説明

電気光学装置、電子機器および電気光学装置の駆動方法

【課題】サブフィールド駆動方式において表現できる階調数を増加させること。
【解決手段】電子機器は、複数の電気光学素子と、階調値とaビットのサブフィールドコードとの組を複数含む第1テーブル、および、階調値とbビット(b>a)のサブフィールドコードとの組を複数含む第2テーブルとを記憶した記憶手段と、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、第2テーブルを用いて対象画素の階調値をサブフィールドコードに変換し、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、第1テーブルを用いて対象画素の階調値をサブフィールドコードに変換する変換手段と、1フレームの画像を表示するための期間を複数に分割したサブフィールドの各々において、変換手段により変換されたサブフィールドコードに応じた信号を供給し、複数の電気光学素子を駆動する駆動手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフィールド駆動方式により階調表示制御を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子における階調制御方法として、液晶素子に印加される電圧を変調する電圧変調方式の他、液晶素子に一定電圧が印加される時間を変調する、いわゆるサブフィールド駆動方式が知られている(特許文献1)。サブフィールド駆動方式において、1フレームは複数のサブフィールドに分割される。複数のサブフィールドのうち電圧印加をオンするサブフィールドとオフするサブフィールドとの組み合わせにより、液晶素子の階調が制御される。また、液晶素子においては、液晶の焼き付きや劣化を防ぐため、印加電圧の極性を時間的に切り替える駆動が行われる。理想的には、正極性の電圧による書き込みを行った後で、同じ時間、負極性の電圧による書き込みが行われることが望ましい。このため、1フレームは半分に分割され、この半分のフレームに含まれるサブフィールドを用いて階調制御が行われる。
【0003】
近年、3D表示(立体表示)を行う技術が開発されている。特許文献2は、左目用画像と右目用画像とを時分割で表示する技術を開示している。ユーザは、シャッター付きの眼鏡を介してこの映像を視認する。左目用画像が表示されているときは眼鏡の右目部のシャッターが閉じられ、右目用画像が表示されているときは眼鏡の左目部のシャッターが閉じられる。この装置を用いることにより、左目および右目で異なる画像が視認され、3D表示が知覚される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−114661号公報
【特許文献2】特開平9−138384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記の眼鏡を用いて3D表示を行う際の階調制御方法としてサブフィールド駆動方式を採用すると、階調制御に用いることができるサブフィールドの数は、2D表示の場合と比較すると半分になってしまう。サブフィールド駆動において表現できる階調数は、サブフィールドの数と相関しており、サブフィールドの数が減るということは、表現できる階調数が減少することを意味している。これは、3D表示を行う際に限った問題ではなく、1フレームという限られた時間を有限個のサブフィールドに分割して駆動するサブフィールド駆動方式の本質的な問題である。
これに対し本発明は、サブフィールド駆動方式において表現できる階調数を増加させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各々が供給される信号に応じた階調を示す複数の電気光学素子と、階調値と、a個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第1テーブル、および、階調値と、b個(b>a)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第2テーブルとを記憶した記憶手段と、複数の画素の階調値により表現された第1画像および第2画像を含み、フレームに区分された複数の画像を示す映像信号が入力される入力手段と、前記複数の画素のうち対象となる対象画素について、前記第1画像と前記第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、前記第2テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換し、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、前記第1テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換する変換手段と、1フレームの画像を表示するための期間を複数に分割したサブフィールドの各々において、前記変換手段により変換されたサブフィールドコードに応じた信号を供給し、前記複数の電気光学素子を駆動する駆動手段とを有する電気光学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、サブフィールド駆動方式において、第1テーブルのみを使用する場合と比較して表現できる階調数を増加させることができる。
【0007】
好ましい態様において、前記第1画像が右目用画像であり、前記第2画像が左目用画像であり、前記対象画素は、単一フレームにおける右目用画像および左目用画像の画素でってもよい。
この電気光学装置によれば、サブフィールド駆動方式において3D映像を表示する場合、第1テーブルのみを使用する場合と比較して表現できる階調数を増加させることができる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記駆動手段は、単一フレームにおける前記右目用画像および前記左目用画像の各々において、極性反転駆動をしてもよい。
この電気光学装置によれば、単一フレーム内で極性バランスをとりつつ、比較して表現できる階調数を増加させることができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、b=2aであってもよい。
この電気光学装置によれば、第1テーブルのみを使用する場合と比較して、表現できる階調数を、2倍のサブフィールドコード長に相当するだけ増加させることができる。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、前記電気光学素子の応答時間がc個(c<a)のサブフィールドに相当する時間であり、b=2a+cであってもよい。
この電気光学装置によれば、電気光学素子の応答時間を考慮した上で、第1テーブルのみを使用する場合と比較して、表現できる階調数を、2倍のサブフィールドコード長に相当するだけ増加させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記いずれかの電気光学装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、サブフィールド駆動方式において、第1テーブルのみを使用する場合と比較して表現できる階調数を増加させることができる。
【0012】
