電気光学装置、画像形成装置および画像読み取り装置
【課題】 自発光素子からの放熱を促すことが可能であり小型化が容易な電気光学装置を提供する。
【解決手段】 電気光学装置10は、基板12と、基板12に形成された複数のOLED素子14と、基板12と協働してOLED素子14を封止するように基板12に取り付けられた封止体24と、封止体24に取り付けられておりOLED素子14を駆動するための回路素子28とを備える。また、封止体24には、回路素子28およびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられている。封止体24の熱伝導率は基板12よりも高い。
【解決手段】 電気光学装置10は、基板12と、基板12に形成された複数のOLED素子14と、基板12と協働してOLED素子14を封止するように基板12に取り付けられた封止体24と、封止体24に取り付けられておりOLED素子14を駆動するための回路素子28とを備える。また、封止体24には、回路素子28およびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられている。封止体24の熱伝導率は基板12よりも高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光素子を備えた電気光学装置、ならびにこの電気光学装置を備えた画像形成装置および画像読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下適宜「OLED」と略称する)素子が注目されている。OLED素子は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されているように、表示装置として使われる。
【0003】
また、多数のOLED素子を配列したラインヘッドを露光手段すなわち潜像書き込み器として用いる電子写真方式の画像形成装置が開発されている。このようなラインヘッドでは、OLED素子の他、これを駆動するためのトランジスタを含む画素回路が複数配置される。例えば、特許文献3および特許文献4にはこのようなラインヘッドが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−58255号公報
【特許文献2】特開2001−343933号公報
【特許文献3】特開平11−274569号公報
【特許文献4】特開2001−130048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OLED素子のような自発光素子を備えた電気光学装置には小型化の要求が高い。例えば、この種の電気光学装置を潜像書き込みのためのラインヘッドとして利用する電子写真方式の画像形成装置では、帯電器と現像器の間の限られたスペースで像担持体に潜像を書き込む必要がある。このため、ラインヘッドが大きい場合には、像担持体から離れた位置にラインヘッドを配置しなければならず、画像形成装置全体も大型化してしまう。電気光学装置を小型化することにより、画像形成装置全体の小型化に寄与する可能性がある。
【0006】
しかし、従来の電気光学装置では、構成要素の配置が小型化の制約になっていた。例えば、特許文献1および特許文献4の技術では、OLED素子が形成された基板にOLED素子を駆動または制御する回路素子を配置しているので、面積が大きい基板を使用する必要がある。
【0007】
また、OLED素子のような自発光素子は、発光時に発熱し、しかも温度によって輝度が異なる。従って、自発光素子の熱を逃がす対策として放熱フィンを設けることなどが考えられる。しかし、放熱のための対策をとると、部品点数が増加したり、装置が大型化したりするといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、自発光素子からの放熱を促すことが可能であり小型化が容易な電気光学装置、ならびにこの電気光学装置を備えた画像形成装置および画像読み取り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気光学装置は、基板と、上記基板に形成された複数の自発光素子と、上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、上記封止体に取り付けられており上記自発光素子を駆動または制御するための回路とを備える。そして、上記封止体の熱伝導率が上記基板より高い。この配置によれば、自発光素子を駆動または制御する回路が、自発光素子を封止する封止体に重なるために、自発光素子が形成された基板の面積を小さくすることが可能である。従って、基板を節約することができるとともに、この電気光学装置を備えた装置全体の小型化に寄与する。また、基板よりも熱伝導率が高い封止体を通じて自発光素子で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0010】
別の態様として、本発明に係る電気光学装置は、基板と、上記基板に形成された複数の自発光素子と、上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、上記自発光素子を駆動または制御するための回路と、上記封止体に設けられており少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線とを備える。そして、上記封止体の熱伝導率が上記基板より高い。多数の自発光素子および回路に給電するための電源線は、大電流を流す必要があるため、大きな断面積を有する。このような電源線を自発光素子が形成された基板に設ける場合には、大きな面積の基板が必要になる。しかし、この配置によれば、基板に重なった封止体に、少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線が設けられていることにより、自発光素子が形成された基板の面積を小さくすることが可能である。従って、基板を節約することができるとともに、この電気光学装置を備えた装置全体の小型化に寄与する。また、基板よりも熱伝導率が高い封止体を通じて自発光素子で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0011】
上記の態様の組み合わせとして、自発光素子を駆動または制御する回路と、少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線が上記封止体に取り付けられてもよい。この場合には、基板の面積をさらに小さくすることが可能である。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、上記像担持体を帯電する帯電器と、複数の上記自発光素子が配列され、上記像担持体の帯電された面に複数の上記自発光素子により光を照射して潜像を形成する上記の電気光学装置と、上記潜像にトナーを付着させることにより上記像担持体に顕像を形成する現像器と、上記像担持体から上記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える。上記のように本発明に係る電気光学装置は小型化することができるので、像担持体に近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置も小型化することが可能である。
【0013】
本発明に係る画像読み取り装置は、複数の上記自発光素子が配列された上記の電気光学装置と、上記自発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置とを備える。上記のように本発明に係る電気光学装置では基板の面積を小さくすることができるので、この画像読み取り装置も小型化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図であり、図2はこの電気光学装置の部分平面図である。この電気光学装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。これらの図に示すように、電気光学装置10は、透明な基板12と、基板12に形成された複数のOLED素子(自発光素子)14を備える。基板12は好ましくはガラス、石英またはプラスチックにより形成された平板であり、基板12の上には多数のOLED素子(自発光素子)14が一列またはその他の適切なパターンで配列されている。図示の形態では、各OLED素子14から発せられた光が、透明な基板12を通過して図1の下方に進行する。すなわち、この電気光学装置はボトムエミッションタイプである。
【0016】
基板12上には、OLED素子14に給電するための電極18A,18BならびにOLED素子14と電極18A,18Bを接続する配線16が形成されている。配線16、電極18A,18Bは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。
【0017】
また、基板12と協働してこれらのOLED素子14を封止するように基板12には封止体24が取り付けられる。この封止は、OLED素子14を外気、特に水分および酸素から隔離してその劣化を抑制する。封止体24は、OLED素子14で発生した熱を効率的に放散するために、基板12よりも高い熱伝導率を有する材料から形成される。例えば、基板12がガラスから形成される場合、封止体24の好適な材料としては、ガラスを除くセラミック(Al2O3、AlNなど)および金属(42アロイ(ニッケルを約42%、鉄を約58%含む合金)、銅、アルミニウムなど)が挙げられる。
【0018】
基板12への封止体24の取り付けには、好ましくは接着剤22が用いられる。接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤または紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0019】
OLEDの分野で使用される封止の種類には、封止体24の一面全体を接着剤22により基板12に接合する膜封止と、封止体24の周縁部を接着剤22により基板12に接合してOLED素子14の周囲に封止体24と基板12とで画定される空間を設けるキャップ封止がある。キャップ封止ではこの空間内に乾燥剤が配置される。この実施の形態は、膜封止とキャップ封止のいずれを利用してもよいが、OLED素子14の冷却効率の観点からは膜封止の方がキャップ封止よりも優れている。OLED素子14をさらに外気から隔離して保護するために一つ以上のパッシベーション層を封止体24の周囲に設けてもよい。
【0020】
さらに封止体24上には、OLED素子14を駆動するために電源線20A,20B,20Cが形成されている。電源線20A,20B,20Cは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。封止体24を導電材料から形成した場合には、図示しないが、電源線20A,20B,20Cの短絡を防止するために、封止体24と各電源線20A,20B,20Cの間には絶縁層が設けられる。
【0021】
また、封止体24の上には、複数のOLED素子14を駆動するためのドライバICすなわち回路素子28が取り付けられている。封止体24への回路素子28の取り付けには、好ましくは接着剤26が用いられる。接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤または紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0022】
