説明

電気光学装置および電子機器

【課題】電気光学装置において、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを十分に低減する。
【解決手段】電気光学素子Eの発光特性または光の透過特性は、基板11に平行なX方向にて整列された複数のトランジスタのいずれかに駆動されて変化する。各トランジスタは、互いに電気的に接続された、チャンネル幅の方向が互いに一致する複数のサブトランジスタを有する。チャンネル幅の方向はX方向に対して傾いている。各トランジスタのサブトランジスタのうちの二つは、互いに、X方向にも、基板11に平行でX方向に垂直なY方向にもずれている。第1トランジスタ(例えば駆動トランジスタT1)の一つのサブトランジスタは、X方向にて第2トランジスタ(例えば駆動トランジスタT2)の一つのサブトランジスタと整列し、Y方向にて第2トランジスタの他の一つのサブトランジスタと整列している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気光学素子間での階調のバラツキを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
EL(Electro Luminescent)素子等の、流れる電流に応じた階調となる電流駆動型の電気光学素子が配列された電気光学装置がある。この種の電気光学装置は、電気光学素子に電流を供給する駆動トランジスタを電気光学素子毎に備える。一方、複数の薄膜トランジスタを形成する方法として、レーザアニールがある。レーザアニールは、基板上の非結晶の半導体膜を線状のレーザ光によって基板に平行な方向Aに走査して結晶(多結晶)化させる方法である。
【0003】
レーザアニールでは、レーザ光の強度および走査方向によって、半導体膜の結晶状態にバラツキが生じてしまう。したがって、上記の電気光学装置の駆動トランジスタとなる薄膜トランジスタをレーザアニールにより形成する場合、何も対策を講じないと、半導体膜の結晶状態のバラツキが電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキに直結し、電気光学素子間の階調のバラツキが大きくなってしまう。そこで、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減するための技術が提案されている。
【0004】
第1の技術は、半導体膜の結晶状態のバラツキが薄膜トランジスタの特性のバラツキに直結しないようにするための技術であり、以下に述べる背景に基づいている。レーザアニールにおいては結晶化が不良な領域(以降、「結晶化不良領域」と称する)が発生する虞がある。そして、結晶化不良領域は、方向Aまたは方向Bに対して平行に延在することになる。よって、薄膜トランジスタのチャンネル幅の方向が方向Aまたは方向Bに平行の場合には、当該トランジスタの特性が著しく悪化する虞がある。そこで、第1の技術では、薄膜トランジスタのチャンネル幅の方向が基板に平行で方向Aに垂直な方向Bに対して傾くようにしている(特許文献1および2参照)。
【0005】
第2の技術は、薄膜トランジスタの特性のバラツキが電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキに直結しないようにするための技術であり、以下に述べる背景に基づいている。レーザアニールにおいては、走査の期間においてレーザ光の強度を一定に保つべきであるが、現実には困難である。このため、方向Aにおいて、半導体膜の結晶状態にバラツキが生じ、薄膜トランジスタの特性にバラツキが生じてしまう。そこで、第2の技術では、方向Aに並ぶ複数の薄膜トランジスタを並列接続して一つの駆動トランジスタを構成するようにしている(特許文献3参照)。以降、これら複数のトランジスタの各々をサブトランジスタと称する。
【特許文献1】特開平11−87670号公報
【特許文献2】特開平11−87720号公報
【特許文献3】特開2000−221903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキのうち、第1の技術によって低減されるのは、結晶化不良領域に基づくものに限られる。しかし、レーザ光の強度は結晶化が良好な領域においてもばらつく。そして、このバラツキは、半導体膜の結晶状態のバラツキを招き、薄膜トランジスタの特性のバラツキを招く。つまり、第1の技術では、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを十分に低減することはできない。
【0007】
また、電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキのうち、第2の技術によって低減されるのは、方向Aにおけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づくものに限られる。しかし、現実には、レーザ光の強度には、方向Bにおいてもバラツキがある。そして、このバラツキは、方向Bにおけるサブトランジスタの特性のバラツキを招き、方向Bにおける電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキにつながる。つまり、第2の技術では、サブトランジスタの特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを十分に低減することができない。
【0008】
また、第2の技術では、サブトランジスタのチャンネル幅の方向が方向Aまたは方向Bに平行となる。したがって、結晶化不良領域に基づくサブトランジスタの特性のバラツキを低減することができない。この意味でも、第2の技術では、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを十分に低減することはできない。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを十分に低減することができる電気光学装置および電子機器を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板と、前記基板上に配置され、前記基板に平行な第1方向にて整列された複数のトランジスタと、前記複数のトランジスタのいずれかに駆動されて発光特性または光の透過特性が変化する電気光学素子とを備え、前記複数のトランジスタの各々は、互いに電気的に接続された複数のサブトランジスタを有し、前記複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は、互いに一致し、前記第1方向に対して傾いており、各トランジスタの前記複数のサブトランジスタのうちの二つは、互いに、前記第1方向にも、前記基板に平行で前記第1方向に垂直な第2方向にもずれており、前記複数のトランジスタのうちの第1トランジスタの一つのサブトランジスタは、前記第1方向にて前記複数のトランジスタのうちの第2トランジスタの一つのサブトランジスタと整列し、前記第2方向にて前記第2トランジスタの他の一つのサブトランジスタと整列している、ことを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0011】
「電気光学素子」は、与えられた電気エネルギにより発光特性または光の透過特性が変化する素子である。発光特性が変化する電気光学素子としては、OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子や無機EL(Electro Luminescent)素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子など様々な発光素子を例示することができる。光の透過特性が変化する素子としては、液晶の画素や電気泳動ディスプレイの画素など様々な、電気的エネルギにより光の透過率が変化するライトバルブ素子を例示することができる。また、「サブトランジスタ」は上記の複数のトランジスタの各々を構成するトランジスタである。また、方向Cが方向Dに対して「傾いている」とは、方向Cが方向Dに対して垂直でも平行でもないことを意味している。
【0012】
この電気光学装置では、複数のトランジスタの各々において、互いに電気的に接続されている複数のサブトランジスタのうちの二つが互いに第1方向にも第2方向にもずれている。したがって、サブトランジスタ間の特性(閾値電圧や移動度等)のバラツキが第1方向および第2方向に生じている場合であっても、このバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを低減することができる。なお、上記の場合としては、例えば、サブトランジスタがレーザアニールにより形成される場合が挙げられる。この場合、サブトランジスタの一部をなす半導体膜の結晶状態が第1方向および第2方向にばらつくため、第1方向および第2方向においてサブトランジスタ間の特性のバラツキが生じる。