さらに、本発明は、各々が供給される信号に応じた階調を示す複数の電気光学素子と、階調値と、a個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第1テーブル、および、階調値と、b個(b>a)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第2テーブルとを記憶した記憶手段とを有する電気光学装置の駆動方法であって、複数の画素の階調値により表現された第1画像および第2画像を含み、フレームに区分された複数の画像を示す映像信号が入力されるステップと、前記複数の画素のうち対象となる対象画素について、前記第1画像と前記第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、前記第2テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換し、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、前記第1テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換するステップと、1フレームの画像を表示するための期間を複数に分割したサブフィールドの各々において、前記変換されたサブフィールドコードに応じた信号を供給し、前記複数の電気光学素子を駆動するステップとを有する駆動方法を提供する。
この駆動方法によれば、サブフィールド駆動方式において、第1テーブルのみを使用する場合と比較して表現できる階調数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プロジェクター2000の構成を示す平面図。
【図2】電気光学装置2100の機能構成を示す図。
【図3】電気光学装置2100の回路構成を示すブロック図。
【図4】画素111の等価回路を示す図。
【図5】液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図6】映像処理回路30の構成を示す図。
【図7】映像信号Vid−inにより示される映像の構成を示す図。
【図8】LUT211およびLUT212を例示する図。
【図9】分離部305によるサブフィールドコード書き込みの例を示す図。
【図10】プロジェクター2000の動作を示すフローチャート。
【図11】プロジェクター2000の動作を示すタイミングチャートの一例。
【図12】プロジェクター2000の動作を示すタイミングチャートの別の例。
【図13】比較例に係る動作を示すタイミングチャートの例。
【図14】変形例1に係る映像処理回路30の構成を示す図。
【図15】変形例2に係る動作を示すタイミングチャートの一例。
【図16】変形例2に係る動作を示すタイミングチャートの別の例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
1.構成
【0015】
図1は、一実施形態に係るプロジェクター2000(電子機器の一例)の構成を示す平面図である。プロジェクター2000は、入力された映像信号に応じた画像をスクリーン3000に投射する装置である。この例で、プロジェクター2000により投射される映像は、3D映像(立体映像)である。ユーザーは、スクリーン3000に投射された映像を、3Dメガネ(図示略)を介して視認する。3Dメガネは、左目に入る光を遮断または透過する左目シャッターおよび右目に入る光を遮断または透過する右目シャッターを有する。目に入る光を遮断することを「シャッターを閉じる」といい、透過することを「シャッターを開く」という。左目シャッターおよび右目シャッターはそれぞれ独立して、開閉状態が制御される。3Dメガネにより、ユーザーは、左目および右目でそれぞれ異なる映像を視認し、全体として3D映像を視認する。
【0016】
プロジェクター2000は、ライトバルブ210、ランプユニット220、光学系230、ダイクロイックプリズム240、および投射レンズ250を有する。ランプユニット220は、例えばハロゲンランプの光源を有する。光学系230は、ランプユニット220から射出された光を複数の波長帯、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離する。より詳細には、光学系230は、ダイクロイックミラー2301、ミラー2302、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306、レンズ2307、および集光レンズ2308を有する。ランプユニット220から射出された投射光は、第1マルチレンズ2303、第2マルチレンズ2304、偏光変換素子2305、重畳レンズ2306を通過し、2枚のダイクロイックミラー2301および3枚のミラー2302によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離される。分離された各光は、集光レンズ2308を介して、各原色に対応するライトバルブ210R、210Gおよび210Bにそれぞれ導かれる。なお、B光は、R光、G光と比較すると、光路が長いことによる損失を防ぐために、3枚のレンズ2307を用いたリレーレンズ系を介して導かれる。
【0017】
ライトバルブ210R、210G、および210Bは、光を変調する装置であり、それぞれ、液晶パネル100R、100G、および100Bを有する。液晶パネル100には、各色の縮小画像が形成される。液晶パネル100R、100G、100Bによってそれぞれ形成された縮小画像、すなわち、変調光は、ダイクロイックプリズム240に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム240において、R光およびB光は90度に反射され、G光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン3000には、投射レンズ250によってカラー画像が投射される。
【0018】
なお、液晶パネル100R、100G、100Bには、ダイクロイックミラー2301によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。また、液晶パネル100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム240により反射した後に投射されるのに対し、表示パネル100Gの透過像はそのまま投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる水平走査方向は、表示パネル100Gによる水平走査方向と逆向きにされており、液晶パネル100R、100Bには左右を反転させた像が表示される。
【0019】