後述するように、回路素子28は、複数のOLED素子14への給電のための配線と、これらのOLED素子14への通電のオン・オフ切替を行う要素を内蔵する。回路素子28は、その上面に電極30A,30B,32A,32B,32Cを有する。電極30A,30Bは、ボンディングワイヤ34A,34Bを介して基板12上の電極18A,18Bにそれぞれ接続され、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。電極32A,32B,32Cは、ボンディングワイヤ36A,36B,36Cを介して電源線20A,20B,20Cにそれぞれ接続されている。
【0023】
電源線20AはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線である。電源線20BはOLED素子14に対する高電位電源線である。電源線20Cは回路素子28に対する高電位電源線である。これらの電源線20A,20B,20Cは、図示しないフレキシブル基板を介して電源装置に接続される。
【0024】
図3は、各OLED素子14の詳細を示す断面図である。OLED素子14は、透明なITO(Indium Tin Oxide)製の陽極42上に成膜された正孔注入層46と、その上に成膜された発光層48と、その上に成膜された陰極49を有する。正孔注入層46および発光層48は、絶縁層40および隔壁44で画定された凹部内に形成されている。絶縁層40の材料には例えばSiO2があり、隔壁44の材料には例えばポリイミドがある。
【0025】
陽極42は図3で示されていない導線を介して電極18Bに接続されており、詳細には図3で示されていないが電極18Bの背後にある電極18Aに陰極49は導線を介して接続されている。これらの導線は、図1に概略的に配線16として示されている。この実施の形態の各OLED素子14の構成は上記の通りであるが、本発明に係るOLED素子のバリエーションとしては、陰極と発光層の間に電子注入層を設けたタイプや、陽極と透明基板の間に絶縁層を設けたタイプなど他の層を有するタイプであってもよい。
【0026】
図4は、電気光学装置10の駆動系統を示すブロック図である。図4に示すように、上述した回路素子28は、複数本、例えば128本のデータ線L0〜L127および駆動回路280を備える。回路素子28にはデータ信号D0〜D127の他、各種の制御信号CTL、第1電源電位VICおよびグランド電位GNDが供給される。データ信号D0〜D127は図示しないデータ制御回路からデータ線L0〜L127に与えられる。第1電源電位VICは回路素子28に対する高電位電源線20Cから与えられ、グランド電位GNDはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線20Aから与えられる。
【0027】
図4に示された画素ブロックB1〜B40の各々は、一つの単位時間に駆動される複数個、例えば128個の画素回路Pの集合である。駆動回路280には制御信号CTLとしてクロック信号が供給され、駆動回路280はクロック信号に従って、選択信号SEL1〜SEL40を順次出力する。選択信号SEL1〜SEL40は、それぞれ画素ブロックB1〜B40に入力され、対応する画素ブロック内の128個の画素回路Pに供給される。各選択信号SEL1〜SEL40は、潜像書き込みの主走査期間の1/40の期間(選択期間)アクティブとなる。
【0028】
選択信号SEL1〜SEL40によって第1〜第40画素ブロックB1〜B40が排他的に順次選択される。このように主走査期間を複数の選択期間(書込期間)に分割して、画素ブロックB1〜B40を時分割駆動するので5120個(128×40)の画素回路Pのそれぞれに専用のデータ線を設ける必要がなく、データ線の本数を削減することができる。すなわち128本のデータ線L0〜L127で5120個の画素回路Pを制御することができる。第1〜第4画素ブロックB1〜B40の各々は、データ線L0〜L127にそれぞれ対応する128個の画素回路Pを備える。これらの画素回路Pには第2電源電位VELとグランド電位GNDが供給される。第2電源電位VELはOLED素子14に対する高電位電源線20Bから与えられ、グランド電位GNDはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線20Aから与えられる。そして、各選択期間においてデータ線L0〜L127を介して供給されるデータ信号D0〜D127が画素回路Pに取り込まれる。なお、この例のデータ信号D0〜D127はOLED素子の点灯・消灯を指示する2値の信号である。
【0029】
図5は各画素回路Pの回路図である。各画素回路Pは、保持トランジスタ281、駆動トランジスタ282およびOLED素子14を備える。図中、回路素子28に内蔵されている部分を符号28で示している。これから明らかなように、保持トランジスタ281および駆動トランジスタ282は回路素子28に内蔵されている。保持トランジスタ281のゲートには駆動回路280から選択信号SEL1〜SEL40のいずれかが供給され、そのソースはデータ線L0〜L127のいずれかと接続されることによりデータ信号D0〜D127のいずれかがソースに供給される。保持トランジスタ281のドレインと駆動トランジスタ282のゲートは接続線によって接続されている。接続線には浮遊容量が付随しており、この容量が保持容量として作用する。保持容量には選択期間において2値の電圧が書き込まれ、次の選択期間まで書き込まれた電圧が保持される。従って、保持トランジスタを選択信号SEL1〜SEL40により選択した期間においてデータ信号D0〜D127がOLED素子14の点灯を指示する信号である期間のみOLED素子14が発光することになる。
【0030】
駆動トランジスタ282のドレインには、高電位電源線20Bからボンディングワイヤ36Bおよび回路素子28の電極32Bを介して第2電源電位VELが供給される。駆動トランジスタ282のソースは、回路素子28の電極30B、ボンディングワイヤ34Bおよび基板12上の電極18Bを介してOLED素子14の陽極と接続される。駆動トランジスタ282は、保持容量に書き込まれた電圧(2値)に応じた駆動電流をOLED素子14に供給する。OLED素子14の陰極には、低電位電源線20Aからボンディングワイヤ36A、回路素子28の電極32A、回路素子28の電極30A、ボンディングワイヤ34Aおよび基板12上の電極18Bを介してグランド電位GNDが供給される。OLED素子14は駆動電流の大きさに応じた量の光を発光する。
【0031】
以上のように、回路素子28には、どの画素ブロックを通電可能にするかを選択する駆動回路280と、選択された画素ブロック中のOLED素子14に通電するか否かを指令する(OLED素子14への通電のオン・オフ切替を行う)画素回路P(より正確には保持トランジスタ281および駆動トランジスタ282)を内蔵する。但し、駆動回路280と同等の回路を回路素子28の外部に設けてもよいし、データ信号D0〜D127または各種の制御信号CTLを生成する制御回路を回路素子28の内部に設けてもよく、これらのバリエーションも本発明の範囲内にある。またこれらの回路素子28の構成要素は、一つの素子すなわちICチップに設けてもよいし、複数の素子に配分してもよい。
【0032】
次に第1の実施の形態の電気光学装置10を製造する手順を説明する。まず図6に示すように、基板12上にOLED素子14、配線16および電極18A,18Bを形成する。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。他方、封止体24上に電源線20A,20B,20Cを形成する。電源線20A,20B,20Cの形成方法は、例えばメッキなどの公知のいずれの方法でもよい。図示しないが、この後、電源線20A,20B,20Cをオーバーコート膜で保護してもよい。オーバーコート膜としては、例えばSiO2の膜、SiNの膜、およびこれらの組み合わせがある。
【0033】
次に図7に示すように、封止用の熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22を基板12上にコートする。さらに図8に示すように、封止体24を接着剤22上に置いて基板12に貼り付け、この後接着剤22を硬化させる。封止用の接着剤22は、図8に示すように、基板12と封止体24の間のスペースからはみ出して封止体24の側端部を部分的に覆う突出部22aを有してもよい。このような突出部22aを設けることにより、封止の効果をさらに高めることが可能である。突出部22aを設けるには、基板12と封止体24の間のスペースに配置されるだけの量よりも多い量の接着剤を基板12上にコートしてそのスペースから接着剤をはみ出させてもよいし、接着剤22が硬化した後にさらに接着剤をその外側にコートしてもよい。
【0034】
その後、回路素子28の下面(電極30A,30B,32A,32B,32Cの反対側の面)に熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤26をコートする。そして図9に示すように、回路素子28を封止体24に貼り付け、この後接着剤26を硬化させる。さらに、図1および図2に示すように、ワイヤボンディング法により、上述した所定の位置にボンディングワイヤ34A,34B,36A,36B,36Cを取り付けることにより、電気光学装置10が完成する。但し、回路素子28の封止体24への貼り付けは、封止体24の基板12への貼り付けの前に行ってもよい。
【0035】
多数の自発光素子および回路に給電するための電源線は、大電流を流す必要があるため、大きな断面積を有する。このような電源線を自発光素子が形成された基板に設ける場合には、大きな面積の基板が必要になる。しかし、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を封止する封止体24に、回路素子28およびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられていることにより、OLED素子14が形成された基板12の面積を小さくすることが可能である。従って、基板12を節約することができるとともに、この電気光学装置10を備えた装置全体の小型化に寄与する。
【0036】
また、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を駆動する回路素子28が、OLED素子14を封止する封止体24に重なって設けられているために、OLED素子14が形成された基板12の面積をより小さくすることが可能である。
【0037】
また、この実施の形態によれば、基板12よりも熱伝導率が高い封止体24を通じてOLED素子14で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0038】
