説明

電気光学装置および電子機器

【課題】異なる経路の配線を介して電圧が印加される画素群を含む電気光学装置における表示の不具合を低減すること。
【解決手段】電気光学装置は、第1経路の配線(114a)を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極(118)に電圧が書き込まれる第1画素群と、第2経路の配線(114b)を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極に電圧が書き込まれる第2画素群と、前記第1画素群と前記第2画素群に共通の対向電極(108)と、前記第1画素群に対して最適な前記対向電極の電圧(LCcom)と前記第2画素群に対して最適な前記対向電極の電圧との差を縮めるように、前記第1経路の配線を介して前記第1画素群に供給される電圧及び前記第2経路の配線を介して前記第2画素群に供給される電圧の少なくとも一方を補正する補正手段(40)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置におけるフリッカーや焼き付きなどの表示の不具合を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、画素毎に液晶に印加される電圧を制御し、液晶の透過率または反射率を制御することで、透過光または反射光を変調し画像を表示する装置である。液晶表示装置では、各画素に対し設けられた画素電極と各画素に共通の対向電極との間に液晶が挟持され、各画素電極と対向電極との間の電圧が制御されることで液晶に印加される電圧が制御される。アクティブマトリクス型の液晶表示装置では、各画素電極は対応するスイッチング素子(通常、電界効果トランジスター。以下、単にトランジスターと言う)を介して信号線(データ線とも言う)に接続されており、トランジスターがオン状態のとき、信号線に供給されている電位(表示信号とも言う)に応じた電位が画素電極に書き込まれる。対向電極の電位は、通常、概ね一定の電位となるよう制御される。尚、液晶表示装置の各部の電位は、基準となる電位(例えば、グランド電位)との電位差(電圧)によって表される。従って、以下の説明において、電位と電圧を同義に用いることがある。
【0003】
液晶表示装置では、液晶に長時間直流電圧が印加されると液晶の劣化が生じるため、液晶に印加される電圧の極性を時間的に切り替える交流駆動が行われる。対向電極の電位より画素電極の電位が高い状態を、液晶に正極性の電圧が印加された状態と言い、対向電極の電位より画素電極の電位が低い状態を、液晶に負極性の電圧が印加された状態と言う。交流駆動では、データ線に供給される表示信号として、所定の中心電位に対し正の電位と負の電位が交互(例えば、フレーム毎)に現れる信号が供給され、対向電極の電位は表示信号の中心電位に概ね一致するよう設定される。
【0004】
上記したような液晶表示装置において、フィードスルーと呼ばれる現象が知られている。フィードスルーとは、トランジスターのゲート電極と画素電極に接続された電極(例えば、ドレイン電極)との間の寄生容量のため、トランジスターがオンからオフに転じるとき、画素電極の電位が、トランジスターがオンのときに書き込まれた電位から変化する現象である。フィードスルーによる画素電極の電位の変化方向は、画素電極に書き込まれた電位の値に関係なく一定方向である(トランジスターがnチャネル型であれば下降方向であり、pチャネル型であれば上昇方向)。そのため、画素電極の中心電位は、信号線上に供給される表示信号の中心電位から、フィードスルーによる電位変化分だけずれることとなる。従って、対向電極の電位を、信号線上に供給される表示信号の中心電位に一致するように設定した場合、フィードスルーによって画素電極の電位が変化することにより、液晶に直流電圧成分が作用することとなる。言い換えると、液晶に印加される正極性の電圧と負極性の電圧にアンバランスが生じる。これは、液晶の劣化、焼き付き、フリッカー(ちらつき)発生などの原因となる。特許文献1には、フィードスルーによる画素電極の電位変化の分だけ、対向電極の電位を表示信号の中心電位からシフトさせることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、各画素列に対し二本の信号線を有する液晶表示装置において、これら二本の信号線を、絶縁膜を介して少なくとも部分的に重ねて配置する(即ち、多層配線する)ことが記載されている。各画素列において、奇数行の画素は二本の信号線の一方にトランジスターを介して接続され、偶数行の画素は二本の信号線の他方にトランジスターを介して接続される。奇数行の画素と偶数行の画素は画素電極の面積が異なり、列方向に隣接する一対の画素によって一つの合成画素が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−189460号公報
【特許文献2】特開2009−175563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された液晶表示装置では、偶数行の画素と奇数行の画素とで、対向電極(共通電極)の最適な電位が異なり得る。そのため、例えば、奇数行の画素に対して最適値となるように対向電極の電位を設定すると、偶数行の画素に対しては対向電極の電位が最適値とならず、その結果、偶数行の画素において、液晶に印加される正極性の電圧と負極性の電圧にアンバランスが生じ、液晶の劣化、焼き付き、フリッカーなどの不具合が生じ得る。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、異なる経路の配線を介して電圧が印加される画素群を含む電気光学装置における表示の不具合を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1経路の配線を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極に電圧が書き込まれる第1画素群と、第2経路の配線を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極に電圧が書き込まれる第2画素群と、前記第1画素群と前記第2画素群に共通の対向電極と、前記第1画素群に対して最適な前記対向電極の電圧と前記第2画素群に対して最適な前記対向電極の電圧との差を縮めるように、前記第1経路の配線を介して前記第1画素群に供給される電圧及び前記第2経路の配線を介して前記第2画素群に供給される電圧の少なくとも一方を補正する補正手段とを有する電気光学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、第1画素群に対して最適な対向電極の電圧と第2画素群に対して最適な対向電極の電圧との差を縮めるように、第1経路の配線を介して第1画素群に供給される電圧及び第2経路の配線を介して第2画素群に供給される電圧の少なくとも一方を補正する補正手段を有さない場合と比べて、異なる経路の配線を介して電圧が印加される画素群を含む電気光学装置における表示の不具合が低減される。
【0009】
好ましい態様において、前記第1経路の配線と前記第2経路の配線が絶縁体を介して異なる層に配置されてもよい。
この電気光学装置によれば、前記第1経路の配線と前記第2経路の配線が絶縁体を介して異なる層に配置されない場合と比べて、第1経路の配線と第2経路の配線の配置が容易になる。
【0010】