図2は、プロジェクター2000に含まれる電気光学装置2100の機能構成を示す図である。プロジェクター2000は、記憶手段21、入力手段22、変換手段23、駆動手段24、および液晶パネル100を有する。記憶手段21は、LUT(Look Up Table)211およびLUT212を記憶している。LUT211は、階調値と、a個(aは自然数)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含むテーブルである。LUT212は、階調値と、b個(bはb>aを満たす自然数)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含むテーブルである。入力手段22には、映像信号が入力される。映像信号は、複数の画素の階調値により表現された第1画像(例えば左目用画像)および第2画像(例えば右目用画像)を含んでいる。これらの画像は、フレームに区分されている。変換手段23は、映像信号により示される階調値をサブフィールドコードに変換する。この例で、変換手段23は、処理の対象となる画素(以下「対象画素」という)について、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、LUT212を用いて階調値をサブフィールドコードに変換する。第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、LUT211を用いて対象画素の階調値をサブフィールドコードに変換する。駆動手段24は、各サブフィールドにおいて、変換手段23により変換されたサブフィールドコードに応じた信号を液晶パネル100に供給し、液晶パネル100を駆動する。
【0020】
図3は、電気光学装置2100の回路構成を示すブロック図である。プロジェクター2000は、制御回路10と、液晶パネル100と、走査線駆動回路130と、データ線駆動回路140とを有する。プロジェクター2000は、上位装置から供給される映像信号Vid−inにより示される画像(以下「入力画像」という)を、同期信号Syncに基づいたタイミングで、液晶パネル100に表示する装置である。
【0021】
液晶パネル100は、供給される信号に応じた画像を表示する装置である。液晶パネル100は、表示領域101を有する。表示領域101には、複数の画素111が配置されている。この例では、m行n列の画素111がマトリクス状に配置されている。液晶パネル100は、素子基板100aと、対向基板100bと、液晶層105とを有する。素子基板100aおよび対向基板100bは一定の間隔を保って貼り合わせられている。素子基板100aおよび対向基板100bの間隙には、液晶層105が挟まれている。素子基板100aには、m行の走査線112およびn本のデータ線114が設けられている。走査線112およびデータ線114は、対向基板100bと対向する面に設けられている。走査線112とデータ線114とは、電気的に絶縁されている。走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素111が設けられている。液晶パネル100は、m×n個の画素111を有する。画素111の各々に対応して、素子基板100aには、個別の画素電極118およびTFT116(Thin Film Transistor、薄膜トランジスター)が設けられている。以下において、複数の走査線112を区別する場合には、図3において上から順に、第1、第2、第3、…、第(m−1)、第m行の走査線112という。同様に、複数のデータ線114を区別する場合には、図3において左から順に、第1、第2、第3、…、第(n−1)、第n列のデータ線114という。なお、図3において、素子基板100aの対向面は紙面裏側であるので、この対向面に設けられる走査線112、データ線114、TFT116および画素電極118については破線で示すべきであるが、見難くなるので、それぞれ実線で示している。
【0022】
対向基板100bには、コモン電極108が設けられている。コモン電極108は、素子基板100aと対向する1面に設けられている。コモン電極108は、すべての画素111について共通である。すなわち、コモン電極108は、対向基板100bのほぼ全面にわたって設けられている、いわゆるベタ電極である。
【0023】
図4は、画素111の等価回路を示す図である。画素111は、TFT116、液晶素子120、および容量素子125を有する。TFT116は、液晶素子120への電圧の印加を制御するスイッチング手段の一例であり、この例ではnチャネル型の電界効果トランジスターである。液晶素子120は、印加される電圧に応じて光学状態が変化する素子である。この例で、液晶パネル100は透過型の液晶パネルであり、変化する光学状態は透過率である。液晶素子120は、画素電極118、液晶層105、およびコモン電極108を有する。第i行第j列の画素111において、TFT116のゲートおよびソースは、それぞれ、第i行の走査線112および第j列のデータ線114に接続されている。TFT116のドレインは、画素電極118に接続されている。容量素子125は、画素電極118に書き込まれた電圧を保持する素子である。容量素子125の一端は画素電極118に接続されており、他端は容量線115に接続されている。
【0024】
第i行の走査線112にHレベルの電圧を示す信号が入力されると、TFT116のソース・ドレイン間は導通する。TFT116のソース・ドレイン間が導通すると、画素電極118は、(TFT116のソース・ドレイン間のオン抵抗を無視すれば)第j列のデータ線114と同電位になる。第j列のデータ線114には、映像信号Vid−inに応じて、第i行第j列の画素111の階調値に応じた電圧(以下、「データ電圧」といい、データ電圧を示す信号を「データ信号」という)が印加される。コモン電極108には、図示しない回路により、共通電位LCcomが与えられる。容量線115には、図示しない回路により、時間的に一定の電位Vcom(この例では、Vcom=LCcom)が与えられる。すなわち、液晶素子120には、データ電圧と共通電位LCcomとの差に応じた電圧が印加される。以下、液晶層105がVA(Vertical Alignment)型であり、電圧無印加時において液晶素子120の階調が暗状態(黒状態)となるノーマリーブラックモードである例を用いて説明する。なお、特に説明しない限り、図示を省略した接地電位を電圧の基準(ゼロV)とする。
【0025】
再び図3を参照する。制御回路10は、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を制御するための信号を出力する制御装置である。制御回路10は走査制御回路20および映像処理回路30を有する。走査制御回路20は、同期信号Syncに基づいて、制御信号Xctr、制御信号Yctr、および制御信号Ictrを生成し、生成した信号を出力する。制御信号Xctrは、データ線駆動回路140を制御するための信号であり、例えば、データ信号を供給するタイミング(水平走査期間の始期)を示す。制御信号Yctrは、走査線駆動回路130を制御するための信号であり、例えば、走査信号を供給するタイミング(垂直走査期間の始期)を示す。制御信号Ictrは、映像処理回路30を制御するための信号であり、例えば、信号処理のタイミングおよび印加電圧の極性を示す。映像処理回路30は、デジタル信号である映像信号Vid−inを、制御信号Ictrにより示されるタイミングで処理して、アナログ信号であるデータ信号Vxとして出力する。映像信号Vid−inは、画素111の階調値をそれぞれ指定するデジタルデータである。このデジタルデータにより示される階調値は、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号およびドットクロック信号に従った順番で、データ信号Vxにより供給される。
【0026】
