説明

電気光学装置、および照明装置

【課題】十分な実用強度と照明効率を有する照明装置を提供すること。
【解決手段】照明装置110は、薄型の有機ELパネルであるパネル18を2枚の樹脂フィルム25a,25bによりラミネートした構造を備えている。ここで、ラミネート構造体25の発光領域V側には、平面的に発光領域Vを囲う額縁状の補強部材28が取り付けられている。また、裏面には、全面を覆う補強部材30が取り付けられている。補強部材28,30は、薄板状のパネル18を補強するための部材であり、引っ張り強度に優れた炭素繊維を含む材料から構成されている。さらに、各補強部材の内面には、それぞれ反射層28c,30cが設けられている。このような構成により、照明装置110は、十分な実用強度と照明効率とを実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、および当該電気光学装置を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビや、携帯電話に用いられるフラットパネルディスプレイには、薄型かつ軽量であることが求められている。また、薄型かつ軽量であることに加えて、柔軟性を持たせることも提案されている。
例えば、特許文献1には、100μm以下にまで薄型化した2枚のガラス基板間に有機EL(Electro Luminescence)層を挟持した有機EL表示装置が提案されている。また、当該文献では、薄型化に伴う強度不足を補うために、表裏のガラス基板の外側にそれぞれ樹脂性の補強層を設けることも記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、図14に示すように、一対の薄型ガラス基板からなる液晶パネル90を表面および裏面から2枚の透明な樹脂フィルム95a,95bで包み込んでラミネートした構造の液晶表示装置300が提案されている。また、液晶パネル90の表面には、補強層を兼ねた偏光板91が配置されており、裏面には、樹脂性の補強板92が配置されていた。つまり、液晶パネル90は、表裏面に樹脂性の補強板が貼り付けられた状態で、2枚の樹脂フィルム95a,95bによってラミネートされていた。
これらの補強板や、樹脂フィルムのラミネートによる補強構造は、圧縮応力には比較的強いものの、引張り応力に非常に弱いというガラス基板の特性を補うためのものと考察される。また、当該文献には、当該補強構造を有機ELパネルにも適用可能であるとの記載もある。
【0004】
また、有機ELパネルを用いてこのような表示装置を構成した場合、その自発光性を活かして照明装置として用いることも想定された。例えば、航空機の室内照明として用いた場合、柔軟性を活かして、曲面に沿って取り付けることが可能となり、さらに軽量であるため、燃料消費量の軽減効果も期待された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19082号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂性の補強板や、樹脂フィルムのラミネートによる従来の補強構造では、十分な実用強度を得ることが難しいという課題があった。換言すれば、従来の表示装置では、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを両立することが困難であるという課題があった。
これは、ガラス基板に貼付けられた樹脂性の補強板や、樹脂フィルムは、曲げ応力が加わるとガラス基板に追従して曲がってしまうからである。換言すれば、補強板や樹脂フィルムは、ガラス基板と一緒にガラス基板の限界点(限界半径)まで容易に曲がってしまうため、ガラス基板に亀裂が生じて割れてしまうことがあった。
【0007】
また、従来の補強構造では、表裏面に補強板が貼り付けられた状態の液晶パネルを2枚の樹脂フィルム95a,95bによってラミネートする構成であるため、液晶パネル90が厚くなってしまうばかりでなく、ラミネートする際に、液晶パネル90の周縁部に隙間Gが生じてしまうという課題があった。
この隙間Gは、特に、当該補強構造を有機ELパネルに適用した場合に問題となる。詳しくは、有機ELパネルの周縁部に大きな隙間Gが形成されると、当該隙間Gに水分が浸入する恐れがあり、有機EL層の劣化を招くからである。
また、有機ELパネルは自発光デバイスであるため表示(発光)の際に発熱を伴うが、従来の補強構造では、放熱についてなんら考慮されていないという課題があった。換言すれば、従来の補強構造では、有機ELパネルの発熱による劣化を抑制することが困難であるという課題があった。
【0008】
さらに、従来の表示装置は、前述した照明装置としての用途を想定したものではなかった。換言すれば、従来の表示装置では、照明装置として十分な照明効率を得ることは困難であるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0010】
(適用例)
電気光学層を有するパネルと、パネルの発光領域側の第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、第1の面を覆う樹脂フィルム上に設けられた補強部材と、を備え、補強部材は、パネルの発光領域に開口部と、パネルの第1の面に対向する第3の面と、第3の面と対向する第4の面と、を有し、補強部材の少なくとも第3の面および第4の面のどちらか一方には、反射層が形成されていることを特徴とする照明装置。
【0011】
この電気光学装置によれば、補強部材が、樹脂フィルムの外面において額縁状に設けられる構造であるため、パネルの表裏面に補強板が貼り付けられていた従来の表示装置よりも、パネルを薄くすることができる。よって、ラミネートする際にパネルの周縁部に発生する隙間を小さくすることができる。
また、補強部材が平面的にパネルの発光領域を囲って設けられているため、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することが可能となり、十分な実用強度を得ることができる。
さらに、補強部材における第3の面および第4の面のどちらか一方には、反射層が形成されているため、当該電気光学装置を照明装置として用いた場合、発光領域から放射される照明光の一部を反射層で反射して、照明に寄与する光とすることができる。換言すれば、反射層によって照明効率を高めることができるため、照明装置として十分な照明効率を得ることができる。
【0012】
また、補強部材の第3の面および第4の面に反射層が形成されていることが好ましい。
また、補強部材を、第1の補強部材としたとき、パネルの第2の面を覆う樹脂フィルム上に設けられた第2の補強部材を、さらに備えていることが好ましい。
また、第2の補強部材は、パネルの第2の面に対向する第5の面と、第5の面と対向する第6の面と、を有し、補強部材の第5の面に反射層が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、補強部材は、平面的に第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含むことが好ましい。
このように、補強部材を、第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含んだ構造とすることによって、平面的にあらゆる方向からの引っ張り強度が高まり、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
なお、炭素繊維とは、PAN(ポリアクリロニトリル)やピッチ等を原料とする長繊維を、1000℃以上の高温で高純度に炭化させたもので、高引張り強度、低い熱変形率(低線膨張係数)、高熱伝導性などを有する。このような炭素繊維をエポキシ樹脂などのバインダー樹脂と複合化したCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)とすることで、従来の無機粒子やガラス繊維で複合化した樹脂製の補強板に比べて高い引張り強度を付与することができるため、50〜200μmのような極めて薄い額縁状の補強部材が貼り付けられた状態で、炭素繊維の延在方向に曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
従って、適用例に係る電気光学装置によれば、十分な実用強度を得ることができる。
【0014】
さらに、樹脂よりも熱伝導率が優れた炭素繊維を含む補強部材は、従来の樹脂製の補強板よりも熱伝導率が高いため、パネルの発熱を効率良く放熱することができる。
【0015】
また、第1炭素繊維層、および第2炭素繊維層は、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグで形成され、補強部材は、第1炭素繊維層と、第2炭素繊維層とを3層以上積層、および硬化させた積層体であることが好ましい。詳しくは、各炭素繊維層は、炭素繊維に未硬化樹脂を含浸させたプリプレグを原料として形成されている。
また、補強部材は、インバー、またはチタン、若しくはチタン合金からなることが好ましい。
また、補強部材の開口形状は、発光領域と同じ形状で設けられるとともに、補強部材は、平面的にパネルの端部までを覆う大きさであることが好ましい。
また、パネルの周縁部において、樹脂フィルム、および補強部材を貫通する複数の取付け穴が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、取付け穴は、パネルの辺に沿って、長穴状に形成されていることが好ましい。
また、パネルは、一対のガラス基板間に、電気光学層を挟持してなり、ガラス基板の厚さは、それぞれ100μm以下であることが好ましい。
