説明

電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器

【課題】経年変化があっても電気光学装置において焼き付きが発生しないようにする。
【解決手段】光センサー71は、表示パネル100の明るさを検出し、検出した明るさを表す信号Saを出力する。A/D変換回路56には、コンデンサーにより信号Saの直流成分がカットされた信号Sbが供給される。走査制御回路52には、信号Sbをデジタル化した信号が入力される。走査制御回路52は、信号Sbの波高を測定する前に表示パネル100の画素に印加するプリチャージの電圧を切り替える。走査制御回路52は、信号Sbをデジタル化した信号から信号Sbの波高を測定し、測定を終了するとプリチャージの電圧を元に戻す。走査制御回路52は、測定した信号Sbの波高に基づいて画素が正極性電圧を保持している時の実効電圧と負極性電圧を保持している時の実効電圧を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置における表示画像の焼き付きを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、液晶素子を交流駆動するのが一般的である。ただし、交流駆動するだけでは、液晶に直流成分が印加される場合がある。具体的には、液晶表示装置においては、液晶層を挟む画素電極基板と対向電極基板は物理的な構造が異なっており、対向電極から見て高位である正極性電圧が画素電極基板に印加された場合と、対向電極から見て低位である負極性電圧が画素電極基板に印加された場合とで、電極と配向膜との界面や配向膜と液晶層などの界面における抵抗値が異なってしまう。これにより液晶表示装置においては、正極性電圧の印加時と負極性電圧の印加時とで液晶層への実効電圧が等しくても電流量が異なることとなり、電荷の移動量に非対象性が生じる。また、この電流量の非対称性により、液晶内部の電荷に偏りが生じ、電荷の偏りによって内部電界が発生する。この内部電界の影響により、実際に液晶層に印加される電圧は駆動電圧の極性によって非対称となり、液晶層に直流電圧成分が印加される。
【0003】
液晶層にこの直流電圧成分が印加されるとフリッカーが生じることとなるため、フリッカーを抑えるために対向電極の電圧を調整する技術がある。例えば特許文献1に開示されている調整回路は、液晶素子に正極性電圧を印加した時の輝度と負極性電圧を印加した時の輝度とを光センサーで測定し、正極性電圧を印加した時の輝度と負極性電圧を印加した時の輝度と差に基づいて対向電極の電圧を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−286169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の調整回路でフリッカーが最小となるように調整しても、経年変化によって液晶素子へ直流電圧成分が印加され、焼き付きという問題が発生してしまう。この場合、オペレータが再度調整回路を操作して調整回路に対向電極の電圧調整を行わせることとなり、手間がかかる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、経年変化があっても電気光学装置において焼き付きが発生しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気光学装置は、複数行の走査線と複数列のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、各々は、前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号の電圧に応じた階調となる画素を備えた電気光学装置であって、前記複数行の走査線を所定の順番で選択する走査線駆動回路と、前記画素の階調に応じた電圧であって基準電位を基準として高位である正極性電圧、または前記画素の階調に応じた電圧であって前記基準電位を基準として低位である負極性電圧を前記データ線に供給するデータ線駆動回路と、前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に前記データ線に第1プリチャージ信号を供給し、前記画素の明るさを測定する測定期間においては、前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に第2プリチャージ信号を供給するプリチャージ回路と、前記画素の明るさを検出し、検出した明るさを表す信号を出力する検出回路と、前記測定期間に前記検出回路から出力された信号に基づいて前記正極性電圧の実効電圧と前記負極性電圧の実効電圧との比を変更する実効電圧変更回路とを備える。
【0007】
本発明によれば、経年変化があっても電気光学装置において焼き付きが発生しないようにすることができる。
また、本発明においては、画素の明るさを測定する測定期間においては、データ線に正極性電圧または負極性電圧が供給される前に第2プリチャージ信号が供給され、正極性の電圧を印加した時と負極性の電圧を印加した時とで実効電圧の差が大きくなり、画素の明るさを表す信号において、ノイズの影響を小さくすることができる。
また、本発明においては、第1プリチャージ信号が供給されている状態において、正極性電圧で保持された実効電圧が高い状態と、正極性電圧で保持された実効電圧が低い状態とで画素の明るさを表す信号の内容が同じであっても、測定期間に第2プリチャージ信号が供給されると、正極性電圧で保持された実効電圧が高い状態と、正極性電圧で保持された実効電圧が低い状態とでは、画素の明るさを表す信号の内容が異なることになる。このため、正極性電圧で保持された実効電圧と負極性電圧で保持された実効電圧とでどちらの実効電圧が大きいのか判断するのが容易となり、実効電圧の差が小さくなるように制御するのが容易となる。
【0008】
本発明においては、前記実効電圧変更回路は、前記検出回路から出力された信号の振幅または波高に基づいて、前記正極性電圧の実効電圧と前記負極性電圧の実効電圧との比を変更する構成としてもよい。
この構成によれば、画素の明るさを表す信号の振幅または波高に基づいて、正極性電圧の実効電圧と負極性電圧の実効電圧とが変更され、フリッカーの発生を抑えることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第2プリチャージ信号で画素がプリチャージされた場合、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高は、前記第1プリチャージ信号で画素がプリチャージされた場合より大きくなる構成としてもよい。
この構成によれば、測定期間において検出回路から出力される信号の振幅または波高は、測定期間外において検出回路から出力される信号の振幅または波高より大きくなり、振幅または波高を容易に得ることができる。
【0010】
また、本発明においては、前記第1プリチャージ信号は、前記正極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より低い第1電圧となり、前記負極性電圧が前記データ線に供給される前には前記第1電圧より低い第2電圧となり、前記第2プリチャージ信号は、前記正極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より高い第3電圧となり、前記負極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より低い第4電圧となる構成であってもよい。
この構成によれば、測定期間において検出回路から出力される信号の振幅または波高は、測定期間外において検出回路から出力される信号の振幅または波高より大きくなり、振幅または波高を容易に得ることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記実効電圧変更回路は、前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間を変更する構成としてもよい。
この構成によれば、印加時間の比を変更することにより、正極性電圧の実効電圧と、負極性電圧の実効電圧とが変更され、フリッカーの発生を抑えることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記実効電圧変更回路は、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が第1閾値以上となると前記負極性電圧の印加時間を前記正極性電圧の印加時間より長くし、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第1閾値より小さい第2閾値以下となると前記正極性電圧の印加時間を前記負極性電圧の印加時間より長くし、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第1閾値以上となる毎に前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間との差を小さくし、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第2閾値以下となる毎に前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間との差を小さくする構成としてもよい。
この構成によれば、正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間との比が収束し、正極性電圧の実効電圧と、負極性電圧の実効電圧との差が小さくなり、フリッカーの発生を抑えることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記実効電圧変更回路は、前記正極性電圧と前記負極性電圧の電圧比を変更する構成としてもよい。