別の好ましい態様において、前記第1経路の配線と前記第2経路の配線とが異なる駆動回路によって駆動されてもよい。
この電気光学装置によれば、前記第1経路の配線と前記第2経路の配線とが異なる駆動回路によって駆動されない場合と比べて、画素への電圧の書込み速度が向上する。
【0011】
別の好ましい態様において、前記補正手段は、前記第1画素群と前記第2画素群の少なくとも一方の階調レベルを定める映像データを補正する補正回路と、前記補正回路により補正された映像データをD/A変換して前記第1画素群と前記第2画素群の少なくとも一方に供給される電圧を生成するD/A変換器とを有してもよい。
この電気光学装置によれば、上記の補正回路とD/A変換回路とを有さない場合と比べて、第1画素群と第2画素群の少なくとも一方に印加する電圧の補正を精度良く行うことができる。
【0012】
尚、本発明は、電気光学装置のみならず、当該電気光学装置を有する電子機器として具現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図。
【図2】電気光学装置の表示パネルの構成を示す図。
【図3】表示パネルにおける画素の構成を示す図。
【図4】第1データ線駆動回路の構成を示す図。
【図5】第1D/A変換回路の動作を説明するための図。
【図6】補正回路がない場合に画素電極に書き込まれる電圧を説明するための図。
【図7】補正回路の動作を説明するための図。
【図8】補正回路で補正を行った場合の電気光学装置の各部の電圧を説明するための図。
【図9】電気光学装置を適用したプロジェクターの構成を示す図。
【図10】変形例1に係る電気光学装置の構成を示すブロック図。
【図11】補正回路で補正を行った場合の変形例1に係る電気光学装置の各部の電圧を説明するための図。
【図12】変形例2に係る電気光学装置の構成を示すブロック図。
【図13】変形例3に係る電気光学装置の構成を示すブロック図。
【図14】変形例3に係る表示パネルの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る電気光学装置1の構成を示すブロック図である。図1に示したように、電気光学装置1は、制御回路10、メモリー20、分離回路30、補正回路40、第1D/A変換回路50、第2D/A変換回路60、LCcom調整回路70および表示パネル100を含んだ構成となっている。
【0015】
制御回路10は、外部上位装置(図示省略)から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Clkに基づいて、水平走査用クロック信号Clx、垂直走査用クロック信号Cly、及び、様々な制御信号を生成して各部を制御する。これらの制御信号には、後述する第1フィールド及び第2フィールドにおけるデータ書込みの極性を指定する極性指定信号Pol、及び、それぞれ水平方向及び垂直方向の走査の開始を指示するやスタートパルスDx、Dyが含まれる。
【0016】
電気光学装置1には、映像データDaが、図示省略した上位装置から垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Clkに同期してフレーム単位で繰り返し供給される。ここで、フレームとは、映像を構成する個々の静止画を指し、例えば、1秒間に60フレームの静止画を含む映像の場合、1/60秒(約16.7ミリ秒)の周期で1フレーム分の映像データDaが供給される。映像データDaは、例えば表示パネル100の各画素に対し8ビットのデジタルデータであり、各画素の濃淡(階調レベル)を最も暗い「0」から最も明るい「255」までの256階調で指定する。映像データDaは、ガンマ補正後のデータであってよい。
【0017】
メモリー20は、表示パネル100の各画素に対応した記憶領域を有する。メモリー20の各記憶領域には、制御回路10による指示にしたがって、それぞれに対応する画素の映像データDaが格納される。また、本実施形態では、1フレームは2つのフィールド(第1フィールド及び第2フィールド)に分かれており、メモリー20に書き込まれた1フレーム分の映像データDaは、表示パネル100における書込走査に応じて第1フィールドおよび第2フィールドにおいて計2回、映像データDbとして読み出される。
【0018】
分離回路30は、メモリー20から読み出された映像データDbを、奇数行の画素用の映像データDb1(以下、奇数行映像データDb1と言う)と、偶数行の画素用の映像データDb2(以下、偶数行映像データDb2と言う)に分離する。補正回路40は、後に詳述するように、奇数行映像データDb1に補正を加え、補正された奇数行映像データDc1を生成する。第1D/A変換回路50は、補正された奇数行映像データDc1を、階調レベルに応じた電圧であって、かつ、極性指定信号Polによって指定された極性の電圧の奇数行用電圧信号Vid1に変換し、表示パネル100に供給する。第2D/A変換回路60は、分離回路30から出力された偶数行映像データDb2を、階調レベルに応じた電圧であって、かつ、極性指定信号Polによって指定された極性の電圧の偶数行用電圧信号Vid2に変換し、表示パネル100に供給する。補正回路40と第1D/A変換回路50は、本発明に係る補正手段の一例に相当する。
【0019】
LCcom調整回路70は、例えば、図示省略した操作部(例えば、キーボードなど)を通じて入力されたユーザの指示に基づいて調整された対向電極の電圧LCcomを表示パネル100に供給する。
【0020】
図2は、表示パネル100の構成を示す図である。この図に示されるように、表示パネル100は、画素110が縦m行×横n列のマトリクス状に配列された表示領域Maの周辺に走査線駆動回路130、第1データ線駆動回路140、及び第2データ線駆動回路150を内蔵した周辺回路内蔵型となっている。行数mの値は例えば2160、列数nの値は例えば4096であるが、これらの値に限定されるものではない。尚、p行q列にある画素を画素(p,q)のように表すことがある。
【0021】
表示領域Maにおいては、画素110の各行に対応して走査線112が行方向(X方向)に延在するように設けられ、画素110の各列に対応してデータ線114が列方向(Y方向)に延在するように設けられている。走査線112とデータ線114とは互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。各画素110は、走査線112とデータ線114との交差に対応して配列されている。
【0022】
本実施形態において、走査線112は画素110の各行に対し一本設けられ、各行の画素110は対応する走査線112に接続されている。一方、データ線114は画素110の各列に対し二本設けられている。各画素列の画素110のうち奇数行に位置する画素110は、その画素列に対応する二本のデータ線114の一方114a(以下、奇数行用データ線114aと言う)に接続され、偶数行に位置する画素110は、その画素列に対応する二本のデータ線114の他方114b(以下、偶数行用データ線114bと言う)に接続されている。奇数行に位置する画素110は、本発明に係る第1経路の配線を介して電圧が印加される第1画素群の一例であり、偶数行に位置する画素110は、本発明に係る第2経路の配線を介して電圧が印加される第2画素群の一例である。
【0023】