また、補強部材を、第1の補強部材としたときに、第2の面を覆う樹脂フィルムの上に設けられた第2の補強部材を、さらに備えることが好ましい。
また、第1の補強部材における第1の面側の面、および第2の補強部材における第2の面側の面には、反射層が形成されていることが好ましい。
また、樹脂フィルムは、ポリエチレン系共重合材料であることが好ましい。
また、電気光学層は、有機発光層を含む有機EL層であることが好ましい。
【0017】
電気光学層を有するパネルと、パネルの発光領域側の第1の面と、第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、第1の面を覆う樹脂フィルム上に設けられた補強部材と、を備え、補強部材は、パネルの発光領域に開口部と、パネルの第1の面に対向する第3の面と、第3の面と対向する第4の面と、を有し、補強部材の少なくとも第3の面および第4の面のどちらか一方には、反射層が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る表示装置の一態様を示す斜視図。
【図2】図1のf−f断面における表示装置の側断面図。
【図3】図2におけるd部の拡大図。
【図4】CFRPの積層構造を示す模式図。
【図5】表示装置の製造方法の流れを示すフローチャート図。
【図6】(a)、(b)各工程における製造態様を示す図。
【図7】(a)実施形態2に係る表示装置の平面図、(b);(a)のg−g断面における表示装置の側断面図。
【図8】(a)〜(c);図7(b)におけるj部の拡大図。
【図9】(a);図7(b)におけるk部の拡大図、(b);図7(b)におけるj部の拡大図。
【図10】(a)実施形態3に係る表示装置の平面図、(b);(a)のm−m断面における表示装置の側断面図。
【図11】照明装置としての飛行機の室内照明装置の態様図。
【図12】(a)変形例1に係るパネルの側断面図、(b)(c)補強部材の斜視図。
【図13】変形例2に係るパネルの側断面図。
【図14】従来の表示装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0020】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1は、本実施形態に係る表示装置の一態様を示す斜視図である。図2は、図1のf−f断面における表示装置の側断面図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置としての照明装置100の概要について説明する。
【0021】
照明装置100は、薄型の有機ELパネルであるパネル18を2枚の樹脂フィルム25a,25bによりラミネートした構造を備えたフレキシブルな有機EL照明装置(表示装置)である。なお、以下の説明において、当該ラミネート構造、またはラミネートした状態のパネル18のことをラミネート構造体25ともいう。
パネル18は、横長の長方形をなした発光領域Vを備えた有機EL照明パネルである。発光領域Vからは、その全面から略白色光(照明光)が出射される。
また、柔軟性を確保するためにパネル18を構成する一対の基板の厚さは、それぞれ100μm以下に設定されている。
なお、図1を含む各図においては、横長の長方形をなした発光領域Vにおける横方向をX軸方向とし、横方向よりも短い縦方向をY軸方向と定義している。また、パネル18の厚さ方向をZ軸方向としている。また、パネル18における発光領域V側の面を第1の面としての表面、その反対側の面を第2の面としての裏面という。
【0022】
ここで、ラミネート構造体25の表面側には、平面的に発光領域Vを囲う額縁状の補強部材28が取り付けられている。額縁状とは、発光領域Vに開口部を有するようにパネル18を覆う構成である。また、補強部材28の外周における端部はパネル18の端部(周縁部)までを覆う構成となっている。
補強部材28は、薄板状のパネル18を補強するための部材であり、引っ張り強度に優れた材料から構成されている。例えば、炭素繊維を含む材料を用いるのが好ましい。また、発光領域Vを露出させる開口部(穴)の四隅には、角Rが形成されている。
そして、図2に示すように、補強部材28の表面には、反射層28aと、透明な保護層28bとがこの順番に形成されている。換言すれば、パネル18の表面と平面的に隣り合う補強部材28の面(表面)には、反射層28aが形成されている。
このような構成により、照明装置100は、図1において点線で示したように、曲げることが可能なフレキシブル性と、曲げてもパネル18が割れない実用強度とを兼ね備えている。また、補強部材28の反射層28aにより、発光領域Vから放射される照明光の一部を反射して、照明に寄与する光とすることができる。
【0023】
また、補強部材28の四隅には、取付け穴3がそれぞれ形成されている。4つの取付け穴3は、パネル18の外側における樹脂フィルム25a,25b、および補強部材28による3層構造の部分に形成された貫通穴である。この4つの取付け穴3により、例えば、天井などに照明装置100をネジ止め固定することができる。
なお、取付け穴3の数は4つに限定するものではなく、照明装置100のサイズに応じて、適宜増減すれば良い。例えば、外形における長辺の略中央にさらに取付け穴3を備えていても良い。また、この取付け穴3を辺部に多く形成することで、補強部材の変形を促進できるため、外部衝撃を緩和してガラス基板端部への負荷集中を分散する役割もある。
【0024】
また、図2に示すように、パネル18は、素子基板1と封止基板16とから構成されており、その一端には、素子基板1の一辺が封止基板16から張出した張出し領域が形成されている。張出し領域には、フレキシブル基板20の一端が接続されている。なお、フレキシブル基板とは、フレキシブルプリント回路の略称である。
また、フレキシブル基板20の他端には、外部からの駆動電力を入力するための複数の端子が形成されている。
【0025】
「パネルの詳細な構成」
図3は、図2のパネル18におけるd部の拡大図である。
続いて、パネル18の詳細な構成について説明する。
パネル18は、素子基板1側の発光領域Vから略白色の照明光を放射するボトムエミッション型の有機EL照明パネルである。また、パネル18は、素子基板1、および封止基板16にそれぞれ形成された一対の陽極電極と陰極電極との間に駆動電力を印加して点灯駆動を行う、いわゆるパッシブ方式を採用している。
パネル18は、素子基板1、陽極電極6、電気光学層としての有機EL層8、陰極電極9、電極保護層10、緩衝層11、ガスバリア層12、充填材13、封止基板16などから構成されている。また、素子基板1と封止基板16とに挟持された部位のことを機能層17という。換言すれば、陽極電極6から充填材13までの積層構造を機能層17という。
【0026】
素子基板1は、透明な無機ガラスから構成されている。本実施形態では、好適例として、無アルカリガラスを用いている。
陽極電極6は、素子基板1上に形成された透明電極であり、ITO(Indium Tin Oxide)や、ZnOなどから構成されている。また、その平面サイズは、発光領域と同等か、または、一回り大きいサイズとなっており、素子基板1上において陽極配線(図示せず)と接続されている。
有機EL層8は、陽極電極6を覆って形成されている。また、図3においては実線で示すように一層の構成としているが、実際は破線で示すように、それぞれが有機物の薄膜からなる正孔輸送層、発光層、電子注入層などから構成されており、陽極電極6上にこの順番に積層されている。
【0027】
正孔輸送層は、芳香族ジアミン(TPAB2Me−TPD,α−NPD)などの昇華性の材料から構成されている。
発光層は、好適例として、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を含む多層構成となっている。なお、この構成に限定するものではなく、略白色光を合成可能な複数の発光層を含む積層構造および材料であれば良い。
例えば、オレンジ色発光層と青色発光層との2層を含む積層構造であっても良いし、発光層間に中間層を介在させた構成であっても良い。または、各発光層間に中間電荷発生層を挟んで配置した構成、いわゆるタンデム型有機EL層構成であっても良い。
電子注入層は、LiF(フッ化リチウム)などから構成されている。
また、有機EL層8を構成する各層は、好適例として、真空蒸着法などの蒸着法を用いて、昇華性の材料を積層して形成されている。
【0028】
陰極電極9は、有機EL層8を覆って形成されたMgAgなどの金属からなる金属層である。また、その端部の一部は素子基板1に面しており、陰極配線と接続されている。
電極保護層10は、SiO2や、Si34、SiOxNyなどの透明、かつ、高密度で、水分を遮断する機能を有する材質から構成されている。
緩衝層11は、熱硬化性のエポキシ樹脂などの透明な有機緩衝層である。
ガスバリア層12は、SiO2や、Si34、SiOxNyなどの透明、かつ、高密度で、水分を遮断する機能を有する封止層であり、有機EL層8への水分の浸入を防止する機能を担う。
充填材13は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂などからなる透明な接着層であり、ガスバリア層12と封止基板16との間を充填するとともに、両者を接着する。また、外部から、有機EL層8への水分の浸入を防ぐ機能も果たす。
封止基板16は、素子基板1と同様な無機ガラスから構成されている。
【0029】
また、封止基板16と素子基板1とは、封止基板16の周縁部に形成(塗布)されたシール剤15によって接着および封止されている。シール剤15としては、エポキシ系の接着剤や、紫外線硬化樹脂などを用いる。