また、サブトランジスタのチャンネル幅の方向(例えば図6のW方向)は第1方向に対して傾いているから、複数のサブトランジスタの形成の際に第1方向または第2方向に延びる結晶化不良領域が発生する場合であっても、結晶化不良領域に基づく電気光学素子間の階調のバラツキを低減することができる。なお、上記の場合としては、例えば、サブトランジスタが、第1方向に延びる線状のレーザ光により半導体膜を第2方向へ走査するレーザアニールにより形成される場合が挙げられる。この場合、サブトランジスタの一部をなす半導体膜には第1方向または第2方向に延びる結晶化不良領域が発生する虞がある。
よって、この電気光学装置によれば、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを十分に低減することができる。
また、この電気光学装置によれば、複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は互いに一致しているから、複数のサブトランジスタの形成作業を複雑化させずに済む。例えば、複数のサブトランジスタを、半導体膜を線状のレーザ光で走査するレーザアニールにより形成する場合、走査の回数は1回で足りる。
【0013】
各トランジスタにおいて互いに第1方向および第2方向にずれているサブトランジスタの組は一つに限らない。例えば、各トランジスタおいて全てのサブトランジスタが互いに第1方向および第2方向にずれているようにしてもよい。この場合には、各トランジスタを構成するサブトランジスタの数が多いほど、バラツキの低減効果が高くなる。一つのトランジスタを構成する全てのサブトランジスタが互いに第1方向および第2方向にずれるサブトランジスタの配置パターンとしては、例えば、トランジスタを構成する全てのサブトランジスタが基板に平行で基板を斜めに横切る直線上に並ぶ配置パターンが挙げられる。基板全体を眺めると、この配置パターンが第1方向に繰り返し現れることになる。
【0014】
通常、サブトランジスタが形成される基板の面の形状は長方形である。したがって、サブトランジスタを形成可能な回路領域の形状も長方形となるのが普通である。しかし、上述の配置パターンでは、サブトランジスタは全体として長方形でない平行四辺形に配置されることになる。つまり、回路領域(例えば図6の回路領域CR)の隅に、直角三角形のデッドスペース(有効に利用することができない領域)が生じてしまう。
【0015】
上記の影響を低減しつつ、デッドスペースを削減するために、上記の電気光学装置において、前記第1トランジスタのサブトランジスタと前記第2トランジスタのサブトランジスタは、前記第2方向に延在する二つの列内に千鳥状に配置されてもよいし、前記第2方向に延在する二つの列内にあって基板に垂直な方向から見て線対称に配置されてもよい。これらの態様の各々によれば、デッドスペースを削減することができる。また狭ピッチでトランジスタを配置することができる。デッドスペースの削減効果は、トランジスタの総数が偶数の場合に最大となる。また、これらの態様の各々によれば、第1トランジスタのサブトランジスタと第2トランジスタのサブトランジスタとが1対1で対応して隣接するから、第1トランジスタのゲートと第2トランジスタのゲートを直結したカレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成とすることができる。具体的には、前記第1トランジスタのゲートと前記第2トランジスタのゲートとは電気的に接続されており、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのソースには共通の電源電位が供給され、前記第2トランジスタのドレインは前記電気光学素子に電気的に接続され、前記第1トランジスタのゲートとドレインとを電気的に接続した状態で、前記第1トランジスタのソースからドレインに階調に応じたデータ電流を供給する供給手段と、を備える構成を採ることができる。上記の供給手段としては、図18のスイッチS21およびS22を例示することができる。なお、この構成に、前記第2トランジスタのゲートの電位を保持する保持手段を追加してもよい。保持手段としては、図18の容量素子(コンデンサ)Cを例示することができる。
【0016】
しかし、上記の各態様ではデッドスペースを削減することができるものの、第1トランジスタにおいてサブトランジスタ同士を接続する配線と第2トランジスタにおいてサブトランジスタ同士を接続する配線とを交差させねばならないから、構造が複雑になるという問題がある。
この問題を解決するために、上記の電気光学装置において、前記複数のサブトランジスタは三つ以上のサブトランジスタであり、前記第2方向の特定範囲では前記第2方向に進むにつれて前記第1方向にずれ、前記特定範囲外では前記第2方向に進むにつれて前記第1方向の逆方向にずれて配置されている、ようにしてもよい。この態様によれば、サブトランジスタ同士を接続する配線を交差させない構造、すなわち簡素な構造を採ることができる。また、この態様によれば、第1方向に平行な方向におけるズレの向きが特定範囲の内外で逆転する。したがって、全く逆転しない場合に比較して、デッドスペースを削減することができる。結果として、狭ピッチでトランジスタを配置することができる。
また、上記の問題を解決するために、前記複数のサブトランジスタには、第1サブトランジスタ、前記第1サブトランジスタから前記第2方向にずれている第2サブトランジスタ、および前記第2サブトランジスタから前記第2方向にずれている第3サブトランジスタが含まれ、前記複数のトランジスタの各々では、前記第2サブトランジスタは前記第1サブトランジスタおよび前記第3サブトランジスタから前記第1方向または前記第1方向の逆方向にずれて配置されている、ようにしてもよい。この態様によれば、サブトランジスタ同士を接続する配線を交差させない構造、すなわち簡素な構造を採ることができる。また、この態様によれば、第1方向に平行な方向におけるズレの向きが、第2サブトランジスタを境に逆転する。したがって、全く逆転しない場合に比較して、デッドスペースを削減することができる。結果として、狭ピッチでトランジスタを配置することができる。
【0017】
また、本発明は、基板と、前記基板上に配置され、前記基板に平行な第1方向にて整列された複数のトランジスタと、前記複数のトランジスタのいずれかに駆動されて発光特性または光の透過特性が変化する電気光学素子とを備え、前記複数のトランジスタの各々は、前記第1方向に延在する基板上の領域内に二つのサブトランジスタ群を有し、前記複数のトランジスタの各々の二つのサブトランジスタ群は、前記第1方向に並べて配置され、前記領域の側端部で互いに電気的に接続され、前記二つのサブトランジスタ群の各々は、互いに電気的に接続された複数のサブトランジスタを含み、前記複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は、互いに一致し、前記第1方向に対して傾いており、前記二つのサブトランジスタ群の各々に含まれる二つのサブトランジスタは、互いに、前記第1方向にも、前記基板に平行で前記第1方向に垂直な第2方向にもずれており、前記複数のトランジスタのうちの第1トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる一つのサブトランジスタは、前記第1方向にて前記複数のトランジスタのうちの第2トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる一つのサブトランジスタと整列し、前記第2方向にて前記第2トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる他の一つのサブトランジスタと整列している、ことを特徴とする電気光学装置を提供する。
【0018】
この電気光学装置では、各サブトランジスタ群において、互いに電気的に接続されている複数のサブトランジスタのうちの二つが互いに第1方向にも第2方向にもずれている。したがって、サブトランジスタ間の特性のバラツキが第1方向および第2方向に生じている場合に、仮に一つのトランジスタを一つのサブトランジスタ群から構成したとしても、第1方向および第2方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを低減することができる。さらに、この電気光学装置では、一つのトランジスタが二つのトランジスタ群から構成されている。よって、バラツキの低減効果がより大きくなる。
また、サブトランジスタのチャンネル幅の方向は第1方向に対して傾いているから、複数のサブトランジスタの形成の際に第1方向または第2方向に延びる結晶化不良領域が発生する場合であっても、結晶化不良領域に基づく電気光学素子間の階調のバラツキを低減することができる。
よって、この電気光学装置によれば、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを十分に低減することができる。
また、この電気光学装置によれば、複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は互いに一致しているから、複数のサブトランジスタの形成作業を複雑化させずに済む。
また、この電気光学装置では、各トランジスタにおいて、二つのサブトランジスタ群が互いに電気的に接続される位置は、サブトランジスタ群が形成される、第1方向に延在する領域の側端部である。したがって、上記の位置が上記領域の中央部付近となる態様に比較して、サブトンジスタを形成可能な領域の利用効率を高くすることができる。