図3は、(2i−1)行j列の画素110(即ち、画素(2i−1,j))及びこれと1行下で隣接する2i行j列の画素110(即ち、画素(2i,j))とを示している。ここで、iは1〜m/2の任意の整数、jは1〜nの任意の整数である。即ち、(2i−1)行j列の画素110は奇数行の画素であり、2i行j列の画素110は偶数行の画素である。図3に示されるように、各画素110は、nチャネル型の薄膜トランジスター(以下、画素トランジスターと言う)116と液晶容量120とを含む。(2i−1)行j列の画素110における画素トランジスター116のゲート電極は(2i−1)行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目の奇数行用データ線114aに接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。また、液晶容量120の他端は、対向電極108に接続されている。この対向電極108には、全ての画素110にわたって、LCcom調整回路70からの共通の電圧LCcomが印加されている。2i行j列の画素110における画素トランジスター116のゲート電極は2i行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目の偶数行用データ線114bに接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。
【0024】
この表示パネル100は、特に図示しないが、素子基板と対向基板との一対の基板が一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶105が封止された構成となっている。このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、画素トランジスター116および画素電極118が、走査線駆動回路130、第1データ線駆動回路140、及び第2データ線駆動回路150とともに形成される一方、対向基板に対向電極108が形成されて、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。このため、本実施形態において液晶容量120は、画素電極118と対向電極108とが液晶105を挟持することによって構成されることになる。
【0025】
尚、素子基板において、奇数行用データ線114aと、偶数行用データ線114bとは、絶縁膜を介して分離された異なる配線層に設けられる。これにより、奇数行用データ線114aと、偶数行用データ線114bの配線が容易になる。また、表示パネル100の表示面に垂直な方向に見たとき、奇数行用データ線114aと、偶数行用データ線114bが少なくとも部分的に重なるように配置してよい。これにより、データ線114(114a、114b)の設置に要する面積が低減され、表示パネル100における画素開口率(画素電極の面積が表示パネル全体の面積に占める割合)が向上される。
【0026】
本実施形態では、表示パネル100はバックライトを用いた液晶表示装置での使用を想定しており、液晶容量120に印加される電圧がゼロのとき液晶容量120を通過する光の透過率が最小となって黒色表示になり、液晶容量120に印加される電圧が大きくなるにつれて透過する光量が増加して、ついには透過率が最大の白色表示になるノーマリーブラックモードに設定されている。
【0027】
この構成において、ある走査線112に選択電圧を印加し(走査線112の選択と言う)、この走査線112に接続された画素トランジスター116をオン(導通)させると、各画素トランジスター116に対応する画素電極118に、対応するデータ線114(114aまたは114b)上の信号(電圧)が書き込まれる(画素電極118への信号の書込みを、画素110への信号の書込みと言うこともある)。また、後述するように、データ線114上の電圧は、選択された走査線112に接続された各画素110に対して供給される。したがって、液晶容量120を透過する光は、画素110毎に異ならせることが可能である。走査線112を順次選択し(垂直走査)、各画素110の液晶容量120を透過する光を変調することにより、表示領域Maにおいて画像が形成される。なお、形成された画像は、使用者に直視され、または、後述するプロジェクターのように拡大投射されて視認される。
【0028】
なお、走査線112に印加される電圧が非選択電圧になると、その走査線112に接続された画素トランジスター116がオフ(非導通)状態となるが、このときのオフ抵抗が理想的に無限大とはならないので、液晶容量120に蓄積された電荷が少なからずリークする。このオフリークの影響を少なくするために、蓄積容量109が画素110毎に形成されている。この蓄積容量109の一端は、画素電極118(画素トランジスター116のドレイン)に接続される一方、その他端は、全画素110にわたって容量線107に共通接続されている。この容量線107には、例えば対向電極108と同じ電圧LCcomが供給される。
【0029】
図2を再度参照すると、走査線駆動回路130は、制御回路10から供給されるスタートパルスDyおよびクロック信号Clyに基づいて、走査信号Y1、Y2、Y3、・・・Ymを、それぞれ1、2、3、・・・m行目の走査線112に供給するものである。ここで、走査線駆動回路130は、選択した走査線112への走査信号を選択電圧Vddに相当するHレベルとし、それ以外の走査線112への走査信号を非選択電圧(例えば、接地電位Gnd)に相当するLレベルとする。
【0030】
第1データ線駆動回路140は、制御回路10から供給されるスタートパルスDxおよびクロック信号Clxに基づいて、奇数行用電圧信号Vid1を、それぞれ1、2、3、…、n列目の奇数行用データ線114aに出力されるデータ信号X1a、X2a、X3a、…、Xnaとしてサンプリングするものである。同様に、第2データ線駆動回路150は、制御回路10から供給されるスタートパルスDxおよびクロック信号Clxに基づいて、偶数行用電圧信号Vid2を、それぞれ1、2、3、…、n列目の偶数行用データ線114bに出力されるデータ信号X1b、X2b、X3b、…、Xnbとしてサンプリングするものである。
【0031】
図4は、第1データ線駆動回路140の構成を示す図である。この図に示されるように、第1データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、データ線114a毎に設けられるnチャネル型のトランジスター144(以下、選択トランジスター144と言う)とを有する。また、信号線146には、第1D/A変換回路50によって変換された奇数行用電圧信号Vid1が供給される。各列に設けられた選択トランジスター144は、そのソース電極が信号線146に接続され、そのドレイン電極が対応する奇数行用データ線114aに接続されている。サンプリング信号出力回路142は、制御回路10から供給されるスタートパルスDxおよびクロック信号Clxに基づいて、各列に対応したサンプリング信号S1、S2、S3、…、Snを排他的にHレベルとなるように出力し、対応する列の選択トランジスター144のゲート電極に供給する。したがって、ある列のサンプリング信号がHレベルになると、当該列の選択トランジスター144がオンして、信号線146に供給された奇数行用電圧信号Vid1がサンプリングされ、当該列のデータ線114aに出力される。サンプリング信号がLレベルとなり、選択トランジスター144がオフになると、対応するデータ線114a上の電圧は、リーク電流のため多少減少するが、概ね同じ値に維持される。尚、第2データ線駆動回路150の構成は、入力される電圧信号が偶数行用電圧信号Vid2である点と、サンプリングされたデータ信号が出力されるデータ線が偶数行用データ線114bである点以外は、第1データ線駆動回路140と同じであるので、図示を省略する。