また、素子基板1の一辺が封止基板16から張出した張出し領域には、フレキシブル基板20が接続されている。フレキシブル基板20は、例えば、ポリイミドフィルムの基材に銅箔などの配線パターンが形成された柔軟性を有する基板であり、素子基板1に形成された陽極配線、および陰極配線と異方性導電接着フィルムなどにより、電気的な接続が取られている。なお、フレキシブル基板に限定するものではなく、外部からの駆動電流を伝達可能な配線部材であれば良く、例えば、リード線を用いても良い。
ここで、異方性導電接着フィルムによる接続だけでは、機械的強度が不足しているため、従来は、フレキシブル基板20の接続部を覆ってシリコン樹脂(接着剤)などでモールドし、補強していたが、剥離し易いという問題があった。
本実施形態では、この補強構造の替わりに、樹脂フィルム25aを接着剤(充填材)として機能させることによって、十分な実用強度と柔軟性とを確保している。なお、樹脂フィルムの接着方法(ラミネート方法)については、後述する。
【0030】
このような構成のパネル18においては、フレキシブル基板20に駆動電力が供給されると、陽極電極6と陰極電極9との間に流れる駆動電流によって、有機EL層8が発光し、略白色の照明光が発光領域Vから出射される。
詳しくは、有機EL層8から放射された光のうち、陽極電極6側に進む光は、素子基板1を透過して照明光となる。また、陰極電極9側に進んだ光は、反射性を有する陰極電極9で反射した後、有機EL層8を透過し、さらに陽極電極6および素子基板1を透過して照明光となる。
なお、パネル18の構成は、ボトムエミッション型に限定するものではなく、トップエミッション型であっても良い。トップエミッション型とする場合には、封止基板16側から照明光が出射されるため、パネルの天地を反転させる必要がある。また、陽極電極6の下層(素子基板1側)に反射層を設けるとともに、陽極電極6を構成する金属層の厚さを光透過性が得られるまで薄くする。
また、2枚のガラス基板を用いた構成に限定するものではなく、ガラス基板1枚のみの構成としても良い。この場合、封止基板16は設けずに、陽極電極6を構成する金属層や、ガスバリア層12の厚さを厚くしたり、ガスバリア層を2重に形成することにより、2枚のガラス基板を用いた場合と同等なガスバリア性を確保することができる。
また、有機ELに換えて、無機ELを備える構成であっても良い。
【0031】
「ラミネート構造体、および補強部材の材質」
図2に戻る。
続いて、ラミネート構造体25を構成する樹脂フィルム25a,25b、および補強部材28の材質について説明する。
発光領域Vからパネル18の周縁部までを含むパネル18全面を平面的に表裏面から覆うように、ラミネートする樹脂フィルム25a,25bには、ガラス基板および補強部材28との接着性、柔軟性、透明性(光取り出し性)、フレキシブル基板20のモールド性(絶縁性と耐熱性)、および内部への水分浸入を防ぐ耐水性などの機能が必要となる。
これらの機能を満たすため、樹脂フィルム25a,25bの材料としては、耐水性(低吸水率)や絶縁性、柔軟性、透明性、低温溶着性を有するポリエチレンをベースとした樹脂が好ましい。また、接着性を向上させるため一部極性基を持たせた共重合体であることがより好ましい。
【0032】
具体的には、ポリエチレン系共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシアルキル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルコキシエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸アミノエチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ヒドロキシグリシジル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸アルキル共重合のうち、いずれかを用いることが好ましい。または、これらを2つ以上組み合わせた共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体などはガラスとCFRP双方の接着性に優れた共重合体である)、または混合物を用いることであっても良い。
【0033】
また、耐熱性を高めるためにエポキシ化合物やイソシアネート化合物、ポリエチレンイミンなどのアミン化合物などの硬化成分を架橋剤として含んでいても良い。なお、エチレン共重合体の中でも、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)などエステル化されていないカルボキシル基を有する材料を用いる場合には、低温溶着性や接着性に優れるもののフレキシブル基板20の銅配線などを腐食する可能性があるため、エポキシ系硬化剤などの架橋成分と組み合わせて熱により架橋させ、アクリル酸が残留しないようにすることが好ましい。
【0034】
補強部材28には、クラックの入りやすいガラス基板端部の補強と、線膨張係数が異なる材質の多層構造によるパネルの反り防止、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がってしまうことを抑制するための強靭性(耐引張り性)、およびパネル18が発する熱を放熱するための放熱性などの機能が必要となる。
これらの機能を満たすためには、高ヤング率(10GPa以上)で、低線膨張係数(10ppm/℃以下)、かつ、高熱伝導率(10W/m・k以上)の材料が好ましい。
本実施形態では好適例として、優れた引張り強度と、放熱性とを兼ね備えたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)を補強部材28の材料に用いている。CFRPは、低密度(1.5〜2.0g/cm3)、かつ、高引張り強度(1000MPa以上)であるため、薄膜化しても高強度な補強が可能であり、また、軽量であるため補強部材28の材料として好適である。
【0035】
図4は、CFRPの積層構造を示す模式図である。
CFRPは、炭素繊維と樹脂による複合材料であり、1方向に並行に揃えられた炭素繊維にエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリエステルなどの熱可塑性を含浸させたプリプレグと呼ばれる前駆体(炭素繊維層)を異なる方向に2層以上積層し硬化した複合材料である。
具体的には、図4に示すように、X軸方向に延在する複数本の炭素繊維を含む前駆体を炭素繊維層h(第1炭素繊維層)、Y軸方向に延在する複数本の炭素繊維を含む前駆体を炭素繊維層i(第2炭素繊維層)としたときに、炭素繊維層hと炭素繊維層iとを交互に4層積層した後に、加圧および加熱(例えば、120〜180℃)して、板状に硬化させたCFRPを補強部材28に用いている。なお、図4において、ストライプ状に示された線分は、炭素繊維の延在方向を示している。また、構成を明確にするために各層を離して描いているが、実際は接着(密着)されて一体となった積層体となっている。
また、炭素繊維としては、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、またはピッチ(石油樹脂)系炭素繊維を用いることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、好適例として4層構成のCFRPを採用したが、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば良い。換言すれば、各々の炭素繊維の延在方向が交差するように重ね合わせた2枚の炭素繊維層からなる積層構造を含んでいれば良い。
また、X軸方向を約0度としたときに、炭素繊維の延在方向が約0度、約90度、約90度、約0度となるような表裏対称の積層順が基本構造となるが、これに限定されるものではなく、例えば、約0度、約90度、約0度、約90度といった積層順や、約0度、約0度、約90度、約90度といった積層順であっても良い。
また、3層の場合は、0度、90度、0度という積層順や、6層の場合は0度、90度、0度、0度、90度、0度のような表裏対称構造の積層順が基本となるが、これらも上記のように限定されるものではない。
これらの構成であっても、補強部材28としての所期の機能を確保することができる。詳しくは、引張り強度については、平面的な略全方位において1000MPa以上を確保することができる。
また、放熱性については、高純度炭素からなる炭素繊維は高純度炭素であるため熱伝導が20〜60W/m・kと、ガラス(1W/m・k)や汎用プラスチック(約0.5w/m・k)に比べて高いため、十分な放熱性を得ることができる。さらに、CFRPの最表面には、大気中への放熱をより高めるため、表面に凹凸形状を設けて表面積を広げるような加工を行っても良い。
【0037】
図2に戻る。
補強部材28の表面には、反射層28aと、保護層28bとが、この順番で形成されている。
反射層28aは、金属製の反射層である。好適例としては、真空蒸着法などの蒸着法により、補強部材28の表面にアルミニウム薄膜層を形成している。なお、蒸着法に限定するものではなく、例えば、金属箔をプレス加工などにより押圧することにより、補強部材28の表面に金属薄膜層を形成しても良い。
保護層28bは、反射層28aに傷が付かないように保護するための透明樹脂コート層である。好適例としては、アクリル樹脂をスピンコート法などにより塗布した後、硬化させてクリアハードコート層を形成している。
【0038】