【0019】
また、本発明は、上記の各態様の電気光学装置を備える電子機器を提供する。この電子機器によれば、備える電気光学装置により得られる上記の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0021】
<電気光学装置の外観>
図1は、本発明の配置パターンに係る電気光学装置10を光ヘッド(露光装置)として用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、画像形成装置は電気光学装置10と集光性レンズアレイ15と感光体ドラム110とを含む。電気光学装置10は、ガラスやプラスチック等の透明な材料から形成された基板11を有する。基板11上には主走査方向に延在する単位回路領域GRが存在する。単位回路領域GRには、n個の電気光学素子が主走査方向に直線状に配列されている。詳しくは後述するが、電気光学素子からは光が出射する。この出射は、用紙などの記録材に印刷されるべき画像の態様に応じて選択的に行われる。これらの光は、基板11を透過して集光性レンズアレイ15へ進む。なお、電気光学装置10を変形し、光が基板11の反対側から出射するようにしてもよい。感光体ドラム110は、主走査方向に延在する回転軸に支持され、外周面を電気光学装置10に対向させた状態で副走査方向(記録材が搬送される方向)に回転する。
【0022】
集光性レンズアレイ15は電気光学装置10と感光体ドラム110との間隙に配置される。この集光性レンズアレイ15は、各々の光軸を電気光学装置10に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。このような集光性レンズアレイ15としては、例えば日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)がある(セルフォック/SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。
【0023】
電気光学装置10の各電気光学素子からの出射光は集光性レンズアレイ15の各屈折率分布型レンズを透過したうえで感光体ドラム110の表面に到達する。この露光によって感光体ドラム110の表面には所望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0024】
<電気光学装置の電気的構成>
図2は電気光学装置10の一部の電気的構成を示す回路図であり、図3は電気光学装置10に利用される各信号の波形を示すタイミングチャートである。図2に示すように、単位回路領域GRには、各々が電気光学素子Eを含む単位回路G1〜Gnが配列されている。隣り合う単位回路は、画像形成装置に要求される解像度で潜像を形成することができるように近接して配置されている。電気光学素子Eは、流れる電流に応じた輝度で発光して当該電流に応じた階調となる電流駆動型の発光素子であり、典型的には、有機EL材料からなる発光層を陽極と陰極との間に介在させたOLED素子である。OLED素子以外の電流駆動型の発光素子としては、例えば無機EL素子がある。なお、電気光学素子Eとして、与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する任意の発光素子や、与えられた電気エネルギにより光の透過特性が変化する任意のライトバルブ素子を採用することも可能である。
【0025】
発光回路G1〜Gnは、給電線L1、接地線L2およびデータ線L3に共通して接続されている。給電線L1には電源電位VDDが供給され、接地線L2には接地電位Gndが供給され、データ線L3には、n個の発光素子について順に階調を指定するデータ信号VDATAが供給されている。選択信号SEL1〜SELnは、発光回路G1〜Gnを順に排他的に選択するものであり、データ信号VDATAは階調を電位で表す階調データを連ねてなる信号であり、データ線L3の電位は、図3に示すように、選択中の発光回路に指定すべき階調に応じたものとなっている。本実施形態において、階調データVi(1≦i≦n)は、第i番目の発光素子Eに対して点灯(高階調)および消灯(低階調)の何れかを指定する1ビットのデジタルデータである。例えば、発光回路Giが選択中であれば、データ線L3の電位は発光回路Giに指定すべき階調に応じた電位(以降、「電位Vi」と称する)となっており、発光回路Giには電位Viがデータ線L3より供給され、発光回路Giにより保持される。したがって、第i番目の発光回路Giは、選択されてから次に選択されるまでの期間において、階調データViを保持する。また、選択されてから次に選択されるまでの期間の長さにより、発光回路の階調が制御されており、所謂PWM(Pulse Width Modulation)方式となっている。例えば、ある発光回路Giが選択されてから次に選択されるまでの期間としては、長さが1、2、4、…、2のm+1通りの期間が用意されており、発光回路Giの階調は、発光回路Giが選択されてから次に選択されるまでの期間の長さと当該期間において発光回路Giに保持される階調データ(点灯/消灯)の電位Viにより制御される。
【0026】
図2に示すように、単位回路G1〜Gnの各々において、給電線L1(電源電位VDD)から接地線L2(接地電位Gnd)に至る経路には、pチャネル型の駆動トランジスタTdrと電気光学素子Eが直列に介挿される。駆動トランジスタTdrは、ソースとゲートの間の電圧Vgsに応じた駆動電流を生成するための手段であり、そのソースが給電線L1に接続されるとともにドレインが電気光学素子Eの陽極に接続される。上記の電圧Vgsは容量素子Cにより保持される。駆動トランジスタTdrのゲートには、スイッチS1を介してデータ線L3が接続されている。なお、電気光学素子Eの陰極は接地線L2に接続される。
【0027】
次に、電気光学装置10の動作について、単位回路G1を例に挙げて説明する。単位回路G1が選択されて選択信号SEL1のレベルがアクティブとなると、単位回路G1のスイッチS1がオン状態となり、単位回路G1の駆動トランジスタTdrのゲートとデータ線L3とが導通する。したがって、データ線L3の電位が単位回路G1の駆動トランジスタTdrのゲートに供給される。このとき、データ線L3の電位は電位V1であるから、単位回路G1の駆動トランジスタTdrのゲートの電位は電位V1となる。よって、単位回路G1の駆動トランジスタTdrは、電源電位VDDと電位V1との電位差(電圧Vgs)に応じた駆動電流を生成してドレインから出力する。そして、この駆動電流により単位回路G1の電気光学素子Eが駆動される。なお、単位回路G1が非選択となって選択信号SEL1のレベルが非アクティブとなると、単位回路G1のスイッチS1がオフ状態となるが、上記の電位差は容量素子Cにより保持されるから、上記の駆動電流のレベルは変わらない。他の単位回路の動作も、これと同様である。
【0028】
各単位回路の電気光学素子Eの階調は、当該単位回路の駆動トランジスタTdrの電圧Vgsのみならず、当該駆動トランジスタTdrの特性にも依存する。したがって、電気光学素子間の階調のバラツキを抑制するためには、単位回路間での駆動トランジスタTdrの特性のバラツキを抑制する必要がある。一方、OLED素子の駆動トランジスタとしては薄膜トランジスタが好適であるため、本実施の形態では、レーザアニールによって形成された薄膜トランジスタを用いて駆動トランジスタTdrを構成している。そこで、本実施の形態では、単位回路間での駆動トランジスタTdrの特性のバラツキを抑制するために、レーザアニールの採用を前提とした第1および第2のアプローチを採っている。なお、このレーザアニールでは、基板11上の半導体膜が基板11に平行なX方向(第1方向)に延びる線状のレーザ光によって基板11に平行でX方向に垂直なY方向(第2方向)に走査される。走査用のレーザとしては、エキシマレーザなどの固体レーザや、YAGレーザ、YVO4レーザなどの固体レーザなどが用いられる。
【0029】
第1のアプローチは、半導体膜の結晶状態のバラツキが薄膜トランジスタの特性のバラツキに直結しないようにするアプローチである。具体的には、薄膜トランジスタの形成の際に、当該薄膜トランジスタのチャンネル幅の方向(以降、「W方向」と称する)がX方向に対して傾くように当該薄膜トランジスタのチャンネル領域を形成する。この形成は、ゲート電極をW方向に沿って配置することにより行われる。このアプローチを採ったことにより、レーザアニールにおいてレーザ光の強度に大きなバラツキが生じて半導体膜に結晶化不良領域が生じても、結晶化不良領域が延在する方向(X方向またはY方向)とW方向とが一致しないから、各薄膜トランジスタにおいて、チャンネル領域の全域が結晶化不良領域内に位置する可能性が低くなる。つまり、特性が著しく悪い薄膜トランジスタが形成される可能性が低くなる。
【0030】
第2のアプローチは、薄膜トランジスタの特性のバラツキが電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキに直結しないようにするアプローチである。具体的には、複数の薄膜トランジスタを形成し、各駆動トランジスタTdrを複数の薄膜トランジスタから構成する。以降、これら複数の薄膜トランジスタの各々を「サブトランジスタ」と称する。このアプローチを採ったことにより、薄膜トランジスタ、すなわちサブトランジスタの特性のバラツキが電気光学素子間の階調のバラツキに与える影響が小さくなる。ただし、レーザアニールの採用を前提とする本実施の形態においては、これだけの対処では第2のアプローチとして不十分である。その理由と更なる対処について次に述べる。