この構成によれば、正極性電圧と負極性電圧の比を変更することにより、正極性電圧の実効電圧と、負極性電圧の実効電圧とが変更され、フリッカーの発生を抑えることができる。
【0014】
なお、本発明は、電気光学装置のみならず、電気光学装置の駆動方法としても、当該電気光学装置を有する電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気光学装置1の構成を示したブロック図。
【図2】表示パネル100の構成を示した図。
【図3】画素110の構成を示した図。
【図4】走査線駆動回路130の動作を示す図。
【図5】データ信号の波形例を示した図。
【図6】データ信号の波形例を示した図。
【図7】表示領域100aにおける画素の書き込みの推移を示す図。
【図8】走査線駆動回路130の動作を示す図。
【図9】表示領域100aにおける画素の書き込みの推移を示す図。
【図10】走査線駆動回路130の動作を示す図。
【図11】表示領域100aにおける画素の書き込みの推移を示す図。
【図12】表示パネル100の特性を示した図。
【図13】信号Sbの波高を最小にする対向電極の電圧との関係を示した図。
【図14】実施形態の動作を説明するための図。
【図15】走査制御回路52の処理の流れを示したフローチャート。
【図16】実施形態に係る電気光学装置1を用いたプロジェクターの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る電気光学装置1の構成を示したブロック図である。図1に示したように、電気光学装置1は、表示パネル100、制御回路50、および検出回路70に大別される。このうち、表示パネル100の動作等を制御する制御回路50は、走査制御回路52、データ信号生成回路54、A/D変換回路56、第1プリチャージ信号生成回路61、第2プリチャージ信号生成回路62、スイッチSW1及びスイッチSW2を含み、例えばFPC(flexible printed circuit)基板によって表示パネル100に接続される。なお、第1プリチャージ信号生成回路61、第2プリチャージ信号生成回路62及びスイッチSW1でプリチャージ回路60が構成されている。また、検出回路70は、光センサー71とコンデンサー72を含む。
【0017】
光センサー71は、表示パネル100に設けられた画素の明るさを検出するセンサーである。光センサー71は、フォトダイオードを有しており、フォトダイオードに光が入射すると、フォトダイオードに流れる電流の変化を電流−電圧変換回路により電圧の変化に変換し、画素の明るさを示すアナログの信号Saをコンデンサー72とA/D変換回路56へ出力する。なお、本実施形態においては、光センサー71から出力される信号Saは、電圧値によって画素の明るさを表しており、検出した明るさに応じて電圧が変化する。
コンデンサー72は、信号Saの直流成分をカットするものであり、信号Saの交流成分が信号Sbとしてコンデンサー72からA/D変換回路56へ供給される。A/D変換回路56は、アナログ信号をデジタル信号に変換する回路であり、信号Saをデジタル化した信号と信号Sbをデジタル化した信号を走査制御回路52へ出力する。
【0018】
制御回路50は、外部上位回路(図示省略)から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびクロック信号Clkにしたがって表示パネル100の各部を制御する。また、制御回路50は、外部上位回路から供給されるデジタルの画像データVdをアナログのデータ信号Vidに変換し、データ信号Vidを表示パネル100へ供給する。なお、制御回路50の詳細については後述する。
【0019】
図2は、表示パネル100の構成を示した図である。表示パネル100は、液晶を用いて画像の表示を行うものであり、表示領域100aの周辺に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が配置された周辺回路内蔵型となっている。
表示領域100aは、本実施形態においては480行の走査線112が横方向(X方向)に設けられる一方、640列のデータ線114が図において縦方向(Y方向)に設けられている。そして、これらの走査線112とデータ線114との交差の各々に対応するように画素110がそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では、表示領域100aにおいて画素110が縦480行×横640列でマトリクス状に配列することになるが、本発明をこの配列に限定する趣旨ではない。
【0020】
走査線駆動回路130は、制御回路50により制御され、垂直走査期間にわたって走査信号G1、G2、G3、...、G480を、それぞれ1、2、3、...、480行目の走査線112に供給するものである。走査線駆動回路130は、走査線112を予め定められた順番で水平走査期間毎に選択し、選択した走査線112へ供給する走査信号を電圧Vddに相当するHレベル(選択電圧)とする。
【0021】
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、各データ線114に対応して設けられるOR回路144と、各データ線114に対応して設けられるnチャネル型の薄膜トランジスタ(thin film transistor、以下「TFT」と称する)146とを備えている。サンプリング信号出力回路142は、制御回路50により制御され、各OR回路144に対応してサンプリング信号S1、S2、S3、...、S640を出力するものである。サンプリング信号出力回路142は、図5に示したように水平走査期間(H)のうち、有効表示期間Haの最初に供給されるスタートパルスDxを、クロック信号Clxのレベルが遷移する毎に順次シフトし、サンプリング信号S1、S2、S3、...、S640として出力する。
【0022】
OR回路144は、プリチャージ期間指定信号Nrgと前述のサンプリング信号との論理和信号を出力するものである。プリチャージ期間指定信号Nrgは、図5に示したように水平走査期間(H)の帰線期間Hbの一部期間でHレベルとなり、データ線114をプリチャージする期間を指定する信号である。
TFT146は、1〜640列のデータ線114の各々に設けられ、それぞれサンプリングスイッチとして機能するものであり、そのドレイン電極は、データ線114の一端に接続されている。TFT146のソース電極は、画像信号線148に接続される。また、TFT146のゲート電極には、OR回路144から論理和信号が供給される。例えば、左から数えて2番目のOR回路144は、2列目のデータ線114に対応するので、このデータ線114に対応するTFT146のゲート電極には、サンプリング信号S2とプリチャージ期間指定信号Nrgとの論理和信号が供給される。プリチャージ期間指定信号NrgがHレベルになるか、または、サンプリング信号S2がHレベルになると、TFT146がソース・ドレイン電極間で導通(オン)状態となるので、データ線114は、画像信号線148に接続されることになる。
【0023】
次に、画素110について説明する。図3は、画素110の構成を示した図であり、i行及びこれに下方向で隣接する(i+1)行と、j列及びこれに右方向で隣接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成を示している。なお、i、(i+1)は、画素110が配列する行を一般的に示す場合の記号であって、本実施形態では、それぞれ1以上480以下を満たす整数である。また、j、(j+1)は、画素110が配列する列を一般的に示す場合の記号であって、本実施形態では、それぞれ1以上640以下を満たす整数である。
この図に示されるように、各画素110は、nチャネル型のTFT116と液晶容量120とを有する。各画素110については互いに同一構成なので、i行j列に位置するもので代表して説明する。当該i行j列の画素110において、TFT116のゲート電極はi行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。また、液晶容量120の他端は、対向電極108に接続されている。この対向電極108は、全ての画素110にわたって共通であって、時間的に一定の電圧LCcomが印加されている。
【0024】
なお、この表示パネル100は、特に図示しないが、素子基板と対向基板との一対の基板が一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶が封止された構成となっている。このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、TFT116および画素電極118が走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140とともに形成される一方、対向基板に対向電極108が形成されており、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。このため、本実施形態において液晶容量120は、画素電極118と対向電極108とが液晶105を挟持することによって構成されることになる。
【0025】
本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧の実効値がゼロ(またはゼロ近傍)に近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最大となって白色表示になる一方、保持される電圧の実効値が大きくなるにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノーマリーホワイトモードに設定されている。
【0026】
