表面において追加の箔が積層されればよい。
【0067】
一部の太陽電池セル等、電気光学素子によっては、遮蔽構造体は必要ない。その場合には、単純な有機基板が施されればよい。
【0068】
図2Dにおいて示される後続のステップでは、金属基板10は、場合に応じて、1ないし50μmのレンジ内の厚みにまで部分的に均一に除去される。好ましくは、部分的除去はエッチングによって行われる。例として、銅基板がFeCl3、硝酸または硫酸のようなエッチング液によってエッチングされればよい。例として、アルミニウム基板がNaOH、KOHならびにリン酸および硝酸の混合物によってエッチングされればよい。
【0069】
図2Eおよび図2Fにおいて示されるステップS3では、エッチングされた金属構造体12は金属基板の残りの部分として形成される。図2Eにおいて示されるように、パタレンされたフォトレジスト層14が施される。フォトレジスト層14は例えばポジ型またはネガ型のリソグラフィプロセスによってパターニングされる。代替的に、例えば印刷プロセスを用いて、所望のパターンに従って、エッチング耐性のあるラッカー層が施されてもよい。その次のステップにおいて、基板はエッチングされて所望の導電性パターン12、例えば導電線のパターン、を作り出す。
【0070】
実際には、エッチングプロセスは深さ方向だけでなく横方向にも金属を除去し、それにより、残りのフォトレジスト層またはラッカー層14は、エッチングされた金属構造体12によって形成されるリブの両側に延在する。
【0071】
図2Gにおいて示される後続のステップS4では、機能構造体30が施される。図示の実施形態では、機能構造体30は、PEDOT層32およびLEP層34を含む発光構造体である。太陽電池セルを製造するために方法が用いられる別の実施形態では、機能構造体30は、光子照射を電圧に変換するための層を含んでいればよい。その目的のためには、銅インジウムジセリニド、テルル化カドミウム等のような材料が用いられればよい。方法がエレクトロクロム素子を製造するために用いられる場合には、このときも機能構造体30のために他の材料が用いられればよい。
【0072】
図2Hにおいて示されるように、機能構造体30において陰極層36が施される。図示の実施形態では、陰極層はBaおよびAlの二重層である。実際の実施形態では、陰極層は化学蒸着によって、例えばPECVDプロセスによって、施される。パターニングされた層14が、エッチングされた金属構造体12によって形成されるリブ上に延在するという事実のおかげで、それは、蒸発した陰極材料が金属構造体12に触れるのを防ぎ、それにより短絡を防ぐ。
【0073】
図2Iにおいて示される最後のステップでは、前のステップにおいて形成された構造体が遮蔽構造体40内に埋め込まれる。遮蔽構造体20に用いられたのと同様の材料がこの構造体40に用いられればよい。
【0074】
ステップS2を参照しながら前述されたように、遮蔽構造体20において追加の箔50が施されてもよい。これにより、図2Jにおいて示される製品ができる。
【0075】
分かりやすくするために、これらの図では、電子素子が外部導体にどのように電気的に接続されるのかは示されていない。例として、これは、例えばレーザ穴あけ加工によって、遮蔽層のうちの少なくとも1つに電子素子の電気コネクタ12、36に向かってそれぞれの孔を開け、これらの孔を導電材料で充填することによって実現されればよい。
【0076】
図3では、図2Iにおけるものに対応するパーツは、100大きい参照符号を有する。図3において示される素子は代替的な方法に従って製造されたものである。この素子では、機能構造体132、134および電極136は透明導電層115および導電性構造体112を全面的に覆う。図3において示される素子は、図2Fにおいて示される半完成品の導電性構造体12を、導電性構造体112が、それらが施されている層、ここでは透明導電層115、に向かって傾斜する傾斜表面112aを有するまでさらにエッチングすることによって得られることができる。後続のステップにおいて、機能構造体132、134、陰極層136および遮蔽構造体140は、透明導電層115および導電性構造体112によって形成される表面上に全面的に堆積されることができる。
【0077】
図2Aないし図2Jを参照しながら説明された方法では、金属基板10は、図2Dにおいて示されるように、まず厚みが一様に減じられ、その後、図2Eおよび図2Fにおいて示されるステップS3においてパターニングされた。代替的に、まず金属基板をパターニングし、その後、或る量の金属を一様に除去することが可能である。これは図4Aないし図4Dに示されている。それらにおいては、図2Iにおけるものに対応するパーツは、200大きい参照符号を有する。
【0078】
図2Cの半完成品より開始して、金属基板210上に、パターニングされたフォトレジストまたはラッカー層が形成され、それにより、図4Aにおいて示される半完成品を得る。それに続き、金属基板210は、パターニングされたフォトレジストまたはラッカー層214を用いて選択的にエッチングされ、その結果、金属基板210が突出部211を有する、図4Bの半完成品ができる。後続のステップでは、図4Cにおいて示されるようにフォトレジスト層またはラッカー層214は除去され、それに続き、図4Cの半完成品の金属基板210は一様にエッチングされ、その結果、図4Dにおいて示されるように滑らかな曲面の細部を有する。この半完成品はこれより、図2Gないし図2J、または図3、図3Aにおいて示され、エンそれらを参照しながら記載されるステップによって、あるいは図6Eを参照しながら後述されるステップによってさらに処理されればよい。