【0031】
各駆動トランジスタTdrを複数の薄膜トランジスタから構成する場合、図4に示すように、X方向およびY方向に整列したサブトランジスタがレーザアニールによって形成される。図5に示すように、レーザアニールでは、レーザ光の強度がX方向およびY方向においてばらつく。これは、X方向およびY方向における半導体膜の結晶状態のバラツキ、すなわちX方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキを招く。したがって、例えば、Y方向に整列している複数のサブトランジスタにより駆動トランジスタTdrを構成しても、X方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを低減することはできない。そこで、本実施の形態では、互いにX方向およびY方向にずれている二つのサブトランジスタを含むサブトランジスタから駆動トランジスタTdrを構成するようにしている。換言すれば、駆動トランジスタを構成する複数のサブトランジスタの少なくとも二つが、X方向の軸およびY方向の軸で定まる座標平面において斜めに並ぶように、駆動トランジスタを構成している。以上が第2のアプローチである。
【0032】
第2のアプローチによる駆動トランジスタの構成の仕方、すなわちサブトランジスタの配置パターンは多様である。以降、各配置パターンについて順に説明する。なお、配置パターンに依ることなく、電気光学装置10は第1のアプローチを採っている。したがって、電気光学装置10は、以下に述べる配置パターンのいずれを採っても、結晶化不良領域に基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。
【0033】
<第1の配置パターン>
図6は第1の配置パターンを示す図である。この配置パターンでは、複数の駆動トランジスタの各々が三つのサブトランジスタを有する。例えば、単位回路G1の駆動トランジスタT1はサブトランジスタT1a〜T1c、単位回路G2の駆動トランジスタT2はサブトランジスタT2a〜T2c、単位回路G3の駆動トランジスタT3はサブトランジスタT3a〜T3cを有する。
【0034】
全てのサブトランジスタは回路領域CRに形成されている。回路領域CRは単位回路領域GR内の領域であり、全ての電気光学素子Eが形成される領域の外側に確保されている。また、回路領域CRは、電気光学素子Eが形成される層と基板11との間に、基板11に垂直な方向から見ていずれの電気光学素子Eにも重ならないように確保されている。したがって、電気光学素子Eから発して基板11から出射されるべき光がサブトランジスタによって遮られることはない。このことは、後述する各種配置パターンにおいても同様である。
【0035】
図7は、駆動トランジスタT1の構成例を示す図である。この構成例では、駆動トランジスタT1は、サブトランジスタT1a〜T1cを並列接続して構成される。具体的には、サブトランジスタT1aとサブトランジスタT1b間では、ドレイン同士が配線ddにより、ソース同士が配線ssにより電気的に接続され、サブトランジスタT1bとサブトランジスタT1c間では、ドレイン同士が配線dd2により、ソース同士が配線ss2により電気的に接続され、サブトランジスタT1a〜T1cに共通のゲート電極Gaが設けられている。そして、サブトランジスタT1cのドレインが電気光学素子E1の陽極に接続され、サブトランジスタT1a〜T1cのソースに電源電位VDDが供給される。よって、駆動トランジスタT1の特性は、サブトランジスタT1a〜T1cの特性を平均化したものとなる。他の駆動トランジスタの構成も、駆動トランジスタT1と同様である。なお、上記の配線が互いに隣接する駆動トランジスタ間で接するのを避けるために、或る駆動トランジスタにおける配線は、隣の駆動トランジスタにおける配線が形成される層とは別の層に形成される。
【0036】
図8は、駆動トランジスタT1の別の構成例を示す図である。この構成例では、駆動トランジスタT1は、サブトランジスタT1a〜T1cを直列接続して構成される。具体的には、サブトランジスタT1aのドレインとサブトランジスタT1b間のソースとが配線ds1により、サブトランジスタT1bのドレインとサブトランジスタT1cのソースとが配線ds2により電気的に接続され、サブトランジスタT1a〜T1cに共通のゲート電極Gaが設けられている。そして、サブトランジスタT1cのドレインが電気光学素子E1の陽極に接続され、サブトランジスタT1aのソースに電源電位VDDが供給される。よって、駆動トランジスタT1の特性は、サブトランジスタT1a〜T1cの特性を平均化したものとなる。他の駆動トランジスタの構成も、駆動トランジスタT1と同様である。
【0037】
図6に示すように、全てのサブトランジスタの各々は、X方向に延在する列とY方向に延在する列とが交差する位置に設けられている。そして、各駆動トランジスタについて、当該駆動トランジスタを構成する全てのサブトランジスタは、互いにX方向にもY方向にもずれるパターンで配置されている。また、サブトランジスタの配置パターンは全ての駆動トランジスタに共通であり、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタの各々は、当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタを構成する一つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに、当該隣の駆動トランジスタを構成する別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列している。例えば、サブトランジスタT1bは、サブトランジスタT2bとX方向にて整列するとともにサブトランジスタT2aとY方向にて整列しており、サブトランジスタT1cは、サブトランジスタT2cとX方向にて整列するとともにサブトランジスタT2bとY方向にて整列している。
【0038】
前述したように、各駆動トランジスタの特性は当該駆動トランジスタを構成する三つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなるから、駆動トランジスタの特性(閾値電圧や移動度等)のバラツキは、サブトランジスタの特性のバラツキに比較して小さくなる。一方、前述したように、全てのサブトランジスタはレーザアニールにより形成されるから、サブトランジスタの特性のバラツキは、X方向にもY方向にも生じる。しかし、各駆動トランジスタを構成する三つのサブトランジスタは互いにX方向にもY方向にもずれているから、X方向においても、Y方向においても、サブトランジスタの特性のバラツキに比較して駆動トランジスタの特性のバラツキが大幅に小さくなる。よって、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを大幅に低減することができる。なお、この配置パターンを変形し、各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数を2としてもよいし、4以上としてもよい。バラツキの低減効果は当該数が2の場合でも得られ、当該数が増えるにつれて大きくなる。
【0039】
第1の配置パターンでは、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタのうち、当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタを構成する一つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに当該隣の駆動トランジスタを構成する別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列しているサブトランジスタの数が2となるが、これを変形し、図9に示すように、当該数が1となるようにしてもよい。図9に示す配置パターンでは、各駆動トランジスタにおいて隣り合うサブトランジスタ間のX方向におけるズレ量よりも、隣り合う駆動トランジスタ間のX方向におけるズレ量の方が大きくなっている。これにより、上記の数が1となっている。例えば、駆動トランジスタT1のサブトランジスタのうち、駆動トランジスタT2の一つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに駆動トランジスタT2の別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列しているものは、サブトランジスタT1cのみである。
【0040】