また、表面の補強部材28の開口部(穴)には、発光領域Vを覆う光学フィルム35が取り付けられている。
光学フィルム35は、強度補強や、表示面の保護などを図るために設けられている。
本実施形態では、好適例として、優れた透明性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)を光学フィルム35に用いている。また、その表面には、屈折率の異なる無機酸化物の多層構造からなる反射防止層(AR)が形成されている。
また、光学フィルム35の材質は、PETに限定するものではなく、透明性を有する材料であれば良い。例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(環状オレフィンポリマー)などを用いる。
また、光学フィルム35の表面処理についても、反射防止処理に限定するものではなく、様々な処理を施すことができる。例えば、PMMAなどのハードコート層を形成して耐摩耗性を向上させるハードコート処理や、低屈折率のフッ素樹脂からなる低反射防止層(LR)を形成する反射防止処理、表面に凹凸を設けるアンチグレア処理、帯電防止層を形成して埃付着を防ぐ帯電防止処理、皮脂が付着しにくい撥油層を形成する撥油処理などの表面処理を行うことであっても良い。
【0039】
また、図2では、好適例として補強部材28の表面(第4の面)に反射層28aを形成する構成について説明したが、この構成に限定するものではなく、補強部材28の裏面(第3の面)に反射層28aを形成する構成であっても良い。換言すれば、補強部材28の表面、または裏面のどちらか一方に、反射層が形成されていれば良い。補強部材28の裏面に反射層を形成した場合においても、発光領域Vから放射される照明光の一部を当該反射層で反射して、照明に寄与する光とすることができる。
【0040】
「各部の厚さについて」
図3に戻る。
ここでは、照明装置100がフレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを両立させるために必要な各部の最適な厚さについて説明する。
まず、パネル18の厚さについて説明する。
図3では、各構成部位の積層関係を明確にするために、特に、機能層17における縮尺を他の部位よりも拡大しているが、実際は、機能層17の部分が最も薄く構成されることになる。機能層17の厚さは、数μm〜20μm程度の厚さである。このうち、緩衝層11が半分以上の厚さを占めている。ちなみに、厚さがnmオーダーの複数の薄膜からなる有機EL層8の厚さは1μmに満たない。なお、図3で説明した通り、パネル18は、フレキシブル性に耐えられる接着強度を得るため、基板間に中空構造を持たない全固体物質で充填されている。
【0041】
本実施形態では、好適例として、素子基板1および封止基板16の厚さをそれぞれ約40μmとしている。また、パネル18の総厚は、好適例として約90μmとしている。発明者等の実験結果によれば、有機ELパネルの信頼性を確保するためには、ガスバリア層12などの封止構造に加えて、素子基板1および封止基板16の厚さが約10μm以上必要であることが解っている。換言すれば、素子基板1および封止基板16の厚さを各々約10μm以上に設定することによって、フレキシブル性に耐えられるだけの衝撃強度と、十分な防湿性を確保することが可能となる。
他方、素子基板1、および封止基板16の厚さが約100μm以上となると、柔軟性が損なわれて来ることも解っている。
このため、素子基板1、および封止基板16の厚さは、10〜100μmの範囲内に設定することが好ましい。また、強度と柔軟性とのバランスを考慮すると、20〜80μmの範囲内とすることがより好ましい。
さらに、素子基板1と封止基板16とを重ね合せたパネル18の総厚は、強度と柔軟性とのバランスを考慮して、50〜120μmの範囲内に設定することが好ましい。
【0042】
なお、素子基板1、および封止基板16は、それぞれが初期段階で0.3〜0.7mm程度の厚さであったものを研磨、またはエッチングして薄くしたものである。好適には、表裏のガラス基板が厚い状態のパネルを製造した後、フッ酸(フッ化水素酸)を溶解したエッチング溶液(水溶液)として用いたエッチングにより、所期の厚さのパネル18を製造する。なお、この方法に限定するものではなく、所期の厚さのパネル18を形成可能な方法であれば良く、例えば、機械的研磨法を用いることであっても良い。
【0043】
図2に戻る。
光学フィルム35の厚さは、好適例として、約20〜50μmとしている。これは、PETを含む一般的な透明樹脂は線膨張係数が大きく(20〜80ppm/℃)、ラミネート時の加熱により伸びてしまい、室温に戻ると収縮するためラミネート後のパネルが反ってしまう問題がある。そのため、光学フィルムを少しでも薄くすると、補強部材であるCFRPの形状保持力が勝るようになるため、室温に戻しても光学フィルムが収縮しにくくなり、パネルの反りを防ぐ効果がある。しかし、20μm以下の光学フィルムでは、ハードコート層や反射防止層などの表面コーティング加工が難しくなるため、20〜50μmを好適としている。なお、この厚さは補強部材の厚さに依存し、補強部材よりも光学フィルムを薄くする必要がある。例えば、補強部材の厚さが約200μmであれば、光学フィルムの厚さは、20〜100μmの範囲内とすることが好ましい。
また、平面的な光学フィルム35のサイズを発光領域Vよりも一回り大きくして、当該フィルムの周縁部の上に補強部材28を重ねる構成としている。この構成により、光学フィルム35のセット時の作業性を向上させている。
【0044】
次に、ラミネート構造体25を構成する樹脂フィルム25a,25bの厚さについて説明する。
本実施形態では、好適例として、厚さが約50μmのEVAフィルムを樹脂フィルム25a,25bに用いている。発明者等の実験結果によれば、パネル18の周縁部における隙間を含む段差の被覆性(充填性)を満たすためには、約20μm以上の厚さが必要となることが解っている。
この被覆性と、照明装置100としての総厚とのバランスを考慮すると20〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、樹脂フィルムのコストや、ラミネートのし易さ(作業性)を加味すると、40〜80μmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
続いて、補強部材28の厚さについて説明する。
本実施形態では、好適例として、4層構造で厚さが約100μmのCFRPを補強部材28に用いている。
CFRPは、約25μm以上の厚さであれば形成可能であるが、上述したような厚さに設定されたラミネート構造体25(パネル18を含む)に貼り付けた状態で、フレキシブル性と実用強度(強靭さ)とを確保するためには、50〜200μmの範囲内の厚さに設定する必要がある。
そして、これらの部材を積層して形成された照明装置100の総厚は、最も厚い部分で、約290μmとなる。なお、パネル18と補強部材28とが重なるパネル18の周縁部が最も厚い部分となる。
なお、上記好適例の寸法は、発明者等が実験結果や、物性データなどから創意工夫の末に導出した好適事例の一つであり、これに限定するものではなく、上述した各部の推奨寸法範囲内において、用途に応じた寸法設定をすることができる。
【0046】
「表示装置の製造方法」
図5は、表示装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。図6(a)、(b)は、各工程における製造態様を示す図である。
ここでは、照明装置100の製造方法について、図5のフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0047】
ステップS1では、図6(a)に示すように、各部材を重ね合わせた状態(準備体)とし、ラミネート装置にセットする。詳しくは、樹脂フィルム25b上に、パネル18と、樹脂フィルム25aと、光学フィルム35と、補強部材28とを、この順番で重ね合わせる。なお、図6(a)では省略しているが、各部材の重ね合わせは専用の案内板を用いて行われ、平面的な位置合わせもなされている。この工程は、好適例としては、通常環境下で行うが、後述の減圧環境下で行っても良い。
そして、準備体をラミネート装置にセットする。なお、図6(a)では、ラミネート装置の加圧ローラー81,82のみを図示している。
【0048】
ステップS2では、ラミネート装置および準備体が設置された環境を減圧し、減圧環境とする。なお、ラミネート装置は、内部環境を所望の気圧環境に設定可能なチャンバー装置(室)内に設置してある。この工程によって、準備体内部の空気(気泡)が除去(脱泡)される。
また、平行して、加圧ローラー81,82の加熱が行われ、伝熱性のあるエラストマーから構成されたローラー面が80〜120℃の温度に熱せられる。
ステップS3では、図6(a)の矢印で示すように、準備体におけるフレキシブル基板20の反対側の一辺から、一対の加圧ローラー81,82の間に準備体が挿入されて、ラミネートが行われる。加圧ローラー81,82に挟持された部分では、ローラーの熱によって樹脂フィルム25a,25bが溶解し、さらに加圧されて相互に接着される。また、溶解した樹脂フィルムは、接着剤(充填材)として機能し、パネル18、フレキシブル基板20、光学フィルム35、および補強部材28も接着する。
また、準備体の一辺から他端に向かってラミネートが行われるため、各部材に気泡(空気)が残っていたとしても、気泡は、ラミネート順に沿って他端側に押し出されることになる。そして、図6(b)に示すように、ラミネートされた照明装置100が加圧ローラー81,82間から押し出されてラミネートが完了する。
【0049】