【0032】
上述したように、本実施形態においては、メモリー20から読み出された映像データDbは、分離回路30によって奇数行映像データDb1と偶数行映像データDb2に分離される。奇数行映像データDb1は第1D/A変換回路50で電圧信号Vid1に変換された後、第1データ線駆動回路140によりサンプリングされて、奇数行用データ線114a上に供給され、偶数行映像データDb2は第2D/A変換回路60で電圧信号Vid2に変換された後、第2データ線駆動回路150によりサンプリングされて、偶数行用データ線114b上に供給される。即ち、奇数行用データ線114aと偶数行用データ線114bには、個別に信号(電圧)が供給される。従って、例えば、走査信号Y1とY2を同時にHレベルにする、走査信号Y3とY4を同時にHレベルにするというように、奇数行の走査線112の走査信号と偶数行の走査線112の走査信号とを同時にHレベルにして、奇数行の走査線112と偶数行の走査線112を同時に選択し、それぞれの走査線112に接続された画素110へのデータ(電圧)の書込み(水平走査)を同時に行ってよい。このように奇数行の走査線112と偶数行の走査線112を同時に選択してデータ書込みを行うことにより、データ書込み速度が向上される。
【0033】
続いて、補正回路40の動作について説明する。補正回路40の動作の理解が容易になるよう、まず、補正回路40がない(または、補正回路40による奇数行映像データDb1の補正を行わない)場合の第1D/A変換回路50の動作について説明する。
【0034】
図5は、第1D/A変換回路50の動作を説明するための図である。図5の左側のグラフは、分離回路30から出力される1フレーム分の奇数行映像データDb1を示している。図示されているように、奇数行映像データDb1は、奇数行の各画素110(画素(1,1)、画素(1,2)、…、画素(2m−1,n))の各々に対する階調レベルを定めている。
【0035】
図5の右側のグラフは、奇数行映像データDb1を第1D/A変換回路50によりD/A変換することにより得られる奇数行用電圧信号Vid1を示している。第1D/A変換回路50は、極性指定信号Polによって正極性書込みが指示されていれば、奇数行映像データDb1を、基準電位(例えば、グランド電位GND)に対して予め定められた電圧Vcを基準として高位側電圧に変換し、極性指定信号Polによって負極性書込みが指示されていれば、同じ映像データDb1を電圧Vcを基準として低位側電圧に変換し、変換した電圧を奇数行用電圧信号Vid1として表示パネル100に供給する。即ち、本実施形態では、電圧信号Vid1の極性については、電圧Vcよりも高位側を正極性とし、低位側を負極性としている(以下、電圧Vcを極性基準電圧と言う)。本実施形態において、極性指定信号Polは、各フレームの前半(第1フィールド)においては正極性書込みを指定し、各フレームの後半(第2フィールド)においては負極性書込みを指定する。その結果、図5の右側のグラフに示すように、第1D/A変換回路50は、第1フィールドにおいては、映像データDb1を極性基準電圧Vcを基準として高位側電圧に変換し、第2フィールドにおいては、極性基準電圧Vcを基準として低位側電圧に変換する。これにより、第1フィールドにおいては、極性基準電圧Vcより高い電圧が画素110の画素電極118に書込まれ(正極性書込み)、第2フィールドにおいては、極性基準電圧Vcより低い電圧が画素110の画素電極118に書込まれる(負極性書込み)。即ち、本実施形態にあっては、フィールドにわたってすべての画素110に書き込む電圧を同一極性とし、かつ、フィールド毎に極性を反転させる面反転方式としている。尚、極性基準電圧Vcは、補正回路40がない場合に第1D/A変換回路50から出力される奇数行用電圧信号Vid1の振幅中心に一致する。
【0036】
第2D/A変換回路60の動作も、第1D/A変換回路50の動作と同様であり、極性指定信号Polに応じて、偶数行映像データDb2を、極性基準電圧Vcを基準として高位側電圧または低電位側電圧に変換し、変換した電圧を偶数行用電圧信号Vid2として表示パネル100に供給する。
【0037】
理想的には、第1フィールドと第2フィールドで同じ映像データ(Db1、Db2)を極性基準電圧Vcを基準としてそれぞれ高電位側及び低電位側に変換した電圧(Vid1、Vid2)が、画素110の画素電極118に書き込まれる。その場合、対向電極108の電圧LCcomを電圧Vcに一致させることで、液晶105に印加される電圧の直流成分をゼロにすることができる。しかしながら、実際には、画素電極118に書き込まれる電圧は、第1及び第2D/A変換回路50、60から出力される電圧Vid1、Vid2と一致せず、ずれが生じる。
【0038】
図6は、補正回路40がない場合に画素110の画素電極118に書き込まれる電圧を説明するための図である。ここでは、説明を簡潔にするため、奇数行映像データDb1と偶数行映像データDb2は同じであるとする。また、その映像データを第1D/A変換回路50により変換した電圧信号Vid1と第2D/A変換回路60により変換した電圧信号Vid2は同じであるとし、図6において実線で表す。
【0039】
図6において破線で示すように、奇数行の画素110の画素電極118に書き込まれる電圧(以下、画素電圧)Vpix1は、第1フィールド(正極性書込み)及び第2フィールド(負極性書込み)のいずれにおいても、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1より差分ΔV1だけ低下している。これは、各画素110に対応する画素トランジスター116がオンからオフに転じるときに、画素トランジスター116のゲート・ドレイン電極間の寄生容量の影響で、ドレイン電極に接続された画素電極118の電圧が、データ線114aに供給されている電圧から変化する、いわゆる「フィードスルー」と呼ばれる現象に主として起因する。本例では、画素トランジスター116はnチャネル型であるため、フィールドスルーによる電圧変化方向は、正極性書込み、負極性書込みのいずれにおいても、下降方向である。また、データ線114a上の電圧についても、フィードスルーが発生する。即ち、選択トランジスター144がオンからオフに転じるときに、選択トランジスター144のゲート・ドレイン電極間の寄生容量の影響で、ドレイン電極に接続されたデータ線114aの電圧が、信号線146に供給されている電圧(即ち、電圧信号Vid1)から変化する。本例では、選択トランジスター144はnチャネル型であるため、選択トランジスター144のフィードスルーによる電圧変化方向も下降方向である。以下、フィードスルー等により生じる画素電圧Vpix1の電圧信号Vid1からのずれを電圧変位ΔV1と言う。このように、奇数行の画素110に書き込まれる画素電圧Vpix1は、第1フィールド及び第2フィールドのいずれにおいても、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1より電圧変位ΔV1だけ低下し、その結果、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅の中心電圧Vc1は、極性基準電圧Vcより電圧変位ΔV1だけ低下した電圧となる。
