説明

電気光学装置、その製造方法、および電子機器

【課題】画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減した表示装置を提供すること。
【解決手段】1つのダミー画素Pdに対して、複数のダミーコンタクトホールDcが形成されており、1つはダミー画素遮光膜9dの角部に配置され、2つは走査線83の幹線に沿って角部のダミーコンタクトホールと連続して配置されている。換言すれば、ダミーコンタクトホールDcは、ダミー領域における第1遮光膜としての走査線83に沿って形成されており、走査線83近傍の下地絶縁膜12の強度を下げる役割を荷っている。つまり、後続の層間絶縁膜の形成工程において熱衝撃が加わった場合、ダミーコンタクトホールDcが形成されたダミー画素領域における走査線83部分が、衝撃吸収部分として機能することになる。よって、有効画素領域における画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、その製造方法、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例である透過型の液晶表示装置では、バックライトなどから出射された照明光が画素開口部を透過することによって表示画像を形成している。また、当該表示装置が、アクティブマトリクス型である場合には、各画素を個別に駆動するためのTFT(Thin Film Transistor)などの駆動素子が画素ごとに形成されているため、当該駆動素子に誤動作の原因となる光が照射されないように、遮光膜が形成されている。この遮光膜は、表示領域において複数の画素(開口部)を格子状に区画するブラックマトリクスの一構成部位であり、黒色樹脂や、金属製の遮光膜などから構成されていた。
【0003】
この遮光膜に求められる遮光性などの特性は、表示装置の用途に応じて異なり、例えば、直視型として用いる場合よりも、投写型として用いる場合の方が、より高い遮光性や、耐熱性を求められていた。これは、投写型の場合、直視型と比べてより強い照明光で表示装置が照射されるからである。
例えば、特許文献1には、プロジェクターのライトバルブとして用いる表示装置において、その遮光膜の材料として遮光性や耐熱性に優れたタングステンなどの高融点金属を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−77636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮光膜の材料として高融点金属を用いた場合、遮光膜形成後の工程において、遮光膜が変形したり、クラックが生じてしまうことがあった。詳しくは、遮光膜の上層側に配置される層間絶縁膜の形成工程における熱衝撃などの影響によって、遮光膜の変形や、クラックが生じてしまうことがあった。そして、この遮光膜の変形や、クラックは、その上層側に位置する駆動素子にまで影響を及ぼしてしまい、画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を誘発していた。
つまり、従来の表示装置では、画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良が発生してしまうという課題があった。また、従来の製造方法では、所期の歩留りを得ることが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0007】
(適用例)
基板上に、複数の画素が配列された画素領域と、画素領域の周辺に配置された複数のダミー画素と、複数のダミー画素ごとに設けられた矩形状のダミー画素遮光膜と、配列の方向に沿って延在し、画素の開口部、およびダミー画素遮光膜を区画する複数の第1遮光膜と、ダミー画素遮光膜、および第1遮光膜を覆うように設けられた絶縁膜と、を備え、絶縁膜には、ダミー画素遮光膜の少なくとも角部に沿ってダミーコンタクトホールが形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【0008】
この電気光学装置によれば、画素領域の周辺に複数のダミー画素が形成されるとともに、各ダミー画素におけるダミー画素遮光膜を覆う絶縁膜には、ダミー画素遮光膜の少なくとも角部に沿ってダミーコンタクトホールが形成されている。
まず、ダミー画素は、基本的に表示に寄与しない画素であるため、その開口部は矩形状のダミー画素遮光膜に覆われた状態となっている。また、絶縁膜は、例えば、酸化シリコン膜などの無機絶縁膜であり、画素領域、およびダミー画素領域を含めて共通に形成されている。
【0009】
ここで、複数の第1遮光膜は、画素の開口部、およびダミー画素遮光膜を区画して延在しているため、ダミー画素遮光膜の角部は、第1遮光膜に沿った部分となり、ダミーコンタクトホールは、ダミー画素領域における遮光膜に沿った部分に形成されていることになる。換言すれば、ダミーコンタクトホールは、ダミー画素領域に形成されるとともに、画素領域、およびダミー画素領域に渡って延在する第1遮光膜に沿って配置されている。また、第1遮光膜と絶縁膜とからなる積層体において、ダミーコンタクトホールが形成された部分の強度は相対的に弱くなる。
つまり、後続の層間絶縁膜の形成工程において熱衝撃が加わった場合、ダミーコンタクトホールが形成されているダミー画素領域の第1遮光膜に変形や、クラックが発生し易くなる。換言すれば、ダミーコンタクトホールが形成されたダミー画素領域の第1遮光膜(積層体)が、衝撃吸収部分として機能することになる。また、ダミー画素領域の遮光膜に変形や、クラックが発生したとしても、表示に影響を及ぼすことはない。
従って、画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減した電気光学装置を提供することができる。
【0010】
また、ダミーコンタクトホールは、ダミー画素遮光膜の角部に加えて、第1遮光膜に沿って複数形成されていることが好ましい。
また、少なくとも第1遮光膜は、高融点金属から構成されていることが好ましい。
また、絶縁膜は、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜を含む透明な無機膜であることが好ましい。
また、複数の画素、およびダミー画素ごとに形成された駆動素子と、複数の駆動素子を走査駆動するための駆動信号を供給する複数の走査線、およびデータ線をさらに備え、第1遮光膜は、走査線、またはデータ線のいずれかを兼ねることが好ましい。
【0011】
また、複数の駆動素子は、平面的に第1遮光膜と重なるように配置されてなり、駆動素子を介在して、第1遮光膜と対向する第2遮光膜をさらに備えることが好ましい。
また、複数のダミー画素には、データ線から中間調の画像を表す駆動信号としての画像信号が選択的に供給されることが好ましい。
また、基板と対向配置された対向基板をさらに備え、基板と、対向基板との間に、電気光学物質を挟持したことが好ましい。
【0012】
上記記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【0013】