ステップS4では、ラミネートされた照明装置100における残留応力を取り除くためにアニーリング処理を含む後処理を行う。アニーリング処理は、引き続き減圧環境で行っても良いし、通常環境下で行っても良い。特に、樹脂フィルム25a,25bが架橋成分を含む場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
なお、ラミネート装置は、一対の加圧ローラー81,82を備えたロールラミネート方式に限定するものではなく、準備体を照明装置100の完成状態にラミネート可能な装置であれば良い。例えば、1枚の板状加熱板(ホットプレート)上に準備体をセットし、変形するゴムシートを気圧差により当該準備体に押し当てて、加熱および加圧するダイアフラム方式(ダイヤフラム方式)による真空ラミネート装置を用いても良い。
また、アニーリング処理に続いて、補強部材28の四隅にそれぞれ取付け穴3(図1)を形成する。具体的には、照明装置100を専用の案内板にセットした状態で、プレス加工することにより、4つの取付け穴3を形成する。なお、この方法に限定するものではなく、補強部材28、および樹脂フィルム25a,25bにあらかじめ取付け穴3を形成しておいても良い。この方法によれば、準備体を準備する際に、取付け穴3を基準とすることができるため、平面方向における各部の配置位置精度を高めることができる。
このようにして、図1に示すような、フレキシブル性と実用強度(強靭さ)とを兼ね備えた照明装置100が形成される。
【0050】
上述した通り、本実施形態に係る照明装置100、および製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
照明装置100によれば、柔軟性が確保される厚さに設定されたラミネート構造体25に、CFRPからなる額縁状の補強部材28が平面的に発光領域Vを囲って設けられている。CFRPに含まれる炭素繊維の引っ張り強度は、従来の樹脂製の補強板に比べて高いため、補強部材28が貼り付けられた状態で、炭素繊維の延在方向に曲げ応力が加わったとしても、柔軟性を損なわずに、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
さらに、補強部材28は、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいるため、両者によって平面的にあらゆる方向からの引っ張り強度が高まり、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。
これは、高い引っ張り強度による伸びが極めて小さく、繊維を対角に積層することにより寸法変化が非常に小さくなるという炭素繊維の特性によるものである。この特性により、補強部材28は、応力をかけてもある程度曲がったところで変形が止まり、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。また、補強部材28は、ばねのように元の形に復元させる変形拘束性と復元性の機能も有している。
【0051】
さらに、炭素繊維を含むCFRPは、線膨張係数が1ppm/℃以下と非常に低いため、100℃程度の加熱圧着により接着しても反りを発生させることはなく、ガラスの4ppm/℃と非常に近いため、パネルとしての熱衝撃にも非常に強い。
また、補強部材28の開口部(穴)の4隅には角Rが形成されているため、4隅がエッジとなっている場合に比べて、曲げ応力が加わった場合の亀裂の発生を抑制することができる。例えば、角Rは半径1mm程度に形成されている。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを兼ね備えた照明装置100を提供することができる。換言すれば、十分な実用強度を備えた照明装置100を提供することができる。
【0052】
さらに、パネルの表裏面にそれぞれ補強板(91,92)が貼り付けられていた従来の表示装置(図14)と異なり、図2に示すように、補強部材28をラミネート構造体25の表面に設ける構造であるため、パネル18を薄くすることができる。これにより、ラミネート時における樹脂フィルムの形状追従性が良くなるため、パネル18の周縁部への隙間の発生を低減(防止)することができる。
特に、発明者等の実験結果によれば、パネル18の厚さが約90μmで、樹脂フィルム25a,25bの厚さが約50μmに設定された好適例においては、パネル18の周縁部に隙間の発生は認められなかった。
さらに、補強部材28は、樹脂よりも熱伝導率が高く、また、ラミネート構造体25の表面において、一面が外気に触れる状態で取り付けられているため、パネル18の発熱を効率良く放熱することができる。よって、パネル18の発熱による劣化を抑制することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)と、放熱性とを兼ね備えた照明装置100を提供することができる。
【0053】
さらに、補強部材28の表面には、反射層28aが形成されているため、発光領域Vから放射される照明光の一部を反射層28aで反射して、照明に寄与する光とすることができる。換言すれば、反射層28aによって照明効率を高めることができるため、照明装置として十分な照明効率を得ることができる。
従って、十分な照明効率を有する照明装置100を提供することができる。
【0054】
また、フレキシブル基板20の接続部を覆ってシリコン樹脂(接着剤)などでモールドし、補強していた従来の補強構成と異なり、樹脂フィルム25a,25bによるラミネートによって、当該補強構成を兼ねているため、製造効率が良い。また、当該接続部、およびパネル18を含めて同一の樹脂によって接着(充填)されるため、柔軟性を損なわずに、十分な実用強度(強靭さ)を確保することができる。
さらに、樹脂フィルム25a,25bに用いられるポリエチレン系接着層は、絶縁性、耐水性、耐熱性に優れるため、十分な電気的信頼性を確保することができる。
【0055】
また、製造方法においては、ポリエチレン系接着層は、アクリル系粘着層に見られるような室温での初期粘着性がほとんど無いため、気泡が抜けやすいだけでなく、あらかじめ積み重ねた準備体の状態での位置合わせも容易にできる。そのため、減圧雰囲気において、1回の熱ラミネートで多層構造が形成できるため製造効率が良い。また、量産性に優れている。
さらに、ポリエチレン系接着層は室温での初期粘着がほとんど無いため、異物の貼りつきが少なく、また、異物が付いても除去が容易である。また、異物があった場合でも、加熱により軟化した際に、小さな異物であれば接着層内に埋め込まれるため、一般に用いられるアクリル系粘着層よりも異物混入による不良を抑えることができる。また、ポリエチレン系樹脂は汎用樹脂であるため、部材コストを抑えることができる。
【0056】
(実施形態2)
図7(a)は、実施形態2に係る照明装置の平面図であり、図1に対応している。図7(b)は、(a)のg−g断面における断面図であり、図2に対応している。
以下、本発明の実施形態2に係る照明装置110について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の照明装置110は、実施形態1の照明装置100に、裏面の補強部材30を追加した構成となっている。また、照明装置110の周縁部に形成された取付け穴4のが長穴(トラック穴)形状となっている。さらに、表裏の補強部材28,30の内面(パネル18側の面)には、それぞれ反射層28c,30cが形成されている。これらの構成以外は、実施形態1での説明と略同様である。
【0057】
照明装置110は、ラミネート構造体25表面の補強部材28に加えて、ラミネート構造体25の裏面全体を覆う補強部材30を備えている。なお、補強部材30は、補強部材28と同様にCFRPなどから構成されている。
また、図7(a)に示すように、周縁部に形成された取付け穴4が長穴(トラック穴)形状となっている。詳しくは、照明装置110の外形における長辺に沿って、両端が半円形状のスリット状の取付け穴4が形成されている。Y軸(+)側の長辺においては、略長辺の長さに沿って1つの取付け穴4が形成されている。また、Y軸(−)側の長辺においては、長短2つの取付け穴4がフレキシブル基板20を避けて形成されている。
なお、この構成に限定するものではなく、周縁部に長穴状の複数の取付け穴4が形成されていれば良い。例えば、短辺に沿って、さらに取付け穴4が形成されていても良いし、円形状の取付け穴と、混在して形成されていても良い。
【0058】
また、補強部材30の内面(第5の面)には、その全面に反射層30cが形成されている。反射層38cは、補強部材28の反射層28aと同様なアルミニウム膜などからなる反射層である。なお、反射層28aと同じく、その上層に樹脂コート層などの保護層を設けても良い。他方、補強部材30の外面(Z軸(+)側面:第6の面)は、CFRPなどの基材が剥き出しとなっている。
また、本実施形態では、表面の補強部材28の内面(パネル18側の面)にも、反射層28cが形成されている。反射層28cは、表面側の反射層28aと同様な反射層である。なお、内面の反射層28c上にも、樹脂コート層などの保護層を設けても良い。
また、表面の補強部材28の開口部(穴)には、実施形態1の照明装置100と同様に光学フィルム35が取り付けられているが、その平面サイズは、開口部に収まる大きさとなっており、周縁部と補強部材28との重なり部分は設けられていない。この構成によれば、重なり部分が存在しないため、その分、照明装置110を薄型化することができる。
【0059】