表1は、封止体24の好適な材料および基板12の典型的な材料であるガラスの特性を示す。OLED素子14の冷却効率だけに着目すれば、熱伝導率が高いほど好ましいといえる。この観点では、例えば銅またはアルミニウムが封止体24の材料として好ましい。但し、熱による歪みの発生を少なくするには、封止体24と基板12の熱膨張係数が近いほど好ましいといえる。この観点では、例えばAl2O3、AlN、42アロイが封止体24の材料として好ましい。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、図示の形態では、封止体24の一つの側端部が基板12の一つの側端部に面一に揃えられているが、本発明に係る封止体と基板の配置のバリエーションとしては、一方の部材が他方の部材から突き出していてもよい。また、図示の形態では、封止体24の上面に形成された溝に電源線20A,20B,20Cが埋設されて封止体24の上面と各電源線20A,20B,20Cの上面が互いに面一に揃えられている。但し、封止体24の上面を平坦にして、その上に電源線20A,20B,20Cが隆起していてもよい。
【0041】
また、図示の形態では、電源線20A,20B,20Cのすべてが封止体24の上に形成されているが、本発明に係る封止体と基板と電源線の配置のバリエーションとして電源線20A,20B,20Cのいずれかを封止体24の上に形成し、他を基板12の上に形成してもよい。この場合にも、電源線20A,20B,20Cのいずれかが封止体24に配置されることにより、基板12の面積を小さくすることが可能である。さらに他のバリエーションとして、電源線20A,20B,20Cと回路素子28のいずれかを封止体24の上に形成し、他を基板12の上に形成してもよい。この場合にも電源線20A,20B,20Cと回路素子28のいずれかが封止体24に配置されることにより、基板12の面積を小さくすることが可能である。
【0042】
<第2の実施の形態>
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図であり、図11はこの電気光学装置の部分平面図である。この電気光学装置も、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。これらの図に示すように、電気光学装置50は、好ましくはガラス、石英またはプラスチックにより形成された平板である透明な基板52を備える。第1の実施の形態の基板12と同様に、基板52には、複数のOLED素子(自発光素子)14が形成されている。この電気光学装置もボトムエミッションタイプである。
【0043】
基板52上には、OLED素子14に給電するための電極18A,18BならびにOLED素子14と電極18A,18Bを接続する配線16が形成されている。配線16および電極18A,18Bは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。
【0044】
第1の実施の形態と同様に、基板52と協働してOLED素子14を封止するように、基板52には封止体24が、熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22により取り付けられる。第1の実施の形態と同様に、封止体24は基板12よりも高い熱伝導率を有する材料から形成される。封止の種類としては、上述した膜封止とキャップ封止のいずれであってもよいが、OLED素子14の冷却効率の観点からは膜封止の方がキャップ封止よりも優れている。OLED素子14をさらに外気から隔離して保護するために一つ以上のパッシベーション層を封止体24の周囲に設けてもよい。
【0045】
さらに封止体24の上面には、OLED素子14を駆動するために電源線20A,20B,20Cおよび電極341A,341B,361A,361B,361Cが形成されている。これらは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。電源線20A,20B,20Cは電極32A,32B,32Cとそれぞれ導通している。詳細な図示は省略するが、封止体24の上面には、電源線20A,20B,20Cと電極32A,32B,32Cをそれぞれ接続する配線と絶縁膜が設けられ、互いに接続すべきでない電源線と配線の間にはこの絶縁膜が介在している。
【0046】
また、封止体24の下面には、複数の電極344が形成されている。電極344の位置は電極341A,341Bの真裏であり、電極341A,341Bおよび対応する電極344は、内面に導電材料層が設けられたスルーホール342で導通している。これらの電極344は、異方性導電材料346を介して基板52の上に形成された電極18A,18Bにそれぞれ接続され、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。異方性導電材料346は、対向する電極を接続する方向では導通性を示し、他の方向では絶縁性を示すものであり、例えば、異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなどの高分子材料を異方性導電材料346として用いることができる。封止体24を導電材料から形成した場合には、図示しないが、電源線20A,20B,20C、電極341A,341B,344,361A,361B,361Cおよびスルーホール342内の導電体の短絡を防止するために、封止体24とこれらの間には絶縁層が設けられる。
【0047】
また第2の基板78の上には、複数のOLED素子14を駆動するためのドライバICすなわち回路素子28Aが実装されている。回路素子28Aは、第1の実施の形態に関して詳述した回路素子28と概略的には同じものである。但し、この実施の形態では、回路素子28Aの下面(封止体24に対向する面)に、電極30A,30B,32A,32B,32Cが突き出すように形成されている。
【0048】
封止体24への回路素子28Aの実装形式は、図示しないが、フリップチップボンディング、または異方性導電材料346と同様の異方性導電材料が用いられる。この実装により、回路素子28Aの下面の電極30A,30Bは、封止体24の上面の電極341A,341Bにそれぞれ接続され、さらにスルーホール342、異方性導電材料346および基板52上の電極18A,18Bを介して、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。また、この実装により、回路素子28Aの下面の電極32A,32B,32Cは、電極361A,361B,361Cを介して電源線20A,20B,20Cにそれぞれ接続されている。
【0049】
電源線20AはOLED素子14および回路素子28Aに対する共通の低電位電源線である。電源線20BはOLED素子14に対する高電位電源線である。電源線20Cは回路素子28Aに対する高電位電源線である。これらの電源線20A,20B,20Cは、図示しないフレキシブル基板を介して電源装置に接続される。
【0050】
各OLED素子14の詳細は、図3を参照して第1の実施の形態に関して詳述したものと同様である。第1の実施の形態に関して上記したOLED素子のバリエーションを使用してもよい。
【0051】
電気光学装置50の駆動系統は、図4および図5を参照して第1の実施の形態に関して詳述した電気光学装置10の駆動系統と同様である。第1の実施の形態に関して上記した回路素子のバリエーションを使用してもよい。
【0052】
次に第2の実施の形態の電気光学装置50を製造する手順を説明する。まず図12に示すように、基板52上にOLED素子14、配線16および電極18A,18Bを形成する。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。
【0053】
他方、図12に示すように、封止体24にスルーホール342、電極341A,341B,344,361A,361B,361Cを形成する。図示しないが、この後、電源線20A,20B,20Cをオーバーコート膜で保護してもよい。オーバーコート膜としては、例えばSiO2の膜、SiNの膜、およびこれらの組み合わせがある。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。
【0054】
次に図13に示すように、封止用の熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22を基板52上にコートする。また、異方性導電材料346を基板52上の電極18A,18Bに重なる位置にコートする。さらに図14に示すように、封止体24を接着剤22および異方性導電材料346上に置いて基板52に貼り付け、この後接着剤22および異方性導電材料346を硬化させる。第1の実施の形態と同様に、封止用の接着剤22は、図14に示すように、基板52と封止体24の間のスペースからはみ出して封止体24の側端部を部分的に覆う突出部22aを有してもよい。
【0055】
その後、図10および図11に示すように、封止体24上の所定の位置に回路素子28Aを実装することにより、電気光学装置10が完成する。但し、回路素子28Aの封止体24への実装は、封止体24の基板52への貼り付けの前に行ってもよい。
【0056】
この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を封止する封止体24に、回路素子28AおよびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられていることにより、OLED素子14が形成された基板52の面積を小さくすることが可能である。従って、基板52を節約することができるとともに、この電気光学装置10を備えた装置全体の小型化に寄与する。
【0057】
また、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を駆動する回路素子28Aが、OLED素子14を封止する封止体24に重なって設けられているために、OLED素子14が形成された基板52の面積をより小さくすることが可能である。
【0058】
また、この実施の形態によれば、基板52よりも熱伝導率が高い封止体24を通じてOLED素子14で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0059】
封止体24と基板と電源線20A,20B,20Cの配置については、これらについて第1の実施の形態に関して詳述した各種のバリエーションを使用してもよい。なお、図示の形態では、基板52と封止体24の両側端部が互いに面一に揃えられいる。但し、本発明に係る封止体と基板の配置のバリエーションとしては、いずれかの端部において一方の部材が他方の部材から突き出していてもよい。
【0060】
<画像形成装置>
上述したように、電気光学装置10,50は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分およびファクシミリの印刷部分がある。
【0061】
図15は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0062】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yは上述した電気光学装置10または50である。
【0063】
図15に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0064】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0065】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数のOLED素子14の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0066】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0067】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0068】