複数の画素が配列された画素領域と、画素領域の周辺に配置された複数のダミー画素と、複数の画素、およびダミー画素ごとに形成された駆動素子と、複数の画素、およびダミー画素を区画するとともに、駆動素子と平面的に重なる遮光膜とを少なくとも備えた電気光学装置の製造方法であって、基板上に、遮光膜を形成する工程と、遮光膜上に、絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の上層に駆動素子を含む半導体層を形成する工程と、絶縁膜にコンタクトホール、およびダミーコンタクトホールを形成する工程と、駆動素子の上層側に層間絶縁膜を形成する工程と、を含み、ダミーコンタクトホールは、ダミー画素における遮光膜に沿った部分に複数形成されることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
また、遮光膜は、高融点金属からなり、絶縁膜、および層間絶縁膜は、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜を含む透明な無機膜からなり、層間絶縁膜を形成する工程は、数百度以上の温度環境下で行われることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)実施形態1に係る表示装置の平面図、(b)は(a)のj−j断面における側断面。
【図2】(a)表示装置の回路ブロック図、(b)画素の等価回路図。
【図3】(a)は図2(a)におけるk部の拡大平面図、(b)第1遮光膜(走査線)、およびダミー画素遮光膜の抜粋平面図。
【図4】図3(a)におけるm−m断面の断面図。
【図5】表示装置の製造工程を示すフローチャート図。
【図6】(a)〜(d)製造工程における一態様を示す図。
【図7】(a)〜(d)製造工程における一態様を示す図。
【図8】電子機器としてのプロジェクターの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0016】
(実施形態1)
「表示装置の概要」
図1(a)は実施形態1に係る表示装置の平面図であり、(b)は、(a)のj−j断面における側断面である。
まず、本実施形態に係る電気光学装置としての表示装置100の全体構成について説明する。
【0017】
表示装置100は、対向基板20側から入射した光を液晶層50でデータ信号に応じて変調し、変調された変調光を素子基板10側から出射する透過式の液晶装置である。
図1(a)、(b)において、表示装置100は、対向配置された素子基板10と対向基板20とから構成されている。素子基板10は、好適例として石英基板を用いている。対向基板20は、好適例として無アルカリガラスを用いている。なお、この構成に限定するものではなく、素子基板10、および対向基板20ともに、ガラス基板や、シリコン基板などの透明基板を用いても良い。
素子基板10と対向基板20との間には、電気光学層としての液晶層50が封入されており、その周縁部が紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などからなるシール材52により接着されている。なお、シール材52中には、素子基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバーや、ガラスビーズなどのギャップ材56が散布されている。
【0018】
液晶層50は、好適例として誘電率異方性が負の液晶を用いている。当該液晶は、電圧がかかっていない状態で液晶分子が垂直に配列し、電圧が印加されると液晶分子が寝た状態になるネガ液晶であれば、一種類からなるものでも良いし、複数種の液晶を混合したものでも良い。なお、ネガ液晶を用いることに限定するものではなく、ポジ液晶を用いても良い。換言すれば、ノーマリーブラックモードに限定するものではなく、ノーマリーホワイトモードであっても良い。
また、液晶モードも、VA(Vertically Aligned)モードに限定するものではなく、TN(Twisted Nematic)モードや、IPS(In-Plane Switching)モードなどの各種動作モードを用いても良い。
【0019】
対向基板20には、シール材52が配置されたシール領域の内側に沿って、表示領域Vの見切りを規定する遮光性の額縁遮光膜53が設けられている。
また、素子基板10の一辺は、対向基板20から張出しており、当該張出した領域(以降、「張出領域」という)には、データ線駆動回路6と、外部回路接続端子34とが形成されている。
また、表示領域Vの外側で、かつシール材52の内側の領域には、サンプリング回路7と、2つの走査線駆動回路8とが形成されている。換言すれば、サンプリング回路7、および2つの走査線駆動回路8は、額縁遮光膜53と平面的に重なるように配置されている。サンプリング回路7は、張出領域側の辺に沿って設けられている。また、2つの走査線駆動回路8は、サンプリング回路7と隣接する2辺に沿って表示領域Vを挟むようにそれぞれ配置されている。なお、2つの走査線駆動回路8は、それぞれシール材52の外側の領域に形成しても良い。
【0020】
さらに、表示領域Vの両側に設けられた2つの走査線駆動回路8間を電気的に接続するため、素子基板10の残る一辺に沿って、かつ額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線35が設けられている。
また、シール材52の外周における4つのコーナーには、素子基板10と対向基板20との間の上下導通を取るための上下導通部36が配置されている。上下導通部36には、例えば、異方性導電材料が用いられており、当該異方性導電材料を挟むように配置された各基板の配線間の電気的な導通が取られている。
【0021】
ここで、図1(a)にて横長の長方形をなした表示領域Vには、画像を形成する複数の有効な画素(有効画素)からなる画素領域と、その周縁部に配置された複数のダミー画素からなるダミー領域(いずれも図示せず)とが形成されている。
ダミー領域は、画素領域の周縁部における画像の違和感を抑制するために設けられている。ダミー画素は、有効画素と略同じ構成を有しており、データ信号に応じた階調を表示可能に形成されているが、その表示は画素領域における画像に影響を及ぼさないように構成されている。なお、ダミー画素についての詳細は、後述するが、ダミー領域の一部、または全体が額縁遮光膜53と重なる配置されていても良い。
そして、図1(b)において、素子基板10上には、複数の画素、およびダミー画素を区画する遮光膜(図示せず)が形成されており、当該遮光膜の上層に、駆動素子としてのスイッチング用のTFT(Thin Film Transistor)や、走査線、データ線、層間絶縁膜などからなる積膜構造が形成されている。
なお、図1を含む各図においては、横長の長方形をなした表示領域Vにおける横方向をX軸方向とし、当該方向と交差する縦方向をY軸方向と定義している。また、表示装置100の厚さ方向をZ軸方向としている。また、素子基板10から対向基板20に向かうZ軸(+)方向を上方(上側、上層)とし、その反対方向Z軸(−)方向を下方(下側、下層)としている。
【0022】
「画素レイアウト、および回路構成」
図2(a)は、表示装置の回路ブロック図であり、(b)は画素の等価回路図である。
続いて、表示領域Vにおける画素レイアウト、および回路構成について説明する。