【0040】
同様に、図6において点線で示すように、偶数行の画素110の画素電極118に書き込まれる画素電圧Vpix2も、画素トランジスター116及び選択トランジスター144のフィードスルー等の影響により、第1フィールド及び第2フィールドのいずれにおいても、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2より電圧変位ΔV2だけ低下し、偶数行の画素電圧Vpix2の振幅の中心電圧Vc2は、極性基準電圧Vcより電圧変位ΔV2だけ低下した電圧となるが、偶数行の電圧変位ΔV2は奇数行の電圧変位ΔV1とは異なっている。これは、例えば、奇数行の画素110用のデータ線114aと偶数行の画素110用のデータ線114bとが異なる配線層に設けられていることにより、これらデータ線114a、114bが周囲の構成要素との間に形成する容量の大きさが変わり、選択トランジスター144のフィードスルーによる電圧低下の大きさが異なることに起因すると考えられる。また、表示パネル100のデータ線駆動回路が、奇数行の画素110に接続されたデータ線114aを駆動する第1データ線駆動回路140と、偶数行の画素110に接続されたデータ線114bを駆動する第2データ線駆動回路150とに分かれていることによっても、奇数行の電圧変位ΔV1と偶数行の電圧変位ΔV2の大きさに違いが生じ得る。尚、本例では、奇数行の画素110の電圧変位ΔV1の方が、偶数行の画素110の電圧変位ΔV2より大きいもの(ΔV1>ΔV2)として示しているが、これはあくまでも例であり、ΔV1<ΔV2でもよい。
【0041】
このように、奇数行の画素110の電圧変位ΔV1と、偶数行の画素110の電圧変位ΔV2とが異なる場合、奇数行の画素110と偶数行の画素110とで、最適な対向電極108の電圧LCcomが異なる。即ち、奇数行の画素110に対しては、液晶105に印加される直流成分を低減するためには、対向電極108の電圧LCcomを奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1(=Vc−ΔV1)と一致させることが望ましいが、偶数行の画素110に対しては、液晶105に印加される直流成分を低減するためには、対向電極108の電圧LCcomを偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2(=Vc−ΔV2)と一致させることが望ましい。従って、対向電極108の電圧LCcomを例えば偶数行の画素110の電圧変位ΔV2をオフセットするように偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2に一致するように設定すると(LCcom=Vc−ΔV2)、奇数行の画素110において液晶に直流電圧成分が作用し、フリッカーや焼き付きが発生し得る。
【0042】
図7は、補正回路40の動作を説明するための図である。ここでは、図6に示したような奇数行の画素110の電圧変位ΔV1と、偶数行の画素110の電圧変位ΔV2とを有する表示パネル100に対して、対向電極108の電圧LCcomを偶数行の画素110の電圧低下量ΔV2をオフセットするように、LCcom=Vc−ΔV2と設定する場合の(即ち、極性基準電圧Vcからの対向電極108の電圧LCcomのずれをΔVshとしたとき、ΔVsh=ΔV2)、補正回路40の動作を説明する。また、本図において、奇数行映像データDb1を補正回路40にて補正することなく第1D/A変換回路50でD/A変換した場合に得られる電圧信号を電圧信号Vid0で表す。
【0043】
図7の左側のグラフにおいて一点鎖線で示すように、補正回路40は、分離回路30から出力される奇数行映像データDb1に対し、正極性書込み時(第1フィールド)においては、階調レベルが増加する方向にシフトさせる補正をし、負極性書込み時(第2フィールド)においては、階調レベルが減少する方向にシフトさせる補正をし、補正した映像データDc1を第1D/A変換回路50に供給する。その結果、図7の右側のグラフにおいて一点鎖線で示すように、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1は、映像データDb1を補正回路40で補正することなくD/A変換して得られる電圧信号Vid0を、第1フィールド(正極性書込み)では極性基準電圧Vcから離れる方向に値ΔVだけシフトし、第2フィールド(負極性書込み)では極性基準電圧Vcに近づく方向に値ΔVだけシフトした波形となる。言い換えると、補正回路40により補正された映像データDc1をD/A変換して得られる電圧信号Vid1は、補正回路40により補正されない映像データDb1をD/A変換して得られる電圧信号Vid0を、第1フィールドと第2フィールドのいずれでも値ΔVだけ上昇させるようにシフトした波形を有する。ここで、電圧信号Vid0に対する電圧信号Vid1の電圧上昇量(電圧シフト量)ΔVは、奇数行の画素110の電圧変位ΔV1と、偶数行の画素110の電圧変位ΔV2との差分(ΔV1−ΔV2)に等しいことが好ましい。従って、ΔV=ΔV1−ΔV2となるように、補正回路40における映像データDb1に対する映像データDc1のシフト量が調整されている。
【0044】
図8は、図7に示したように補正回路40で補正を行った場合の電気光学装置1の各部の電圧を説明するための図である。図8においても、説明を簡潔にするため、図6の場合と同様に、奇数行映像データDb1と偶数行映像データDb2は等しいものとする。従って、補正回路40により補正されない奇数行映像データDb1を第1D/A変換回路50でD/A変換して得られる電圧信号Vid0は、偶数行映像データDb2を第2D/A変換回路60でD/A変換して得られる電圧信号Vid2に等しい。
【0045】
図6を参照して説明したように、偶数行の画素110の画素電極118に書き込まれる画素電圧Vpix2(図8において点線で示す)は、第1フィールド及び第2フィールドのいずれにおいても、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2より電圧変位ΔV2だけ低下し、偶数行の画素電圧Vpix2の振幅の中心電圧Vc2は、電圧信号Vid2の振幅中心である極性基準電圧Vcより電圧変位ΔV2だけ低下した電圧となっている。対向電極108の電圧LCcomは、偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2と一致するように設定されている。
【0046】
また、図7を参照して説明したように、補正回路40において奇数行映像データDb1を第1フィールドでは階調レベルが上昇するように、第2フィールドでは階調レベルが低下するように補正し、補正された映像データDc1を第1D/A変換回路50に供給したことにより、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1(図8において一点鎖線で示す)は、映像データDb1を補正回路40で補正することなくD/A変換して得られる電圧信号Vid0を、第1フィールドと第2フィールドのいずれにおいても、ΔV=ΔV1−ΔV2だけ上昇させた波形となっている。そのため、フィードスルー等の影響により電圧信号Vid1から電圧変位ΔV1だけ低下する奇数行の画素電圧Vpix1は、偶数行の画素電圧Vpix2と一致している。即ち、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1と、偶数行の画素電圧Vpixの振幅中心Vc2とが一致している。上述したように、対向電極108の電圧LCcomは、偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2と一致するように設定されている。従って、本実施形態においては、画素電圧Vpix1、Vpix2の振幅中心Vc1、Vc2が対向電極108の電圧LCcomと一致するので、奇数行の画素110及び偶数行の画素110のいずれにおいても、液晶105に直流電圧成分が作用することがない。