図15の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する電気光学装置10または50を用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また、上述した通り電気光学装置10または50は従来よりも小型化することができるので、感光体ドラム110K,110C,110M,110Yに近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置もより小型化することが可能である。
【0069】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。
図16は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図16に示す画像形成装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ露光ヘッド167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0070】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ露光ヘッド167は、上述した電気光学装置10または50であり、複数のOLED素子14の配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0071】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0072】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0073】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0074】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0075】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0076】
図16の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する露光ヘッド167(電気光学装置10または50)を用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また、上述した通り電気光学装置10または50は従来よりも小型化することができるので、感光体ドラム165に近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置もより小型化することが可能である。
【0077】
以上、電気光学装置10または50を応用可能な画像形成装置を例示したが、他の電子写真方式の画像形成装置にも電気光学装置10または50を応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発明の範囲内にある。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも電気光学装置10または50を応用することが可能である。
【0078】
<画像読み取り装置>
また、電気光学装置10,50は、画像読み取り装置における読み取り対象に光を照射するためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像読み取り装置の例としては、スキャナ、複写機の読み取り部分、ファクシミリの読み取り部分、バーコードリーダおよび、例えばQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0079】
図17は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。この画像読み取り装置のキャビネット201の上部には、平板状のプラテンガラス202が設けられており、プラテンガラス202には原稿203がその画像面を下方に向けて載置される。そして、図示しないプラテンカバーが原稿203をプラテンガラス202に向けて押さえる。
【0080】
キャビネット201の内部には、高速キャリッジ204と低速キャリッジ205が横方向に移動可能に配置されている。高速キャリッジ204には原稿203を照射する有機ELアレイ露光ヘッド206と反射鏡207が搭載されており、低速キャリッジ205には二つの反射鏡208,209が搭載されている。これらの有機ELアレイ露光ヘッド206および反射鏡207,208,209は図17の紙面垂直方向(主走査方向)に延びている。また、有機ELアレイ露光ヘッド206は、複数のOLED素子14の配列方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0081】
また、キャビネット201の内部の固定位置には、原稿読み取り器210が配置されている。この原稿読み取り器210は、結像レンズ212と、多数の感光画素(電荷結合素子)から構成されるラインセンサ(受光装置)213を備える。ラインセンサ213は図17の紙面垂直方向(主走査方向)に延びており、複数の感光画素の配列方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0082】
有機ELアレイ露光ヘッド206から発した光は、プラテンガラス202を透過して原稿203の下面で反射する。原稿203からの反射光は、プラテンガラス202を透過し、反射鏡207〜209で反射した後、結像レンズ212によりラインセンサ213で結像する。高速キャリッジ204は横方向に移動して、原稿203の全面が有機ELアレイ露光ヘッド206で照射されるようにし、低速キャリッジ205は高速キャリッジ204の半分の速度で移動して、原稿203からラインセンサ213に到る反射光路の長さを一定に維持する。
【0083】
以上のように電気光学装置10または50は、画像読み取り装置の照明装置である有機ELアレイ露光ヘッド206として使用される。但し、この種の照明装置では、原稿の幅に相当する範囲にあるOLED素子14のすべてが同時に長期間継続的に発光することが好ましい。従って、図4および図5の駆動系統においては、画素ブロックB1〜B40を時分割駆動するのではなく、原稿の幅に相当する範囲にある画素ブロックに、少なくとも原稿の長さに相当する期間継続的に選択信号を同時に与えるとよい。さらに、データ信号D0〜D127のすべてをその期間同時にオンするとよい。あるいは、データ信号D0〜D127を伝達するデータ線L0〜L127と保持トランジスタ281をなくしてもよい。
【0084】
以上、電気光学装置10または50を応用可能な画像読み取り装置を例示したが、他の画像読み取り置にも電気光学装置10または50を応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発明の範囲内にある。例えば、受光装置が照明装置としての電気光学装置10または50と共に移動してもよいし、受光装置と電気光学装置10または50が共に固定されて原稿または読み取り対象が移動して読み取られるようにしてもよい。
【0085】
<他の応用>
本発明に係る電気光学装置は、さらに各種の露光装置、照明装置および画像表示装置に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図2】図1に示した電気光学装置の部分平面図である。
【図3】上記電気光学装置内のOLED素子の詳細を示す断面図である。
【図4】上記電気光学装置の駆動系統を示すブロック図である。
【図5】図4の駆動系統内の各画素回路の回路図である。
【図6】図1に示した電気光学装置を製造する手順の最初の工程を示す図である。
【図7】図6の次の工程を示す図である。
【図8】図7の次の工程を示す図である。
【図9】図8の次の工程を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図11】図10に示した電気光学装置の部分平面図である。
【図12】図10に示した電気光学装置を製造する手順の最初の工程を示す図である。
【図13】図12の次の工程を示す図である。
【図14】図13の次の工程を示す図である。
【図15】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図16】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像形成装置の他の例を示す縦断面図である。
【図17】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10,50…電気光学装置、12,52…基板、14…OLED素子(自発光素子)、20A…低電位電源線、20B…高電位電源線、20C…高電位電源線、24…封止体、28,28A…回路素子、L0〜L127…データ線、280…駆動回路、10K,10C,10M,10Y,167,206…有機ELアレイ露光ヘッド(電気光学装置)、110K,110C,110M,110Y,165…感光体ドラム(像担持体)、111,168…コロナ帯電器、114…現像器、112…一次転写コロトロン(転写器)、120,169…中間転写ベルト、161…現像ユニット、163Y,163C,163M,163K…現像器、166…一次転写ローラ(転写器)、203…原稿、210…原稿読み取り器、213…ラインセンサ(受光装置)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光素子を備えた電気光学装置、ならびにこの電気光学装置を備えた画像形成装置および画像読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下適宜「OLED」と略称する)素子が注目されている。OLED素子は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されているように、表示装置として使われる。
【0003】
また、多数のOLED素子を配列したラインヘッドを露光手段すなわち潜像書き込み器として用いる電子写真方式の画像形成装置が開発されている。このようなラインヘッドでは、OLED素子の他、これを駆動するためのトランジスタを含む画素回路が複数配置される。例えば、特許文献3および特許文献4にはこのようなラインヘッドが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−58255号公報
【特許文献2】特開2001−343933号公報
【特許文献3】特開平11−274569号公報