図2(a)に示すように、表示領域Vには、複数の有効な画素Paからなる画素領域と、その周縁部に配置された複数のダミー画素Pdからなるダミー領域とがマトリクス状に形成されている。なお、当該図では、各画素を開口部の態様で模式的に示しており、画素Pa(画素電極9a)は白抜きの長方形として、ダミー画素Pd(ダミー画素遮光膜9d)はハッチングされた長方形として、それぞれ示されている。なお、詳しくは後述するが、ダミー画素Pdの開口部には、ダミー画素遮光膜9dが形成されている。
また、ダミー領域は、画素領域の上下左右にそれぞれ形成された2つずつのダミー画素Pdから構成されている。換言すれば、ダミー領域は、画素領域の上下方向にそれぞれ形成された2行ずつのダミー画素Pd行と、左右方向にそれぞれ形成された2列ずつのダミー画素Pd列とから構成されている。なお、2行2列の構成に限定するものではなく、表示領域Vのサイズや、後述する衝撃緩衝作用を得るために必要な数を形成すれば良い。
【0023】
図2(b)に示すように、複数の画素Pa、およびダミー画素Pdには、前述した画素電極9に加えて、駆動素子としてのTFT30、蓄積容量70がそれぞれ形成されている。TFT30は、電界効果型のN型トランジスターである。
各TFT30において、ゲート端子は対応する走査線83に接続され、ソース端子は対応するデータ線63に接続され、ドレイン端子は画素電極9、および蓄積容量70の一端に接続されている。
また、表示領域Vにおいて、X軸方向には走査線83、および容量線85が延在し、Y軸方向にはデータ線63が延在している。換言すれば、複数の画素Pa、およびダミー画素Pdを区画するように、走査線83、およびデータ線63が延在している。
【0024】
TFT30は、走査線83に供給される走査信号G1、G2、…、Gmによって選択されたタイミングで、データ線63のデータ信号S1、S2、…、Snを対応する画素電極9に書き込む。つまり、走査線駆動回路8から各走査線83に供給される走査信号G1、G2、…、Gmのタイミングに従って、各画素が線順次に選択される。
また、データ線駆動回路6およびサンプリング回路7からは、走査信号による各画素の選択と同期して、データ信号S1、S2、…、Snが各データ線63に供給される。詳しくは、サンプリング回路7は、連続する6本のデータ線に対して、データ線駆動回路6から供給されるサンプリング回路駆動信号61のタイミングに従って、画像信号線65における相展開された画像信号VID1〜VID6を同時にサンプリングし、各データ線に供給する。なお、ここでは、好適例として6層の相展開駆動を行う場合について説明したが、これに限定するものではなく、定められたフレームレートで違和感なく、画像を表示可能な駆動方法であれば良い。
【0025】
このようにして、画素電極9を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルのデータ信号S1、S2、…、Snは、対向基板20に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
ここで書き込まれたデータ信号の電位を保持するために、画素電極9と対向電極21との間に形成される液晶容量に対して電気的に並列に蓄積容量70が形成されている。蓄積容量70の他端は、所定の電位に設定された容量線85に接続されている。なお、蓄積容量70は、後述するように、TFT30へ入射する光を遮る遮光膜としても機能する。
また、対向基板20の対向電極は、対向電極生成回路(図示せず)に接続されており、周期的に極性が反転する対向電圧が供給され、反転駆動が行われる。反転駆動としては、ライン反転駆動や、フレーム反転駆動、ドット反転駆動などを用いることができる。
【0026】
「画素の詳細構成」
図3(a)は、図2(a)におけるk部の拡大平面図であり、(b)は(a)から、第1遮光膜(走査線)、およびダミー画素遮光膜を抜粋して示した平面図である。
ここでは、画素Pa、およびダミー画素Pdの詳細な構成について説明する。
図3(a)は、ダミー領域と画素領域との境界部分における拡大図であり、左側の2列の画素はダミー画素Pdを示しており、右側の2列の画素は画素Paを示している。
ダミー画素Pd、および画素Paは、格子状の隔壁部分によって、それぞれ矩形状に区画されている。隔壁部分には、第1遮光膜としての走査線83や、TFT30、データ線63などが形成されている。
【0027】
走査線83は、隔壁部分の最下層に形成された高融点金属からなる遮光膜兼、走査線であり、図3(b)に示すように、X軸方向に延在している。また、走査線83は、X軸方向に隣り合う2つの画素間において、Y軸方向に突出した突出部分83a,83bを有している。換言すれば、走査線83は、X軸方向に隣り合う2つの画素を区画するように、略直交する方向に突出した突出部分83a,83bを有している。なお、以降、走査線83のX軸方向に延在する部分を幹線、Y軸方向に突出した部分を支線ともいう。
また、ダミー画素Pdとなる部分には、上下の走査線83に囲まれて、矩形状のダミー画素遮光膜9dが形成されている。換言すれば、上下の走査線83に囲まれて、矩形状のダミー画素遮光膜9dが島状に形成されている。ダミー画素遮光膜9dは、走査線83と同一工程で形成された遮光膜であり、ダミー画素Pdの開口部を塞ぐ役割を荷っている。また、画素Paとなる部分も、走査線83によって区画されているが、遮光膜は形成されておらず、透明な画素電極9aが形成されることにより開口部となる。
つまり、走査線83は、ダミー画素遮光膜9d、および画素電極9a(開口部)を区画するように配置されている。
【0028】
ここで、図3(a)に示すように、ダミー画素遮光膜9dの角部に沿って、複数のダミーコンタクトホールDcが形成されている。詳しくは、1つのダミー画素遮光膜9dに対して、4つのダミーコンタクトホールDcが形成されており、1つはダミー画素遮光膜9dの角部に配置され、2つは走査線83の幹線に沿って角部のコンタクトホールと連続して配置されている。そして、残りの1つは走査線83の支線に沿って配置されている。なお、この配置レイアウトに限定するものではなく、ダミーコンタクトホールDcの配置は、ダミー領域において、走査線83の幹線に沿って配置されていれば良い。また、数も、4つに限定するものではなく、単数でも複数でも良いが、前述した好適例のように、少なくとも角部には配置することが好ましい。
ダミーコンタクトホールDcは、走査線83の上層の下地絶縁膜12(図4)に形成されており、走査線83とゲート電極3aとを接続するコンタクトホール12cvと同様なものであるが、電気的な接続を目的としたものではなく、下地絶縁膜に穴を開けて、当該膜の強度を弱くするために形成されている。換言すれば、ダミーコンタクトホールDcは、ダミー領域における走査線83近傍の下地絶縁膜12の強度を低くするために形成されている。また、図3(a)では、コンタクトホール12cvなどの他のコンタクトホールと識別するために丸形状で示しているが、四角であっても良い。
【0029】
また、図3(b)の角部のダミーコンタクトホールDcのように、その一部または全てが、走査線83に掛かっていても良い。これは、当該ダミーコンタクトホールが電気的な接続機能を持ったとしても、コンタクトホール12cvと同様に、走査線83とゲート電極3aとを接続するものとなるからである。なお、走査線83の形成時点では、未だコンタクトホール12cvは形成されていないが、平面的な位置を明確にするために、図3(b)では当該コンタクトホールを図示している。