この構成において、走査線112に走査信号を供給し、TFT116をオン(導通)させるとともに、データ線114およびオン状態のTFT116を介して、画素電極118に階調(明るさ)に応じた電圧のデータ信号Vidを供給すると、走査信号が供給された走査線112とデータ信号が供給されたデータ線114との交差に対応する液晶容量120に、階調に応じた実効電圧を保持させることができる。したがって、液晶容量120を透過する光は、画素毎に異ならせることが可能であり、これにより、表示領域100aにおいて画像が形成される。なお、形成された画像は、使用者に直視され、または、後述するプロジェクターのように拡大投射されて視認される。いずれにしても、表示パネル100の画素の明るさが光センサー71によって検出されることになる。
【0027】
続いて、制御回路50について説明する。図1に示したように、制御回路50においては、垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびクロック信号Clkが走査制御回路52に供給され、画像データVdがデータ信号生成回路54に供給される。
画像データVdは、図示省略した外部上位回路から、垂直走査信号Vs、水平走査信号Hsおよびクロック信号Clkに同期して供給される。画像データVdは、縦480行×横640列の画素110の階調を例えば8ビットで指定するデジタルデータであり、特に図示しないが、垂直同期信号Vsで規定される垂直走査期間にわたって、1行1列〜1行640列、2行1列〜2行640列、3行1列〜3行640列、...、480行1列〜480行640列という画素の順番で供給される。この供給の際に、水平同期信号Hsで規定される水平走査期間において1行分の画像データVdが供給され、さらに、クロック信号Clkの1周期で1画素分の画像データVdが供給される。なお、画像データVdは、周期16.7ミリ秒(周波数60Hz)で1フレーム分(表示パネル100の全画素分)が供給される。
【0028】
走査制御回路52は、極性指定信号Polを出力する。極性指定信号Polは、液晶容量120に対する電圧の書込極性を指定する信号であり、例えばHレベルであれば正極性を指定し、Lレベルであれば負極性を指定する。ここで、正極性書込とは、階調に応じた電圧を液晶容量120に保持させる際に、画素電極118が対向電極108よりも高位側となる場合をいい、反対に、負極性書込とは、画素電極118が対向電極108よりも低位側となる場合をいう。
【0029】
データ信号生成回路54は、外部上位装置から供給される画像データVdを、一旦内部メモリ(図示省略)に記憶した後、表示パネル100の駆動に同期して読み出すものである。データ信号生成回路54は、表示パネル100のある行の走査線を選択するとき、当該行の画像データVdを読み出し、読み出した画像データVdをアナログの信号に変換してデータ信号Vdaを生成する。
なお、データ信号生成回路54は、極性指定信号Polによって正極性書込が指定されている場合、データ信号Vdaを、対向電極108への印加電圧LCcomよりもやや高位側に設定された基準電圧Vc(基準電位)に対して高位側の電圧であって、階調に応じた電圧とする。また、データ信号生成回路54は、極性指定信号Polによって負極性書込が指定されている場合、データ信号Vdaを、基準電圧Vcに対して低位側の電圧であって、階調に応じた電圧とする。なお、極性を切り替える理由は、直流成分の印加によって液晶が劣化するのを防止するためである。
【0030】
また、走査制御回路52は、プリチャージ期間指定信号Nrgと選択信号Selを出力する。プリチャージ期間指定信号Nrgは、前述のとおりデータ線114をプリチャージする期間を指定する信号であり、図5に示されるように水平帰線期間Hbの一部期間においてHレベルとなり、それ以外の期間においてLレベルとなる。
選択信号Selは、スイッチSW1の接続先を切り替える信号である。選択信号Selによって第1プリチャージ信号生成回路61とスイッチSW2が接続されると、第1プリチャージ信号生成回路61から出力される第1プリチャージ信号P1がスイッチSW2の入力端子Aに供給される。また、選択信号Selによって第2プリチャージ信号生成回路62とスイッチSW2が接続されると、第2プリチャージ信号生成回路62から出力される第2プリチャージ信号P2がスイッチSW2の入力端子Aに供給される。
【0031】
なお、この説明において、水平走査期間(H)の有効表示期間Haとは、図5に示したように、ある1行の走査線が選択される水平走査期間(H)において、サンプリング信号S1〜S640がHレベルで順番に出力される期間をいい、帰線期間Hbとは、水平走査期間(H)のうち、有効表示期間Haを除いた期間をいう。
【0032】
第1プリチャージ信号生成回路61は、極性指定信号Polで指定された書込極性に応じた電圧の第1プリチャージ信号P1を出力する。同様に、第2プリチャージ信号生成回路62は、極性指定信号Polで指定された書込極性に応じた電圧の第2プリチャージ信号P2を出力する。
【0033】
ここで、第1プリチャージ信号P1と第2プリチャージ信号P2の電圧について図5を参照して説明する。なお、図における電圧の表記について、(+)は正極性を示し、(−)は負極性を示す。このため、図5において電圧表記部分が同一である電圧同士は、基準電圧Vcを中心にして、互いに対称の関係にある。
【0034】
第1プリチャージ信号P1は、正極性書込が指定される垂直走査期間では、図5に示した電圧Vp11(第1電圧)となり、負極性書込が指定される垂直走査期間では、電圧Vp12(第2電圧)となる。同様に、第2プリチャージ信号P2は、正極性書込が指定される垂直走査期間では、図5に示した電圧Vp21(第3電圧)となり、負極性書込が指定される垂直走査期間では、電圧Vp22(第4電圧)となる。
データ信号Vdaの電圧は、正極性書込であればノーマリーホワイトモードにおいて最も暗い状態に相当する電圧Vb(+)から最も明るい状態に相当する電圧Vw(+)までの範囲で、基準電圧Vcから画素の階調に応じた差を有する電圧となり、負極性書込であれば、最も暗い状態に相当する電圧Vb(−)から最も明るい状態に相当する電圧Vw(−)までの範囲で、基準電圧Vcから画素の階調に応じた差を有する電圧となる。
なお、本実施形態においては基準電圧Vcを7.5Vとし、電圧Vp11=3V、電圧Vp12=2.5V、電圧Vp21=10V、電圧Vp22=5.5V、としているが、本発明においては、各電圧は、この電圧値に限定されるものではない。
【0035】
図1に戻り、スイッチSW2は、画像信号線148に出力する信号を選択するスイッチである。スイッチSW2の入力端Aには、第1プリチャージ信号P1または第2プリチャージ信号P2が供給される。また、スイッチSW2の入力端Bにはデータ信号Vdaが供給される。出力端aは、表示パネル100の画像信号線148に接続されている。スイッチSW2は、プリチャージ期間指定信号Nrgに応じて入力端と出力端との接続を切り替える。スイッチSW2は、プリチャージ期間指定信号NrgがHレベルである場合、入力端Aと出力端aを接続する。またスイッチSW2は、プリチャージ期間指定信号NrgがLレベルである場合、入力端Bと出力端aを接続する。スイッチSW2は、出力端aに供給された信号をデータ信号Vidとして出力する。
【0036】
ここで、説明を再び走査制御回路52の説明に戻す。走査制御回路52は、垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびクロック信号Clkに同期して、スタートパルスDx、Dya,Dybおよびクロック信号Clx、Clyを出力する。
詳細には、走査制御回路52は、1行目の画像データVdに対応したデータ信号Vdaが供給される水平走査期間に1行目の走査線112が選択されるようにスタートパルスDya,Dybおよびクロック信号Clyを出力し、2、3、4、...、480行の画像データVdに対応したデータ信号Vdaが供給される水平走査期間にそれぞれ2、3、4、...、480行目の走査線112が選択されるようにクロック信号Clyを出力して走査線駆動回路130を制御する。
また、走査制御回路52は、1列目の画素に対応するデータ信号Vdaを出力するときにサンプリング信号S1をHレベルとし、以下2列目、3列目、...、640列目の画素に対応するデータ信号Vdaを出力するときにサンプリング信号S2、S3、...、S640がHレベルとなるように、スタートパルスDxおよびクロック信号Clxを出力してサンプリング信号出力回路142を制御する。
【0037】
図4は、走査線駆動回路130により出力される走査信号G1〜G480を、スタートパルスDya、Dybとクロック信号Clyとの関係において示すタイミングチャートである。この図に示したように、1フレームの期間において走査線112は、それぞれ2回選択される。ここで、フレームとは、1枚の画像を表示パネル100に表示させるのに要する期間をいうが、画像データVdは、周期16.7ミリ秒(周波数60Hz)で供給されるので、1フレームとは、この周期の16.7ミリ秒と一致する。
走査制御回路52は、デューティ比が50%のクロック信号Clyを、1フレームの期間にわたって走査線数に等しい480周期分出力する。なお、図4においては、クロック信号Clyの1周期の半分の期間をHと表記している。また、走査制御回路52は、クロック信号Clyの1周期分のパルス幅を有するスタートパルスDya、Dybを、それぞれクロック信号ClyがHレベルの立ち上がり時において、それぞれ次のように出力する。すなわち、走査制御回路52は、スタートパルスDyaを1フレームの期間の最初(すなわち第1フィールドの最初)に出力する一方、スタートパルスDybを、スタートパルスDybを出力してからクロック信号Clyの240周期分を出力した(すなわち、1フレームの半分期間が経過した)タイミングTで出力する。ただし、走査制御回路52は、後述するように、スタートパルスDybをタイミングTに対し、クロック信号Clyの周期を単位とした分だけ時間的に前方側または後方側に出力する場合がある。
【0038】