【特許文献4】特開2001−130048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OLED素子のような自発光素子を備えた電気光学装置には小型化の要求が高い。例えば、この種の電気光学装置を潜像書き込みのためのラインヘッドとして利用する電子写真方式の画像形成装置では、帯電器と現像器の間の限られたスペースで像担持体に潜像を書き込む必要がある。このため、ラインヘッドが大きい場合には、像担持体から離れた位置にラインヘッドを配置しなければならず、画像形成装置全体も大型化してしまう。電気光学装置を小型化することにより、画像形成装置全体の小型化に寄与する可能性がある。
【0006】
しかし、従来の電気光学装置では、構成要素の配置が小型化の制約になっていた。例えば、特許文献1および特許文献4の技術では、OLED素子が形成された基板にOLED素子を駆動または制御する回路素子を配置しているので、面積が大きい基板を使用する必要がある。
【0007】
また、OLED素子のような自発光素子は、発光時に発熱し、しかも温度によって輝度が異なる。従って、自発光素子の熱を逃がす対策として放熱フィンを設けることなどが考えられる。しかし、放熱のための対策をとると、部品点数が増加したり、装置が大型化したりするといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、自発光素子からの放熱を促すことが可能であり小型化が容易な電気光学装置、ならびにこの電気光学装置を備えた画像形成装置および画像読み取り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気光学装置は、基板と、上記基板に形成された複数の自発光素子と、上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、上記封止体に取り付けられており上記自発光素子を駆動または制御するための回路とを備える。そして、上記封止体の熱伝導率が上記基板より高い。この配置によれば、自発光素子を駆動または制御する回路が、自発光素子を封止する封止体に重なるために、自発光素子が形成された基板の面積を小さくすることが可能である。従って、基板を節約することができるとともに、この電気光学装置を備えた装置全体の小型化に寄与する。また、基板よりも熱伝導率が高い封止体を通じて自発光素子で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0010】
別の態様として、本発明に係る電気光学装置は、基板と、上記基板に形成された複数の自発光素子と、上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、上記自発光素子を駆動または制御するための回路と、上記封止体に設けられており少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線とを備える。そして、上記封止体の熱伝導率が上記基板より高い。多数の自発光素子および回路に給電するための電源線は、大電流を流す必要があるため、大きな断面積を有する。このような電源線を自発光素子が形成された基板に設ける場合には、大きな面積の基板が必要になる。しかし、この配置によれば、基板に重なった封止体に、少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線が設けられていることにより、自発光素子が形成された基板の面積を小さくすることが可能である。従って、基板を節約することができるとともに、この電気光学装置を備えた装置全体の小型化に寄与する。また、基板よりも熱伝導率が高い封止体を通じて自発光素子で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0011】
上記の態様の組み合わせとして、自発光素子を駆動または制御する回路と、少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線が上記封止体に取り付けられてもよい。この場合には、基板の面積をさらに小さくすることが可能である。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、上記像担持体を帯電する帯電器と、複数の上記自発光素子が配列され、上記像担持体の帯電された面に複数の上記自発光素子により光を照射して潜像を形成する上記の電気光学装置と、上記潜像にトナーを付着させることにより上記像担持体に顕像を形成する現像器と、上記像担持体から上記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える。上記のように本発明に係る電気光学装置は小型化することができるので、像担持体に近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置も小型化することが可能である。
【0013】
本発明に係る画像読み取り装置は、複数の上記自発光素子が配列された上記の電気光学装置と、上記自発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置とを備える。上記のように本発明に係る電気光学装置では基板の面積を小さくすることができるので、この画像読み取り装置も小型化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図であり、図2はこの電気光学装置の部分平面図である。この電気光学装置は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。これらの図に示すように、電気光学装置10は、透明な基板12と、基板12に形成された複数のOLED素子(自発光素子)14を備える。基板12は好ましくはガラス、石英またはプラスチックにより形成された平板であり、基板12の上には多数のOLED素子(自発光素子)14が一列またはその他の適切なパターンで配列されている。図示の形態では、各OLED素子14から発せられた光が、透明な基板12を通過して図1の下方に進行する。すなわち、この電気光学装置はボトムエミッションタイプである。
【0016】
基板12上には、OLED素子14に給電するための電極18A,18BならびにOLED素子14と電極18A,18Bを接続する配線16が形成されている。配線16、電極18A,18Bは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。
【0017】
また、基板12と協働してこれらのOLED素子14を封止するように基板12には封止体24が取り付けられる。この封止は、OLED素子14を外気、特に水分および酸素から隔離してその劣化を抑制する。封止体24は、OLED素子14で発生した熱を効率的に放散するために、基板12よりも高い熱伝導率を有する材料から形成される。例えば、基板12がガラスから形成される場合、封止体24の好適な材料としては、ガラスを除くセラミック(Al2O3、AlNなど)および金属(42アロイ(ニッケルを約42%、鉄を約58%含む合金)、銅、アルミニウムなど)が挙げられる。
【0018】
基板12への封止体24の取り付けには、好ましくは接着剤22が用いられる。接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤または紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0019】
OLEDの分野で使用される封止の種類には、封止体24の一面全体を接着剤22により基板12に接合する膜封止と、封止体24の周縁部を接着剤22により基板12に接合してOLED素子14の周囲に封止体24と基板12とで画定される空間を設けるキャップ封止がある。キャップ封止ではこの空間内に乾燥剤が配置される。この実施の形態は、膜封止とキャップ封止のいずれを利用してもよいが、OLED素子14の冷却効率の観点からは膜封止の方がキャップ封止よりも優れている。OLED素子14をさらに外気から隔離して保護するために一つ以上のパッシベーション層を封止体24の周囲に設けてもよい。
【0020】
さらに封止体24上には、OLED素子14を駆動するために電源線20A,20B,20Cが形成されている。電源線20A,20B,20Cは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。封止体24を導電材料から形成した場合には、図示しないが、電源線20A,20B,20Cの短絡を防止するために、封止体24と各電源線20A,20B,20Cの間には絶縁層が設けられる。
【0021】
また、封止体24の上には、複数のOLED素子14を駆動するためのドライバICすなわち回路素子28が取り付けられている。封止体24への回路素子28の取り付けには、好ましくは接着剤26が用いられる。接着剤としては、例えば熱硬化型接着剤または紫外線硬化型接着剤が用いられる。
【0022】
後述するように、回路素子28は、複数のOLED素子14への給電のための配線と、これらのOLED素子14への通電のオン・オフ切替を行う要素を内蔵する。回路素子28は、その上面に電極30A,30B,32A,32B,32Cを有する。電極30A,30Bは、ボンディングワイヤ34A,34Bを介して基板12上の電極18A,18Bにそれぞれ接続され、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。電極32A,32B,32Cは、ボンディングワイヤ36A,36B,36Cを介して電源線20A,20B,20Cにそれぞれ接続されている。
【0023】
電源線20AはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線である。電源線20BはOLED素子14に対する高電位電源線である。電源線20Cは回路素子28に対する高電位電源線である。これらの電源線20A,20B,20Cは、図示しないフレキシブル基板を介して電源装置に接続される。
【0024】
図3は、各OLED素子14の詳細を示す断面図である。OLED素子14は、透明なITO(Indium Tin Oxide)製の陽極42上に成膜された正孔注入層46と、その上に成膜された発光層48と、その上に成膜された陰極49を有する。正孔注入層46および発光層48は、絶縁層40および隔壁44で画定された凹部内に形成されている。絶縁層40の材料には例えばSiO2があり、隔壁44の材料には例えばポリイミドがある。
【0025】
陽極42は図3で示されていない導線を介して電極18Bに接続されており、詳細には図3で示されていないが電極18Bの背後にある電極18Aに陰極49は導線を介して接続されている。これらの導線は、図1に概略的に配線16として示されている。この実施の形態の各OLED素子14の構成は上記の通りであるが、本発明に係るOLED素子のバリエーションとしては、陰極と発光層の間に電子注入層を設けたタイプや、陽極と透明基板の間に絶縁層を設けたタイプなど他の層を有するタイプであってもよい。
【0026】
図4は、電気光学装置10の駆動系統を示すブロック図である。図4に示すように、上述した回路素子28は、複数本、例えば128本のデータ線L0〜L127および駆動回路280を備える。回路素子28にはデータ信号D0〜D127の他、各種の制御信号CTL、第1電源電位VICおよびグランド電位GNDが供給される。データ信号D0〜D127は図示しないデータ制御回路からデータ線L0〜L127に与えられる。第1電源電位VICは回路素子28に対する高電位電源線20Cから与えられ、グランド電位GNDはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線20Aから与えられる。