また、図3(a)では、ダミー画素領域を形成する2列のダミー画素列の間の部分に跨るように、換言すれば、X軸方向に隣り合う2つのダミー画素Pdに跨る部分に、複数のダミーコンタクトホールDcが形成されている。ここで、当該図には示されていないが、左側(X軸(−)側)のダミー画素Pdにおいては、ダミー画素領域の周縁側にも複数のダミーコンタクトホールDcが形成されている。つまり、画素Paと隣り合うダミー画素Pdにおける、画素Pa側のダミー画素遮光膜9dの角部にはダミーコンタクトホールDcが形成されておらず、当該部以外の全てのダミー画素遮光膜9dの角部にはダミーコンタクトホールDcが形成されている。これは、画素Pa側のダミー画素遮光膜9dの角部にもダミーコンタクトホールDcを形成した場合、熱衝撃により走査線83が変形した際の影響が画素Paにも及ぶ恐れがあるからである。なお、上述した好適例の構成に限定するものではなく、ダミー画素領域における1ヶ所以上のダミー画素遮光膜9dの角部に、ダミーコンタクトホールDcが形成されていれば衝撃吸収部分としての機能を果たすことができる。
【0030】
図4は、図3(a)におけるm−m断面の断面図である。
続いて、図4を交えて、各部の構成を詳しく説明する。
図4に示すように、素子基板10には、各種の構成要素が積層構造をなして形成されている。この積層構造は、下から順に、走査線83を含む第1層、TFT30などを含む第2層、蓄積容量70を含む第3層、データ線63などを含む第4層、シールド層400などを含む第5層、前述の画素電極9a、および配向膜16などを含む第6層からなる。また、第1層及び第2層間には絶縁膜としての下地絶縁膜12が、第2層及び第3層間には第1層間絶縁膜41が、第3層及び第4層間には第2層間絶縁膜42が、第4層及び第5層間には第3層間絶縁膜43が、第5層及び第6層間には第4層間絶縁膜44が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。
また、これらの絶縁膜12,41,42,43,44には、例えば、TFT30の半導体層1a中の高濃度ソース領域1dとデータ線63とを電気的に接続するコンタクトホール81なども設けられている。以下、これらの各要素について、下層側から順に説明を行う。
【0031】
まず、第1層には、好適例として、Mo(モリブデン)からなる走査線83が形成されている。なお、図4には示されていないが、ダミー画素遮光膜9dも、同一層に形成されている。また、モリブデンに限定するものではなく、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)などの高融点金属を用いても良い。または、これらの金属の合金や、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したものであっても良い。
また、図3で説明したように、走査線83は、平面的にTFT30と重なるように配置されているため、素子基板10側から入射しようとする光を遮る機能も有している。これにより、TFT30の半導体層1aにおける光リーク電流の発生を抑制することができ、フリッカーなどのない高品質な画像表示が可能となる。
【0032】
そして、走査線83(ダミー画素遮光膜9d)の上には、例えば、シリコン酸化膜や、窒化シリコン膜などの透明な無機膜からなる絶縁膜としての下地絶縁膜12が形成されている。この下地絶縁膜12には、走査線83とゲート電極3aとを接続するコンタクトホール12cvや、前述した複数のダミーコンタクトホールDcが形成されている。
第2層には、ゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。TFT30は、上述したゲート電極3a、ゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。これらの構成要素は、例えばポリシリコン膜から構成されている。また、TFT30は、ゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2も備えている。
また、この第2層には、上述のゲート電極3aと同一膜として中継電極719が形成されている。この中継電極719は、平面的に見て、図3(a)に示すように、各画素電極9aの一辺の略中央に位置するように、島状に形成されている。中継電極719とゲート電極3aとは同一膜として形成されているため、後者が例えば導電性ポリシリコン膜等からなる場合においては、前者もまた、導電性ポリシリコン膜などからなる。
【0033】
図4に戻る。
第3層には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての下部電極71と、固定電位側容量電極としての容量電極300とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。また、図3(a)に示すように、蓄積容量70は、画素の開口率に影響を及ぼさないように、平面的に遮光領域(隔壁部分)内に収まるように形成されている。
また、下部電極71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。なお、金属、または合金を含む単一層膜、若しくは多層膜から構成しても良い。また、下部電極71は、画素電位側容量電極としての機能に加えて、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を有している。この中継接続は、後述するように、前記中継電極719を介して行われている。
また、容量電極300は、蓄積容量70の固定電位側容量電極として機能する。容量電極300は、これを固定電位とするために、固定電位とされたシールド層400と電気的に接続されている。
【0034】
そして、この容量電極300は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり、素子基板10上において、各画素に対応して島状に形成されている。下部電極71は、当該容量電極300とほぼ同一形状を有するように形成されている。
誘電体膜75は、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜などの酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜などから構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほど良い。また、この誘電体膜75は、下層に酸化シリコン膜75a、上層に窒化シリコン膜75bからなる2層構造となっている。
【0035】
TFT30ないしゲート電極3a、および中継電極719の上には、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜など、あるいはNSGからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。
そして、この第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dと後述するデータ線63とを電気的に接続するコンタクトホール81が、後述する第2層間絶縁膜42を貫通して開孔されている。また、第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール800が開孔されている。