また、第1の配置パターンでは、各駆動トランジスタにおいて、ドレインとソースの配置が全てのサブトランジスタに共通しているが、これを変形し、共通しないようにしてもよい。この変形による一例を図10に示す。この図に示す例では、駆動トランジスタT1のサブトランジスタTa1およびサブトランジスタTa3におけるドレインとソースの配置を順方向の配置とすると、サブトランジスタTa2におけるドレインとソースの配置は逆方向の配置となる。したがって、この図に示すように、サブトランジスタが直列接続される構成では、配線ds1およびds2をゲート電極Gaに重ねることなく配置することができる。なお、この例では、Y方向にて、サブトランジスタTa1のソースとサブトランジスタTa2のソースとが整列し、サブトランジスタTa2のドレインとサブトランジスタTa3のドレインとが整列しているため、電気光学素子の配置間隔をより狭くすることができる。
【0041】
第1の配置パターンでは、サブトランジスタを形成可能な回路領域CR内に、トランジスタを構成するサブトランジスタの形成に利用不可能な領域、すなわちデッドスペースが生じてしまう。例えば、図6の駆動トランジスタT1の左側がデッドスペースとなっている。このようなデッドスペースを削減することができる配置パターンについて、以下に説明する。
【0042】
<第2の配置パターン>
図11は第2の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第2の配置パターンでは、第1の配置パターンと同様に、各駆動トランジスタは三つのサブトランジスタを有し、当該駆動トランジスタが有する全てのサブトランジスタを並列接続または直列接続して構成される。よって、各駆動トランジスタの特性は、三つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなる。
【0043】
図11に示すように、各駆動トランジスタを構成する三つのサブトランジスタは、Y方向の特定範囲RではY方向に進むにつれてX方向にずれ、特定範囲R外ではY方向に進むにつれてX方向の逆方向にずれて配置されている。例えば、駆動トランジスタT1において、サブトランジスタT1bはサブトランジスタT1aに対してX方向にずれており、サブトランジスタT1cはサブトランジスタT1bに対してX方向の逆方向にずれている。サブトランジスタT1aとサブトランジスタT1cはY方向にて整列していることから、サブトランジスタT1bはサブトランジスタT1aおよびサブトランジスタT1cからX方向にずれている、ともいえる。
【0044】
また、サブトランジスタの配置パターンは全ての駆動トランジスタに共通であり、各駆動トランジスタを構成する一つのサブトランジスタは、当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタを構成する一つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに、当該隣の駆動トランジスタを構成する別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列している。例えば、サブトランジスタT1bは、サブトランジスタT2bとX方向にて整列するとともにサブトランジスタT2aとY方向にて整列している。
【0045】
以上より明らかなように、第2の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタには、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。また、第2の配置パターンによれば、X方向に平行な方向におけるズレの向きが特定範囲Rの内外で逆転するから、デッドスペースを削減することができる。結果として、狭ピッチでトランジスタを配置することができる。
【0046】
なお、デッドスペースを削減可能な配置パターンとしては、或る駆動トランジスタのゲート電極と当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタのゲート電極とを交差させる配置パターンが挙げられる。これに対し、第2の配置パターンによれば、上記の交差が不要となるため、電気光学装置10を簡素な構造としつつもデッドスペースを削減することができる、という効果が得られる。
【0047】
第2の配置パターンを変形し、各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数を4以上とし、バラツキの低減効果を大きくしてもよい。各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数が4の場合のサブトランジスタの配置パターンの一例を図12に示す。この例では、例えば、駆動トランジスタT1において、サブトランジスタT1bはサブトランジスタT1aに対してX方向にずれており、サブトランジスタT1cはサブトランジスタT1bとY方向にて整列しており、サブトランジスタT1cからY方向にずれているサブトランジスタT1dはサブトランジスタT1cに対してX方向の逆方向にずれるとともにサブトランジスタT1aとY方向にて整列している。
【0048】
各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数が4の場合のサブトランジスタの配置パターンの別の一例を図13に示す。この例では、例えば、駆動トランジスタT1において、サブトランジスタT1bはサブトランジスタT1aに対してX方向にずれており、サブトランジスタT1cはサブトランジスタT1bに対してX方向にずれており、サブトランジスタT1dはサブトランジスタT1cに対してX方向の逆方向にずれるとともにサブトランジスタT1bとY方向にて整列している。
【0049】
図12および図13から明らかなように、これらの変形例では、各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数が増えると、デッドスペースも大きく広がってしまう。このデッドスペースの広がりを抑制することができる配置パターンについて、以下に説明する。
【0050】
<第3の配置パターン>
図14は第3の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第3の配置パターンでは、各駆動トランジスタは四つのサブトランジスタを有し、当該駆動トランジスタが有する全てのサブトランジスタを並列接続または直列接続して構成される。よって、各駆動トランジスタの特性は、四つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなる。
【0051】
図14に示すように、各駆動トランジスタを構成する四つのサブトランジスタは、Y方向の特定範囲RではY方向に進むにつれてX方向にずれ、特定範囲R外ではY方向に進むにつれてX方向の逆方向にずれて配置されている。例えば、駆動トランジスタT1において、サブトランジスタT1bはサブトランジスタT1aに対してX方向にずれており、サブトランジスタT1cはサブトランジスタT1bに対してX方向の逆方向にずれており、サブトランジスタT1dはサブトランジスタT1cに対してX方向にずれている。サブトランジスタT1aとサブトランジスタT1cはY方向にて整列していることから、サブトランジスタT1bおよびサブトランジスタT1dはサブトランジスタT1aおよびサブトランジスタT1cからX方向にずれている、ともいえる。
【0052】
また、サブトランジスタの配置パターンは全ての駆動トランジスタに共通であり、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタの各々は、当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタを構成する一つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに、当該隣の駆動トランジスタを構成する別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列している。例えば、サブトランジスタT1bは、サブトランジスタT2bとX方向にて整列するとともにサブトランジスタT2aおよびサブトランジスタT2cとY方向にて整列しており、サブトランジスタT1dは、サブトランジスタT2dとX方向にて整列するとともにサブトランジスタT2aおよびサブトランジスタT2cとY方向にて整列している。
【0053】
以上より明らかなように、第3の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタには、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。また、第3の配置パターンによれば、第2の配置パターンと同様に、電気光学装置10を簡素な構造としつつデッドスペースを削減することができる。結果として、狭ピッチでトランジスタを配置することができる。さらに、第3の配置パターンによれば、各駆動トランジスタにおいてY方向に進むにつれてサブトランジスタがX方向に平行な方向にずれる向きが交互に逆転するから、各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数を増やしても、デッドスペースはさほど広がらない。なお、各駆動トランジスタが有するサブトランジスタの数を5以上とし、バラツキの低減効果を大きくしてもよい。
【0054】