【0027】
図4に示された画素ブロックB1〜B40の各々は、一つの単位時間に駆動される複数個、例えば128個の画素回路Pの集合である。駆動回路280には制御信号CTLとしてクロック信号が供給され、駆動回路280はクロック信号に従って、選択信号SEL1〜SEL40を順次出力する。選択信号SEL1〜SEL40は、それぞれ画素ブロックB1〜B40に入力され、対応する画素ブロック内の128個の画素回路Pに供給される。各選択信号SEL1〜SEL40は、潜像書き込みの主走査期間の1/40の期間(選択期間)アクティブとなる。
【0028】
選択信号SEL1〜SEL40によって第1〜第40画素ブロックB1〜B40が排他的に順次選択される。このように主走査期間を複数の選択期間(書込期間)に分割して、画素ブロックB1〜B40を時分割駆動するので5120個(128×40)の画素回路Pのそれぞれに専用のデータ線を設ける必要がなく、データ線の本数を削減することができる。すなわち128本のデータ線L0〜L127で5120個の画素回路Pを制御することができる。第1〜第4画素ブロックB1〜B40の各々は、データ線L0〜L127にそれぞれ対応する128個の画素回路Pを備える。これらの画素回路Pには第2電源電位VELとグランド電位GNDが供給される。第2電源電位VELはOLED素子14に対する高電位電源線20Bから与えられ、グランド電位GNDはOLED素子14および回路素子28に対する共通の低電位電源線20Aから与えられる。そして、各選択期間においてデータ線L0〜L127を介して供給されるデータ信号D0〜D127が画素回路Pに取り込まれる。なお、この例のデータ信号D0〜D127はOLED素子の点灯・消灯を指示する2値の信号である。
【0029】
図5は各画素回路Pの回路図である。各画素回路Pは、保持トランジスタ281、駆動トランジスタ282およびOLED素子14を備える。図中、回路素子28に内蔵されている部分を符号28で示している。これから明らかなように、保持トランジスタ281および駆動トランジスタ282は回路素子28に内蔵されている。保持トランジスタ281のゲートには駆動回路280から選択信号SEL1〜SEL40のいずれかが供給され、そのソースはデータ線L0〜L127のいずれかと接続されることによりデータ信号D0〜D127のいずれかがソースに供給される。保持トランジスタ281のドレインと駆動トランジスタ282のゲートは接続線によって接続されている。接続線には浮遊容量が付随しており、この容量が保持容量として作用する。保持容量には選択期間において2値の電圧が書き込まれ、次の選択期間まで書き込まれた電圧が保持される。従って、保持トランジスタを選択信号SEL1〜SEL40により選択した期間においてデータ信号D0〜D127がOLED素子14の点灯を指示する信号である期間のみOLED素子14が発光することになる。
【0030】
駆動トランジスタ282のドレインには、高電位電源線20Bからボンディングワイヤ36Bおよび回路素子28の電極32Bを介して第2電源電位VELが供給される。駆動トランジスタ282のソースは、回路素子28の電極30B、ボンディングワイヤ34Bおよび基板12上の電極18Bを介してOLED素子14の陽極と接続される。駆動トランジスタ282は、保持容量に書き込まれた電圧(2値)に応じた駆動電流をOLED素子14に供給する。OLED素子14の陰極には、低電位電源線20Aからボンディングワイヤ36A、回路素子28の電極32A、回路素子28の電極30A、ボンディングワイヤ34Aおよび基板12上の電極18Bを介してグランド電位GNDが供給される。OLED素子14は駆動電流の大きさに応じた量の光を発光する。
【0031】
以上のように、回路素子28には、どの画素ブロックを通電可能にするかを選択する駆動回路280と、選択された画素ブロック中のOLED素子14に通電するか否かを指令する(OLED素子14への通電のオン・オフ切替を行う)画素回路P(より正確には保持トランジスタ281および駆動トランジスタ282)を内蔵する。但し、駆動回路280と同等の回路を回路素子28の外部に設けてもよいし、データ信号D0〜D127または各種の制御信号CTLを生成する制御回路を回路素子28の内部に設けてもよく、これらのバリエーションも本発明の範囲内にある。またこれらの回路素子28の構成要素は、一つの素子すなわちICチップに設けてもよいし、複数の素子に配分してもよい。
【0032】
次に第1の実施の形態の電気光学装置10を製造する手順を説明する。まず図6に示すように、基板12上にOLED素子14、配線16および電極18A,18Bを形成する。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。他方、封止体24上に電源線20A,20B,20Cを形成する。電源線20A,20B,20Cの形成方法は、例えばメッキなどの公知のいずれの方法でもよい。図示しないが、この後、電源線20A,20B,20Cをオーバーコート膜で保護してもよい。オーバーコート膜としては、例えばSiO2の膜、SiNの膜、およびこれらの組み合わせがある。
【0033】
次に図7に示すように、封止用の熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22を基板12上にコートする。さらに図8に示すように、封止体24を接着剤22上に置いて基板12に貼り付け、この後接着剤22を硬化させる。封止用の接着剤22は、図8に示すように、基板12と封止体24の間のスペースからはみ出して封止体24の側端部を部分的に覆う突出部22aを有してもよい。このような突出部22aを設けることにより、封止の効果をさらに高めることが可能である。突出部22aを設けるには、基板12と封止体24の間のスペースに配置されるだけの量よりも多い量の接着剤を基板12上にコートしてそのスペースから接着剤をはみ出させてもよいし、接着剤22が硬化した後にさらに接着剤をその外側にコートしてもよい。
【0034】
その後、回路素子28の下面(電極30A,30B,32A,32B,32Cの反対側の面)に熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤26をコートする。そして図9に示すように、回路素子28を封止体24に貼り付け、この後接着剤26を硬化させる。さらに、図1および図2に示すように、ワイヤボンディング法により、上述した所定の位置にボンディングワイヤ34A,34B,36A,36B,36Cを取り付けることにより、電気光学装置10が完成する。但し、回路素子28の封止体24への貼り付けは、封止体24の基板12への貼り付けの前に行ってもよい。
【0035】
多数の自発光素子および回路に給電するための電源線は、大電流を流す必要があるため、大きな断面積を有する。このような電源線を自発光素子が形成された基板に設ける場合には、大きな面積の基板が必要になる。しかし、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を封止する封止体24に、回路素子28およびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられていることにより、OLED素子14が形成された基板12の面積を小さくすることが可能である。従って、基板12を節約することができるとともに、この電気光学装置10を備えた装置全体の小型化に寄与する。
【0036】
また、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を駆動する回路素子28が、OLED素子14を封止する封止体24に重なって設けられているために、OLED素子14が形成された基板12の面積をより小さくすることが可能である。
【0037】
また、この実施の形態によれば、基板12よりも熱伝導率が高い封止体24を通じてOLED素子14で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0038】
表1は、封止体24の好適な材料および基板12の典型的な材料であるガラスの特性を示す。OLED素子14の冷却効率だけに着目すれば、熱伝導率が高いほど好ましいといえる。この観点では、例えば銅またはアルミニウムが封止体24の材料として好ましい。但し、熱による歪みの発生を少なくするには、封止体24と基板12の熱膨張係数が近いほど好ましいといえる。この観点では、例えばAl2O3、AlN、42アロイが封止体24の材料として好ましい。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、図示の形態では、封止体24の一つの側端部が基板12の一つの側端部に面一に揃えられているが、本発明に係る封止体と基板の配置のバリエーションとしては、一方の部材が他方の部材から突き出していてもよい。また、図示の形態では、封止体24の上面に形成された溝に電源線20A,20B,20Cが埋設されて封止体24の上面と各電源線20A,20B,20Cの上面が互いに面一に揃えられている。但し、封止体24の上面を平坦にして、その上に電源線20A,20B,20Cが隆起していてもよい。
【0041】
また、図示の形態では、電源線20A,20B,20Cのすべてが封止体24の上に形成されているが、本発明に係る封止体と基板と電源線の配置のバリエーションとして電源線20A,20B,20Cのいずれかを封止体24の上に形成し、他を基板12の上に形成してもよい。この場合にも、電源線20A,20B,20Cのいずれかが封止体24に配置されることにより、基板12の面積を小さくすることが可能である。さらに他のバリエーションとして、電源線20A,20B,20Cと回路素子28のいずれかを封止体24の上に形成し、他を基板12の上に形成してもよい。この場合にも電源線20A,20B,20Cと回路素子28のいずれかが封止体24に配置されることにより、基板12の面積を小さくすることが可能である。
【0042】
<第2の実施の形態>
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図であり、図11はこの電気光学装置の部分平面図である。この電気光学装置も、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。これらの図に示すように、電気光学装置50は、好ましくはガラス、石英またはプラスチックにより形成された平板である透明な基板52を備える。第1の実施の形態の基板12と同様に、基板52には、複数のOLED素子(自発光素子)14が形成されている。この電気光学装置もボトムエミッションタイプである。
【0043】
基板52上には、OLED素子14に給電するための電極18A,18BならびにOLED素子14と電極18A,18Bを接続する配線16が形成されている。配線16および電極18A,18Bは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。
【0044】