走査線駆動回路130は、制御信号Yctrに従って、走査信号Yを出力する回路である。第i行の走査線112に供給される走査信号を、走査信号Yiという。この例で、走査信号Yiは、m本の走査線112の中から一の走査線112を順次排他的に選択するための信号である。走査信号Yiは、選択される走査線112に対しては選択電圧(Hレベル)となり、それ以外の走査線112に対しては非選択電圧(Lレベル)となる信号である。なお、一の走査線112を順次排他的に選択される駆動に代わり、複数の走査線112が同時に選択される、いわゆるMLS(Multiple Line Selection)駆動が用いられてもよい。
【0027】
データ線駆動回路140は、制御信号Xctrに従って、データ信号Vxをサンプリングしてデータ信号Xを出力する回路である。第j列のデータ線114に供給されるデータ信号を、データ信号Xjという。
【0028】
図5は、液晶パネル100の駆動方法を示すタイミングチャートである。画像は1フレームごとに(この例では1フレームに複数回)書き替えられる。例えば、フレーム速度は60フレーム/秒、すなわち垂直同期信号(図示略)の周波数は60Hzであり、1フレーム期間(以下、単に「1フレーム」という)は16.7ミリ秒(1/60秒)である。液晶パネル100はサブフィールド駆動により駆動される。サブフィールド駆動において、1フレームは複数のサブフィールド期間(以下、単に「サブフィールド」という)に分割される。図5は、1フレームが、SF1〜SF40の40個のサブフィールドに分割される例を示している。スタート信号DYは、サブフィールドの始期を示す信号である。スタート信号DYとしてHレベルのパルスが供給されると、走査線駆動回路130は、走査線112の走査を開始、すなわち、m本の走査線112に走査信号Gi(1≦i≦m)を出力する。1つのサブフィールドにおいて、走査信号Gは、順次排他的に選択電圧になる信号である。選択電圧を示す走査信号を選択信号といい、非選択電圧を示す走査信号を非選択信号という。また、第i行の走査線112に選択信号が供給されることを、「第i行の走査線112が選択される」という。第j列のデータ線114に供給されるデータ信号Sjは、走査信号と同期している。例えば、第i行の走査線112が選択されているときは、第i行第j列の画素111の階調値に対応する電圧を示す信号がデータ信号Sjとして供給される。
【0029】
なお、ここでは、説明を簡単にするため、液晶素子120および3Dメガネのシャッターの応答時間(応答速度)が無視できる例、すなわち、液晶素子120の応答時間およびシャッターの応答時間が、サブフィールド長に対して十分に短い(応答速度が十分に速い)例を用いて説明する。
【0030】
図6は、映像処理回路30の構成を示す図である。映像処理回路30は、メモリー301、ラインバッファー302、比較器303、変換部304、分離部305、フレームメモリー306、フレームメモリー307、および制御部308を有する。メモリー301は、記憶手段21の一例であり、LUT211およびLUT212を記憶している。ラインバッファー302は、入力手段22の一例であり、入力画像を、データとして1行分記憶する。
【0031】
図7は、入力映像の構成を示す図である。この例で、入力映像は、いわゆるサイド・バイ・サイド方式の3D映像である。図示されているのは1フレーム分の画像であり、左目用画像と右目用画像とが、左右に並べられている。2Dの画像と比較すると、左目用画像および右目用画像は、それぞれ水平方向において1/2に圧縮されている。すなわち、左目用画像および右目用画像は、それぞれm行(n/2)列の画素により構成されており、水平方向の解像度は2D画像の半分である。
【0032】
再び図6を参照する。比較器303は、ラインバッファー302に記憶されているデータから、左目用画像および右目用画像における対象画素のデータを読み出し、これらのデータにより示される階調値を比較する。対象画素は、左目用画像および右目用画像をそれぞれ別個の画像と考えた場合における同じ位置の画素である。例えば、第i行第j列の画素が対象画素である場合、左目用画像における第i行第j列の画素と、右目用画像における第i行第j列の画素(サイド・バイ・サイドの画像における第i行第(n/2+j)列)とがそれぞれ対象画素である。すなわち、比較器303は、単一フレームにおける右目用画像および左目用画像の画素の階調値を比較する。比較器303は、対象画素の階調値が同一であるか否かを示す信号を出力する。
【0033】
変換部304は、変換手段23の一例であり、対象画素の階調値をサブフィールドコードに変換する。サブフィールドコードとは、1群のサブフィールドにおけるオンまたはオフの組み合わせ(厳密には順列)を示すデータをいう。階調値からサブフィールドコードへの変換は、LUTを参照して行われる。この例で、変換部304は、比較器303から出力される信号が、対象画素の階調値が同一であることを示している場合はLUT212を参照して、対象画素の階調値が同一でないことを示している場合はLUT211を参照して、変換を行う。変換部304は、対象画素のサブフィールドコードを出力する。
【0034】
図8は、LUT211およびLUT212を例示する図である。この例で、LUT211に含まれるサブフィールドコードは、10個のサブフィールドのオン(「1」)またはオフ(「0」)の組み合わせを示す。すなわちa=10の例であり、SFコードは10ビットのデータである。また、LUT212に含まれるサブフィールドコードは、20個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示す。すなわちb=20(=2a)の例であり、SFコードは20ビットのデータである。
【0035】
再び図6を参照する。分離部305は、サブフィールドコードを、左目用画像と右目用画像とに分離する。具体的には、分離部305は、対象画素の左目用画像のサブフィールドコードをフレームメモリー306に書き込み、右目用画像のサブフィールドコードをフレームメモリー307に書き込む。フレームメモリー306は、左目用画像のサブフィールドコードを記憶するメモリーである。フレームメモリー307は、右目用画像のサブフィールドコードを記憶するメモリーである。この例で、フレームメモリー306およびフレームメモリー307は、それぞれ、m行n列の画素に相当する記憶領域を有する。例えば、第i行第j列の画素が対象画素である場合、分離部305は、フレームメモリー306の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域に、対象画素の左目用画像のサブフィールドコードを書き込む。さらに分離部305は、フレームメモリー307の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域に、対象画素の右目用画像のサブフィールドコードを書き込む。
【0036】
図9は、分離部305によるサブフィールドコード書き込みの例を示す図である。この例で、フレームメモリー306およびフレームメモリー307は、各画素に相当する記憶領域として、20ビットのデータを記憶する記憶領域を有する。左目用画像および右目用画像の階調値が異なる場合(図9(A))、分離部305は、10ビットのサブフィールドコードを2回繰り返してフレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込む。左目用画像および右目用画像の階調値が同一の場合(図9(B))、分離部305は、20ビットのサブフィールドコードをフレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込む。