【0079】
図5Aおよび図5Bは本発明による方法の別の実施形態を示す。それらにおける、図2A〜図2Jにおけるものに対応するパーツは、300大きい参照符号を有する。本実施形態では、金属基板310において遮蔽構造体320が直接施される。機械的強度のために必要であれば、支持基板360が施されることができる。支持基板は例えば有機層、例えばPEN層またはPET層等のポリマー層、である。有機層は金属基板310において遮蔽構造体320とともに積層されればよく、その結果、図5Aの半完成品ができる。有機層は接着剤を用いて積層されればよい。所望の場合には、支持基板360は後の段階において除去されてもよい。透明無機導電層は施されない。横方向の電気伝導は層32内の高導電率有機材料によって提供されることができる。構造体312によって形成される連続する2本のシャント線の間の距離は比較的短くすることができるので、高導電率PEDOT等の最新の有機導体類がこの目的のために十分な導電性を示す。次に、図5Aの半完成品は、図2Dないし図2Iを参照しながら記載されるステップに従って引き続き処理され、その結果、図5Bによる電気光学素子ができる。代替的に、図4Aないし図4Dを参照しながら記載されるステップが、図2Dないし図2Fを参照しながら見いだされるステップに取って代わってもよい。さらに別の実施形態では、図2Fまたは図4Dの半完成品より開始して、図3を参照しながら記載されるステップが適用される。
【0080】
図6A〜図6Eを参照しながら本発明による方法のさらに別の実施形態が記載される。それらにおける、図2A〜図2Jにおけるものに対応するパーツは、400大きい参照符号を有する。図2Bにおいて示される半完成品より開始して、一時的な担持体460が第2の基板として施される。第2の基板460、例えばポリマー箔、例えばPETまたはPEN箔を、適当な接着層465を用いて透明導電層415の自由表面に接着させ、その結果、図6Aにおいて示される半完成品ができる。ポリジメチシロキサン(Polydimethysiloxane)PDMSが接着層465のための材料として有用であると証明されている。この材料は取り扱いの目的のために十分な接着力を提供しつつ、後の段階における容易な除去を可能にする。代替的に、処理、例えば熱処理または照射処理、によって弱められることができる接着剤が層465のために用いられてもよい。それに続き、図2D、図2E、図2Fを参照しながら記載されるのと同様の方法で金属基板410がパターニングされる。こうして、図6Bの半完成品が得られる。代替的に、図4Aないし図4Dを参照しながら記載されるステップが適用されてもよい。図6Bの中間の成果物の次に、図6Cにおいて示されるように、導電性構造体412を埋め込む遮蔽構造体440が施される。遮蔽構造体440およびそこに埋め込まれた構造体412は今や、図6Dにおいて示されるように、一時的な基板460および接着層465の除去を可能にする第3の基板を形成する。図6Dの半完成品の次に、透明導電層415によって形成される表面において、PEDOT層432、LEP層434および陰極436を含む機能構造体330がスタックとして施される。ここでも同様に、層415は任意のものである。その機能は代わりに有機導体、例えば層432、によって果たされればよい。最後に、スタックを密閉する遮蔽構造体420が施される。
【0081】
本実施形態は、導電性構造体412は任意の高さを有することができると同時に、機能構造体430は全面的に堆積されることができるという利点を有する。全面的な堆積はパターニングされた堆積よりも大幅に高速であり、そのおかげでより安価である。所望の場合には、透明導電層415は省かれてもよく、それにより、導電性構造体412は機能構造体430の層432と直接、接触する。
【0082】
図7Aでは、図6Eのものに対応するパーツは、100大きい参照符号を有する。図7は、遮蔽構造体420内にスタックを密閉する代わりに、代替的に、金属層570を用いて陰極536の側において素子を遮蔽することが可能であることを示す。金属層570は、例えば、導電性接着剤を用いて陰極536に接着させるアルミニウムの箔である。アルミニウムの代わりに、例えば基板にも同様に適しているもの等の、他の金属も同様に適している。加えて、素子の側面にシール材580が設けられる。ありうるシール材としては、例えば熱硬化性樹脂類および熱可塑性樹脂類あるいは室温加硫(room temperature vulcanized、RTV)接着剤類等の、エポキシ類、アクリレート類、Norland 68 UV硬化性類、熱硬化性接着剤類、感圧接着剤類が挙げられる。一般的に、シール材580は、低浸透性を有し且つ接着力を提供する任意の材料を含む。金属層570には第1の外部接点590が直接施されればよい。導電性構造体512には中間導体592を介して第2の外部接点591が接続されればよい。中間導体592は、例えば、好ましくはレーザ穴あけ加工によって、遮蔽構造体540内に孔を開け、該孔を導電性接着剤で充填することによって形成される。類似した方法で、他の実施形態において外部接点と導電性構造体との間に電気接続が作られればよい。