また、第1層間絶縁膜41には、蓄積容量70を構成する画素電位側容量電極としての下部電極71と中継電極719とを電気的に接続するためのコンタクトホール881が開孔されている。
さらに、第1層間絶縁膜41には、中継電極719と後述する第2中継電極6a2とを電気的に接続するコンタクトホール882が、第2層間絶縁膜42を貫通しつつ開孔されている。
【0036】
第1層間絶縁膜41の上、すなわち上記第3層と後述する第4層との間には、例えば、酸化シリコン膜などからなる第2層間絶縁膜42が形成されている。
第2層間絶縁膜42には、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線63とを電気的に接続するコンタクトホール81が開孔されているとともに、シールド層用中継層6a1と蓄積容量70の上部電極たる容量電極300とを電気的に接続するコンタクトホール801が開孔されている。さらに、第2層間絶縁膜42には、第2中継電極6a2と中継電極719とを電気的に接続するためのコンタクトホール882が形成されている。
【0037】
第4層には、データ線63が設けられている。データ線63は、下層より順に、チタンと窒化チタンとがこの順に積層された複合チタン層41TN、アルミニウム層41A、窒化チタン層401が積層されてなる。窒化チタン層401は、その下層のアルミニウム層41Aと複合チタン層41TNを覆うように少し大きなサイズにパターンニングされている。データ線63は、コンタクトホール81を介してTFT30の高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。
第4層には、データ線63と同一膜として、シールド層用中継層6a1、および第2中継電極6a2が形成されている。詳しくは、図3(a)に示すように、平面的に見ると、走査線83の幹線部上に、略四辺形状を有するシールド層用中継層6a1と、その右側にシールド層用中継層6a1よりも若干大きめの略四辺形状の第2中継電極6a2とが形成されている。各層は、データ線63と同様な材質から構成されている。
【0038】
第5層には、第2遮光膜としてのシールド層400が形成されている。このシールド層400は、平面的には、図3(a)に示すように、Y軸方向にデータ線63に沿って(重ねて)延在している。また、図3(a)には示されていないが、X軸方向においても、走査線83に沿って(重ねて)延在している。換言すれば、シールド層400は、隔壁部分内で格子状に形成されている。
また、シールド層400のうちY軸方向に延在する部分については、特に、データ線63を覆うように、且つ、該データ線よりも幅広に形成されている。また、図中X方向に延在する部分については、後述の第3中継電極402を形成する領域を確保するために、各画素電極9aの一辺の中央付近に切り欠き部を有している。
このシールド層400は、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。なお、定電位源としては、データ線駆動回路6に供給される正電源や負電源の定電位源でも良いし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位源でも良い。
このように、データ線63を覆うように形成され、固定電位とされたシールド層400によれば、データ線63、および画素電極9a間に生じる容量カップリングの影響を排除することが可能となる。シールド層400は、格子状に形成されているため、走査線83が延在する部分についても、無用な容量カップリングが生じることを抑制することができる。
【0039】
また、第5層には、このようなシールド層400と同一膜として、中継層としての第3中継電極402が形成されている。この第3中継電極402は、後述のコンタクトホール89を介して、第2中継電極6a2及び画素電極9a間の電気的接続を中継する機能を有する。なお、これらシールド層400及び第3中継電極402間は、平面形状的に連続して形成されているのではなく、両者間はパターニング上分断されるように形成されている。
また、シールド層400、および第3中継電極402は、下層にアルミニウムからなる層、上層に窒化チタンからなる層の2層構造を有している。また、第3中継電極402において、下層のアルミニウムからなる層は、第2中継電極6a2と接続され、上層の窒化チタンからなる層は、ITO等からなる画素電極9aと接続されるようになっている。
さらには、シールド層400、および第3中継電極402は、光反射性能に優れたアルミニウムを含み、かつ、光吸収性能に優れた窒化チタンを含むことから、遮光膜としても機能する。つまり、シールド層400は、TFT30を介して、第1遮光膜としての走査線83と対向する第2遮光膜として機能し、対向基板20側からの入射光(図4参照)の進行を遮ることができる。なお、このような遮光機能は、上述した容量電極300、およびデータ線63も同様に有している。
データ線63の上には、酸化シリコン膜などからなる第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、シールド層400とシールド層用中継層6a1とを電気的に接続するためのコンタクトホール803、及び、第3中継電極402と第2中継電極6a2とを電気的に接続するためのコンタクトホール804がそれぞれ開孔されている。
【0040】
第6層には、上述したように画素電極9aがマトリクス状に形成され、該画素電極上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下には、酸化シリコン膜などからなる第4層間絶縁膜44が形成されている。この第4層間絶縁膜44には、画素電極9a、および第3中継電極402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されている。
なお、ダミー画素Pdにも画素電極は形成されているが、ダミー画素遮光膜9dが形成されているため、当該電極に電位が印加されても、基本的にはその表示が有効表示に寄与しない構成となっている。本実施形態では、好適例として、ダミー画素Pdの画素電極には、データ線から中間調の画像を表すデータ信号を供給している。これにより、ダミー画素Pdに斜め方向から入射した光や、迷光が、有効表示に混入した場合においても、有効表示に及ぼす影響を抑制している。
【0041】
他方、対向基板20上には、対向電極21、ポリイミド系の配向膜22などが形成されている。対向電極21は、ITO等の透明導電性膜からなる。配向膜16,22は、液晶層50に含まれる液晶分子に所定のプレティルト角を付与するように、所定方向にラビング処理されている。
なお、図4では、有効画素Paの断面を用いて説明したが、ダミー画素Pdの構成も基本的に同様である。画素Paとダミー画素Pdとの違いを整理すると、ダミー画素Pdには、ダミー画素遮光膜9dと、複数のダミーコンタクトホールDcとが形成されており、これらの点のみが、有効画素Paと異なる。
【0042】
「表示装置の製造方法」
図5は、表示装置の製造工程を示すフローチャート図である。図6(a)〜(d)は、製造工程における一態様を示す図である。図7(a)〜(d)は、製造工程における一態様を示す図である。
ここでは、表示装置100の製造方法について、第1遮光膜(走査線83)、および複数のダミーコンタクトホールの形成工程を含む第1層、および第2層の形成工程を中心に説明する。