【0037】
制御部308は、フレームメモリー306またはフレームメモリー307からサブフィールドコードを読み出し、読み出したサブフィールドコードに応じたデータ信号Vxを出力する。より詳細には、制御部308は、制御信号Ictrにより示されるタイミングで、20ビットのサブフィールドコードを順次読み出し、読み出したサブフィールドコードに応じたデータ信号Vxを出力する。
【0038】
2.動作
図10は、プロジェクター2000の動作を示すフローチャートである。ステップS100において、比較器303は、左目用画像と右目用画像とで、対象画素の階調値が同一であるか判断する。対象画素の階調値が同一であると判断された場合(ステップS100:YES)、変換部304は、LUT212を参照して階調値をサブフィールドコードに変換する(ステップS101)。対象画素の階調値が同一でないと判断された場合(ステップS100:NO)、変換部304は、LUT211を参照して階調値をサブフィールドコードに変換する(ステップS102)。
【0039】
ステップS103において、分離部305は、対象画素のサブフィールドコードをフレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込む。走査制御回路20から出力される制御信号Ictrにより示されるタイミングで、制御部308は、フレームメモリー306またはフレームメモリー307に記憶されているサブフィールドコードに応じたデータ信号Vxを出力する(ステップS104)。
【0040】
ここで、対象画素の左目用画像と右目用画像における階調値が異なっている場合の処理について、図9(A)の例を用いて説明する。
【0041】
ラインバッファー302は、入力画像のうち、処理対象となる行に属する画素群の階調値を記憶する。比較器303は、ラインバッファー302に記憶されている階調値のうち、対象画素に相当する2つの画素の階調値を読み出す。対象画素に相当する2つの画素は、入力画像のうち、第i行第j列の画素および第i行第(n/2+j)列の画素である。比較器303は、読み出した2つの階調値を比較し、比較結果を示す信号を変換部304に出力する。この例では、比較器303は、これら2つの画素の階調値が異なること(すなわち対象画素の階調値が同一でないこと)を示す信号を出力する。
【0042】
対象画素の階調値が同一でないことを示す信号が入力されると、変換部304は、LUT211を参照して、階調値をサブフィールドコードに変換する。具体的には以下のとおりである。まず、変換部304は、ラインバッファー302から、左目用画像の階調値として、第i行第j列の画素の階調値を読み出す。変換部304は、メモリー301に記憶されているLUT211から、その階調値に対応するサブフィールドコードを読み出す。この例では、サブフィールドコード「0000000001」が読み出される。変換部304は、読み出したサブフィールドコードと、そのサブフィールドコードの長さが10ビットであることを示すフラグと、そのサブフィールドコードが左目用画像のものであることを示すフラグとを、分離部305に出力する。
【0043】
左目用画像のサブフィールドコードが入力されると、分離部305は、入力されたサブフィールドコードを、フレームメモリー306の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域に書き込む。フレームメモリー306において、各画素の記憶領域は20ビットである。サブフィールドコードの長さが10ビットであることを示すフラグが入力されると、分離部305は、20ビットの記憶領域の前半10ビットの記憶領域、および後半10ビットの記憶領域にそれぞれ、入力された10ビットのサブフィールドコードを書き込む。すなわち、分離部305は、10ビットのサブフィールドコードを2回繰り返してフレームメモリー306に書き込む。この例では、フレームメモリー306において、第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素の記憶領域に、それぞれ「00000000010000000001」という20ビットのデータが書き込まれる。
【0044】
次に、変換部304は、ラインバッファー302から、右目用画像の階調値として、第i行第(n/2+j)列の画素の階調値を読み出す。変換部304は、メモリー301に記憶されているLUT211から、その階調値に対応するサブフィールドコードを読み出す。この例では、サブフィールドコード「0000000111」が読み出される。変換部304は、読み出したサブフィールドコードと、そのサブフィールドコードの長さが10ビットであることを示すフラグと、そのサブフィールドコードが右目用画像のものであることを示すフラグとを、分離部305に出力する。
【0045】
右目用画像のサブフィールドコードが入力されると、分離部305は、入力されたサブフィールドコードをフレームメモリー307の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域に書き込む。フレームメモリー307において、各画素の記憶領域は20ビットである。サブフィールドコードの長さが10ビットであることを示すフラグが入力されると、分離部305は、20ビットの記憶領域の前半10ビットの記憶領域、および後半10ビットの記憶領域にそれぞれ、入力された10ビットのサブフィールドコードを書き込む。すなわち、分離部305は、10ビットのサブフィールドコードを2回繰り返してフレームメモリー307に書き込む。この例では、フレームメモリー307において、第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素の記憶領域に、それぞれ「00000001110000000111」という20ビットのデータが書き込まれる。
【0046】
順次対象画素を更新しつつ、階調値をサブフィールドコードに変換することにより、処理対象の行のサブフィールドコードが、フレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込まれる。処理対象の行を順次更新することにより、1フレームの画像のサブフィールドコードが、フレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込まれる。
【0047】
左目用画像および右目用画像は、時分割で交互に表示される。すなわち、1フレームは、左目用画像を表示する(サブ)フレーム(以下「左目フレーム」という)および右目用画像を表示する(サブ)フレーム(以下「右目フレーム」という)に区分される。左目フレームにおいて、制御部308は、フレームメモリー306から順次データを読み出し、読み出したデータに応じた電圧の信号を、データ信号Vxとして出力する。この例で、第1サブフィールドのデータは「0」(オフ)であるので、第1サブフィールドにおいては、オフに相当する電圧(例えばゼロV)の信号がデータ信号Vxとして出力される。あるいは、第8サブフィールドのデータは、「1」(オン)であるので、第8サブフィールドにおいては、オンに相当する電圧(例えば5V)の信号がデータ信号Vxとして出力される。
【0048】
