説明

電気光学装置、電子機器および駆動方法

【課題】電圧依存性を有する現象により電圧変動が起こる場合に、フリッカーおよび焼き付きを抑制する。
【解決手段】電気光学装置は、共通電極と、画素電極と、一の走査線を選択する走査信号を出力する走査線駆動回路と、走査線駆動回路により選択される一の走査線に対応する画素電極に書き込まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力し、データ電圧の極性が、第1フレームにおいて第1極性であり、第1フレームに後続する第2フレームにおいて第1極性と逆の第2極性であるデータ線駆動回路とを有する。ここで、(1)第1フレームの時間長は、第2フレームの時間長に対し所定の割合で長く、(2)データ電圧は、電圧値に応じて補正されており、(3)共通電極の電位は、(1)の条件で(2)により補正された、第1極性のデータ電圧と第2極性のデータ電圧との中心電位と共通電極の電位とのずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置においてフリッカーおよび焼き付きを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の電気光学装置においては、素子の劣化を抑制するため、正極性の電圧
と負極性の電圧とが交互に印加される。また、電気光学素子に印加される電圧が、駆動回
路から出力される電圧から変動する現象が知られている。この電圧変動により、電気光学
素子に印加される電圧が正負で非対称となり、フリッカーおよび焼き付きが発生する場合
がある。特許文献1は、いわゆるフィードスルーに起因する電圧変動(第1の現象)と、
電極材料に起因する電圧変動(第2の現象)とを加算した値を一定の補正電圧として、対
向電極(共通電極)の電位を調整する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−189460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、第1の現象または第2の現象に電圧依存性が有る
場合に、駆動電圧によって補正値の過不足が生じてフリッカーまたは焼き付きが発生して
しまうときがあった。
これに対し本発明は、電圧依存性を有する現象により電圧変動が起こる場合に、フリッ
カーおよび焼き付きを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、共通電極と、複数の走査線および複数のデータ線の交差に対応して設けられ
た複数の画素電極と、前記複数の走査線の中から一の走査線を選択する走査信号を出力す
る走査線駆動回路と、前記走査線駆動回路により選択される一の走査線に対応する画素電
極に書き込まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力し、前記データ電圧の極性が、第1
フレームにおいて第1極性であり、前記第1フレームに後続する第2フレームにおいて前
記第1極性と逆の第2極性であるデータ線駆動回路とを有し、(1)前記第1フレームの
時間長は、前記第2フレームの時間長に対し所定の割合で長く、(2)前記データ電圧は
、電圧値に応じて補正されており、(3)前記共通電極の電位は、前記(1)の条件で前
記(2)により補正された、前記第1極性のデータ電圧と前記第2極性のデータ電圧との
中心電位と前記共通電極の電位とのずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調
整されていることを特徴とする電気光学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、データ電圧依存性を有する現象により電圧変動が起こる場
合に、フリッカーおよび焼き付きを抑制することができる。
【0006】
好ましい態様において、前記データ線駆動回路は、入力された画像データに対応する補
正値を出力するテーブルと、前記データ電圧の極性を示す極性信号に応じて、前記テーブ
ルから出力された前記補正値を前記画像データに加算または減算する加算回路とを有して
もよい。
この電気光学装置によれば、テーブルを用いてデータ電圧を補正することができる。
【0007】
別の好ましい態様において、前記テーブルにおける画像データと補正値との対応関係は
、複数の個体についての、前記ずれの前記データ電圧依存性の測定結果に基づく平均特性
を示してもよい。
この電気光学装置によれば、複数の個体についての平均特性を用いて、個々の電気光学
装置を補正することができる。
【0008】
さらに別の好ましい態様において、前記テーブルにおける補正値は、画像データに対し
非線形であってもよい。
この電気光学装置によれば、前記ずれの前記データ電圧依存性が非線形である場合に、
フリッカーおよび焼き付きを抑制することができる。
【0009】
さらに別の好ましい態様において、前記共通電極の電位は、前記電気光学装置の個体毎
に個別に調整されてもよい。
この電気光学装置によれば、フリッカーおよび焼き付きを個体毎に最小にできる。
【0010】
また、本発明は、上記いずれかの電気光学装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、データ電圧依存性を有する現象により電圧変動が起こる場合に
、フリッカーおよび焼き付きを抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明は、共通電極と、複数の走査線および複数のデータ線の交差に対応して
設けられた複数の画素電極と、前記複数の走査線の中から一の走査線を選択する走査信号
を出力する走査線駆動回路と、前記走査線駆動回路により選択される一の走査線に対応す
る画素電極に書き込まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力するデータ線駆動回路とを
有する電気光学装置の駆動方法であって、前記データ線駆動回路が、第1フレームにおい