第1の実施の形態と同様に、基板52と協働してOLED素子14を封止するように、基板52には封止体24が、熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22により取り付けられる。第1の実施の形態と同様に、封止体24は基板12よりも高い熱伝導率を有する材料から形成される。封止の種類としては、上述した膜封止とキャップ封止のいずれであってもよいが、OLED素子14の冷却効率の観点からは膜封止の方がキャップ封止よりも優れている。OLED素子14をさらに外気から隔離して保護するために一つ以上のパッシベーション層を封止体24の周囲に設けてもよい。
【0045】
さらに封止体24の上面には、OLED素子14を駆動するために電源線20A,20B,20Cおよび電極341A,341B,361A,361B,361Cが形成されている。これらは、例えばアルミニウムのような導電材料から形成されている。電源線20A,20B,20Cは電極32A,32B,32Cとそれぞれ導通している。詳細な図示は省略するが、封止体24の上面には、電源線20A,20B,20Cと電極32A,32B,32Cをそれぞれ接続する配線と絶縁膜が設けられ、互いに接続すべきでない電源線と配線の間にはこの絶縁膜が介在している。
【0046】
また、封止体24の下面には、複数の電極344が形成されている。電極344の位置は電極341A,341Bの真裏であり、電極341A,341Bおよび対応する電極344は、内面に導電材料層が設けられたスルーホール342で導通している。これらの電極344は、異方性導電材料346を介して基板52の上に形成された電極18A,18Bにそれぞれ接続され、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。異方性導電材料346は、対向する電極を接続する方向では導通性を示し、他の方向では絶縁性を示すものであり、例えば、異方性導電ペーストや異方性導電フィルムなどの高分子材料を異方性導電材料346として用いることができる。封止体24を導電材料から形成した場合には、図示しないが、電源線20A,20B,20C、電極341A,341B,344,361A,361B,361Cおよびスルーホール342内の導電体の短絡を防止するために、封止体24とこれらの間には絶縁層が設けられる。
【0047】
また第2の基板78の上には、複数のOLED素子14を駆動するためのドライバICすなわち回路素子28Aが実装されている。回路素子28Aは、第1の実施の形態に関して詳述した回路素子28と概略的には同じものである。但し、この実施の形態では、回路素子28Aの下面(封止体24に対向する面)に、電極30A,30B,32A,32B,32Cが突き出すように形成されている。
【0048】
封止体24への回路素子28Aの実装形式は、図示しないが、フリップチップボンディング、または異方性導電材料346と同様の異方性導電材料が用いられる。この実装により、回路素子28Aの下面の電極30A,30Bは、封止体24の上面の電極341A,341Bにそれぞれ接続され、さらにスルーホール342、異方性導電材料346および基板52上の電極18A,18Bを介して、最終的にOLED素子14の陰極および陽極にそれぞれ接続されている。また、この実装により、回路素子28Aの下面の電極32A,32B,32Cは、電極361A,361B,361Cを介して電源線20A,20B,20Cにそれぞれ接続されている。
【0049】
電源線20AはOLED素子14および回路素子28Aに対する共通の低電位電源線である。電源線20BはOLED素子14に対する高電位電源線である。電源線20Cは回路素子28Aに対する高電位電源線である。これらの電源線20A,20B,20Cは、図示しないフレキシブル基板を介して電源装置に接続される。
【0050】
各OLED素子14の詳細は、図3を参照して第1の実施の形態に関して詳述したものと同様である。第1の実施の形態に関して上記したOLED素子のバリエーションを使用してもよい。
【0051】
電気光学装置50の駆動系統は、図4および図5を参照して第1の実施の形態に関して詳述した電気光学装置10の駆動系統と同様である。第1の実施の形態に関して上記した回路素子のバリエーションを使用してもよい。
【0052】
次に第2の実施の形態の電気光学装置50を製造する手順を説明する。まず図12に示すように、基板52上にOLED素子14、配線16および電極18A,18Bを形成する。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。
【0053】
他方、図12に示すように、封止体24にスルーホール342、電極341A,341B,344,361A,361B,361Cを形成する。図示しないが、この後、電源線20A,20B,20Cをオーバーコート膜で保護してもよい。オーバーコート膜としては、例えばSiO2の膜、SiNの膜、およびこれらの組み合わせがある。これらの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、その説明は省略する。
【0054】
次に図13に示すように、封止用の熱硬化型または紫外線硬化型の接着剤22を基板52上にコートする。また、異方性導電材料346を基板52上の電極18A,18Bに重なる位置にコートする。さらに図14に示すように、封止体24を接着剤22および異方性導電材料346上に置いて基板52に貼り付け、この後接着剤22および異方性導電材料346を硬化させる。第1の実施の形態と同様に、封止用の接着剤22は、図14に示すように、基板52と封止体24の間のスペースからはみ出して封止体24の側端部を部分的に覆う突出部22aを有してもよい。
【0055】
その後、図10および図11に示すように、封止体24上の所定の位置に回路素子28Aを実装することにより、電気光学装置10が完成する。但し、回路素子28Aの封止体24への実装は、封止体24の基板52への貼り付けの前に行ってもよい。
【0056】
この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を封止する封止体24に、回路素子28AおよびOLED素子14に給電するための電源線20A,20B,20Cが設けられていることにより、OLED素子14が形成された基板52の面積を小さくすることが可能である。従って、基板52を節約することができるとともに、この電気光学装置10を備えた装置全体の小型化に寄与する。
【0057】
また、この実施の形態の配置によれば、OLED素子14を駆動する回路素子28Aが、OLED素子14を封止する封止体24に重なって設けられているために、OLED素子14が形成された基板52の面積をより小さくすることが可能である。
【0058】
また、この実施の形態によれば、基板52よりも熱伝導率が高い封止体24を通じてOLED素子14で生じた熱が効率的に放散されるので、他の放熱対策は最小限で済み、電気光学装置の部品点数の増加や大型化を抑制することができる。
【0059】
封止体24と基板と電源線20A,20B,20Cの配置については、これらについて第1の実施の形態に関して詳述した各種のバリエーションを使用してもよい。なお、図示の形態では、基板52と封止体24の両側端部が互いに面一に揃えられいる。但し、本発明に係る封止体と基板の配置のバリエーションとしては、いずれかの端部において一方の部材が他方の部材から突き出していてもよい。
【0060】
<画像形成装置>
上述したように、電気光学装置10,50は、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分およびファクシミリの印刷部分がある。
【0061】
図15は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0062】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yは上述した電気光学装置10または50である。
【0063】
図15に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0064】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0065】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数のOLED素子14の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0066】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0067】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0068】
図15の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する電気光学装置10または50を用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また、上述した通り電気光学装置10または50は従来よりも小型化することができるので、感光体ドラム110K,110C,110M,110Yに近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置もより小型化することが可能である。
【0069】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。
図16は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図16に示す画像形成装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ露光ヘッド167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0070】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ露光ヘッド167は、上述した電気光学装置10または50であり、複数のOLED素子14の配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0071】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0072】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0073】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0074】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0075】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0076】
図16の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する露光ヘッド167(電気光学装置10または50)を用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また、上述した通り電気光学装置10または50は従来よりも小型化することができるので、感光体ドラム165に近い位置に配置することが可能であり、画像形成装置もより小型化することが可能である。
【0077】