図11は、プロジェクター2000の動作を示すタイミングチャートの一例である。図11は、対象画素の、左目用画像における階調値と右目用画像における階調値とが異なっている例を示している。この例で、走査線112は1フレームにおいて8回走査される。1回の走査は1/8フレームすなわち2.08ミリ秒で行われる。走査信号Gのうち、奇数回目の走査に関する部分が斜線で、偶数回目の走査に関する部分が白抜きで示されている。1フレームは40サブフィールドに分割される。1フレームあたりの走査回数およびサブフィールド数は、以下の例でも同様である。
【0049】
この例では、1フレームのうち前半1/2フレームが左目フレームであり、後半1/2フレームが右目フレームである。左目フレームおよび右目フレームはそれぞれ半分(すなわち1/4フレーム)に分割される。階調表現は、1/4フレームすなわち10サブフィールドを用いて行われる。この階調表現に用いられるサブフィールドコードは、LUT211を用いた変換により得られる。極性反転信号Frpは、最初の1/4フレームおよび最後の1/4フレームはLレベルであり、中間の1/2フレームはHレベルである。
【0050】
第1番目の1/4フレームにおいて、負極性の電圧印加により左目用画像(図9(A)の対象画素の例では、「0000000001」のデータ)が書き込まれる。第2番目の1/4フレームにおいて、正極性の電圧印加により左目用画像(図9(A)の対象画素の例では、「0000000001」のデータ)が書き込まれる。この2つの期間において書き込まれる左目用画像は同一である。したがって、前半の1/2フレームにおいて、液晶素子120に正極性の電圧が印加されている時間と負極性の電圧が印加されている時間とは等しくなり、極性バランスがとれている。次に、第3番目の1/4フレームにおいて、正極性の電圧印加により右目用画像(図9(A)の対象画素の例では、「0000000111」のデータ)が書き込まれる。第4番目の1/4フレームにおいて、負極性の電圧印加により右目用画像(図9(A)の対象画素の例では、「0000000111」のデータ)が書き込まれる。この2つの期間において書き込まれる右目用画像は同一である。したがって、後半の1/2フレームにおいて、液晶素子120に正極性の電圧が印加されている時間と負極性の電圧が印加されている時間とは等しくなり、極性バランスがとれている。
【0051】
次に、対象画素の左目用画像と右目用画像における階調値が同一である場合の処理について、図9(B)の例を用いて説明する。
【0052】
ラインバッファー302は、入力画像のうち、処理対象となる行に属する画素群の階調値を記憶する。比較器303は、ラインバッファー302に記憶されている階調値のうち、対象画素に相当する2つの画素の階調値を読み出す。対象画素に相当する2つの画素は、入力画像のうち、第i行第j列の画素および第i行第(n/2+j)列の画素である。比較器303は、読み出した2つの階調値を比較し、比較結果を示す信号を変換部304に出力する。この例では、比較器303は、これら2つの画素の階調値が同一であること(すなわち対象画素の階調値が同一であること)を示す信号を出力する。
【0053】
対象画素の階調値が同一であることを示す信号が入力されると、変換部304は、LUT212を参照して、階調値をサブフィールドコードに変換する。具体的には以下のとおりである。まず、変換部304は、ラインバッファー302から、左目用画像の階調値として、第i行第j列の画素の階調値を読み出す。変換部304は、メモリー301に記憶されているLUT212から、その階調値に対応するサブフィールドコードを読み出す。この例では、サブフィールドコード「00000000000000000001」が読み出される。変換部304は、読み出したサブフィールドコードと、そのサブフィールドコードの長さが20ビットであることを示すフラグと、そのサブフィールドコードが左目用画像および右目用画像に共通のものであることを示すフラグとを、分離部305に出力する。
【0054】
左目用画像および右目用画像に共通のサブフィールドコードが入力されると、分離部305は、入力されたサブフィールドコードを、フレームメモリー306の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域、並びにフレームメモリー307の第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素に相当する記憶領域に書き込む。この例では、フレームメモリー306およびフレームメモリー307において、第i行第(2j)列および第i行第(2j+1)列の画素の記憶領域に、それぞれ「00000000000000000001」という20ビットのデータが書き込まれる。
【0055】
順次対象画素を更新しつつ、階調値をサブフィールドコードに変換することにより、処理対象の行のサブフィールドコードが、フレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込まれる。処理対象の行を順次更新することにより、1フレームの画像のサブフィールドコードが、フレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込まれる。
【0056】
左目フレームにおいて、制御部308は、フレームメモリー306から順次データを読み出し、読み出したデータに応じた電圧の信号を、データ信号Vxとして出力する。この例で、第1サブフィールドのデータは「0」(オフ)であるので、第1サブフィールドにおいては、オフに相当する電圧の信号がデータ信号Vxとして出力される。あるいは、第20サブフィールドのデータは、「1」であるので、第20サブフィールドにおいては、オンに相当する電圧の信号がデータ信号Vxとして出力される。
【0057】
図12は、プロジェクター2000の動作を示すタイミングチャートの別の例である。図12は、対象画素の、左目用画像における階調値と右目用画像における階調値とが同一である例を示している。左目用画像および右目用画像は、1/2フレームすなわち20サブフィールドを用いて階調表現される。この階調表現に用いられるサブフィールドコードは、LUT212を用いた変換により得られる。極性反転信号Frpは、最初の1/4フレームおよび最後の1/4フレームはLレベルであり、中間の1/2フレームはHレベルである。
【0058】
この例で、1番目の1/4フレームにおいては、20ビットのサブフィールドコード(図9(B)の例では「00000000000000000001」)のうち、前半10ビットのデータ(「0000000000」)が書き込まれる。このとき液晶素子120に印加される電圧の極性は負極性である。2番目の1/4フレームにおいては、20ビットのサブフィールドコードのうち、後半10ビットのデータ(「0000000001」)が書き込まれる。このとき液晶素子120に印加される電圧の極性は正極性である。3番目の1/4フレームにおいては、20ビットのサブフィールドコードのうち、前半10ビットのデータ(「0000000000」)が書き込まれる。このとき液晶素子120に印加される電圧の極性は正極性である。4番目の1/4フレームにおいては、20ビットのサブフィールドコードのうち、後半10ビットのデータ(「0000000001」)が書き込まれる。このとき液晶素子120に印加される電圧の極性は負極性である。