て第1極性である前記データ電圧を示す前記データ信号を出力するステップと、前記第1
フレームに後続する第2フレームにおいて前記第1極性と逆の第2極性である前記データ
電圧を示す前記データ信号を出力するステップとを有し、(1)前記第1フレームの時間
長は、前記第2フレームの時間長に対し所定の割合で長く、(2)前記データ電圧は、電
圧値に応じて補正されており、(3)前記共通電極の電位は、前記(1)の条件で前記(
2)により補正された、前記第1極性のデータ電圧と前記第2極性のデータ電圧との中心
電位と前記共通電極の電位とのずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調整さ
れていることを特徴とする駆動方法を提供する。
この駆動方法によれば、データ電圧依存性を有する現象により電圧変動が起こる場合に
、フリッカーおよび焼き付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電気光学装置における画素14の等価回路を示す図。
【図2】駆動回路により出力されるデータ電圧Vdatの波形を例示する図。
【図3】データ電圧Vdatの波形の別の例を示す図。
【図4】LCcomずれのデータ電圧依存性を示す図。
【図5】LCcomずれの一般的な補正方法を説明する図。
【図6】LCcomずれの経時変化を例示する図。
【図7】LCcomシフトを例示する図。
【図8】Vdat−ΔLCcomsat特性を例示する図。
【図9】LCcomずれを例示する図。
【図10】液晶素子143における電圧変動を説明するモデルを示す図。
【図11】データ電圧を切り換えた直後の電圧波形を例示する図。
【図12】オフセットが異なる画素の光学特性の差を説明する図。
【図13】tpを変化させた場合の、Vdat−ΔLCcomsat特性を示す図。
【図14】LCcomずれを例示する図。
【図15】複数の個体についてのLCcomずれの測定結果を例示する図。
【図16】補正したデータ電圧で駆動した場合のLCcomずれを例示する図。
【図17】Lccom電位の調整を行った場合のLCcomずれを例示する図。
【図18】一実施形態に係る電子機器1の構成を示す図。
【図19】データ線駆動回路17の構成を示す図。
【図20】LUT171に記憶されているデータを例示する図。
【図21】LUT171に記憶されているデータを説明する図。
【図22】液晶パネル10の動作を示すタイミングチャートを例示する図。
【図23】プロジェクター2100の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.原理
図1は、電気光学装置における画素14の等価回路を示す図である。電気光学装置は、
m行n列のマトリクス状に配置された複数の画素14を有する。電気光学装置は、複数の
画素14の光学状態を制御することにより、画像を表示する装置である。
【0014】
画素14は、トランジスター141と、容量素子142と、液晶素子143とを有する
。液晶素子143は、画素電極114と、液晶層12と、共通電極131とを有する。ト
ランジスター141は、画素電極114へのデータの書き込みを制御するスイッチング手
段の一例であり、例えばnチャネルのTFT(Thin Film Transistor)である。トランジ
スター141のゲート、ソース、およびドレインはそれぞれ、走査線115、データ線1
16、および画素電極114に接続されている。L(Low)レベルの走査信号(非選択信
号)がゲートに入力されているとき、トランジスター141のソースとドレインは絶縁す
る。Hレベルの走査信号(選択信号)がゲートに入力されると、トランジスター141の
ソースとドレインは導通し、データに応じた電圧が画素電極114に書き込まれる。以下
において、駆動回路から出力される電圧すなわちデータ線116に印加される電圧を「デ
ータ電圧」といい、実際に画素電極114に書き込まれる電圧を「駆動電圧」という。ま
た、トランジスター141のドレインには容量素子142も接続されている。容量素子1
42は、データ電圧に応じた電荷を保持する。画素電極114は、画素14に一つずつ設
けられており、共通電極131と対向している。共通電極131は、すべての画素14に
共通であり、電位LCcomが与えられる。液晶層12には、画素電極114と共通電極
131との電位差に相当する電圧が印加される。例えば、透過型の電気光学装置において
、液晶層12は、光源(図示略)からの光を変調する。
【0015】
図2は、駆動回路により出力されるデータ電圧Vdatの波形を例示する図である。図
2において、横軸は時間を、縦軸は電圧を示している。データ電圧Vdatは、所定の電
位(例えば接地電位)を基準とした電圧である。液晶素子143には、画素電極114の
電位と共通電位LCcomの電位差に相当する電圧が印加される。液晶素子143に電圧
を印加する際には、液晶素子143におけるフリッカーや焼き付きを防止するため、同じ
大きさのデータ電圧を正極性および負極性でそれぞれ書き込むのが理想的である。図2の
電位Vcntaは、データ電圧Vdatの中心電位を示している。データ電圧の振幅は2
Vaである。理想的には、中心電位Vcntaと共通電位LCcomを一致させることに
より(Vcnta=LCcom)、液晶素子143に印加される電圧は、最初の期間にお
いては+Va、次の期間においては−Vaとなる。これにより、正極性の電圧と負極性の
電圧は等しくなり(すなわち印加電圧は正負対称となり)、フリッカーは最小となるはず
である。
【0016】
しかし、実際には、共通電位LCcomを変化させながらフリッカーを測定すると、フ
リッカーが最小となる電位は、中心電位Vcよりも低いことがわかる。データ電圧Vda
tの中心電位Vcと、フリッカーが最小となる共通電位LCcom(最適LCcom)と
の差を「LCcomずれ」といい、ΔLCcomで表す。
ΔLCcom=LCcom−Vc ・・・(1)
である。
【0017】
初期状態において(この「初期状態」の意義については後述する)、LCcomずれは