<第4の配置パターン>
図15は第4の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第4の配置パターンでは、各駆動トランジスタは二つのサブトランジスタを有し、当該駆動トランジスタが有する全てのサブトランジスタを並列接続または直列接続して構成される。よって、各駆動トランジスタの特性は、二つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなる。
【0055】
第4の配置パターンでは、iを奇数とした場合に、サブトランジスタは、駆動トランジスタTiにおいてはY方向に進むにつれてX方向にずれるように配置され、駆動トランジスタTi+1においてはY方向に進むにつれてX方向の逆方向にずれるように配置されている。また、駆動トランジスタTiおよびTi+1のゲート電極は一箇所で交差しており、両トランジスタのサブトランジスタはY方向に延在する隣り合う二つの列内に隙間なく配置されている。また、これら二つの列内の一方の駆動トランジスタのサブトランジスタの配置と他方の駆動トランジスタのサブトランジスタの配置は、基板に垂直な方向から見て、Y方向に延在する直線を対称軸とした線対称になっている。
【0056】
以上より明らかなように、第4の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタは互いにX方向にもY方向にもずれているから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。また、第4の配置パターンによれば、サブトランジスタが上記の通りに配置されるから、デッドスペースを削減することができる。しかも、駆動トランジスタTiおよびTi+1に対応する二列においてはサブトランジスタが隙間なく配置されるから、デッドスペースの削減効果が大きい。この削減効果は、電気光学装置10が備える駆動トランジスタの数が偶数の場合に最大となる。また、サブトランジスタを上記のように配置する場合には、カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成を採ることもできる。この構成については後述する。
【0057】
第4の配置パターンを変形し、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタの数を3以上としてもよい。当該数を3とした場合のサブトランジスタの配置パターンの一例を図16に示す。この例では、サブトランジスタは、i番目の駆動トランジスタではY方向に進むにつれてX方向にずれるように配置され、i+1番目の各駆動トランジスタではY方向に進むにつれてX方向の逆方向にずれるように配置される。また、i番目、i+1番目およびi+2番目の駆動トランジスタのゲート電極は互いに交差している。この態様によれば、第4の配置パターンと同様の効果が得られる。ただし、バラツキの低減効果はより大きく、デッドスペースの削減効果はより小さくなる。
【0058】
<第5の配置パターン>
図17は第5の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第5の配置パターンでは、各駆動トランジスタは三つのサブトランジスタを有し、当該駆動トランジスタが有する全てのサブトランジスタを並列接続または直列接続して構成される。よって、各駆動トランジスタの特性は、三つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなる。
【0059】
第5の配置パターンでは、iを奇数とした場合に駆動トランジスタTiおよびTi+1のサブトランジスタは、Y方向に延在する隣り合う二つの列内に隙間なく千鳥状(ジグザグ)に配置されている。したがって、駆動トランジスタTiおよびTi+1のゲート電極は二箇所で交差する。また、上記の二つの列内の一方の駆動トランジスタのサブトランジスタの配置と他方の駆動トランジスタのサブトランジスタの配置は、基板に垂直な方向から見て、Y方向に延在する直線を対称軸とした線対称になっている。
【0060】
以上より明らかなように、第5の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタには、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。また、第5の配置パターンによれば、サブトランジスタが上記の通りに配置されるから、デッドスペースを削減することができる。しかも、駆動トランジスタTiおよびTi+1に対応する二列においてはサブトランジスタが隙間なく配置されるから、デッドスペースの削減効果が大きい。この削減効果は、電気光学装置10が備える駆動トランジスタの数が偶数の場合に最大となる。また、サブトランジスタを上記のように配置する場合には、カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成を採ることもできる。
【0061】
<カレントミラー回路>
図18は、カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成の電気光学装置の一部を示す回路図であり、図19は当該電気光学装置で利用される信号の波形を示すタイミングチャートである。この構成では、各単位回路において、変換トランジスタTcのゲートと駆動トランジスタTdrのゲートが直結されており、変換トランジスタTcのソースと駆動トランジスタTdrのソースには電源電位Vddが供給されており、変換トランジスタTcはゲートを流れる電流に応じた電位とし、駆動トランジスタTdrはゲートの電位に応じた駆動電流をドレインから流して電気光学素子を駆動する。
【0062】
変換トランジスタTcのドレインとデータ線L3との間にはスイッチS21が、変換トランジスタTcのゲートとドレイン間にはスイッチS22が介挿されている。これらのスイッチは選択信号に応じた状態(オン状態/オフ状態)となる。例えば、単位回路G1においては、スイッチS21は選択信号SEL1と同様の選択信号SEL11に応じた状態となり、スイッチS22は選択信号SEL11による単位回路G1の選択に先立って単位回路G1を選択する選択信号SEL12に応じた状態となる。データ線L3には、n個の電気光学素子について順に階調を指定するデータ信号IDATAが供給される。単位回路G1〜Gnは順に排他的に選択されるものであり、データ信号IDATAの電流レベルは、図3に示すように、選択中の単位回路に指定すべき階調に応じたものとなる。例えば、単位回路G1が選択中であれば、データ信号IDATAの電流は、単位回路G1に指定すべき階調に応じた信号電流I1となる。
【0063】
単位回路G1では、まずスイッチS22がオン状態になる。これにより、変換トランジスタTcのゲートとドレインとが導通する。次にスイッチS21がオン状態になる。これにより、変換トランジスタTcを信号電流I1が流れ、変換トランジスタTcのゲートおよび駆動トランジスタTdrのゲートが信号電流I1に応じた電位となる。次にスイッチS22がオフ状態になり、次にスイッチS21がオフ状態になる。上記の電位は、駆動トランジスタTdrのソースとゲートとの間の容量により保持されており、駆動トランジスタTdrはそのゲートとソース間の電圧に応じたレベルの駆動電流を生成し、電気光学素子へ供給する。ここで生成される駆動電流のレベルは、信号電流I1のレベルに比例する。
【0064】
この構成の電気光学装置では、駆動トランジスタTdrの特性が単位回路間でばらついても、各単位回路の変換トランジスタTcの特性と駆動トランジスタTdrの特性が略同一であれば、信号電流と略同レベルの駆動電流が得られる。各単位回路において、変換トランジスタTcの特性と駆動トランジスタTdrの特性を略同一とするには、両トランジスタを近接して形成する必要がある。両トランジスタの各々が複数のサブトランジスタから構成されている場合には、一方のトランジスタの各サブトランジスタと他方のトランジスタの各サブトランジスタとを近接して形成する必要がある。この要請に応えることが可能な配置パターンが、図15または図17に示す配置パターンである。具体的には、これらの配置パターンにおいて、iを奇数とした場合に、トランジスタTiを変換トランジスタTcとし、トランジスタTi+1を駆動トランジスタTdrとすればよい。
【0065】
なお、カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成に限らず、駆動トランジスタ以外のトランジスタをもサブトランジスタから構成するようにしてもよい。例えば、図2におけるスイッチS1をトランジスタにより構成し、このトランジスタを1または複数のサブトランジスタから構成するようにしてもよい。また例えば、図18におけるスイッチS21およびS22をトランジスタにより構成し、これらのトランジスタの各々を1または複数のサブトランジスタから構成するようにしてもよい。
【0066】
<第6の配置パターン>