【0083】
図7Bでは、図7Aのものに対応するパーツは、100大きい参照符号を有する。図7Bは、素子601の側面を遮蔽する代替的な方法を示す。この場合は、側面は、シール材680を用いて素子の側面に取り付けられるフレキシブルエッジシール685によって密封される。フレキシブルエッジシール685は金属箔、例えば銅またはアルミニウム箔、で形成されればよい。図7Aを参照しながら記載されているとおりのシール材680が用いられればよい。
【0084】
多くの実用的な目的のためには、エッチングされた金属構造体は電極のうちの一方だけに電気的に結合されていれば十分である。例えば、有機発光ダイオード類における適用では、Ba/AlおよびLiF等の陰極用材料は比較の良好な導電性を有しており、それ故、陽極層を支援するだけでよい。それにもかかわらず、さらにより大きなエリアのためには、両電極を支援することが必要になる場合がある。
【0085】
図8は、ビアを用いずにこれがどのように実現されることができるかの例を上面図で示す。図8Aは、図8におけるA−Aによる断面図によってこれをさらに明確にする。図8および図8Aにおいて示される実施形態では、図2Iに対応するパーツは、700大きい参照符号を有する。図8に示される素子は、2Iを参照して記載されているとおりの複数のエッチングされた金属構造体を含む。エッチングされた金属構造体712の他に、エッチングプロセス後の金属箔の残りとして同様に生じる主導電線716がある。主導電線は、エッチングされた金属構造体712と結合体を形成する。エッチングプロセス後の金属箔の残りとして同様に生じる、さらなる主導体718がある。さらなる主導体718は透明導電層715がないゾーン内に施され、陰極層736はこれらのさらなる主導体718を覆って延在し、それ故、それらはさらなる主導体に電気的に接続される。
【0086】
素子の種々のパーツ内にゲッター材料が施されてよいことに留意されたい。例えば、機能構造体にゲッター材料が封じ込められてよい。代替的に、遮蔽構造体の有機層内にゲッター材料があってもよい。分子ふるい類(またはゼオライト類(zeolites))、アルカリ土類金属酸化物類、金属酸化物類、硫酸塩類、塩化物類、臭化物類等の種々のデシカント材がゲッターとして選択されればよい。ゼオライト類がとりわけ適当である。ゼオライト類は物理吸着によって水分を吸着する材料であり、天然に生じるものであってもよいしまたは合成的に生じるものであってもよく、どちらも適当である。天然ゼオライト類とは、Na2O、Al2O3、xH2OおよびxSiO2の形式の、アルミニウム、ならびにナトリウムもしくはカルシウムのいずれかまたはその両方の含水ケイ酸塩類である。合成ゼオライト類とは、ゼオライトが添加されるマトリックスを形成する、ゲルプロセスまたは粘土プロセスのいずれかによって作られるものである。周知のゼオライト類としては、菱沸石(chabazite)(ゼオライトD(zeolite D)とも呼ばれる)、斜プチロル沸石(clinoptiolite)、エリオナイト(erionite)、フォージャサイト(faujasite)(ゼオライトXおよびゼオライトYとも呼ばれる)、フェリエライト(ferrierite)、モルデナイト(mordenite)、ゼオライトAならびにゼオライトPが挙げられる。例えば、3A、4Aおよび13X型のゼオライト類はすべて、水分子を吸着する能力を有する。このようなゼオライト類はNa2O、Al2O3およびSiO2を含む。或る吸着ゲッター類は、水分に加えて、ガス状のH2およびO2等の、ガス状汚染物質を吸着することができる。
【0087】
光出力を向上させるために、電気光学素子には、層の比較的低い反射率と比べて比較的高い屈折率を有する散乱粒子が提供された層がさらに設けられてよい。このような層は例えば素子の自由表面において施されればよい。
【0088】
請求項では、「〜を含む(comprising)」という語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数を排除するものではない。請求項において記載されているいくつかの項目の機能群を単一の部品または他のユニットが果たしてもよい。単に或る方策群が、互いに異なる請求項に記載されているということは、これらの方策群の組み合わせが都合よく用いられることはできないことを示すものではない。請求項における参照符号はいずれも範囲を限定するものとして解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−第1および第2の電極(15、36)、
−少なくとも1つの機能層(32、34)を含み前記電極に電気的に結合される機能構造体(30)、
−前記電極のうちの少なくとも一方(15)に電気的に結合されるエッチングされた金属構造体(12)、
−を支持する基板(20)
を含む電気光学素子(1)。
【請求項2】
前記電極のうちの前記少なくとも一方(15)は層(15)として形成され、前記エッチングされた金属構造体(12)の表面が前記層に直接、接触することを特徴とする、請求項1に記載の電気光学素子。