【0047】
尚、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1の、補正回路40による映像データの補正がない場合に第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid0に対する電圧シフト量ΔVは、必ずしも奇数行の電圧変位ΔV1と偶数行の電圧変位ΔV2の差分(ΔV1−ΔV2)に一致しなくてもよい。電圧シフト量ΔVは、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1と、偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2との差が小さくなる(即ち、奇数行の画素110に対する最適な対向電極108の電圧LCcomと、偶数行の画素110に対する最適な対向電極108の電圧LCcomとの差が小さくなる)ように設定されればよい。それにより、対向電極108の電圧LCcomを、奇数行の画素110と偶数行の画素110の一方に合わせて設定したとき、奇数行の画素110と偶数行の画素110の他方におけるフリッカーや焼き付きが軽減される。
【0048】
<電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置1を適用した電子機器の一例として、プロジェクターを例にとって説明する。図9は、このプロジェクターの構成を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0049】
このプロジェクター2100では、実施形態に係る電気光学装置1が、R色、G色、B色のそれぞれに対応して3組設けられる。そして、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像データがそれぞれ上位回路から供給されて、各色に対応するデータ信号Vid1及びVid2に変換される構成となっている。ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した表示パネル100と同様であり、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映像データに応じて駆動される。
【0050】
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラー画像が投射されることとなる。
【0051】
ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。
【0052】
なお、電子機器としては、図9を参照して説明したプロジェクターの他、電子ビューファインダーや、リヤ・プロジェクション型のテレビジョン、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。尚、上述した実施形態及び以下の変形例は、2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
<変形例1>
上記実施形態において、電気光学装置1は、奇数行映像データDB1の階調レベルを補正する補正回路40を有していたが、本発明はこれに限定されない。電気光学装置1は、奇数行映像データDb1の階調レベルを補正する補正回路40の代わりに、偶数行映像データDb2の階調レベルを補正する補正回路を有してもよい。その場合、対向電極108の電圧LCcomを、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1(=Vc−ΔV1)に一致するように設定するとよい。あるいは、電気光学装置1は、奇数行映像データDb1の階調レベルを補正する補正回路40に加えて、偶数行映像データDb2の階調レベルを補正する補正回路を有してもよい。
【0055】
図10は、変形例1に係る電気光学装置1Aの構成を示すブロック図である。図10において、図1と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図10に示した電気光学装置1Aは、奇数行映像データDb1の階調レベルを補正する補正回路40に加えて、偶数行映像データDb2の階調レベルを補正する補正回路80を有する点が、図1に示した電気光学装置1と異なる。補正回路80の動作は、図7を参照して説明した補正回路40の動作と同様であり、入力される偶数行映像データDb2の階調レベルを、正極性書込みと負極性書込みの一方(例えば、負極性書込み)では上昇するように補正し、他方(例えば、正極性書込み)では下降するように補正し、補正された映像データDc2として、第2D/A変換回路60に供給する。尚、補正回路80による偶数行映像データDb2の階調レベルの補正の結果生じる、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2のシフトの方向は、補正回路40による奇数行映像データDb1の階調レベルの補正の結果生じる、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1のシフトの方向と同じとは限らない。
【0056】
図11は、補正回路40、80で補正を行った場合の変形例1に係る電気光学装置1Aの各部における電圧を説明するための図である。図11の例においても、表示パネル100は、図6に示したような電圧変位特性(即ち、奇数行の電圧変位ΔV1及び偶数行の電圧変位ΔV2(ΔV1>ΔV2))を有するものとする。また、説明を簡潔にするため、奇数行映像データDb1と偶数行映像データDb2は同じであるとし、その映像データを第1D/A変換回路50または第2D/A変換回路60により変換して得られる電圧信号を電圧信号Vid0として、図11において実線で示す。図11の例では、対向電極108の電圧LCcomは、補正回路40による補正を行わない場合の奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心(即ち、Vc−ΔV1)より高く、補正回路80による補正を行わない場合の偶数行の画素電圧Vpix2の振幅中心(即ち、Vc−ΔV2)より低い値に設定されているものとする。即ち、極性基準電圧Vcからの対向電極108の電圧LCcomのずれをΔVshとすると、ΔV2<ΔVsh<ΔV1となるように電圧LCcomが設定されているものとする。
【0057】