また、製造方法は、基本的に実施形態1で説明した製造方法と同様である。詳しくは、補強部材30上に、樹脂フィルム25bと、パネル18と、樹脂フィルム25aと、光学フィルム35と、補強部材28とを、この順番で重ね合わせたものを準備体として、実施形態1と同様にラミネートして一体化する。
【0060】
上記説明においては、反射層28c(反射層30c)は、補強部材28(補強部材30)の内面形状に沿って、略平坦な形状であるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、光を効率的に反射可能な形状であれば良い。
図8(a)〜(c)は、図7(b)におけるj部の拡大図であり、反射層28cに複数の凹凸を有する反射形状を付与している。
例えば、図8(a)に示すように、補強部材28における内面の周縁部にプレス加工などにより、エンボス加工を施して、反射層28cに複数の階段状の反射形状を付与しても良い。階段状の各反射形状における凹凸の高低差は、0.1〜10μmの範囲内とすることが好ましい。反射形状は、階段状の他に波形状や楔形状であってもよい。
また、光の反射効率をより高めるために、発光領域V側よりも、周縁部に近いほど凹凸の高低差を大きくすることが好ましい。また、平面的な模様は、緻密なパターンであれば良く、例えば、格模様であっても良いし、鱗模様であっても良い。
【0061】
また、補強部材30における内面の反射層30cにも、階段状の同様な反射形状を付与している。
また、図8(a)の態様では、好適例として、補強部材28の表面における反射層28aにも、階段状の反射形状を付与しているが、表面については図7(b)のようなフラットな反射面であっても良い。
このような反射形状を付与するエンボス加工は、例えば、樹脂含浸透炭素繊維を積層した前駆体(プリプレグ)の表面に、高低差0.1〜10μmの凹凸を有する金型を80〜120℃で加熱しながら押し当てて成形する。その後、内面(表面)にアルミニウムなどの反射層を真空蒸着法などにより形成する。
また、この際に、ロール状の金型を用いる構成とすれば、前駆体シートをロールトゥロール(roll to roll)での巻取り製造が可能となり、製造効率をより高めることができる。
【0062】
また、図8(b)に示すように、補強部材28における内面の反射層28c、および補強部材30における内面の反射層30cに形成する複数の反射形状を凹面状(お椀状)のディンプル形状としても良い。
または、図8(c)に示すように、補強部材28における内面の反射層28c、および補強部材30における内面の反射層30cに形成する複数の反射形状を凸面状(円丘状)としても良い。
なお、図8(b),(c)においては、補強部材28における表面の反射層28aは、フラットな反射形状としているが、これに限定するものではなく、凹面状や、凸面状の反射形状を付与しても良い。
【0063】
図9(a)は、図7(b)におけるk部の拡大図である。
また、照明装置110の周縁部に反射部材33をさらに備える構成であっても良い。
反射部材33は、アルミニウムなどの金属からなる封止部材であり、図9(a)に示すように、凹形状を横にした断面形状を有している。そして、当該凹形状の底面33aを照明装置110の端面に押し当てた状態で、凹形状における2つの凸部により、照明装置110の端部を挟持している。また、平面的には、照明装置110の4辺を覆って形成されている。なお、フレキシブル基板20が通る部分は、切り欠け形状としている。
底面33aは、反射面となっており、パネル18の端面などから出射された光を反射して、パネル18側に反射する。反射された光は、反射層28cや、反射層30cなどで反射を繰り返し、その一部は照明光となる。
なお、金属製に限定するものではなく、照明装置110の端面に反射面が当接する構成であれば良い。例えば、反射性を有するテープ部材で、照明装置110の端面を覆う(貼り付ける)構成であっても良い。
【0064】
図9(b)は、図7(b)におけるj部の拡大図である。
また、補強部材28と補強部材30とを周縁部で密着させる構成としても良い。詳しくは、図5のステップS3で両者をラミネートした後、専用の金型にセットしてプレス加工することにより、周縁部を密着させる。金型は、周縁部を絞り込むための形状を有しており、80〜120℃の温度に熱せられている。
このプレス加工により、図9(b)に示すように、補強部材28、および補強部材30の端部が絞り込まれて、周縁部において反射層28cと反射層30cとが略密着した状態となる。また、この際、ラミネート構造体25を構成する樹脂フィルムの一部は、外部にはみ出して樹脂溜り25dを形成する。
そして、補強部材28と補強部材30とを周縁部で密着させた後、図5のステップS4における後処理工程を行う。なお、後処理工程において、樹脂溜り25dを除去しても良い。
【0065】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
照明装置110によれば、表面の額縁状の補強部材28に加えて、裏面全体を覆う補強部材30を備えている。
よって、いずれの方向から曲げ応力が加わったとしても、ガラス基板が限界点(限界半径)まで曲がることを抑制することができる。特に、2枚の補強部材によって、最も亀裂が生じ易いパネル18の周縁部を表裏面から包み込む構成であるため、より確実にパネル18の割れを防止することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)とを兼ね備えた照明装置110を提供することができる。
【0066】
また、パネル18が発する熱を表裏面の2枚の補強部材によって、より効率良く放熱することができる。
従って、フレキシブル性と、実用強度(強靭さ)と、放熱性とを兼ね備えた照明装置110を提供することができる。
【0067】
さらに、補強部材28の内面には反射層28cが形成されるとともに、補強部材30の内面には反射層30cが形成されているため、パネル18の発光領域V以外の部位から出射される光(漏光)の一部も照明光として、利用することができる。詳しくは、例えば、パネル18の端面から出射された漏光は、反射層28c、および反射層30cで反射を繰り返すうちに、その一部が発光領域Vから出射される光、つまり、照明光の一部となる。
よって、照明効率を高めることができるため、照明装置として十分な照明効率を得ることができる。
従って、十分な照明効率を有する照明装置110を提供することができる。
【0068】
また、各補強部材における内面の反射層28c、反射層30cに、複数の楔形状や、凸面状、凹面状などからなる反射形状を付与することにより、反射効率を高めることができる。換言すれば、発光領域Vに向かう漏光の光量を増やすことができる。
また、一対の透明基板から構成されたパネル18における漏光は、その端面から出射される割合が最も多い。
照明装置110の周縁部に反射部材33を設けたり、周縁部を絞って反射層28cと反射層30cとを密着させることにより、この外部に漏れる光量を低減することができる。換言すれば、端面から出射された漏光の利用効率を高め、照明効率を高めることができる。
従って、十分な照明効率を有する照明装置110を提供することができる。
【0069】
(実施形態3)
図10(a)は、実施形態3に係る照明装置の平面図であり、(b)は(a)図におけるm−m断面の側断面図である。
以下、本発明の実施形態3に係る照明装置120について説明する。なお、前記各実施形態と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の照明装置120は、複数枚のパネルを平面的に並べた状態(タイリング)で一体化した大型(大面積)の照明装置である。詳しくは、4枚のパネル32を平面的に並べた状態で表裏面から樹脂フィルム45a,45b、および補強部材36,37でラミネートした構成となっている。
【0070】
照明装置120は、4枚のパネル32をマトリックス状にタイリングした照明装置である。なお、パネル32は、Y軸方向に長い長方形をなしていること以外は、実施形態1のパネル18と同様であり、発光領域から略白色光を出射する。
4枚のパネル32は、長手方向を揃えて縦横に等間隔で配列した状態で、表裏面から樹脂フィルム45a,45bによってラミネートされて一体のラミネート構造体45を形成している。また、樹脂フィルム45a,45bは、その平面形状(サイズ)以外は、実施形態2の樹脂フィルム25a,25bと同様な構成となっている。
また、ラミネート構造体45の表裏面には、補強部材36,37がそれぞれ一緒にラミネートされて一体となっている。なお、補強部材36,37も、その平面形状(サイズ)以外は、補強部材28,30と略同様な構成となっている。詳しくは、補強部材36は、各パネル32の発光領域を露出させるための複数の開口部を備えている。また、補強部材37は、タイリングされた4枚のパネル32の背面を全て覆っている。
【0071】
また、図10(a)に示すように、照明装置120の周縁部には、長穴状の取付け穴4が形成されている。詳しくは、照明装置120の外形における長辺に沿って、両端が半円形状のスリット状の取付け穴4が形成されている。また、Y軸(+)側の短辺も、スリット状の取付け穴4が形成されている。
なお、この構成に限定するものではなく、周縁部に長穴状の複数の取付け穴4が形成されていれば良い。例えば、Y軸(−)側の短辺にも、取付け穴4が形成されていても良いし、円形状の取付け穴と、混在して形成されていても良い。
【0072】
また、4枚のパネル32に駆動電力を供給する4つのフレキシブル基板20は、照明装置120におけるY軸(−)側の短辺から外部に取り出されている。特に、Y軸(+)側に位置するパネル32のフレキシブル基板20は、Y軸(−)側のパネル32の裏面を通って、Y軸(−)側の短辺から外部に取り出されている。