なお、1フレームの期間のうち、スタートパルスDyaが出力されてからスタートパルスDybが出力されるまでの期間を第1フィールドとし、スタートパルスDybが出力されてから次のスタートパルスDyaが出力されるまでの期間を第2フィールドとしている。ここで、スタートパルスDya、Dybは交互に出力され、このうち、スタートパルスDyaは、1フレームの開始タイミング、すなわち16.7ミリ秒毎に出力される。このため、スタートパルスDyaを特定すると、必然的にスタートパルスDybも特定できるので、図1、図2等においては、特に両者を区別することなく、スタートパルスDyとして表記している。
【0039】
走査線駆動回路130は、このようなスタートパルスDya、Dybおよびクロック信号Clyから、図4に示される走査信号G1〜G480を出力する。すなわち、走査線駆動回路130は、走査信号G1〜G480について、スタートパルスDyaが供給されると、クロック信号ClyがLレベルの期間において順次Hレベルとさせる一方、スタートパルスDybが供給されると、クロック信号ClyがHレベルの期間において順次Hレベルとさせる。
このため、走査線112は、スタートパルスDyaの供給によって、あるフレームの第1フィールドから第2フィールドまでにわたって画面下方向にむかって1、2、3、4、・・・、480行目の順番で、クロック信号Clyの半周期の期間をおいて選択される。一方、走査線112は、スタートパルスDybの供給によって、あるフレームの第2フィールドから次フレームの第1フィールドまでにわたって画面下方向にむかって1、2、3、4、・・・、480行目の順番で、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択の合間にて選択されることになる。なお、走査信号がHレベルとなる期間は、実際には図4に示されるように、クロック信号Clyの半分周期の期間よりも狭められている。
【0040】
次にスタートパルスDybの出力タイミングについて説明する。走査制御回路52は、スタートパルスDybの出力タイミングを制御する。具体的には、走査制御回路52は、スタートパルスDybの出力タイミングを指定するための設定値として、予め定められた第1設定値と第2設定値を記憶している。なお、本実施形態においては、第1設定値は、マイナスの整数の値であり、第2設定値は、プラスの整数の値である。また、走査制御回路52は、スタートパルスDybの出力タイミングを指定するための値を格納するレジスターを有している。走査制御回路52は、レジスターに格納された値に応じてスタートパルスDybの出力タイミングを変更する。
【0041】
具体的には、まず走査制御回路52は、外部上位装置から供給される画像データVdを、データ信号生成回路54の内部メモリに記憶させた後、表示パネル100においてある行の走査線112を選択するとき、当該行の画像データVdを記憶速度の倍の速度で読み出すとともに、画像データVdの読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルとなるように、サンプリング信号出力回路142を制御する。なお、読み出された画像データVdは、アナログのデータ信号Vdaに変換される。
【0042】
ここで、走査制御回路52は、レジスターに格納されている値が「0」であると、タイミングTにおいてスタートパルスDybを供給する。走査制御回路52がタイミングTにおいてスタートパルスDybを供給する場合、第1フィールドにおいては、走査線112が241、1、242、2、243、3、・・・、480、240行目という順番で選択される。
【0043】
具体的には、まず走査制御回路52は、水平走査期間(H)の帰線期間Hbでプリチャージ期間指定信号NrgをHレベルにする。これにより、第1プリチャージ信号P1が画像信号線148に供給される。なお、ここでは極性指定信号Polによって負極性が指定され、第1プリチャージ信号P1の電圧は電圧Vp12となる。また、プリチャージ期間指定信号NrgがHレベルになると、すべてのOR回路144の論理和信号は、サンプリング信号とは無関係にHレベルとなるので、1〜640列のTFT146が全てオンとなり、1〜640列のデータ線は電圧Vp12にプリチャージされる。このプリチャージの後にプリチャージ期間指定信号NrgがLレベルになり、プリチャージ期間指定信号NrgがLレベルになった後に帰線期間Hbが終了する。なお、プリチャージ期間指定信号NrgがLレベルになるとスイッチSW2によりデータ信号生成回路54から供給されるデータ信号Vdaがデータ信号Vidとして画像信号線148に供給される。
【0044】
次に走査制御回路52は、241行目の走査線112が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する。また、走査制御回路52は、データ信号生成回路54に対し、メモリに記憶された241行目に相当する画像データVdを倍速で読み出させ、負極性のデータ信号Vdaに変換するように極性指定信号Polによって制御するとともに、この読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640がこの順番で排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルになると、TFT146が順番にオンとなり、画像信号線148に供給されたデータ信号Vidが1〜640列目のデータ線114に順番にサンプリングされる。
【0045】
241行目の走査線112が選択されて走査信号G241がHレベルになると、241行目に位置する画素110におけるTFT116がすべてオンとなる。このため、データ線114にサンプリングされたデータ信号Vidの負極性電圧がそのまま画素電極118に印加される。このため、241行目であって1、2、3、4、・・・、639、640列の画素における液晶容量120には、241行目の画像データVdで指定された階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、保持されることになる。
【0046】
次に走査制御回路52は、水平走査期間の帰線期間Hbでプリチャージ期間指定信号NrgをHレベルにする。これにより、第1プリチャージ信号P1が画像信号線148に供給される。なお、ここでは極性指定信号Polによって正極性が指定され、第1プリチャージ信号P1の電圧は電圧Vp11となる。また、プリチャージ期間指定信号NrgがHレベルになると、1〜640列のTFT146が全てオンとなり、1〜640列のデータ線は電圧Vp11にプリチャージされる。このプリチャージの後にプリチャージ期間指定信号NrgがLレベルになり、プリチャージ期間指定信号NrgがLレベルになった後に帰線期間Hbが終了する。
【0047】
この後、走査制御回路52は、1行目の走査線112が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する。また、走査制御回路52は、データ信号生成回路54に対し、メモリに記憶された1行目に相当する画像データVdを倍速で読み出させ、正極性のデータ信号Vdaに変換するように極性指定信号Polによって制御するとともに、この読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640がこの順番で排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。
1行目の走査線112が選択されて走査信号G1がHレベルになると、1行目に位置する画素110におけるTFT116がすべてオンとなる。これにより、データ線114にサンプリングされたデータ信号Vidの電圧が画素電極118に印加される。このため、1行目であって1〜640列の画素における液晶容量120には、1行目の画像データVdで指定された階調に応じた正極性の電圧が書き込まれて、保持されることになる。
【0048】
以下、第1フィールドにおいては、同様な電圧書込の動作が、242、2、243、3、・・・、480、240行目という順番で実行される。これにより、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持されることになる。
なお、タイミングTにおいてスタートパルスDybが供給される場合であれば、第2フィールドにおいて、走査線112が1、241、2、242、3、243、4、244、・・・、240、480行目という順番で選択されるともに、第1フィールドとは書込極性が反転される。このため、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持されることになる。また、第2フィールドにおいては、1〜240行目の画素は電圧Vp12にプリチャージされ、241〜480行目の画素は電圧Vp11にプリチャージされる。
【0049】
図5は、第1フィールドにおける(i+240)行目の走査線とi行目の走査線とが選択される期間におけるデータ信号Vidの電圧波形の一例である。また、図6は、第2フィールドにおける(i+240)行目の走査線とi行目の走査線とが選択される期間におけるデータ信号Vidの電圧波形の一例である。なお、図5および図6においてデータ信号Vidの電圧を示す縦スケールは、便宜的に他の信号における縦スケールよりも拡大してある。
この図において、電圧Vb(+)、Vb(−)は、それぞれ最低階調の黒色に相当する正極性、負極性電圧であり、基準電圧Vcを中心に対称の関係にある。基準電圧Vcは、データ信号Vidの振幅中心であり、電圧Vb(+)、Vb(−)の中間の電圧である。なお、本実施形態においては、特に説明のない限り、接地電位Gndを電圧の基準としている。画像データVdで指定される階調値の十進値が「0」のときに最低階調の黒色を指定し、以後当該十進値が大きくなるにつれて明るい階調を指定する場合、本実施形態はノーマリーホワイトモードであるから、データ信号Vidの電圧は、正極性に変換する場合であれば、階調値が大きくなるにつれて電圧Vb(+)から低位側に振られた電圧となり、負極性に変換する場合であれば、電圧Vb(−)から高位側に振られた電圧となる。
【0050】