、画素14のトランジスター141において発生するいわゆるフィードスルー(プッシュ
ダウンまたはプッシュアップともいう)現象によるものである。フィードスルー現象とは
、トランジスター141のゲート/ソース間電圧がHレベルからLレベルに変化したとき
に、ゲート/ドレイン間の(寄生容量による)容量性結合により、ドレインの電位すなわ
ち画素電極114の電位が変化する現象をいう。フィードスルーにより電位が変化する方
向は、トランジスター141のチャネルの伝導型に依存している。具体的には、トランジ
スター141がnチャネル型であれば電位は下降し、pチャネル型であれば電位は上昇す
る。
【0018】
図3は、データ電圧の波形の別の例を示す図である。この例では、データ電圧Vdat
の振幅は2Vbであり、中心電位はVcntbである。本願発明者らの実験により、LC
comずれΔLCcomは、データ電圧に応じて変化することがわかった。図2と図3と
を比較すると、ΔLCcomが異なっている。これは、トランジスター141のゲート/
ソース間容量およびゲート/ドレイン間容量が、ゲート/ソース間電圧およびゲート/ド
レイン間電圧に依存すること、さらには、ソース電圧およびドレイン電圧がデータ電圧に
ほぼ一致するように変化するためであると考えられる。
【0019】
図4は、LCcomずれのデータ電圧依存性を示す図である。図において縦軸はLCc
omずれΔLCcomを、横軸はデータ電圧Vdatを示している。ここで、データ電圧
は、駆動回路から出力される電圧すなわちデータ線116に印加される電圧をいう。Vd
at−ΔLccom曲線の具体的な形状は、トランジスター141のサイズ(ゲート幅、
ゲート長など)、選択トランジスター(図示略)のサイズ、データ線116の寄生容量、
画素14の容量、容量素子142の容量、ゲート電圧等のパラメーターに依存して決まる
が、一般的には直線にはならない。本願発明者らの実験により、Vdat−ΔLCcom
曲線は、上記のパラメーターに依存したばらつきを含むものの、電気光学装置の機種に依
存した形状を有することがわかった。Vdat=VaのときのLCcomずれをΔLCc
om(Va)と表し、Vdat=VbのときのLCcomずれをΔLCcom(Vb)と
表す。
【0020】
図5は、LCcomずれの一般的な補正方法を説明する図である。図4で例示したLC
comずれを補償するため、一般には、決められた基準電圧Vstdにおいてフリッカー
が最小となるように共通電位LCcomが決定される。図5のVdat−ΔLCcom曲
線は、LCcom補正後の状態を示している。図5の例では、データ電圧Vdat=Vs
tdのときにΔLCcomがゼロになるように、共通電位LCcomが決められる。Vd
at=Vaのときの補正後のLCcomずれをΔLCcomC(Va)と表し、Vdat
=Vbのときの補正後のLCcomずれをΔLCcomC(Vb)と表す。
【0021】
図6は、LCcomずれの経時変化を例示する図である。縦軸はΔLCcomを、横軸
はデータ電圧印加の経過時間を示している。本願発明者らの実験により、ΔLCcomは
経時変化することがわかった。図2〜図4では、経時的な初期状態(電圧印加せず十分長
時間放置した後の状態)においてのLCcomずれを説明した。図6の曲線Aおよび曲線
Bは、それぞれ、データ電圧がVdat=Vaである場合およびVdat=Vbである場
合のΔLCcomの経時変化を示している。LCcomずれは指数関数的に変化し、十分
な時間が経過するとある値に飽和する。LCcomずれの初期値と飽和値との差を、「L
Ccomシフト」といい、Scomで表す。
Scom=ΔLCcomsat−ΔLCcomini ・・・(2)
である。ここで、ΔLCcomsatはLCcomずれの飽和値を、ΔLCcomini
はLCcomずれの初期値を、それぞれ示す。Vdat=VaのときのLCcomシフト
をScom(Va)と表し、Vdat=VbのときのLCcomシフトをScom(Vb
)と表す。
【0022】
図7は、LCcomシフトを例示する図である。縦軸はLCcomずれを、横軸はデー
タ電圧を示している。図7には、Vdat−ΔLCcomini曲線およびVdat−Δ
LCcomsat曲線の2つの曲線が示されている。あるデータ電圧においてこれら2つ
の曲線の差がLCcomシフトを表している。
【0023】
図8は、種々の機種の電気光学装置におけるVdat−ΔLCcomsat曲線を例示
する図である。本願の発明者らが種々の機種の電気光学装置について実験したところ、傾
きの正負および大小の違いはあるものの、Vdat−ΔLCcomsat曲線は、原点を
通る直線となることがわかった。なお、同一の機種であっても、この直線の傾きは個体毎
にばらつきがあることもわかった。
【0024】
図9は、LCcomずれを例示する図である。縦軸は電圧を、横軸は時間を示している
。図示されている波形は、液晶素子143に印加される電圧を示している。図においてゼ
ロVの線は、データ電圧(駆動回路から出力される電圧)における中心電位を示している
。図9(a)はVdat=Vaの場合を、図9(b)はVdat=Vbの場合を示してい
る。それぞれ、左側は初期状態を、右側は飽和状態を示している。ΔLCcomおよびS
comが、データ電圧に応じて異なっていることがわかる。
【0025】
図10は、液晶素子143における電圧変動を説明するモデルを示す。このモデルにお
いて、液晶素子143は、交流電源1431と、直流電源1432と、容量1433と、
可変抵抗1434と、容量1435と、直流電源1436とを有する。交流電源1431
は、駆動回路の出力電圧Vdatを示す。直流電源1432は、フィードスルーによる電
圧変化ΔV1を示す。電圧変化ΔV1は、データ電圧に応じて変化する。容量1433は
、例えば、パッシベーション膜、配向膜、界面に形成される電気二重層など、液晶素子1
43の構造に起因する容量をまとめて表したものであり、容量値はCAである。可変抵抗
1434は、液晶層12の抵抗であり、電流の向きにより抵抗値がRLCD+からRLC