【0059】
左目用画像および右目用画像の階調値が同一なので、前半1/2フレームで表示される画像と後半1/2フレームで表示される画像とは同一である。1番目の1/4フレームと、3番目の1/4フレームとは、サブフィールドコードが同一であり、かつ、液晶素子120に印加される電圧の極性が異なっているので、極性バランスがとれている。2番目の1/4フレームと、4番目の1/4フレームについても同様である。
【0060】
左目用画像および右目用画像における階調値が同一である画素については、階調値が同一でない画素より長いサブフィールドコードを用いて階調表現される(すなわち階調数が増加する)。左目用画像および右目用画像の階調値が同一であるのは、立体視しない静止画部分の可能性が高い。立体視しない部分は、立体視する部分よりも階調増加の効果をユーザーに感じさせやすい。
【0061】
図13は、比較例に係る動作を示すタイミングチャートの例である。図13は、極性反転信号Frpが、第1番目および第3番目の1/4フレームでLレベルであり、第2番目および第4番目の1/4フレームでHレベルである点以外は、図12の例と同様である。この例では、前半1/2フレームのうちの前半1/4フレームと、後半1/2フレームのうちの前半1/4フレームとは、サブフィールドコードが同一であり、かつ、液晶素子120に印加される電圧の極性も同一であるので、極性バランスがとれない。
【0062】
これに対しプロジェクター2000によれば、単一フレーム内における極性バランスがとれている。
【0063】
[変形例]
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0064】
(変形例1)
図14は、変形例1に係る映像処理回路30の構成を示す図である。変形例1において、映像処理回路30は、メモリー301と、フレームメモリー306と、フレームメモリー307と、制御部308と、分離部311と、フレームメモリー312と、フレームメモリー313と、比較器314と、変換部315とを有する。実施形態において映像信号Vid−inはサイド・バイ・サイド方式の3D映像を示すものであったが、変形例1において、映像信号Vid−inはフレームシーケンシャル方式の3D映像を示す。より具体的に、映像信号Vid−inは、左目用画像と右目用画像とが120Hzで交互に切り替わる映像を示す。分離部311は、映像信号Vid−inが示す画像を左目用画像と右目用画像とに分離する。分離部311は、左目用画像をフレームメモリー312、右目用画像をフレームメモリー313に、それぞれ書き込む。フレームメモリー312およびフレームメモリー313は、それぞれ左目用画像および右目用画像を1フレーム分記憶するメモリーである。なお、フレームメモリー312およびフレームメモリー313については、フレームメモリーにかわり、ラインバッファー(1行分のデータを記憶するメモリー)が用いられてもよい。
【0065】
比較器314は、フレームメモリー312およびフレームメモリー313から対象画素の階調値のデータを読み出し、これらが同一であるか判断する。比較器314は、左目用画像および右目用画像において対象画素の階調値が同一であるか否かを示す信号を出力する。変換部315は、比較器314から出力される信号が、対象画素の階調値が同一であることを示している場合はLUT212を参照して、対象画素の階調値が同一でないことを示している場合はLUT211を参照して、階調値をサブフィールドコードに変換する。変換部304は、変換により得られたサブフィールドコードを、フレームメモリー306およびフレームメモリー307に書き込む。フレームメモリー306、フレームメモリー307、および制御部308については、実施形態で説明したとおりである。
【0066】
変形例1によれば、サイド・バイ・サイド方式の3D映像だけでなく、フレームシーケンシャル方式の3D映像においても、単一フレーム内における極性バランスをとりつつ、かつ、左目用画像および右目用画像における階調値が同一である画素については、より長いサブフィールドコードを用いて階調表現が行われる(すなわち階調数が増加する)。
【0067】
(変形例2)
実施形態において、左目フレームおよび右目フレームの半分、すなわち1/4フレーム(=10サブフィールド)をフルに使って階調表現が行われる例を説明した。しかし、階調表現は、1/4フレームの一部のみを使って行われてもよい。実施形態では、液晶素子120および3D映像を視聴するための3Dメガネのシャッターの応答時間(応答速度)が無視できる例、すなわち、液晶素子120の応答時間およびシャッターの応答時間が、サブフィールド長に対して十分に速い例を説明した。しかし、液晶素子120およびシャッターの構成によっては、応答時間が無視できない場合がある。例えば、液晶素子120の応答時間がc個(c<a)のサブフィールドに相当する時間である場合、b=2a+cであってもよい。
【0068】
図15は、プロジェクター2000の変形例2に係る動作を示すタイミングチャートである。図15は、左目用画像および右目用画像の対象画素の階調値が異なっている例を示している。例えば、液晶素子120の応答時間は無視できるが、3Dメガネのシャッターの応答時間が2サブフィールド程度あり無視できない場合(c=2)、1/4フレームのうち、2サブフィールドは、階調表現に使うことはできない。この場合、8サブフィールドを用いて階調表現が行われる。すなわち、LUT211に記録されているサブフィールドコードは8ビットのデータである(a=8)。また、極性反転信号Frpは、フレームの開始時点から11サブフィールドに相当する時間が経過するとLレベルからHレベルに変化する。極性反転信号Frpは、20サブフィールドに相当する時間、Hレベルを維持した後、Lレベルに変化する。なお、極性反転信号Frpは、シャッターの応答時間の間に切り替わればよい。
【0069】
図16は、プロジェクター2000の変形例2に係る動作を示すタイミングチャートである。図16は、応答時間の条件が図15と同様である場合において、左目用画像および右目用画像の対象画素の階調値が同一である例を示している。この場合、18サブフィールドを用いて階調表現が行われる。すなわち、LUT212に記録されているサブフィールドコードは18ビットのデータである(b=18=2a+c)。
【0070】
変形例2によれば、3Dメガネのシャッターの応答時間が無視できない場合でも、単一フレーム内における極性バランスをとりつつ、かつ、左目用画像および右目用画像における階調値が同一である画素については、より長いサブフィールドコードを用いて階調表現が行われる(すなわち階調数が増加する)。
【0071】
(変形例3)
映像信号Vid−inが示す映像は、3D映像に限定されず、2D映像であってもよい。この場合、第1画像は第kフレームの画像であり、第2画像は第(k+1)フレームの画像である。変形例3によれば、2D映像においても、連続する2つのフレームにおいて階調値が同一である画素については、より長いサブフィールドコードを用いて階調表現が行われる(すなわち階調数が増加する)。
【0072】
(変形例4)
実施形態においては、左目フレームおよび右目フレームのそれぞれにおいて、液晶素子120に正極性の電圧が印加される時間と負極性の電圧が印加される時間とが同一である、極性反転駆動が用いられる例を説明した。しかし、左目フレームおよび右目フレームのそれぞれにおいて、液晶素子120に正極性の電圧が印加される時間と負極性の電圧が印加される時間とが同一でない駆動方法が用いられてもよい。例えば、1フレーム毎に印加電圧の極性が反転する駆動方法が用いられてもよい。