図20は第6の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第6の配置パターンでは、各駆動トランジスタは四つのサブトランジスタを有し、当該駆動トランジスタが有する全てのサブトランジスタを並列接続または直列接続して構成される。よって、各駆動トランジスタの特性は、四つのサブトランジスタの特性を平均化したものとなる。その他の点は、電気光学装置10Eと同様であり、iを奇数とした場合に、駆動トランジスタTiおよびTi+1の駆動トランジスタのゲート電極は三箇所で交差する。
【0067】
以上より明らかなように、第6の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成するサブトランジスタには、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。また、第6の配置パターンによれば、サブトランジスタが上記の通りに配置されるから、デッドスペースを削減することができる。結果として、狭ピッチでトランジスタを配置することができる。しかも、駆動トランジスタTiおよびTi+1に対応する二列においてはサブトランジスタが隙間なく配置されるから、デッドスペースの削減効果が大きい。この削減効果は、電気光学装置10が備える駆動トランジスタの数が偶数の場合に最大となる。また、第6の配置パターンによれば、カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成を採ることもできる。
【0068】
<第7の配置パターン>
図21は第7の配置パターンを示す図である。この図に示すように、第7の配置パターンでは、各駆動トランジスタはX方向に並ぶ二つのサブトランジスタ群を有する。例えば、駆動トランジスタT11は、駆動トランジスタ群T11G1および駆動トランジスタ群T11G2を有する。各駆動トランジスタ群は、互いに電気的に接続された三つのサブトランジスタを含む。例えば、駆動トランジスタ群T11G1はY方向に進むにつれてX方向にずれるサブトランジスタT11a〜T11bを含み、駆動トランジスタ群T11G2はY方向に進むにつれてX方向の逆方向にずれるサブトランジスタT11c〜T11dを含む。サブトランジスタの接続形態は、全ての駆動トランジスタ群に共通である。
【0069】
各駆動トランジスタにおいて、二つの駆動トランジスタ群は、サブトランジスタの接続形態と同一の形態で互いに電気的に接続されている。例えば、駆動トランジスタ群T11G1のサブトランジスタT11aと駆動トランジスタ群T11G2のサブトランジスタT11cとが、全ての駆動トランジスタ群に共通の接続形態で電気的に接続されている。この接続により、サブトランジスタT11aのゲート電極GaとサブトランジスタT11cのゲート電極Gaとがゲート線12Gを介して導通する。ゲート線12GはX方向に延在する領域(回路領域CR)の一方の側端部(図中上端部)に設けられている。各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群は、上記の側端部において隣り合うサブトランジスタを含み、両群のゲート電極Gaが交差しないように選択されている。
【0070】
また、サブトランジスタの配置パターンは全ての駆動トランジスタに共通であり、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群のいずれか一方に含まれる四つのサブトランジスタは、当該駆動トランジスタの隣の駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群のいずれか一方に含まれる二つのサブトランジスタとX方向にて整列するとともに、当該隣の駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群のいずれか一方に含まれる別の一つのサブトランジスタとY方向にて整列している。
【0071】
以上より明らかなように、第7の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群の各々には、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。
【0072】
<第8の配置パターン>
図22は第8の配置パターンを示す図である。第8の配置パターンは図17の配置パターンと同様である。ただし、図17において一つの駆動トランジスタを構成する三つのトランジスタは、図22において一つのサブトランジスタ群を構成している。また、図22において、各駆動トランジスタは、図21と同様に、ゲート線で接続された二つのサブトランジスタ群を有する。
【0073】
以上より明らかなように、第8の配置パターンによれば、各駆動トランジスタを構成する二つのサブトランジスタ群の各々には、互いにX方向にもY方向にもずれている二つのサブトランジスタが含まれるから、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することができる。なお、第8の配置パターンを変形し、各サブトランジスタ群に含まれるサブトランジスタの数を4以上としてもよい。当該数が4の場合の配置パターンを図23に示す。
【0074】
<電気光学装置の効果>
以上説明したように、電気光学装置10によれば、第1のアプローチを採ったことにより、結晶化不良領域に基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することが可能であるとともに、第2のアプローチを採ったことにより、X方向およびY方向におけるサブトランジスタ間の特性のバラツキに基づく電気光学素子間での駆動トランジスタの特性のバラツキを低減することが可能である。よって、電気光学装置10によれば、半導体膜の結晶状態のバラツキに基づく電気光学素子間の階調のバラツキを十分に低減することができる。
【0075】
また、複数のサブトランジスタの配置パターンを示す上記の各図から明らかなように、電気光学装置10の全てのサブトランジスタのチャンネル幅の方向はいずれもW方向であり、互いに一致している。したがって、レーザアニールにおいて、サブトランジスタ間で走査の方向を変えずに済む。よって、レーザアニールにおける走査の回数は1回で足りる。つまり、電気光学装置10によれば、複数のサブトランジスタの形成作業を複雑化させずに済む。
【0076】
<画像形成装置全体>
次に、画像形成装置の全体について説明する。なお、画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分およびファクシミリの印刷部分がある。
図24は、電気光学装置10をライン型の露光装置として用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0077】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の露光装置10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。露光装置10K,10C,10M,10Yは上述した電気光学装置10である。
【0078】
この図に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0079】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0080】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、露光装置10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。露光装置10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各露光装置10(K,C,M,Y)は、複数のEL素子の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のEL素子により光を感光体ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0081】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0082】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0083】
図25は、電気光学装置10をライン型の露光装置として用いた他の画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。
【0084】