D−へ、またはその逆に変化する抵抗である。容量1435は、液晶層12の容量であり
、容量値はCLCDである。直流電源1436は、LCcomずれの調整用の電圧を示す
。共通電極131は、すべての画素14について共通の電極であるので、直流電源143
6の電圧ΔV2は、データ電圧によらず一定の値である。以下、このモデルを用いて、液
晶素子143における電圧変動を説明する。
【0026】
飽和状態とは、それ以上LCcomずれが変化しないことであるから、容量1433の
両端の電圧は不変である。ΔV=ΔQ/Cであるから、電荷の移動に着目すると、容量1
433への電荷の移動は、平均値としてはゼロである平衡状態になっている。いま、正極
性のデータ電圧をVp=V+ΔV、負極性のデータ電圧をVm=−(V−ΔV)とし、そ
れぞれの印加時間をtp、tmとする。データ電圧の印加期間中、容量1435の容量C
LCDが不変であることから、
(V+ΔV) /(RLCD+)・tp = (V-ΔV)/(RLCD-)・tm ・・・(3)
である。
【0027】
図10のA点とB点との間には、データ電圧に対して、直流電源1432および直流電
源1436によりオフセットされた電圧が印加される。初期状態においては、容量143
3および容量1435の両端電圧はともにゼロであり、A点とB点との間の電圧がそのま
ま、容量1435に印加されると考えられる。すなわち、初期状態におけるA点とB点と
の間の電圧は、容量1435の両端電圧に等しい。容量1435の両端電圧の波形(デー
タ電圧と同様の方形波)の中心電位が、図9に示したLCcomずれの初期値として測定
される。
【0028】
A点とB点との間の電圧の波形は時間が経っても変化しないが、時間の経過とともに容
量1433に電荷が蓄積されていくと考える。電荷が蓄積されるにつれ、容量1433の
両端の電圧が大きくなっていき、容量1435に印加される電圧の波形が高電圧側または
低電圧側にシフトする。十分に時間が経過すると、容量1433が完全に充電され、これ
以上電荷が蓄積されなくなる。この時点における容量1433に印加される電圧波形の中
心電位と、A点とB点との間に印加される電圧波形の中心電位の差が、図9に示されるL
Ccomシフトである。
【0029】
いま、図9(a)および(b)で例示したように、データ電圧Vaを印加して飽和状態
となっている画素Aと、データ電圧Vbを印加して飽和状態となっている画素Bとについ
て、あるタイミングでデータ電圧をVcに切り換えた場合を考える。データ電圧をVcに
切り換える直前において、画素Aと画素BとでLCcomシフトが異なっているが、これ
は、容量1433に蓄積されている電荷が異なることを意味する。
【0030】
図11は、画素Aおよび画素Bについて、データ電圧をVcに切り換えた直後の電圧波
形を例示する図である。ここで示されている電圧波形は、データ電圧ではなく駆動電圧の
波形を表している。このときのLCcomずれは、データ電圧VcにおけるΔLCcom
iniに、容量1433の両端の電圧を加算した電圧に相当する。このとき、画素Aと画
素Bには、同じデータ電圧Vcが印加される。しかし、直前に印加されていた電圧が異な
るため容量1433の両端の電圧が異なるため(すなわち容量1435に蓄積されている
電荷が異なるため)、画素Aと画素Bには、振幅は同じであるがオフセットが異なる波形
の電圧が印加される。データ電圧をVaからVcに切り換えた直後のLCcomずれの変
動をΔLCcom(Vc,Va)と表し、データ電圧をVbからVcに切り換えた直後の
LCcomずれの変動をΔLCcom(Vc,Vb)と表す。また、画素Aにおいて、液
晶層12(図10のモデルの容量1435)に印加される正極性の電圧の大きさをVc+
(A)と表し、負極性の電圧の大きさをVc−(A)と表す。同様に、画素Bにおいて、
液晶層12に印加される正極性の電圧の大きさをVc+(B)と表し、負極性の電圧の大
きさをVc−(B)と表す。この例では
[Vc−(A)]<[Vc−(B)]<[Vc+(B)]<[Vc+(A)]
である。
【0031】
図12は、オフセットが異なる画素の光学特性の差を説明する図である。縦軸は光学特
性の一例として輝度を、横軸は駆動電圧の絶対値を示している。画素Aについて、正極性
電圧および負極性電圧が印加されているときの輝度を、それぞれ、b+(A)およびb−
(A)と表す。b+(A)およびb−(A)の平均を、bave(A)と表す。画素Bに
ついて、正極性電圧および負極性電圧が印加されているときの輝度を、それぞれ、b+(
B)およびb−(B)と表す。b+(B)およびb−(B)の平均を、bave(B)と
表す。
【0032】
まずフリッカーについて考えると、画素Aおよび画素Bのそれぞれにおいて、正極性電
圧および負極性電圧が印加されているときの輝度の差、すなわち、b+(A)とb−(A
)との差およびb+(B)とb−(B)との差が、それぞれフリッカーとして視認される
。したがって、フリッカー抑制のためには、ΔLCcomini(LCcomずれの初期
値)およびΔLCcomsat(LCcomずれの飽和値)を小さくするように駆動すれ
ばよいことがわかる。
【0033】
次に、画素Aと画素Bとでは、平均輝度が異なっている。すなわち、同じデータ電圧V
cを与えても、それ以前に印加されていた電圧(それ以前に表示されていた画像)に応じ
て、平均輝度が異なっている。これは、一般に、液晶の電圧−輝度特性が線形ではなく、
オフセットの差が平均輝度の差として現れるためである。これが、いわゆる焼き付きとい
われる現象が発生するメカニズムである。このメカニズムによれば、焼き付きを抑制する
には、データ電圧によらずにLCcomシフトが同じ値となるように駆動すればよいこと
がわかる。
【0034】
まず、ΔLCcomsat(LCcomずれの飽和値)を小さくする方法を説明する。
前述のとおり、
(V+ΔV)/(RLCD+)・tp = (V-ΔV)/(RLCD-)・tm ・・・(3)
である。tp=tmの場合、
(V+ΔV)/(RLCD+) = (V-ΔV)/(RLCD-) ・・・(4)