【0043】
まず、ステップS1では、第1遮光膜としての走査線83、およびダミー画素遮光膜9dを形成する。詳しくは、素子基板10上に、高融点金属膜をスパッタ法により堆積し、次いでフォトリソ法を用いてパターニングして、図3(b)に示すような走査線83、およびダミー画素遮光膜9dを形成する。
ステップS2では、常圧、または減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、走査線83、およびダミー画素遮光膜9dを含む全面に下地絶縁膜12を形成する。この状態が図6(a)に示されている。
ステップS3では、下地絶縁膜12上に、半導体層1aを形成する。詳しくは、CVD法を用いて、アモルファスシリコン膜を形成した後、窒素雰囲気中においてアニール処理を施すことにより、p−Si(ポリシリコン)膜を約50〜200nmの厚さ、好ましくは約100nmの厚さとなるまで固相成長させる。この際、TFT30をnチャネル型とするかpチャネル型とするかに応じて、V族元素やIII族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。そして、フォトリソ法を用いて所定パターンの半導体層1aを形成する。
【0044】
ステップS4では、TFT30を構成する半導体層1aを熱酸化して下層ゲート絶縁膜を形成する。そして、これに続けて減圧CVD法を用いて、上層ゲート絶緑膜を形成することにより、一層、または多層の高温酸化シリコン膜(HTO膜)や、窒化シリコン膜からなる(ゲート絶縁膜を含む)絶縁膜2を形成する。次に、TFT30のスレッシュホールド電圧Vthを制御するために、半導体層1aのうちnチャネル領域あるいはpチャネル領域に、ボロン等のドーパントを予め設定された所定量だけイオン注入法によりドープする。
ステップS5では、下地絶縁膜12に対して反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチングなどのドライエッチング法を用いて、走査線83に通ずるコンタクトホール12cv、および複数のダミーコンタクトホールを形成する。この状態が図6(b)に示されている。
ステップS6では、ゲート電極3a、および中継電極719を形成する。詳しくは、減圧CVD法を用いて、ポリシリコン膜を堆積させた後、リン(P)を熱拡散して、このポリシリコン膜を導電化する。そして、フォトリソ法を用いて、所定のパターンのゲート電極3a、および中継電極719を形成する。この状態が図6(c)に示されている。なお、当該図、および図4では、ゲート電極3aと中継電極719とを区分けするために、両者の厚さを異ならせているが、実際は同じ厚さに形成されており、また、電気的に接続している。
【0045】
次に、前記半導体層1aについて、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成する。
ここでは、TFT30をLDD構造をもつnチャネル型のTFTとする場合を説明すると、具体的にまず、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成するために、ゲート電極3aをマスクとして、P等のV族元素のドーパントを低濃度でドープする。これによりゲート電極3a下の半導体層1aはチャネル領域1a’となる。次に、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、ゲート電極3aよりも幅の広い平面パターンを有するレジスト層をゲート電極3a上に形成し、その後、P等のV族元素のドーパントを高濃度でドープする。こうしてTFT30が完成し、第2層までの積層構造が形成される。
【0046】
次に、ステップS7では、ゲート電極3a上に、常圧、または減圧CVD法を用いて、第1層間絶縁膜41を形成する。
ここで、常圧、または減圧CVD法では、成膜温度は低い場合でも400度以上が必要であり、より良好な膜圧を得るためには、1000度近い高温が必要であると言われている。これに対してプラズマCVD法では、熱エネルギーから電気エネルギーに置き換わる分があるため、その分成膜温度を低くすることが可能であるが、それでも、300度程度の温度が必要である。
このような高温が印加された場合、高融点金属膜により形成された走査線83は、石英からなる素子基板10などとの熱膨張係数(線膨張係数)の違いから膨張し、その歪を解消するために、強度の弱い部分で変形や、クラックを生じさせていた。
特に、モリブデンなどの高融点金属は、優れた遮光性や耐熱性を有する一方、脆いため、従来の表示装置のように、一様な構造であった場合には、画素領域で、変形やクラックが発生してしまっていた。
これに対して、本実施形態の表示装置によれば、熱衝撃による歪は、強度の弱いダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。換言すれば、ダミーコンタクトホールが形成された部分が、衝撃吸収部分として機能することになる。
【0047】
ステップS8では、下地絶縁膜12に対して反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチングなどのドライエッチング法を用いて、コンタクトホール800,881を開孔する。この状態が図6(d)に示されている。
続いて、ステップS9では、第3層、および第2層間絶縁膜42を形成する。まず、CVD法やスパッタリング法、フォトリソ法などを用いて、下部電極71、誘電体膜75、容量電極300を含む蓄積容量70を形成する。この状態が図7(a)に示されている。
続いて、CVD法を用いて、シリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第2層間絶縁膜42を形成する。この工程においても、高温が印加されるため、走査線83に熱歪が生じることになるが、その歪はダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。そして、ドライエッチング法を用いて、第2層間絶縁膜42にコンタクトホール81,801,882を開孔する。この状態が図7(b)に示されている。
【0048】
ステップS10では、第4層、および第3層間絶縁膜43を形成する。まず、CVD法、スパッタリング法、フォトリソ法、ドライエッチング法などを用いて、データ線63、シールド層用中継層6a1、第2中継電極6a2を形成する。この状態が図7(c)に示されている。
続いて、CVD法を用いて、シリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第3層間絶縁膜43を形成する。この工程においても、高温が印加されるため、走査線83に熱歪が生じることになるが、その歪はダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。そして、ドライエッチング法を用いて、第3層間絶縁膜43にコンタクトホール803,804を開孔する。この状態が図7(d)に示されている。
【0049】
ステップS11では、第5層、および第4層間絶縁膜44を形成する。まず、CVD法、スパッタリング法、フォトリソ法、ドライエッチング法などを用いて、シールド層400、および第3中継電極402を形成する。