この図に示す画像形成装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、露光装置167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0085】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。露光装置167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。露光装置167は、上述した電気光学装置10であり、複数のEL素子の配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のEL素子により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0086】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0087】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0088】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光装置167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光装置167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0089】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0090】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0091】
以上、画像形成装置を例示したが、電気光学装置10は、他の電子写真方式の画像形成装置にも応用可能である。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置、像担持体として感光体ベルトを用いる画像形成装置にも応用可能である。また、電気光学装置10は、任意の電子機器に適用可能である。このような電子機器としては、上記の画像形成装置の他に、表示装置が挙げられる。この表示装置としては、例えば、電気光学装置10を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、テレビ、ビデオカメラ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気光学装置10を光ヘッドとして用いる画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】電気光学装置10の一部の電気的構成を示す回路図である。
【図3】電気光学装置10に利用される各信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図4】レーザアニールによるトランジスタの形成の様子を示す図である。
【図5】レーザアニールにおけるレーザ光の強度のバラツキを示す図である。
【図6】電気光学装置10の回路領域CRにおけるサブトランジスタの配置パターン(第1の配置パターン)を示す図である。
【図7】第1の配置パターンでの駆動トランジスタT1の構成例を示す図である。
【図8】第1の配置パターンでの駆動トランジスタT1の別の構成例を示す図である。
【図9】第1の配置パターンの変形例を示す図である。
【図10】第1の配置パターンの変形例を示す図である。
【図11】回路領域CRにおける第2の配置パターンを示す図である。
【図12】第2の配置パターンの変形例を示す図である。
【図13】第2の配置パターンの別の変形例を示す図である。
【図14】回路領域CRにおける第3の配置パターンを示す図である。
【図15】回路領域CRにおける第4の配置パターンを示す図である。
【図16】第4の配置パターンの変形例を示す図である。
【図17】回路領域CRにおける第5の配置パターンを示す図である。
【図18】カレントミラー回路によって電気光学素子を駆動する構成の電気光学装置の一部を示す回路図である。
【図19】同電気光学装置で利用される信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図20】回路領域CRにおける第6の配置パターンを示す図である。
【図21】回路領域CRにおける第7の配置パターンを示す図である。
【図22】回路領域CRにおける第8の配置パターンを示す図である。
【図23】第8の配置パターンの変形例を示す図である。
【図24】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図25】本実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10…電気光学装置、11…基板、E…電気光学素子、G1〜Gn…単位回路、Tc…変換トランジスタ、Tdr…駆動トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、前記基板に平行な第1方向にて整列された複数のトランジスタと、
前記複数のトランジスタのいずれかに駆動されて発光特性または光の透過特性が変化する電気光学素子とを備え、
前記複数のトランジスタの各々は、互いに電気的に接続された複数のサブトランジスタを有し、
前記複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は、互いに一致し、前記第1方向に対して傾いており、
各トランジスタの前記複数のサブトランジスタのうちの二つは、互いに、前記第1方向にも、前記基板に平行で前記第1方向に垂直な第2方向にもずれており、
前記複数のトランジスタのうちの第1トランジスタの一つのサブトランジスタは、前記第1方向にて前記複数のトランジスタのうちの第2トランジスタの一つのサブトランジスタと整列し、前記第2方向にて前記第2トランジスタの他の一つのサブトランジスタと整列している、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1トランジスタのサブトランジスタと前記第2トランジスタのサブトランジスタは、前記第2方向に延在する二つの列内に千鳥状に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1トランジスタのサブトランジスタと前記第2トランジスタのサブトランジスタは、前記第2方向に延在する二つの列内にあって、基板に垂直な方向から見て線対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタのゲートと前記第2トランジスタのゲートとは電気的に接続されており、
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのソースには共通の電源電位が供給され、
前記第2トランジスタのドレインは前記電気光学素子に電気的に接続され、
前記第1トランジスタのゲートとドレインとを電気的に接続した状態で、前記第1トランジスタのソースからドレインに階調に応じたデータ電流を供給する供給手段と、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数のサブトランジスタは三つ以上のサブトランジスタであり、前記第2方向の特定範囲では前記第2方向に進むにつれて前記第1方向にずれ、前記特定範囲外では前記第2方向に進むにつれて前記第1方向の逆方向にずれて配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記複数のサブトランジスタには、第1サブトランジスタ、前記第1サブトランジスタから前記第2方向にずれている第2サブトランジスタ、および前記第2サブトランジスタから前記第2方向にずれている第3サブトランジスタが含まれ、
前記複数のトランジスタの各々では、前記第2サブトランジスタは前記第1サブトランジスタおよび前記第3サブトランジスタから前記第1方向または前記第1方向の逆方向にずれて配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に配置され、前記基板に平行な第1方向にて整列された複数のトランジスタと、
前記複数のトランジスタのいずれかに駆動されて発光特性または光の透過特性が変化する電気光学素子とを備え、
前記複数のトランジスタの各々は、前記第1方向に延在する基板上の領域内に二つのサブトランジスタ群を有し、
前記複数のトランジスタの各々の二つのサブトランジスタ群は、前記第1方向に並べて配置され、前記領域の側端部で互いに電気的に接続され、
前記二つのサブトランジスタ群の各々は、互いに電気的に接続された複数のサブトランジスタを含み、
前記複数のサブトランジスタのチャンネル幅の方向は、互いに一致し、前記第1方向に対して傾いており、
前記二つのサブトランジスタ群の各々に含まれる二つのサブトランジスタは、互いに、前記第1方向にも、前記基板に平行で前記第1方向に垂直な第2方向にもずれており、
前記複数のトランジスタのうちの第1トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる一つのサブトランジスタは、前記第1方向にて前記複数のトランジスタのうちの第2トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる一つのサブトランジスタと整列し、前記第2方向にて前記第2トランジスタのサブトランジスタ群に含まれる他の一つのサブトランジスタと整列している、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−210266(P2007−210266A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34780(P2006−34780)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】