第1フィールドでは、i行目よりも先に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号G(i+240)がHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた負極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、・・・、640列目の画素の階調に応じた負極性電圧に変化する。続いて選択されるi行目では、正極性書込が指定されるので、走査信号GiがHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた正極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、・・・、640列の画素の階調に応じた正極性電圧に変化する。
なお、第2フィールドでは、i行目よりも後に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号Giが先にHレベルになり、書込極性が反転するので、データ信号Vidの電圧波形は図6に示される通りとなる。
【0051】
次に図7は、スタートパルスDybがタイミングTで供給される場合において、各行の書込状態を連続するフレームにわたった時間経過とともに示す図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1フィールドにおいて241、242、243、・・・、480行目の画素では負極性の書き込みがなされ、1、2、3、・・・、240行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。一方、第2フィールドにおいて1、2、3、・・・、240行目の画素では負極性の書き込みがなされ、241、242、243、・・・、480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。
レジスターの値が「0」であり、スタートパルスDybがタイミングTで供給される場合、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、有効表示期間Haで各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とは半分ずつとなる。
【0052】
次に、レジスターに格納されている値が0以外の値である場合について説明する。例えば、レジスターに格納された値が「−1」である場合、走査制御回路52は、図8に示したように、スタートパルスDybを、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ早いタイミングT(−1)に変更して出力する。すると、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となる。これにより、図9に示されるように、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により有効表示期間Haにおいて書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により有効表示期間Haにおいて書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。したがって、画素においては、負極性電圧で保持された実効電圧が高められ、正極性電圧で保持された実効電圧が低められる。
【0053】
負極性電圧で保持された実効電圧が正極性電圧で保持された実効電圧より高くなると、画素は、負極性電圧を保持した時に明るくなり、正極性電圧を保持した時の暗くなる方向に変化する。なお、レジスターに格納した値が「−2」であれば、走査制御回路52は、スタートパルスDybを、タイミングTよりもクロック信号Clyの2周期分だけ早いタイミングに変更して出力する。すると、画素は、レジスターに格納した値が「−1」の場合より、負極性電圧で保持された実効電圧がさらに高められ、正極性電圧で保持された実効電圧がさらに低められる。
【0054】
一方、レジスターに格納した値が「+1」である場合、走査制御回路52は、図10に示したように、スタートパルスDybを、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ遅いタイミングT(+1)に変更して出力する。すると、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となる。これにより、図11に示されるように、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により有効表示期間Haにおいて書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により有効表示期間Haにおいて書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。したがって、画素においては、正極性電圧で保持された実効電圧が高められ、負極性電圧で保持された実効電圧が低められる。
【0055】
正極性電圧で保持された実効電圧が負極性電圧で保持された実効電圧より高くなると、画素は、正極性電圧を保持した時に明るくなり、負極性電圧を保持した時に暗くなる方向に変化する。なお、レジスターに格納した値が「+2」であれば、走査制御回路52は、スタートパルスDybを、タイミングTよりもクロック信号Clyの2周期分だけ遅いタイミングに変更して出力する。すると、画素は、レジスターに格納した値が「+1」の場合より、正極性で保持された実効電圧がさらに高められ、負極性で保持された実効電圧がさらに低められる。
このように、走査制御回路52においてレジスターの値を変更することにより、正極性で保持された実効電圧と、負極性で保持された実効電圧との比が変更されるため、走査制御回路52は、正極性で保持された実行電圧と、負極性で保持された実効電圧との比を変更する実効電圧変更回路として機能している。
【0056】
ところで、対向電極108に印加される電圧LCcomは、図5に示されるように、工場出荷時において、基準電圧Vcよりも低位側に設定される。これは、画素電極をTFTで駆動するアクティブマトリクス型の電気光学装置では、いわゆるブッシュダウンが発生することや、液晶容量のリークが正極性の電圧を保持する場合と負極性の電圧を保持する場合とで異なることなどによる。
仮に電圧LCcomを基準電圧Vcと一致させた場合、負極性書込による液晶容量120の実効電圧が、正極性書込による実効電圧よりも若干大きくなってしまう(TFT116がnチャネルの場合)ので、この差が相殺されるような最適値に、電圧LCcomを基準電圧Vcよりも低位側にオフセットして設定しているのである。
【0057】
本実施形態において、スタートパルスDybがタイミングTで供給される場合、第1および第2フィールドの期間は互いに等しく、各画素において有効表示期間Haで液晶容量120に書き込まれた正極性電圧の保持期間と負極性電圧の保持期間とは同じとなるので、液晶容量120には直流成分が印加されないはずである。しかしながら、経年変化などによりTFTのプッシュダウン量や、液晶容量におけるリーク量が工場出荷時から変化したとき、電圧LCcomは、もはや最適値ではなくなり、液晶容量120に直流成分が印加される。すると、正極性電圧を保持している期間と負極性電圧を保持している期間とで画素110の明るさに差が生じることになる。
また、表示パネル100は、個々に特性が異なり、一定時間が経過すると、正極性電圧を保持している期間と負極性電圧を保持している期間とで画素110の明るさの差を抑えるために電圧LCcomを増やす必要がある特性のパネルと、画素110の明るさの差を抑えるために電圧LCcomを減らす必要がある特性のパネルとがある。この場合、レジスターの値を0にしても、画素110においては明るさの差が発生することになる。
【0058】
ここで図12は、表示パネル100の特性を説明するための図である。この図において横軸はレジスターの値を表し、レジスターの値が正の場合には正極性電圧の保持期間が長く、レジスターの値が負の場合には負極性電圧の保持期間が長いことを示している。また、縦軸は、一定時間経過した後に、対向電極108の電圧をどれだけ電圧LCcomから変更すると信号Sbの波高(信号Sbが表す電圧の最大値と最小値の差)が最小になるかを表している。図12の(1)の特性のパネルは、レジスターの値が0の時において時間が経過すると液晶容量120に直流成分が印加され、信号Sbの波高を最小にするためには対向電極108へ印加する電圧を増やす必要が生じる特性のパネルである。図12の(2)の特性のパネルは、レジスターの値が0の時において時間が経過すると液晶容量120に直流成分が印加され、信号Sbの波高を最小にするためには対向電極108に印加する電圧を減らす必要が生じる特性のパネルである。
なお、スタートパルスDybの出力タイミングを指定するための設定値である上述した第2設定値は、図12に示した第2設定値であり、(1)と(2)のパネルの両方について、一定時間経過後に信号Sbの波高を最小にするには、電圧LCcomを減らす必要が生じる値である。また、スタートパルスDybの出力タイミングを指定するための設定値である上述した第1設定値は、図12に示した第1設定値であり、(1)と(2)のパネルの両方について、一定時間経過後に信号Sbの波高を最小にするには、電圧LCComを増やす必要が生じる値である。
【0059】
また、図13(a)〜(c)は、対向電極108の電圧を電圧LCcomにした時の信号Sbの波高を説明するための図である。図13(a)〜(c)において横軸は対向電極108の電圧を表し、縦軸は信号Sbの波高を表している。