以上、電気光学装置10または50を応用可能な画像形成装置を例示したが、他の電子写真方式の画像形成装置にも電気光学装置10または50を応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発明の範囲内にある。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも電気光学装置10または50を応用することが可能である。
【0078】
<画像読み取り装置>
また、電気光学装置10,50は、画像読み取り装置における読み取り対象に光を照射するためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画像読み取り装置の例としては、スキャナ、複写機の読み取り部分、ファクシミリの読み取り部分、バーコードリーダおよび、例えばQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0079】
図17は、電気光学装置10または50をライン型の光ヘッドとして用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。この画像読み取り装置のキャビネット201の上部には、平板状のプラテンガラス202が設けられており、プラテンガラス202には原稿203がその画像面を下方に向けて載置される。そして、図示しないプラテンカバーが原稿203をプラテンガラス202に向けて押さえる。
【0080】
キャビネット201の内部には、高速キャリッジ204と低速キャリッジ205が横方向に移動可能に配置されている。高速キャリッジ204には原稿203を照射する有機ELアレイ露光ヘッド206と反射鏡207が搭載されており、低速キャリッジ205には二つの反射鏡208,209が搭載されている。これらの有機ELアレイ露光ヘッド206および反射鏡207,208,209は図17の紙面垂直方向(主走査方向)に延びている。また、有機ELアレイ露光ヘッド206は、複数のOLED素子14の配列方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0081】
また、キャビネット201の内部の固定位置には、原稿読み取り器210が配置されている。この原稿読み取り器210は、結像レンズ212と、多数の感光画素(電荷結合素子)から構成されるラインセンサ(受光装置)213を備える。ラインセンサ213は図17の紙面垂直方向(主走査方向)に延びており、複数の感光画素の配列方向が主走査方向に沿うように設置される。
【0082】
有機ELアレイ露光ヘッド206から発した光は、プラテンガラス202を透過して原稿203の下面で反射する。原稿203からの反射光は、プラテンガラス202を透過し、反射鏡207〜209で反射した後、結像レンズ212によりラインセンサ213で結像する。高速キャリッジ204は横方向に移動して、原稿203の全面が有機ELアレイ露光ヘッド206で照射されるようにし、低速キャリッジ205は高速キャリッジ204の半分の速度で移動して、原稿203からラインセンサ213に到る反射光路の長さを一定に維持する。
【0083】
以上のように電気光学装置10または50は、画像読み取り装置の照明装置である有機ELアレイ露光ヘッド206として使用される。但し、この種の照明装置では、原稿の幅に相当する範囲にあるOLED素子14のすべてが同時に長期間継続的に発光することが好ましい。従って、図4および図5の駆動系統においては、画素ブロックB1〜B40を時分割駆動するのではなく、原稿の幅に相当する範囲にある画素ブロックに、少なくとも原稿の長さに相当する期間継続的に選択信号を同時に与えるとよい。さらに、データ信号D0〜D127のすべてをその期間同時にオンするとよい。あるいは、データ信号D0〜D127を伝達するデータ線L0〜L127と保持トランジスタ281をなくしてもよい。
【0084】
以上、電気光学装置10または50を応用可能な画像読み取り装置を例示したが、他の画像読み取り置にも電気光学装置10または50を応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発明の範囲内にある。例えば、受光装置が照明装置としての電気光学装置10または50と共に移動してもよいし、受光装置と電気光学装置10または50が共に固定されて原稿または読み取り対象が移動して読み取られるようにしてもよい。
【0085】
<他の応用>
本発明に係る電気光学装置は、さらに各種の露光装置、照明装置および画像表示装置に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図2】図1に示した電気光学装置の部分平面図である。
【図3】上記電気光学装置内のOLED素子の詳細を示す断面図である。
【図4】上記電気光学装置の駆動系統を示すブロック図である。
【図5】図4の駆動系統内の各画素回路の回路図である。
【図6】図1に示した電気光学装置を製造する手順の最初の工程を示す図である。
【図7】図6の次の工程を示す図である。
【図8】図7の次の工程を示す図である。
【図9】図8の次の工程を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図11】図10に示した電気光学装置の部分平面図である。
【図12】図10に示した電気光学装置を製造する手順の最初の工程を示す図である。
【図13】図12の次の工程を示す図である。
【図14】図13の次の工程を示す図である。
【図15】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図16】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像形成装置の他の例を示す縦断面図である。
【図17】図1または図10に示した電気光学装置を用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10,50…電気光学装置、12,52…基板、14…OLED素子(自発光素子)、20A…低電位電源線、20B…高電位電源線、20C…高電位電源線、24…封止体、28,28A…回路素子、L0〜L127…データ線、280…駆動回路、10K,10C,10M,10Y,167,206…有機ELアレイ露光ヘッド(電気光学装置)、110K,110C,110M,110Y,165…感光体ドラム(像担持体)、111,168…コロナ帯電器、114…現像器、112…一次転写コロトロン(転写器)、120,169…中間転写ベルト、161…現像ユニット、163Y,163C,163M,163K…現像器、166…一次転写ローラ(転写器)、203…原稿、210…原稿読み取り器、213…ラインセンサ(受光装置)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板に形成された複数の自発光素子と、
上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、
上記封止体に取り付けられており上記自発光素子を駆動または制御するための回路とを備え、
上記封止体の熱伝導率が上記基板より高いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
基板と、
上記基板に形成された複数の自発光素子と、
上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、
上記自発光素子を駆動または制御するための回路と、
上記封止体に設けられており少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線とを備え、
上記封止体の熱伝導率が上記基板より高いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
上記回路が上記封止体に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
像担持体と、
上記像担持体を帯電する帯電器と、
複数の上記自発光素子が配列され、上記像担持体の帯電された面に複数の上記自発光素子により光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気光学装置と、
上記潜像にトナーを付着させることにより上記像担持体に顕像を形成する現像器と、
上記像担持体から上記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える画像形成装置。
【請求項5】
複数の上記自発光素子が配列された請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気光学装置と、
上記自発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置とを備える画像読み取り装置。
【請求項1】
基板と、
上記基板に形成された複数の自発光素子と、
上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、
上記封止体に取り付けられており上記自発光素子を駆動または制御するための回路とを備え、
上記封止体の熱伝導率が上記基板より高いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
基板と、
上記基板に形成された複数の自発光素子と、
上記基板と協働して上記自発光素子を封止するように上記基板に取り付けられた封止体と、
上記自発光素子を駆動または制御するための回路と、
上記封止体に設けられており少なくとも上記回路および上記自発光素子の一方に給電するための電源線とを備え、
上記封止体の熱伝導率が上記基板より高いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
上記回路が上記封止体に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
像担持体と、
上記像担持体を帯電する帯電器と、
複数の上記自発光素子が配列され、上記像担持体の帯電された面に複数の上記自発光素子により光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気光学装置と、
上記潜像にトナーを付着させることにより上記像担持体に顕像を形成する現像器と、
上記像担持体から上記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える画像形成装置。
【請求項5】
複数の上記自発光素子が配列された請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気光学装置と、
上記自発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置とを備える画像読み取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−107755(P2006−107755A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288719(P2004−288719)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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