【請求項3】
前記電極のうちの前記少なくとも一方は、前記エッチングされた金属構造体(12)のリブに直接取り付けられる透明導電性電極(15)である、請求項2に記載の電気光学素子。
【請求項4】
前記エッチングされた金属構造体(12)は遮蔽構造体(40)内に埋め込まれる、請求項3に記載の電気光学素子。
【請求項5】
前記エッチングされた金属構造体(12)の前記リブに取り付けられる前記透明導電性電極(15)の表面とは反対側の、前記透明導電性電極(15)の表面において遮蔽構造体(20)が施されている、請求項3または4に記載の電気光学素子。
【請求項6】
前記エッチングされた金属構造体(12)のリブに前記透明導電層(15)とは反対側の面において残りのフォトレジストまたはラッカー層(14)が設けられ、前記残りのフォトレジストまたは層(14)は前記リブの両側に延在する、請求項3に記載の電気光学素子。
【請求項7】
前記機能構造体(132、134)、ならびに前記第1および前記第2の電極のうちの他方(136)は前記透明導電性電極および前記エッチングされた金属構造体(112)を全面的に覆う、請求項2に記載の電気光学素子。
【請求項8】
前記エッチングされた金属構造体(312)は前記電極のうちの前記少なくとも一方に電気的に結合され、前記エッチングされた金属構造体(312)の一部分(312a)は前記電極のうちの前記少なくとも一方を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電気光学素子。
【請求項9】
電気光学素子(1)の製造方法であって、以下の連続するステップ、すなわち
−第1の金属基板(10)を設けるステップ(S1)と、
−第2の基板(20)を設けるステップ(S2)と、
−エッチングされた金属構造体(12)を形成するために前記金属基板を選択的にエッチングするステップ(S3)と、
−機能構造体(30)を堆積するステップ(S4)と、
を含む方法。
【請求項10】
前記金属基板(10)を選択的にエッチングする前記ステップの前に前記第1の金属基板(10)に透明導電層が設けられることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の基板を設ける前記ステップの前に前記第1の金属基板(10)に透明導電層が設けられることと、前記透明導電層がAPCVDプロセスによって施されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属基板を選択的にエッチングする(S3)前記ステップは、前記金属基板の厚みを一様に減じるステップによってプロシードされることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記金属基板を選択的にエッチングする前記ステップ(S3)は、前記金属基板の厚みを一様に減じるステップの前に行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記金属基板の厚みは少なくとも2分の1に一様に減じられることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記機能構造体は前記エッチングされた金属構造体上に全面的に堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の基板は、前記エッチングされた金属構造体が第3の基板内に埋め込まれた後に除去され、前記機能構造体は前記第2の基板の場所において施される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の基板は前記第1の金属基板において直接施される、請求項9に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図3】
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【図3A】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図8A】
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【公表番号】特表2012−514298(P2012−514298A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543456(P2011−543456)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050811
【国際公開番号】WO2010/077139
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508353293)ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパストナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー (41)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】