【0073】
(変形例5)
実施形態において、比較器303は、左目用画像および右目用画像の対処画素の階調値が、同一であるか判断する例を説明した。ここでいう「同一」とは完全同一だけではなく、左目用画像および右目用画像の対処画素の階調値の差が、所定のしきい値未満である場合を含んでもよい。
【0074】
(変形例6)
実施形態において、複数のサブフィールドが同一の時間長を有する例を説明した。しかし、複数のサブフィールドは、同一の時間長を有していなくてもよい。すなわち、1フレームにおける各サブフィールドの時間長は、所定の規則によって重み付けされ、それぞれ異なっていてもよい。
【0075】
(他の変形例)
本発明に係る電子機器はプロジェクターに限定されない。テレビジョン、ビューファインダー型・モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等に本発明が用いられてもよい。
【0076】
電気光学装置2100の構成は、図3で例示したものに限定されない。図2の機能を実現できるものであれば、電気光学装置2100は、どのような構成を有していてもよい。例えば、電気光学装置2100に用いられる電気光学素子は、液晶素子120に限定されない。液晶素子120に代わり、有機EL(Electro-Luminescence)素子等、他の電気光学素子が用いられてもよい。
実施形態で説明したパラメーター(例えば、サブフィールド数やフレーム速度、画素数など)および信号の極性やレベルはあくまで例示であり、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0077】
10…制御回路、20…走査制御回路、21…記憶手段、22…入力手段、23…変換手段、24…駆動手段、30…映像処理回路、100…液晶パネル、101…表示領域、105…液晶層、108…コモン電極、111…画素、112…走査線、114…データ線、115…容量線、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、125…容量素子、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、210…ライトバルブ、211…LUT、212…LUT、220…ランプユニット、230…光学系、240…ダイクロイックプリズム、250…投射レンズ、301…メモリー、302…ラインバッファー、303…比較器、304…変換部、305…分離部、306…フレームメモリー、307…フレームメモリー、308…制御部、311…分離部、312…フレームメモリー、313…フレームメモリー、314…比較器、315…変換部、2000…プロジェクター、2100…電気光学装置、2301…ダイクロイックミラー、2302…ミラー、2303…第1マルチレンズ、2304…第2マルチレンズ、2305…偏光変換素子、2306…重畳レンズ、2307…リレーレンズ、2308…集光レンズ、3000…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が供給される信号に応じた階調を示す複数の電気光学素子と、
階調値と、a個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第1テーブル、および、階調値と、b個(b>a)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第2テーブルとを記憶した記憶手段と、
複数の画素の階調値により表現された第1画像および第2画像を含み、フレームに区分された複数の画像を示す映像信号が入力される入力手段と、
前記複数の画素のうち対象となる対象画素について、前記第1画像と前記第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、前記第2テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換し、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、前記第1テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換する変換手段と、
1フレームの画像を表示するための期間を複数に分割したサブフィールドの各々において、前記変換手段により変換されたサブフィールドコードに応じた信号を供給し、前記複数の電気光学素子を駆動する駆動手段と
を有する電気光学装置。
【請求項2】
前記第1画像が右目用画像であり、
前記第2画像が左目用画像であり、
前記対象画素は、単一フレームにおける右目用画像および左目用画像の画素である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、単一フレームにおける前記右目用画像および前記左目用画像の各々において、極性反転駆動をする
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
b=2aである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記電気光学素子の応答時間がc個(c<a)のサブフィールドに相当する時間であり、
b=2a+cである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電気光学装置を有する電子機器。
【請求項7】
各々が供給される信号に応じた階調を示す複数の電気光学素子と、階調値と、a個のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第1テーブル、および、階調値と、b個(b>a)のサブフィールドのオンまたはオフの組み合わせを示すサブフィールドコードとの組を複数含む第2テーブルとを記憶した記憶手段とを有する電気光学装置の駆動方法であって、
複数の画素の階調値により表現された第1画像および第2画像を含み、フレームに区分された複数の画像を示す映像信号が入力されるステップと、
前記複数の画素のうち対象となる対象画素について、前記第1画像と前記第2画像との階調値の差がしきい値未満である場合、前記第2テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換し、第1画像と第2画像との階調値の差がしきい値以上である場合、前記第1テーブルを用いて前記対象画素の階調値を前記サブフィールドコードに変換するステップと、
1フレームの画像を表示するための期間を複数に分割したサブフィールドの各々において、前記変換されたサブフィールドコードに応じた信号を供給し、前記複数の電気光学素子を駆動するステップと
を有する駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−64791(P2013−64791A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202250(P2011−202250)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】