図13(b)は、例えば出荷時に有効表示期間Haにおける正極性の保持時間と負極性の保持時間を同じとし、信号Sbの波高が最小となるように対向電極108の電圧を電圧LCcomに調整した状態を示した図である。この状態では、信号Sbの波高が最小となっている。しかし、経年変化によって液晶容量120に直流成分が印加されると、信号Sbの波高が大きくなり、信号Sbの波高を最小にするには、対向電極108の電圧を変更する必要が生じる。
【0060】
例えば、表示パネル100が図12の(1)の特性のパネルの場合、時間が経過して液晶容量120に直流成分が印加されると、信号Sbの波高が最小となる最適な対向電極108の電圧は、電圧LCcomより大きな電圧となり、図13(c)に示したように、対向電極108の電圧が電圧LCcomの状態では信号Sbの波高が大きくなる。
【0061】
また、表示パネル100が図12の(2)の特性のパネルの場合、時間が経過して液晶容量120に直流成分が印加されると、信号Sbの波高が最小となる最適な対向電極108の電圧は、電圧LCcomより小さな電圧となり、図13(a)に示したように、対向電極108の電圧が電圧LCcomの状態では信号Sbの波高が大きくなる。
【0062】
表示パネル100を駆動した場合、図13(b)の状態のままであれば焼き付きは発生しない。しかし、表示パネル100の特性には、ばらつきがあり、駆動を続けると図13(a)または図13(c)の状態となり、図13(a)または図13(c)の状態のままであると焼き付きが発生する。対向電極108の電圧を変更せずに焼き付きが発生しないようにするためには、信号Sbの波高が小さくなるように、即ち、正極性電圧の印加時と負極性電圧の印加時とで実効電圧の差が小さくなるようにすればよい。そこで本実施形態では、信号Sbの波高が予め定められた範囲内に収まるように表示パネル100が駆動される。以下、この動作について説明する。
【0063】
図15は、走査制御回路52が行う処理の流れを示したフローチャートである。まず走査制御回路52は、表示パネル100の駆動を開始するとスタートパルスDybの出力タイミングを指定するためにレジスターの値を「0」にする(ステップSA1)。走査制御回路52は、外部上位装置から垂直同期信号Vs、水平同期信号Hs及びクロック信号Clkが走査制御回路52に供給され、画像データVdがデータ信号生成回路54に供給されると、供給された各信号に基づいて表示パネル100を駆動する。
走査制御回路52は、表示パネル100を駆動する際に、選択信号SelによってスイッチSW1を制御し、第1プリチャージ信号生成回路61とスイッチSW2を接続する。これにより、プリチャージのための信号として第1プリチャージ信号が選択され(ステップSA2)、表示パネル100の駆動の際に画素110に印加されるプリチャージの電圧は、電圧Vp11または電圧Vp12となる。また、走査制御回路52は、レジスターに格納されている値が「0」であるため、スタートパルスDybをタイミングTで出力する。
【0064】
次に走査制御回路52は、予め定められた一定時間が経過したか否か判断する(ステップSA3)。走査制御回路52は、一定時間が経過していない場合(ステップSA3でNO)、一定時間が経過するのを待つ。ここで、表示パネル100が、レジスターの値を0にした場合に正極性電圧で保持された実効電圧が低くなり、負極性電圧で保持された実効電圧が高くなる表示パネル、つまり、図12の(2)の特性の表示パネルである場合、時間の経過が経過すると信号Sbの波高が増大し、図14(a)の実線の状態になる。
【0065】
走査制御回路52は、一定時間が経過したと判断すると(ステップSA3でYES)、選択信号SelによってスイッチSW1を制御し、第2プリチャージ信号生成回路62とスイッチSW2を接続する。これにより、プリチャージのための信号として第2プリチャージ信号が選択され(ステップSA4)、表示パネル100の駆動の際に画素110に印加されるプリチャージの電圧は、電圧Vp21または電圧Vp22となる。
【0066】
プリチャージの電圧を変更すると、信号Sbの波高を最小にするために必要な電圧LCcomの変化量が変化する。ここで、プリチャージの電圧を変更する前の表示パネル100の状態が、図14(a)において実線で示した状態、即ち、信号Sbの波高が予め定められた上限値であり、信号Sbの波高を最小にするには対向電極108の電圧を下げる必要がある場合、プリチャージの電圧を電圧Vp11,Vp12から電圧Vp21,Vp22にすると、信号Sbの波高が大きくなる。具体的には、図14(a)において実線で示した状態から点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高が予め定められた第1閾値となる。
【0067】
走査制御回路52は、ステップSA4を終了した後、信号Sbの波高を測定する測定期間となり、信号Sbをデジタル化した信号をA/D変換回路56から取得して信号Sbの波高を測定する(ステップSA5)。走査制御回路52は、ステップSA5が終了すると、測定期間を終了し、選択信号SelによってスイッチSW1を制御し、第1プリチャージ信号生成回路61とスイッチSW2を接続する。これにより、プリチャージのための信号として第1プリチャージ信号が選択され(ステップSA6)、表示パネル100の駆動の際に画素110に印加されるプリチャージの電圧は、電圧Vp11または電圧Vp12となる。
【0068】
次に走査制御回路52は、ステップSA5における測定結果に応じて前述のレジスターの値を設定する。具体的には、信号Sbの波高が予め定められた第1閾値以上である場合(ステップSA7でYES)、レジスターの値を第1設定値にする(ステップSA8)。レジスターに第1設定値が格納されると、正極性電圧の印加時間が短くなり、負極性電圧の印加時間が長くなる。これにより、画素110においては、負極性電圧で保持された実効電圧が高くなり、正極性電圧で保持された実効電圧が低くなるため、図13(a)の状態から図13(b)の状態へ変化していくこととなり、信号Sbの波高が減少していく。
【0069】
走査制御回路52は、ステップSA8の処理が終了すると処理の流れをステップSA3へ戻し、ステップSA3でYESと判断すると、ステップSA4でプリチャージの電圧を変更する。ここで、プリチャージの電圧を変更する前の表示パネル100の状態が、図14(b)において実線で示した状態、即ち、信号Sbの波高が最小値である場合、プリチャージの電圧を電圧Vp11,Vp12から電圧Vp21,Vp22にすると、信号Sbの波高が大きくなる。具体的には、図14(b)において実線で示した状態から点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高は、第1閾値と予め定められた第2閾値との間の値となる。なお、第1閾値と第2閾値の関係は、第1閾値>第2閾値となっている。
【0070】
この後、走査制御回路52は、ステップSA5で信号Sbの波高を測定し、ステップSA6でプリチャージの電圧を変更する。次に走査制御回路52は、ステップSA5における測定結果に応じて前述のレジスターの値を設定する。ここで、前述のとおり信号Sbの波高が第1閾値と第2閾値との間の値であると(ステップSA7でNO、ステップSA9でNO)、走査制御回路52は、レジスターの値を変更せずに処理の流れをステップSA3へ戻す。なお、ここでレジスターの値が第1設定値のままであると、図13(b)の状態から図13(c)の状態へ変化していくこととなり、時間の経過と共に信号Sbの波高が増大していく。
【0071】
走査制御回路52は、処理の流れをステップSA3へ戻し、ステップSA3でYESと判断すると、ステップSA4でプリチャージの電圧を変更する。ここで、プリチャージの電圧を変更する前の表示パネル100の状態が、図14(c)において実線で示した状態、即ち、信号Sbの波高が予め定められた上限値である場合、プリチャージの電圧を電圧Vp11,Vp12から電圧Vp21,Vp22にすると、信号Sbの波高が大きくなる。具体的には、図14(c)において実線で示した状態から図14(c)において点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高は第2閾値となる。
【0072】
この後、走査制御回路52は、ステップSA5で信号Sbの波高を測定し、ステップSA6でプリチャージの電圧を変更する。次に走査制御回路52は、ステップSA5における測定結果に応じて前述のレジスターの値を設定する。ここで、信号Sbの波高が第2閾値以下の値であると(ステップSA7でNO、ステップSA9でYES)、走査制御回路52は、レジスターに第2設定値を設定する(ステップSA10)。レジスターに第2設定値が格納されると、正極性電圧の印加時間が長くなり、負極性電圧の印加時間が短くなる。これにより、画素110においては、正極性電圧で保持された実効電圧値が高くなり、負極性電圧で保持された実効電圧が低くなるため、図13(c)の状態から図13(b)の状態へ変化していくこととなり、信号Sbの波高が減少していく。走査制御回路52は、ステップSA10の処理が終了すると処理の流れをステップSA3へ戻し、上述した処理を繰り返す。
【0073】
なお、表示パネル100が、図12の(1)の特性のパネル、つまり、レジスターの値を0にした場合に負極性電圧で保持された実効電圧が高くなり、正極性電圧で保持された実効電圧が低くなるパネルである場合、レジスターを0にして表示パネル100を駆動すると、時間の経過に伴って信号Sbの波高が増大し、図13(c)の状態になる。
ここでプリチャージの電圧を変更すると、図14(c)において実線で示した状態から点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高は第2閾値となる。走査制御回路52は、信号Sbの波高が第2閾値以下の値であると(ステップSA7でNO、ステップSA9でYES)、レジスターに第2設定値を設定する(ステップSA10)。レジスターに第2設定値が格納されると、正極性電圧の印加時間が長くなり、負極性電圧の印加時間が短くなる。これにより、画素110においては、正極性電圧で保持された実効電圧が高くなり、負極性電圧で保持された実効電圧が低くなるため、図13(c)の状態から図13(b)の状態へ変化していくこととなり、信号Sbの波高が減少していく。