である。この状態で、例えばデータ電圧3.0VのときのLCcomずれの飽和値が、Δ
LCcomsat=0.09Vである場合、式(4)から、
(3+0.09)/(RLCD+) = (3-0.09)/(RLCD-) = K ・・・(5)
である。ここでtp=t+Δt、tm=t-Δtとして、式(3)に代入すると、
(3+0)/(RLCD+)*(t+Δt) = (3-0)/(RLCD-)*(t-Δt) ・・・(6)
である。式(6)に式(5)を代入し、式を変形すると、
(3+0)*K/(3+0.09)*(t+Δt) = (3-0)*K/(3-0.09)*(t-Δt) ・・・(7)
(t+Δt)/(3+0.09) = (t-Δt)/(3-0.09) ・・・(8)
(t+Δt)/(100+3) = (t-Δt)/(100-3) ・・・(9)
である。よって正極側の期間を3%増加させることにより、ΔLCcomsat=0で平
衡状態とできる。また、式の形により明らかなように、この関係は、駆動電圧3Vで成立
すれば、全ての駆動電圧で成立することになる。なお、これは、データ電圧3.0Vのと
きにLCcomずれの飽和値が0.09Vである場合の例である。tpとtmの比率は、
電気光学装置の特性に応じて決められる。
【0035】
図13は、tpを3%増加させた場合の、Vdat−ΔLCcomsat特性を示す図
である。縦軸はLCcomずれの飽和値を、横軸はデータ電圧を示している。図中、実線
はtpを3%増加させた場合の特性を、破線は、比較のため、tp=tnである場合の特
性を示している。このように、tpを3%増加させることにより、データ電圧の全範囲に
おいてLCcomずれの飽和値をほぼゼロにすることができる。これにより、正負駆動時
の輝度差はほぼゼロにできるため、飽和状態におけるフリッカーを抑制することができる

【0036】
次に、焼き付き、および初期状態から飽和状態に至る過程におけるフリッカーを抑制す
る方法を説明する。
【0037】
(1)まず、初期状態におけるLCcomずれのデータ電圧依存性、すなわちVdat−
ΔLCcomini特性を測定する。
(2)次に、(1)の結果からある基準電圧(例えばゼロV)におけるLCcomずれを
減算し、相対的なLOCcomずれを求める(以下、「相対LCcomずれ」という)。
【0038】
図14は、LCcomずれを例示する図である。縦軸はLCcomずれを、横軸はデー
タ電圧を示す。上記(1)の結果および(2)の結果がそれぞれ図示されている。
【0039】
(3)複数の個体について、(1)および(2)の作業を行う。その結果から、相対LC
comずれの平均特性(平均値の曲線)を求める。個体間でのずれはあるものの、平均的
には、ある傾向があるはずである。
【0040】
図15は、複数の個体についてのLCcomずれの測定結果を例示する図である。
【0041】
(4)(3)で得られた平均特性に基づいて、データ電圧の補正値を決定する。補正値は
、データ電圧の関数であり、(3)で得られた平均特性の電圧の正負を反転させた特性に
相当する。
【0042】
図16は、図15の例において、補正したデータ電圧を用いて駆動した場合のLCco
mずれを例示する図である。個体間のばらつきはあるものの、全体として、LCcomず
れはデータ電圧に対してほぼフラットな特性に補正されている。
【0043】
(5)個体毎に、基準電圧(例えばゼロV)におけるフリッカーが最小となるようにLC
com電位の調整を行う。
【0044】
図17は、LCcom電位の調整を行った場合のLCcomずれを例示する図である。
個体間のばらつきはあるものの、全体として、図4と比較すると、LCcomずれはデー
タ電圧の全範囲にわたって大幅に低減されていることがわかる。したがって、フリッカー
の発生を抑制することができる。
【0045】
なお、LCcomずれの飽和値については、先に説明したtpの調整によってデータ電
圧の全範囲においてほぼゼロにできる。したがって、初期状態かつデータ電圧が最大振幅
時におけるLCcomずれの最大値が、データ電圧に依存したLCcomずれの差のワー
ストケースである。したがって、全体として、LCcomずれは抑制されている。
【0046】
2.構成
図18は、一実施形態に係る電子機器1の構成を示す図である。電子機器1は、映像デ
ータに従って画像を表示する装置、例えばプロジェクターである。電子機器1は、液晶パ
ネル10(電気光学装置の一例)およびコントローラー20を有する。液晶パネル10は
、表示領域15、走査線駆動回路16、およびデータ線駆動回路17を有する。表示領域
15は、m行n列のマトリクス状に配置された複数の画素14を有する。画素14は、走
査線115およびデータ線116の交差に対応して設けられている。画素14の構成は、
図1で説明したとおりである。
【0047】
走査線駆動回路16は、コントローラー20から入力される制御信号に従って、走査線
115を選択するための走査信号Yを出力する回路である。制御信号としては、例えば、
スタートパルス信号SPYおよびクロック信号CKYが用いられる。第i行の走査線11
5に供給される走査信号を、走査信号Yiという。走査信号Yiは、m本の走査線115
の中から一の走査線115を選択するための信号である。走査信号Yiは、選択される走
査線115に対しては選択電圧(Hレベル)となり、それ以外の走査線115に対しては
非選択電圧(Lレベル)となる信号である。選択電圧を示す信号を選択信号といい、非選
択電圧を示す信号を非選択信号という。走査線駆動回路16は、m本の走査線115の中
から一の走査線115を順次排他的に選択する。
【0048】
図19は、データ線駆動回路17の構成を示す図である。データ線駆動回路17は、コ
ントローラー20から入力される制御信号および画像データに基づいて、画素14に書き
込まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力する回路である。制御信号としては、例えば
、スタートパルス信号SPX、クロック信号CKX、ラッチ信号LAT、極性信号Fp1