また、各パネル32の長方形状の発光領域は、補強部材36のリブ36gによって、略正方形状の2つの発光領域Va,Vbにそれぞれ区画されている。このリブ36gにより、ラミネート時に、発光領域がX軸方向に伸びて広がってしまうことを抑制している。
なお、パネル32をタイリングする枚数は、4枚に限定するものではなく、複数枚であれば、何枚であっても良い。
【0073】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態2における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
照明装置120によれば、複数枚のパネルをタイリングすることにより、所望の平面サイズを有する照明装置を構成することができる。
特に、パネルを薄型化した場合、割れ易いため、取り扱い性や歩留りからして大型化には限界があった。このため、取り扱い性、および歩留りを確保できるサイズのパネルを複数枚タイリングすることにより、歩留り良く大面積の照明装置を構成することができる。
従って、製造効率良く、安価に、大型の照明装置120を提供することができる。
【0074】
(照明装置)
図11は、上述の照明装置を飛行機の室内照明装置として用いた態様図である。
上述した照明装置110は、例えば、照明装置(電子機器)としての飛行機の室内照明装置に用いることができる。なお、照明装置110を各実施形態、および変形例における照明装置と置き換えても良い。
【0075】
図11に示すように、照明装置110は、曲面を有する飛行機の壁面50に湾曲した状態で取付けられている。詳しくは、乗客用の座席52における窓53側の壁面50に、照明装置110が取付けられている。壁面50において、座席52の横の比較的平面に近い領域には窓53が形成されており、照明装置110は、窓53の上部の湾曲度合いが大きい部分に配置されている。換言すれば、乗客が座席52に座った際に、その手元を主体に照明可能な位置に配置されている。
また、照明装置110を壁面50に直接取付けることに限定するものではなく、例えば、窓53の上部に形成された物入れの蓋に、取付けても良いし、または、曲面を有する天井に取付けても良い。
【0076】
このように、飛行機の室内照明装置として照明装置110を用いた場合、その可撓性を活かして、曲面に取付けることができる。また、軽量であるため、物入れの蓋に取付けても開閉性を損なうことがなく、さらに飛行機の燃料消費量を抑制することができる。また、供給する直流電力量に応じて略リニアに輝度が変化するため、インバーター回路などの複雑な回路を必要とせずに、調光を行うことができる。
従って、軽量で、設置場所を選ばず、使い勝手の良い照明装置を提供することができる。
【0077】
また、飛行機の室内照明装置に限定するものではなく、船舶や、電車、自動車などの移動手段における室内照明に用いても良い。または、会社や、旅館、家屋などの建物における室内照明などにも用いることであっても良い。
これらの用途に照明装置110を用いた場合であっても、同様な作用効果を得ることができる。
【0078】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0079】
(変形例1)
図12を用いて説明する。
図12(a)は、変形例1に係る表示装置の断面図であり、図7(b)に対応している。図12(b)、(c)は、変形例1に係る補強部材の一態様を示す斜視図である。
以下、本発明の変形例1に係る照明装置130について説明する。なお、実施形態2と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態の照明装置130は、実施形態2における補強部材30とは、異なる構成の補強部材40を備えている。詳しくは、補強部材30よりも放熱特性を向上させた補強部材40を備えている。それ以外は、実施形態2での説明と略同様である。
【0080】
照明装置130におけるラミネート構造体25の背面には、その全面に補強部材40が取り付けられている。また、平面的な補強部材40のサイズは、ラミネート構造体25と略同じサイズに形成されている。
図12(b)に示すように、補強部材40は、4層構成のCFRPからなる補強体30の上に、グラファイト層31、および反射層30cを積層して一体化したものである。なお、補強体30は、実施形態2における補強部材30と同一構成であるが、本実施形態においては、補強部材40の一構成部位となるため、補強体30と称する。なお、構成を解り易くするために、図12(b),(c)においては、反射層30cを省略している。
【0081】
グラファイト(黒鉛)層31は、図12(b)上部の拡大図(丸で囲った部分)に示すように、炭素原子からなる平面的な六方晶構造層が厚さ方向(Z軸方向)に積み重なった構成を有している。
グラファイト層31は、平面方向の熱伝導率が600〜1500W/m・kと優れているため、当該層をラミネート構造体25と補強体30との間に配置することにより、放熱性を向上させることができる。詳しくは、パネル18が発する熱を短時間でグラファイト層31全体に放射状に分散させるとともに、最外面の補強体30へ熱伝達させるため、放熱性を向上させることができる。グラファイト層の製造方法は、ポリイミドフィルムを出発原料にして、1000℃以上に焼成することで結晶化させる合成グラファイトや、鉱山等で産出されるグラファイト粒子を圧延してフィルム状にした天然グラファイトでも良く、どちらも六方晶構造を有するため、熱伝導率600W/m・k以上を得ることができる。また、グラファイト層31の線膨張係数は、約5ppm/℃であり、ガラス基板と略同等である。
【0082】
また、CFRPからなる補強体30とグラファイト層31とを積層した積層体のことをCFGRP(Carbon fiber graphite reinforced plastics)ともいう。また、本変形例では、反射層30cとして熱伝導率に優れたアルミ箔を用いている。
補強部材40(CFGRP)は、例えば、炭素繊維をエポキシ中間体で含浸したプリプレグフィルム(層)と、グラファイトフィルム(層)と、反射層30cとを重ね合わせ、減圧雰囲気下で加熱プレス加工することによって形成することができる。なお、加熱温度は、120〜150℃の範囲内の温度であることが好ましい。
また、本実施形態では、好適例として4層構成のCFRPを採用したが、炭素繊維の延在方向が異なる炭素繊維層を2層以上積層した積層構造を含んでいれば良いことは、実施形態1での説明と同様である。
【0083】
ここで、平面的なグラファイト層31のサイズは、補強体30よりも小さく形成されている。換言すれば、グラファイト層31の周縁部が補強体30内に収まる大きさになっている。好適には、グラファイト層31のサイズがパネル18の発光領域Vよりも大きく、パネル18の外形サイズよりも小さいことが好ましい。
これは、グラファイト層31の優れた熱伝導率を生かすとともに、当該層の耐磨耗性、および脆さを補うためであり、発熱が多い部分を覆いながらも、ラミネート加工時などに大きな曲げ応力が掛からないようにする工夫である。
【0084】
本実施形態では、好適例として、5層構造で厚さが約140μmのCFGRPを補強体30に用いている。詳しくは、4層構造で厚さが約100μmのCFRPと、厚さが約40μmのグラファイト層31とを積層したCFGRPを用いている。
なお、この厚さに限定するものではなく、補強体30の厚さは、約50〜200μmの範囲内の厚さであれば良い。この厚さであれば、照明装置130の自立性と強度、適度なフレキシブル性とを確保することができる。
また、グラファイト層31の厚さは、厚さ方向の熱伝導性を損なわないために、50μm以下とすることが好ましい。
【0085】
また、補強部材40の構成は、上述した図12(b)の態様に限定するものではない。例えば、図12(c)に示す構成であっても良い。
図12(c)の補強部材40では、補強体30における最上層の炭素繊維層iに、グラファイト層31をはめ込むための開口部(穴)が形成されている。換言すれば、最上層の炭素繊維層iは、グラファイト層31が納まる開口部を備えた額縁状に形成されている。
つまり、補強部材40は、当該開口部にグラファイト層31をはめ込んだ構成となっている。また、製造方法は、上述した加熱プレス加工を用いることができる。
この構成の場合、熱伝達性を確保するために、グラファイト層31の上面が炭素繊維層iの上面と同じ高さか、または炭素繊維層iの上面から突出するように、グラファイト層31の厚さを設定する。好適例としては、例えば、グラファイト層31の厚さを炭素繊維層iと同じ、約25μmに設定する。
この構成によれば、図12(b)の補強部材を用いた場合に比べて、放熱性など略同等の効果を備えながらも、照明装置130の総厚を薄くすることができる。
【0086】
上述した通り、本変形例によれば、実施形態2における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
照明装置130によれば、ラミネート構造体25の背面に、CFRPからなる補強体30と、グラファイト層31と、反射層30cとを積層して一体化した補強部材40が取り付けられている。
特に、優れた熱伝導率を有する反射層30cとグラファイト層31とが、ラミネート構造体25と補強体30との間に配置されているため、パネル18が発する熱を短時間でグラファイト層31全体に放射状に分散させるとともに、最外面の補強体30へ熱伝達させることができる。そして、最外面の補強体30から外気中に放熱することができる。