この場合、補正回路40は、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1(図11において一点鎖線で示す)が、補正回路40において補正を行わない場合に第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid0に対して、ΔVa=ΔV1−ΔVshだけ上昇するように、奇数行映像データDb1に対し補正を行う。即ち、図7の左側のグラフに示したのと同様に、奇数行映像データDb1に対し、正極性書込み時(第1フィールド)においては、階調レベルが増加する方向にシフトさせる補正をし、負極性書込み時(第2フィールド)においては、階調レベルが減少する方向にシフトさせる補正をし、補正した映像データDc1を第1D/A変換回路50に供給する。一方、補正回路80は、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2(図11において二点鎖線で示す)が、補正回路80において補正を行わない場合に第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid0に対して、ΔVb=ΔVsh−ΔV2だけ低下するように、偶数行映像データDb2に対し補正を行う。即ち、図7の左側のグラフに示したのと逆の要領で、偶数行映像データDb2に対し、正極性書込み時(第1フィールド)においては、階調レベルが低下する方向にシフトさせる補正をし、負極性書込み時(第2フィールド)においては、階調レベルが上昇する方向にシフトさせる補正をし、補正した映像データDc2を第2D/A変換回路60に供給する。
【0058】
本例における表示パネル100では、奇数行の画素110の画素電極118に書き込まれる画素電圧Vpix1は、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1を電圧変位ΔV1だけ低下させた電圧となり、それに応じて、画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1は、電圧信号Vid1の振幅中心から電圧変位ΔV1だけ低下する。上記したように、電圧変位ΔV1は、極性基準電圧Vcからの対向電極108の電圧LCcomのずれΔVshより大きいので、補正回路40による補正がなければ、画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1は、対向電極108の電圧LCcomより低くなる。また、本例における表示パネル100では、偶数行の画素110の画素電極118に書き込まれる画素電圧Vpix2は、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2を電圧変位ΔV2だけ低下させた電圧となり、それに応じて、画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2は、電圧信号Vid2の振幅中心から電圧変位ΔV2だけ低下する。上記したように、電圧変位ΔV2は、極性基準電圧Vcからの対向電極108の電圧LCcomのずれΔVshより小さいので、補正回路80による補正がなければ、画素電圧Vpix2の振幅中心Vc2は、対向電極108の電圧LCcomより高くなる。本例においては、補正回路40の動作により、第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid1は、補正回路40において補正を行わない場合に第1D/A変換回路50から出力される電圧信号Vid0に対して、ΔVa=ΔV1−ΔVshだけ予め上昇されており、また、補正回路80の動作により、第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid2は、補正回路80において補正を行わない場合に第2D/A変換回路60から出力される電圧信号Vid0に対して、ΔVb=ΔVsh−ΔV2だけ予め低下させられている。そのため、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1と偶数行の画素電圧Vpix2の中心電圧Vc2のいずれも、対向電極108の電圧LCcomに一致する。従って、奇数行の画素110及び偶数行の画素110のいずれにおいても、液晶105に直流電圧成分が作用することがない。
【0059】
<変形例2>
上記実施形態において、電気光学装置1は、奇数行映像データDb1の階調レベルを補正する補正回路40を有していたが、本発明はこれに限定されない。電気光学装置1は、第1D/A変換回路50及び/または第2D/A変換回路60から出力された電圧信号の直流成分の補正量(オフセット値とも言う)をアナログ処理により調整してもよい。
【0060】
図12は、変形例2に係る電気光学装置1Bの構成を示すブロック図である。図12において、図1と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図12に示した電気光学装置1Bは、奇数行映像データDb1の階調レベルを補正する補正回路40の代わりに、第1D/A変換回路50の下流側に設けられ、第1D/A変換回路50から出力された電圧信号Vid1の直流成分の大きさを調整する直流成分調整回路90を有する点が、図1に示した電気光学装置1と異なる。直流成分調整回路90は、本発明に係る補正手段の一例に相当する。
【0061】
直流成分調整回路90は、第1D/A変換回路50から出力された電圧信号Vid1が、第1フィールド(正極性書込み)及び第2フィールド(負極性書込み)のいずれにおいても上昇または下降するように、電圧信号Vid1の直流成分を調整し、調整後の電圧信号を電圧信号Vid3として表示パネル100に供給する。これにより、上述した実施形態と同様に、対向電極108の電圧LCcomが偶数行の画素110に合わせて調整されているとき、奇数行の画素電圧Vpix1の振幅中心Vc1と、対向電極108の電圧LCcomとの間のずれを縮小することができる。
【0062】
このように、本発明に係る補正手段は、D/A変換回路の上流側に設けられてデジタル処理により、表示パネル100の画素110に印加する電圧の補正を行う補正回路を有するものであってってよいし、D/A変換回路の下流側に設けられてアナログ処理により補正を行う直流成分調整回路を有するものであってもよい。ただし、デジタル処理による補正を行う場合、補正を精度良く行うのが容易である。
【0063】
<変形例3>
上記実施形態では、奇数行の画素110にデータ信号X1a、X2a、X3a、…、Xnaを供給する第1データ線駆動回路140と、偶数行の画素110にデータ信号X1b、X2b、X3b、…、Xnbを供給する第2データ線駆動回路150をそれぞれ設けたが、本発明はこれに限定されない。奇数行の画素110のデータ信号X1a、X2a、X3a、…、Xnaと、偶数行の画素110のデータ信号X1b、X2b、X3b、…、Xnbとを、一つのデータ線駆動回路から供給してもよい。その場合、図1に示した分離回路30及び第2D/A変換回路60を削除してもよい。
【0064】
図13は、変形例3に係る電気光学装置1Cの構成を示すブロック図である。図13において、図1と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図14は、変形例3に係る表示パネル100Aの構成を示す図である。図14において、図2と共通する部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0065】