、および極性信号Fp2が用いられる。第j列のデータ線116に供給されるデータ信号
を、データ信号Yjという。データ信号Yjは、選択されている行(第i行)の画素14
のうち、第j列の画素14に書き込まれるデータ電圧を示す信号である。
【0049】
データ線駆動回路17は、LUT(Look Up Table)171と、加算回路172と、シ
フトレジスター173と、ラッチ回路174と、D/A変換器175と、増幅器176と
を有する。LUT171は、入力される画像データ(階調値を示すデータ)に応じた補正
値を出力する回路である。LUT171は、階調値と補正値とを対応させるテーブルを記
憶している。
【0050】
図20は、LUT171に記憶されているデータを例示する図である。LUT171は
、アドレスとデータの組を複数記憶している。この例で画像データは12ビット(409
6階調)のデジタルデータであり、LUT171に記憶されているデータも12ビットの
デジタルデータである。アドレスは表示データに対応している。例えば、データ電圧の最
大値が10Vである場合、アドレス0はデータ電圧0Vに相当し、アドレス4095はデ
ータ電圧10Vに相当する。
【0051】
図21は、LUT171に記憶されているデータを説明する図である。既に説明したよ
うに、補正値は、データ(階調値)の関数であり、相対LCcomずれの平均特性の電圧
の正負を反転させた特性に相当する。この例で、補正値とデータとの関係は非線形である

【0052】
再び図19を参照する。加算回路172は、画像データに、LUT171から出力され
た補正値を加算または減算する。正極性のフレームにおいて補正値は加算され、負極性の
フレームにおいて補正値は減算される。データ電圧の極性が正極性であるか負極性である
かは、極性信号Fp1により示される。例えば、極性信号Fp1がHレベルであった場合
、画像データに補正値が加算される。あるいは、極性信号Fp1がLレベルであった場合
、画像データから補正値が減算される。例えば、画像データが「1040」であり補正値
が「+10」であった場合において、極性信号Fp1がHレベルのときは、補正値が加算
され、補正後データは「1050」となる。また、極性信号Fp1がLレベルのときは、
補正値が減算され、補正後データは、「1030」となる。この場合、正極性のフレーム
におけるデータ電圧は、データ「1050」に相当する2.50305Vであり、負極性
のフレームにおけるデータ電圧は、データ「1030」に相当する2.478632Vで
ある。データ電圧の振幅はデータ「1040」に相当する2.4908Vのままであるが
、+0.0244Vのオフセットがかかったものに補正されている。
【0053】
シフトレジスター173は、加算回路172から出力された補正後データを、1クロッ
ク毎に1列ずつシフトさせて出力する。ラッチ回路174は、ラッチ信号LATにより示
されるタイミング(シフトレジスター173により1行分のデータが転送されたタイミン
グ)で、シフトレジスター173からの出力信号をラッチする。D/A変換器175は、
ラッチ回路175からの出力信号をアナログ信号に変換して出力する。増幅器176は、
D/A変換器175からの出力信号を増幅し、データ信号Xjとしてデータ線116に出
力する。
【0054】
再び図18を参照する。コントローラー20は、映像データおよび同期信号に基づいて
各種の制御信号を生成し、電気光学装置10に出力する回路である。また、この例で、コ
ントローラー20は、共通電極131に、所定の(調整された)電位を与える。なお、共
通電位LCcomは、専用の電源回路により与えられてもよい。
【0055】
まとめると、電気光学装置1は、共通電極131と、画素電極114と、走査線駆動回
路16と、データ線駆動回路17とを有する。画素電極114は、複数の走査線115お
よびデータ線116の交差に対応して設けられている。走査線駆動回路16は、
複数の走査線の中から一の走査線を選択する走査信号を出力する。データ線駆動回路17
は、走査線駆動回路16により選択される一の走査線に対応する画素電極114に書き込
まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力する。データ電圧の極性は、第1フレームにお
いて第1極性(例えば正極性)であり、第1フレームに後続する第2フレームにおいて第
1極性と逆の第2極性(例えば負極性)である。ここで、
(1)第1極性のフレームの時間長は、第2極性のフレームの時間長に対し所定の割合
で長い。
(2)データ電圧は、電圧値(階調値)に応じて補正されている。
(3)共通電極の電位LCcomは、(1)の条件で(2)により補正された、第1極
性のデータ電圧と第2極性のデータ電圧との中心電位Vcntと共通電極の最適電位LC
comとのずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調整されている。
【0056】
3.動作
図22は、液晶パネル10の動作を示すタイミングチャートを例示する図である。走査
信号Yiは、順次排他的にHレベルとなる信号である。液晶パネル10において、1コマ
の画像を表示させる期間を「フレーム」という。すなわち、走査信号Y1がHレベルにな
ってから、次にまた走査信号Y1がHレベルになるまでの期間がフレームである。例えば
、同期信号Syncに含まれる垂直走査信号の周波数が60Hzであれば、フレームは1
6.7ミリ秒である。また、一の走査線112が選択されている期間を「水平走査期間(
H)」という。図3は、第1行のデータ信号Xjを例示している。この例では、フレーム
毎にデータ電圧の極性が反転する。正極性のデータ電圧が印加されるフレーム(「正極性
書き込み」)において、データ信号Xjは、基準電圧Vcntに対し、各画素の階調値に
応じた分、高位の電圧を示す。負極性のデータ電圧が印加されるフレーム(「負極性書き
込み」)において、データ信号Xjは、基準電圧Vcntに対し、各画素の階調値に応じ
た分、低位の電圧を示す。データ信号Xjの電圧は、正極性のフレームにおいては、白に