【0074】
この後、時間が経過すると、図13(b)の状態になる。ここでプリチャージの電圧を変更すると、図14(b)において実線で示した状態から点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高は、第1閾値と第2閾値の間の値となる。走査制御回路52は、信号Sbの波高が第1閾値と第2閾値との間の値であると(ステップSA7でNO、ステップSA9でNO)、レジスターの値を変更せずに処理の流れをステップSA3へ戻す。
【0075】
そして、さらに時間が経過すると、図13(a)の状態になる。ここでプリチャージの電圧を変更すると、図14(a)において実線で示した状態から点線で示した状態に変化し、信号Sbの波高は第1閾値となる。走査制御回路52は、信号Sbの波高が予め定められた第1閾値以上である場合(ステップSA7でYES)、レジスターに第1設定値を設定する(ステップSA8)。レジスターに第1設定値が格納されると、正極性電圧の印加時間が短くなり、負極性電圧の印加時間が長くなる。これにより、画素110においては、負極性電圧で保持された実効電圧が高くなり、正極性電圧で保持された実効電圧が低くなるため、図13(a)の状態から図13(b)の状態へ変化していくこととなり、信号Sbの波高が減少していく。
【0076】
本実施形態によれば、液晶容量120に直流成分が印加されることにより正極性の電圧を印加した時と負極性の電圧を印加した時とで実効電圧に差が生じても、実効電圧の差が小さくなるように正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間が制御されるので、焼き付きの発生を抑えることができる。
【0077】
また、本実施形態においては、信号Sbの測定期間の前にプリチャージの信号が第2プリチャージ信号P2に変更される。プリチャージの信号を変更しない場合、信号SbとノイズとのSN比が大きくならず、正極性の電圧を印加した時と負極性の電圧を印加した時とで実効電圧に差が生じているのか判断が難しくなる場合が生じ得る。一方、本実施形態では、測定期間の前にプリチャージの信号を変更することにより、信号Sbの波高が増加するもののノイズは増加しないため、正極性の電圧を印加した時と負極性の電圧を印加した時とで実効電圧に差が生じているのか判断が容易となる。
また、本実施形態においては、第1プリチャージ信号P1が供給されている状態において、正極性電圧で保持された実効電圧が高い状態と、正極性電圧で保持された実効電圧が低い状態とで信号Sbの波高が同じであっても、測定期間に第2プリチャージ信号P2が供給されると、正極性電圧で保持された実効電圧が高い状態(図13の(a)の状態)と、正極性電圧で保持された実効電圧が低い状態(図13の(c)の状態)とで、信号Sbの波高が異なる。このため、プリチャージの電圧を変更することにより、正極性電圧で保持された実効電圧と負極性電圧で保持された実効電圧とでどちらの実効電圧が大きいのか判断するのが容易となり、実効電圧の差が小さくなるように制御するのが容易となる。
【0078】
[電子機器]
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を用いた電子機器の例について説明する。図16は、上述した電気光学装置1の表示パネル100をライトバルブとして用いた3板式プロジェクターの構成を示す平面図である。プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源を備えたランプユニット2102が設けられている。このプロジェクター2100において、ランプユニット2102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0079】
ここで、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した実施形態における表示パネル100と同様であり、外部上位装置(図示省略)から供給されるR、G、Bの各色に対応する画像データVdでそれぞれ駆動されるものである。ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、レンズユニット2114によって正転拡大投影されるので、スクリーン2120には、カラー画像が表示されることとなる。
【0080】
なお、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、ライトバルブ100Gにより形成される画像とは左右反転の関係にある。
【0081】
また、光センサー71R、71Gおよび71Bの構成は、上述した実施形態における光センサー71と同様である。なお、光センサー71Rは、Rの光に感度があるセンサーである。また、光センサー71Gは、Gの光に感度があるセンサーであり、光センサー71Bは、Bの光に感度があるセンサーである。光センサー71R、71Gおよび71Bは、ダイクロイックプリズム2112に配置されており、光センサー71Rは、ダイクロイックプリズム2112からのRの漏れ光を検出する。また、光センサー71Gは、ダイクロイックプリズム2112からのGの漏れ光を検出し、光センサー71Bは、ダイクロイックプリズム2112からのBの漏れ光を検出する。
光センサー71Rから出力される信号Saは、ライトバルブ100Rを具備した電気光学装置1が備えるコンデンサー72とA/D変換回路56へ供給される。また、光センサー71Gから出力される信号Saは、ライトバルブ100Gを具備した電気光学装置1が備えるコンデンサー72とA/D変換回路56へ供給され、光センサー71Bから出力される信号Saは、ライトバルブ100Bを具備した電気光学装置1が備えるコンデンサー72とA/D変換回路56へ供給される。
【0082】
また、電子機器としては、図16を参照して説明した他にも、リアプロジェクション型のテレビジョンや、直視型、例えば携帯電話や、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラのモニタ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種の電子機器に対して、本発明に係る電気光学装置が適用可能なのは言うまでもない。
【0083】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0084】
(変形例1)
上述した実施形態では、液晶容量120において保持される電圧の実効値がゼロ(またはゼロ近傍)に近ければ、白色を表示するノーマリーホワイトモードとしたが、液晶容量120において保持される電圧の実効値がゼロ(またはゼロ近傍)に近ければ黒色を表示するノーマリーブラックモードとしても良い。
【0085】
(変形例2)
上述した実施形態においては、有効表示期間Haにおいて書き込まれる正極性電圧の保持時間と負極性電圧の保持時間との比を変更することにより、正極性電圧で保持された実効電圧と正極性電圧で保持された実効電圧との比を変更し、信号Sbの波高が一定の範囲内に収まるようにしているが、信号Sbの波高を一定の範囲内に収める方法は、上述した実施形態の方法に限定されるものではない。
例えば、走査制御回路52は、表示パネル100の駆動を開始すると、階調が同じであれば正極性のデータ信号Vidと負極性のデータ信号Vidを基準電圧Vcを中心に対象の関係にする。また、走査制御回路52は、ステップSA8においては、正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間を変更する処理に替えて、正極性電圧と負極性電圧の電圧比を変更する。具体的には、走査制御回路52は、階調値が同じであれば、基準電圧Vcからのデータ信号Vidの振幅を正極性側を小さく、負極性側を大きくする。また、走査制御回路52は、ステップSA10においては、例えば階調値が同じであれば、基準電圧Vcからのデータ信号Vidの振幅を、正極性側を大きく、負極性側を小さくする。
この変形例においても、正極性電圧の実効電圧と負極性電圧の実効電圧との比を変更することができる。
【0086】
(変形例3)
上述した実施形態においては、信号Sbの測定の前に画像信号線148に供給するプリチャージの信号を第1プリチャージ信号P1から第2プリチャージ信号P2に変更すると、信号Sbの波高が大きくなるが、信号Sbの波高を大きくするのであれば信号Sbの測定前に画像信号線148に供給するプリチャージの信号は前述の第2プリチャージ信号P2に限定されるものではない。
例えば、画像信号線148に供給する信号を前述の第1プリチャージ信号P1から前述の第2プリチャージ信号P2に切り替えると、信号Sbの波高を最小にするためには対向電極108の電圧を下げる必要が生じるが、信号Sbの測定前に画像信号線148に供給するプリチャージの信号は、信号Sbの波高を最小にするために対向電極108の電圧を上げる必要が生じる信号であってもよい。なお、この変形例においては、ステップSA8ではレジスターの値を第2設定値に設定し、ステップSA10ではレジスターの値を第1設定値に設定する。
【0087】
(変形例4)
上述した実施形態においては、第1設定値と第2設定値は固定となっているが、第1設定値と第2設定値は固定値に限定されるものではない。例えば、駆動開始時においては第1設定値と第2設定値の絶対値を大きな値する。そして、第1設定値に1を加算する処理をステップSA8の後に追加し、第2設定値から1を減算する処理をステップSA10の後に追加するようにしてもよい。
この変形例によれば、信号Sbの波高が第1閾値以上となると、レジスターに第1設定値が設定されて負極性電圧の印加時間が正極性電圧の印加時間より長くなる。また、信号Sbの波高が第1閾値以上となる毎に第1設定値が0に近づく。即ち、信号Sbの波高が第1閾値以上となる毎に、正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間との差を小さくする。