図13に示す電気光学装置1Cは、分離回路30及び第2D/A変換回路60を有さず、奇数行映像データDb1と偶数行映像データDb2に分離される前の映像データDbが補正回路40に入力される点が、図1に示した電気光学装置1と異なる。また、図13に示す電気光学装置1Cでは、制御回路10から補正回路40に、補正回路40に入力されている映像データDbが偶数行の画素110に対応するものか奇数行の画素110に対応するものかを表す信号Lineが入力されている。例えば、上記したように、表示パネル100の対向電極108の電圧LCcomが、偶数行の画素110に対して最適値となるように設定される場合、補正回路40は、信号Lineによって映像データDbが偶数行の画素110に対応するものであることが示される場合は補正処理をせず、信号Lineによって映像データDbが奇数行の画素110に対応するものであることが示される場合は、信号Polを参照しつつ、図7を参照して説明した補正処理を行う。補正回路40の出力は、映像データDcとしてD/A変換回路50aに供給され、D/A変換回路50aで電圧信号Vidに変換されて表示パネル100に入力される。従って、電圧信号Vidには、奇数行の画素110のデータ信号と偶数行の画素110のデータ信号が含まれる。
【0066】
図14に示す表示パネル100Aは、奇数行の画素110と偶数行の画素110に共通のデータ線駆動回路140aを有する点が、図2に示した表示パネル100と異なる。データ線駆動回路140aには、D/A変換回路50aから出力される、奇数行の画素110のデータ信号と偶数行の画素110のデータ信号を含む電圧信号Vidが入力される。走査線駆動回路130は、電圧信号Vidに同期して、走査信号Y1、Y2、Y3、・・・Ymを、それぞれ1、2、3、・・・m行目の走査線112に供給する。本例では、電圧信号Vid中に、奇数行の画素110のデータ信号と偶数行の画素110のデータ信号が含まれているため、奇数行の走査線112と偶数量の走査線112を同時に選択して、それぞれの走査線112に接続された画素110へのデータの書込み(水平走査)を同時に行うということはできない。しかしながら、例えば、奇数行の画素110用のデータ線114aと偶数行の画素110用のデータ線114bとが異なる配線層に設けられていることにより、選択トランジスター144のフィードスルーによる電圧低下の大きさが異なる場合など、奇数行の画素110と偶数行の画素110とで最適な対向電極108の電圧LCcomが異なる事態が生じ得る。補正回路40は、上記したように、映像データDbに含まれる奇数行映像データ(Db1)と偶数行映像データ(Db2)の少なくとも一方を補正することで、奇数行の画素110と偶数行の画素110とで最適な対向電極108の電圧LCcomの差を小さくする。それにより、電気光学装置1におけるフリッカーや焼き付きなどの表示の不具合が低減される。
【0067】
<変形例4>
上述した実施形態において、1フレームを第1フィールドおよび第2フィールドに分けて、それぞれ正極性書込みおよび負極性書込みを実行する構成としたが、本発明はこれに限定されない。1フレームを例えば4以上の偶数個のフィールドに分けて、正極性書込みと負極性書込みとを交互に実行しても良い。また、フィールドに分けないで例えば奇数フレームおよび偶数フレームに分けて正極性書込みと負極性書込みとを交互に実行しても良い。
【0068】
<他の変形例>
本発明に係る電子機器はプロジェクターに限定されない。テレビジョン、ビューファインダー型・モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等に本発明が用いられてもよい。また、上記例では、プロジェクターは、3つのライトバルブ100R、100G及び100Bを用いた3板式プロジェクターであったが、本発明はこれに限定されない。RGB各色の画素を有する1枚のカラー表示パネルを用いた単板式プロジェクターであってもよい。即ち、本発明に係る電気光学装置は、RGB各色の画素を有するカラー表示パネルを含むものであってよい。また、上述した実施形態において、液晶容量120は、透過型に限られず、反射型であっても良い。さらに、液晶容量120は、ノーマリーブラックモードに限られず、例えばTN方式として、電圧無印加時において液晶容量120が白状態となるノーマリーホワイトモードとしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1、1A、1B、1C…電気光学装置、10…制御回路、20…メモリー、30…分離回路、40、80…補正回路、50…第1D/A変換回路、50a…D/A変換回路、60…第2D/A変換回路、70…LCcom調整回路、90…直流成分調整回路、100、100A…表示パネル、100R、100G、100B…ライトバルブ、105…液晶、107…容量線、108…対向電極、109…蓄積容量、110…画素、112…走査線、114、114a、114b…データ線、116…画素トランジスター、118…画素電極、120…液晶容量、130…走査線駆動回路、140…第1データ線駆動回路、140a…データ線駆動回路、142…サンプリング信号出力回路、144…選択トランジスター、146…信号線、150…第2データ線駆動回路、2100…プロジェクター、2102…ランプユニット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイックプリズム、2114…投射レンズ、2120…スクリーン、2121…リレーレンズ系、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ、Ma…表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1経路の配線を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極に電圧が書き込まれる第1画素群と、
第2経路の配線を介してそれぞれに供給される電圧に応じてそれぞれの画素電極に電圧が書き込まれる第2画素群と、
前記第1画素群と前記第2画素群に共通の対向電極と、
前記第1画素群に対して最適な前記対向電極の電圧と前記第2画素群に対して最適な前記対向電極の電圧との差を縮めるように、前記第1経路の配線を介して前記第1画素群に供給される電圧及び前記第2経路の配線を介して前記第2画素群に供給される電圧の少なくとも一方を補正する補正手段と
を有する電気光学装置。
【請求項2】
前記第1経路の配線と前記第2経路の配線が絶縁体を介して異なる層に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1経路の配線と前記第2経路の配線とが異なる駆動回路によって駆動される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記第1画素群と前記第2画素群の少なくとも一方の階調レベルを定める映像データを補正する補正回路と、
前記補正回路により補正された映像データをD/A変換して前記第1画素群と前記第2画素群の少なくとも一方に供給される電圧を生成するD/A変換器と
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気光学装置を有する
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−101211(P2013−101211A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244481(P2011−244481)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】