さらに、グラファイト層31の線膨張係数は、約5ppm/℃であり、ガラス基板と略同等であるため、CFRPからなる補強体30と積層した補強部材40をラミネート構造体25に貼り付けても、反りの発生要因とはならない。
従って、十分な放熱性を有するとともに、反りの発生を防止した照明装置130を提供することができる。
【0087】
また、グラファイト層31の厚さを50μm以下と薄く設定するとともに、周縁部が露出しないように補強体30および樹脂フィルム25bで包み込む構成としているため、厚さ方向の熱伝導性を損なうことなく、当該層の耐磨耗性、および脆さを補い、十分な実用強度を確保することができる。
従って、照明装置130によれば、フレキシブル性を備えながらも、十分な実用強度を得ることができる。
【0088】
(変形例2)
図13は、変形例2に係る照明装置の断面図であり、図7(b)に対応している。
以下、本発明の変形例2に係る照明装置140について説明する。なお、実施形態2と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
上記各実施形態では、表面の発光領域から照明光を出射するパネル18を用いることとして説明したが、表裏両面から照明光を出射するパネルを用いる構成であっても良い。
【0089】
照明装置140は、表裏両面から照明光を出射するパネル58を備えている。また、表面の補強部材28に加えて、裏面にも同じ額縁状の補強部材28を備えている。
パネル58の構成は、図3で説明したパネル18と略同様であるが、陰極電極9を形成する金属層の厚さが光を透過可能な程度に薄く形成されている。または、陰極電極9をITOなどの透明電極によって形成しても良い。
この構成により、パネル58は、表面の発光領域に加えて、裏面の発光領域に相当する領域からも、照明光を出射する。換言すれば、パネル58は、表裏両面から略白色の照明光を出射する。
このため、照明装置140では、パネル58の裏面からの照明光を外部に出射するために、裏面にも表面と同じ額縁状の補強部材28を反転させて用いている。また、裏面の発光領域にも表面と同じく、光学フィルム35が取付けられている。
【0090】
照明装置140によれば、表裏両面から照明光を出射することができるため、例えば、2つの接客コーナーを間仕切る衝立に好適に用いることができる。この場合、双方の接客コーナーを同時に照明することが可能となる。または、商店の路面に面したガラスドアにも好適に用いることができる。この場合、夜間において路面、および店内の足元を同時に照明することができる。
従って、表裏両面を同時に照明する用途に好適な照明装置140を提供することができる。
【0091】
(変形例3)
図7(b)を用いて説明する。
上記各実施形態では、補強部材28、および補強部材30(補強体)として、炭素繊維を含むCFRPを用いることとして説明したが、これに限定するものではなく、同様の物性を有する材料であれば良い。
例えば、CFRPに近い低熱変形性(低線膨張係数)を有するインバー(Ni含有率30〜50%の鉄合金)や、チタン、チタン合金などを用いて補強部材28を構成することであっても良い。
また、例えば、図7(b)の構成において、額縁状の補強部材28には加工性の優れたインバーを使い、板状の補強部材30にはCFRPを用いるというように、これらの材料を組み合わせて用いても良い。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0092】
(変形例4)
図3を用いて説明する。
上記各実施形態では、パネル18,32を発光領域Vから略白色光を出射するパッシブ型のパネルであるものとして説明したが、これに限定するものではなく、例えば、アクティブ型のパネルであっても良い。詳しくは、RGBの各色アクティブ画素がマトリックス状に形成された発光領域Vを有する有機ELパネルであっても良い。
これらの構成であっても、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。さらに、所望の色調の照明色が得られる照明装置を提供することができる。また、当該照明装置を、看板や、サインボードなどの表示パネルとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0093】
1…素子基板、8…電気光学層としての有機EL層、16…封止基板、18…パネル、20…フレキシブル基板、25a,25b…樹脂フィルム、28…第1補強部材としての補強部材、28a,28c,30c…反射層、30…第2補強部材としての補強部材、100,110,120…電気光学装置としての照明装置、h…第1炭素繊維層としての炭素繊維層、i…第2炭素繊維層としての炭素繊維層、V…発光領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学層を有するパネルと、
前記パネルの発光領域側の第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、
前記第1の面を覆う前記樹脂フィルム上に設けられた補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記パネルの発光領域に開口部と、前記パネルの第1の面に対向する第3の面と、前記第3の面と対向する第4の面と、を有し、
前記補強部材の少なくとも前記第3の面および前記第4の面のどちらか一方には、反射層が形成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記補強部材の前記第3の面および前記第4の面に反射層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記補強部材を、第1の補強部材としたとき、
前記パネルの第2の面を覆う前記樹脂フィルム上に設けられた第2の補強部材を、さらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第2の補強部材は、前記パネルの第2の面に対向する第5の面と、前記第5の面と対向する第6の面と、を有し、
前記補強部材の第5の面に反射層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記補強部材は、平面的に第1方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第1炭素繊維層と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する複数本の炭素繊維を含む第2炭素繊維層とによる積層構造を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1炭素繊維層、および前記第2炭素繊維層は、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグで形成され、
前記補強部材は、前記第1炭素繊維層と、前記第2炭素繊維層とを3層以上積層、および硬化させた積層体であることを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記補強部材は、インバー、またはチタン、若しくはチタン合金からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記補強部材の開口形状は、前記発光領域と同じ形状で設けられるとともに、
前記補強部材は、平面的に前記パネルの端部までを覆う大きさであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記パネルの周縁部において、
前記樹脂フィルム、および前記補強部材を貫通する複数の取付け穴が形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記取付け穴は、前記パネルの辺に沿って、長穴状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記パネルは、一対のガラス基板間に、前記電気光学層を挟持してなり、
前記ガラス基板の厚さは、それぞれ100μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記樹脂フィルムは、ポリエチレン系共重合材料であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記電気光学層は、有機発光層を含む有機EL層であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項14】
電気光学層を有するパネルと、
前記パネルの発光領域側の第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を覆うようにラミネートする樹脂フィルムと、
前記第1の面を覆う前記樹脂フィルム上に設けられた補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記パネルの発光領域に開口部と、前記パネルの第1の面に対向する第3の面と、前記第3の面と対向する第4の面と、を有し、
前記補強部材の少なくとも前記第3の面および前記第4の面のどちらか一方には、反射層が形成されていることを特徴とする電気光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−192564(P2011−192564A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58826(P2010−58826)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】