相当する電圧Vw(+)から黒に相当する電圧Vb(+)までの範囲にあり、負極性のフ
レームにおいては、白に相当する電圧Vw(−)から黒に相当する電圧Vb(−)までの
範囲にある。電圧Vw(+)および電圧Vw(−)は、電圧Vcntを中心に互いに対称
の関係にある。電圧Vb(+)およびVb(−)についても電圧Vcntを中心に互いに
対称の関係にある。なお、図22におけるデータ信号Xjの電圧の縦スケールは、(a)
における走査信号等の電圧波形と比較して拡大してある。
【0057】
なお、この例では、既に説明したように、正極性のフレームは負極性のフレームより約
3%長くなるように設定されている。フレームの時間長は、例えば、コントローラー20
から入力されるスタートパルス信号により調整される。この場合、コントローラー20は
、設定された時間長となるようにスタートパルス信号を出力する。
【0058】
電子機器1によれば、原理の項で説明したように、フリッカーおよび焼き付きを抑制す
ることができる。
【0059】
4.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以
下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用い
られてもよい。
【0060】
データ線駆動回路17の構成は、実施形態で説明したものに限定されない。例えば、L
UT171におけるアドレスのビット数pと、画像データのビット数qは一致していなく
ても、p≦qであればよい。この場合、アドレスは画像データの上位pビットに相当する
。この場合、LUT171は、テーブルから得られた補正値を補完する機能を有する。L
UT171は、補完によりqビットのデータを出力する。
【0061】
また、別の例で、データ線駆動回路17はLUT171および加算回路172を有して
いなくてもよい。この場合、コントローラー20等、データ線駆動回路17とは別の回路
が、LUT171および加算回路172に相当する機能を有する。データ線駆動回路17
には、補正された画像データが入力される。データ線駆動回路17は、画像データに応じ
たデータ信号を出力する。
【0062】
共通電位LCcomは、個体毎に個別に調整されなくてもよい。この場合、図17の補
正はされず図16の特性のままで電気光学装置1が使用されることとなるが、図15の特
性と比較して、データ電圧に応じたLCcomずれの変動は抑制されているので、フリッ
カおよび焼き付きの抑制には一定の効果がある。
【0063】
図23は、電子機器1の具体例であるプロジェクター2100の構成を示す図である。
プロジェクター2100は、液晶パネル10をライトバルブとして用いた電子機器の一例
である。この図に示されるように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ
等の白色光源を有するランプユニット2102が設けられている。ランプユニット210
2から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイク
ロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離さ
れる。分離された投射光は、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび1
00Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると光路が長い
ので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レ
ンズ2124を有するリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0064】
プロジェクター2100において、液晶パネル10を含む液晶表示装置が、R色、G色
、B色のそれぞれに対応して3組設けられている。ライトバルブ100R、100Gおよ
び100Bの構成は、上述した液晶パネル10と同様である。R色、G色、B色のそれぞ
れの原色成分の階調レベルを指定するに映像信号がそれぞれ外部上位回路から供給されて
、ライトバルブ100R、100Gおよび100がそれぞれ駆動される。ライトバルブ1
00R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム
2112に3方向から入射する。そして、ダイクロイックプリズム2112において、R
色およびB色の光は90度に屈折し、G色の光は直進する。したがって、各原色の画像が
合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ群2114によってカラー画像が投
射される。
【0065】
なお、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2
108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィ
ルタを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロ
イックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100G
の透過像はそのまま投射される。したがって、ライトバルブ100R、100Bによる水
平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転さ
せた像を表示する構成となっている。また、図17では、液晶表示装置1を透過型のプロ
ジェクターに用いた例を示したが、液晶表示装置1は反射型のプロジェクターに用いられ
てもよい。この場合、液晶パネル10は反射型の液晶パネルである。
【0066】
液晶表示装置1が用いられる電子機器としては、プロジェクター2100の他にも、テ
レビジョンや、ビューファインダー型・モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナ
ビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーシ
ョン、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備
えた機器等などが挙げられる。
【0067】
液晶パネル10の構成は実施形態で説明したものに限定されない。2次元的に配置され
た画素を有するものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、電気光学素子は
液晶素子120に限定されない。有機EL(Electro Luminescence)素子等、液晶素子以
外の電気光学素子が用いられてもよい。また、画素14の等価回路は、図1で説明したも
のに限定されない。外部からの信号によって階調を制御できるものであれば、どのような
構成の画素回路が用いられてもよい。例えば、スイッチング手段はnチャネル型のTFT
に限定されない。pチャネル型のTFTが用いられてもよいし、トランスミッションゲー
ト回路が用いられてもよい。また、実施形態では、液晶パネル10がノーマリーブラック
モードで動作する例を説明したが、液晶パネル10はノーマリーホワイトモードで動作す
るものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・電子機器、10・・・電気光学装置、12・・・液晶層、14・・・画素、1
6・・・走査線駆動回路、17・・・データ線駆動回路、20・・・コントローラー、1
14・・・画素電極、115・・・走査線、131・・・共通電極、141・・・トラン
ジスター、142・・・容量素子、143・・・液晶素子、171・・・LUT、172
・・・加算器、173・・・シフトレジスター、174・・・ラッチ回路、175・・・
D/A変換器、176・・・増幅器、2100…プロジェクター、2102…ランプユニ
ット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイック
プリズム、2114…投射レンズ群、2120…スクリーン、2121…リレーレンズ系
、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通電極と、
複数の走査線および複数のデータ線の交差に対応して設けられた複数の画素電極と、
前記複数の走査線の中から一の走査線を選択する走査信号を出力する走査線駆動回路と

前記走査線駆動回路により選択される一の走査線に対応する画素電極に書き込まれるデ
ータ電圧を示すデータ信号を出力し、前記データ電圧の極性が、第1フレームにおいて第
1極性であり、前記第1フレームに後続する第2フレームにおいて前記第1極性と逆の第
2極性であるデータ線駆動回路と
を有し、
(1)前記第1フレームの時間長は、前記第2フレームの時間長に対し所定の割合で長
く、
(2)前記データ電圧は、電圧値に応じて補正されており、
(3)前記共通電極の電位は、前記(1)の条件で前記(2)により補正された、前記
第1極性のデータ電圧と前記第2極性のデータ電圧との中心電位と前記共通電極の電位と
のずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調整されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記データ線駆動回路は、
入力された画像データに対応する補正値を出力するテーブルと、
前記データ電圧の極性を示す極性信号に応じて、前記テーブルから出力された前記補
正値を前記画像データに加算または減算する加算回路と
を有することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記テーブルにおける画像データと補正値との対応関係は、複数の個体についての、前
記ずれの前記データ電圧依存性の測定結果に基づく平均特性を示す
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記テーブルにおける補正値は、画像データに対し非線形である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記共通電極の電位は、前記電気光学装置の個体毎に個別に調整される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電気光学装置を有する電子機器。
【請求項7】
共通電極と、複数の走査線および複数のデータ線の交差に対応して設けられた複数の画
素電極と、前記複数の走査線の中から一の走査線を選択する走査信号を出力する走査線駆
動回路と、前記走査線駆動回路により選択される一の走査線に対応する画素電極に書き込
まれるデータ電圧を示すデータ信号を出力するデータ線駆動回路と
を有する電気光学装置の駆動方法であって、
前記データ線駆動回路が、第1フレームにおいて第1極性である前記データ電圧を示す
前記データ信号を出力するステップと、
前記第1フレームに後続する第2フレームにおいて前記第1極性と逆の第2極性である
前記データ電圧を示す前記データ信号を出力するステップと
を有し、
(1)前記第1フレームの時間長は、前記第2フレームの時間長に対し所定の割合で長
く、
(2)前記データ電圧は、電圧値に応じて補正されており、
(3)前記共通電極の電位は、前記(1)の条件で前記(2)により補正された、前記
第1極性のデータ電圧と前記第2極性のデータ電圧との中心電位と前記共通電極の電位と
のずれが、所定の基準電圧においてゼロになるように調整されている
ことを特徴とする駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−109131(P2013−109131A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253725(P2011−253725)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】