続いて、CVD法を用いて、シリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第4層間絶縁膜44を形成する。この工程においても、高温が印加されるため、走査線83に熱歪が生じることになるが、その歪はダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。また、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)法を用いて、第4層間絶縁膜44を平坦化処理する。
そして、ドライエッチング法を用いて、第4層間絶縁膜44にコンタクトホール89を開孔する。この状態が図7(d)に示されている。なお、図7(d)は、図4と同一図である。
【0050】
ステップS12では、第6層を形成する。まず、スパッタリング法、およびフォトリソ法を用いて、画素電極9aを形成する。続いて、画素電極9a上に、ポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、ラビング処理を施すことにより、所定のプレティルト角を有する配向膜16を形成する。
以上により、素子基板10上に配向膜16までが積層された積層構造が完成する。
【0051】
他方、対向基板20においては、別途、対向電極21、および配向膜22が形成されている。
そして、図1に示すように、各層が形成された素子基板10と対向基板20とを、その周縁部に塗布したシール材52によって貼り合わせた後、真空吸引法などを用いて、両基板間の空間に液晶を充填することにより、表示装置100が完成する。なお、シール材52の4隅には、上下導通部36が形成されており、また、シール材52中には、両基板間の距離(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバーや、ガラスビーズなどのキャップ材(スペーサー)56が散布されている。
【0052】
上述した通り、本実施形態に係る表示装置100、および製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
表示装置100によれば、画素領域の周辺に複数のダミー画素Pdが形成されるとともに、各ダミー画素におけるダミー画素遮光膜9dを覆う下地絶縁膜12には、当該ダミー画素遮光膜の少なくとも角部に沿ってダミーコンタクトホールDcが形成されている。
ダミー画素Pdは、基本的に表示に寄与しない画素であるため、その開口部は矩形状のダミー画素遮光膜9dに覆われた状態となっている。また、下地絶縁膜12は、例えば、酸化シリコン膜などの硬質な無機絶縁膜であり、画素領域、およびダミー画素領域を含めて共通に形成されている。
【0053】
ここで、複数の走査線83は、画素電極9a(開口部)、およびダミー画素遮光膜9dを区画して延在しているため、ダミー画素遮光膜9dの角部は、走査線83に沿った部分となり、ダミーコンタクトホールDcは、ダミー画素領域における走査線83に沿った部分に形成されていることになる。換言すれば、ダミーコンタクトホールDcは、ダミー画素領域に形成されるとともに、画素領域、およびダミー画素領域に渡って延在する走査線83に沿って配置されている。また、好適例では、1つのダミー画素Pdごとに、ダミーコンタクトホールDcが4つずつ形成されている。換言すれば、ダミー領域において、走査線83の幹線に沿って複数のダミーコンタクトホールDcが形成されている。また、走査線83と下地絶縁膜12とからなる積層体において、ダミーコンタクトホールDcが形成された部分の強度は、ダミーコンタクトホールDcが形成されていない部分よりも弱くなる。
つまり、後続の層間絶縁膜の形成工程において熱衝撃が加わった場合、ダミーコンタクトホールDcが形成されているダミー画素領域の走査線83部分に熱歪による変形や、クラックが発生し易くなる。換言すれば、ダミーコンタクトホールDcが形成されたダミー画素領域における走査線83部分が、衝撃吸収部分として機能することになる。また、ダミー画素領域の遮光膜に変形や、クラックが発生したとしても、表示に影響を及ぼすことはない。
従って、画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減した表示装置100を提供することができる。
【0054】
表示装置100の製造工程は、複数の工程からなり、特に、各層ごとに形成される層間絶縁膜の形成工程では、高温となるCVD法が用いられるため、その都度、走査線83は、熱衝撃を受けることとなる。また、走査線83の材料には、優れた遮光性や耐熱性を有する一方、脆さも併せ持つモリブデンなどの高融点金属が用いられているため、従来の表示装置のように、走査線83周辺が一様な構造であった場合には、画素領域で、変形やクラックが発生してしまっていた。
これに対して、本実施形態の製造方法によれば、ダミーコンタクトホールDcが形成された以降の工程における熱衝撃による歪は、強度の弱いダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。換言すれば、ダミーコンタクトホールが形成された部分が、衝撃吸収部分として機能することになる。
よって、画素領域における画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減することができる。従って、この製造方法によれば、表示装置100の製造工程において、所期の歩留りを確保することができる。
【0055】
(電子機器)
図8は、上述した表示装置100をライトバルブとして用いた3板式プロジェクターの構成を示す平面図である。
次に、上述した実施形態に係る表示装置を用いた電子機器の例について説明する。
プロジェクター2100において、ライトバルブに入射させるための光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0056】
ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した各実施形態における表示装置100と同様であり、外部上位装置(図示省略)から供給されるR、G、Bの各色に対応する画像データでそれぞれ駆動される。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。
ダイクロイックプリズム2112において合成されたカラー画像を表す光は、レンズユニット2114によって拡大投射され、スクリーン2120上にフルカラー画像が表示される。
【0057】
なお、ライトバルブ100R、100Bの透過像がダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるため、ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、ライトバルブ100Gにより形成される画像とが左右反転の関係になるように設定されている。
【0058】
また、電子機器としては、図8を参照して説明した他にも、リアプロジェクション型のテレビジョンや、直視型、例えば携帯電話や、パーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの電子機器に対しても、本発明に係る表示装置を適用させることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0060】