また、信号Sbの波高が第2閾値以下となると、レジスターに第2設定値が設定されて正極性電圧の印加時間が負極性電圧の印加時間より長くなる。また、信号Sbの波高が第2閾値以下となる毎に、第2設定値が0に近づく。即ち、信号Sbの波高が第2閾値以下となる毎に、正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間との差を小さくする。
これにより、図12において横軸をX軸、縦軸をY軸とした場合、レジスターの値を図12のグラフのX切片の値に近づけることができ、信号Sbの波高を抑えることができる。
【0088】
(変形例5)
上述した実施形態においては、信号Sbの波高を測定しているが、信号Sbの振幅を測定してもよい。なお、信号Sbの振幅を測定する構成の場合、第1閾値と第2閾値は上述した実施形態の値より小さな値となる。
【0089】
(変形例6)
また、本発明においては、信号Sbの波高に替えてフリッカー量を測定するようにしてもよい。なお、フリッカー量は、フリッカー量=20log(信号Sbの波高値/信号Sbの最大値と最小値の平均値)である。
この変形例の場合、走査制御回路52は、ステップSA7においては、フリッカー量が予め定められた第1のフリッカー量以上であるか判断し、フリッカー量が予め定められた第1のフリッカー量以上であれば、レジスターの値を第1設定値に設定する。なお、第1のフリッカー量は、図14(a)の点線の状態の時のフリッカー量である。
また、走査制御回路52は、ステップSA9においては、フリッカー量が予め定められた第2のフリッカー量以下であるか判断し、フリッカー量が予め定められた第2のフリッカー量以下であれば、レジスターの値を第2設定値に設定する。なお、第2のフリッカー量は、図14(c)の点線の状態の時のフリッカー量である。
【0090】
(変形例7)
上述した実施形態においては、ステップSA4でスイッチSW1の接続を切り替えて第2プリチャージ信号P2を全ての画素110に供給しているが、この構成に限定されるものではない。走査制御回路52は、ステップSA5で信号Sbの波高を測定する前に、特定の行の画素110についてのみ第2プリチャージ信号P2を供給するようにしてもよい。
例えば、信号Sbの波高の測定に影響が大きい画素が1行目から240行目までの画素110である場合、走査制御回路52は、ステップSA5の処理の前に1行目から240行目までの画素110については第2プリチャージ信号P2を供給し、241行目から480行目の画素110については第1プリチャージ信号P1を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…電気光学装置、50…制御回路、52…走査制御回路、54…データ信号生成回路、56…A/D変換回路、60…プリチャージ回路、61…第1プリチャージ信号生成回路、62…第1プリチャージ信号生成回路、70…検出回路、71…光センサー、72…コンデンサー、100…表示パネル、100a…表示領域、105…液晶、108…対向電極、110…画素、112…走査線、114…データ線、116…TFT、118…画素電極、120…液晶容量、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、142…サンプリング信号出力回路、144…OR回路、146…TFT、148…画像信号線、2100…プロジェクター、2102…ランプユニット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイックプリズム、2114…レンズユニット、2120…スクリーン、2121…リレーレンズ系、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ、P1…第1プリチャージ信号、P2…第2プリチャージ信号、SW1…スイッチ、SW2…スイッチ、Dx…スタートパルス、Clx…クロック信号、Dy,Dya,Dyb…スタートパルス、Cly…クロック信号、Nrg…プリチャージ期間指定信号、Pol…極性指定信号、Sel…選択信号、Vd…画像データ、Vda…データ信号、Vid…データ信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数行の走査線と複数列のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、各々は、前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号の電圧に応じた階調となる画素を備えた電気光学装置であって、
前記複数行の走査線を所定の順番で選択する走査線駆動回路と、
前記画素の階調に応じた電圧であって基準電位を基準として高位である正極性電圧、または前記画素の階調に応じた電圧であって前記基準電位を基準として低位である負極性電圧を前記データ線に供給するデータ線駆動回路と、
前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に前記データ線に第1プリチャージ信号を供給し、前記画素の明るさを測定する測定期間においては、前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に第2プリチャージ信号を供給するプリチャージ回路と、
前記画素の明るさを検出し、検出した明るさを表す信号を出力する検出回路と、
前記測定期間に前記検出回路から出力された信号に基づいて前記正極性電圧の実効電圧と前記負極性電圧の実効電圧との比を変更する実効電圧変更回路と
を備える電気光学装置。
【請求項2】
前記実効電圧変更回路は、前記検出回路から出力された信号の振幅または波高に基づいて、前記正極性電圧の実効電圧と前記負極性電圧の実効電圧との比を変更すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第2プリチャージ信号で画素がプリチャージされた場合、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高は、前記第1プリチャージ信号で画素がプリチャージされた場合より大きくなること
を特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1プリチャージ信号は、前記正極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より低い第1電圧となり、前記負極性電圧が前記データ線に供給される前には前記第1電圧より低い第2電圧となり、
前記第2プリチャージ信号は、前記正極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より高い第3電圧となり、前記負極性電圧が前記データ線に供給される前には前記基準電圧より低い第4電圧となること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記実効電圧変更回路は、前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記実効電圧変更回路は、
前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が第1閾値以上となると前記負極性電圧の印加時間を前記正極性電圧の印加時間より長くし、前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第1閾値より小さい第2閾値以下となると前記正極性電圧の印加時間を前記負極性電圧の印加時間より長くし、
前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第1閾値以上となる毎に前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間との差を小さくし、
前記検出回路から出力される信号の振幅または波高が前記第2閾値以下となる毎に前記正極性電圧の印加時間と前記負極性電圧の印加時間との差を小さくすること
を特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記実効電圧変更回路は、前記正極性電圧と前記負極性電圧の電圧比を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項8】
複数行の走査線と複数列のデータ線との交差に対応してそれぞれ設けられ、各々は、前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号の電圧に応じた階調となる画素を備えた電気光学装置において、
前記複数行の走査線を所定の順番で選択し、
前記画素の階調に応じた電圧であって基準電位を基準として高位である正極性電圧、または前記画素の階調に応じた電圧であって前記基準電位を基準として低位である負極性電圧を前記データ線に供給し、
前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に前記データ線に第1プリチャージ信号を供給し、前記画素の明るさを測定する測定期間においては、前記データ線に前記正極性電圧または前記負極性電圧が供給される前に第2プリチャージ信号を供給し、
前記画素の明るさを検出し、検出した明るさを表す信号を出力し、
画素の明るさを表す前記信号に基づいて前記正極性電圧の実効電圧と前記負極性電圧の実効電圧との比を変更すること
を特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−64823(P2013−64823A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202804(P2011−202804)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】