(変形例1)
図4を用いて説明する。
上記実施形態では、第1遮光膜としての走査線83に高融点金属膜を用いるとともに、下地絶縁膜12に複数のダミーコンタクトホールDcを形成するものとして説明したが、この構成に限定するものではない。高融点金属膜を用いた層の近傍層に複数のダミーコンタクトホールを形成する構成であれば良い。
例えは、第2遮光膜としてのシールド層400に高融点金属膜を用いるとともに、第3層間絶縁膜43にダミーコンタクトホールを形成する構成であっても良い。
この構成の場合、ステップS10において、コンタクトホール803,804を形成するのと一緒に、複数のダミーコンタクトホールを形成すれば良い。
この構成によれば、第4層間絶縁膜44の形成工程を含む後続の熱衝撃が掛かる工程において、走査線83に生じる歪は、強度の弱いダミーコンタクトホールが形成された部分に集中することになる。換言すれば、ダミーコンタクトホールが形成された部分が、衝撃吸収部分として機能することになる。
従って、画素欠けや、輝度ムラなどの表示不良を低減した表示装置を提供することができる。また、この製造方法によれば、表示装置の製造工程において、所期の歩留りを確保することができる。
【0061】
(変形例2)
図3を用いて説明する。
上記実施形態では、第1遮光膜が走査線83を兼ねるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。第1遮光膜の電位は問わず、構成(配線レイアウト)が前記実施形態と同様であれば良い。
例えば、第1遮光膜の電位は、容量線85の電位であっても良いし、走査線駆動回路8や、データ線駆動回路6に供給されている電源電位であっても良い。または、フローティング電位であっても良い。
これらの電位態様であっても、構成(配線レイアウト)が前記実施形態と同じであれば、当該実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0062】
(変形例3)
図4を用いて説明する。
上記実施形態では、表示装置100は、透過型であるものとして説明したが、この構成に限定するものではなく、例えば、反射型であっても良い。
この場合、画素電極9aをアルミニウムなどの反射性を有する材料から構成して、反射電極とする。これにより、対向基板20から入射した光を画素電極9aで反射して、光変調された表示光を、再度、対向基板20から出射する反射型の表示装置が形成される。
この構成であっても、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
9a…開口部としての画素電極、9d…ダミー画素遮光膜、10…基板としての素子基板、12…絶縁膜としての下地絶縁膜、12cv…コンタクトホール、20…対向基板、30…駆動素子としてのTFT、50…電気光学層としての液晶層、63…データ線、83…第1遮光膜としての走査線、400…第2遮光膜としてのシールド層、2100…電子機器としてのプロジェクター、Dc…ダミーコンタクトホール、Pa…画素、Pd…ダミー画素、V…表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の画素が配列された画素領域と、
前記画素領域の周辺に配置された複数のダミー画素と、
前記複数のダミー画素ごとに設けられた矩形状のダミー画素遮光膜と、
前記配列の方向に沿って延在し、前記画素の開口部、および前記ダミー画素遮光膜を区画する複数の第1遮光膜と、
前記ダミー画素遮光膜、および前記第1遮光膜を覆うように設けられた絶縁膜と、を備え、
前記絶縁膜には、前記ダミー画素遮光膜の少なくとも角部に沿ってダミーコンタクトホールが形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ダミーコンタクトホールは、前記ダミー画素遮光膜の角部に加えて、前記第1遮光膜に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
少なくとも前記第1遮光膜は、高融点金属から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記絶縁膜は、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜を含む透明な無機膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
複数の前記画素、および前記ダミー画素ごとに形成された駆動素子と、
複数の前記駆動素子を走査駆動するための駆動信号を供給する複数の走査線、およびデータ線をさらに備え、
前記第1遮光膜は、前記走査線、または前記データ線のいずれかを兼ねることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
複数の前記駆動素子は、平面的に前記第1遮光膜と重なるように配置されてなり、
前記駆動素子を介在して、前記第1遮光膜と対向する第2遮光膜をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記複数のダミー画素には、前記データ線から中間調の画像を表す前記駆動信号としての画像信号が選択的に供給されることを特徴とする請求項5または6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記基板と対向配置された対向基板をさらに備え、
前記基板と、前記対向基板との間に、電気光学物質を挟持したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
複数の画素が配列された画素領域と、前記画素領域の周辺に配置された複数のダミー画素と、複数の前記画素、および前記ダミー画素ごとに形成された駆動素子と、複数の前記画素、および前記ダミー画素を区画するとともに、前記駆動素子と平面的に重なる遮光膜とを少なくとも備えた電気光学装置の製造方法であって、
基板上に、前記遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の上層に前記駆動素子を含む半導体層を形成する工程と、
前記絶縁膜にコンタクトホール、およびダミーコンタクトホールを形成する工程と、
前記駆動素子の上層側に層間絶縁膜を形成する工程と、を含み、
前記ダミーコンタクトホールは、前記ダミー画素における前記遮光膜に沿った部分に複数形成されることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
前記遮光膜は、高融点金属からなり、
前記絶縁膜、および前記層間絶縁膜は、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜を含む透明な無機膜からなり、
前記層間絶縁膜を形成する工程は、数百度以上の温度環境下で行われることを特徴とする請求項10に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−59374(P2011−59374A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208988(P2009−208988)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】